特許拒絶査定不服審判
2025-000740
太陽電池及びその製造方法、光起電力モジュール
- 審判番号
- 2025-000740
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2024-027296
- 請求日
- 2025年01月20日
- 審決日
- 2026年03月27日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ジョジアン ジンコ ソーラー カンパニー リミテッド
- 【請求人代理人】大行 尚哉
- 【請求人】晶科能源股分有限公司
- 【請求人代理人】大行 尚哉
- 審判長/審判官
- 審判長 波多江 進
- 審判官 小澤 尚由
- 審判官 東松 修太郎
- 分類
- P18 .536-Z (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2024- 27296「太陽電池及びその製造方法、光起電力モジュール」拒絶査定不服審判事件〔令和7年6月26日出願公開、特開2025-96095〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和6年2月27日(パリ条約による優先権主張2023年12月15日、中国(CN))の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和6年 6月 3日付け:拒絶理由通知書
同年 9月 5日 :意見書、手続補正書の提出
同月12日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月19日 :原査定の謄本の送達)
令和7年 1月20日 :審判請求書の提出
第2 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年9月5日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。
「 【請求項1】
基板であって、前記基板が対向設置された第1表面及び第2表面を備え、前記第1表面が、間隔をあけて交互に設置された電極領域及び非電極領域と、前記電極領域と前記非電極領域の間に位置する遷移領域と、を含む基板と、
前記第1表面の前記電極領域のみに形成される第1誘電体層及び第1ドーピング導電層と、を含み、
前記第1ドーピング導電層が前記第1誘電体層の前記基板から遠い側の上側に位置し、
前記遷移領域が第1表面構造を備え、前記第1表面構造が間隔をあけて設置された複数の第1ピラミッド構造を含み、前記第1表面構造が複数の微細突起構造をさらに含み、前記微細突起構造の底部の一次元寸法が前記第1ピラミッド構造の底部の一次元寸法よりも小さく、
前記微細突起構造は、前記電極領域に向かって傾斜する角柱構造を含み、
前記角柱構造が前記第1ピラミッド構造の側面に位置し、及び/又は、前記角柱構造が前記遷移領域において前記電極領域に近い一部の領域に位置し、及び/又は、前記第1ピラミッド構造の側面から離れた方向に沿って、複数の前記角柱構造が順次配列されている、
ことを特徴とする太陽電池。」
第3 原査定における拒絶の理由の概要
本願発明についての原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
以下に示すとおり、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
請求項1には「前記第1表面構造が間隔をあけて設置された複数の第1ピラミッド構造を含み、前記第1表面構造が複数の微細突起構造をさらに含み、前記微細突起構造の底部の一次元寸法が前記第1ピラミッド構造の底部の一次元寸法よりも小さく」と記載されている。
これに対し、発明の詳細な説明の記載から、「第1表面構造」が、レーザー工程によって形成されることは把握できる。
しかしながら、発明の詳細な説明には、レーザー工程の具体的な条件までは記載されていないから、請求項1で特定される前記「第1表面構造」をどのように形成することができるのかを理解できない。そして、出願時の技術常識を鑑みても、そのようなレーザー工程の具体的な条件が自明のものとはいえないから、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が明細書及び図面に記載された発明の実施についての説明と出願時の技術常識とに基づいて、本願発明を実施しようとした場合に、どのように実施するかを理解できない。
第4 当合議体の判断
1 実施可能要件の判断基準
本願明細書の発明の詳細な説明の記載が、特許法36条4項1号に規定されるいわゆる実施可能要件に適合するか否かは、発明の詳細な説明に、当業者が、明細書及び図面に記載された発明の実施についての説明及び出願時の技術常識に基いて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に、発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載されているか否かを検討して判断すべきものであり、物の発明について実施をすることができるとは、その物を作れ、かつ、その物を使用できることができることである。
以下、この観点に立って検討する。
2 本願の明細書等の記載について
本願の発明の詳細を含む明細書及び図面には、本願発明について、次の事項が記載されている。なお、合議体が実施可能要件の判断において特に考慮した記載に下線を付した。
「【0001】
本発明の実施例は、光起電力の分野に関し、特に、太陽電池及びその製造方法、光起電力モジュールに関するものである。
…(中略)…
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の実施例には、少なくとも太陽電池の光電変換効率の向上に有利である太陽電池及びその製造方法、光起電力モジュールが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のいくつかの実施例によれば、本開示の実施例の一態様では、太陽電池が提供され、この太陽電池は、基板と、電極領域に位置する第1誘電体層と、前記第1誘電体層の前記電極領域から離れた側に位置する第1ドーピング導電層とを含み、前記基板が対向設置された第1表面及び第2表面を備え、前記第1表面が、間隔をあけて交互に設置された前記電極領域及び非電極領域と、前記電極領域と前記非電極領域の間に位置する遷移領域と、を含み、前記遷移領域が第1表面構造を備え、前記第1表面構造が間隔をあけて設置された複数の第1ピラミッド構造を含み、前記第1表面構造が複数の微細突起構造をさらに含み、前記微細突起構造の底部の一次元寸法が前記第1ピラミッド構造の底部の一次元寸法よりも小さい。
【0007】
いくつかの実施例では、前記微細突起構造は、前記電極領域に向かって傾斜する角柱構造、第2ピラミッド構造または三角形の板状構造の少なくとも1つを含む。
【0008】
いくつかの実施例では、前記角柱構造が前記第1ピラミッド構造の側面に位置し、及び/又は、前記角柱構造が前記遷移領域において前記電極領域に近い一部の領域に位置し、及び/又は、前記第1ピラミッド構造の側面から離れた方向に沿って、複数の前記角柱構造が順次配列されている。
…(中略)…
【発明の効果】
【0024】
本開示の実施例に提供された技術案は、少なくとも以下の利点を有する。
【0025】
第1表面は、電極領域と、遷移領域と、非電極領域と、を含む。積層配置された第1誘電体層及び第1ドーピング導電層が電極領域に設置され、第1誘電体層及び第1ドーピング導電層が電極領域に対するパッシベーションコンタクト構造を構成し、これによって、第1誘電体層の電極領域に対する化学的パッシベーション作用と第1ドーピング導電層の電極領域に対するフィールドパッシベーション作用とによって、電極領域の深刻なキャリア再結合問題を改善し、この後に電極領域に形成された電極の基板におけるキャリアに対する収集効率を高めるのに寄与する。一方、電極領域のみに第1誘電体層と第1ドーピング導電層を形成することで、第1誘電体層及び第1ドーピング導電層が第1表面110に照射された入射光に対する非電極領域と遷移領域の吸収を下げることを防止し、即ち電極領域の深刻なキャリア再結合問題を改善するとともに、第1表面の入射光に対する高吸収率を確保するのに寄与する。
【0026】
さらに、遷移領域は、第1ピラミッド構造及び微細突起構造を含む第1表面構造を備えることによって、異なる角度で遷移領域に入射した入射光が、少なくとも1回の反射によって第1ピラミッド構造及び/又は微細突起構造を介して遷移領域に吸収される確率が高くなり、かつ、少なくとも1回の反射によって第1ピラミッド構造及び/又は微細突起構造を介して非電極領域に反射されて非電極領域に吸収される確率が高くなり、第1表面の入射光に対する吸収率を高めるのに寄与する。また、微細突起構造の底部の一次元寸法が第1ピラミッド構造の底部の一次元寸法よりも小さいことによって、電極領域が第1表面構造を介して非電極領域により滑らかに遷移するようになることに有利である。
【0027】
したがって、電極領域の深刻なキャリア再結合問題を改善し、かつ第1表面の入射光に対する吸収率を高めることで、太陽電池の光電変換効率を向上させている。
…(中略)…
【発明を実施するための形態】
…(中略)…
【0030】
分析によると、現在、太陽電池の光電変換効率が低い原因は、基板の表面で一般的に拡散工程を使って基板の一部をエミッタに変換し、エミッタには基板と異なる種類のドーピング元素が含まれているため、エミッタとドーピング元素が拡散されていない基板とがPN接合を形成し、基板表面の電極領域でのキャリアの再結合が大きすぎるようになって、太陽電池の開放電圧と光電変換効率に影響しやすいおそれがあることであることがわかった。
【0031】
本願の実施例は、太陽電池及びその製造方法、光起電力モジュールを提供し、太陽電池では、電極領域に積層配置された第1誘電体層と第1ドーピング導電層を設置し、第1誘電体層と第1ドーピング導電層の電極領域に対するパッシベーション作用によって電極領域の深刻なキャリア再結合問題を改善し、この後に電極領域に形成される電極の基板におけるキャリアに対する収集効率を高める。一方、電極領域のみに第1誘電体層と第1ドーピング導電層を形成することで、第1誘電体層と第1ドーピング導電層が第1表面に照射された入射光に対する非電極領域と過渡領域の吸収を低減することを防止し、また、過渡領域には第1表面構造を有していることで、異なる角度で過渡領域に入射した入射光が第1ピラミッド構造及び/又は微細突起構造を介して過渡領域に吸収される確率が高くなり、かつ、第1ピラミッド構造及び/又は微細突起構造を介して非電極領域に反射されて非電極領域に吸収される確率が高くなり、第1表面の入射光に対する吸収率を高めるのに寄与する。したがって、電極領域の深刻なキャリア再結合問題を改善し、かつ第1表面の入射光に対する吸収率を高めることで、太陽電池の光電変換効率を高めることができる。
【0032】
以下、本開示の各実施例について図面を結合して詳細に説明する。しかしながら、当業者は理解できるが、読者に本願をよりよく理解させるために、本開示の実施例において多数の技術的細部が提案されているが、これらの技術的細部及び以下の各実施例に基づく種々の変更や修正がなくても、本開示の実施例が保護を要求している技術案を実現することができる。
…(中略)…
【0034】
図1~図4に示すように、太陽電池は、基板100と、電極領域101に位置する第1誘電体層104と、第1誘電体層104の電極領域101から離れた側に位置する第1ドーピング導電層105とを含み、基板100が対向設置された第1表面110及び第2表面120を備え、第1表面110が、間隔をあけて交互に設置された電極領域101及び非電極領域103と、電極領域101と非電極領域103の間に位置する遷移領域102と、を含み、遷移領域102が第1表面構造112を備え、第1表面構造112が間隔をあけて設置された複数の第1ピラミッド構造122を含み、第1表面構造112が複数の微細突起構造132をさらに含み、微細突起構造132の底部の一次元寸法L1が第1ピラミッド構造122の底部の一次元寸法L2よりも小さい。
【0035】
なお、図1は、本願の一実施例で提供された太陽電池の局所断面構造を示す図であり、図2は、本願の一実施例で提供された太陽電池の局所立体電子顕微鏡模式図であり、図3は、図2の枠I箇所の拡大電子顕微鏡写真であり、図4は、本願の一実施例で提供された太陽電池における第1ピラミッド構造と微細突起構造の立体構造を示す図である。また、電極領域101、遷移領域102、非電極領域103、第1誘電体層104、第1ドーピング導電層105の大まかな位置を示すために、図1には、基板100、第1誘電体層104及び第1ドーピング導電層105の表面形態の特徴が示されていない。」
「【図1】
[図:0001438853000001.jpg]
【図2】
[図:0001438853000002.jpg]
【図3】
[図:0001438853000003.jpg]
【図4】
[図:0001438853000004.jpg]
」
「【0036】
図1に示すように、第1表面110は、複数の電極領域101と、複数の遷移領域102と、複数の非電極領域103と、を含む。積層配置された第1誘電体層104及び第1ドーピング導電層105が電極領域101に設置され、第1誘電体層104及び第1ドーピング導電層105が電極領域101に対するパッシベーションコンタクト構造を構成し、これによって、第1誘電体層104の電極領域101に対する化学的パッシベーション作用と第1ドーピング導電層105の電極領域101に対するフィールドパッシベーション作用とによって、電極領域101の深刻なキャリア再結合問題を改善し、この後に電極領域101に形成された電極の基板100におけるキャリアに対する収集効率を高めるのに寄与する。一方、電極領域101のみに第1誘電体層104と第1ドーピング導電層105を形成することで、第1誘電体層104及び第1ドーピング導電層105が第1表面110に照射された入射光に対する非電極領域103と遷移領域102の吸収を下げることを防止し、即ち電極領域101の深刻なキャリア再結合問題を改善するとともに、第1表面110の入射光に対する高吸収率を確保するのに寄与する。
【0037】
さらに、図3に示すように、第1表面構造112は、交雑して設置された複数の第1ピラミッド構造122を備え、離散的な第1ピラミッド構造122に加えて、第1表面構造112は、微細突起構造132をさらに備える。これにより、異なる角度で遷移領域102に入射した入射光が、少なくとも1回の反射によって第1ピラミッド構造122及び/又は微細突起構造132を介して遷移領域102に吸収される確率が高くなり、かつ、少なくとも1回の反射によって第1ピラミッド構造122及び/又は微細突起構造132を介して非電極領域103に反射されて非電極領域103に吸収される確率が高くなり、第1表面110の入射光に対する吸収率を高めるのに寄与する。また、微細突起構造132の底部の一次元寸法が第1ピラミッド構造122の底部の一次元寸法よりも小さいことによって、電極領域101が第1表面構造112を介して非電極領域103により滑らかに遷移するようになることに有利である。
【0038】
したがって、電極領域101の深刻なキャリア再結合問題を改善し、かつ第1表面110の入射光に対する吸収率を高めることで、太陽電池の光電変換効率を向上させている。
【0039】
いくつかの実施例では、電極領域101とは、基板100の厚さ方向に沿って、基板100内の電極に正対する領域または電極の基板100への正投影が位置する領域を指す。また、遷移領域102と非電極領域103とは、基板100内の電極に正対していない領域または電極以外の領域の基板100への正投影が位置する領域を指し、且つ、遷移領域102が電極領域101と非電極領域103の間に位置している。実際の応用において、電極領域101の基板100への正投影の面積は、電極の基板100への正投影の面積以上であってもよく、電極と基板100との接触する領域が全部電極領域101であることを確保するのに寄与する。
【0040】
なお、上述した電極は、いずれも後述する基板100の第1表面110に正対する電極である。上述した電極領域101と非電極領域103の定義は、後述する非IBCセルを対象とする場合、太陽電池の2つの異なる極性の電極は、それぞれ基板100の対向する2つの側面に位置し、上述した電極は、第1表面110に位置する電極であり、太陽電池がIBCセルである場合または2つの異なる極性の導電性電極が基板100の同じ側に位置する場合、1つの電極領域101は、2種類の極性の電極のいずれかに正対する領域を指す。
【0041】
以下、図面を参照しながら、本願の実施例をより詳細に説明する。
【0042】
いくつかの実施例では、図3及び図4に示すように、微細突起構造132は、電極領域101に向かって傾斜する角柱構造142、第2ピラミッド構造152または三角形の板状構造の少なくとも1つを含む。
【0043】
なお、図3では、微細突起構造132が電極領域101に向かって傾斜する角柱構造142、第2ピラミッド構造152及び三角形の板状構造の三者を含んだことを例としているが、実際の応用において、同じ遷移領域102の第1表面構造112にとって、微細突起構造132は、第2ピラミッド構造152、三角形の板状構造162または電極領域101に向かって傾斜する角柱構造142のうちの1つのみを含んでもよい。また、微細突起構造132は、電極領域101に向かって傾斜する角柱構造142、第2ピラミッド構造152または三角形の板状構造162のうちの1つであることに加えて、不規則な粒子状構造であってもよい。
【0044】
図4~図6に示すように、微細突起構造132の底部の一次元寸法L1は、第1ピラミッド構造1222の底部の一次元寸法L2よりも小さい。ここで、図5は、本願の一実施例で提供された微細突起構造132の底部の上面視構造を示す図であり、図6は、本願の一実施例で提供された微細突起構造132の底部の別の上面視構造を示す図である。また、第1ピラミッド構造122、角柱構造142、第1ピラミッド構造122第2ピラミッド構造152、及び三角形の板状構造162の特徴をはっきりと示すために、図4における第1ピラミッド構造122、角柱構造142、第1ピラミッド構造122第2ピラミッド構造152及び三角形の板状構造162は、いずれも透視図法を採用している。」
「【図4】(再掲)
[図:0001438853000005.jpg]
【図5】
[図:0001438853000006.jpg]
【図6】
[図:0001438853000007.jpg]
【0045】
なお、図5に示すように、微細突起構造132の底部の一次元寸法L3は、微細突起構造132の底部の基板100への正投影パターンの長さ、幅または対角線の長さのいずれかを含む。また、図5では、微細突起構造132の底部の基板100への正投影パターンが規則的な四角形であることを例としており、この場合、微細突起構造132の底部の一次元寸法L1は、規則的な四角形の長さ、幅または対角線の長さのうちのいずれかである。
【0046】
実際の応用において、微細突起構造132の底部の基板100への正投影パターンは、不規則な多角形であってもよい。この場合、微細突起構造132の底部の基板100への正投影パターンの長さ、幅または対角線の長さは、絶対的なものではなく、微細突起構造132の底部を表すために人為的に定義された一次元寸法L1である。例えば、図6に示すように、微細突起構造132の底部の基板100への正投影パターンは、不規則な四角形であり、この場合、微細突起構造132の底部の基板100への正投影パターンの長さL11は、不規則な四角形の最も長い辺の長さとして定義されることができ、微細突起構造132の底部の基板100への正投影パターンの幅L12は、不規則な四角形の最も短い辺の長さとして定義されることができ、微細突起構造132の底部の基板100への正投影パターンの対角線の長さL13は、不規則な四角形の最も長い対角線の長さとして定義されることができるが、以上は、例示的な説明であり、具体的には実際のニーズに応じて柔軟に定義できることが理解できる。
【0047】
また、微細突起構造132の底部の基板100への正投影パターンは、不規則な四角形のほか、他の不規則な多角形、円形または円形に類似する不規則な形状であってもよく、この場合、微細突起構造132の底部の一次元寸法L1は、微細突起構造132の底部の中の異なる特定面積の領域を複数選び、この特定面積の領域が実際のニーズに応じて柔軟に定義し、そして、異なる特定面積の領域の長さ、幅、対角線または直径の平均値を求めることができる。
【0048】
なお、図4に示すように、第1ピラミッド構造122の底部の基板100への正投影パターンは、一般的に規則的な四角形であり、この場合、第1ピラミッド構造122の底部の一次元寸法L2は、規則的な四角形の長さ、幅または対角線の長さのいずれかである。実際の応用において、第1ピラミッド構造122の底部の基板100への正投影パターンは、不規則な四角形であってもよく、このとき、微細突起構造132の底部の基板100への正投影パターンが不規則な四角形である場合の一次元寸法L1の定義と類似しているため、ここで繰り返して説明する必要がない。
【0049】
また、異なる第1ピラミッド構造122の底部の一次元寸法L2は、異なってもよいし、同じであってもよいが、第1ピラミッド構造122の底部の一次元寸法L2は、ある数値範囲内にある。異なる微細突起構造132の底部の一次元寸法L1は、異なってもよいし、同じであってもよいが、微細突起構造132の底部の一次元寸法L1もある数値範囲内にある。微細突起構造132の底部の一次元寸法L1が第1ピラミッド構造122の底部の一次元寸法L2よりも小さいことは、遷移領域102における複数の微細突起構造132の底部の一次元寸法L1の平均値が遷移領域102における複数の第1ピラミッド構造122の底部の一次元寸法L2の平均値よりも小さいことを指す。
【0050】
以下、角柱構造142の具体的な特徴について詳しく説明する。
【0051】
いくつかの実施例では、図3に示すように、角柱構造142が第1ピラミッド構造122の側面に位置する。角柱構造142の第1ピラミッド構造122の側面における配列は、以下の2つの状況を含む。いくつかの状況では、1つの角柱構造142が1つの第1ピラミッド構造122の側面に位置する。他のいくつかの状況では、1つの第1ピラミッド構造122の同じ側面には、複数の角柱構造142が付着されており、且つ各角柱構造142がいずれも当該側面に接触して接続される。
【0052】
他のいくつかの実施例では、図3に示すように、一部の角柱構造142が遷移領域102において電極領域101に近い一部の領域に位置する。例えば、角柱構造142が第1ピラミッド構造122と電極領域101との間に位置する。
【0053】
他のいくつかの実施例では、第1ピラミッド構造122の側面から離れた方向に沿って、複数の角柱構造142が順次配列されている。例えば、複数の角柱構造142のうち、第1ピラミッド構造122の側面に最も近い角柱構造142のみが第1ピラミッド構造122の側面に接触して接続されている。
【0054】
なお、同じ遷移領域102が備えた複数の角柱構造142は少なくとも上述した3種類の実施例における少なくとも1種類の角柱構造142であり、即ち、同じ遷移領域102が備えた複数の角柱構造142は、それぞれ上述した3種類の実施例における角柱構造142の特徴を有してもよく、または上述した任意の2種類の実施例における角柱構造142の特徴を有してもよく、または上述した任意の1種類の実施例における角柱構造142の特徴を有してもよい。
【0055】
以下、第2ピラミッド構造152の具体的な特徴について詳しく説明する。
【0056】
いくつかの実施例では、図7に示すように、図7は、本願の一実施例で提供された第2ピラミッド構造152及び第1ピラミッド構造122の1つの配列例であり、第2ピラミッド構造152の底部が第1ピラミッド構造122の底部に接触して接続されている。場合によって、同じ第1ピラミッド構造122の底部の周りに複数の第2ピラミッド構造152が取り囲まれることができ、各第2ピラミッド構造152の底部がいずれもこの第1ピラミッド構造122の底部に接触して接続されている。」
「【図7】
[図:0001438853000008.jpg]
」
「【0057】
他のいくつかの実施例では、図8に示すように、図8は、本願の一実施例で提供された第2ピラミッド構造152と第1ピラミッド構造122の別の配列例であり、少なくとも1つの第2ピラミッド構造152が隣接する2つの第1ピラミッド構造122の間隔に位置している。言い換えれば、第2ピラミッド構造152の底部は、第1ピラミッド構造122の底部に接触して接続されていない。」
「【図8】
[図:0001438853000009.jpg]
」
「【0058】
なお、同じ遷移領域102が備える第2ピラミッド構造152は、上述した2種類の実施例における少なくとも1種類の第2ピラミッド構造152であり、即ち、同じ遷移領域102が備える複数の第2ピラミッド構造152は、それぞれ上述した2種類の実施例における第2ピラミッド構造152の特徴を有してもよいし、上述したいずれか1種類の実施例における第2ピラミッド構造152の特徴を有してもよい。
【0059】
以下、三角形の板状構造162の具体的な特徴について詳しく説明する。
【0060】
いくつかの実施例では、図3に示すように、三角形の板状構造162は第1ピラミッド構造122の側面に位置している。三角形の板状構造162が第1ピラミッド構造122の側面に配列された状況は、1つの三角形の板状構造162が第1ピラミッド構造122の側面に位置する場合と、1つの第1ピラミッド構造122の同じ側面に複数の三角形の板状構造162が付着され、且つ各三角形の板状構造162がいずれもこの側面に接触して接続される場合と、を含む。
【0061】
他のいくつかの実施例では、図3に示すように、第1ピラミッド構造122の側面から離れた方向に沿って、複数の三角形の板状構造162が順次配列されている。例えば、複数の三角形の板状構造162のうち、第1ピラミッド構造122の側面に最も近い三角形の板状構造162のみが第1ピラミッド構造122の側面に接触して接続されている。
【0062】
なお、同じ遷移領域102が備える三角形の板状構造162は、上述した2種類の実施例における少なくとも1種類の三角形の板状構造162であり、即ち、同じ遷移領域102が備える複数の三角形の板状構造162は、それぞれ上述した2種類の実施例における三角形の板状構造162の特徴を有してもよいし、上述したいずれか1種類の実施例における三角形の板状構造162の特徴を有してもよい。
【0063】
いくつかの実施例では、図3に示すように、第1ピラミッド構造122が遷移領域102において非電極領域103に近い一部の領域に位置している。言い換えれば、遷移領域102の非電極領域103に近い一部の領域には、より典型的な第1ピラミッド構造122がある。
【0064】
なお、上述したように、各実施例によって遷移領域102の第1表面構造112を説明しており、即ち、第1表面構造112の構成には多様性がある。場合によって、同じ遷移領域102には、第1ピラミッド構造122に加えて、複数の微細突起構造132をさらに備え、また、異なる遷移領域102における複数の微細突起構造132の具体的な特徴が異なり、例えば、隣接する2つの遷移領域102のうちの一方は、電極領域101に向かって傾斜する角柱構造142及び第2ピラミッド構造152を備え、他方が第2ピラミッド構造152及び三角形の板状構造162を備える。」
「【0142】
上記のように、積層配置された第1誘電体層104と第1ドーピング導電層105を電極領域101に設置し、第1誘電体層104と第1ドーピング導電層105の電極領域101に対するパッシベーション作用によって、電極領域101の深刻なキャリア再結合問題を改善し、この後に電極領域101に形成される電極の基板100におけるキャリアに対する収集効率を向上させる。一方、電極領域101のみに第1誘電体層104と第1ドーピング導電層105を形成することで、第1誘電体層104と第1ドーピング導電層105が第1表面110に照射された入射光に対する非電極領域103と遷移領域102の吸収を低下させることを防止する。また、第1表面構造112が複数の第1ピラミッド構造122と微細突起構造132を備えることによって、異なる角度で遷移領域102に入射した入射光は、少なくとも1回の反射によって第1ピラミッド構造122及び/又は微細突起構造132を介して遷移領域102に吸収される確率が高くなり、かつ少なくとも1回の反射によって第1ピラミッド構造122及び/又は微細突起構造132を介して非電極領域103に反射されて非電極領域103に吸収される確率が高くなり、第1表面110の入射光に対する吸収率を高めるのに寄与する。これにより、電極領域101の深刻なキャリア再結合問題を改善し、第1表面110の入射光に対する吸収率を向上させることで、太陽電池の光電変換効率を高めることができる。
【0143】
本願の別の実施例は、上述した実施例で提供された太陽電池を製造するための太陽電池の製造方法をさらに提供する。以下、図面を参照しながら、本願の別の実施例で提供された太陽電池の製造方法について詳しく説明する。なお、上述した実施例と同じ部分または対応する部分について、ここでは説明を割愛する。
【0144】
図16~図21は、本願の別の実施例で提供された太陽電池の製造方法における各ステップに対応する局所断面構造を示す図である。
【0145】
図16~図21に示すように、太陽電池の製造方法は、少なくとも、以下のステップを含む。
【0146】
ステップS11:図16に示すように、初期基板130を提供し、初期基板130が対向設置された初期第1表面140及び初期第2表面150を備え、初期第1表面140が間隔をあけて交互に設置された初期電極領域171及び初期非電極領域173と、初期電極領域171と初期非電極領域173の間に位置する初期遷移領域172と、を含む。」
「【図16】
[図:0001438853000010.jpg]
」
「【0147】
いくつかの実施例では、この後の初期第1誘電体層を形成する前に、初期第1表面140に対して第1エッチング工程を行って、初期第1表面140に第1テクスチャ構造を持たせることをさらに含んでもよく、即ち初期電極領域171、初期遷移領域172及び初期非電極領域173の表面が、いずれも類似したテクスチャ構造を備え、このテクスチャ構造がピラミッド構造であってもよい。第1エッチング工程は、化学エッチングを含んでもよく、例えば、水酸化カリウムと過酸化水素の混合溶液で初期基板130の表面を洗浄し、具体的には水酸化カリウムと過酸化水素の濃度比を制御することで形態が所望に適合する初期第1表面140を形成することができる。他のいくつかの実施例では、レーザーエッチング、機械法、プラズマエッチングなどの方法でテクスチャ形成処理を行ってもよい。
【0148】
ステップS12:初期第1表面140を覆う初期第1誘電体層を形成する。ステップS13:初期第1誘電体層の初期基板130から離れた側の表面を覆う初期第1ドーピング導電層を形成する。ステップS14:レーザー工程で初期遷移領域172と初期非電極領域173に位置する初期第1誘電体層と初期第1ドーピング導電層を除去して、第1表面110を備える基板100を形成する。
【0149】
なお、異なるタイプの電池を形成するために、ステップS12~ステップS14は、ある程度異なっており、以下、これらについてそれぞれ詳しく説明する。
【0150】
ここで、図16、図1~図4に示すように、レーザー工程により処理された後の初期電極領域171、初期遷移領域172及び初期非電極領域173は、それぞれ電極領域101、遷移領域102及び非電極領域103であり、遷移領域102が第1表面構造112を備え、第1表面構造112が間隔をあけて設置された複数の第1ピラミッド構造122を含み、第1表面構造112が複数の微細突起構造132をさらに含み、微細突起構造132の底部の一次元寸法L1が第1ピラミッド構造122の底部の一次元寸法L2よりも小さく、電極領域101に位置する残りの初期第1誘電体層が第1誘電体層104である、電極領域101に位置する残りの初期第1ドーピング導電層が第1ドーピング導電層105である。」
「【図16】(再掲)
[図:0001438853000011.jpg]
【図1】(再掲)
[図:0001438853000012.jpg]
【図2】(再掲)
[図:0001438853000013.jpg]
【図3】(再掲)
[図:0001438853000014.jpg]
【図4】(再掲)
[図:0001438853000015.jpg]
」
「【0151】
以下、両面TOPCONセルを形成することを例として、ステップS12~ステップS14について詳しく説明する。
【0152】
ステップS12では、図17に示すように、初期第1表面140を覆う初期第1誘電体層154を形成する。
【0153】
いくつかの実施例では、図17に示すように、初期第1誘電体層154を形成するステップにおいて、さらに、初期第2表面150を覆う第2誘電体層114を形成することを含んでもよい。これにより、同一工程ステップで初期第1誘電体層154と第2誘電体層114を形成することで、工程プロセスを省くことができるだけでなく、初期第1誘電体層154と第2誘電体層114を別々に形成することに比べて、コーディング除去回数を減らすことができる。」
「【図17】
[図:0001438853000016.jpg]
」
「【0154】
場合によって、先に初期第1表面140に初期第1誘電体層154を形成すると、まず初期第2表面150に保護層を形成し、初期第1誘電体層154の形成ステップが初期第2表面150に影響しないようにする必要がある。また、初期第1誘電体層154を形成する工程ステップでは、初期基板130の側面にもコーディングを形成してしまい、初期第1誘電体層154形成後、初期基板130の側面に1回目のコーディング除去処理を行う必要がある。1回目のコーディング除去処理を行った後、初期第2表面150に第2誘電体層114を形成する。第2誘電体層114の形成ステップが初期第1表面140に影響しないようにするために、まず初期第1表面140に保護層を形成する必要があり、且つ第2誘電体層114形成ステップでは初期基板130の側面にコーディングを形成するため、第2誘電体層114の形成後、2回目のコーディング除去処理を行う必要がある。
【0155】
場合によって、コーディング除去ステップでは、初期基板130の側面に形成されたコーディングを湿式化学法で洗浄する必要がある。言い換えれば、コーディング除去ステップは、コーディングを除去するだけでなく、湿式化学法を採用するため、初期基板130にダメージを与えることがある。本願の一実施例では、初期第1誘電体層154と第2誘電体層114を同時に形成することで、初期第1表面140と初期第2表面150にそれぞれ保護層を形成するステップを省くことができる一方、初期第1誘電体層154と第2誘電体層114を形成した後、1回のコーディング除去ステップを行うだけでよく、工程ステップを大幅に簡略化し、工程効率を高めることができる。また、初期第1表面140と初期第2表面150に保護層を形成する必要がないため、後に保護層を除去する必要がなく、保護層除去ステップに起因する初期基板130への工程ダメージを回避し、初期基板130の良好な性能を保つことができる。
【0156】
ステップS13では、図17に示すように、初期第1誘電体層154の初期基板130から離れた側の表面を覆う初期第1ドーピング導電層155を形成する。
…(中略)…
【0168】
ステップS14では、図17と図1に示すように、レーザー工程で初期遷移領域172と初期非電極領域173における初期第1誘電体層154と初期第1ドーピング導電層155を除去して、第1表面110を備えた基板100を形成する。
【0169】
いくつかの実施例では、初期第1表面140は、第1テクスチャ構造を備え、レーザー工程で初期遷移領域172と初期非電極領域173に位置する初期第1誘電体層154と初期第1ドーピング導電層155を除去するステップにおいて、図17、図9及び図3に示すように、初期電極領域171に位置する第1ドーピング導電層105が第2表面構造125を備え、初期遷移領域172に位置する第1テクスチャ構造が第1表面構造112に変換され、初期非電極領域173に位置する第1テクスチャ構造が第3表面構造113に変換され、ここで、第2表面構造125が複数の第3ピラミッド構造135を含み、第3表面構造113が複数の第4ピラミッド構造123を含み、第1ピラミッド構造122の底部の一次元寸法が第3ピラミッド構造135の底部の一次元寸法よりも大きく、第3ピラミッド構造135の底部の一次元寸法が第4ピラミッド構造123の底部の一次元寸法よりも大きい。
【0170】
なお、レーザー工程の工程パラメータを調整することで、第1表面構造112を微調整することができる。」
「【図17】(再掲)
[図:0001438853000017.jpg]
【図1】(再掲)
[図:0001438853000018.jpg]
」
「【0171】
以下、HJTセルを形成することを例として、ステップS12~ステップS14について、詳しく説明する。
…(中略)…
【0175】
なお、本願の別の実施例では、真性半導体層214と初期第1誘電体層254の優先順位について限定しない。また、図18における初期基板230、初期第1表面240、初期第2表面250、初期電極領域271、初期遷移領域272、初期非電極領域273、初期第1誘電体層254及び初期第1ドーピング導電層255は、いずれも上述した実施例での対応する構成と類似しているため、ここでは説明を割愛する。
【0176】
以下、IBCセルを形成することを例として、ステップS12~ステップS14について詳しく説明する。
…(中略)…
【0184】
図21と図12に示すように、レーザー工程を採用するステップは、第2レーザー工程で初期正電極領域351、初期遷移領域372及び初期非電極領域373に位置する初期第2サブ誘電体層344と初期第2サブドーピング導電層345を除去し、初期負電極領域361に位置する残りの初期第2サブ誘電体層344を第2サブ誘電体層324とし、初期負電極領域361に位置する残りの初期第2サブドーピング導電層345を第2サブドーピング導電層325とする。」
「【図21】
[図:0001438853000019.jpg]
【図12】
[図:0001438853000020.jpg]
」
「【0185】
図21と図12に示すように、第1マスク層308を除去する。
【0186】
なお、IBCセルを形成するステップでは、初期第1誘電体層354と初期初期第1ドーピング導電層355を形成するステップは、上述した実施例の両面TOPCONセルとHJTセルにおける初期第1誘電体層154、254と初期第1ドーピング導電層155、255を形成するステップと異なる。IBCセルを形成するステップにおいて、初期第1誘電体層354を形成するステップは、2つの別々のサブステップ、即ち、初期第1サブ誘電体層334を形成するステップと初期第2サブ誘電体層344を形成するステップを含み、初期初期第1ドーピング導電層355を形成するステップは、2つの別々のサブステップ、即ち、初期第1サブドーピング導電層335を形成するステップと初期第2サブドーピング導電層345を形成するステップを含む。第1レーザー工程と第2レーザー工程を行った初期正電極領域351と初期負電極領域361は、それぞれ正電極領域311と負電極領域321になり、電極領域301が正電極領域311または負電極領域321であり、第1レーザー工程と第2レーザー工程を行った初期遷移領域372と初期非電極領域373は、それぞれ遷移領域302と非電極領域303になる。
【0187】
上記のように、本願の別の実施例では、全面に初期第1誘電体層154と初期第1ドーピング導電層155を形成してから、レーザー工程で処理することにより、第1表面構造112を備えた遷移領域102を形成し、かつ積層配置された第1誘電体層104と第1ドーピング導電層105を電極領域101のみに形成する。これにより、第1誘電体層104と第1ドーピング導電層105の電極領域101に対するパッシベーション作用によって電極領域101の深刻なキャリア再結合問題を改善する。一方、第1誘電体層104と第1ドーピング導電層105が第1表面110に照射された入射光に対する非電極領域103と遷移領域102の吸収を低下させることを防止する。また、第1表面構造112は、第1表面110の入射光に対する吸収率を高めるのに寄与する。
…(後略)…」
3 本願発明の実施可能要件の検討
(1) 本願発明の構成について
本願発明は、前記第2で認定したとおりのものであり、「前記第1表面構造が間隔をあけて設置された複数の第1ピラミッド構造を含み、前記第1表面構造が複数の微細突起構造をさらに含み、前記微細突起構造の底部の一次元寸法が前記第1ピラミッド構造の底部の一次元寸法よりも小さく、前記微細突起構造は、前記電極領域に向かって傾斜する角柱構造を含み、前記角柱構造が前記第1ピラミッド構造の側面に位置し、及び/又は、前記角柱構造が前記遷移領域において前記電極領域に近い一部の領域に位置し、及び/又は、前記第1ピラミッド構造の側面から離れた方向に沿って、複数の前記角柱構造が順次配列されている」こと(以下「本件第1表面構造」という)を特定するものである。
そして、前記1の判断基準によれば、本願が実施可能要件を満たしているというためには、当業者が、本件第1表面構造を備える太陽電池を、明細書及び図面に記載された発明の実施についての説明と技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく作ることができるように、発明の詳細な説明が記載されている必要がある。
(2) 発明の詳細な説明における太陽電池の製造方法の記載について
本件第1表面構造を備える太陽電池の製造方法、特に、本件第1表面構造の形成に関して、発明の詳細な説明には、特に両面TOPCONセルを形成する場合に、次のア~エの記載がある。なお、発明の詳細な説明において関連する段落番号を括弧内に示した。
ア ステップS11として、初期第1誘電体層を形成する前に、初期第1表面140に対して第1エッチング工程を行って、初期第1表面140に第1テクスチャ構造を持たせ、初期電極領域171、初期遷移領域172及び初期非電極領域173の表面が、いずれも類似したテクスチャ構造を備え、このテクスチャ構造がピラミッド構造であってもよいこと。第1エッチング工程は、化学エッチングを含んでもよく、例えば、水酸化カリウムと過酸化水素の混合溶液で初期基板130の表面を洗浄し、具体的には水酸化カリウムと過酸化水素の濃度比を制御することで形態が所望に適合する初期第1表面140を形成することができること。レーザーエッチング、機械法、プラズマエッチングなどの方法でテクスチャ形成処理を行ってもよいこと。(【0147】)
イ ステップS12として、初期第1表面140を覆う初期第1誘電体層を形成すること。(【0148】、【0152】)
ウ ステップS13として、初期第1誘電体層の初期基板130から離れた側の表面を覆う初期第1ドーピング導電層を形成すること。(【0148】、【0156】)
エ ステップS14として、レーザー工程で初期遷移領域172に位置する初期第1誘電体層と初期第1ドーピング導電層を除去して、第1表面110を備える基板100を形成すること。初期第1表面140は、第1テクスチャ構造を備え、レーザー工程で初期遷移領域172に位置する初期第1誘電体層154と初期第1ドーピング導電層155を除去するステップにおいて、初期遷移領域172に位置する第1テクスチャ構造が第1表面構造112に変換されること。(【0148】、【0169】)
オ レーザー工程の工程パラメータを調整することで、第1表面構造112を微調整することができること。(【0170】)
また、本願の発明の詳細な説明には、HJTセル及びIBCセルを形成する場合も、両面TOPCONセルを形成する場合と同様の方法により、本件第1表面構造を形成することが開示されているものと認められる(【0171】~【0187】)。
(3) 実施可能要件についての検討
ア 前記(2)によれば、発明の詳細な説明には、本件第1表面構造は、第1エッチング工程などにより形成したピラミッド構造である第1テクスチャ構造上に初期第1誘電体層及び初期第1ドーピング導電層を形成し、レーザー工程で初期遷移領域に位置する初期第1誘電体層と初期第1ドーピング導電層を除去するステップにおいて、第1テクスチャ構造が本件第1表面構造に変換されることにより形成され、レーザー工程の工程パラメータを調整することで、第1表面構造を微調整すること(以下「本件レーザー工程」という。)が開示されているにとどまる。そこで以下、当業者が、本件レーザー工程により、本件第1表面構造を形成することができるか否かについて検討する。
イ 当業者が本件レーザー工程により本件第1表面構造を形成することができるというためには、本件レーザー工程において、第1テクスチャ構造上に初期第1誘電体層及び初期第1ドーピング導電層を形成した初期遷移領域に対してどのようなレーザーをどのように照射することにより、本件第1表面構造を形成することができるのかを、明細書及び図面の記載並びに技術常識に基づいて当業者が理解できる必要がある。
ここで、前記(2)オにも見られるように、本件第1表面構造のような特定の微細構造を形成するためには、レーザー工程の工程パラメータとして特定の工程パラメータが必要であること、すなわち、レーザー工程の工程パラメータにより、作成される微細構造は異なり得ることが技術常識である。このことは、後記エで説示する本願の発明の詳細な説明の記載からも首肯できる。そして、そのようなレーザー工程の工程パラメータとしては、レーザーの発振種別(パルスレーザー/CW発振レーザー等)、発振波長又は発振周波数、エネルギー密度や強度、集光径やビームプロファイル、(パルスレーザーの場合)パルス幅や繰り返し周波数等の多岐にわたるパラメータを決定する必要があり、レーザーの使用条件についても、走査速度や走査パターン、入射方向や入射角等を決定する必要がある。そして、これらの工程パラメータを適切に決定しなければ、本件第1表面構造を作成することができないといえる。
ウ しかしながら、発明の詳細な説明には、本件レーザー工程の詳細については、レーザー工程の工程パラメータを調整することで、第1表面構造を微調整することができる旨が記載されているにとどまり、調整すべき工程パラメータとしてどのようなパラメータをどのような指針で決定するのかについては何らの開示もなされていない。
また、本件第1表面構造のうち、第1ピラミッド構造については、本件レーザー工程からも理解されるように、エッチング工程などにより形成した第1テクスチャ構造に起因するものであり、このようにエッチング工程によりピラミッド構造であるテクスチャ構造を形成することは、本願の出願時の技術常識であると認められる。しかしながら、本件第1表面構造のうち、角柱構造については、特に第1ピラミッド構造に対して特定の配置であることを特定するものであり、このような構造が本願出願時に一般的な構造とはいいがたい。さらに、これをレーザー工程で作成することも一般的であるとはいいがたく、発明の詳細な説明には、レーザー工程によるどのような機序、作用に基づいて特定配置の角柱構造が形成されるのかについての説明もなされていない。そうすると、本件第1表面構造のうち、特に特定配置の角柱構造を形成するためのレーザー工程の工程パラメータが、当業者にとって技術常識であることや、当業者が過度の試行錯誤を伴うことなく決定できる程度のものと認めることはできない。
エ 前記イのレーザー工程の工程パラメータにより、作成される微細構造は異なり得ることに関して、本願の発明の詳細な説明の【0043】によれば、本件レーザー工程により形成される「微細突起構造」には、角柱構造142、第2ピラミッド構造153及び三角形の板状構造(以下「三つの構造」という。)が含まれ、それら三つの構造については、【0064】に例示されるように、いずれかの構造のみが形成される得ることが記載されている。しかしながら、レーザー工程における各パラメータのうち、どのようなパラメータのどのような値を選択すれば、これら三つの構造のいずれが形成されるのか、具体的な条件についての記載はなく、また、その指針についても記載されていない。このことからも、本件第1表面構造のうち、微細突起構造である角柱構造を形成するためのレーザー工程の工程パラメータが、当業者にとって技術常識であることや、当業者が過度の試行錯誤を伴うことなく決定できる程度のものと認めることはできない。
オ 前記ア~エを踏まえると、本件レーザー工程において、第1テクスチャ構造上に初期第1誘電体層及び初期第1ドーピング導電層を形成した初期遷移領域に対してどのようなレーザーをどのように照射することにより、本件第1表面構造を形成することができるのかを、明細書及び図面の記載並びに技術常識に基づいて当業者が理解できるとはいえないから、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本件レーザー工程により本件第1表面構造を形成することができる程度に明確かつ十分に記載されているということはできない。
(4) 請求人の主張について
ア 請求人の主張の内容
請求人の主張は次のとおりである。
「第1表面構造」の形成は、当業者が明細書の記載に基づいて、複数回の実験によって実現できる本分野の通常の技術である。
本加工過程で利用される装置は市販されている紫外ピコ秒レーザーであり、加工過程では、以下のレーザーパラメータを利用してアレイ式走査を行うことができる。
・100μm辺長の方形光スポットで、光スポット内エネルギー分布は、トップハットスポットと類似しており、13Wのレーザーの出力パワーで、800kHZの周波数で、10psのパルス幅で、3m/sの走査速度。
これらのパラメータは、いずれも当業者が複数回の実験によって得ることができる。
明細書の記載により、サンプルの表面に対しレーザー作用処理によって表面膜層に膜層の破損をもたらし、次に、サンプルに対してアルカリエッチング洗浄を行い、レーザー作用の領域における表面膜層をエッチング洗浄し、表面膜層の下にあるベースを2~3μmの深さにエッチングすると、レーザーとエッチングの総合的な作用の下で、レーザー処理のエッジに遷移領域が形成され、遷移領域には複数のピラミッド形貌が形成される。レーザースポットの複数の回折スポットとピラミッド面からの複数回の乱反射により、ピラミッド表面の光エネルギー分布について、局所的に強化されたり局所的に弱化されたりした領域が形成され、光エネルギーが強い領域に形成されたエッチングピラミッドが小さくなり、光エネルギーが弱い領域に形成されたエッチングピラミッドが大きくなる。
「レーザー工程」は本分野の通常の技術であり、当業者であれば、レーザー工程中のパラメータ制御によって、第1表面構造の複数の第1ピラミッド構造と複数の微細突起構造の寸法、形状を容易に調整することができ、例えば、レーザーエネルギー密度を調整して寸法を変更することができる。
イ 請求人の主張の検討
請求人が主張する、レーザー工程とアルカリエッチングの総合的な作用の下で、レーザー処理のエッジに遷移領域が形成され、遷移領域には複数のピラミッド形貌が形成されることや、レーザースポットの複数の回折スポットとピラミッド面からの複数回の乱反射により、ピラミッド表面の光エネルギー分布について、局所的に強化されたり局所的に弱化されたりした領域が形成され、光エネルギーが強い領域に形成されたエッチングピラミッドが小さくなり、光エネルギーが弱い領域に形成されたエッチングピラミッドが大きくなるとの微細突起構造が形成される機序は、本願の発明の詳細な説明には記載されておらず、特に、レーザー作用の領域にアルカリエッチングを行うこと、すなわち、第1ステップS14において、レーザー工程の次にアルカリエッチングを行うことについてすら記載されていないし、このような微細突起構造が形成される機序が、本願出願時の技術常識であるとも認められない。さらに、請求人の主張するレーザーパラメータについても、発明の詳細な説明には記載も示唆もされていないものであり、当該レーザーパラメータが本願出願時の技術常識であるともいえない。
そして、発明の詳細な説明の記載不足を事後的に補うことにより、当業者が本件第1表面構造を形成できる程度に、発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載されたものであると主張したとしても、拒絶理由は解消されないから、請求人の主張は、前記(3)の結論を左右するものではない。
したがって、請求人の主張は採用することができない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本願は、同法49条4号に該当するから、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-000740