2022-001709
裸眼光学立体スクリーン
- 審判番号
- 2022-001709
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-544104外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年02月04日
- 審決日
- 2023年12月18日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .537-WZ (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 6項目
第1 手続の経緯
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本願は、2017年(平成29年)2月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年(平成28年)2月22日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 本願発明の認定
本願の請求項に係る発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~8に記載されたとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次に特定されるとおりである。なお、請求項1の「(b)b)」中の「前記光学要素が、光学素子は、」は「前記光学要素が、」の明らかな誤記であり、また、同じく「(b)c)」中の「少なくとも1つの光学素子は、」及び「他の光学素子」における「光学素子」は「光学要素」の明らかな誤記であると認められるので、誤記を正して認定する。
「表示スクリーン4と光学アセンブリ5とを含み、視覚矯正眼鏡を着用することなく、裸眼による光学立体表示アセンブリであって、前記表示スクリーン上に表示される2Dコンテンツを前記光学アセンブリを通して見た場合に視聴者が3D立体視を感知するものであり、(a)前記2Dコンテンツは、2台のカメラで取得された、またはデジタル的に処理された3D立体コンテント処理を受けていないイメージであり、および(b)前記光学アセンブリが、視野方向に沿って配置された1つの光学要素または一列に並べられた1つ以上の光学要素を含み、続きを表示(全22行)a)前記光学要素が、映画、テレビ、コンピュータ、ゲーム機、看板などの固定的に配置された表示スクリーンのために、プリズムやシリンドリカルレンズなどの中心線対称レンズ、球面レンズなどの中心線対称レンズまたはこれらの組合せから選択され、あるいはb)前記光学要素が、タブレット、携帯機器、携帯電話などの非固定的に配置された表示スクリーンのために、球面レンズなどの中心対称レンズから選択され、およびc)少なくとも1つの光学要素は、分離空間(92、93)によって他の光学要素から分離され;および(c)前記光学アセンブリ5による屈折効果により、イメージスクリーン6が前記表示スクリーン4の後方または前方に空間的変位をし;a)前記空間的変位が、両眼焦点および集中を分離し、およびb)分離された前記両眼の集中はイメージスクリーン6に表示され、前記両眼焦点は前記表示スクリーン4に留まり、およびc)前記分離した両眼焦点および集中が、視聴者の左目に、前記2Dイメージの実際の物理的位置とは異なる空間位置に位置されるように見える前記2Dイメージの左目オフセットイメージを誘導し、およびd)前記分離した両眼焦点および集中が、視聴者の右目に、前記2Dイメージの実際の物理的位置とは異なる空間位置に位置されるように見える前記2Dイメージの右目オフセットイメージを誘導し、およびe)感知される前記左目オフセットイメージの位置と、感知される前記右目オフセットイメージの位置との間に空間的な相違が存在し、および(d)前記空間的な相違が空間視差を引き起こして下記の視覚モード:a)固定的に配置された表示スクリーンのための、プリズムまたはシリンドリカルレンズによる不均一に縮小された3D立体イメージ、または球面レンズによる均一に縮小された3D立体イメージが前記表示スクリーンの後ろに現れる正視差ハイパーステレオ視覚モード;あるいはb)固定的に配置された表示スクリーンのための、プリズムまたはシリンドリカルレンズによる不均一に拡大された3D立体イメージ、または球面レンズによる均一に拡大された3D立体イメージが前記表示スクリーンの後ろに現れる正視差ハイポステレオ視覚モード;のうちの少なくとも1つとなる3D立体視を誘導し、(e)3D立体視の感覚は前記分離空間を調整することで変更でき、および(f)調整機構を使用して前記分離空間を調整する、光学立体表示アセンブリ。」
第3 当審拒絶理由通知書における拒絶の理由
当審拒絶理由通知書における拒絶の理由は、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件補正前の請求項1に記載された「光学アセンブリ」を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないから、本願は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない旨を含むものである。
第4 当審の判断
当審は、以下のとおり、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載(なお、当該記載は、本件補正の前後で変更されていない。)は、依然として、本願発明に特定された「光学アセンブリ」を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないと判断する。
1 本願の明細書の発明の詳細な説明及び図面(以下「本願明細書等」という。)に記載された技術的事項
(1)本願明細書等には、本願発明及びその「光学アセンブリ」に関して、以下の記載がある(下線は当審が付した。)。
ア 「【技術分野】」、
「【0001】本発明は光学立体用スクリーン分野に属する。より具体的には、本発明は裸眼により通常用スクリーンにおける2次元(2D)コンテンツを視聴する場合に、(3D)立体視覚を感知することができる光学立体視スクリーンに関する。」
イ 「【背景技術】」、
「【0003】人の目で自然景物を見る場合、3D立体視覚があるのは、横並び位置にある両眼は景物における同じ区域を見る場合、各目の視覚がやや異なり、二枚の空間オフセット画像を生成しているからであり、これを両眼視差と称する。自然の3D立体視覚は脳により二枚の空間オフセット画像を融合する結果であり、脳は二枚のオフセット画像の同じところをマッチングする上、その微小な差異を添加する。まさに二枚のオフセット画像にあるわずかな差異が、大脳に3D立体視覚を感知させる。(後略)」、
【0005】
図1は、従来の表示スクリーン4上で物体イメージを視聴する場合の3D立体視のイメージ化原理並びに従来の表示スクリーン4のイメージプランジインまたはポップアウトの効果を示す。瞳孔間距離(両眼間距離)を1と仮定する場合、従来の表示スクリーン4は、両眼と平行であり、左目「L」と、右目「R」が空間物体30を見る場合、スクリーン平面4上での左目のオフセットイメージと、右目のオフセットイメージは、対応する位置31および32に位置する。両眼の中間点2と、空間物体30とを結ぶスクリーン平面4上での交差が3である。3D立体視のため、ひとつのシナリオでは両眼が調節して、目をスクリーン平面4に合焦させ、両眼の両眼離反運動が左目イメージ31と、右目イメージ32とをイメージ3マージする。脳は、両眼離反運動の効果に慣れているので、左目オフセットイメージ31と、右目オフセットイメージ32とを自動的に空間イメージ30に結合する。スクリーン平面4上のイメージ3に比較して、空間イメージ30は、空間的奥行きを有し、3D立体視が得られる。空間イメージ30がスクリーン4の後方に位置し、これはイメージ3がスクリーン平面4にプランジインして現れる(正視差)。もう一つのシナリオは、イメージ41が左目網膜(41=32)上にあり、イメージ42が右目網膜(42=31)上にある場合、脳は2つのイメージを自動的に空間イメージ40へと合成する。スクリーン平面4上でのイメージ3に比較して、空間イメージ40は、スクリーン4の前に落ち、スクリーン平面4からのポップアウトしたイメージ3を現わす(負視差)。言い換えると、空間物体40を視聴する場合、スクリーン平面4上の左目オフセットイメージおよび右目オフセットイメージは、対応する位置41、42に配置され、これらはデフォーカス(ボケた)イメージである。3D立体コンテンツの従来制作は、デフォーカシング問題を考慮していないため、左目イメージ41および右目イメージ42を合焦されたイメージ31、32を使用してスクリーン平面4上に形成する場合、視聴者の脳に対し、適合性を究極的に欠落し、そして視聴者にめまいや吐き気を生じさせる結果であった。したがって、3D立体表示のため、負視差表示モードはほとんど使用されない。」、
[図:0001410590000001.jpg]
「【0006】従来の3D立体コンテンツの制作は、通常、前制作と後制作フェーズに分割される。前制作フェーズでは、2台の指定された立体カメラが使用され、コンテントが撮影される。後制作フェーズでは、撮影したコンテントはその後、空間視差にしたがってデジタル的に処理される。通常、この処理は、3D効果を強調するために物体を視野深さの複数のレイヤに変える(通常4-8レイヤ)。この後制作フェーズは、また2Dコンテントと3D立体コンテントに変換するためにも使用される。」、
「【0007】通常のグラスを使用しない立体表示は、技術的困難性、円熟した3Dコンテンツが少ないこと、クロストーク現象に加え輝度および解像度を著しく低下させるという問題を経験し、しばしば視聴者に対して過度の視差、過剰の輻輳、および/または分離による眼精疲労、頭痛、めまいおよび吐き気を生じさせる。さらに、分離と輻輳との間を頻繁に切り替えることは、また視聴するコンテントの変形、歪み、およびゴーストの近くを引き起こすこともある。」
ウ 「【発明の概要】」、
「【0008】本発明は、特許「調節可能な光学立体グラス」、US14637439およびWO2016140655の技術原理を拡張するものである。」、
「【0009】本発明は、前記の問題を解決し、裸眼で従来の表示スクリーン上の2Dコンテントを視聴した場合に、3D立体感知の感覚を確立する光学立体表示スクリーンを提供するものである。本発明は、光学プリズム、球面とシリンドリカルレンズ、他の対称レンズ、特殊光学要素(光学要素)から構成される光学的アセンブリを含む。発明された光学的アセンブリの機能は、光屈折手段による視差を導入するものであり、(a)光学アセンブリを通して従来の表示スクリーン上に表示された2Dイメージが視聴される場合、光学アセンブリは、表示スクリーン上に表示される2Dコンテンツの実際の位置とは異なる空間位置に位置するように見え、左目に対しては左目オフセットイメージの感知および右目に対しては右目オフセットイメージの感知を誘起し;(b)左目による左目オフセットイメージの感知位置と、右目による右目オフセットイメージの感知位置との間に空間変位のわずかな違いが存在し;(c)アセンブリによって生成される生成される左目オフセットイメージおよび右目オフセットイメージが、以下の視聴モード:正視差ハイパーステレオ視聴モード、正視差ハイポステレオモード、負視差ハイパーステレオ視聴モード、および負視差ハイポステレオ視聴モードの少なくとも1つとなるものであり、かつ視聴者に対して前記表示スクリーン上に表示された前記2Dイメージを3D立体イメージとして感知させる本発明の基本的な原理は、光屈折の働きにより視差を誘発することである。」、
「【0010】本発明は、空間視差を使用して従来の表示スクリーン上で2Dコンテントを視聴する場合に、視聴者に対して3D立体視を誘起するものである。本発明の光学立体表示スクリーンは、視差を生成するために光学アセンブリを使用する。2Dコンテントは、否かる従来のイメージとすることができ、従来の3D立体コンテント処理を受ける必要がない。従来の表示スクリーン上で2Dコンテントを視聴する場合、光学アセンブリは、ゼロ視差による3D立体感知に対する悪影響を排除する。視聴者の両眼焦点および輻輳を、輻輳を表示スクリーンから離すように移動させることにより分離する。技術的手段は、スクリーンプレーンを分離し、そのイメージプレーンを焦点から両眼輻輳を離すように移動させることを達成し、それによって実際のスクリーン上への合焦がイメージスクリーン上へと輻輳する。彼の左目網膜および右目網膜上の2つのオフセットイメージは、視差のため正確に生成される。彼の脳は、さらに2つのオフセットイメージを1つのイメージに組み合わせて処理し、3D立体感知の感覚を誘発する。」、
(当審注:「本発明の光学立体表示スクリーンは、視差を生成するために降格アセンブリを使用する。」の「降格アセンブリ」は、「光学アセンブリ」の明らかな誤記と認められるので、誤記を正して摘記した。また、「晴れの脳は、さらに2つのオフセットイメージを1つのイメージに組み合わせて処理し、3D立体感知の感覚を誘発する。」の「晴れの脳」は、「彼の脳」の明らかな誤記と認められるので、誤記を正して摘記した。)
「【0011】本発明の光学3D立体表示スクリーンは、広く(a)従来の表示スクリーン上の2Dコンテンツを視聴する場合、3D立体視覚を誘発すること(b)屈折度合いがないこと;(c)顕著な発散がないこと;(d)輝度、明るさ、明良性を向上すること;(e)解像度の損失が無いこと;(f)連続して延びる空間の奥行き;(g)連続的なイメージ;(h)歪みとゴースト現象の無いことを達成する。商業的用途を鑑みれば、高透明度、高屈折率のある固体光学材料の光学要素を選択するべきである。」
エ 「【発明を実施するための形態】」、
「【0013】図2は、本発明における光学立体表示アセンブリ5の光学アセンブリの概略図である。アセンブリにおける光学要素ごとに、それぞれ100,200,300…などで表示する。商業用途およびニーズに基づき、光学アセンブリにおける光学要素数は、1~100の範囲とすることができる。」、
[図:0001410590000002.jpg]
「【0014】図3は、本発明における一つの実施例である光学立体表示アセンブリ5の上面断面図であり、左目Lと右目Rにより従来の表示スクリーン4におけるシーンスポット3を見る場合の、3D立体視のイメージング原理を説明している。仮に瞳孔間距離を1とし、スクリーン4は、両眼と平行とし、図3のように、表示スクリーン4におけるシーンスポット3を見る場合、光学要素の屈折のため、イメージスクリーン6が表示スクリーン4の後方へと変位し、イメージスクリーン6における右目オフセットイメージと、左目オフセットイメージとが対応的に位置31、32に位置する。立体視については、両眼は調節が目をスクリーン4に焦点を合わさせ、脳は両眼の両眼離反運動に慣れているので、左目オフセットイメージ31と、右目オフセットイメージ32とを空間イメージ30へと自動的に組合わせる。よって、視聴空間において、視聴者の両眼は、物体30上に輻輳され、3D立体感知となる、イメージスクリーン6は、スクリーン4の後方に落ち、スクリーン4にプランジインするイメージ3が表示される、これが正視差視聴モードを例示する。」、
(当審注:「仮に瞳孔間距離を1とし、スクリーン4は、両眼と平行とし、図19のように、表示スクリーン4におけるシーンスポット3を見る場合・・・」の「図19」は、文脈に照らして、「図3」の明らかな誤記と認められるので、誤記を正して摘記した。)
[図:0001410590000003.jpg]
「【0015】図4(a)-4(d)は、本発明における光学立体表示スクリーンの四つの立体視聴モードを示す。本発明における光学立体表示アセンブリ5により従来の表示スクリーン4における2Dコンテントを視聴する場合、表示スクリーン4の左側の対象点10、11、および右側の対象点12、13は、それぞれイメージスクリーン6における左側イメージングポイント20、21および右側イメージングポイント22、23に落ち込む。このことは、視聴方向の前方に沿って表記スクリーン4から離れるにつれ両眼輻輳を移動させることで両眼焦点および輻輳を分離する空間的変位を与える。両眼の瞳孔間距離のため、左目網膜上のイメージと、右目網膜上のイメージの間には、微小な差異を示し、これが脳にとって左目網膜と右目網膜における2つの視差イメージを組合せて融合する要求を満足し、脳が空間の奥行きを回復することを誘発し、立体視感知を生じさせる。さらに、3Dイメージングの特徴により、図4(a)は、イメージスクリーン6が表示スクリーン4の後方(または後方に向けて)に位置し、イメージサイズが縮小される正視差ハイパーステレオ視聴モードを表している;図4(b)は、イメージスクリーン6が表示スクリーン4の後方(または後向に向けて)に位置し、イメージサイズが縮小される負視差ハイパーステレオ視聴モードを表し;図4(c)は、イメージスクリーン6が表示スクリーン4の後方(または後方に向けて)に位置するイメージサイズが拡大される正視差ハイポステレオ視聴モードを表し;図4(d)は、イメージスクリーン6が表示スクリーン4の前方(または前に向けて)に位置し、イメージサイズ拡大される負視差ハイポステレオ視聴モードを表す。」、
(当審注:「・・・視聴方向の前方に沿って表記スクリーン4~離れるにつれ両眼輻輳を移動させる・・・」の「~」は「から」の明らかな誤記と認められるので、誤記を正して摘記した。)
[図:0001410590000004.jpg]
「【0027】両眼の違いおよび空間視差は、3D立体視を感知するための最も重要な因子である。本発明は、光学アセンブリより構成された光学立体スクリーンを提供し、従来の表示スクリーンにおける2Dコンテントを視聴する場合に、3D立体視を感知させる。光学アセンブリを使用する場合、視聴者の脳に奥行き感を生じさせ、連続的に延伸する空間を回復させ、3D立体視を生成させ、連続的な深度フィールドを生じさせる。本発明の光学立体スクリーンは、空間のマルチ-レイヤ深度の技術問題を解決するのみならず、3D立体視聴のための3D立体コンテントの制作を必要としない。」、
「【0028】商業用立体スクリーンは、過度の輻輳および分離の生成を防ぎ、広汎な適用のための商業的用途上の必要性に適合するために、全員の視差の調節および輻輳を調整する能力の差異を考慮するべきであり;快適性、便利性と調節可能性を最大限に向上させるべきである。適切に設計される光学立体スクリーンは、正視差、輻輳イメージング、適切な空間奥行きおよび強い3D感知という特徴を備得るべきである。(後略)」、
「【0029】本発明の光学立体表示アセンブリ5は、光学要素より構成される。図2に示すように、各々の要素は、光学プリズム、球面およびシリンドリカルレンズ、他の対称レンズ、空特殊光学要素等示す。光学立体表示アセンブリ5を通して、従来の表示スクリーン4上の2Dコンテントを視聴した場合、イメージスクリーン6は、屈折のため空間変位を有していて、視線の進む方向に沿って表示スクリーン4から離れて両眼輻輳を移動させることにより両眼焦点および輻輳の分離を生じさせる、このため、ゼロ視差による3D立体視感の負の影響が排除され、立体感知が誘起され、図4(a)-4(d)に概説した3D視聴モードが達成される。(後略)」、
「【0030】図8のように、光学要素100は、水平軸線に沿って頂角70を配置する三角プリズムである。光学要素100を通して従来の表示スクリーン4における3つの対象ポイント10、11、12を見る場合、屈折のため視線の経路は、それぞれイメージスクリーン6におけるイメージポイント20、21、22で示されるように、空間的な偏向を経験する。水平変位は、左向きであり、垂直変位は、後向であった。三角プリズム100により達成された空間変位は、三角プリズムが図4(a)-4(d)のような視聴モードの機能要求を満足するために立体表示アセンブリ5のための光学要素として使用することができることを示す。(後略)」、
[図:0001410590000005.jpg]
「【0037】図15を参照し、上部の光学要素が一対の三角プリズム(102、112)、下部の光学要素が一対の長方形プリズム(100、110)である光学要素(100、101、102、103)を通して、従来の表示スクリーン4上の2Dコンテンツを視聴する正視差ハイパーステレオ視聴モードを示す。右向き(720、721)、左向き(722、723)の水平変位および後方への垂直変位820は、イメージスクリーン6上のイメージポイント20、21および22、23を反映し、表示スクリーン4上の対象ポイント10、11、および12、13から屈折される。イメージスクリーン6は、スクリーン4の後方(または後ろ側)に位置し、後向きの垂直変位820が得られる。光学立体表示アセンブリ5と、表示スクリーン4との間の分離空間90および91、上部と下部光学要素との間の92、93が存在する。当該光学要素(100、110、102、112)構成は、図8および図11のようなプリズムの組合わせから発展したものと考えることができる。重ね合わせ効果のため、縮小イメージで、向上された正視差ハイパーステレオ視聴体験がもたらされる。」、
[図:0001410590000006.jpg]
「【0040】図18を参照し、本実施例において、本発明の光学立体表示アセンブリ5は、上部の光学要素、平凹レンズまたは平凹シリンドリカルレンズ、および下部光学要素、凹面が視聴者に向いた凹レンズ200または凹シリンドリカルレンズ200を含む。本発明の立体表示アセンブリ5の構成は、中心頂点フレネルレンズ100を、図7(a)に示した平凹シリンドリカルレンズ102で置換することにより図17から発展したものと考えることができる。図17と比較すると、この光学要素の構成は、水平変位(720、721、722)に対する(723、724、725)の水平変位により誘起される縮小イメージをまた生成する。イメージスクリーン6の垂直変位の結果、両眼焦点および輻輳を、両眼輻輳を視線方向に沿って表示スクリーン4から離すことにより分離させ、かつスクリーン4の後方(または後ろ側)となる縮小イメージを生成させる。」、
[図:0001410590000007.jpg]
「【0052】前記の実施例において、表示スクリーン4に近接する光学要素を反転して、空間の奥行き感と立体感に影響を及ぼし、分離空間(90、91)を調節して、空間の奥行き感と立体感にも影響をおよぼすが、分離空間(92、93)を調節すれば、空間の奥行き感と立体感にやや影響を及ぼす。概ね、一定的な調節範囲において、分離空間(90、91)を縮小することにより、一定な程度で空間の奥行き感を増強させるが、立体感が弱くなり、分離空間(90、91)を増加することにより、一定な程度で空間の奥行き感を弱くさせるが、立体感が増強される。なお、固定で置く通常用スクリーン、例えば、映画、テレビ、コンピュータ、ゲーム機、電子看板のようなスクリーンにおける2Dコンテントを見る場合、本発明の光学立体表示アセンブリの光学要素がプリズム、球面、非球面及びシリンドリカルレンズまたはそのた対称性レンズを選択することができ、固定せずに置く通常用スクリーン、例えば、タブレットPC、携帯式ゲーム機、携帯式デバイス、携帯電話のようなスクリーンにおける2Dコンテントを視聴する場合、本発明の光学立体表示アセンブリの光学要素が球面レンズ、非球面またはそのた対称性のあるレンズを選択することが好ましいが、これは視聴者がスクリーンの長辺と短辺を任意に選択して下部の底辺とすることが可能であるが、シリンドリカルレンズも、プリズムも特定の方向性があるからである。なお、視差は、左右(水平)方向にしか発生せず、上下(垂直)方向で発生しない。このため、固定せずに設置するスクリーンに対する光学要素の選択には、特定の制限および規則がある。」
(2)前記(1)によれば、本願発明の技術的特徴は、特に立体視の原理に着目しつつ整理すると、次のとおりであると認められる。
ア 本願発明は光学立体用スクリーン分野に属するものであり、より具体的には、裸眼により通常用スクリーンにおける2次元(2D)コンテンツを視聴する場合に、(3D)立体視覚を感知することができる光学立体視スクリーンに関するものである。(【0001】)
そして、上記(3D)立体視覚は、従来、2台の指定された立体カメラが使用され、コンテントが撮影され、その後、空間視差にしたがってデジタル的に処理した3D立体コンテンツが用いられ(【0006】)、これら2つの異なるコンテンツを二枚の空間オフセット画像として両眼で見る場合、これら異なる二枚のオフセット画像にあるわずかな差異が、大脳に3D立体視覚を感知させることにより得られるものである(【0003】)。
なお、一般的に3D(立体)というときに、2次元で表現可能な曲面(平坦な2次元平面を除く)を対象とすると理解されるものではないし、本願明細書等に用いられる3D(立体)が通常の意味と異なる用語であることを示唆する記載は無いから、本願発明における3D(立体)は、通常の意味のとおりの「三次元の空間的ひろがりをもつ物体」(広辞苑6版「りったい」)として理解されるものである。
イ 従来の表示スクリーン4上で物体イメージを視聴する場合の3D立体視のイメージ化原理は、図1において、(i)左目Lと右目Rが空間物体30を見る場合、スクリーン平面4上での左目のオフセットイメージと右目のオフセットイメージが、対応する位置31および32に位置する、(ii)3D立体視のため、両眼が調節して、目をスクリーン平面4に合焦させ、両眼の両眼離反運動が左目イメージ31と右目イメージ32とをイメージ3にマージする、(iii)脳は、両眼離反運動の効果に慣れているので、左目オフセットイメージ31と右目オフセットイメージ32とを自動的に空間イメージ30に結合する、(iv)スクリーン平面4上のイメージ3に比較して、空間イメージ30は、空間的奥行きを有し、3D立体視が得られる、というものである。このような通常のグラスを使用しない立体表示は、技術的困難性、円熟した3Dコンテンツが少ないこと、クロストーク現象に加え輝度および解像度を著しく低下させるという問題を経験し、しばしば視聴者に対して過度の視差、過剰の輻輳、および/または分離による眼精疲労、頭痛、めまいおよび吐き気を生じさせるものであり、さらに、分離と輻輳との間を頻繁に切り替えることは、また視聴するコンテントの変形、歪み、およびゴーストの近くを引き起こすこともある。(【0005】・【0007】)
ウ 本願発明は、前記の問題を解決し、裸眼で従来の表示スクリーン上の2Dコンテントを視聴した場合に、3D立体感知の感覚を確立する光学立体表示スクリーンを提供するものである。視聴者に対して表示スクリーン上に表示された2Dイメージを3D立体イメージとして感知させる本願発明の基本的な原理は、光屈折の働きにより視差を誘発することである。(【0009】)
エ 本願発明は、空間視差を使用して従来の表示スクリーン上で2Dコンテントを視聴する場合に、視聴者に対して3D立体視を誘起するものである。本願発明の光学立体表示スクリーンは、視差を生成するために光学アセンブリを使用する。従来の表示スクリーン上で2Dコンテントを視聴する場合、光学アセンブリは、ゼロ視差による3D立体感知に対する悪影響を排除する。視聴者の両眼焦点および輻輳を、輻輳を表示スクリーンから離すように移動させることにより分離する。技術的手段は、スクリーンプレーンを分離し、そのイメージプレーンを焦点から両眼輻輳を離すように移動させることを達成し、それによって実際のスクリーン上への合焦がイメージスクリーン上へと輻輳する。彼の左目網膜および右目網膜上の2つのオフセットイメージは、視差のため正確に生成される。彼の脳はさらに2つのオフセットイメージを1つのイメージに組み合わせて処理し、3D立体感知の感覚を誘発する。(【0010】)
オ 図3は、左目Lと右目Rにより従来の表示スクリーン4におけるシーンスポット3を見る場合の、本願発明の3D立体視のイメージング原理を説明している。瞳孔間距離を1とし、両眼と平行な表示スクリーン4におけるシーンスポット3を見る場合、光学要素の屈折のため、イメージスクリーン6が表示スクリーン4の後方へと変位し、イメージスクリーン6における右目オフセットイメージと、左目オフセットイメージとが対応的に位置31、32に位置する。立体視については、両眼は調節が目をスクリーン4に焦点を合わさせ、脳は両眼の両眼離反運動に慣れているので、左目オフセットイメージ31と、右目オフセットイメージ32とを空間イメージ30へと自動的に組合わせる。よって、視聴空間において、視聴者の両眼は、物体30上に輻輳され、3D立体感知となる、イメージスクリーン6は、スクリーン4の後方に落ち、スクリーン4にプランジインするイメージ3が表示される。(【0014】)
カ 本願発明の光学立体表示アセンブリ5によって従来の表示スクリーン4における2Dコンテントを視聴する場合、表示スクリーン4の左側の対象点10、11、および右側の対象点12、13は、それぞれイメージスクリーン6における左側イメージングポイント20、21および右側イメージングポイント22、23に落ち込む。このことは、視聴方向の前方に沿って表記スクリーン4から離れるにつれ両眼輻輳を移動させることで両眼焦点および輻輳を分離する空間的変位を与える。両眼の瞳孔間距離のため、左目網膜上のイメージと、右目網膜上のイメージの間には、微小な差異を示し、これが脳にとって左目網膜と右目網膜における2つの視差イメージを組合せて融合する要求を満足し、脳が空間の奥行きを回復することを誘発し、立体視感知を生じさせる。(【0015】)
2 判断
(1)本願発明は、前記(2)ウのとおり、裸眼で従来の表示スクリーン上の2Dコンテントを視聴した場合に、3D立体感知の感覚を確立する光学立体表示スクリーンを提供するものであるところ、その基本的な原理は、光屈折の働きによって視差を誘発することであるとされているから、本願発明を実施するためには、当該光屈折の働きを実現するための構成である「光学アセンブリ」を製造することができなければならない。
ア そこで、本願発明で特定された「光学アセンブリ」(以下「本件光学アセンブリ」という。)をみると、本件光学アセンブリは、請求項1の記載によれば、以下の要件を満たす必要があるといえる。
A 表示スクリーン4上に表示される2Dイメージ(3D立体コンテント処理を受けていないイメージである。)を、光学アセンブリ5を通して見た場合に視聴者が3D立体視を感知するものであること、
B 視野方向に沿って配置された1つの光学要素または一列に並べられた1つ以上の光学要素を含むこと、[(b)]
C 光学要素は、固定的に配置された表示スクリーン4のために、プリズムやシリンドリカルレンズなどの中心線対称レンズ、球面レンズなどの中心線対称レンズまたはこれらの組合せから選択されており、あるいは、非固定的に配置された表示スクリーン4のために、球面レンズなどの中心対称レンズから選択されること、[(b)a)及びb)]
D 少なくとも1つの光学要素は、分離空間(92、93)によって他の光学要素から分離されること、[(b)c)]
E 光学アセンブリ5による屈折効果により、イメージスクリーン6が表示スクリーン4の後方または前方に空間的変位をすること、[(c)]
F 前記空間的変位が、両眼焦点および集中を分離すること、[(c)a)]
G 分離された両眼の集中はイメージスクリーン6に表示され、両眼焦点は前記表示スクリーン4に留まること、[(c)b)]
H 前記分離した両眼焦点および集中が、視聴者の左目に、2Dイメージの実際の物理的位置とは異なる空間位置に位置されるように見える2Dイメージの左目オフセットイメージを誘導すること、[(c)c)]
I 前記分離した両眼焦点および集中が、視聴者の右目に、2Dイメージの実際の物理的位置とは異なる空間位置に位置されるように見える2Dイメージの右目オフセットイメージを誘導すること、[(c)d)]
J 感知される前記左目オフセットイメージの位置と、感知される前記右目オフセットイメージの位置との間に空間的な相違が存在すること、[(c)e)]
H 前記の空間的な相違が空間視差を引き起こすこと。[(d)]
イ 前記アによれば、本件光学アセンブリは、その屈折効果によって、表示スクリーン4(3D立体コンテント処理を受けていない2Dイメージが表示されている。)の前方又は後方に空間的変位した位置にイメージスクリーン6を形成すると解される(E)ところ、当該2Dイメージを本件光学アセンブリを通して見た場合に視聴者が3D立体視を感知するものである(A)とともに、その空間的変位によって生じた表示スクリーン4に留まった両眼焦点とイメージスクリーン6に表示された両眼の集中との分離が、2Dイメージの左目オフセットイメージ及び2Dイメージの右目オフセットイメージを誘導する(F、H及びI)ものであって、感知される2Dイメージの左目オフセットイメージの位置及び2Dイメージの右目オフセットイメージの位置との間に空間的な相違が存在することによって空間視差が引き起される(J及びH)ものである。
そして、本件光学アセンブリに用いられる光学要素は、プリズム、シリンドリカルレンズ及び球面レンズなどの「中心線対称レンズ」、又は球面レンズなどの「中心対称レンズ」であるとされている(C)。
(2)しかしながら、本願明細書等の記載及び技術常識によっては、当業者といえども、本件光学アセンブリを製造することができるとはいえない。
ア(ア)すなわち、まず、本件光学アセンブリは、その屈折効果によって、表示スクリーン4の前方又は後方に空間的変位した位置にイメージスクリーン6を形成する(E)ことから、当該イメージスクリーン6の形成は、表示スクリーン4を物体と位置づけたときの像としてなされると解するのが自然である。次に、本件光学アセンブリでは、分離された両眼の集中がイメージスクリーン6に表示されること(G)から、2Dイメージの左目オフセットイメージ及び右目オフセットイメージはイメージスクリーン6上に表示されていると解され、この理解は、本願明細書等の【0015】の「イメージスクリーン6における右目オフセットイメージと、左目オフセットイメージ」との記載にも沿う。以上によれば、物体と像の関係にある表示スクリーン4とイメージスクリーン6上に、それぞれ、2Dイメージ(A)と2Dイメージの左目オフセットイメージ及び右目オフセットイメージが表示されることになるから、本件光学アセンブリは、2Dイメージと、その左目オフセットイメージ及び右目オフセットイメージとの間においても、物体と像の関係を形成していると解される。そして、2Dイメージの左目オフセットイメージと右目オフセットイメージは、空間視差を引き起こす程度の空間的な相違が存在しており(J及びH)、これらの左目オフセットイメージと右目オフセットイメージによって、視聴者は3D立体視を感知するものである(A)と解される。
このように、本件光学アセンブリは、2Dイメージを物体と位置づけたときの像として、相当程度の空間的な間隔が存在し、視聴者に3D立体視を感知させるような2Dイメージの左目オフセットイメージと2Dイメージの右目オフセットイメージを形成するのであるから、結局、(2Dイメージという)1つの物体から、大脳に3D立体視覚を感知させるわずかな差異を備える二枚のオフセット画像として視聴可能な「2Dイメージの左目オフセットイメージ」と「2Dイメージの右目オフセットイメージ」という2つの像(以下「2つの対応オフセット像」という。)を形成するものということになる。
(イ)しかるところ、本件光学アセンブリは、前記(1)イのとおり、光学要素として、プリズム、シリンドリカルレンズ及び球面レンズなどの「中心線対称レンズ」又は「中心対称レンズ」を用いるものであるが、技術常識に照らせば、このようなレンズやこれらのレンズの組合せによって、1つの物体から、「2つの対応オフセット像」を形成することができるとは考え難い。すなわち、中心線対称レンズ及び中心対称レンズによってこのような2つの像を形成できるという技術常識があるとはいえない。また、本件光学アセンブリに含まれる光学要素として明記されたものについてみても、「球面レンズ」は、焦点が1つしか存在しないことから、1つの物体から形成される像の個数は1つのみであることが明らかであるし、「プリズム」や「シリンドリカルレンズ」についても、1つの物体から、2つの対応オフセット像を形成することができるとは考え難い。
(ウ)そして、本願発明の技術的特徴として立体視の原理に関連して本願明細書等に記載された内容は、前記1(2)のとおりであるが、以上の点について何ら明らかにするものではない。
イ 前記アのとおり、本件光学アセンブリの作用は、(2Dイメージという)1つの物体から、(2Dイメージの左目オフセットイメージと2Dイメージの右目オフセットイメージという)2つの対応オフセット像を形成するものであると解されるが、前記(1)アのE及びFのとおり、表示スクリーン4に対するイメージスクリーン6の後方または前方への空間的変位が、両眼焦点および集中を分離することが特定されていることに照らせば、本件光学アセンブリの作用は、イメージスクリーン6を表示スクリーン4の後方又は前方に空間的変位させるだけのものにすぎず、1つの物体から2つの対応オフセット像を形成するものではないと解する余地もあるので、以下検討する。
本件光学アセンブリの作用をそのように解した場合、それだけの作用によって、どのようにして、2Dイメージの左目オフセットイメージと右目オフセットイメージが誘導されるのかが問題となるところ、前記のH及びIでは、これらの誘導が分離した両眼焦点および集中によってなされるとされており、前記1(2)オでは、瞳孔間距離を1とし、両眼と平行な表示スクリーン4におけるシーンスポット3を見る場合、光学要素の屈折のため、イメージスクリーン6が表示スクリーン4の後方へと変位し、イメージスクリーン6における右目オフセットイメージと、左目オフセットイメージとが対応的に位置31、32に位置するとされている。
しかしながら、本件光学アセンブリが、前記アのような2つの像を形成する作用をもたずに、イメージスクリーン6を表示スクリーン4の後方又は前方に空間的変位させることだけを行う場合には、(それらの位置の空間的な相違が空間視差を引き起こすような)2Dイメージの左目オフセットイメージと右目オフセットイメージが誘導されるとは考え難い。すなわち、本願発明において、人間の目は、本件光学アセンブリを介して表示スクリーン4を見ると解されることから、表示スクリーン4上の2Dイメージを直接視認することはできないのであり、仮に、2Dイメージ(ないしそれに係るもの)を何らか視認できることがあるならば、その視認できるものは、本件光学アセンブリによって形成された2Dイメージの像以外にあり得ない。そのため、左目オフセットイメージと右目オフセットイメージが、本件光学アセンブリによって形成された2Dイメージの像ではない、ということならば、そのようなことは、光学的に考え難い。そして、これらのオフセットイメージが本件光学アセンブリによって形成された2Dイメージの像であるということならば、前記アで説示したとおりである。
したがって、本件光学アセンブリが、イメージスクリーン6を表示スクリーン4の後方又は前方に空間的変位させることだけを行う場合、(それらの位置の空間的な相違が空間視差を引き起こすような)2Dイメージの左目オフセットイメージと右目オフセットイメージが誘導されるとはいえない。
ウ そして、本願明細書等には多数の実施例が記載されているが、これらも前記ア及びイの説示を左右しない。
すなわち、これらの実施例は、本願発明で特定された「正視差ハイパーステレオ視覚モード」及び「正視差ハイポステレオ視覚モード」に対応していると解されるところ、これらの実施例をみても、「中心線対称レンズ」又は「中心対称レンズ」を用いる本件光学アセンブリにおいて、どのようにして、1つの物体から、2つの対応オフセット像を形成することができるのかは不明である。
エ(ア)これに対し、請求人は、本件補正によって、本願明細書等の記載に基づき本願発明が実施可能になった旨主張するが、具体的な理由を欠き、採用できるものではない。
(イ)請求人は、各実施例について、イメージスクリーン6上の図面番号の「20」、「21」、「22」及び「23」が、代表空間視差イメージであって、それぞれの代表空間視差イメージがRとLからなる立体視差イメージを代表している旨主張する。しかしながら、本願明細書等の【0015】には、「本発明における光学立体表示アセンブリ5により従来の表示スクリーン4における2Dコンテントを視聴する場合、表示スクリーン4の左側の対象点10、11、および右側の対象点12、13は、それぞれイメージスクリーン6における左側イメージングポイント20、21および右側イメージングポイント22、23に落ち込む。」と記載されており、ここでは、「20」~「23」が「イメージングポイント」であると説明されていることから、これらを代表空間視差イメージであると理解すること自体が困難である。また、仮に、これらをそのように理解できるとしても、それぞれの代表空間視差イメージに対応するRとLからなる立体視差イメージは、やはり1つの物体(ないし物点)に対応する2つの像なのであり、そして、本件光学アセンブリによって、これがどのようにして得られるのかは、不明なままである。
さらに、請求人は、本願明細書等の図3には、表示スクリーン4上で2Dイメージ3を見たときの3D立体視の結像原理が記載されているとした上で、立体視空間では、両眼調節によって目の焦点が表示スクリーン4に集まり、人間の脳が左目オフセットイメージ31と右目オフセットイメージ32を合成して空間画像30を形成する旨主張するが、上記と同様に、本件光学アセンブリによって、1つの2Dイメージ3から、2つの対応オフセット像であるところのオフセットイメージ31、32がどのようにして得られるのかは、不明である。
オ 以上のとおりであるから、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、本願発明に係る本件光学アセンブリを製造できる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。
(3)したがって、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、本願発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。
第5 むすび
以上のとおり、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-001709