特許拒絶査定不服審判
2022-007412
インテリジェント運転制御方法及び装置、電子機器
- 審判番号
- 2022-007412
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-568236
- 請求日
- 2022年05月18日
- 審決日
- 2023年01月05日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】センスタイム グループ リミテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人前田特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 山本 信平
- 審判官 水野 治彦
- 審判官 石黒 雄一
- 分類
- P18 .121-Z (G08G) / P18 .575-Z (G08G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-568236「インテリジェント運転制御方法及び装置、電子機器」拒絶査定不服審判事件〔令和2年12月24日国際公開、WO2020/252971、令和3年11月18日国内公表、特表2021-531545〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)9月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2019年(令和元年)6月19日(CN)中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって、令和2年12月7日付けで手続補正書が提出され、令和3年12月6日付け(発送日:令和3年12月14日)で拒絶の理由が通知され、令和4年1月11日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、令和4年2月9日付け(発送日:令和4年2月15日)で拒絶査定がされ、これに対し、令和4年5月18日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出されたものである。
第2 令和4年5月18日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年5月18日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について
(1)本件補正前の令和4年1月11日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
電子機器が実行する、インテリジェント運転制御方法であって、
車両の所在する路面の路面画像を取得することと、
取得された路面画像に基づき、前記路面画像における路面シーンの種類を確定することと、
確定された前記路面シーンの種類に応じて、前記車両に対してインテリジェント運転制御を行うこととを含み、
確定された前記路面シーンの種類に応じて、前記車両に対してインテリジェント運転制御を行うことは、
確定された前記路面シーンの種類、及び予め設定された、定量化後の、路面シーンの種類と車両の速度制御パラメータ及びブレーキ力制御パラメータとの対応関係に基づいて、
前記車両の速度制御パラメータ及びブレーキ力制御パラメータを確定することと、
確定された前記車両の速度制御パラメータ及びブレーキ力制御パラメータに基づき、前記車両の駆動部材及び/又はブレーキ部材を制御することとを含む、
インテリジェント運転制御方法。」
(2)そして、本件補正により、上述の本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおり補正された(下線は、請求人が補正箇所を示すために付したものである。)。
「【請求項1】
電子機器が実行する、インテリジェント運転制御方法であって、
車両の所在する路面の路面画像を取得することと、
取得された路面画像に基づき、前記路面画像における路面シーンの種類を確定することと、
確定された前記路面シーンの種類に応じて、前記車両に対してインテリジェント運転制御を行うこととを含み、
確定された前記路面シーンの種類に応じて、前記車両に対してインテリジェント運転制御を行うことは、
確定された前記路面シーンの種類、及び予め設定された、定量化後の、路面シーンの種類と車両の速度制御パラメータ及びブレーキ力制御パラメータとの対応関係に基づいて、
前記車両の速度制御パラメータ及びブレーキ力制御パラメータを確定することと、
確定された前記車両の速度制御パラメータ及びブレーキ力制御パラメータに基づき、前記車両の駆動部材及び/又はブレーキ部材を制御することとを含み、
取得された路面画像に基づき、前記路面画像における路面シーンの種類を確定することは、
取得された路面画像をトリミングし、トリミング後の路面画像を取得することであって、前記車両の所在する路面が前記トリミング後の路面画像に占める割合は、前記車両の所在する路面が前記取得された路面画像に占める割合よりも大きいことと、
前記トリミング後の路面画像をニューラルネットワークに入力し、前記ニューラルネッワークを用いて前記路面画像における路面シーンの種類を確定することであって、前記ニューラルネットワークが、路面シーンの種類をラベル付けた路面画像からなる画像集合を用いて訓練されたものであることと、を含む
インテリジェント運転制御方法。」
2.補正の適否
(1)独立特許要件について
本件補正は、本件補正は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものであって、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「取得された路面画像に基づき、前記路面画像における路面シーンの種類を確定する」ことについて「取得された路面画像をトリミングし、トリミング後の路面画像を取得することであって、前記車両の所在する路面が前記トリミング後の路面画像に占める割合は、前記車両の所在する路面が前記取得された路面画像に占める割合よりも大きいことと、
前記トリミング後の路面画像をニューラルネットワークに入力し、前記ニューラルネットワークを用いて前記路面画像における路面シーンの種類を確定することであって、前記ニューラルネットワークが、路面シーンの種類をラベル付けた路面画像からなる画像集合を用いて訓練されたものであることと、を含む」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1(以下、「本件補正発明」という。)が、同法同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記1.(2)に記載したとおりのものである。
イ 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である中国特許出願公開第107977641号明細書(以下、「引用文献1」という。)の段落[0001]、[0021]ないし[0038]、[0055]ないし[0059]、[0063]ないし[0082]、[0088]ないし[0098]、[0111]ないし[0121]及び図面(特に、図2ないし図5及び図8を参照。)には次の事項が大略記載されている。
ここで、当審で作成した仮訳は以下のとおりである(下線は、当審が付したものである。以下同様。)。
(ア)「[0001] 本発明はインテリジェントな運転技術分野に関し、特にインテリジェント識別地形の方法、装置、車載端末および車両に関する。」
(イ)「[0021] 本発明の実施例はインテリジェント識別をする地形装置を提供し、該装置は次のものを含む。画像と
[0022] 車両の前方運転領域における所与の運転範囲の画像を獲得する取得ユニット;
[0023] 画像から路面の特徴を抽出する特徴取得ユニット;
[0024] 路面の抽出された特徴に基づいて路面のタイプを判断し、車両に路面のタイプに従って対応する運転戦略を選択させるタイプ判断ユニット;
[0025] 装置は更に、選択可能に以下の分割ユニットを含んでもよく、
[0026] 分割ユニットは、画像から地面領域を分割するために、ディープニューラルネットワークに基づいて画像に関してピクセル分析し、
[0027] 特徴取得ユニットは、ディープニューラルネットワークに基づいて地面領域から路面の特徴を抽出する。
[0028] 分割ユニットは、選択可能に以下のものを含む:画像中の地面領域、天空領域と、立体物を獲得するために、ディープニューラルネットワークに基づいて画像に関してピクセル分析する分割サブユニット;
[0029] 地面領域に位置する立体物を除去する除去サブユニット;
[0030] 完全な地面領域を獲得するために、地面領域に位置する立体物の除去により形成する空洞に画像補償を実行する補償サブユニット;
[0031] 選択的に、補償サブユニットは、地面領域内にあり地面領域の立体物に近接する領域の画像特徴に基づいて空洞に関する補償を実行してもよい。
[0032] 本発明の実施例は車両に応用される車載端末を提供する。車載端末は次のものを含む:カメラとプロセッサ
[0033] 車両の前方運転領域における所与の運転範囲の画像を獲得するカメラ;
[0034] 画像から路面の特徴を抽出し、路面の抽出された特徴に基づいて路面のタイプを判断し、車両の車両制御ユニットに路面のタイプを送信し、車両制御ユニットに路面のタイプに従って対応する運転戦略を選択し車両を制御させるプロセッサ;
[0035] プロセッサは、画像を分割して地面領域を獲得するために、ディープニューラルネットワークに基づいて画像をピクセル分析し、ディープニューラルネットワークに基づいて地面領域から路面の特徴を抽出してもよい。
[0036] 本発明の実施例は、車載端末と路面のタイプに従って対応する運転戦略を選択するべく車両を制御する車両制御ユニットを含む車両が更に提示される。
[0037] 従来技術と比較して、本発明は少なくとも以下の利点を有する。
[0038] はじめに、車両の前方運転領域における所与の運転範囲の画像が獲得される。次に、路面の特徴が画像から抽出され、路面の抽出された特徴に基づいて路面のタイプが判断される。これにより、車両に路面のタイプに従って対応する運転戦略を選択させる。」
(ウ)「[0055] 第1の実施形態
[0056] 図1を参照する。該図は本実施例に係るインテリジェント識別地形方法のフローチャートである。
[0057] 本実施例に係るインテリジェント識別地形方法は、具体的に以下のステップを含む。
[0058] S101:車両の前方運転領域における所与の運転範囲の画像の獲得。
[0059] 理解されるように、所与の運転範囲を過度に大きく設定する必要はなく、一般的に設置される車両の前方の運転方向に所定の幅及び所定の距離、例えば、車両の前方の左右10メートルの幅、前方20メートル以内であればよい。
[0060] 本実施例では、所与の運転範囲を伴う様々なタイプの車両に対して、様々な画像獲得範囲が設定可能であり、もって様々な車両の構造に適応し、理想的な画像が獲得され、後続の画像処理を実行して正確なデータを獲得する。
[0061] 車両に含まれるタイプの例:オフロード車両、乗用車、トラック、バン等。
[0062] オフロード車両の全体構造は大きく、想定的に乗用車の構造は比較的小さく、上記の二つの異なるタイプの車両に対応した前方運転領域の所与の運転範囲を設定する際には、個々の特徴に基づいて適応的な調整をし、合理的な所与の運転範囲を設定する。
[0063] 画像はバイナリ画像、グレースケール画像或いはカラー画像でもよく、本実施例で具体的に限定されない。
[0064] 車両の前方運転領域における所与の運転範囲の画像を獲得する具体的な方式として、車両の前方に、カメラ、ドライブレコーダなどを設置することができる。
[0065] S102:画像中の路面の特徴の抽出。
[0066] 本実施例中の路面の特徴は、車両が現下駆動する地形の特徴を示し、様々な地形は、様々な路面の特徴に対応する。
[0067] 路面の特徴は、路面における、色、形状、テクスチャ等でもよい。
[0068] 例えば、ハイウエイ、砂、雪、泥、及び草等の様々な地形は、路面における様々な色、形状、及びテクスチャに対応する。
[0069] 従って、車両が現下駆動する地形は、路面の特徴を抽出することにより特定できる。実際の利用例では、上述した任意の一つ若しくはそれ以上の路面の特徴が抽出されるが、それらに限定されず、多くの路面の特徴を抽出し、最新の地形を正確に特定することができる。
[0070] S103:路面の抽出された特徴に基づく路面のタイプの判断、路面のタイプに従って対応する運転戦略の選択。
[0071] ステップS102に記載されるとおり、地形は、ハイウエイ、砂、雪、泥、及び草地等に分けられ、様々な地形は様々な現下駆動する路面の特徴を示すため、抽出した車両が現下駆動する路面の特徴に基づいて路面のタイプを判断し、車両は路面のタイプに従って自動的に対応する運転戦略を選択できる。
[0072] 本実施例では、様々なタイプの路面の特徴が前もって抽出され、かつ路面の各々のタイプに対応する特徴サンプルセットによりトレーニングされ、車両が現下駆動する路面のタイプを判断する際、抽出された特徴を特徴サンプルセットの特徴と適合させ、適合結果によって路面のタイプが判断される。
[0073] 当然、実際の利用例では、他の判断の方式が用いられてもよく、本実施例では限定されない。
[0074] 運転戦略の分類は地形の分類に対応する。例えば、現在の地形がハイウエイと判断される場合はハイウエイと適合する運転戦略が選択され、;現在の地形が雪であると判断される場合は雪と適合する運転戦略が選択される。異なる運転戦略はステアリングシステム、電子安定制御システム、及びシャーシサスペンションシステムなどの、多数のシステムを調整することにより得られ、様々な地形に適応し、車両への損傷を防ぎ、燃料を節約し、運転安全性が保証され、事故を防ぐ。例えば、雪上を駆動する場合、車両は減速され、スリップや横滑りを防ぐ。
[0075] 具体的な運転戦略は、地形及び車両のタイプに従って選択され得ることが理解され得るが、本実施例では詳細には説明しない。
[0076] 本発明が提供する方法により、車両の前方運転領域の画像が自動的に獲得され、路面の地形を反映する特徴を抽出し、抽出した特徴に基づいて、路面のタイプが判断される。ドライバが、眼により地形を観察し、機能ボタンを手動で選択することにより運転戦略を変更する必要は無い。これにより、車両は路面のタイプに従って対応する運転戦略を自動的に選択し、車両が現下駆動する地形を路面の特徴を抽出と判断することにより、をインテリジェントにより特定され、一つの態様では、車両の地形への適応可能性は大きく向上して運転経験が改善され、別の態様では、ドライバが車両上でスイッチング操作を実行するときに生じる安全性リスクが避けられる。
[0077] 上記では第1の実施例に係るインテリジェント識別地形方法を説明したが、以下では第2の実施形態と併せて第1の実施例のS102の具体的な実現を詳細に説明する。
[0078] 第2実施例
[0079] 図2Aを参照すると、この図は本実施例が提供するS102の具体的な実現のフローチャートである。
[0080] 以下のステップを含む。
[0081] 実施例1中のS102は以下を含む。
[0082] S201:ディープニューラルネットワークに基づいて画像に関してピクセル分析が実行され、画像を分割して地面領域を獲得する。」
(エ)「[0088] 実際の適用では、車両の前方運転領内でその他の車両、及び/又は歩行者などの障害物が存在する可能性は不可避であり、後続のステップで収集される画像情報の正確性及び一意性を保証するため、路面の安定した信頼性のある特徴を獲得する本実施例は選択的処理手法が提示され、具体的には、
[0089] ディープニューラルネットワークに基づいて画像に関してピクセル分析を実行し、画像における、地面領域、天空領域、及び立体物を獲得する。
[0090] 地面領域に位置する立体物を取り除く。
[0091] 立体物を取り除いた後の地面領域に形成する空洞に画像補償を行い、完全な地面領域を獲得する。
[0092] 実際の適用で、地面領域の特徴を抽出するために、はじめに画像中の地面領域、天空、及び天空物に画像分割されて、画像分割の目的は画像中の異なる目標に分類することであり、対象画像に対する分析により、その境界を画定し、異なる目標の分割を実現する。
[0093] 具体的な実現では、はじめに撮影されたイメージ画像がディープニューラルネットワーク内にインプットされ、画像中のピクセルを分類し、これにより天空領域、地面領域、及び立体物を分割し、地面領域の特徴を正確に抽出する。
[0094] 実際の適用で、カメラにより撮影される画像は、通常、地面、天空及立体物を含み、路面の特徴を抽出するとき、空領域及び立体物が路面の特徴の抽出精度に影響する画像の天空領域及び立体物を避けることは、はじめに画像内の天空領域及び地面領域内の立体物を取り除き、画像により提示される特徴は地面領域の特徴であることを保証し、路面の特徴を抽出への信頼を提供する。
[0095] 立体物を取り除いた後、地面領域の空洞に画像補償をする必要があり、比較的に完全な画像を獲得するため、本実施例では、空洞を補償する選択的可能な実現方式が提供され、具体的に、地面領域に位置する立体物に近接する地面領域内に在る領域の画像特徴に基づいて空洞への画像補償をする。
[0096] 例えば、立体物に近接する領域は、天空、地面を含む可能性があり、ただし最終的に地面領域の路面の特徴を抽出するので、立体物が存在する領域内の近接した画像特徴を空洞の補償に用いる必要がある。立体物と別の領域内に在る近接領域を用いるのではない。
[0097] 具体的な実現で、ディープニューラルネットワーク中で用いるモデルの生成では、立体物に近接する地面領域の特徴をサンプリングし、すなわち、立体物が位置する地面領域の地面特徴をサンプリングし、サンプリングから取得される地面領域の特徴サンプル集に基づいて、これにより干渉の無い地面領域の画像を生成し、よってステップS202で路面の特徴を抽出する。
[0098] S202:ディープニューラルネットワークに基づいて地面領域から路面の特徴を抽出。」
(オ)「[0111] 本実施例では、抽出された路面の特徴に基づいて路面のタイプを判断する好適な手法が提示され、具体的に、ソフトマックス関数を利用して、路面の抽出された特徴に基づいて路面のタイプを判断する。
[0112] ソフトマックス関数は、1つのK次元ベクトルAを1つのK’次元ベクトルA’にマップマッピングし、その実質は1つの確率である。本実施例中で、ソフトマックス関数は、具体的に地形分類結果の確率分布を示すためのもので、具体的な計算は図4に示すプロセスを参照できる。
[0113] ディープニューラルネットワークで出力される1024次元ベクトルはソフトマックス関数にインプットし。はじめにインプットしたベクトルは、パラメータ行列Wが乗算し、続いて、乗算後に取得される結果にオフセットベクトルEを加算し、最後に、加算後の結果を正規化し、図4に示す個々のタイプの確率を取得する。
[0114] パラメータ行列Wはa*b行列でオフセットベクトルEはa*1ベクトルであり、それらはいずれも多数の路面の特徴サンプル集に基づいて予めトレーニングした結果により獲得され、路面のタイプを判断するのに用いることができ、そのうち行の数aは路面のタイプの数と同じであり、列の数bは、ディープニューラルネットワークにより出力される特徴ベクトルの次元と同じである。
[0115] ここで、路面のタイプは、雪、泥、砂、及びハイウエイの4タイプを含むと仮定すると、上述のソフトマックス関数による計算後に獲得された4*1次元をベクトルは、上記4つのタイプの路面の確率分布を表し、確率値が最大の路面のタイプは、路面の特徴に基づいてソフトマックス関数により判断される路面のタイプである。実施例中は、車両が現下駆動する地形は、雪である確率が0.72、泥である確率が0.11、砂である確率が0.02、及びハイウエイである確率が0.15の確率であり、上記の確率値の分布から、現在の路面のタイプは雪であると判断され、これにより車両は雪に対応する運転戦略を選択する。
[0116] 発明の上記特徴をより分かりやすくはっきりさせるため、図5に示す情景と本発明の上記実施例で提供した方法を結合させ、詳細に説明する。
[0117] 車両の前方に設置されるカメラのパラメータを設定することによって、図5A中の扇形状領域の画像の如き車両の前方運転範囲の画像が獲得される。
[0118] 獲得された画像はディープニューラルネットワークに入力され、入力された画像は分割され、画像内の、天空、地面、及び立体物が識別され、具体的には、画像内のテクスチャ、色、若しくは強度に基づいて目標は識別される。
[0119] 地面領域の立体物、すなわち、カメラが撮像した前方の車両及び歩行者は除去される。立体物が除去された画像を通してモデルを生成するときは、図5Bの如く、干渉の無い地面領域の画像が生成され得るよう空洞は補償され、画像が畳み込みニューラルネットワークに入力される前に再び分割されてもよく、図5Cの如く、分割された画像がニューラルネットワークに入力され、畳み込み層及び全結合層を介して処理することにより、1024次元の特徴ベクトルが獲得される。
[0120] 図5Dに示す如く、1024次元特徴ベクトルがソフトマックス関数にインプットされ、路面の個々のタイプの確率分布が獲得される。確率分布に従って車両が駆動する路面のタイプが判断され、これにより、路面のタイプに従って車両は対応する運転戦略を選択する。
[0121] 本実施で提供する方法の利用では、撮影画像中に天空及びその他立体物を含むとき、天空及び立体物が路面の特徴の抽出に影響するのを避けるように、ディープニューラルネットワークを介して画像を分割し、それぞれ天空領域、地面領域、及び立体物を獲得し、地面領域の立体物を取り除き、同時に地面区域の立体物を取り除いて形成された空洞を補償し、完全な安定した地面領域の画像を獲得し、後続の路面の特徴の抽出に対して信頼性のある画像情報を提示し、路面のタイプの判断の正確性を高める。」
また、図2ないし5及び図8は次のとおりである。
(カ)「図2A
[図:0001397897000001.jpg]
」
(キ)「図2B
[図:0001397897000002.jpg]
」
(ク)「図3
[図:0001397897000003.jpg]
」
(ケ)「図4
[図:0001397897000004.jpg]
」
(コ)「図5
[図:0001397897000005.jpg]
」
(サ)「図8
[図:0001397897000006.jpg]
」
これらの記載事項及び図面の図示内容を総合すると、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「車載端末及び車両制御ユニットが実行する、インテリジェント識別地形方法及び運転戦略の選択であって、
車両の前方運転領域の所与の運転範囲の画像を獲得することと、
獲得された所与の運転範囲の画像に基づき、前記所与の運転範囲の画像における路面のタイプの種類を判断することと、
判断された前記路面のタイプの種類に応じて、前記車両の運転戦略を選択することとを含み、
判断された前記路面のタイプの種類に応じて、前記車両の運転戦略を選択することは、
判断された前記路面のタイプに対応したステアリングシステム、電子安定制御システム、及びシャーシサスペンションシステムなどの多数のシステムを調整することにより得られ、例えば雪上を駆動する場合、車両は減速されることであり、
獲得された所与の運転範囲の画像に基づき、前記所与の運転範囲の画像における路面のタイプの種類を判断することは、
獲得された所与の運転範囲の画像内の天空領域及び地面領域内の立体物を取り除き、画像により提示される特徴は地面領域の特徴であることを保証することと、
地面領域をディープニューラルネットワークに入力し、前記ディープニューラルネットワークが出力する1024次元特徴ベクトルとソフトマックス関数を用いて前記所与の運転範囲の画像における路面のタイプの種類を判断することであって、前記ディープニューラルネットワークが、路面のサンプル集に基づいて予めトレーニングされたものである
インテリジェント識別地形方法及び運転戦略の選択。」
また、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開2019-8460号公報(以下、「文献2」という。)には、「物体検出装置、物体検出方法およびプログラム」に関して次の事項が記載されている。
(シ)「【0027】
まず、非線形処理に用いるニューラルネットワークの入力のバリエーションについて説明する。ニューラルネットワークへの入力としては、取得機能11からある時刻に受け取った1フレームの撮影画像の全体を入力としてもよいし、撮影画像の一部を入力としてもよい。例えば、車載カメラ2が自車両の前方を撮影した撮影画像であれば、画像の上側の領域は他車両や歩行者が写っていないと仮定して、この上側の領域をトリミングしてニューラルネットワークに入力してもよい。また、検出機能12から受け取った候補領域情報に基づいて撮影画像上における物体候補領域の位置を特定し、その物体候補領域の画像のみをクリッピングしてニューラルネットワークに入力してもよい。」
これらの記載事項を総合すると、文献2には、以下の事項(以下、「文献2の記載事項」という。)が記載されている。
「自車両の前方を撮影した撮影画像の他車両や歩行者が写っていない領域をトリミングすること。」
また、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である欧州特許出願公開第3392800号明細書(以下、「文献3」という。)には、「DEVICE FOR DETERMING A WEATHER STATE」に関して、次の事項が記載されている。
(ス)「Fig. 4 shows an acquired image, of for example a road scene as shown in Fig. 6. The image has been acquired by the on-board camera of a vehicle that is viewing the scene through a windscreen of the vehicle. The camera acquires colour imagery, but could acquire monochrome imagery. The top and bottom parts of the image are not used, and are cropped. This means that imagery of the bonnet of the car and the sky are not used in image processing, because these regions are relatively invariant to changes in weather and/or exhibit a small number of edges that could then change with weather. The left and right side of the image also not used, and are cropped. The reason for this is that the sides of the image can have various feature content, depending upon whether the vehicle is an urban environment, an urban environment or in a highway scenario, and can lead to too much variation. This then leaves a central area of interest (AOI) that is then subdivided into 24 regions of interest (ROI).
(当審における仮訳)
図4は、取得された画像は、例えば図6に示すように、道路の場面を示す図である。この画像は、車両のフロントガラスを通してシーンを見ている車両の車載カメラによって取得されている。カメラは、カラー画像を取得するが、単色画像を取得することができる。画像の頂部及び底部は使用されず、トリミングされる。この自動車のボンネットの画像が、画像処理において使用されないが、これらの領域は、天候の変化に比較的不変および/または気象によって変化することがあるエッジの数が少ないことを示すためである。画像の左側及び右側も使用されず、トリミングされる。この理由は、画像の様々な特徴を有し、車両が都市環境、都市環境であるか、または幹線道路シナリオに依存して、あまりにも大きな変動につながり得ることである。そして、これは関心領域(ROI)の24領域に分割されている関心領域(AOI)の中央領域を残している。」
これらの記載事項を総合すると、文献3には、以下の事項(以下、「文献3の記載事項」という。)が記載されている。
「天候の変化に比較的不変および/または気象によって変化することがあるエッジの数が少ない画像の頂部及び底部は使用されず、トリミングされ、あまりにも大きな変動につながり得る画像の左側及び右側も使用されず、トリミングされること。」
また、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開2019-8796号公報(以下、「文献4」という。)には、「自立可能車両用衝突回避システム」に関して、次の事項が記載されている。
(セ)「【0005】
本明細書の実施例は、衝突回避システムを備えた自律可能車両を提供するものであって、衝突回避システムは、自律可能車両の他のシステム(例えば、自律車両の動作を制御する車両制御システム)と独立して動作することができるシステムである。衝突回避システムは、車両の前方に向いた1つ以上のカメラによって捕捉された画像フレームの分析に基づいて、ブレーキを作動させることができる。特に、衝突回避システムは、画像フレームを分析して、車両の前方方向における走行可能空間領域を特定してラベル付けすることができる。走行可能空間として特定されなかった画像フレームの領域は、車両が衝突してはいけない非走行可能空間として処理することができる。加えて、画像フレームを分析することによって、衝突回避システムは、非走行可能空間領域の各々から車両までの距離を算出することができる。このようにして、衝突回避システムは、車両の速度及び軌道に基づいて、車両が特定された非走行可能空間領域に衝突する尤度を決定することができる。この決定に基づいて、他の車両システム(例えば、自律動作のための車両制御システム)又は車両のオペレータ入力(例えば、ブレーキペダル入力)とは無関係に、衝突回避システムは、衝突を回避又は衝突の影響を最小限に抑制するために、衝突回避信号を生成することができる。衝突回避信号によって、車両は1つ以上のブレーキ、操縦、及び/又はスロットル調整等を行い、衝突を回避又は衝突の影響を最小限に抑制することができる。
【0006】
本明細書において、「走行可能空間」という用語は、車両が他の物体に衝突することなく安全に移動できる路面(例えば、舗装路面)を意味することができる。本明細書において、「非走行可能空間」という用語は、車両が安全に移動することができない領域を意味することができる。非走行可能空間には、歩道、縁石、他の車両、歩行者、サイクリスト、壁、道路の中央分離帯、瓦礫等が含まれる。特定の実施例において、非舗装路面が、衝突回避システムによって、非走行可能空間領域として特定され得る。
【0007】
実施形態によれば、衝突回避システムは、画像フレームを分析し、走行可能空間を表しているとして、画像フレームの適切な画素にラベル付けすることによって、車両の前方方向において、走行可能空間領域を決定することができる。衝突回避システムは、走行可能空間を示す画像の領域(例えば、画素又は画素群)を特定するように訓練された機械学習モデルを使用して、これを行うことができる。一部の実施例において、衝突回避システムは、画像フレームの各々の画素が走行可能空間を表す、対応確率を決定することができる。この確率(例えば、確率が閾値を上回っている又は下回っている)に基づいて、衝突回避システムは、当該画素を走行可能空間としてラベル付けすることができる。ラベル付けされていない画像フレームの領域を特定又は非走行可能空間として処理することができる。衝突回避システムは、非走行可能空間の各々の領域に関連する車両の距離及び方向も決定することができる。
【0008】
実施形態によれば、訓練データを使用して、機械学習モデルを生成することができる。訓練データは、訓練画像フレームを含むことができる。訓練画像フレームは、車載カメラと同様のカメラによって捕捉することができる。各々の訓練画像フレームの画素に対し、走行可能空間及び/又は非走行可能空間を表しているとして、ラベル付けすることができる。訓練画像フレームのラベル付けは、人間のオペレータの支援の下で、アルゴリズム的に行い、誤り訂正又は分析結果の矛盾を解消することができる。訓練データを使用して、機械学習モデルを生成することができる。画像フレームに表されている走行可能空間を特定する機械学習モデルの精度を向上させるためには、車両が直面し得る種々の道路状況を示す多数の訓練画像フレームを有することが望ましい。」
(ソ)「【0034】
様々な態様において、訓練データは、訓練画像フレームを含むことができる。訓練画像フレームは、実際の道路状況を表すことができ、カメラ150及び155と同様のカメラによって捕捉された画像であってよい。例えば、車両群に搭載されたカメラは、車両が現実の状況下で動作するとき、トレーニング画像フレームを捕捉することができる。訓練画像フレームを分析して、訓練画像フレームの走行可能空間を特定することができる。例えば、走行可能空間を表しているとして、訓練画像フレームの適切な画素にラベル付けすることができる。訓練画像フレームの分析は、人間の指導、補正、及び/又は品質検査を受けて、プログラム的に実行することができる。場合により、訓練データは、センサーデータを含むことができる。例えば、各々の訓練画像フレームを、LIDARセンサーデータのセットに関連付けることができる。LIDARセンサーデータのセットは、関連付けられた訓練画像フレームが捕捉されたときに測定された、LIDAR測定結果を示すことができる。LIDARデータは訓練画像の分析を支援することができる。例えば、LIDAR測定結果を使用して、走行可能空間してラベル付けすべきではない、訓練画像フレームに表されている物体を特定することができる。」
これらの記載事項を総合すると、文献4には、以下の事項(以下、「文献4の記載事項」という。)が記載されている。
「訓練画像フレームの適切な画素にラベル付けすることができること。」
また、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開2018-28906号公報(以下、「文献5」という。)には、「ディープ(双方向)再帰型ニューラルネットワークを用いたセンサデータの時間融合に基づく効率的な運転者行動予測システム」に関して、次の事項が記載されている。
(タ)「【0010】
特に、非特許文献3に記載されるモデルは従来の空間的な多重検知融合アーキテクチャである。これは、特徴的サイズが大きいシステム、もしくはサンプリングレートが高いシステムにまで拡張することができない。また、予測精度と予測範囲(どれくらい前の時点から予測できるか)はこのモデルでは制限される。なぜなら、空間的なセンサデータ融合しか行わないからである。このモデルは行動認識のデータを含まないため、データセット全体を人が手動でラベル付けしなければならない。そのため、このモデルは人の介入なしに任意の運転者行動を予測するように学習することができない。さらに、非特許文献3に記載されるモデルは限られた数のセンサ入力(例えば、操舵に関する検知手法のみ)しか使用できないため、予測システムによって使用される入力の数は人が運転中に経験するものよりはるかに少ないものとなる。」
(チ)「【0090】
トレーニング処理部259は、コンピュータロジックを含み、当該ロジックは、例えば予測モデルおよび/またはその重みをトレーニングするように動作する。いくつかの実装において、トレーニング処理部259は、(例えば、処理部255および/または257やデータ記憶装置223等から直接受信される)行動認識処理部255および/または行動予測処理部257の出力を基に、トレーニングネットワーク761を稼働させる。いくつかの実装において、トレーニング処理部259は、予測目的で抽出した特徴と認識された行動ラベルとを(例えば、過去に遡って)組み合わせて、学習データ(training example)を生成する。学習データは後に予測ネットワークモデル705のトレーニングに使用される。
【0091】
本明細書に記載する技法のいくつかの実装によると、トレーニングにおいて、認識ネットワーク731に影響を与えることなく予測ネットワーク705のみを更新しうる。他方、一部の従来技術では認識モデルと予測モデルを両方同時に更新する必要があり、システムがそれだけ複雑化するとともに、計算リソースも多く消費する。
【0092】
いくつかの実装において、トレーニングネットワーク761は、トレーニング処理部259のアルゴリズム用モデルコンポーネントを含みうる。なお、予測ネットワーク705は人が作成したユーザ行動用のラベルを用いてトレーニングできるが、本発明で提案するシステムの大きな利点のひとつは、認識ネットワーク731によって生成されたラベルを用いることによって予測ネットワーク705を容易にトレーニングできることにある。トレーニングネットワーク761については本明細書において(例えば図7Cを参照して)適宜さらに詳細に説明している。」
これらの記載事項を総合すると、文献5には、以下の事項(以下、「文献5の記載事項」という。)が記載されている。
「トレーニング処理部259は、予測目的で抽出した特徴と認識された行動ラベルとを組み合わせて、学習データを生成すること。」
ウ 引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「車載端末及び車両制御ユニット」はその機能、構成及び技術的意義からみて前者の「電子機器」に相当する。同様に、「前方運転領域」は「所在する路面」に、「所与の運転範囲の画像」は「路面画像」に、「獲得」は「取得」に、「路面のタイプ」は「路面シーン」に、「判断」は「確定」に、「ディープニューラルネットワーク」は「ニューラルネットワーク」に、「トレーニング」は「訓練」にそれぞれ相当する。
また、後者の「判断された前記路面のタイプの種類に対応したステアリングシステム、電子安定制御システム、及びシャーシサスペンションシステムなどの多数のシステムを調整することにより得られ、例えば雪上を駆動する場合、車両は減速され」ることは、「判断された前記路面のタイプの種類」及び「予め設定された、定量化後の、路面タイプの種類とステアリングシステム、電子安定制御システム、及びシャーシサスペンションシステムなどの多数のシステム」を制御する「制御パラメータ」との対応関係に基づいて、車両の「ステアリングシステム、電子安定制御システム、及びシャーシサスペンションシステムなどの多数のシステム」の「制御パラメータ」を「確定」し、「確定」された車両の「ステアリングシステム、電子安定制御システム、及びシャーシサスペンションシステムなどの多数のシステム」の「制御パラメータ」に基づき、車両の「部材」を「減速制御」することといえる。
そうすると、後者の「判断された前記路面のタイプの種類に対応したステアリングシステム、電子安定制御システム、及びシャーシサスペンションシステムなどの多数のシステムを調整することにより得られ、例えば雪上を駆動する場合、車両は減速され」と前者の「確定された前記路面シーンの種類、及び予め設定された、定量化後の、路面シーンの種類と車両の速度制御パラメータ及びブレーキ力制御パラメータとの対応関係に基づいて」、「前記車両の速度制御パラメータ及びブレーキ力制御パラメータを確定することと」、「確定された前記車両の速度制御パラメータ及びブレーキ力制御パラメータに基づき、前記車両の駆動部材及び/又はブレーキ部材を制御すること」とは、「確定された前記路面シーンの種類、及び予め設定された、定量化後の、路面シーンの種類と車両の制御パラメータとの対応関係に基づいて」、「前記車両の制御パラメータを確定することと」、「確定された前記車両の制御パラメータに基づき、前記車両の部材を制御すること」という限りで一致する。そして、後者の「判断された前記路面のタイプの種類に応じて、前記車両の運転戦略を選択すること」は、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「確定された前記路面シーンの種類に応じて、前記車両に対してインテリジェント運転制御を行うこと」に相当するものを含む。
そして、後者の「獲得された所与の運転範囲の画像内の天空領域及び地面領域内の立体物を取り除き、画像により提示される特徴は地面領域の特徴であることを保証し」、「地面領域をディープニューラルネットワークに入力」することと前者の「取得された路面画像をトリミングし、トリミング後の路面画像を取得することであって、前記車両の所在する路面が前記トリミング後の路面画像に占める割合は、前記車両の所在する路面が前記取得された路面画像に占める割合よりも大きいことと」、「前記トリミング後の路面画像をニューラルネットワークに入力」することとは、「取得された路面画像を処理し、処理後の路面画像を取得することと」、「前記処理後の路面画像をニューラルネットワークに入力」することという限りで一致する。
さらに、後者の「前記ディープニューラルネットワークが出力する1024次元特徴ベクトルとソフトマックス関数を用いて前記所与の運転範囲の画像における路面のタイプの種類を判断すること」は、ディープニューラルネットワークの出力である1024次元特徴ベクトルを用いて路面のタイプの種類を判断するものであるから、前者の「前記ニューラルネットワークを用いて前記路面画像における路面シーンの種類を確定すること」に相当する。
加えて、後者の「前記ディープニューラルネットワークが、路面のサンプル集に基づいて予めトレーニングされたものであること」と前者の「前記ニューラルネットワークが、路面シーンの種類をラベル付けた路面画像からなる画像集合を用いて訓練されたものであること」とは、「前記ニューラルネットワークが、路面画像からなる画像集合を用いて訓練されたものであること」という限りで一致する。
そして、このような事項を備えた後者の「インテリジェント識別地形方法及び運転戦略の選択」は前者の「インテリジェント運転制御方法」に相当する。
したがって、両者は、
「電子機器が実行する、インテリジェント運転制御方法であって、
車両の所在する路面の路面画像を取得することと、
取得された路面画像に基づき、前記路面画像における路面シーンの種類を確定することと、
確定された前記路面シーンの種類に応じて、前記車両に対してインテリジェント運転制御を行うこととを含み、
確定された前記路面シーンの種類に応じて、前記車両に対してインテリジェント運転制御を行うことは、
確定された前記路面シーンの種類、及び予め設定された、定量化後の、路面シーンの種類と車両の制御パラメータとの対応関係に基づいて、
前記車両の制御パラメータを確定することと、
確定された前記車両の制御パラメータに基づき、前記車両の部材を制御することとを含み、
取得された路面画像に基づき、前記路面画像における路面シーンの種類を確定することは、
取得された路面画像を処理し、処理後の路面画像を取得することと、
前記処理後の路面画像をニューラルネットワークに入力し、前記ニューラルネットワークを用いて前記路面画像における路面シーンの種類を確定することであって、前記ニューラルネットワークが、路面画像からなる画像集合を用いて訓練されたものであることと、を含む
インテリジェント運転制御方法。」
である点で一致し、次の3点で相違する。
[相違点1]
「車両の制御パラメータ」及び「車両の部材を制御する」ものに関し、前者は「速度制御パラメータ及びブレーキ力制御パラメータ」及び「車両の駆動部材及び/又はブレーキ部材を制御する」ものであるのに対し、後者は「ステアリングシステム、電子安定制御システム、及びシャーシサスペンションシステムなどの多数のシステムを調整することにより得られ、例えば雪上を駆動する場合、車両は減速され」るものであって、「速度制御パラメータ及びブレーキ力制御パラメータ」及び「車両の駆動部材及び/又はブレーキ部材を制御する」ものを備えるか不明な点。
[相違点2]
「取得された路面画像を処理し、処理後の路面画像を取得すること」に関し、前者は「取得された路面画像をトリミングし、トリミング後の路面画像を取得することであって、前記車両の所在する路面が前記トリミング後の路面画像に占める割合は、前記車両の所在する路面が前記取得された路面画像に占める割合よりも大きいこと」であるのに対し、後者は「獲得された所与の運転範囲の画像内の天空領域及び地面領域内の立体物を取り除き、画像により提示される特徴は地面領域の特徴であることを保証」することである点。
[相違点3]
「路面画像からなる画像集合を用いて訓練されたもの」に関し、前者は「路面シーンの種類をラベル付けた路面画像からなる画像集合」を用いて訓練されたものであるのに対し、後者は「路面のサンプル集」に基づいてトレーニングされたものである点。
エ 判断
相違点について検討する。
相違点1について検討する。
一般に、車両の加減速制御を行う場合、減速の程度を踏まえて車両の速度制御パラメータ及びブレーキ力制御パラメータを設定し、設定後の速度制御パラメータ及びブレーキ力制御パラメータに基づき車両の駆動部材及び/又はブレーキ部材を制御することは、車両制御の技術においては例示するまでもない技術常識といえる。そして、引用発明の「ステアリングシステム、電子安定制御システム、及びシャーシサスペンションシステムなどの多数のシステムを調整する」ものは、「例えば雪上を駆動する場合、車両は減速され」るものであるから、引用発明の車両においても車両の加減速制御は行われているといえる。そして、上述したとおり、引用発明の「ステアリングシステム、電子安定制御システム、及びシャーシサスペンションシステムなどの多数のシステムを調整する」ものは、「制御パラメータ」を「確定」し、「確定」した「制御パラメータ」に基づいて車両の「部材」を制御するものである。
そうすると、「制御パラメータ」を「確定」し、「確定」した「制御パラメータ」に基づいて車両の「部材」を制御する引用発明の「ステアリングシステム、電子安定制御システム、及びシャーシサスペンションシステムなどの多数のシステムを調整する」ものにおいて、上記技術常識を踏まえて相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者の通常の創作能力の範囲で容易になし得たことである。
相違点2について検討する。
本願の発明の詳細な説明の記載には「トリミング」に係る格別な定義はないものの、一般に「トリミング」は「コンピュータで画像を加工したりする際、不要な部分を取り除いて画面を整えること」(出典:「デジタル大辞泉」、小学館)を意味する用語として用いられる。そして、本願発明1で用いられる「トリミング」が上記と異なる意味で用いられているとする格別な事情もない。そこで、本願発明1の「トリミング」は上記意味で用いられていると理解し検討を行った。
引用発明の「獲得された所与の運転範囲の画像内の天空領域及び地面領域内の立体物を取り除き、画像により提示される特徴は地面領域の特徴であることを保証」することは、上記イ、(エ)の段落[0094]に記載されるとおり、路面の特徴を抽出するとき、天空領域及び立体物が路面の特徴の抽出に影響を与えることを避けるために行うもの、すなわち路面の特徴の抽出に不要な部分である画像内の天空領域及び地面領域内の立体物を取り除くことといえる。すなわち、「トリミング」についての上記意味に照らし合わせると、引用発明の「獲得された所与の運転範囲の画像内の天空領域及び地面領域内の立体物を取り除き、画像により提示される特徴は地面領域の特徴であることを保証」することは、「取得された路面画像(獲得された所与の運転範囲の画像)をトリミング(画像内の天空領域及び地面領域内の立体物を取り除き)し、トリミング後の路面画像を取得する(画像により提示される特徴は地面領域の特徴であることを保証)」するものといえる。
さらに、「獲得された所与の運転範囲の画像内の天空領域及び地面領域内の立体物を取り除」いた画像は地面領域のみの画像であるから、当該画像において地面領域が占める割合は、獲得された所与の運転範囲の画像において地面領域が占める割合よりも大きいことになると理解できる。
この理解は、イ、(コ)図5Cの図示事項から看て取れるものでもある。
この理解において、相違点2に係る相違は実質的な相違ではなく、引用発明もまた相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項を備えている。
このような理解ができないと仮定しさらに検討を進めると、
文献2の記載事項及び文献3の記載事項からみて、「車両の制御に用いる画像の処理に関し、取得した画像をトリミングすること」は周知技術(以下、「周知技術1」という。)といえる。そうすると、引用発明の「獲得された所与の運転範囲の画像内の天空領域及び地面領域内の立体物を取り除き、画像により提示される特徴は地面領域の特徴であることを保証」することにおいて、周知技術1を踏まえ、「獲得された所与の運転範囲の画像」を「トリミング」するようにすることは、当業者の通常の創作能力の範囲で容易になし得たことである。また、周知技術1を踏まえると「トリミング後」の「獲得された所与の運転範囲の画像」における地面領域が占める割合は、獲得された所与の運転範囲の画像において地面領域が占める割合よりも大きいものになることは容易に理解し得ることである。
そうすると、この仮定においては、引用発明において、周知技術を踏まえ相違点2に係る本件補正発明1の発明特定事項とすることは、当業者の通常の創作能力の範囲で容易になし得たことである。
相違点3について検討する。
文献4の記載事項及び文献5の記載事項からみて、「ラベル付けされたデータからなるデータ集合を用いてニューラルネットワークを訓練すること」は周知技術(以下、「周知技術2」という。)であり、イ、(タ)の「データセット全体を人が手動でラベル付けしなければならない。」との記載にもあるように技術常識といえるものである。そうすると、通常の創作能力を備えた当業者であれば、引用発明の「路面のサンプル集」が実質的に「路面のタイプの種類をラベル付けた」、「路面のサンプル集」であることは当然理解し得たことである。この理解において、相違点3は実質的な相違といえず、引用発明もまた相違点3に係る発明特定事項を備えるものである。
このように理解できないと仮定しても、引用発明の「路面のサンプル集」について、周知技術2を踏まえて、相違点3に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者の通常の創作能力の範囲内で容易になし得たことである。
また、本件補正発明は、全体としてみても、引用発明、周知技術1及び周知技術2から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。
したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるか、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3.むすび
上記2.のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1.本願発明
令和4年5月18日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし9に係る発明は、令和4年1月11日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2 1.(1)に記載のとおりのものである。
2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前に発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:中国特許出願公開第107977641号明細書
3.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2[理由]2.(1)イに記載したとおりである。
4.対比・判断
本願発明は前記第2[理由]2.(1)で検討した本件補正発明から、「取得された路面画像に基づき、前記路面画像における路面シーンの種類を確定する」ことについての「取得された路面画像をトリミングし、トリミング後の路面画像を取得することであって、前記車両の所在する路面が前記トリミング後の路面画像に占める割合は、前記車両の所在する路面が前記取得された路面画像に占める割合よりも大きいことと、
前記トリミング後の路面画像をニューラルネットワークに入力し、前記ニューラルネッワークを用いて前記路面画像における路面シーンの種類を確定することであって、前記ニューラルネットワークが、路面シーンの種類をラベル付けた路面画像からなる画像集合を用いて訓練されたものであることと、を含む」との限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2.(1)ウ及びエに記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において「また、引用文献1において、ディープニューラルネットワークを利用して、路面特徴を抽出してから、Softmax関数を利用して当該路面特徴に基づいて路面の種類を決定していますが、それに対して、本願発明は、直接にニューラルネットワークを利用して、路面シーンの種類を確定する目的を達成しています。よって、この点についても、本願発明は、引用文献1に記載された発明とは異なる技術的手段を採用しています。」と主張する。
また、「また、引用文献1において、ディープニューラルネットワークを利用して、路面特徴を抽出してから、Softmax関数を利用して当該路面特徴に基づいて路面の種類を決定していますが、それに対して、本願発明は、直接にニューラルネットワークを利用して、路面シーンの種類を確定する目的を達成しています。よって、この点についても、本願発明は、引用文献1に記載された発明とは異なる技術的手段を採用しています。」と主張する。
そこで、これらの主張について検討する。
はじめに、本件補正発明の「前記ニューラルネットワークを用いて前記路面画像における路面シーンの種類を確定すること」との発明特定事項について確認する。ここで、「ニューラルネットワークを用いて」との記載は、例えば「直接に」或いは「のみ」等のニューラルネットワーク以外の事項は用いないことを特定するような技術用語は含まれない。また、本願の発明の詳細な説明の記載の段落【0091】には「本出願の保護範囲がこれに限られなく、当業者であれば、本出願で開示された技術範囲内で、変更又は置き換えを容易に想到することができ、それらは全て本出願の保護範囲に含まれるべきである。」との記載もある。そうすると、上記の発明特定事項は、審判請求人が主張する「直接にニューラルネットワークを利用して、路面シーンの種類を確定する」もののみならず、「直接に」以外の手法により、ニューラルネットワークを利用し、路面シーンの種類を確定するものも含む発明特定事項と解しうるものである。
この点を踏まえ引用発明をみると、上記イ、(オ)に記載されるとおり、引用発明はソフトマックス関数を利用して路面の抽出された特徴に基づいて路面のタイプを判断する(段落[0111])。そして、段落[0116]ないし[0120]、特に[0119]に記載される分割された画像をニューラルネットワークに入力し、処理することで1024次元の特徴ベクトルを獲得し当該獲得した1024次元の特徴ベクトルをソフトマックス関数に入力して路面のタイプを判断するものである。ここで、1024次元の特徴ベクトルはニューラルネットワークを用いて獲得するものであるから、ソフトマックス関数を利用した路面のタイプの判断にあたり、ニューラルネットワークを用いていることは明らかである。そうすると、引用発明は、「ニューラルネットワークを用いて前記路面画像における路面シーンの種類を確定する」との本件補正発明の発明特定事項を備えるものといえる。
したがって、審判請求人の上記主張は当を得ない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-007412