特許拒絶査定不服審判
2022-005047
パワー測位方法及びそのパワー測位装置
- 審判番号
- 2022-005047
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-136939外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年04月05日
- 審決日
- 2023年08月10日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】グニテック コーポレーション
- 【請求人代理人】斉藤 達也
- 分類
- P18 .536-WZ (G01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-136939「パワー測位方法及びそのパワー測位装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 7月15日出願公開、特開2021-103159〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年8月14日(パリ条約の例による優先権主張2019年12月24日、台湾)の出願であって、その手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
令和3年 6月28日付け:拒絶理由通知書
同年10月 1日 :意見書、手続補正書の提出
同年11月26日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年12月 7日 :原査定の謄本の送達)
令和4年 4月 5日 :審判請求書の提出
同年11月 4日付け:拒絶理由通知書
令和5年 2月 1日 :意見書、手続補正書の提出
同月16日付け:審尋
同年 5月15日 :回答書の提出
なお、令和4年11月4日付けで当審において通知した拒絶理由通知書を、以下「当審拒絶理由通知書」といい、これに対して、令和5年2月1日に請求人から提出された意見書を、以下、単に「意見書」という。
また、令和5年2月16日付けで当審において通知した審尋を、以下、単に「審尋」といい、これに対して、同年5月15日に請求人から提出された回答書を、以下、単に「回答書」という。
第2 本願発明
本願の請求項1~8に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本願発明1」などという。また、これらを総称して「本願発明」という。)は、令和5年2月1日に提出された手続補正書(以下、当該手続補正書による補正を「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「【請求項1】
空間内の測位対象物の機器位置を見つけ出すため、パワー測位装置で使用され、空間において複数の既知点にある機器をさらに含むパワー測位方法であって、
測位対象物を制御して複数の送信電力で複数の測位信号を送信するステップと、
複数の既知点にある機器に前記複数の測位信号を受信させ、複数の測位信号強度、複数の対応する受信時間及び前記複数の既知点にある機器の座標をデータベースに記録するステップと、
受信した前記複数の測位信号の中で信号強度が比較的強い前記既知点にある機器を見つけ出すステップと、
前記複数の測位信号強度、前記複数の対応する受信時間、及び前記信号強度が比較的強い前記既知点にある機器に応じて、前記データベース内から電力毎に異なる信号強度-距離関数と、電力毎に異なる信号強度-距離標準偏差関数とを照会するステップと、
前記複数の既知点にある機器を異なる電力に応じてグルーピングし、複数の前記既知点にある機器を円心として設定し、前記信号強度-距離関数に従って得られた距離と、前記信号強度-距離標準偏差関数に従って得られた標準偏差とを用いて複数の円を描画するステップと、
複数の円の間の複数の交点を得て、当該複数の交点を描画するステップと、
複数の三角形を得るため、前記複数の交点について三角形分割フローを行うことと、
前記複数の三角形から最小外接円の半径を有する三角形を見つけ出すことで、前記外接円の円心を前記測位対象物の前記機器位置と設定するステップと、
を含む、パワー測位方法。
【請求項2】
信号強度が比較的強い3台の前記既知点にある機器を見つけ出すステップをさらに含む、請求項1に記載のパワー測位方法。
【請求項3】
前記測位対象物の識別子を受信するステップをさらに含む、請求項1に記載のパワー測位方法。
【請求項4】
データ設定フローを実行するステップをさらに含み、前記データ設定フローは、
試験用送信機の複数の送信電力を設定し、前記試験用送信機が対応する複数距離で複数の試験信号を受信機に送信させ、異なる試験信号が異なる送信電力に対応することと、
前記受信機が受信した複数の試験信号強度を検出することと、
前記複数の試験信号強度及び前記対応する複数距離をデータベースに記録することと、
前記信号強度-距離関数及び前記信号強度-距離標準偏差関数を算出すると共に前記データベースにリストアすることと、
を含む、請求項1に記載のパワー測位方法。
【請求項5】
空間内で測位対象物の機器位置を見つけ出すために用いられ、空間において複数の既知点にある機器をさらに含むパワー測位装置であって、
前記測位対象物を制御して複数の送信電力で複数の測位信号を送信し、前記複数の既知点にある機器に前記複数の測位信号を受信させるための処理モジュールと、
前記処理モジュールに電気的に接続され、電力毎に異なる信号強度-距離関数と、電力毎に異なる信号強度-距離標準偏差関数とを保存し、かつ前記複数の既知点にある機器が前記複数の測位信号を受信した後、データベースが複数の測位信号強度、複数の対応する受信時間及び前記複数の既知点にある機器の座標を記録することで、前記処理モジュールが受信した前記複数の測位信号の中で信号強度が比較的強い既知点にある機器を見つけ出すためのデータベースと、
前記データベースに電気的に接続され、前記複数の測位信号の強度、前記複数の対応する受信時間及び前記強度が比較的強い前記既知点にある機器により、前記信号強度-距離関数及び前記信号強度-距離標準偏差関数を照会して異なる電力の中で信号強度が比較的強い複数の前記既知点にある機器を得た後、前記処理モジュールは、前記複数の既知点にある機器を異なる電力に応じてグルーピングし、前記複数の既知点にある機器を円心として設定し、前記信号強度-距離関数に従って得られた距離と、前記信号強度-距離標準偏差関数に従って得られた標準偏差とを用いて複数の円を描画すると共に複数の円の間の複数の交点を得て、当該複数の交点を描画し、それにより、コンピューティングモジュールは前記複数の交点について三角形分割フローを行うことで、外接円の半径が最小となる三角形の中で最小外接円の円心を見つけ出して前記測位対象物の前記機器位置と設定するためのコンピューティングモジュールと、
を含む、パワー測位装置。
【請求項6】
前記処理モジュールは、信号強度が比較的強い3台の前記既知点にある機器を見つけ出す、請求項5に記載のパワー測位装置。
【請求項7】
前記測位対象物の識別子を受信することをさらに含む、請求項5に記載のパワー測位装置。
【請求項8】
前記処理モジュールは、複数の試験信号を送信するため、試験用送信機の複数の送信電力を設定し、受信機に前記試験用送信機から対応する複数距離で、前記複数の試験信号を受信させ、異なる試験信号が異なる送信電力に対応し;これにより、前記処理モジュールは、前記受信機が受信した複数の試験信号強度を検出することで、前記複数の試験信号強度及び前記対応する複数距離を前記データベースに記録し、前記コンピューティングモジュールが前記信号強度-距離関数及び前記信号強度-距離標準偏差関数を算出すると共に前記データベース内にリストアさせる、請求項5に記載のパワー測位装置。」
第3 当審拒絶理由通知書で通知した拒絶理由の要旨
当審拒絶理由通知において、次を要旨とする拒絶理由(以下「理由1」という。)を通知した。
理由1(実施可能要件、委任省令要件違反)
本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、下記の理由1(1)アイ及び理由1(2)の点において、請求項1~8に係る発明について、発明が解決しようとする課題の解決手段その他の当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することにより当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、この出願は、発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
理由1(1)
ア 請求項1~4に係る発明は、「前記複数の三角形から最小外接円の半径を有する三角形を見つけ出すことで、前記外接円の円心を前記測位対象物の前記機器位置と設定するステップ」を有しているところ、なぜ、このステップにより、最も妥当な測位ができるのか、理解ができない点。
イ 請求項5~8に係る発明は、「外接円の半径が最小となる三角形の中で最小外接円の円心を見つけ出して前記測位対象物の前記機器位置と設定する」ことを発明特定事項としているところ、なぜ、当該技術事項により、最も妥当な測位ができるのか、理解ができない点。
理由1(2)
明細書段落【0036】、【0037】、【図5A】及び【図5B】には、機器51の固定点座標を円心とした二つの円(以下、それぞれ「最大半径円」及び「最小半径円」という。)と、機器52の固定点座標を円心とした二つの円と、機器53の固定点座標を円心とした二つの円の、合計六つの円が示されており、既知点である固定点51、52、53について、それらの間の二つの点を求めることが記載されているところ、その求め方は、固定点の組合せによって、最大半径円同士の交点とするか、最小半径円同士の交点とするか、又は、最大半径円と最小半径円の交点とするか、統一されていないように、どういう基準で最大半径円を用いたり、最小半径円を用いるのか不明であり、固定点が与えられた場合、それらの間の二つの点をどのように求めればよいのか不明である点。
「【図5A】
[図:0001405212000001.jpg]
」
「【図5B】
[図:0001405212000002.jpg]
」
第4 当審の判断
1 理由1(1)について
(1) 明細書の発明の詳細な説明の記載
本願の明細書の発明の詳細な説明には、次の(ア)から(エ)の技術的事項が記載されている(段落【0034】、【0038】、【0043】参照)。
(ア) 「複数の前記既知点にある機器を円心として設定し、信号強度と距離関数で得られた距離、距離標準偏差関数で得られた標準偏差を用いて複数の円を描画する」こと。(【0034】)
(イ) 「複数の円の間の複数の交点を得る」こと。(【0034】)
(ウ) 「複数の三角形を得るため、前記複数の交点について三角形分割フローを行う」こと。(【0038】)
(エ) 「外接円の半径が最小となる三角形の中で最小外接円の円心を見つけ出す」こと、「最小外接円の円心を前記測位対象物40の前記機器位置41と設定する」こと。(【0043】)
(2) 当審の判断について
ア 前記(1)に示すとおり、発明の詳細な説明には、三角形分割フローを行う複数の交点を、信号強度-距離関数で得られた距離、信号強度-距離標準偏差関数で得られた標準偏差を用いて描画した複数の円の交点とし、複数の三角形を得るため、前記複数の交点について三角形分割フローを行い、外接円の半径が最小となる三角形の中で最小外接円の円心を見つけ出すこと、最小外接円の円心を前記測位対象物40の前記機器位置41と設定することが記載されている。
しかしながら、本願の明細書の発明の詳細な説明には、当該プロセスにより最も妥当な測位ができることの根拠について何も記載されていない。
しかも、例えば、後記イに示すとおり、信号強度-距離標準偏差関数で得られる標準偏差の値によっては、前記プロセスによって得られる測位対象物40の機器位置41が、明らかに妥当であるとはいえない場合がある。
したがって、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することにより当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるとはいえない。
イ 参考図1は、既知点にある三つの機器の固定点をA、B、Cとした場合、その固定点A、B、Cのうち、固定点Cで計測した距離の標準偏差が、他の固定点で測定した距離の標準偏差と比べて、相対的に大きい場合を示す。
参考図1の場合、参考図2で表示した点Lが、最尤点になるところ、本願発明により求められる点は点Sであり、点Sは明らかに測位対象物40の機器位置41であるとは認められない。
参考図1
[図:0001405212000003.jpg]
参考図2
[図:0001405212000004.jpg]
(3) 請求人の主張について
ア 請求人の主張1について
(ア) 請求人の主張1の内容
意見書3頁34~44行において、請求人は、次の主張をしている。
本願明細書の【図5A】~【図5D】に示すように、前記ステップにおいては、まず信号強度によって距離情報を取得し、送信機を中心に前述の測定距離を半径とする円を描くので、複数の送信機が複数の交点(=【図5D】に示すような黒い点)を得ることができる。そして、黒点が最も集中している測位エリアは、多くの送信機が「測位結果(被測定機器の機器位置)がここにある」と確信する旨を示すことから、測位結果の信頼性は高い。
以上の理由から、前記ステップでは、最小外接円の手法により測位結果を求めている。
なお、前記ステップの方法では、3つの黒点を同時に通過できる最小の円を求めることができる。よって、最終的に、3つの黒点をより信頼性の高い測位結果とみなし、最小外接円の円心を被測定機器の機器位置に設定している。
【図5A】
[図:0001405212000005.jpg]
【図5B】
[図:0001405212000006.jpg]
【図5C】
[図:0001405212000007.jpg]
【図5D】
[図:0001405212000008.jpg]
(イ) 請求人の主張1に対する当審の見解
請求人は、信号強度によって距離情報を取得し、送信機を中心に前述の測定距離を半径とする円を描くので、複数の送信機が複数の交点(図5Dの黒点)を得て、その黒点が最も集中している測位エリアが、多くの送信機が「測位結果(被測定機器の機器位置)がここにあると確信する旨を示すと主張する(当審注:「送信機」は「受信機」の誤記と認められる。)。
しかしながら、交点が集中していても、三つの点が直線に近い配置で並ぶ場合にはその外接円は小さいとは限らないから、交点が集中しているところから離れたところに最小外接円の中心があることもあり、さらに、たとえ外接円の内の最小の半径のものを選択したとしても、当該最小の半径を有する外接円を求めるための3点(三角形の三つの頂点)は集中しているものとは限らないから、「複数の三角形から最小外接円の半径を有する三角形を見つけ出すことで、前記外接円の円心を前記測位対象物の前記機器位置と設定する[こと]」が妥当な手法であることを十分に説明するものとはなっていない。
したがって、請求人の主張1は、採用できない。
イ 請求人の主張2について
(ア) 請求人の主張2の内容
回答書3頁18行~4頁3行において、請求人は、次の主張をしている。
本願の技術的特徴は、複数の電力を同時に考慮することで、多数の交点を発生させることにある。また、本願明細書の実施例では、二つの電力を用いた概念を説明するために、十二個の交点が用いられているものの、三つの電力を考慮すると、十八個の交点を生成することができる。つまり、より多くの電力が用いられると、より多くの交点を得ることができるといえる。
ここで、一つの電力から六個の交点のみを考慮すると、ある固定点での標準偏差が他の固定点での標準偏差より著しく大きい場合には、大きな測位誤差が生じやすくなる。
これに対して、本願発明では、複数の交点を同時に考慮することで、一つの交点の偏りに起因する誤差を低減することができる。
以上のことを踏まえると、本願発明により、最も妥当な測位ができることは明らかである。
(イ) 主張2に対する当審の見解
請求人は、複数の電力を同時に考慮することで、多数の交点を発生させて、全体としての誤差を低減すると主張している。
しかしながら、複数の電力を同時に考慮して、多数の交点を得られたとしても、前記(2)において示した「複数の三角形から最小外接円の半径を有する三角形を見つけ出すことで、前記外接円の円心を前記測位対象物の前記機器位置と設定する[こと]」が妥当な手法であることを十分に説明するものとはなっていないことに変わりはない。
したがって、前記請求人の主張2は、前記(2)の結論を左右するものではない。
ウ 小括
よって、請求人の前記主張1及び主張2はいずれも認められない。
2 理由1(2)について
(1) 当審の判断について
ア 前記第3の2で示したとおり、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載においては、機器51の固定点座標を円心とした「最大半径円」及び「最小半径円」の二つの円と、機器52の固定点座標を円心とした二つの円と、機器53の固定点座標を円心とした二つの円の、合計六つの円が示されており、既知点である固定点51、52、53について、それらの間の二つの点を求めることが記載されているところ、その求め方は、固定点の組合せによって、最大半径円同士の交点とするか、最小半径円同士の交点とするか、又は、最大半径円と最小半径円の交点とするか、統一されていない。
イ ここで、最大半径円同士の交点を用いて求めた最小外接円の円心の位置と、最小半径円同士の交点を用いて求めた最小外接円の円心の位置と比較した場合、前者において最小外接円となる三角形を構成する交点が、後者において用いられる交点に含まれていない場合なども考慮すると、前者の位置と後者の位置は必ずしも一致しない。そして、一方の位置が妥当であるとすると、他方の位置は妥当でないことになるから、どの交点を用いるかは、本願発明において、妥当な測位をする上で必須の構成であるといえる。
ウ しかしながら、前記アのとおり、発明の詳細な説明に記載された手法においては、交点の一部を用いて最小外接円の円心の位置を求めているところ、どのような基準で採用する「最大半径円と最小半径円の組合せ」を決定し、また、その採用する「最大半径円と最小半径円の組合せ」を決定することでなぜ最も妥当な測位ができることになるのか、十分な説明はされていない。
エ したがって、どのような基準で最大半径円を用いたり、最小半径円を用いるのか不明であり、固定点が与えられた場合、それらの間の二つの点をどのように求めればよいのか不明であるから、発明の詳細な説明の記載から、どうして最も妥当な測位が可能になるのか明らかでない。
オ よって、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が発明の技術上の意義を理解し、その実施ができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
(2) 請求人の主張について
ア 請求人の主張3について
(ア) 請求人の主張3の内容
意見書4頁46行~5頁5行において、請求人は、次の主張をしている。
本願明細書の段落【0037】には、「既知点にある機器51、52、53の固定点座標を円心として複数の円を描き出した後、2つの固定点で交点を求める」という点が記載されている。また、「同図面の図5Aでは、元の半径距離から0.67標準偏差を引いたものが最小半径として設定され、元の半径距離に0.67標準偏差を加えたものが最大半径として設定される」という点が記載されている。
これらの記載から、本願発明における固定点の最大半径円と最小半径円の間の範囲は、被測定機器が出現する可能性がある位置であるから、交点を求めるために、最大半径円のみ又は最小半径円のみを使用するように制限する必要はなく、様々な方法で求めることができるものである。よって、交点の求め方を統一する必要性がないことは明らかである。
(イ) 請求人の主張3に対する当審の見解
前記(1)で示したとおり、交点の求め方によって、最小外接円の円心の位置が異なるのであるから、最小外接円の円心の位置が最も妥当な機器位置となる、交点をどのようにして求めるかは、本願発明における必須の構成であることは明らかである。
したがって、交点の求め方を統一する必要性がないという、請求人の主張3は採用できない。
イ 請求人の主張4について
(ア) 請求人の主張4aについて
a 請求人の主張4aの内容
請求人は、回答書1頁12行~2頁3行において、次の主張をしている。
本願明細書の段落【0037】及び本願図面の【図5A】等に示すように、本願発明では、まず、二つの固定点の最小半径円が交差するかどうかが判断される。次いで、上記交差しない場合は、二つの固定点のいずれか一方の最大半径の円と二つの固定点のいずれか他方の固定点の最小半径の円が検討される。そして最後に、二つの固定点の最大半径円の交点が決定される。
以上のことを踏まえると、本願発明では、全ての円の交点を求める必要性がないことは明らかである。
b 請求人の主張4aについての当審の見解
請求人の主張4aについて検討する。
(a) 最小半径円同士が交差する場合について
当該主張4aによれば、まず、二つの固定点の最小半径円が交差するかどうか判断することになるが、交差する場合、三角形分割フローを行う対象となる交点が、最小半径円同士の交点のみなのか、もしくは、最小半径円同士の交点、最小半径円と最大半径円の交点、及び、最大半径円同士の交点の全ての交点になるのか明らかでない。
仮に、最小半径円同士の交点のみで三角形分割フローを行うとしても、その結果として求められた最小外接円の円心が、どうして機器の位置として最も妥当なものとなるのか、理論的に示されておらず、明らかでない。
(b) 最小半径円と最大半径円が交差する場合について
また、最小半径円同士が交差しない場合、二つの固定点のいずれか一方の最大半径の円と二つの固定点のいずれか他方の固定点の最小半径の円が検討することになるが、二つの固定点のいずれを最小半径円の円心とするか特定されておらず、二つの固定点を固定点A及び固定点Bとした場合、以下の参考図3にみられるように固定点Aを最小半径円の円心とする場合と、参考図4にみられるように固定点Bを最小半径円の円心とする場合とで、その交点の位置は全く異なるものとなり、通常、これらの交点を用いて三角形分割フローを行った場合の最小外接円の円心も、それぞれ別の位置に形成されることになる。
そうすると、二つの固定点のいずれか一方の最大半径の円と二つの固定点のいずれか他方の固定点の最小半径の円の交差する交点を用いた場合、最小外接円の円心の位置は一つに定まらず、異なる二つの位置が求められるところ、その結果として求められた最小外接円の円心が、どうして機器の位置として最も妥当なものとなるのか、理論的に示されておらず、明らかでない。
参考図3
[図:0001405212000009.jpg]
参考図4
[図:0001405212000010.jpg]
(c) 小括
よって、前記主張4aは採用できない。
(イ) 請求人の主張4bについて
a 請求人の主張4bの内容
請求人は、回答書2頁7~19行において、次の主張をしている。
本願明細書の内容は、例示を目的として提供されており、全ての可能なシナリオを網羅的に列挙するものではない。
また、本願明細書の段落【0037】、【0040】、及び本願図面の【図5A】から【図5C】等には、交点aから交点lが求められることが列挙されているだけであるものの、本願明細書が計算のために十二個の交点のみが使用されることに限定されることを意味するものではない。
そして、半径の大きさの選択は、最終的な最小の同心円の中心位置に影響を与える可能性があるものの、より多くの交点を考慮することで誤差を減らすことができる。
以上のことを踏まえると、より多くの交点を考慮することで、最終的にはより正確な結果を得ることができることは明らかであるので、様々な方法で求めることができる。
b 請求人の主張4bについての当審の見解
請求人の主張4bにおける「本願明細書が計算のために十二個の交点のみが使用されることに限定されることを意味するものではない。」や「より多くの交点を考慮することで誤差を減らすことができる。」などや、本願明細書の段落【0040】に記載の「本実施形態では、2つの異なる電力で得られた12個の交点a~lを用いて計算するが、本発明はこれに限定されず、交点が多いほどより正確な結果を得ることができる。」を踏まえると、当該主張4bは、前記1(3)イで示した主張2と同様の主張であると認められる。
しかしながら、複数の電力を同時に考慮して、多数の交点を得られたとしても、前記(1)において示した「どのような基準で最大半径円を用いたり、最小半径円を用いるのか不明であり、固定点が与えられた場合、それらの間の二つの点をどのように求めればよいのか不明である[こと]については、十分に説明するものではないことに変わりはない。
したがって、前記請求人の主張4bは採用できない。
(ウ) 請求人の主張4cについて
a 請求人の主張4cの内容
請求人は、回答書2頁26行~3頁2行において、次の主張をしている。
本願明細書の内容は、例示を目的として提供されており、全ての可能なシナリオを網羅的に列挙するものではない。このことからすると、本願明細書及び本願図面において、二つの固定点の間の点が、二つに限定されていることは例示として記載されているにすぎないから、本願発明の内容がこの記載に限定されるものではない。
b 請求人の主張4cについての当審の見解
請求人は、二つの固定点の間の点が、二つに限定されていることは例示として記載されているにすぎないと主張しているが、それはすなわち、二つの固定点の間の点を、どのように決定するかを限定するものでないと主張していることになる。
しかしながら、前記(1)で示すとおり、どの交点を用いるかは、本願発明において、妥当な測位をする上で必須の構成であるといえるところ、当該主張4cは、どの交点を用いるかは限定されないという主張であるから、認められない。
3 小括
前記1及び2で検討したとおり、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、請求項1~8に係る発明について、発明が解決しようとする課題の解決手段その他の当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することにより、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
第5 むすび
以上のとおり、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、請求項1~8に係る発明について、経済産業省令で定めるところにより、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
したがって、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、請求項1~8に係る発明について、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-005047