2022-001307
金属鋳造及び圧延ライン
- 審判番号
- 2022-001307
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-136203外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年01月28日
- 審決日
- 2022年10月12日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ノベリス・インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】松谷 道子
- 【請求人代理人】山本 宗雄
- 分類
- P18 .121-Z (B22D) / P18 .572-Z (B22D) / P18 .575-Z (B22D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第50条の2、特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
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本願は、2017年(平成29年)9月27日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2016年10月27日 アメリカ合衆国(3件)、2017年5月14日 アメリカ合衆国、2017年7月6日 アメリカ合衆国)に国際出願した特願2019-522748号の一部を、2020年(令和2年)8月12日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
を伴う拒絶理由通知)
ての補正の却下の決定、拒絶査定
手続補正書の提出
第2 令和4年1月28日にされた手続補正についての補正却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年1月28日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1~8についてのものであるところ、請求項6の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「 【請求項6】連続鋳造装置を用いた金属ストリップの連続鋳造すること;および前記金属ストリップが前記連続鋳造装置を出た後、前記金属ストリップを50%~70%の厚さの減少率で熱間又は温間圧延することを含む方法であって、前記金属ストリップを熱間又は温間圧延することが、圧延スタンドの噛み合いにおいて、前記金属ストリップから熱の抽出すること;および金属ストリップの厚さを減少させるために金属ストリップに力を加える際に、加えられた力が金属ストリップの温度で金属ストリップを再結晶化させるのに十分な力であるように力を加えること、を包含し、前記金属ストリップが、3xxx、5xxx、6xxxまたは7xxxアルミニウム合金である、方法。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲の請求項7は、令和2年10月2日の手続補正(なお、令和3年8月19日にされた手続補正は、令和3年9月29日付け補正の却下の決定により、却下された。)による特許請求の範囲の請求項7であるところ、その記載は次のとおりである(なお、本件補正後の請求項6は、本件審判請求書の3(2)(2-4)に記載されるように、本件補正前の請求項7に基づいて補正されたものである。)。
「 【請求項7】連続鋳造装置を用いた金属ストリップの連続鋳造すること;および前記金属ストリップが前記連続鋳造装置を出た後、前記金属ストリップを約50%~70%の厚さの減少率で熱間又は温間圧延することを含む方法であって、前記金属ストリップを熱間又は温間圧延することが、圧延スタンドの噛み合いにおいて、前記金属ストリップから熱の抽出すること;および金属ストリップの厚さを減少させるために金属ストリップに力を加える際に、加えられた力が金属ストリップの温度で金属ストリップを再結晶化させるのに十分な力であるように力を加えること、を包含する、方法:。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正後の請求項6に関し、本件補正前の請求項7に記載された発明を特定するために必要な事項である「金属ストリップ」について、「前記金属ストリップが、3xxx、5xxx、6xxxまたは7xxxアルミニウム合金である」との限定を付加するものである。
また、本件補正は、本件補正前の請求項7に記載された「約50%~70%の厚さ」を「50%~70%の厚さ」と「約」を削除することで数値範囲を明確化するとともに、「方法:。」という誤記を、「方法。」と訂正するものである。
そして、補正前の請求項7に記載された発明と補正後の請求項6に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮、同3号の誤記の訂正及び同4号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項6に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項、技術的事項、引用発明
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ア 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、米国特許出願公開第2003/0150587号明細書(以下、単に「引用文献」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「[0001] This invention relates to aluminum alloys and more particularly, it relates to a control process for producing aluminum alloy sheet product having controlled recrystallization. 」
<当審訳>
「[0001] 本発明は、アルミニウム合金に関し、より詳細には、制御された再結晶を有するアルミニウム合金シート製品を製造するための制御プロセスに関するものである。」
「[0029] The FIGURE is a schematic representation of the process of the invention showing a continuous caster, hot rolling mill, induction heater, quench, recrystallization measuring unit and controller for the system. 」
<当審訳>
「[0029] この図は、本発明のプロセスの概略図であって、連続鋳造装置、熱間圧延装置、誘導加熱装置、急冷装置、再結晶化測定手段、及び、当該システムのための制御装置を示している。」
「[0030] Referring now to the FIGURE, there is shown a schematic representation of a system 2 employing a belt caster 3 for producing aluminum sheet in accordance with the invention. In the FIGURE, molten metal 10 is provided in a furnace or reservoir 12. Molten metal from reservoir 12 is directed along line 14 to tundish 16 from where it is metered through a nozzle 18 into an advancing mold created by revolving belts 20 and 22 and side dams (not shown). Belts 20 and 22 are turned by means of rolls 24. Molten metal, e.g., molten aluminum, is solidified to form a continuous slab 15 between belts 20 and 22 which are chilled using coolant spray 26. Belt caster 3 is described in U.S. Pat. Nos. 3,864,973; 3,921,697; 4,648,438;4,940,076 and 4,972,900, incorporated herein by reference as if specifically set forth. Improved nozzles for a belt caster are set forth in U.S. Pat. No. 5,452,827, incorporated herein by reference. 」
<当審訳>
「[0030] 図を参照すると、本発明に従ったアルミニウムシートを製造するためのベルト式鋳造装置3を使用するシステム2の概略図が示されている。図において、溶融金属10は、炉又はリザーバ12内に供給されている。リザーバ12からの溶融金属は、ライン14に沿ってタンディッシュ16に導かれ、ノズル18を通って計量され、回転ベルト20,22及びサイドダム(図示せず)によって形成される送り出し鋳型に供給される。ベルト20及び22は、ロール24を用いて回転される。例えば、溶融アルミニウムである溶融金属は、冷却剤スプレー26を使用して冷却されるベルト20、22の間で連続的なスラブ15を形成して固化される。ベルト式鋳造装置3は、具体的に説明されたものとして、米国特許第3,864,973号;第3,921,697号;第4,648,438号;第4,940,076号および第4,972,900号に記載され、本明細書に組み込まれる。ベルト式鋳造装置用の改良されたノズルは、米国特許第5,452,827号に記載され、本明細書に組み込まれる。」
「[0033] Molten aluminum is typically introduced to the caster in a temperature range of about 1220°to 1320°F. and typically exits the caster at a temperature in the range of 750°to 1150°F., depending on the aluminum alloy being cast. In addition, typically the continuous slab exiting the belt caster has a thickness in the range of 0.1 to 2 inches, for example, 0.2 to 1 inch. 」
<当審訳>
「[0033]鋳造されるアルミニウム合金に応じて、溶融アルミニウムは、通常華氏約1220°~1320°F(当審注:摂氏約660~715.6℃)の温度範囲で鋳造装置に導入され、通常華氏750~1150°F(当審注:摂氏約398.9~621.1℃)の温度範囲で鋳造装置から出る。さらに、通常、ベルト式鋳造装置を出る連続スラブは、0.1~2インチ、例えば、0.2~1インチの範囲の厚さを有する。」
「[0039] After exiting the caster, the slab 15 is directed to rolling mill 30 where it is rolled to form a rolled strip or flat product 34 using preferably a hot mill. Hot mill 30 is comprised of one or more pairs of oppositely opposed rolls 32 which reduces the thickness of the slab a controlled amount as it passes between each stand of rolls. Three sets of hot stands or rolls are illustrated in the FIGURE. For example, slab 15 having a thickness of about 0.2 to 1 inch would be reduced to a sheet product having a thickness of about 0.01 to 0.25 inch. The thinner gauge can be used for drawn and iron cans and thicker gauge, e.g., 0.25 inch, used for wheel rim stock. The temperature of the slab entering hot mill 30 would typically be in the range of about 700°to 1100°F., if no heat is added. Typically, temperature of sheet product exiting mill 30 would be in the range of 350°to 700°F. In another aspect of the invention, the slab from caster 3 maybe heated (not shown in the FIGURE) to a temperature of 800°to 1100°F. to aid in improving the texture and grain structure of the slab prior to hot rolling. Thus, slab entering the hot mill will have temperatures of about 800°to 1100°F. 」
<当審訳>
「[0039] 鋳造装置を出た後、スラブ15は圧延装置30に向けられ、そこでは、好ましくは熱間圧延装置を用いて、圧延されたストリップ材または平らな製品34を形成するために圧延される。熱間圧延装置30は、1対又は複数対の対向ロール32からなり、対向ロール32は、スラブがロールの各スタンド間を通過するときにスラブの厚さを制御された量だけ減少させる。図には3組の熱間スタンド又はロールが示されている。例えば、約0.2~1インチの厚さを有するスラブ15は、約0.01~0.25インチの厚さを有するシート製品に減少される。より薄いゲージ(板厚)は延伸材や鉄缶に使用され、より厚いゲージ(板厚、例えば、0.25インチ)は金属製のホイールリムに使用される。熱間圧延装置30に入るスラブの温度は、熱が加えられなければ、通常には、華氏約700°~1100°F(当審注:摂氏約371.1~593.3℃)の範囲である。通常、圧延装置30から出るシート製品の温度は、華氏約350°~700°F(当審注:摂氏約176.7~371.1℃)の範囲である。本発明の別の態様においては、ベルト式鋳造装置3からのスラブは、熱間圧延に先立つスラブのテクスチャ及び結晶粒構造を向上させるために、華氏約800°~1100°F(当審注:摂氏約426.7~593.3℃)の温度まで加熱(図には示されていない)されてもよい。したがって、熱間圧延装置に入るスラブは、華氏約800°~1100°F(当審注:摂氏約426.7~593.3℃)の温度を有する。」
「[0040] Hot mill 30 can reduce the thickness of the slab about 60 to 95% of its thickness, with typical reduction being 80 to 95% reductions. Depending on the alloy and the end use of the sheet product, heat may be applied to the strip or slab between hot stands in addition to or instead of heating prior to the hot mill. 」
<当審訳>
「[0040] 熱間圧延装置30は、スラブの厚さを約60~95%減少させることができ、典型的な減少率は80~95%の減少量である。合金やシート製品の最終用途に応じて、熱間圧延装置前の加熱に加えて、またはその代わりに、熱間スタンド間のストリップ又はスラブに熱が加えられてもよい。」
「[0041] The temperature of the aluminium alloy sheet exiting the hot mill is typically in the range of about 500°to 825°F. , depending on the alloy and the heat input applied before or during hot rolling. 」
<当審訳>
「[0041] 熱間圧延装置から出るアルミニウム合金シートの温度は、典型的には華氏約500°~825°F(当審注:摂氏約260.0~440.6℃)の範囲内であり、合金や、熱間圧延前又は熱間圧延中に加えられる熱入力に依存する。」
「[0042] After hot rolling, hot rolled strip 34 can have a hot rolled texture and grain structure which is a highly worked structure containing subgrains and as worked crystallographic texture. The hot rolled strip can have a partial or fully recrystallized grain structure with an optimum texture depending on previous heat input and rolling reduction. If the structure remains deformed and a recrystallized grain structure is necessary for the end product, then in-line annealing of the hot rolled strip 34 can be applied to promote recrystallization of the worked structures. For example, it is important for automotive application using 5XXX aluminum alloys to have a fine, fully recrystallized grain structure with low intensity of either recrystallization or deformation texture for the purpose of forming and low earing. Thus, in the present invention, the hot rolled sheet can be fully annealed in annealer 40 to promote primary recrystallization having fine grain structure by controlling heat input and rolling reduction.」
<当審訳>
「[0042] 熱間圧延後、熱間圧延されたストリップ34は、亜結晶粒、結晶学的テクスチャを含有する高度に加工された構造である、熱間圧延されたテクスチャ及び結晶粒構造を有することができる。熱間圧延されたストリップは、事前の熱入力及び圧下量に応じて、最適なテクスチャを備えた部分的または完全に再結晶した結晶粒構造を有することができる。この構造が変形したままであり、再結晶粒子構造が最終製品に必要である場合には、熱間圧延ストリップ34のインラインアニールが、加工構造の再結晶化を促進するために適用される。例えば、5xxx系アルミニウム合金を使用する自動車用途では、成形工程及び低いイヤリング性の目的で、再結晶化または変形テクスチャのいずれかの密度が低い、微細な、完全に再結晶した結晶粒構造を有することが重要である。このように、本発明では、熱間圧延されたシートは、熱入力及び圧延率を制御することにより微細な結晶粒組織を有する一次再結晶を促進するために、アニール装置40において完全にアニールすることができる。」
「[0043] Controller 100 can be set up to monitor hot mill 30 operations by monitoring temperature of aluminum slab entering hot mill 30. Also, controller 100 can monitor hot milling reduction in the slab, the amount of hot mill coolant applied, and hot rolling speed. Thus, controller 100 can operate to increase or decrease the temperature of the sheet exiting the hot mill, and change the amount of reductions, the amount of hot mill coolant, and the speed of the rolls as desired. It will be appreciated that hot roll reductions to final gauge can eliminate further reductions by cold rolling, for example, thereby providing significant savings. Further, if sufficient heat is applied, there may be no need for further annealing to provide texture and grain structure desired. That is, the hot rolled sheet may be cooled in air to room temperature or it may be quenched rapidly for further cold rolling, for example, depending on the alloy and the end use of the sheet product.」
<当審訳>
「[0043] 制御装置100は、熱間圧延装置30に入るアルミニウムスラブの温度を監視することで、熱間圧延装置30の動作を監視するように構成することができる。また、制御装置100は、スラブの熱間圧延減少率、熱間圧延装置の冷却剤の塗布量および圧延速度を監視することができる。すなわち、制御装置100は、熱間圧延装置を出るシートの温度を増加または減少するように指令をし、圧下量、熱間圧延装置の冷却剤の量、圧延の速度を所望のように変更することができる。熱間圧延により最終ゲージ(板厚)に減少させることで、例えば、冷間圧延によるさらなる圧下をなくすことができ、それにより有意な節約を提供することが理解される。また、十分な熱が加えられる場合、要求されるテクスチャ及び結晶粒構造を提供するための、さらなるアニール(焼鈍処理)を不要とする場合もある。すなわち、熱間圧延シートは空気中で室温まで冷却してもよく、または、例えば、合金シート製品の最終使用に応じて、さらなる冷間圧延のために迅速に急冷してもよい。」
「[0062] Any aluminum alloy which may be continuously cast and rolled into a sheet product can be produced in accordance with the invention. Such alloys include heat treatable aluminum alloys such as the AA2XXX, 6XXX and 7XXXseries aluminum alloys or the non-heat treatable aluminum alloys such as AA1XXX, 3XXX and 5XXX series aluminum alloys. The invention has particular application to aluminum alloys where high levels of formability and low earing is desired such as aluminum alloys used for food and beverage containers, for example, AA3004. Also, it is particularly suitable for aluminum alloys used for automotive applications such as AA5754. 」
<当審訳>
「[0062] シート製品に連続的に鋳造及び圧延され得る任意のアルミニウム合金は、本発明に従って製造することができる。このような合金には、AA2XXX系、6XXX系および7XXX系のアルミニウム合金などの熱処理可能なアルミニウム合金、またはAA1XXX系、3XXX系および5XXX系のアルミニウム合金などの熱処理不可能なアルミニウム合金が含まれる。本発明は、例えば、AA3004のような食品および飲料用の容器に用いられるアルミニウム合金のように、高いレベルの成形性と低いイアリング性が求められるアルミニウム合金に特に適用される。また、AA5754のような自動車用途に用いられるアルミニウム合金に特に適している。」
[図面]
「[図:0001394777000001.jpg]」
イ 上記記載から、引用文献には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(ア)段落[0001]、[0029]~[0030]、[0033]、[0039]~[0043]、[0062]の記載、及び図面からみて、引用文献には、「ベルト式鋳造装置3、および、熱間圧延装置30を含むシステムにより、制御された再結晶を有するアルミニウム合金シート製品を生成する方法」に関する発明が記載されている。
(イ)段落[0029]~[0030]の記載、及び、図面からみて、引用文献に記載された上記(ア)の方法は、ベルト式鋳造装置3を用いて、スラブ15を連続鋳造する工程を含むものである。
(ウ)段落[0039]~[0042]の記載、及び、図面からみて、引用文献に記載された上記(ア)の方法は、スラブ15が鋳造装置3を出た後(段落[0039])、熱間圧延装置30により、スラブ15を約60~95%の厚さの減少率(段落[0040])で熱間圧延し、圧延されたストリップ材34を形成する工程を含むものである。
(エ)引用文献に記載された上記(ウ)のスラブ15を熱間圧延する工程においては、段落[0039]の記載からみて、対向ロール32、すなわち対向する圧延ロールの各スタンドの間をスラブ15が通過するものである。
また、同段落[0039]の記載からみて、圧延装置30の入口でのスラブ15の温度(摂氏約371.1~593.3℃、事前に加熱する場合には、摂氏約426.7~593.3℃)よりも、圧延装置30の出口でのスラブ15の温度(摂氏約176.7~371.1℃)の方が低下していることから、熱間圧延する工程の間に、スラブ15から熱が抽出されているといえ、当該スラブ15からの熱の一部は、スラブ15が通過する際に接触する対向ロール32の各スタンド(特に、スラブ15との温度差が大きい第1スタンド)から抽出されることも自明な事項であるといえる。
(オ)引用文献に記載された上記(ウ)のスラブ15を熱間圧延する工程においては、段落[0039]の記載からみて、スラブ15の厚さを減少させるために、対向ロール32の各スタンドの間をスラブ15が通過するものであり、スラブ15の厚さの減少が圧延の圧下によるものであることは、自明な事項である。
また、段落[0042]の記載からみて、熱間圧延時のスラブ15の温度及び圧延による圧下量により熱間圧延されたストリップ34は再結晶化するものであり、段落[0039]に記載の、スラブ厚さを制御された量だけ減少させる点と併せてみれば、再結晶化させるのに十分な圧下で圧下量を制御するものである、といえる。
(カ)段落[0001]、[0062]の記載からみて、引用文献に記載された上記(ア)の方法は、3xxx、5xxx、6xxxまたは7xxxアルミニウム合金を対象とするものである。
ウ 上記ア、イから、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ベルト式鋳造装置3 を用いたスラブ15 の連続鋳造すること;およびスラブ15がベルト式鋳造装置3を出た後、スラブ15を約60%~95%の厚さの減少率で熱間圧延することを含む方法であって、スラブ15を熱間圧延することが、対向ロール12の各スタンドの間をスラブ15が通過する際において、スラブ15から熱の抽出すること;およびスラブ15の厚さを減少させるためにスラブ15に圧延による圧下をする際に、圧下による圧下量がスラブ15の温度でスラブ15を再結晶化させるのに十分な圧下量であるように圧下量を制御すること、を包含し、スラブ15が、3xxx、5xxx、6xxxまたは7xxxアルミニウム合金である、方法。」
(3)本件補正発明と引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。
(ア)引用発明における「ベルト式鋳造装置3」は、その作用機能又は構造からみて、本件補正発明における「連続鋳造装置」に相当し、引用発明における「スラブ15」は連続鋳造されるものであり、後に対向ロールのスタンドにおいて圧延されるものであるから、本件補正発明における「金属ストリップ」に相当する。また、引用発明における熱間圧延装置30により「スラブ15を熱間圧延すること」は、本件補正発明における「前記金属ストリップを熱間又は温間圧延すること」に包含される選択肢のうち「前記金属ストリップを熱間圧延すること」に相当する。
(イ)引用発明における「スラブ15を約60%~95%の厚さの減少率で熱間圧延する」との点は、「金属ストリップを所定の厚さの減少率で熱間圧延する」との限りにおいて、本件補正発明における「金属ストリップを50%~70%の厚さの減少率で熱間圧延する」との点に一致する。
(ウ)引用発明における「対向ロール12の各スタンド」は、その作用機能又は構造からみて、本件補正発明における「圧延スタンド」に相当する。そして、引用発明における「対向ロール12の各スタンドの間をスラブ15が通過する際」とは、本件出願の明細書の段落【0137】の「第1噛み合い(例えば、第1圧延スタンドのローラ間)」との記載を参酌すれば、本件補正発明における「圧延スタンドの噛み合い」がなされている状態に相当することから、引用発明における「対向ロール12の各スタンドの間をスラブ15が通過する際において、スラブ15から熱の抽出すること」との点は、本件補正発明における「圧延スタンドの噛み合いにおいて、前記金属ストリップから熱の抽出すること」に相当する。
(エ)引用発明における「スラブ15の厚さを減少させるためにスラブ15に圧延による圧下をする際に」との点は、スラブ15に圧延による力が加わる状態であることから、本件補正発明における「金属ストリップの厚さを減少させるために金属ストリップに力を加える際に」に相当する。
また、引用発明における「圧下による圧下量がスラブ15の温度でスラブ15を再結晶化させるのに十分な圧下量であるように圧下量を制御する」との点は、圧下量の制御がスラブ15に加えられる力の制御によりなされることが自明であり、したがって圧下量の制御と力の制御とは同等といえることから、本件補正発明における「加えられた力が金属ストリップの温度で金属ストリップを再結晶化させるのに十分な力であるように力を加える」点に相当する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(ア)一致点
「連続鋳造装置を用いた金属ストリップの連続鋳造すること;および前記金属ストリップが前記連続鋳造装置を出た後、前記金属ストリップを所定の厚さの減少率で熱間圧延することを含む方法であって、前記金属ストリップを熱間圧延することが、圧延スタンドの噛み合いにおいて、前記金属ストリップから熱の抽出すること;および金属ストリップの厚さを減少させるために金属ストリップに力を加える際に、加えられた力が金属ストリップの温度で金属ストリップを再結晶化させるのに十分な力であるように力を加えること、を包含し、前記金属ストリップが、3xxx、5xxx、6xxxまたは7xxxアルミニウム合金である、方法。」
(イ)相違点
「金属ストリップを所定の厚さの減少率で圧延すること」に関して、本件補正発明においては「金属ストリップを50%~70%の厚さの減少率で熱間又は温間圧延する」のに対し、引用発明においては「スラブ15(本件補正発明の「金属ストリップ」に相当)を約60%~95%の厚さの減少率で熱間圧延する」点。
(4)判断
ア 上記相違点について検討する。
圧延について、本件補正発明は熱間又は温間圧延するものであり、熱間圧延をすることをその選択肢として含むところ、引用発明は熱間圧延するものであるから、引用発明は、本件補正発明の圧延に関する選択肢の一部を充足しており、実質的な相違点でない。
また、熱間圧延の際に、所望する生成品に応じて金属ストリップの厚さの減少率を最適化することは、引用文献の段落[0042]~[0043]に記載されるように、当業者にとって通常の創作能力の発揮に過ぎないところ、また、引用発明においても熱間圧延によるスラブ15の再結晶化を考慮して熱入力量や圧下量等を制御するものであること、及び、引用発明においても60%~70%の厚さの減少率において、本件補正発明と数値範囲が重なることからみても、上記相違点に係る本件補正発明のように50%~70%の厚さの減少率とすることに困難性は見いだせない。
イ そして、上記相違点を含む本件補正発明を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
ウ 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5)本件請求人の主張について
ア 審判請求書における主張
本件請求人は、令和4年1月28日に提出した審判請求書の「(4)引用文献の説明および本願発明との比較」の「(4-2)」欄において、引用発明に関して、次のとおり主張する。
(ア)引用文献3(当審注:原査定で引用された引用文献3は、上記引用文献に同じ)に記載された熱間圧延では、熱間圧延前のスラブが厚さ0.2~2インチであり(引用文献3請求項16参照)、熱間圧延後の厚さが0.01~0.25インチ(引用文献3請求項18参照)であり、この厚さ減少率は圧延前の最小と圧延後の最小~圧延前の最大と圧延後の最大を比較すると、1/20~1/10(5%~10%)であり、本願発明の厚さ減少率である50%~70%とは程遠い値である。
(イ)引用文献3には、圧延スタンドの噛み合いによる熱の抽出や、再結晶化させるための力については記載されていない。
(ウ)今回の同時提出の手続補正書の請求項6~8の発明でも、やはり本願明細書の[0034]段落に記載するように、Fe成分粒子の有益な球状化及び/又は精製を可能にし、本願明細書の[0008]段落に記載するように、好ましい金属間化合物粒子の形成がおこって、加工並びに曲げおよび成形などの促進できるのであり、引用文献3にはそのような効果の記載は無い。
イ 上記アの主張について検討する。
(ア)上記ア(ア)についてみると、上記(2)イ(ウ)に記載したように、引用文献の段落[0040]には、スラブ15を約60~95%の厚さの減少率で熱間圧延する点も記載されている。そして、上記アで検討したように、引用文献には、熱間圧延の際に、所望する生成品に応じて金属ストリップの厚さの減少率を最適化することが記載されているところ、引用発明の当該数値範囲は、本件補正発明の50%~70%との数値範囲と一部重複するものであるから、引用文献にも記載される再結晶化のため引用発明における当該減少率の最適化を図ることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
(イ)上記ア(イ)についてみると、「圧延スタンドの噛み合いによる熱の抽出」に関しては、上記(2)イ(エ)及び上記(3)ア(ウ)に記載したとおりである。また、「再結晶化させるための力」についても、上記(2)イ(オ)及び上記(3)ア(エ)に記載したとおりである。
(ウ)上記ア(ウ)についてみると、引用発明における熱間圧延においても、上記(2)アに摘記した引用文献の段落[0042]に記載されるように、最適なテクスチャを備えた再結晶した結晶粒構造が得られるものであり、上記イにて検討したように、本件補正発明が奏する効果については、引用発明の奏する効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものともいえない。
(エ)よって、本件請求人の主張は、採用することができない。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年1月28日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~17に係る発明は、令和2年10月2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~17に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項7に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項7に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由(原査定に説示される令和3年5月17日付け拒絶理由通知書に記載された理由3(3))は、この出願の請求項7に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献(上記拒絶理由通知においては引用文献3。上記第2の補正却下の決定における引用文献と同じ。)に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献及びその記載事項並びに引用文献に記載された発明は、前記第2の[理由]2(2)に、引用文献及びその記載事項並びに引用発明として記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記金属ストリップが、3xxx、5xxx、6xxxまたは7xxxアルミニウム合金である」との限定事項を削除するとともに、「約50%~70%の厚さ」及び「方法:。」との記載としたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明(引用文献に記載された発明)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-001307