2019-000033
湾曲したセンサシステム用のレンズ
- 審判番号
- 2019-000033
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-521521外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年01月04日
- 審決日
- 2020年06月26日
- 公報発行日
- 2020年12月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】マイクロソフト テクノロジー ライセンシング,エルエルシー
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 【請求人代理人】大貫 進介
- 分類
- P18 .536-Z (G02B) / P18 .537-Z (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 7項目
第1 手続の経緯
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本願は、2014年(平成26年)6月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年6月21日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 本願発明について
1 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成30年8月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「湾曲面を持つイメージセンサと、2素子レンズアセンブリとを有し、前記2素子レンズアセンブリは、第1の被写体側表面及び第1の像側表面を有した、正の屈折力を持つ第1の非球面屈折素子と、第2の被写体側表面及び第2の像側表面を有した第2の非球面屈折素子であり、前記第2の被写体側表面が前記第1の非球面屈折素子の前記第1の像側表面に物理的に結合され、当該第2の非球面屈折素子は両凸レンズである、第2の非球面屈折素子と、前記第2の非球面屈折素子の前記第2の被写体側表面と前記第1の非球面屈折素子の前記第1の像側表面との間に画成される非球面境界面であり、負の球面収差を導入するように構成された非球面境界面とを有する、システム。」
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない、また、この出願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、というものである。
3 実施可能要件
(1)発明の詳細な説明の記載
この出願の発明の詳細な説明には、次の記載がある。
(ア)「【0010】図1は、凸面の被写体側表面と凹面の反対側とにより被写体から像への方向で正の屈折力を持つ屈折光学素子(例えば、概して正のメニスカスレンズ102)を含んだ、2素子屈折光学素子アセンブリ100の一例を示している。図1に概略的に表すように、被写体に面するレンズ102の凸側は、反対側の、像に面する凹側よりも大きい曲率半径を有している。なお、図1は、実際のサイズ又は寸法を伝えることを意図していない。」
(イ)「【0012】レンズ102及び104は、物理的に結合されるように示されているが、理解されるように、それらは、何らかの液体又は気体(空気を含め)で充たされた好適な間隙によって離隔されてもよい。レンズ102及び104は、プラスチックやガラスで製造されることができ、例えば、一方がプラスチック、一方がガラスで製造され得る。以下は、図1に対応する一実装例のデータを示している。【0013】【表1】」
(ウ)「【0015】以下は、図2に対応する一実装例のデータを示している。【0016】【表2】」
(エ)「【0017】図3は、図1及び2と類似しており、湾曲面338上に光の焦点を合わせるように正(被写体側) メニスカスレンズ332を概して両凸のレンズ334に結合した、2素子アセンブリ300を有している。以下は、図3に対応する一実装例のデータを示している。【0018】【表3】」
(オ)「【0023】図1-3においてのように、図4でも大きさ又は寸法を伝えることは意図していないが、個々の素子及び間隙の相対的な曲率半径が、焦点距離が適切であるようなものにされる。以下は、図4に対応する一実装例のデータを示している。【0024】【表4】」
(カ)「【0026】以下は、図5に対応する一実装例のデータを示している。【0027】【表5】」
(キ)「【0029】以下は、図6に対応する一実装例のデータを示している。【0030】【表6】」
(ク)「【0032】以下は、図7に対応する一実装例のデータを示している。【0033】【表7】」
(ケ)「【0034】図8のレンズアセンブリ例の詳細は以下である。【0035】【表8】」
(コ)「【0036】図9のレンズアセンブリ例の詳細は以下である。【0037】【表9】」
(サ)「【0038】図10のレンズアセンブリ例の詳細は以下である。【0039】【表10】」
(シ)「【0040】図11のレンズアセンブリ例の詳細は以下である。【0041】【表11】」
(ス)「【0042】図12のレンズアセンブリ例の詳細は以下である。【0043】【表12】」
(セ)「【0044】図13のレンズアセンブリ例の詳細は以下である。【0045】【表13】」
また、図1は次のとおりのものである。
(2)実施可能要件について
(1)のとおり、この出願の発明の詳細な説明の【表1】には、レンズのデータが記載されているものの屈折率、アッベ数については記載が無い。また、レンズデータが記載された【表2】~【表13】のいずれにも屈折率、アッベ数についての記載は無い。ここで、一般にレンズ系においては、すべてのレンズの曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数が特定されてはじめて、レンズ系が完成されたといえるところ、この出願の発明の詳細な説明には、屈折率、アッベ数に関する開示が一切無いのであるから、「完成されたレンズ系」が開示されているとはいえない。
次に、この出願の発明の詳細な説明の【表1】~【表13】の開示から、レンズの屈折率とアッベ数を、当業者が過度の試行錯誤をすることなく容易に導くことが出来るか、言い換えるとこの出願の発明の詳細な説明は、当業者が、この出願の請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるかについて検討する。
近軸光学の理論から表1より、2つのレンズの屈折率が満たすべき関係式は特定できる。しかしながら、そのような関係式を満たす2つのレンズの屈折率は無数に存在する(1つのレンズの屈折率N1を定めれば、特定の関係式を満たすもう1つのレンズの屈折率N2が定まる。そして、N1の値は、常識的には約1.4~1.9の範囲内で無数に存在するから、それに対応するN2の値も同様に無数に存在することになる。)。しかしながら、そのような無数の2つのレンズの屈折率の組み合わせのうち、実装例としての2つのレンズの屈折率はただ一つである。しかしながら、それがどのような値であるのかは、本願の結像状態を示す図1からはわからないし、また、この出願の発明の詳細な説明の他の開示からも特定はできない。
また、アッベ数についても、2つのレンズは任意の値をとることができるが、色収差を良好に抑えることのできる2つのレンズのアッベ数の組み合わせは、そもそも当該2つのレンズの屈折率に依存する。そして、上述のとおり、2つのレンズの屈折率が特定できないのであるから、色収差を抑えることのできる2つのレンズのアッベ数の組み合わせは特定できない。また、仮に、2つのレンズの屈折率の開示があったとすると、色収差を良好に抑えるための、2つのレンズのアッベ数が満たすべき関係式は導くことができるものの、そのような関係式を満たす2つのレンズのアッベ数は無数に存在する(1つのレンズのアッベ数ν1を定めれば、特定の関係式を満たすもう1つのレンズのアッベ数ν2が定まる。そして、ν1の値は、常識的には約20~80の範囲内で無数に存在するから、それに対応するν2の値も同様に無数に存在することになる。)。結局、アッベ数についても、この出願の発明の詳細な説明の開示からは特定はできない。
そうすると、結局、出願の発明の詳細な説明は、当業者が、この出願の請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。
4 サポート要件
(1)本願発明1と実装例との齟齬について
本願発明1は「正の屈折力を持つ第1の非球面屈折素子」と「第2の非球面屈折素子は両凸レンズである、第2の非球面屈折素子」を有するものであり、「(第2の非球面屈折素子の)第2の被写体側表面が第1の非球面屈折素子の第1の像側表面に物理的に結合され」た「システム」である。
しかしながら、このようなものは、この出願の発明の詳細な説明に実質的に開示がない。すなわち、【表1】で示されたものは、「負の屈折力を持つ第1の非球面屈折素子」と「第2の非球面屈折素子は両凸レンズである、第2の非球面屈折素子」を有するものであり、「(第2の非球面屈折素子の)第2の被写体側表面が第1の非球面屈折素子の第1の像側表面に物理的に結合され」た「システム」であり、この出願の請求項1において特定された「システム」ではない。また、【表2】~【表13】で示されたものも、いずれもこの出願の請求項1において特定された「システム」ではない。
確かに、この出願の発明の詳細な説明の【0010】には、「図1は、凸面の被写体側表面と凹面の反対側とにより被写体から像への方向で正の屈折力を持つ屈折光学素子(例えば、概して正のメニスカスレンズ102)を含んだ、2素子屈折光学素子アセンブリ100の一例を示している。」と記載されてはいる。
しかしながら、図1のメニスカスレンズ102が負の屈折力を持つことは明らかであるから、上記の【0010】の形式的な記載をもって、本願発明1がこの出願の発明の詳細な説明に実質的に開示されているとはいえない。
(2)実装例が実施可能とはいえない点について
「3 実施可能要件」においても言及したとおり、【表1】~【表13】の開示から、当業者は本願発明1を実施する事ができない。そして、実施可能な実装例の開示がないということは、本願発明1の実体がどのようなものであるのかの把握ができないということに他ならず、本願発明1がこの出願の発明の詳細な説明に実質的に開示されていないことは明らかである。
(3)小括
【表1】~【表13】で示された実装例が、いずれも本願発明1の実装例とはいえず、また、【表1】~【表13】で示された実装例では、当業者は本願発明1を実施する事ができないから、本願発明1はこの出願の発明の詳細な説明に実質的に記載されているとはいえない。
第3 むすび
以上のとおり、この出願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、本願発明1は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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