2022-006962
冷却ロール装置
- 審判番号
- 2022-006962
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-568424外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年05月10日
- 審決日
- 2023年09月14日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .572-WZ (B22D) / P18 .575-WZ (B22D) / P18 .121-WZ (B22D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 9項目
第1 手続の経緯
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本願は、2020年(令和2年)11月18日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
同年12月 1日付け:拒絶理由通知書
同年 2月14日付け:拒絶査定
同年 5月10日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出
同年 5月17日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
同年 7月18日 :意見書、手続補正書の提出
第2 令和5年7月18日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年7月18日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正個所である。)
「 【請求項1】外周部に高温物体を接触させて冷却するための中空のロール胴部、このロール胴部内に水または湯を液体の状態で供給するために、このロール胴部の一端側から中空部に延びる単一の開口端から噴き出し、前記ロール胴部内に水または湯をためるように設けられた給水管、および前記ロール胴部内壁面に前記水または湯が接触し、その蒸発時に潜熱として前記ロール胴部から熱を奪うことにより発生した水蒸気を排出するための排出口を有し、前記ロール胴部の回転によって水または湯はほぼ同じ軸方向位置において回転方向に移動するようになっている冷却ロールと、前記排出口からの水蒸気を受け入れ、水よりも沸点の低い媒体との熱交換を行ない、前記水蒸気を液体として前記ロール胴部内に戻す第1のループ中に配置される予熱器および蒸発器と、前記予熱器および蒸発器により気体となった前記媒体を供給されるタービン、およびこのタービンからの排気を液体として前記予熱器および蒸発器にもどす第2のループ中に配置される凝縮器と、前記タービンに接続された発電機とを備えたことを特徴とする冷却ロール装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の(すなわち、令和5年3月9日にされた手続補正により補正された)特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
「 【請求項1】外周部に高温物体を接触させて冷却するための中空のロール胴部、このロール胴部内に水または湯を液体の状態で供給するために、このロール胴部の一端側から中空部に延びる単一の開口端から噴き出すように設けられた給水管、および前記ロール胴部内壁面に前記水または湯が接触し、その蒸発時に潜熱として前記ロール胴部から熱を奪うことにより発生した水蒸気を排出するための排出口を有する冷却ロールと、前記排出口からの水蒸気を受け入れ、水よりも沸点の低い媒体との熱交換を行ない、前記水蒸気を液体として前記ロール胴部内に戻す第1のループ中に配置される予熱器および蒸発器と、前記予熱器および蒸発器により気体となった前記媒体を供給されるタービン、およびこのタービンからの排気を液体として前記予熱器および蒸発器にもどす第2のループ中に配置される凝縮器と、前記タービンに接続された発電機とを備えたことを特徴とする冷却ロール装置。」
2 補正の適否
(1)補正の目的要件について
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「冷却ロール」について、上記1(1)の下線部のとおり限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2)独立特許要件について
本件補正の目的が上記(1)のとおり特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。
ア 本件補正発明の認定
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
イ 引用文献の記載事項、引用発明等
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(以下、それぞれ「引用文献1」などという。)
(ア)引用文献1について
a 引用文献1の記載事項
令和5年5月17日付け拒絶理由通知書で引用された引用文献1には、図面とともに次の記載がある(なお、下線は当審で付した。以下同じ。)。
(a)「本発明は、金属ストリップの連続熱処理工程における保有顕熱を回収する方法およびその装置に関する。冷却および過時効処理を含む冷延鋼ストリップ(以下金属ストリップと記す)の連続焼鈍における冷却は、従来、水中浸漬、ガスジェット、ロール内に水を通した水ロール、フォッグ等によって行なわれてきた。これらのいずれの方式においても、金属ストリップの保有熱は、無駄に外界に放散され、回収することができなかった。これは、冷却帯において金属ストリップを単に冷却するだけでは必要とする材質を得ることができず、鋼種によって決まる所定の冷却速度を確保しつつ冷却しなければならないことによるものである。本発明は、所定の冷却速度を確保しながら金属ストリップを冷却すると同時に、従来回収することが不可能であった金属ストリップの顕熱を回収する方法とその装置を提供することを目的とするものである。続きを表示(全11行)本発明方法は、金属ストリップの連続熱処理装置に該ストリップと接触する複数本の冷却ロールを用い、この冷却ロールの内部に熱媒体を噴射して蒸発させ、蒸発した熱媒体を該ロールから取出して貯溜し、この熱媒体を作業流体として直接用いるか、または他の作業流体を介して、該貯溜熱媒体の保有熱量を回収利用し、熱放出により液化した前記熱媒体を再び前記冷却ロール内部に循環することを特徴とする金属ストリップの顕熱回収方法に係るものである。本発明方法は、金属ストリップの連続熱処理工程における顕熱を回収するために冷却ロールを用い、冷却ロールの内部空間を密閉空間とすることによって熱媒体を大気中に放散させずに熱回収するものである。一方、冷却ロール内に噴射する熱媒体量を調節することによって金属ストリップの冷却速度を所定の冷却速度に制御する。かくして、金属ストリップの材質に対する要求を満足させる。熱媒体としては通常水を使用する。金属ストリップの冷却速度と、熱回収して熱利用する利用速度との調整のために含熱熱媒体を貯溜する。貯溜された熱媒体はそれ自身を直接作業流体として熱利用設備の熱源として用いるか、または他の作業流体、例えば、フロン、アンモニア、ブタン、プロパン等の低沸点物質と熱交換させ、それらの低沸点物質な作業流体とする発電システム等によって回収熱を利用する。この熱利用の結果、前記熱媒体は液化するので、これを再び冷却ロールに循環すれば連続熱回収ができる。次に本発明の装置は、上記本発明方法の実施に直接使用する装置であって、連続熱処理する金属ストリップと外周において当接しつつ回転し内部に熱媒体噴射ノズルを内蔵した複数本の密閉型冷却ロールと、該ロールの熱を吸収した熱媒体を貯溜する熱媒体タンクと、この熱媒体自体若しくはこの熱媒体と熱交換した低沸点物質を作業流体とする発電装置または熱消費設備と、前記熱媒体を前記冷却ロールに還流する圧送ポンプと、この還流量な制御する制御装置とを備えたことを特徴とする金属ストリップの顕熱回収装置である。」(1ページ右下欄6行~2ページ左下欄7行)
(b)「以下、図面によって本発明を説明する。第1図は本発明の実施例のフローシートである。図において、2は冷却ロール、3は熱媒体流量調節弁、4は熱媒体供給管、5は熱媒体噴出管、6はノズル、8は熱媒体排出管、9はロータリージヨイント、10はロール軸受、12は高温側熱媒体タンク、13は低温側熱媒体タンク、14.15はポンプ、16は熱回収システムで例えば発電装置または熱消費設備、17.18は伝熱管である。第2図は熱回収用の冷却ロール2の縦断面を示し、第3図はそのA-A矢視図である。冷却ロール2はシエル7の外周において金属ストリップと当接しながら軸受10に支承されて回転し、内部に熱媒体噴射ノズル6を備えた熱媒体噴出管5を内蔵し、金属ストリップを冷却する。冷却ロールの回転する部分と両端の回転しない部分とは、ロータリージヨイント9によって連結されている。ノズル6から噴射された熱媒体はロールシェル7の内面においてシエル7より受熱してシエルを冷却する。ノズル6から噴射されるスプレー11(第3図)の形状は、冷却ロール2の冷却能力に応じて定めることができる。冷却ロール2内で蒸発した熱媒体は、熱媒体タンク12に送られて貯蔵される。熱媒体タンク12は、冷却ロール側の冷却量と熱利用側の熱利用量との間の緩衝装置の作用と、熱交換伝熱管17の伝熱効率向上の作用とをなすものである。熱回収システム16は、例えば低沸点物質を作業流体として構成される発電システムである。フロン、アンモニア、ブタン、またはプロパン等の低沸点物質は低温側の熱媒体タンク13内で伝熱管18によって予熱され、高温側の熱媒体タンク12内の伝熱管17内を通って気化し、発電システム16でタービン発電機により発電し、復液後、伝熱管18へ入る。伝熱管18によって低沸点物質に熱を奪われた熱媒体は液化し、還流ポンプ15により、冷却ロール2へ還流される。この還流量は熱媒体流量調節弁3によって、冷却ロールの所要冷却能力に適合するよう制御される。熱回収システム16として、例えば酸洗ラインの温水槽またはクリーニングラインの温水槽などの高温水使用設備を利用する場合には、熱媒体タンク12,13内の伝熱管17,18内に水を通水し高温水として熱回収する。この場合、第5図に例示するように冷水21を導入してオープンサイクルで熱回収することももちろんできる。」(2ページ左下欄8行~3ページ左上欄下から6行)
(c)「実施例1第2図に示す冷却ロールを、ロール径1500mm、シエル厚30mm、材質SS41で製作した。この冷却ロール8本表使用し、金属ストリップを巻付角180度で巻付け、冷却した。冷却熱媒体として水を使用し、1.0mm厚、1000mm幅の金属ストリップを400m/分の速度で通過させ、その温度を650℃から400℃まで降下させるよう冷却速度を調整した。冷却熱媒体と熱交換させたR-11を作業流体とするフロン発電システムにより、軸流タービン誘導発電機を用いて発電を行ない836KWの電力を得た。この発電システムの正味サイクル効率は9%であった。」(3ページ右上欄9行~左下欄2行)
(d)第1図「
[図:0001404127000001.jpg]
」
(e)第2図「
[図:0001404127000002.jpg]
」
(f)第3図「
[図:0001404127000003.jpg]
」
b 引用文献1に記載された技術的事項
上記aの記載事項から、引用文献1に記載された金属ストリップの顕熱回収装置に関して、次の技術的事項が記載されているといえる。
(a)シエル7は、外周に金属ストリップを当接させて冷却するためのものであること(上記a(b))。
(b)熱媒体供給管4は、シエル7の内部に熱媒体を噴射するために、シエル7の一端側(上記a(e)に示す第2図における右側)から内部に延びるように設けられていること(上記a(b)、(d)、(e))。
(c)熱媒体排出管8は、シエル7の内部に熱媒体が噴射され、シエル7の内面においてシエル7より受熱することにより蒸発した熱媒体を排出すること(上記a(b)、(d)~(f))。
(d)冷却ロール2は、シエル7、熱媒体供給管4及び熱媒体排出管8を有していること(上記a(b)、(d)、(e))。
(e)熱媒体タンク13及び熱媒体タンク12は、熱媒体排出管8から蒸発した熱媒体を受け入れ、低沸点物質との熱交換を行い、熱媒体を液化させてシエル7へ還流する循環(以下「循環A」という。)の中に配置されていること(上記a(b)、(d))。
(f)熱媒体は、水であること(上記a(a)、(c))。
(g)熱回収システム16を含む循環(以下「循環B」という。)は、熱媒体タンク13及び熱媒体タンク12により気化された低沸点物質を作業流体とするタービン発電機、及びこのタービン発電機からの排気を復液して熱媒体タンク13及び熱媒体タンク12に戻すこと(上記a(b)、(d))。
(h)低沸点物質は、熱媒体タンク13内で予熱され、熱媒体タンク12内で気化されること(上記a(b)、(d))。
(i)金属ストリップの顕熱回収装置は、冷却ロール2、熱媒体タンク13、熱媒体タンク12、熱回収システム16を含む循環B及びタービン発電機を備えていること(上記a(b)、(d))。
c 引用文献1から理解できる事項
(a)熱媒体は水であるから、蒸発した熱媒体は水蒸気であること(上記b(c)、(f))。
(b)タービン発電機は、タービンを回して発電をする機械であるから、タービンに発電機が接続されていること(上記b(g)、(i))。
d 引用発明1
上記a~cから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「外周に金属ストリップを当接させて冷却するためのシエル7、このシエル7の内部に水を噴射するために、このシエル7の一端側から内部に延びるように設けられた熱媒体供給管4、および前記シエル7の内部に前記水が噴射され、シエル7の内面においてシエル7より受熱することにより蒸発した水蒸気を排出するための熱媒体排出管8を有する冷却ロール2と、前記熱媒体排出管8からの水蒸気を受け入れ、低沸点物質との熱交換を行い、前記水蒸気を液化させてシエル7へ還流する循環Aの中に配置される低沸点物質を予熱させる熱媒体タンク13及び低沸点物質を気化させる熱媒体タンク12と、前記熱媒体タンク13及び前記熱媒体タンク12により気化された前記低沸点物質を作業流体とするタービン発電機のタービン、及びこのタービンからの排気を復液して前記熱媒体タンク13及び前記熱媒体タンク12に戻す循環Bと、前記タービンに接続された発電機とを備えた金属ストリップの顕熱回収装置。」
(イ)引用文献3について
a 引用文献3の記載事項
令和5年5月17日付け拒絶理由通知書で引用された引用文献3には、図面とともに次の記載がある。
(a)「本発明は、ファーネス・ローラのように、外部から加熱を受ける金属製ロール等の冷却方法及び装置に関するものである。」(1ページ右下欄12~14行)
(b)「このために、本発明は、冷却されるべきロールを中空とし、内面に冷媒あるいは吸収剤の希溶液を供給し、これをロール内面に沿って薄膜状に流すことによって冷媒の気化あるいは希溶液からの冷媒としての水の蒸発に必要とされる熱をロール内面から奪い、これによってロールの効果的な冷却を行ない、また、この際に気化した冷媒あるいは濃縮された吸収剤溶液はロール外に導いて冷却によって凝縮・液化あるいは蒸気を吸収させて再び循環使用するようにすることを特徴とするものである。以下、本発明をその装置の実施例を示す添附図面に基づいて詳細に説明する。まず、第1図は冷媒の気化を応用した本発明装置の1実施例の全体の配置の概要を示すもので、水平に直列に配置された複数個のファーネス・ローラの各ロール1を中空に形成し、その内面に高置タンク2から冷媒供給配管3、それから並列して分岐する分岐配管4並びに各流量調節弁5を経てタンク2内の冷媒6を流下させ、冷媒6の気化によって各ロール1の内面を冷却し、この場合に気化した冷媒を各排出分岐管7を経て集合管8に集めた後、導管9、10を介して冷却塔11に導く。冷媒は冷却塔11の内部において、外部から矢印のように供給される冷却水12によって冷却され、再び液化して高置タンク2にもどり、再びロール1の冷却に使用される。なお、これら流体の系路内は、使用する冷媒の種類に応じた減圧状態に保つために、すべて気密構造とする。このために、冷媒の循環前に、系路内の不純ガスを取除く必要があるが、この目的のために真空ポンプ13を導管9、10に接続し、これによってあらかじめ系内からの排気を行なうことができるようにしてある。なお、第1図において、14は圧力計、15は弁、16は調圧弁を示すものである。次ぎに、第2図はロール1の部分の詳細図であって、第1図に示す冷媒供給配管3から分岐した冷媒供給分岐配管4が、ロール1の一方の首部の中心からロール1の回転軸20に沿ってロール1の中空胴内に導入され、回転軸20の近くにおいて開口している。また、ロール1の他方の首部には気化した冷媒の排出分岐管7がロール1の中空胴内に開口して取付けられている。これらの冷媒供給分岐配管4と排出分岐管7とは、適当な真空シール21(例えば、Oリングシール、ウイルソンシール、ガコー・シール等)によって、ロール1の首部との間において気密状態に回転可能に保持されている。」(2ページ左上欄12行~左下欄末行)
(c)「更に、ロール1の回転が速い場合には、第6図に示すように、ロール1の胴部22の内面が冷媒の供給側から排出側に向かって広がるテーパ26を持たせることによって、供給された冷媒を遠心力によって内面に沿って薄膜状に流すこともできる。なお、第2~6図において、27は軸受を示すものである。」(2ページ右下欄15行~3ページ左上欄2行)
(d)「なお、本発明は以上に説明したようなファーネス・ローラ,テーブル・ローラ等のロールに適用されるだけではなく、連続鋳造装置のピンチ・ローラにも応用することができ、更に、ゴムや塗料の練り用ロールの冷却にも利用することができる等その応用分野も極めて広いものである。」(3ページ左下欄末行~右下欄6行)
(e)第1図「
[図:0001404127000004.jpg]
」
(f)第2図「
[図:0001404127000005.jpg]
」
(g)第6図「
[図:0001404127000006.jpg]
」
b 引用文献3から理解できる事項
上記aの記載事項から、次の事項を理解できる。
(a)金属製ロール等の冷却装置は、中空のロール1内に冷媒6を液体の状態で供給するために、このロール1の一端部から中空胴内に延びる分岐配管4、及び前記ロール1内で気化した冷媒6を排出するための排出分岐管7を有する前記ロール1を備えていること(上記a(a)、(b)、(e)、(f))。
(b)ロール1の中空胴内に延びる分岐配管4は、冷媒6を単一の開口端から噴き出すように設けられていること(上記a(f))。
(c)分岐配管4は、冷媒6をロール1の内面に沿って薄膜状に流しているから、ロール1の中空胴内に冷媒6がたまるように設けられていること(上記a(b))。また、中空のロール1が回転することで、冷媒には遠心力が作用すること(上記a(c))。さらに、第2図の実施形態では、第6図の実施形態とは異なり、ロール1の内面にテーパが形成されていないことから、技術常識を踏まえれば、当該遠心力は、冷媒がほぼ同じ軸方向位置において回転方向に移動するように作用すること(上記a(f)、(g))。
(d)中空のロール1は、連続鋳造装置のピンチ・ローラに応用できること(上記a(c))。
c 引用文献3に記載された技術的事項
上記bの事項を整理すると、引用文献3には、第2図の実施形態として、次の技術的事項(以下「引用文献3に記載された技術的事項」という。)が記載されているということができる。
「連続鋳造装置の金属製ロール等の冷却装置において、中空のロール1内に冷媒6を液体の状態で供給するために、このロール1の一端部から中空胴内に延びる単一の開口端から噴き出し、前記ロール1の中空胴内に冷媒6がたまるように設けられた分岐配管4、及び前記ロール1内で気化した冷媒6を排出するための排出分岐管7を有し、前記ロール1の回転によって冷媒6はほぼ同じ軸方向位置において回転方向に移動するようになっている前記ロール1を備えること。」
ウ 周知技術の認定
(ア)引用文献の記載事項
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a 引用文献1について
引用文献1には、上記ア(ア)のほか、図面とともに次の記載がある。
(a)「第4図は、冷却ロール2から排出される気化した熱媒体をアキュムレータ19に貯溜し発電システム16に供給し、復水器20にて熱媒体を冷却させ、熱媒体タンク12に貯溜しポンプ15にて冷却ロール2へ熱媒体を循環供給する。」(3ページ左上欄下から5行~末行)
(b)第4図「
[図:0001404127000007.jpg]
」
b 引用文献2について
令和5年5月17日付け拒絶理由通知書で引用された引用文献2には、図面とともに次の記載がある。
(a)「24は、タービン21の蒸気出側に配管25を介して接続した凝縮器」(2ページ右下欄1~3行)
(b)「回転ドラム1内の通路を通過する過程で加熱された冷媒は、冷媒出口回転軸4’から配管17を通って熱交換器16に送られ、ここで、熱交換され、温度低下した冷媒は、熱交換器16から冷媒循環ポンプ18により再び配管17を通って冷媒入口回転軸4に送られ通路3内を循環する。熱交換器16からの蒸気は、配管20を通り気水ドラム19に送られ、ここで水分が除去された後、配管22を通ってタービン21に送られる。そしてタービン21によって発電機23が駆動される。タービン21を出た蒸気は、配管25を通って凝縮器24に送られ、ここで、蒸気は水になり、循環水ポンプ28により再び熱交換器16に戻される。」(3ページ左上欄2~15行)
(c)「以上説明したように、この発明によれば、型銃を効率良く製造できることは勿論、溶銃の保有する熱量を効率良く回収でき、」(3ページ左上欄20行~右上欄2行)
(d)第1図「
[図:0001404127000008.jpg]
」
(イ)周知技術
上記(ア)に示した引用文献1~2の記載に例示されるように、次の技術的事項は、本件出願前において、当業者にとって周知技術であったといえる。
「冷却ロール装置における熱回収のための、発電機に接続されたタービンの下流側に、タービンからの排気を液体に戻すための凝縮器を設けること。」
エ 本件補正発明と引用発明1との対比
(ア)本件補正発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「外周」は本件補正発明の「外周部」に相当し、以下同様に、「金属ストリップ」は「高温物体」に相当し、「当接」は「接触」に相当し、「シエル7」は「中空のロール胴部」に相当し、「水」は「水または湯」に相当し、「噴射」は「供給」に相当し、「内部」は「中空部」に相当し、「シエル7の内部」は「ロール胴部内壁面」に相当し、「熱媒体供給管4」は「給水管」に相当し、「熱媒体排出管8」は「排出口」に相当し、「冷却ロール2」は「冷却ロール」に相当し、「低沸点物質」は「水よりも沸点の低い媒体」に相当し、「循環A」は「第1のループ」に相当し、「低沸点物質を予熱させる熱媒体タンク13」は「予熱器」に相当し、「気化された低沸点物質を作業流体とするタービン発電機のタービン」は「気体となった前記媒体を供給されるタービン」に相当し、「低沸点物質を気化させる熱媒体タンク12」は「蒸発器」に相当し、「循環B」は「第2のループ」に相当し、「金属ストリップの顕熱回収装置」は「冷却ロール装置」に相当する。
また、引用発明1の「シエル7の内面においてシエル7より受熱することにより蒸発した水蒸気」は本件補正発明の「蒸発時に潜熱として前記ロール胴部から熱を奪うことにより発生した水蒸気」に相当し、以下同様に、「前記水蒸気を液化させてシエル7へ還流する」ことは「前記水蒸気を液体として前記ロール胴部内に戻す」ことに相当し、「タービンからの排気を復液」することは「タービンからの排気を液体と」することに相当する。
(イ)以上のことから、本件補正発明と引用発明1との一致点、相違点は、次のとおりである。
a 一致点
「外周部に高温物体を接触させて冷却するための中空のロール胴部、このロール胴部内に水または湯を液体の状態で供給するために、このロール胴部の一端側から中空部に延びるように設けられた給水管、および前記ロール胴部内壁面に前記水または湯が接触し、その蒸発時に潜熱として前記ロール胴部から熱を奪うことにより発生した水蒸気を排出するための排出口を有する冷却ロールと、前記排出口からの水蒸気を受け入れ、水よりも沸点の低い媒体との熱交換を行ない、前記水蒸気を液体として前記ロール胴部内に戻す第1のループ中に配置される予熱器および蒸発器と、前記予熱器および蒸発器により気体となった前記媒体を供給されるタービン、およびこのタービンからの排気を液体として前記予熱器および蒸発器にもどす第2のループと、前記タービンに接続された発電機とを備えた冷却ロール装置。」
b 相違点
(a)相違点1
給水管に関し、本件補正発明は、「単一の開口端から噴き出し、前記ロール胴部内に水または湯をためるように設けられ」ているのに対し、引用発明1は、そのように設けられているか不明な点。
(b)相違点2
冷却ロールに関し、本件補正発明は、「前記ロール胴部の回転によって水または湯はほぼ同じ軸方向位置において回転方向に移動するようになっている」のに対し、引用発明1は、ロール胴部の回転によって水がどのように移動するのか不明な点。
(c)相違点3
本件補正発明は、第2のループ中に凝縮器が配置されるのに対し、引用発明1は、第2のループ中に凝縮器が配置されているか不明な点。
オ 判断
(ア)相違点1について
引用発明1と上記イ(イ)cに示した引用文献3に記載された技術的事項とは、どちらも連続鋳造装置に使用される冷却ロール装置という同一の技術分野に属し、中空のロール胴部内に冷媒を液体の状態で供給し、冷媒の蒸発時に潜熱としてロール胴部から熱を奪うことによりロール胴部を冷却するという共通の機能を有するものである。さらに、引用文献1には「ノズル6から噴射されるスプレー11(第3図)の形状は、冷却ロール2の冷却能力に応じて定めることができる。」(上記イ(ア)a(b))との記載されるように、冷却ロール2に求められる冷却能力に応じて、冷媒の供給方法を適宜変更可能とすることが示唆されていることから、引用発明1に引用文献3に記載された技術的事項を適用して、給水管を、単一の開口端から噴き出し、ロール胴部内に水をためるように設けることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
(イ)相違点2について
引用文献3に記載された技術的事項は、上記イ(イ)a(c)、同b(c)及び同cのとおり、ロール胴部内に冷媒がたまるものであって、ロールが高速で回転した場合に、ロール胴部内にたまった冷媒に対して遠心力が作用し、当該冷媒が、ほぼ同じ軸方向位置において回転方向に移動するものであるといえる。
してみると、上記(ア)のとおり、引用発明1に引用文献3に記載された技術的事項を適用し、給水管を、ロール胴部内に水をためるように設けることで、必然的に、ロール胴部の回転によって水はほぼ同じ軸方向位置において回転方向に移動するものになると認められる。
(ウ)相違点3について
引用発明1と上記エ(イ)に示した周知技術とは、どちらも冷却ロール装置における熱回収のためのタービンの排気を液体に戻す技術であるから、引用発明1に上記周知技術を適用して、第2のループにおけるタービンの下流側に凝縮器を配置することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
カ 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明1、引用文献3に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(3)審判請求人の主張
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請求人は、令和5年7月18日提出の意見書において、「引用文献3に記載された発明では、その第3図および第2頁左上欄第12行~第18行に記載されているように、冷却されるべきロールを中空とし、内面に冷媒を供給し、これをロール内面に沿って薄膜状に流すことによって冷媒の気化に必要とされる熱をロール内面から奪い、これによってロールの効果的な冷却を行うことを特徴とする。具体的には、第3図および第2頁右下欄第1行~第4行に記載されているように、ロールの胴部22の内部にら旋状の案内羽根23を設ける。第4図および第2頁右下欄第6行~第9行に記載されているように、ロール1の内面の冷媒供給側に円周に沿ったみぞ24を設け、更に、冷媒を軸方向に導くために数条の突条25をロール1の内面に斜めに設ける。第5図および第2頁右下欄第11行~第14行に記載されているように、みぞ24を省略するか、あるいは突条25の代わりに浅いみぞを用いる。第6図および第2頁右下欄第15行~第20行に記載されているように、ロール1の胴部22の内面が冷媒の供給側から排出側に向かって広がるテーパ26を持たせることによって、供給された冷媒を遠心力によって内面に沿って薄層状に流す。このように引用文献3に記載された発明では、ロールの回転によって供給側から排出側に向かって中空表面上に冷媒を薄膜状に流すようにしている。
すなわち、引用文献3に記載された発明は、供給側から排出側に向かってロール内面に冷媒を薄膜状に流すための上記のような特別な構造をロール内に備えるものであり、このような構造を備えることは本願明細書の0032段落~0033段落において説明しているように、冷却ロールの製造コスト増となる。」と主張している。
しかし、引用文献3に記載された技術的事項は、第2図の実施態様を認定したものである。すなわち、上記(2)イ(イ)a(f)に示した第2図には、上記第3~6図に示される特別な構造を、その内面に有していないロール1が示されており、このようなロール1においては、製造コストが増えることはないし、上記(2)オ(イ)で説示したとおり、ロール1の中空胴内の回転によって遠心力が作用することで冷媒6はほぼ同じ軸方向位置において回転方向に移動することは明らかである。また、引用文献3の第2図に示されたロール1において分岐配管4から供給された冷媒6が、ロール1の内面で軸方向に広がるような移動をするものであるとしても、軸方向への移動が優位になるか回転方向への移動が優位となるかは、ロール1の回転速度、冷媒6の供給流量等により異なるものであって、ロール1の回転速度が速く、冷媒6の供給流量が少なければ、遠心力の作用により回転方向への移動が優位となり、他方、冷媒6の供給流量が多く、冷媒の液層の厚さ差が大きくなれば、軸方向への移動が優位となると思量されるところ、引用文献3に記載された技術的事項においては、冷媒6は薄膜状に流すことを意図しているものであるから、遠心力の作用の方が大きいことは明らかである。してみると、本件補正発明においてもロール胴部がある程度の軸方向寸法を有している以上、単一の開口端から噴き出した水または湯がロール胴部内で軸方向に広がるような移動をする点で、引用文献3に記載された事項と大差がないことは明らかである。してみると、引用文献3の第2図に示されたロール1においても本件補正発明と同様に「ほぼ同じ軸方向位置」において回転方向に移動するものであるといえる。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
(4)補正の適否のまとめ
上記(2)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件に違反するので、同法第159条第1項により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明
令和5年7月18日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和5年3月9日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)の請求項1に記載されたとおりのものである。
第4 当審において通知した拒絶理由
1 拒絶理由の概要
令和5年5月17日付けで当審において通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は、次のとおりである。
<理由1(進歩性)について>
本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において頒布された以下の引用文献1~3に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2 当審拒絶理由における理由1(進歩性)についての判断
(1)引用文献に記載された発明等
当審において通知した拒絶理由通知書で引用された引用文献1~3には、上記第2の[理由]2(2)イ及びウに示した事項が記載され、引用発明1は同イ(ア)dに、引用文献3に記載された技術的事項は同イ(イ)cに、周知技術は同ウ(イ)に、それぞれ示したとおりである。
(2)本願発明の容易想到性の判断
本願発明は、前記第2の[理由2]2で検討した本件補正発明から、「給水管」についての「前記ロール胴部内に水または湯をためる」ように設けられたという限定事項を削除し、「冷却ロール」についての「前記ロール胴部の回転によって水または湯はほぼ同じ軸方向位置において回転方向に移動するようになっている」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおり、引用発明1、引用文献3に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明1、引用文献3に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)小括
よって、本願発明は、引用発明1、引用文献3に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
上記のとおりであるから、本願発明は、引用発明1、引用文献3に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-006962