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特許拒絶査定不服審判

2022-006713

車両高電力電気システムならびにシステム状態を信号伝達するために電圧バスレベルを使用するためのシステムおよび方法

審判番号
2022-006713
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-019978
請求日
2022年05月02日
審決日
2023年04月06日
公報発行日
2023年09月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】クリアモーション,インコーポレイテッド
  • 【請求人代理人】稲葉 良幸
  • 【請求人代理人】大貫 敏史
  • 【請求人代理人】江口 昭彦
  • 【請求人代理人】内藤 和彦
審判長/審判官
  • 審判長 土居 仁士
  • 審判官 丸山 高政
  • 審判官 衣鳩 文彦
分類
P18 .121-Z (H02J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項、特許法第29条、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019- 19978「車両高電力電気システムならびにシステム状態を信号伝達するために電圧バスレベルを使用するためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月30日出願公開、特開2019- 83687〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2014年(平成26年)3月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年3月15日 アメリカ合衆国、2013年4月23日 アメリカ合衆国、2014年3月14日 アメリカ合衆国、2014年3月14日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願である特願2016-503287号の一部を平成31年2月6日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。 平成31年 3月 1日 翻訳文提出書・手続補正書 令和 2年 4月 6日付け 拒絶理由通知書 10月 8日 意見書・手続補正書 令和 3年 2月15日付け 拒絶理由通知書(最後) 8月13日 意見書・手続補正書 12月28日付け 補正の却下の決定 (令和3年8月13日の補正を却下) 拒絶査定 令和 4年 5月 2日 審判請求書・手続補正書 8月23日 前置報告書 以下では、令和3年12月28日付け拒絶査定を「原査定」といい、令和4年5月2日の手続補正書による補正を「本件補正」という。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正は、令和2年10月8日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1(以下の(1)に示す。)を、以下の(2)に示すものに補正することを含む。 (1)本件補正前の請求項1の記載 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】 第1の電気バスにおける車両バッテリ電圧を第2の電気バスにおける第2の電圧に変換するように構成された電力コンバータであって、前記第2の電圧が前記車両バッテリ電圧と少なくとも同じ高さの電位である電力コンバータと、 前記第2の電気バスと結合されたエネルギー貯蔵装置と、 前記第2の電気バスと接続された少なくとも1つの負荷を制御するように構成されたコントローラと、 を含み、 高い優先レベルを有する第1の負荷と低い優先レベルを有する第2の負荷とが少なくとも前記第2の電気バスと結合され、 第1の動作状態において、前記第1の負荷は第1の量の電力を引き出すように構成され、前記第2の負荷は第2の量の電力を引き出すように構成され、 エネルギー利用可能性が低い状態において、前記第1の負荷は前記第1の量の電力を引き出すように構成され、前記第2の負荷は低減された電力を引き出すように構成される、 車両用の電気システム。」 (2)本件補正後の請求項1の記載 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。 「【請求項1】 第1の電気バスにおける車両バッテリの電圧を第2の電気バスにおける第2の電圧に変換するように構成された電力コンバータであって、前記第2の電圧が前記車両バッテリの電圧と少なくとも同じ高さの電位である電力コンバータと、 前記第2の電気バスと結合されたエネルギー貯蔵装置と、 前記第2の電気バスと接続された少なくとも1つの負荷を制御するように構成されたコントローラと、 を含み、 高い優先レベルを有する第1の負荷と低い優先レベルを有する第2の負荷とが少なくとも前記第2の電気バスと結合され、 第1の動作状態において、前記第1の負荷は第1の量の電力を引き出すように構成され、前記第2の負荷は第2の量の電力を引き出すように構成され、 前記第2の電気バスの電圧が閾値を下回った状態において、前記第1の負荷は前記第1の量の電力を引き出すように構成され、前記第2の負荷は前記第2の量の電力より低減された量であって、ゼロでない量の電力を引き出すように構成される、 車両用の電気システム。」 2 補正の目的 前記1に示した補正は、以下の3つの補正からなる。 (1)「車両バッテリ電圧」を「車両バッテリの電圧」にする補正 (2)「エネルギー利用可能性が低い状態」を「前記第2の電気バスの電圧が閾値を下回った状態」にする補正 (3)「低減された電力」を「前記第2の量の電力より低減された量であって、ゼロでない量の電力」にする補正 前記(1)の補正は、意味を変えるものではないため、実質的には何も補正していない。 前記(2)の補正は、令和3年2月15日付け拒絶理由通知書(最後)にて「エネルギー利用可能性」が不明確であると通知されたことに応答したものであって、特許法17条の2第5項4号に規定される「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 前記(3)の補正は、「低減された電力」について、その比較対象を「前記第2の量の電力」であると限定し、さらに、低減された量が「ゼロでない量」であることを限定するものであり、本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正後の請求項1係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当する。 3 補正の適否 本件補正は、特許法17条の2第3項及び第4項の規定を満たすことが明らかである。 そして、本件補正の目的は、前記2のとおり、限定的減縮を含むので、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(2)の記載のとおり特定されるものであるところ、後の参照の便宜のために、以下のように分説し、それぞれの発明特定事項を分説記号を用いて「発明特定事項A」のように参照する。 A 第1の電気バスにおける車両バッテリの電圧を第2の電気バスにおける第2の電圧に変換するように構成された電力コンバータであって、前記第2の電圧が前記車両バッテリの電圧と少なくとも同じ高さの電位である電力コンバータと、 B 前記第2の電気バスと結合されたエネルギー貯蔵装置と、 C 前記第2の電気バスと接続された少なくとも1つの負荷を制御するように構成されたコントローラと、 を含み、 D 高い優先レベルを有する第1の負荷と低い優先レベルを有する第2の負荷とが少なくとも前記第2の電気バスと結合され、 E 第1の動作状態において、前記第1の負荷は第1の量の電力を引き出すように構成され、前記第2の負荷は第2の量の電力を引き出すように構成され、 F 前記第2の電気バスの電圧が閾値を下回った状態において、前記第1の負荷は前記第1の量の電力を引き出すように構成され、前記第2の負荷は前記第2の量の電力より低減された量であって、ゼロでない量の電力を引き出すように構成される、 G 車両用の電気システム。 (2)文献1の記載事項 ア 原査定で引用された特開2011-30363号公報(以下、「文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付した(以下同様)。 (ア)「【0014】 (第1の実施形態) 以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。 図1には、本実施形態における車両用電源装置10の回路構成を示し、電源装置10はハイブリッド車等に搭載される。 【0015】 電源装置10は、高圧バッテリ20と、第1系統の電源ラインとしての42ボルト系電源ラインL1と、第2系統の電源ラインとしての14ボルト系電源ラインL2と、第1のコンバータ21と、第1の蓄電装置22と、双方向型の第2のコンバータ26と、第2の蓄電装置27と、制御手段としてのコントローラ32を備えている。 【0016】 高圧バッテリ20の出力電圧は例えば240ボルトであり、42ボルト系電源ラインL1には高圧バッテリ20の電圧である240ボルトよりも低い第1の直流電圧である42ボルトが印加され、14ボルト系電源ラインL2には高圧バッテリ20の電圧である240ボルトよりも低い第2の直流電圧である14ボルトが印加される。」 (イ)「【0018】 ここで、高圧→42ボルトコンバータ21で高圧から42ボルトを作る際に、高圧→42ボルトコンバータ21は出力電力について許容値を持っている。 42ボルト系電源ラインL1には第1の蓄電装置22が接続されている。第1の蓄電装置22として、バッテリまたはキャパシタを用いている。また、42ボルト系電源ラインL1には複数の第1の負荷としての42ボルト負荷23,24,25が接続されている。42ボルト負荷23は電動ブレーキ用モータであり、42ボルト負荷24はパワーステアリング用モータであり、42ボルト負荷25は電動サスペンション用モータである。 【0019】 42ボルト負荷23~25について、予め優先順位が決められており、電動ブレーキ用モータである42ボルト負荷23は最も優先順位が高く、パワーステアリング用モータである42ボルト負荷24は次に優先順位が高く、電動サスペンション用モータである42ボルト負荷25の優先順位は4番目である。 【0020】 さらに、42ボルト系電源ラインL1と14ボルト系電源ラインL2との間には第2のコンバータ26が接続されている。第2のコンバータ26は、昇圧・降圧型DC-DCコンバータであって、42ボルトをそれよりも低い14ボルトに降圧して出力することができるとともに、14ボルトをそれよりも高い42ボルトに昇圧して出力することができる。このように第2のコンバータ26は、42ボルトから14ボルトに変換できるとともに14ボルトから42ボルトに双方向に変換することができるコンバータであって、以下、42ボルト←→14ボルト双方向コンバータ26という。常時は、双方向コンバータ26で14ボルトを42ボルトから作っている。 【0021】 14ボルト系電源ラインL2には第2の蓄電装置27が接続されている。第2の蓄電装置27として、バッテリまたはキャパシタを用いている。また、14ボルト系電源ラインL2には複数の第2の負荷としての14ボルト負荷28,29,30,31が接続されている。14ボルト負荷28はECU(電子制御ユニット)であり、14ボルト負荷29はランプであり、14ボルト負荷30はナビゲーション用負荷であり、14ボルト負荷31はスタビライザー用負荷である。」 (ウ)「【0023】 コントローラ32は高圧バッテリ20における端子間電圧V3を入力している。また、コントローラ32は第1の蓄電装置22における端子間電圧V1を入力している。さらに、コントローラ32は第2の蓄電装置27における端子間電圧V2を入力している。コントローラ32は各端子間電圧V1,V2,V3を監視している。コントローラ32は、42ボルト←→14ボルト双方向コンバータ26を制御することができるとともに各負荷(42ボルト負荷および14ボルト負荷)23~25,28~31の駆動を制御することができるようになっている。コントローラ32は各負荷23~25,28~31のオン/オフ状態を検知している。これは、V1,V2,V3値からでもよいし、駆動信号から検知してもよい。 【0024】 次に、このように構成した電源装置10の作用を説明する。 図2は、コントローラ32が実行する処理内容を説明するためのフローチャートである。以下の作用説明において42ボルト負荷23~25および14ボルト負荷28~31は全て同時に駆動されている場合について説明する。」 (エ)「【0027】 一方、コントローラ32はステップ101において第1の蓄電装置22における端子間電圧V1と第2の蓄電装置27における端子間電圧V2はいずれか一方が規定値以下であれば第1の蓄電装置22または第2の蓄電装置27が十分に充電されていないとしてステップ102に移行する。 【0028】 コントローラ32はステップ102において第1の蓄電装置22における端子間電圧V1が規定値以下であればステップ103において42ボルト負荷23,24,25について優先順位の低いもの、具体的には42ボルト負荷25を停止(オフ)させる。さらに、コントローラ32はステップ104において42ボルト←→14ボルト双方向コンバータ26を、14ボルトから42ボルトに変換する動作を行わせる。これにより、第2の蓄電装置27から第1の蓄電装置22および42ボルト負荷23,24に電力が供給され、42ボルト負荷23,24を駆動することができる。」 (オ)図1 [図:0001401121000001.jpg] (カ)図2 [図:0001401121000002.jpg] イ 前記アの記載によれば、文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「ハイブリッド車等に搭載される電源装置10であって(【0014】)、 電源装置10は、42ボルト系電源ラインL1と、14ボルト系電源ラインL2と、第1の蓄電装置22と、双方向型の第2のコンバータ26と、第2の蓄電装置27と、制御手段としてのコントローラ32を備え(【0015】)、 42ボルト系電源ラインL1には第1の蓄電装置22が接続され、42ボルト系電源ラインL1には複数の第1の負荷としての42ボルト負荷23,24,25が接続され、42ボルト負荷23は電動ブレーキ用モータであり、42ボルト負荷24はパワーステアリング用モータであり、42ボルト負荷25は電動サスペンション用モータであり(【0018】)、 42ボルト負荷23~25について、予め優先順位が決められており、42ボルト負荷23は最も優先順位が高く、42ボルト負荷24は次に優先順位が高く、42ボルト負荷25の優先順位は4番目であり(【0019】)、 42ボルト系電源ラインL1と14ボルト系電源ラインL2との間には第2のコンバータ26が接続されており、第2のコンバータ26は、14ボルトをそれよりも高い42ボルトに昇圧して出力することができ(【0020】)、 14ボルト系電源ラインL2には第2の蓄電装置27が接続され、第2の蓄電装置27としてバッテリを用い(【0021】)、 コントローラ32は、第1の蓄電装置22における端子間電圧V1を入力し、端子間電圧V1を監視し、各負荷23~25の駆動を制御することができ(【0023】)、 42ボルト負荷23~25が全て同時に駆動されている場合に(【0024】)、 コントローラ32は第1の蓄電装置22における端子間電圧V1が規定値以下であれば42ボルト負荷23,24,25について優先順位の低いもの、具体的には42ボルト負荷25を停止(オフ)させる(【0028】)、 電源装置10。」 (3)文献2の記載事項 ア 令和2年4月6日付け拒絶理由通知書で引用された特開2008-289303号公報(以下、「文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。 (ア)「【0013】 図1は、本発明の一実施形態である車両用電力制御装置100の構成図を示す。車両用電力制御装置100を備える車両は、複数の電気負荷を搭載しており、電圧系の異なる電気負荷が混在する。図1の場合、高圧系(例えば、42V系)の電気負荷(以下、「高圧系負荷」という)として符号32が例示され、低圧系(例えば、14V系)の電気負荷(以下、「低圧系負荷」という)として符号12が例示されている。高圧系負荷32は、コンピュータ33(以下、ECU33という)によって制御され、低圧系負荷12は、コンピュータ13(以下、ECU13)によって制御される。高圧系負荷32の具体例として、電動パワーステアリング装置(以下、「電動パワステ」という)の操舵力調整用モータ、電動スタビリティコントロール装置(以下、「電動スタビ」という)のロール角調整用モータ、電動ブレーキ装置の制動力調整用モータ、ヘッドライト、シートヒータ、エアコンなどが挙げられる。また、低圧系負荷12の具体例として、エンジンスタータ、オーディオ、各種ECUなどが挙げられる。」 (イ)「【0015】 また、ECU33は、高圧系負荷32の作動に伴う電力需要を推定し、現在及び/又は将来必要となる電力を算出する。例えば、ECU33は、自身のシステムの電力需要を予知させる予兆情報に基づいてその電力需要が発生することを推定し、その推定された電力需要に必要となる電力を後述の電源マネジメントECU50に対する要求電力(負荷要求値)として算出する。また、例えば、ECU33は、現在の電気負荷の動作状態に基づいて現在又は将来必要となる電力を後述の電源マネジメントECU50に対する要求電力(負荷要求値)として算出する。」 (ウ)「【0021】 低圧系負荷12を制御するECU13も、ECU33と同様に、低圧系負荷12を作動させる作動指令信号を出力し、低圧系負荷12の作動に伴う電力需要を推定し、電源マネジメントECU50に対する負荷要求値を算出することができる。」 (エ)「【0033】 また、車両用電力制御装置100は、各電圧系の負荷要求と電源の供給可能電力に基づいて、各電圧系に対する最適な電力配分や各電気負荷の作動を管理する電源マネジメントECU(以下、「パワマネECU」という)50を備える。パワマネECU50は、通信線90を介して、ECU13,ECU33,DC-DCECU23,バッテリECU14,バッテリECU34と接続され、各ECUと通信を行う。」 (オ)「【0045】 一方、パワマネECU50は、ステップ16に記載の判定基準が成立しない場合(すなわち、一方の電圧系から他方の電圧系への電力配分を行っても電力不足が解消できない場合)、各電気負荷に予め付与された優先順位に従って各電気負荷の負荷要求値を制限することによって、ステップ16の判定基準を成立させるDC-DCコンバータ20の目標出力電力Pddとオルタネータ60の目標発電電圧Valtdを決定し、目標出力電力PddをDC-DCECU23に対して出力指示し、目標発電電圧Valtdをオルタネータ60に対して出力指示する(ステップ22)。 【0046】 この既定の優先順位の低い電気負荷から順番にその負荷要求値を制限することによって、ステップ16の判定基準を成立させる。負荷要求値が制限された電気負荷は、その制限された範囲内での作動に制限される。例えば、高圧系負荷32の優先順位が低圧系負荷12より高ければ、低圧系負荷12の負荷要求値が制限される。高圧系負荷32や低圧系負荷12に複数の負荷が含まれている場合には、その負荷毎に付与された優先順位に従って、それらの負荷要求値を制限すればよい。また、負荷要求値の制限は、零又は零より大きい所定値に減少させればよい。また、この既定の優先順位は、電気負荷の車両における重要度に応じて設定されればよく、例えば安全に直接かかわる電気負荷になるほど高めに設定されるとよい。」 (カ)図1 [図:0001401121000003.jpg] (キ)図2 [図:0001401121000004.jpg] イ 前記アの記載によれば、文献2には、以下の技術(以下、「文献2技術」という。)が記載されている。 「高圧系(例えば、42V系)と低圧系(例えば、14V系)とを備える車両用電力制御装置100であって(【0013】)、 車両用電力制御装置100は、各電圧系の負荷要求と電源の供給可能電力に基づいて、各電圧系に対する最適な電力配分や各電気負荷の作動を管理する電源マネジメントECU(以下、「パワマネECU」という)50を備え(【0033】)、 パワマネECU50は、一方の電圧系から他方の電圧系への電力配分を行っても電力不足が解消できない場合、各電気負荷に予め付与された優先順位に従って各電気負荷の負荷要求値を制限し(【0045】)、 ここで、負荷要求値は、負荷の作動に伴う電力需要であり(【0015】、【0021】)、 負荷要求値が制限された電気負荷は、その制限された範囲内での作動に制限され、負荷要求値の制限は、零又は零より大きい所定値に減少させればよい(【0046】)、 車両用電力制御装置100。」 (4)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 ア 発明特定事項Aについて (ア)引用発明の「42ボルト系電源ラインL1」及び「14ボルト系電源ラインL2」は、図1を参照すると、明らかに電気バスであると認められ、これらをそれぞれ「第2の電気バス」及び「第1の電気バス」と称することは任意である。 (イ)引用発明の「第2の蓄電装置27」は、「電源装置10」に備わるものであり(【0015】)、「電源装置10」は「ハイブリッド車等に搭載される」(【0014】)ものであるから、「第2の蓄電装置27」はハイブリッド車等の車両に備わるものである。 そして、「第2の蓄電装置27」は、「バッテリ」を用いたものである(【0021】)から、引用発明の「第2の蓄電装置27」は、本件補正発明の「車両バッテリ」に相当する。 (ウ)引用発明の「第2の蓄電装置27」は「14ボルト系電源ラインL2」に接続したものであり(【0021】)、図1を参照すると、「第2の蓄電装置27」の端子間電圧V2が「14ボルト系電源ラインL2」の電圧に等しいことは明らかである。 よって、引用発明の「第2の蓄電装置27」の電圧は、本件補正発明の「第1の電気バスにおける車両バッテリの電圧」に相当する。 (エ)引用発明の「第1の蓄電装置22」は「42ボルト系電源ラインL1」に接続したものであり(【0018】)、図1を参照すると、「第1の蓄電装置22」の「端子間電圧V1」が「42ボルト系電源ラインL1」の電圧に等しいことは明らかである。 よって、引用発明の「端子間電圧V1」は、本件補正発明の「第2の電気バスにおける第2の電圧」に相当する。 (オ)引用発明の「第2のコンバータ26」は、「42ボルト系電源ラインL1と14ボルト系電源ラインL2との間に」接続されたものであり、「14ボルトをそれよりも高い42ボルトに昇圧して出力することができ」るものである(【0020】)から、「14ボルト系電源ラインL2」における「第2の蓄電装置27」の電圧(14ボルト)を、それよりも高い「42ボルト系電源ラインL1」における「端子間電圧V1」に変換するように構成された電力コンバータである。 (カ)発明特定事項Aに係る「前記第2の電圧が前記車両バッテリの電圧と少なくとも同じ高さの電位である」との記載は、本願の外国語書面の翻訳文におけるClaim 1の「the second voltage being at least as high as the vehicle battery voltage」との記載に対応するものと認められ、「前記第2の電圧」(the second voltage)が「前記車両バッテリの電圧」(the vehicle battery voltage」と同等に「高い」(as high as)ことを限定し、さらに、「少なくとも」(at least)によって「第2の電圧」の高さが最低でも「車両バッテリの電圧」であることを限定していることが明らかである。そうすると、発明特定事項Aに係る「前記第2の電圧が前記車両バッテリの電圧と少なくとも同じ高さの電位である」とは、要するに、「前記第2の電圧が前記車両バッテリの電圧以上である」ことを限定していると解釈される。 他方、引用発明の「42ボルト系電源ラインL1」の電圧(本件補正発明の「第2の電圧」に相当)である42ボルトは、「14ボルト系ラインL2」における「第2の蓄電装置27」の端子間電圧V2(本件補正発明の「車両バッテリの電圧」に相当)である14ボルト以上である。 上記及び前記(ア)~(オ)によれば、本件補正発明と引用発明とは、「第1の電気バスにおける車両バッテリの電圧を第2の電気バスにおける第2の電圧に変換するように構成された電力コンバータであって、前記第2の電圧が前記車両バッテリの電圧と少なくとも同じ高さの電位である電力コンバータ」を含む点で一致する。 イ 発明特定事項Bについて 引用発明の「第1の蓄電装置22」は、電気エネルギーを蓄える装置であるから、エネルギー貯蔵装置である。 そして、引用発明の「第1の蓄電装置22」は、「42ボルト系電源ラインL1」に接続されている(【0018】)から、本件補正発明と引用発明とは、「前記第2の電気バスと結合されたエネルギー貯蔵装置」を含む点で一致する。 ウ 発明特定事項Cについて 引用発明の「42ボルト負荷23」、「42ボルト負荷24」及び「42ボルト負荷25」は、「42ボルト系電源ラインL1」に接続されている(【0018】)から、本件補正発明の「前記第2の電気バスと接続された少なくとも1つの負荷」に相当する。 引用発明の「コントローラ32」は、「各負荷23~25の駆動を制御することができ」る(【0023】)から、本件補正発明と引用発明とは、「前記第2の電気バスと接続された少なくとも1つの負荷を制御するように構成されたコントローラ」を含む点で一致する。 エ 発明特定事項Dについて 引用発明の「42ボルト負荷23」は「最も優先順位が高く」、「42ボルト負荷25」は「4番目」の優先順位であるから(【0019】)、「42ボルト負荷23」は高い優先レベルを有し、「42ボルト負荷25」は低い優先レベルを有する。 よって、引用発明の「42ボルト負荷23」及び「42ボルト負荷25」は、それぞれ本件補正発明の「高い優先レベルを有する第1の負荷」及び「低い優先レベルを有する第2の負荷」に相当する。 そして、引用発明の「42ボルト負荷23」及び「42ボルト負荷25」は、「42ボルト系電源ラインL1」に接続されている(【0018】)。 そうすると、本件補正発明と引用発明とは、「高い優先レベルを有する第1の負荷と低い優先レベルを有する第2の負荷とが少なくとも前記第2の電気バスと結合され」る点で一致する。 オ 発明特定事項Eについて 引用発明には「42ボルト負荷23~25が全て同時に駆動されている場合」(【0024】)が存在し、これを「第1の動作状態」と称することは任意である。 引用発明の「第1の動作状態」において、「42ボルト負荷23」及び「42ボルト負荷25」は、それぞれ、所定の量の電力を消費するよう構成されていることが明らかであり、それぞれが消費する電力を、「第1の量の電力」及び「第2の量の電力」と称することは任意である。 よって、本件補正発明と引用発明とは、「第1の動作状態において、前記第1の負荷は第1の量の電力を引き出すように構成され、前記第2の負荷は第2の量の電力を引き出すように構成され」る点で一致する。 カ 発明特定事項Fについて 引用発明は「端子間電圧V1が規定値以下であれば」「42ボルト負荷25を停止(オフ)させる」(【0028】)から、引用発明の「規定値」は本件補正発明の「閾値」に相当し、引用発明の「端子間電圧V1が既定値以下であ」る場合は、本件補正発明の「前記第2の電気バスの電圧が閾値を下回った状態」に相当する。 引用発明の「端子間電圧V1が既定値以下であ」る場合には、「42ボルト負荷25」は「停止(オフ)」しているので、消費電力はゼロであると認められ、これは、「第1の動作状態」での消費電力(「第2の量の電力」)よりも明らかに低減されている。 よって、本件補正発明と引用発明とは、「前記第2の電気バスの電圧が閾値を下回った状態において、前記第1の負荷は前記第1の量の電力を引き出すように構成され、前記第2の負荷は前記第2の量の電力より低減された量の電力を引き出すように構成される」点で共通し、「低減された量の電力」が、本件補正発明では「ゼロでない量の電力」であるのに対し、引用発明ではゼロである点で相違する。 キ 発明特定事項Gについて 引用発明の「電源装置10」は、「42ボルト系電源ラインL1と、14ボルト系電源ラインL2と、第1の蓄電装置22と、双方向型の第2のコンバータ26と、第2の蓄電装置27と、制御手段としてのコントローラ32を備え」た(【0015】)電気システムといえる。 そして、引用発明の「電源装置10」は、「ハイブリッド車等に搭載される」(【0014】)ものであるから、車両用のものである。 よって、本件補正発明と引用発明とは、「車両用の電気システム」である点で一致する。 ク 一致点及び相違点 前記ア~キによれば、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 〈一致点〉 「第1の電気バスにおける車両バッテリの電圧を第2の電気バスにおける第2の電圧に変換するように構成された電力コンバータであって、前記第2の電圧が前記車両バッテリの電圧と少なくとも同じ高さの電位である電力コンバータと 前記第2の電気バスと結合されたエネルギー貯蔵装置と、 前記第2の電気バスと接続された少なくとも1つの負荷を制御するように構成されたコントローラと、 を含み、 高い優先レベルを有する第1の負荷と低い優先レベルを有する第2の負荷とが少なくとも前記第2の電気バスと結合され、 第1の動作状態において、前記第1の負荷は第1の量の電力を引き出すように構成され、前記第2の負荷は第2の量の電力を引き出すように構成され、 前記第2の電気バスの電圧が閾値を下回った状態において、前記第1の負荷は前記第1の量の電力を引き出すように構成され、前記第2の負荷は前記第2の量の電力より低減された量の電力を引き出すように構成される、 車両用の電気システム。」である点。 〈相違点〉 「前記第2の電気バスの電圧が閾値を下回った状態」で「第2の負荷」が消費する電力が、本件補正発明では「第2の量の電力より低減された量であって、ゼロでない量の電力」であるのに対し、引用発明ではゼロである点。 (5)相違点についての判断 ア 引用発明において端子間電圧V1が既定値以下となる場合は、第1の蓄電装置22が十分に充電されていない場合であり(【0027】)、この場合、「42ボルト系電源ラインL1」の電力は不足していると認められる。そうすると、引用発明は、「42ボルト系電源ラインL1」の電力不足に対して、優先順位の低い「42ボルト負荷25」への電力供給をゼロにすることで対処するものであると認められる。 他方、文献2技術は、引用発明と同様に42V系の高圧系及び14V系の低圧系を備える車両用電力制御装置であり(【0013】)、電力不足に対して各電気負荷の電力需要である負荷要求値を制限(【0045】)すること、より具体的には、負荷要求値を零又は零より大きい所定値に減少させること(【0046】)で対処するものである。 そうすると、引用発明と文献2技術は、共に、高電圧系及び低電圧系の2系統の電源を有する車両用の電力供給制御という技術分野で共通し、電力の不足に対して、負荷への電力供給を減少させるという構成においても共通するから、引用発明における負荷への電力供給を減少させる構成に対して文献2技術における負荷要求値を「零より大きい所定値に減少させる」構成を適用することにより、前記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ 加えて、引用発明の「42ボルト負荷24」はパワーステアリング用モータであり、「42ボルト負荷25」は電動サスペンション用モータである(【0018】)。周知のように、電動パワーステアリングや電動サスペンションは供給する電力に応じてパワステのアシスト力やサスペンションの効きを変えることができるから、このような負荷に対しては消費電力の削減を、供給電力をゼロにするという1段階だけでなく、ある程度の電力を供給することを含む複数階で行えることが明らかである。よって、引用発明において電力不足の際に、優先順位の低い負荷へ供給する電力を削減しつつもゼロではない値とすることは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎず、格別の困難性を伴うことではない。 (6)効果についての判断 本件補正発明の効果は、引用発明及び文献2技術から予想される範囲内のものであり、格別のものとは認められない。 (7)請求人の主張についての判断 請求人は、「補正の却下の決定には『当業者が適宜なし得ることである』との認定の根拠となる文献は何ら示されていません。引用文献1には、所定のバス上のある負荷については正常に動作させる一方で、同じバス上の別の負荷については供給電力を低減しながら動作させるという技術思想は開示されておらず、また、42ボルト負荷25に関して、供給電力を低減しながら動作させるように変更することを示唆する記載はないことを踏まえると、何ら根拠となる文献を示すことなく『引用文献1に記載された発明において、42ボルト負荷25を停止させることに替えて、42ボルト負荷25に供給する電力を低減する(例えば、停止状態に近い値までに低下させる)ように構成することは、当業者が適宜なし得ることである。』と認定することは適切ではありません。」(審判請求書4頁)と主張する。 しかしながら、文献2は令和2年4月6日付け拒絶理由通知書で通知したものであるから、文献2技術の内容は請求人が知悉していたことである。 そうすると、前記(5)に示した判断の根拠となる文献は、請求人に既に示されていたものであるから、審査段階において「何ら根拠となる文献を示すことなく」補正の却下がなされたという請求人の主張は前提を欠く。 加えて、「引用文献1に記載された発明において、42ボルト負荷25を停止させることに替えて、42ボルト負荷25に供給する電力を低減する(例えば、停止状態に近い値までに低下させる)ように構成すること」は、前記(5)に示したように、当業者の通常の創作能力の発揮により達成されることであって、この点に格別の困難性はない。 以上によれば、請求人の主張は採用できない。 (8)小括 以上によれば、本件補正発明は、当業者が引用発明及び文献2技術に基づいて(前記(5)ア)又は引用発明に基づいて(前記(5)イ)容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 4 本件補正についてのむすび 前記3によれば、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明 本件補正は上述のとおり却下されたため、本願の請求項1係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(1)のとおりである。 第4 原査定の概要 原査定の概要は、以下のとおりである。 この出願の請求項1~12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1.特開2011-30363号公報 第5 文献の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、及び、令和2年4月6日付け拒絶理由通知書で引用された文献2の記載事項は、それぞれ前記第2[理由]3(2)及び(3)に記載したとおりである。 第6 本願発明と引用発明との対比・判断 本願発明は、前記第2[理由]3で検討した本件補正発明の「前記第2の量の電力より低減された量であって、ゼロでない量の電力」から、その比較対象を限定する「前記第2の量の電力より」という発明特定事項と、電力の量を限定する「ゼロでない量の」という発明特定事項を削除したものである(前記第2[理由]2を参照)。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]3に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-006713

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