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特許拒絶査定不服審判

2022-007791

可捩発光ダイオードディスプレイモジュール

審判番号
2022-007791
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-100988外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年05月24日
審決日
2023年04月17日
公報発行日
2023年10月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .562-Z (G09F) / P18 .572-Z (G09F) / P18 .575-Z (G09F) / P18 .536-Z (G09F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-100988「可捩発光ダイオードディスプレイモジュール」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 2月 4日出願公開、特開2021- 12359〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 9項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、令和2年6月10日(パリ条約の例による優先権主張 2019年7月4日 台湾)に出願された外国語書面出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。

令和 2年 6月10日 :翻訳文の提出
令和 3年 3月 4日付け:拒絶理由通知書

同年 6月 9日 :意見書、手続補正書の提出

同年 6月 9日 :意見書、手続補正書の再提出

同年 7月28日付け:拒絶理由通知書

同年11月 2日 :意見書、手続補正書の提出

令和 4年 1月31日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)

(同年 2月 8日 :原査定の謄本の送達)

同年 5月24日 :審判請求書、手続補正書の提出

同年 7月11日付け:前置報告書

同年 9月 8日 :上申書の提出

第2 令和4年5月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和4年5月24日にされた手続補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]

1 本件補正の内容

令和4年5月24日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正するものであって、審判請求書において請求人が、本件補正は、本件補正前の請求項1~請求項7を削除して、本件補正前の請求項8以降を新たな請求項1~7と補正する旨説明しているように、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項8の記載を、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正する補正事項を含むものである。下線は補正前の請求項8の記載からの補正箇所を示す。

(1) 本件補正前の請求項8

「【請求項8】
可捩基板と、
前記可捩基板上に配置される回路層と、
前記回路層上に配置され、それぞれ、前記回路層に電気的に接続される複数の発光ダイオード装置であって、前記複数の発光ダイオード装置のそれぞれは、無線通信ネットワークに使用されるトランシーバ、及び駆動回路を備える、複数の発光ダイオード装置と、
各前記複数の発光ダイオードの前記トランシーバに無線接続され、各前記複数の発光ダイオードを無線制御するコントローラと、
を備える可捩発光ダイオードディスプレイモジュール。」

(2) 本件補正後の請求項1

「【請求項1】
可捩基板と、
前記可捩基板上に配置され、正極として機能する第1電極パターンと、負極として機能する第2電極パターンとを含む電極パターン層であって、前記第1電極パターンは、本体部と前記本体部から延伸され平行に配置された複数の指部を備え、前記第2電極パターンは、本体部と前記本体部から延伸され平行に配置された複数の指部を備え、前記第1電極パターンの前記複数の指部と前記第2電極パターンの前記複数の指部とは、交互に相手の電極パターンの指部の間に挿入した状態で配置される、電極パターン層と、
前記電極パターン層上に配置される絶縁層であって、前記絶縁層の縁部の一部に開口が設けられ、前記開口は、前記絶縁層の一部を切除した状態で前記可捩基板の縁部に位置し、前記開口は前記可捩基板上の電極パターン層の一部を露出させ、前記開口の前記縁部が前記開口の側壁に位置する、絶縁層と、
前記絶縁層上及び前記開口の前記側壁上に配置された回路層を備え、前記回路層は、少なくとも電源と接地を提供する回路を含み、前記電源と前記接地を提供する前記回路がそれぞれ正極として機能する前記第1電極パターンと負極として機能する前記第2電極パターンとに接続される回路層と、
前記回路層上に配置され、それぞれ、前記回路層に電気的に接続されると共に、前記回路層及び絶縁層を介して前記可捩基板上に支持された複数の発光ダイオード装置であって、
各前記発光ダイオード装置は、駆動回路と、無線通信ネットワークに使用されるトランシーバと、前記トランシーバに無線接続されるコントローラを備える、複数の発光ダイオード装置と、
を備える可捩発光ダイオードディスプレイモジュール。」

2 本件補正についての当審の判断

(1) 新規事項の追加について

ア 新規事項の追加の有無についての当審の判断の概要

本件補正後の請求項1の記載は、「電極パターン層」と「各前記発光ダイオード装置は、駆動回路と、無線通信ネットワークに使用されるトランシーバと、前記トランシーバに無線接続されるコントローラを備える」構成を同時に有することを特定するものであるところ、この点は、次のイにおいて詳細に説示するとおり、外国語書面の翻訳文の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるから、本件補正は特許法17条の2第3項の規定に違反するものである。

イ 新規事項の追加の有無についての当審の判断

(ア) 第2の実施の形態について

a 外国語書面の翻訳文の段落【0039】、【0040】、【図2】には、次の事項が記載されている。

「【0039】
図2を参照すると、本実施の形態の可捩発光ダイオードディスプレイモジュール20は、可捩基板100と、回路層106と、複数の発光ダイオード装置200と、を備える。複数の発光ダイオード装置200は、回路層106上に配置され、回路層106を用いて互いに電気的に接続される。発光ダイオード装置200は、無線通信ネットワークに用いられるトランシーバ(不図示)と、駆動回路と、を備える。無線通信ネットワークは、Bluetooth(登録商標)通信ネットワーク又は5Gネットワークを含んでよい。換言すれば、本実施の形態において、発光ダイオード装置200は無線通信手段によって制御され得るため、複数の発光ダイオード装置を互いに電気的に接続するために用いられる回路層106は、追加的な電極層を配置せずに、可捩基板100上に配置されてよい。これにより、発光ダイオードディスプレイモジュール20の厚さは、大いに低減され、発光ダイオードディスプレイモジュール20は、比較的簡易な構造を有し得る。
【0040】
本実施の形態において、発光ダイオードディスプレイモジュール20は、コントローラ202をさらに備えてよい。コントローラ202は、各発光ダイオード装置200のトランシーバに無線接続される。従って、各発光ダイオード装置200は、無線制御される。また、コントローラ202は、実際の要求に応じて、(バッテリー、受信機、表示パネル等の)様々な電子要素を含んでよい。本開示は、これに限定されない。」
「【図2】
[図:0001402254000001.jpg]
」

b 外国語書面の翻訳文の段落【0040】、【図2】の記載によると、発光ダイオードディスプレイモジュール20は、コントローラ202を備え、コントローラ202は、各発光ダイオード装置200のトランシーバに無線接続され、当該構成により、各発光ダイオード装置200は、無線制御されている。

したがって、第2の実施の形態においては、コントローラ202がトランシーバを介して発光ダイオード装置を制御しているものと認められる。そして、電力は、回路層106により供給されていると認められる。

(イ) 本件補正後の請求項1について

a 請求人が審判請求書において、本件補正は、補正前の請求項1~請求項7を削除して、本件補正前の請求項8以降(外国語書面の翻訳文の第2の実施の形態に相当する。)を新たな請求項1~7とした旨説明しているように、本件補正後の請求項1は、第2の実施の形態に基づく構成からなる発明であると認められる。

この点、本件補正後の請求項1において、「各前記発光ダイオード装置は、駆動回路と、無線通信ネットワークに使用されるトランシーバと、前記トランシーバに無線接続されるコントローラ」及び「回路層」を備える点において、前記(ア)において考察した第2の実施の形態の構成と整合する。

b 一方、本件補正後の請求項1においては、更に「正極として機能する第1電極パターンと、負極として機能する第2電極パターンとを含む電極パターン層であって、前記第1電極パターンは、本体部と前記本体部から延伸され平行に配置された複数の指部を備え、前記第2電極パターンは、本体部と前記本体部から延伸され平行に配置された複数の指部を備え、前記第1電極パターンの前記複数の指部と前記第2電極パターンの前記複数の指部とは、交互に相手の電極パターンの指部の間に挿入した状態で配置される、電極パターン層」を含む。

c 第2の実施の形態が「電極パターン層」を含まないことは、外国語書面の翻訳文の段落【0039】に「換言すれば、本実施の形態において、発光ダイオード装置200は無線通信手段によって制御され得るため、複数の発光ダイオード装置を互いに電気的に接続するために用いられる回路層106は、追加的な電極層を配置せずに、可捩基板100上に配置されてよい。」と記載されていることからも、明らかである。

d さらに、第2の実施の形態においては、既にトランシーバを介してコントローラによって無線接続し、各発光ダイオード装置を制御する構成を採用しており、回路層106により各発光ダイオードへ電力を供給していると認められるから、コントローラによる制御のため又は各発光ダイオード等への電力の供給のために更に電極パターン層の構成を採用することは必要なく、その一方で、外国語書面の翻訳文の【発明が解決しようとする課題】を記載した段落【0003】には、「本開示は、駆動回路を備える発光ダイオード装置を備える、可捩発光ダイオードディスプレイモジュールを提供し、これにより、可捩発光ダイオードディスプレイモジュールの厚さを低減可能である。」と示されているところ、電極層を新たに備えることは、本願の外国語書面の翻訳文に記載された「発明が解決しようとする課題」とは反する結果を招来するものとなるから、第2の実施の形態において「電極パターン層」を含むことは、本願の外国語書面の翻訳文の記載に接した当業者は想定しないことである。

e したがって、本件補正後の請求項1は、外国語書面の翻訳文の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものである。

(ウ) 請求人の主張について

a 請求人の主張

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請求人は、審判請求書において次の(a)に示す主張(請求人の主張1)を、また、令和4年9月8日に提出された上申書において、後記(b)から(d)に示す主張(請求人の主張2から請求人の主張4)をしている。

(a) 請求人の主張1

請求項1の構成要素b(「前記可捩基板上に配置され、・・・電極パターン層と、」)は段落【0027】を、構成要素f(「各前記発光ダイオード装置は、・・・複数の発光ダイオード装置と、」)は段落【0040】をそれぞれ補正の根拠としており、補正は新規事項の追加とはならない。

(b) 請求人の主張2

外国語書面の翻訳文の段落【0039】に、「回路層106は、追加的な電極層を配置せずに、可捩基板100上に配置されてよい。」と記載されているが、当該段落に「配置されてよい。」と記載されるように、追加的な電極層を配置しない構成を採用できる可能性を意味するものであり、追加的な電極層を配置しない技術内容に限定するものではない。

(c) 請求人の主張3

外国語書面の翻訳文の段落【0042】に、「本開示は、上記の実施の形態を参照して説明したが、実施の形態は本開示を限定することを意図しない。当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、変更例及び変形例を作成することができる。従って、本発明の保護範囲は、付される請求の範囲によって画定される。」と記載されるように、本発明においては、第1実施形態と第2実施形態を組み合わせるようなことも想定されている。

(d) 請求人の主張4

外国語書面の翻訳文の段落【0041】には、「また、第1の実施の形態と同様に、発光ダイオードディスプレイモジュール20は、発光ダイオード装置108の上面に配置される保護層112をさらに備えてよく、代替的に、回路層106上に及び/又は発光ダイオード装置108の側壁上に配置される保護層114を備えてよい。」というように、第1実施形態の回路層の構成を第2実施形態に採用できることも示唆されており、審判請求時に補正された請求項1に記載された事項は、外国語書面の翻訳文の記載から自明な事項である。

b 請求人の主張に対する当審の判断

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次の(a)から(d)までに説示するように、請求人の主張1から請求人の主張4は、いずれも採用することできず、前記(イ)eの結論を左右するものではない。

(a) 請求書の主張1について

請求人が主張するように、構成を個別にみれば、構成要素bは段落【0027】に、構成要素fは段落【0040】にそれぞれ根拠を求めることが一見可能なように見受けられるものの、前記(イ)において詳細に説示したように、外国語書面の翻訳文の記載に接した、技術的な意味を考える当業者は、構成要素b及び構成要素fが同時に存在するようなものを想定しないから、請求人の主張1は採用できない。

(b) 請求人の主張2について

外国語書面の翻訳文の段落【0039】には、「発光ダイオード装置200は、無線通信ネットワークに用いられるトランシーバ(不図示)と、駆動回路と、を備える。・・・換言すれば、本実施の形態において、発光ダイオード装置200は無線通信手段によって制御され得るため、複数の発光ダイオード装置を互いに電気的に接続するために用いられる回路層106は、追加的な電極層を配置せずに、可捩基板100上に配置されてよい。」と記載されており、「・・・されてよい。」と記載されているからといって、外国語書面の翻訳文の記載に接した、技術的な意味を考える当業者は、構成要素b及び構成要素fが同時に存在するようなものを想定しないことは、前記(イ)において詳細に説示したとおりであるから、請求人の主張2は採用できない。

(c) 請求人の主張3について

外国語書面の翻訳文の段落【0042】の記載は、「本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、変更例及び変形例を作成することができる。」とあるように、あくまで「本発明の精神及び範囲から逸脱」しない範囲内での構成は想定されるものの、本件補正後の請求項1は、必要ないものを、本願に記載された発明が解決しようとする課題とは反する結果を招来するように組み合わせるものであるから、本発明の精神及び範囲から逸脱するものであるというべきである。したがって、請求人の主張3は採用できない。

(d) 請求人の主張4について

外国語書面の翻訳文の段落【0041】には、「保護層112」及び「保護層114」を備えて良いことが記載されているだけであって、第2の実施の形態において電極層を更に備えることまで示唆するものではないから、請求人の主張4は採用できない。

ウ 新規事項の追加の有無の判断についてのまとめ

以上検討のとおり、本件補正は、外国語書面の翻訳文の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるから、本件補正は、外国語書面の翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法17条の2第3項の規定に違反するものである。

(2) 本件補正の目的について

前記(1)において検討したとおり、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に違反しているものであるが、更に進めて、本件補正が仮に同項の規定に適合するものとして以下、補正の目的要件について検討する。

ア 本件補正による請求項8の限定内容

(ア) 本件補正は、本件補正前の請求項8について、次のa及びbの限定をすることを含むものである。

a(a) 「正極として機能する第1電極パターンと、負極として機能する第2電極パターンとを含む電極パターン層であって、前記第1電極パターンは、本体部と前記本体部から延伸され平行に配置された複数の指部を備え、前記第2電極パターンは、本体部と前記本体部から延伸され平行に配置された複数の指部を備え、前記第1電極パターンの前記複数の指部と前記第2電極パターンの前記複数の指部とは、交互に相手の電極パターンの指部の間に挿入した状態で配置される、電極パターン層」を備えることを限定すること。

(b) 上記(a)の限定を行った上で、「前記電極パターン層上に配置される絶縁層であって、前記絶縁層の縁部の一部に開口が設けられ、前記開口は、前記絶縁層の一部を切除した状態で前記可捩基板の縁部に位置し、前記開口は前記可捩基板上の電極パターン層の一部を露出させ、前記開口の前記縁部が前記開口の側壁に位置する、絶縁層」を備えることを限定すること。

b 前記aの限定を行った上で、本件補正前の請求項8の発明特定事項である「回路層」について、「前記絶縁層上及び前記開口の前記側壁上に配置され」、「少なくとも電源と接地を提供する回路を含み、前記電源と前記接地を提供する前記回路がそれぞれ正極として機能する前記第1電極パターンと負極として機能する前記第2電極パターンとに接続され」、かつ、

「複数の発光ダイオード装置」について、「前記回路層及び絶縁層を介して前記可捩基板上に支持された」ことを限定すること。

イ 補正の目的要件についての検討

(ア)a 「電極パターン層」は、本件補正前の発明特定事項にはなく、その作用(機能)・効果は不明であり、本件補正前の発明特定事項を下位概念に限定するものではない。したがって、本件補正による請求項8についての補正は、特許法36条5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであるとはいえない。

b そして、「電極パターン層」の作用(機能)・効果は不明であるから、本件補正前の請求項8に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、解決しようとする課題が同一であるともいえない。

c よって、本件補正による請求項8についての補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当するとはいえない。

d なお、本件補正による請求項8についての補正が、特許法17条の2第5項1号、3号、4号に規定する「第三十六条第五項に規定する請求項の削除」、「誤記の訂正」及び「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」のいずれにも該当しないことは、明らかである。

ウ 本件補正の目的についての当審の判断のまとめ

以上検討のとおり、本件補正による請求項8についての補正は、特許法17条の2第5項各号のいずれにも該当せず、同項の規定に適合しない。

(3) 独立特許要件について

前記(2)において検討したとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しないものの、更に進めて、仮に特許法17条の2第5項2号に該当するとして、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討を行う。

ア 本件補正発明

本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

イ 実施可能要件(委任省令要件)違反の検討

(ア) 本件補正発明は、「各前記発光ダイオード装置は、駆動回路と、無線通信ネットワークに使用されるトランシーバと、前記トランシーバに無線接続されるコントローラを備える」ものであって、「前記絶縁層上及び前記開口の前記側壁上に配置された回路層を備え、前記回路層は、少なくとも電源と接地を提供する回路を含み、前記電源と前記接地を提供する前記回路がそれぞれ正極として機能する前記第1電極パターンと負極として機能する前記第2電極パターンとに接続される回路層」を含み、さらに、「正極として機能する第1電極パターンと、負極として機能する第2電極パターンとを含む電極パターン層であって、前記第1電極パターンは、本体部と前記本体部から延伸され平行に配置された複数の指部を備え、前記第2電極パターンは、本体部と前記本体部から延伸され平行に配置された複数の指部を備え、前記第1電極パターンの前記複数の指部と前記第2電極パターンの前記複数の指部とは、交互に相手の電極パターンの指部の間に挿入した状態で配置される、電極パターン層」を含むものである。

(イ) 本件補正発明は、コントローラと無線接続する「トランシーバ」及び各発光ダイオードに電力を供給していると認められる「回路層」を備えるところ、コントローラによる制御のため又は各発光ダイオード等への電力の供給のために更に電極パターン層の構成を含むことは必要なく、その一方で、本願の明細書の【発明が解決しようとする課題】を記載した段落【0003】には、「本開示は、駆動回路を備える発光ダイオード装置を備える、可捩発光ダイオードディスプレイモジュールを提供し、これにより、可捩発光ダイオードディスプレイモジュールの厚さを低減可能である。」と示されているところ、電極層を新たに備えることは、本願の明細書に記載された「発明が解決しようとする課題」とは反する結果を招来するものとなるから、「電極パターン層」を含むことの技術上の意義は不明である。

(ウ) よって、本願の明細書の発明の詳細な説明は、本件補正発明について、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することにより当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

(エ) したがって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が本件補正発明について、経済産業省令で定めるところにより当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、本件補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができない。

ウ 独立特許要件の判断についてのまとめ

以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法36条4項1号で委任する特許法施行規則24条の2に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4) 本件補正の適否のまとめ

前記(1)において検討したとおり、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に違反しているから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

また、前記(2)において検討したとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項各号のいずれにも該当せず、同項の規定に適合しないから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

さらに、前記(3)において検討したとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~14に係る発明は、令和3年11月2日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1の記載は、次のとおりである。以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。

「【請求項1】
可捩基板と、
前記可捩基板上に配置され、第1電極パターンと第2電極パターンとを含む電極パターン層と、
前記電極パターン層上に配置される絶縁層であって、前記絶縁層の縁部に開口が設けられ、前記開口は、前記可捩基板の縁部に位置し、前記電極パターン層の一部を露出させる、絶縁層と、
前記絶縁層上及び前記開口の側壁上に配置され、少なくとも電源と接地を提供する回路を含み、前記電源と前記接地を提供する前記回路がそれぞれ前記電極パターン層の前記第1電極パターンと前記第2電極パターンとに接続される回路層と、
前記回路層上に配置され、それぞれ、前記回路層に電気的に接続される複数の発光ダイオード装置であって、各前記発光ダイオード装置は、駆動回路を備える、複数の発光ダイオード装置と、
コントローラと、
前記コントローラを前記電極パターン層の露出部分に接続する接続装置と、
を備える可捩発光ダイオードディスプレイモジュール。」

2 原査定における拒絶の理由の概要

原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由2の概要は、次のとおりである。

(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。

記

この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に記載の発明のディスプレイモジュールの動作原理、すなわち、発光ダイオード装置の仕様、電極パターン層の役割、回路層の役割、及び、これらの接続関係が不明であり、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるとは認められない。

出願人は意見書において、「一般的に市販されているLEDは6つのピンを有」し、「正と負の電圧」、「周波数信号」、「データ信号」を受け取るものであり、電極層102と回路層106はこれらの電圧および信号を供給するものであることが理解できると主張している。

しかしながら、この出願の発明の詳細な説明には、上記の点はなんら記載も示唆もされていない。

仮に、片方、例えば、発光ダイオード装置108が「LEDは6つのピンを有」し、「正と負の電圧」、「周波数信号」、「データ信号」を受け取るものであることが明記されていれば、もう一方の、「電極層102と回路層106はこれらの電圧および信号を供給する」ものとしたいという推定が働くかもしれないが、本願のように、いずれについても明記がされていないと、全体の構成を理解するための手がかりがなく、全く理解できない。

3 判断

(1) 本願発明における「ディスプレイモジュール」の意味について

ア 本願の明細書には、次の記載がある。

「【技術分野】
【0001】
本開示は、ディスプレイモジュールに関し、具体的には、可捩発光ダイオードディスプレイモジュールに関する。
【発明の概要】
【0002】
ディスプレイ装置の適用が徐々に多様化するにつれて、メッセージ又は図形表示用の発光ダイオードディスプレイ装置は、様々な分野にますます適用されるようになった。一般的に、発光ダイオードディスプレイ装置は、基板と、電極と、絶縁層と、複数の発光ダイオード装置と、発光ダイオード装置を互いに接続し、駆動させる回路層と、を備える。発光ダイオード装置を互いに接続し、駆動させるために、発光ダイオードディスプレイ装置には複数の回路層が配置される必要があり、各回路層には導電体が配置されて回路層を電気的に接続する。このため、発光ダイオードディスプレイ装置には一定の厚さが要求される。従って、現在、小型の発光ダイオードディスプレイ装置に対する要求は、容易に満たすことができない。また、以上の理由により、発光ダイオードディスプレイ装置の製造工程は、複雑であり、容易に簡略化できない。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、駆動回路を備える発光ダイオード装置を備える、可捩発光ダイオードディスプレイモジュールを提供し、これにより、可捩発光ダイオードディスプレイモジュールの厚さを低減可能である。」
「【発明の効果】
【0015】
上記に基づくと、本開示の可捩発光ダイオードディスプレイモジュールにおいて、絶縁層の開口が外部装置に接続される接続点を露出させることができるため、可捩基板上に配置される電極パターン層は、絶縁層によって、簡単に損傷しないように保護され得る。また、開口は絶縁層の縁部に位置して可捩基板の縁部に配置される接続点を露出させるため、外部装置は接続点に容易に接続される。さらに、本開示の可捩発光ダイオードディスプレイモジュールにおいて、可捩発光ダイオード装置は駆動回路を備えるため、複数の発光ダイオード装置を電気的に接続するための回路層は、1つのみでよい。従って、発光ダイオードディスプレイモジュールの厚さは、大いに低減される。」

イ 前記段落【0002】の記載を参照すると、本願における可捩発光ダイオードディスプレイモジュールは、「メッセージ又は図形表示用の発光ダイオードディスプレイ装置」として利用可能なものであり、「様々な分野にますます適用されるようになった」発光ダイオードディスプレイモジュールであり、発光ダイオード装置を互いに接続し、駆動させるために、発光ダイオードディスプレイ装置には複数の回路層が配置される必要があり、発光ダイオードディスプレイ装置には一定の厚さが要求されるところ、当該要求を軽減して、発光ダイオードディスプレイモジュールの厚さを低減することを解決しようとする課題とする発明であると認められる。

ウ そうすると、本願にいうところの、「発光ダイオードディスプレイモジュール」は、単に複数の発光ダイオードが一斉に点灯したり消灯したりするような、照明装置のようなものをいうのではなく、ドットマトリックス表示に代表されるような、表示が可変である、可変表示型の発光ダイオードディスプレイモジュールを前提としていると認められる。

(2) 各発光ダイオードに対する少なくとも三つの配線の必要性

ア 一般に、発光ダイオードを発光させるためには、電力を供給する必要があるから、正極と負極の二つの端子が必要である。

イ また、可変表示型の発光ダイオードディスプレイモジュールとするためには、各発光ダイオードの点灯を独立に制御できるようにすることが必要であるから、当該信号に対応する端子が必要である。

ウ したがって、可変表示型の発光ダイオードディスプレイモジュールとするためには、互いに短絡していない、正極、負極、信号線に相当する、三つの配線が必要であり、このうち、正極と負極は各発光ダイオードで共通化することは可能であるものの、信号線に相当する配線は、各発光ダイオード間で独立に制御できるための構成が必要である。

(3) 実施可能要件の充足に関する当審の判断

ア 電極パターン層について

(ア) 本願の明細書及び図面には次の記載がある。

「【0025】
図1Aは、本開示の第1の実施の形態に係る可捩発光ダイオードディスプレイモジュールの概略断面図である。図1Bは、本開示の第1の実施の形態に係る可捩発光ダイオードディスプレイモジュールの電極パターン層の概略上面図である。図1Cは、本開示の第1の実施の形態に係る可捩発光ダイオードディスプレイモジュールの概略上面図である。図1Aは、図1CのI-I’線に沿って図示され、表現の明確化のために、保護層、コントローラ、及び接続装置は、図1Cから省略されている。
【0026】
図1A、図1B、及び図1Cを参照すると、本実施の形態の可捩発光ダイオードディスプレイモジュール10は、可捩基板100と、電極パターン層102と、絶縁層104と、回路層106と、複数の発光ダイオード装置108と、を備える。可捩基板100は、可撓、可捩、可折等の特徴を有している。本実施の形態において、可捩基板100は、ポリウレタン(PU)基板、シリコン基板、ゴム基板、又は別の好適な基板であってよい。
【0027】
電極パターン層102は、可捩基板100上に配置される。本実施の形態において、図1Bに示されるように、電極パターン層102は、電極102a及び電極102bを含む指電極を構成する。電極102a及び電極102bは、それぞれ、正極及び負極として機能し得る。電極102a及び電極102bは、それぞれ、本体部と、本体部から延伸する指部と、を備え、電極102aの指部と電極102bの指部とは交互に配置される。しかしながら、本開示は、これに限定されない。別の実施の形態において、電極パターン層102は、実際の要求に応じて様々なパターンを構成してよい。電極パターン層102の材料は、任意の好適な導電材料であってよく、(散布、スクリーンプリント、ロール・ツー・ロール・プリント、又は3Dプリント等の)任意の好適な手法によって可捩基板100上に形成されてよい。」
「【図1A】
[図:0001402254000002.jpg]
」
「【図1B】
[図:0001402254000003.jpg]
」

(イ) 前記(ア)に摘記した技術事項から、本願の第1の実施の形態においては、電極パターン層102は、それぞれ、正極及び負極として機能し得る、本体部と本体部から延伸する指部とを備える電極102a及び電極102bを含むことが理解される。

イ 回路層について

(ア) 本願の明細書及び図面には次の記載がある。

「【0028】

絶縁層104は、電極パターン層102上に配置される。絶縁層104の縁部には、開口104aが設けられる。開口104aは、可捩基板100の縁部に位置し、電極パターン層102の一部を露出させる。本実施の形態において、絶縁層104の角(図1Cの左下の角)に開口104aが設けられ、開口104aは、可捩基板100の角(図1Cの左下の角)に位置し、電極102aの一部及び電極102bの一部を露出させる。露出する電極102aの一部及び電極102bの一部は、外部装置への接続点として機能してよい。別の実施の形態において、代替的に、必要な接続点の位置が露出していて容易に接続可能であれば、開口104aは角に配置されなくてもよい。絶縁層104の材料は、任意の好適な絶縁材料であってよく、(散布、スクリーンプリント、ロール・ツー・ロール・プリント、又は3Dプリント等の)任意の好適な手法によって可捩基板100上に形成されて電極パターン層102を覆ってよい。

【0029】

回路層106は、絶縁層104上及び開口の側壁上に配置される。また、回路層106は、開口104aの側壁から露出し、開口104aの側壁に沿って開口104aの底部へと延伸し、電極パターン層102に接続される。これにより、開口104aによって露出する接続点は、外部装置に接続され、外部装置は、電圧を印加し、回路層106に電気的に接続される電子要素を開始させる。さらに、回路層106は、回路層106に電気的に接続される複数の電子要素を互いに接続するために使用され得る。回路106の構成は、図1Cに限定されず、別の実施の形態において、回路106の構成は、実際の要求に応じて調整されてよい。回路層106の材料は、任意の好適な導電材料であってよく、(散布、スクリーンプリント、ロール・ツー・ロール・プリント、又は3Dプリント等の)任意の好適な手法によって絶縁層104上に形成されてよい。

【0030】

発光ダイオード装置108は、回路層106上に配置され、それぞれ、回路層106に電気的に接続される。さらに、各発光ダイオード装置108は、駆動回路(不図示)を備える。これにより、外部装置が電圧を印加した時、発光ダイオード装置108は電圧によって開始されて発光してよい。また、発光ダイオード装置108は、マイクロコントローラ(MCU)を追加的にさらに備えてよく、これにより、外部装置(不図示)は、さらに、発光ダイオード装置108を制御してよい。

「【図1C】
[図:0001402254000004.jpg]
」

(イ) 前記(ア)に摘記した技術事項から、本願の第1の実施の形態においては、回路層106は、電極パターン層102に接続され、さらに、外部装置に接続され、外部装置は、電圧を印加し、回路層106に電気的に接続される電子要素を開始させること、及び、各発光ダイオード装置108は、回路層106に電気的に接続されるところ、並列に接続されていることが理解される。

ウ 電極パターン層と回路層についての考察と実施可能要件違反

(ア) 前記ア(イ)及び上記イ(イ)をまとめると、本願の第1の実施の形態においては、それぞれ、正極及び負極として機能し得る、本体部と本体部から延伸する指部とを備える電極102a及び電極102bは、互いに絶縁されているが、回路層106は、電極102a及び電極102bの少なくともいずれかには接続され、各発光ダイオード装置108は、回路層106に並列に接続されていることが理解される。

(イ) そうすると、可変表示型の発光ダイオードディスプレイモジュールとするためには、互いに短絡していない、正極、負極、信号線に相当する、三つの配線が必要であり、かつ、信号線に相当する配線は、各発光ダイオード装置間で独立に制御できるための構成が必要であるところ、これを実現していることは、認められない。

(ウ) そして、他に、各発光ダイオード間で独立に制御できるための構成を理解できる記載は見当たらない。

(エ) したがって、本願の明細書は、本願発明について、可変表示型の発光ダイオードディスプレイモジュールとして使用し得る程度の技術情報の開示がされているとは認められないから、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、本願発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとは認められない。

第4 むすび

以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法36条4項1号の規定により、特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-007791

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