特許拒絶査定不服審判
2022-007238
放熱装置
- 審判番号
- 2022-007238
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-524959外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年05月13日
- 審決日
- 2022年12月20日
- 公報発行日
- 2023年02月24日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-524959「放熱装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月 4日国際公開、WO2018/003356、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)5月24日(優先権主張 平成28年6月28日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
令和 3年 7月14日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 9月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年 2月 9日付け:拒絶査定
令和 4年 5月13日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提
出
第2 原査定の概要
原査定(令和4年2月9日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1~5に係る発明は、以下の引用文献1~3,5に記載された発明に基づいて(当審注: 引用文献1,5は、いずれか一方のみが主たる引用文献として排他的に引用されている。)、本願請求項6,7に係る発明は、以下の引用文献1~5に記載された発明に基づいて(同)、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1: 特開2004-111370号公報
引用文献2: 特開2010-132856号公報
引用文献3: 特開2011-162642号公報
引用文献4: 特開2003-158393号公報
引用文献5: 特開2001-44673号公報
第3 本願発明
本願請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明7」という。)は、令和4年5月13日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は、次のとおりの発明である。
「【請求項1】
発熱体と、放熱体と、前記発熱体および前記放熱体の間に挟着された熱伝導シートと、を備える放熱装置であって、
前記熱伝導シートの厚み方向の熱伝導率が15W/m・K以上であり、
前記熱伝導シートの挟着面の面積が、前記発熱体および前記放熱体の被着面の面積よりも小さく、
前記発熱体の被着面の表面凹凸が25μm以上35μm以下であり、前記放熱体の被着面の表面凹凸が5μm以下であることを特徴とする、放熱装置。」
なお、本願発明2~7は、本願発明1を減縮した発明である。
第4 引用文献の記載、引用発明等
1 引用文献1
(1)原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。
「【0026】
(実施の形態2)
図4、図5は本発明の実施の形態2における電池の熱制御装置の構成を示す一部断面図である。
【0027】
本実施の形態2による熱制御装置は、放熱部5と、機器外壁3と放熱部5とを結合している熱制御部26とを有する。放熱部5は、機器外壁3を貫通し、その一部は機器外部へ露出している。さらに、放熱部5は、電池1と対向する面では、電池表面に沿う形状を備えており、熱伝導シート24は、放熱部5に貼付されている。熱伝導シート24は例えば、高分子フィルムを熱分解によりグラファイト化して作られた単結晶に近い構造を持つ高配向性グラファイトや、熱伝導性シリコンゴム、アクリルゴムを主体とし、アルミやカーボングラファイト材料を挟み込んだ材料等からなる。放熱部5は、熱伝導シート24を介して電池1に熱的に接続され、充放電により電池から発生する熱を機器外部に放熱する。熱制御部26は、実施の形態1における熱制御部6と同様に、バイメタルで構成されている。熱制御部26は温められると伸張し、20℃以上になると図4に示すように、放熱部5を移動させ、熱伝導シート24を介して電池1と放熱部5とを熱的に接続する。それ未満の温度では、図5に示すようにJ字型に湾曲し、電池1と放熱部5とを離す。
【0028】
電池1は、直径18mm、長さ65mmの大きさで、容量1200mAhの円筒形リチウムイオン二次電池であり、2個直列に接続されている。電池1は、電池保持部2によって機器の内部(図示せず)に固定されている。さらに、電池1は、機器外壁3により外部の環境から隔離されている。
【0029】
次に、本実施の形態2による熱制御装置の動作について説明する。
【0030】
バイメタルからなる熱制御部26が温められると伸張し、放熱部5が機器内部に降下する。そして、20℃になると、図4のように電池1の表面に熱伝導シート24が接する。この動作により、電池1と放熱部5は熱的に接続された状態となる。この結果、電池1の熱が熱伝導シート24を介して放熱部5に伝わって外気に放出され、電池1は異常に高温になることを防止される。」
【図4】「
[図:0001393889000001.jpg]
」
(2)引用文献1の図4から、熱伝導シート24の表面のうちの電池1と接触する表面の面積が、電池1及び放熱部5が対向している側の全体面のうちの、概ね熱伝導シート24の厚みをもって互いに対向する範囲における電池1及び放熱部5の対向面の面積よりも、小さいことが見て取れる。
(3)上記(1)、(2)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「放熱部5を有する熱制御装置であって、
放熱部5は、電池1と対向する面では、電池表面に沿う形状を備えており、熱伝導シート24は、放熱部5に貼付され、
電池1の表面に熱伝導シート24が接し、この動作により、電池1と放熱部5は熱的に接続された状態となり、この結果、電池1の熱が熱伝導シート24を介して放熱部5に伝わって外気に放出され、電池1は異常に高温になることを防止され、
伝導シート24の表面のうちの電池1と接触する表面の面積が、電池1及び放熱部5が対向している側の全体面のうちの、概ね熱伝導シート24の厚みをもって互いに対向する範囲における電池1及び放熱部5の対向面の面積よりも小さい、熱制御装置。」
2 引用文献2
原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0011】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、黒鉛粒子を熱伝導シートの厚み方向に配向させることによって高い熱伝導性を有し、マトリックス材料として特定の有機高分子化合物を用いることによって高い柔軟性を有し、且つ特定の硬化剤を用いて有機高分子化合物を架橋させることにより、膜強度及び圧縮復元性が向上することを見出した。」
「【0027】
本発明に用いられる有機高分子化合物(A)としては、化合物1g中に0.1~1mmolのカルボキシル基を有するものであれば特に制限はない。例えば、アクリル酸ブチル及びアクリル酸エチルのいずれか又は両方を主要原料成分とした、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(所謂アクリルゴム)、ポリジメチルシロキサン構造を主構造に有するカルボキシル基含有高分子化合物(所謂シリコーンゴム)、・・・(中略)・・・等、柔軟で、一般的に「ゴム」と総称される、カルボキシル基を有する有機高分子化合物が挙げられる。」
【0063】
熱伝導シートの厚さは、用途等によって適宜設定されるが、好ましくは0.1~3mm、より好ましくは0.2~1mmである。熱伝導シートの厚さが、0.1mm以上であるとシートとして取り扱い易く、3mm以下であると放熱効果に優れる。また、前記成形体のスライス幅が熱伝導シートの厚さとなり、スライス面が熱伝導シートにおける発熱体や放熱体との当接面となる。」
「【0075】
(実施例1)
有機高分子化合物(A)としてカルボキシル基含有アクリル酸エステル共重合樹脂(アクリル酸ブチル/アクリル酸エチル/アクリロニトリル/アクリル酸共重合体、ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HTR-280改2DR、カルボキシル基含有量:0.69mmol/g、重量平均分子量:53万、Tg=-39℃)931g、硬化剤(B)としてビスフェノールF型エポキシ(東都化成株式会社製、商品名:YDF-170、2官能、エポキシ当量:156g/eq.)101g、黒鉛粒子(C)として鱗片状の膨張黒鉛粉末(日立化成工業株式会社製、長径の平均値:500~1000μm)2220g、及び難燃剤として芳香族縮合リン酸エステル(大八化学工業株式会社製、商品名:CR-741)871gを、100℃で30分、ニーダー混練機(株式会社モリヤマ製、DS3-SGHM-E型加圧双腕型ニーダー)で混練し、組成物を得た。
・・・(中略)・・・
【0080】
次いで、この成形体をドライアイスで-10℃に冷却した後、5cm×30cmの積層断面を、0.3MPaの圧力で押し付けながら、木工用スライサー(株式会社丸仲鐵工所製、商品名:超仕上げかんな盤スーパーメカ、スリット部からの刀部の突出長さ:0.11mm)を用いてスライス(1次シート面から出る法線に対して0度、即ち、黒鉛粒子(C)の配向方向に対して90度の角度でスライス)し、縦5cm×横30cm×厚さ0.25mmの熱伝導シート(I)を得た。
【0081】
この熱伝導シート(I)の物性値を求めたところ、引張強度は0.5MPa、アスカーC硬度は80、圧縮復元率は90%、及び熱伝導率は30W/mKと良好な値を示した。」
3 引用文献3
原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0029】
本発明で用いられるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)としては、例えば、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等を主要な原料成分とし、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等を共重合させて反応活性な官能基を導入したポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(所謂アクリルゴム)が好適に用いられる。」
「【0056】
熱伝導シートの厚さは、用途等により適宜設定されるが、好ましくは0.05~3mm、より好ましくは0.1~1mmである。前記熱伝導シートの厚さが0.05mm未満である場合はシートとしての取り扱いが難しくなる傾向にあり、3mmを超える場合は放熱効果が低くなる傾向にある。前記成形体のスライス幅が熱伝導シートの厚さとなり、スライス面が熱伝導シートにおける発熱体や放熱体との当接面となる。」
「【0067】
(実施例1)
黒鉛粒子(A)として鱗片状の膨張黒鉛粒子(日立化成工業株式会社製、商品名:HGF-L、質量平均径:450μm)555g、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)としてアクリル酸ブチル/アクリル酸エチル/アクリロニトリル/アクリル酸共重合体(共重合質量比82/10/3/5、ナガセケムテックス製、重量平均分子量:53万、Tg:-39℃)145g、硬化剤(b)としてネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス製、EX-211)9.7g、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)として、ARUFON UP-1170(東亞合成製、液状、重量平均分子量:8000、Tg:-57℃)103g、難燃剤としてビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(りん酸エステル系難燃剤、大八化学工業株式会社製、商品名:CR-741)218gをポリエチレン袋中で予備混合して組成物を得た。
・・・(中略)・・・
【0071】
この一次シートを4cm×20cmの大きさにカッターで切り出し、40枚積層し、手で軽く押さえてシート間を接着させ、さらに3kgの重石を載せた上170℃の熱風乾燥機で6時間処理してシート間を良く接着させ、かつ組成物中でポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)と硬化剤(b)とを反応させてポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物の架橋硬化物(B)に変成させ、厚さ4cmの成形体を得た。
次いで、この成形体をドライアイスで-20℃に冷却した後、4cm×20cmの積層断面を超仕上げカンナ盤((株)丸仲鐵工所製 商品名:スーパーメカ(スリット部からの刀部の突出長さ:0.19mm))を用いてスライスし(一次シート面から出る法線に対し0度の角度でスライス)、縦4cm×横20cm×厚さ0.25mmの熱伝導シート(I)を得た。」
「【0073】
熱伝導シート(I)を2cm角に打ち抜いたものを高さ5mm以上になるまで積層した上、25℃においてアスカー硬度計C型で測定したところ、アスカーC硬度は60と柔軟なゴムシートであることが確認できた。
【0074】
この熱伝導シート(I)の熱伝導率を測定したところ、70W/mKと良好な値を示した。また、熱伝導シート(I)のトランジスタと銅ヒートシンクに対する密着性も良好であった。」
4 引用文献4
原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0010】すなわち、本発明は、上記の課題を解決する手段として、グラファイトシートと、該グラファイトシートの少なくとも片面に設けられた熱伝導性組成物層とを有してなり、電子部品と放熱部品との間に配置される放熱構造体であって、前記の熱伝導性組成物は電子部品が動作していない室温では流動性がなく、電子部品動作時にはその発熱により低粘度化、軟化又は溶融するものである放熱構造体を提供する。」
「【0013】[樹脂成分] ここで使用することができる有機樹脂には、電子部品の動作温度における耐熱性を有すること、そして、電子部品が動作していない常温では流動性がなく、電子部品の動作温度において熱軟化、低粘度化、あるいは溶融すること等が求められ、こうした特性を備える有機樹脂であれば特に制限なく使用することができる。例えば、シリコーン樹脂、α-オレフィン系樹脂、パラフィン系樹脂等が挙げられ、中でも好ましいものはシリコーン樹脂である。本発明に好適なシリコーン樹脂のより具体的な例としては、下記のものを挙げることができる。
【0014】シリコーン樹脂としては、熱伝導性組成物が実質的に常温で固体(非流動性)であって、40℃以上、発熱性電子部品の発熱による最高到達温度以下、即ち、40~100℃、特に40~90℃程度の温度範囲において、熱軟化、低粘度化又は融解して少なくとも表面が流動化するものであればどのようなものでもよい。このことがマトリックス相が熱軟化を起こす重要な因子となる。」
5 引用文献5
原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。図1は本発明の実施の形態の放熱構造を示す断面図、図2は実施の形態のカバーを示す切欠き斜視図である。
【0011】図1、図2において、基板1にはCPU2が実装されており、CPU2は熱伝導シート3を介してカバー11の接触部11aに接触している。カバー11はここではノートパソコンのカバーであり、熱伝導率の高いマグネシウム合金ダイキャストで出来ている。図1において底部11bがカバーの表面になっている。接触部11aの下方は二重底部12になっている。二重底部12は接触部11aの下部11cと中間部11dとからなり、接触部11aの下部11cと中間部11dとの間には空気層13が形成されている。
【0012】二重底部12の幅Lは、CPU2の幅Mに対して充分大きく設定されている。また中間部11dの下部11eには図3に示すように、フィン14が形成されている。図3はカバーの表面を示す平面図である。二重底部12の両側には拡張部15a、15bが形成されている。拡張部15a、15bは、接触部11aから底部(カバー表面)11bに向かっての放熱ルートに対する断面積が拡大する構造を有し、その構造の故に熱を拡散する役割を果たしている。
【0013】次に放熱の動作を説明する。CPU2で発生した熱は、まず熱伝導シート3からカバー11の接触部11aに伝わる。熱は熱抵抗が小さい、即ち、熱伝導率が大きい物体の方へより多く伝わる性質がある。マグネシウム合金であるカバー11の熱伝導率と空気の熱伝導率を比較すると、カバー11の熱伝導率=72W/mK>空気の熱伝導率=0.026W/mKであるので、接触部11aに伝わった熱は空気層13の方向へよりも拡張部15a、15bの方向へより多く伝わっていく。」
「【図1】
[図:0001393889000002.jpg]
【図2】
[図:0001393889000003.jpg]
」
(2)引用文献5の図1,2から、熱伝導シート3の表面のうちのCPU2又はカバー11と接触する表面の面積が、CPU2及びカバー11が対向している側の全体面のうちの、概ね熱伝導シート3の厚みをもって互いに対向する範囲におけるCPU2及びカバー11の対向面の面積よりも、小さいことが見て取れる。
(3)上記(1)、(2)から、引用文献5には、次の発明(以下、「引用発明5」という。)が記載されていると認められる。
「放熱構造であって、
基板1にはCPU2が実装されており、CPU2は熱伝導シート3を介してカバー11に接触しており、カバー11は熱伝導率の高いマグネシウム合金ダイキャストで出来ており、フィン14が形成され、
CPU2で発生した熱が、熱伝導シート3からカバー11に伝わり、
熱伝導シート3の表面のうちのCPU2又はカバー11と接触する表面の面積が、CPU2及びカバー11が対向している側の全体面のうちの、概ね熱伝導シート3の厚みをもって互いに対向する範囲におけるCPU2及びカバー11の対向面の面積よりも小さい、放熱構造。」
第5 対比・判断
1 引用発明1との対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明1の「電池1」は、「充放電により」「熱」が「発生する」から、本願発明1の「発熱体」に相当し、引用発明1の「放熱部5」は、本願発明1の「放熱体」に相当する。
(イ)引用発明1は、「熱伝導シート24は、放熱部5に貼付され」るとともに「電池1の表面に熱伝導シート24が接」するものであること、及び、上記第4の1(2)のとおりの引用文献1の図4から見て取れる事項から、引用発明1の「熱伝導シート24」は、「電池1」及び「放熱部5」の間に挟着されたものであるといえる。
(ウ)本願明細書の「本発明において、「熱伝導シートの挟着面」とは、放熱装置が備える熱伝導シートの表面のうち、発熱体または放熱体と接触する表面(接している部分)を指す。なお、本発明において、熱伝導シートに関し、発熱体と接触する表面の面積と、放熱体と接触する表面の面積とが異なる場合には、「挟着面の面積」とは、上記2つの面積のうち狭い方の面積を指すものとする。」(段落【0011】)との記載、及び「本発明において、「発熱体および放熱体の被着面」とは、発熱体および放熱体が対向している側の全体面(対向全体面)のうち、互いに対向する範囲(実際に熱伝導シートを介在させているかどうかにかかわらず、発熱体と放熱体とが熱伝導シートを介して密着し得る最大範囲)における発熱体および放熱体の対向面を指す。」(同)との記載に照らすと、引用発明1における「熱伝導シート24の表面のうちの電池1と接触する表面の面積が、電池1及び放熱部5が対向している側の全体面のうちの、概ね熱伝導シート24の厚みをもって互いに対向する範囲における電池1及び放熱部5の対向面の面積よりも小さい」ことは、「熱伝導シート24」の挟着面の面積が、「電池1」及び「放熱部5」の被着面の面積よりも小さいことであるといえる。
(エ)引用発明1は、「電池1の熱が熱伝導シート24を介して放熱部5に伝わって外気に放出され、電池1は異常に高温になることを防止され」るものであるから、「電池1」、「放熱部5」及び「熱伝導シート24」は、放熱装置を構成しているということができ、当該構成は、後述する相違点を除き、本願発明1の「放熱装置」に相当する。
イ 一致点、相違点
上記アから、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「発熱体と、放熱体と、前記発熱体および前記放熱体の間に挟着された熱伝導シートと、を備える放熱装置であって、
前記熱伝導シートの挟着面の面積が、前記発熱体および前記放熱体の被着面の面積よりも小さい、放熱装置。」
(相違点1)
本願発明1は、「前記熱伝導シートの厚み方向の熱伝導率が15W/m・K以上」であるのに対して、引用発明1は、「熱伝導シート24」の熱伝導率が特定されるものではない点。
(相違点2)
本願発明1は、「前記発熱体の被着面の表面凹凸が25μm以上35μm以下であり、前記放熱体の被着面の表面凹凸が5μm以下である」のに対して、引用発明1は、「電池1の表面」における「熱伝導シート24が接」する部分の表面凹凸の程度が特定されるものではなく、「放熱部5」における「熱伝導シート24」が「貼付され」る部分の表面凹凸の程度が特定されるものでもない点。
ウ 判断
事案に鑑みて、相違点2について先に検討する。
引用文献2,3には、それぞれ、上記第4の2、同3の記載があるものの、相違点2に係る「発熱体の被着面の表面凹凸」及び「放熱体の被着面の表面凹凸」の数値範囲については記載されておらず、示唆もない。
一方、本願明細書には、「放熱装置」の具体例として「実施例」及び「比較例」についての記載(段落【0083】~【0110】)があり、それらの各「放熱装置」の種々のパラメータを測定した結果として、「表1」が示されている(段落【0109】)。
また、「実施例1」~「実施例6」において得られる効果に関して、「所定以上の高い熱伝導率を有する熱伝導シートを使用し、且つ、熱伝導シートの挟着面の面積を発熱体および放熱体の被着面の面積よりも小さくした実施例1~6では、それぞれ同じ熱伝導シートを使用し、且つ、熱伝導シートの挟着面の面積を被着面の面積と同じにした比較例1~6と比べ、全ての比較パターン(例えば、実施例1および比較例1~実施例6および比較例6の各パターン)において、熱抵抗の値が低下し、放熱装置の放熱性が向上していることが分かる。」との記載がある(段落【0110】)。
そして、本願発明1は、「実施例1」又は「実施例6」に対応するものであり、本願明細書の上記記載を踏まえると、相違点2に係る「発熱体の被着面の表面凹凸」及び「放熱体の被着面の表面凹凸」の他、「熱伝導シートの厚み方向の熱伝導率」の数値を設定する等により、上記効果を奏する(挟着面の面積を被着面の面積よりも小さくした方が、両者を同じ面積にする場合よりも熱抵抗の値が低下する)ものと解され、当該効果は引用文献1に開示されていない有利なものであるといえる。
また、本願発明1において当該効果が得られることは、出願時の技術水準から当業者が予測できたものではなく、むしろ、当該効果は引用発明1において期待される効果とは異質なものであると解される(熱伝導体の放熱体に対する接触面積が小さいほど放熱特性が悪化するのが通常であり、このことからすれば、挟着面の面積と被着面の面積との大小関係に関して本願発明1と相違しない引用発明1の放熱特性は必ずしも良好ではないと考えるのが自然であるが、本願発明1の上記効果は、このような通常のものと特性が逆である。)。
そうすると、引用発明1において、相違点2に係る「発熱体の被着面の表面凹凸」及び「放熱体の被着面の表面凹凸」の数値範囲を設定することは、当業者の通常の創作能力の範囲内であるとはいえない(請求項に数値限定を用いて発明を特定しようとする記載がある場合の進歩性の判断手法について、審査基準第III部第2章第4節「6. 数値限定を用いて発明を特定しようとする記載がある場合」を参照。)。
以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2~4に記載の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本願発明2~7について
本願発明2~7は、本願発明1を減縮した発明であり、いずれも相違点2に係る技術的事項を有するから、本願発明1と同様に、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2~4に記載の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 引用発明5との対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明5とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明5の「CPU2」は、「熱」が「発生する」から、本願発明1の「発熱体」に相当し、引用発明5の「カバー11」は、「熱伝導率」が「高」く、「フィン14が形成され」ており、「CPU2で発生した熱」が「伝わ」る先であるから、本願発明1の「放熱体」に相当する。
(イ)引用発明5において、「CPU2は熱伝導シート3を介してカバー11に接触して」いる、すなわち、「CPU2」は「熱伝導シート3」に「接触」しており、「カバー11」も「熱伝導シート3」に「接触」していること、及び、上記第4の4(2)のとおりの引用文献5の図1,2から見て取れる事項から、引用発明5の「熱伝導シート3」は、「CPU2」及び「カバー11」の間に挟着されたものであるといえる。
(ウ)上記1(1)ア(ウ)の本願明細書の記載に照らすと、引用発明5における「熱伝導シート3の表面のうちのCPU2又はカバー11と接触する表面の面積が、CPU2及びカバー11が対向している側の全体面のうちの、概ね熱伝導シート3の厚みをもって互いに対向する範囲におけるCPU2及びカバー11の対向面の面積よりも小さい」ことは、「熱伝導シート3」の挟着面の面積が、「CPU2」及び「カバー11」の被着面の面積よりも小さいことであるといえる。
(エ)引用発明5の「放熱構造」は、後述する相違点を除き、本願発明1の「放熱装置」に相当する。
イ 一致点、相違点
上記アから、本願発明1と引用発明5との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「発熱体と、放熱体と、前記発熱体および前記放熱体の間に挟着された熱伝導シートと、を備える放熱装置であって、
前記熱伝導シートの挟着面の面積が、前記発熱体および前記放熱体の被着面の面積よりも小さい、放熱装置。」
(相違点3)
本願発明1は、「前記熱伝導シートの厚み方向の熱伝導率が15W/m・K以上」であるのに対して、引用発明5は、「熱伝導シート3」の熱伝導率が特定されるものではない点。
(相違点4)
本願発明1は、「前記発熱体の被着面の表面凹凸が25μm以上35μm以下であり、前記放熱体の被着面の表面凹凸が5μm以下である」のに対して、引用発明5は、「CPU2」の表面における「熱伝導シート3」と「接触」する部分の表面凹凸の程度が特定されるものではなく、「カバー11」における「熱伝導シート3」と「接触」する部分の表面凹凸の程度が特定されるものでもない点。
ウ 判断
事案に鑑みて、相違点4について先に検討すると、上記1(1)ウで検討した相違点2と同様のことがいえる。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明5及び引用文献2~4に記載の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本願発明2~7について
本願発明2~7は、本願発明1を減縮した発明であり、いずれも相違点4に係る技術的事項を有するから、本願発明1と同様に、当業者であっても、引用発明5及び引用文献2~4に記載の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1~7は、引用文献1~5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-007238