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特許無効審判

2021-800037

揚水システム

審判番号
2021-800037
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2013-525019
登録番号
5350568
請求日
2021年04月26日
審決日
2022年04月04日
公報発行日
2023年03月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】スリーエム工業 株式会社
  • 【請求人代理人】森本 聡
  • 【請求人代理人】生沼 寿彦
  • 【請求人代理人】濱田 俊亮
  • 【被請求人】株式会社 イシザキ
  • 【被請求人代理人】右田 俊介
  • 【被請求人代理人】松田 雄一郎
  • 【被請求人代理人】横井 康真
審判長/審判官
  • 審判長 佐々木 芳枝
  • 審判官 小川 恭司
  • 審判官 熊谷 健治
分類
P1123.121-Y (F04B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第169条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第5350568号発明「揚水システム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第5350568号(以下「本件特許」という。)の出願は、2013年(平成25年)1月25日(優先権主張 2012年1月31日 日本国)を国際出願日とする特願2013-525019号であって、その後の手続の経緯は概略以下のとおりである。 平成25年 8月30日 特許権の設定登録(請求項の数15) 令和 3年 4月26日 本件審判の請求 令和 3年 8月 3日 答弁書の提出 令和 3年 8月26日 上申書の提出(請求人) 令和 3年 9月22日付け 審理事項通知 令和 3年10月22日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人) 令和 3年11月12日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人) 令和 3年12月10日 第1回口頭審理 令和 3年12月17日 上申書の提出(請求人) 令和 4年 1月14日 上申書の提出(被請求人) 第2 本件特許 本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ、請求項の番号に従って「本件発明1」などといい、総称して「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 液体を貯留する貯液槽と、地上に設置されて前記液体を揚送するポンプと、前記貯液槽と前記ポンプとを接続する吸液管と、前記ポンプから吐出される前記液体を流通させる吐出管と、一次側が前記貯液槽の内部と連通し二次側が前記ポンプと連通し前記吸液管を開放可能に遮断するバルブと、を備え、 前記バルブが前記吸液管の地上部分に設けられているとともに、前記吸液管の前記一次側が前記液体で満たされ、かつ負圧であり、 前記ポンプが停止した状態で、前記吸液管の前記一次側および前記二次側が前記液体で満たされ、かつ前記一次側が前記二次側よりも絶対値の大きな負圧であり、 前記バルブから前記ポンプまでの前記吸液管の前記地上部分が前記ポンプに向かって上り傾斜していることを特徴とする揚水システム。 【請求項2】 前記バルブが、前記一次側から前記二次側に向かって一方的に前記液体を流通させる逆止弁である請求項1に記載の揚水システム。」 第3 請求人の主張 1 無効理由 請求人は、本件発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、甲第1号証~甲第22号証の証拠方法を提出し、以下の無効理由を主張する。 (1)無効理由1 本件発明は、甲第3号証の1に記載の発明に、甲第4号証に記載の発明を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (2)無効理由2 本件発明は、甲第4号証に記載の発明に、甲第3号証の1、甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証の1、甲第8号証、甲第9号証の1、甲第10号証、及び甲第11号証の1から導かれる周知技術を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 2 甲第4号証の記載事項の解釈について (1)令和3年10月22日に提出された口頭審理陳述要領書において次の主張をしている。 ア 「(ウ) 甲第4号証では、ポンプ1から導出される吐出管7に逆止弁は設けられておらず、また、吐出管7の出口は大気に通じている。このため、これら吐出管7およびポンプ1に通ずる吸込管2内の負圧は、大気圧に近づく(下図参照)。 (エ) 一方、揚水管5内においても、ポンプ1が停止されると、当該管5内の負圧は若干低下するが、逆止弁4が作動することで、負圧の低下は止まる。つまり、揚水管5内は負圧に維持される。加えて、揚水管5内の水は、重力により下方に下がろうとするため、当該揚水管5内の水の負圧は、逆止弁4の作動時よりも大きくなる(下図参照)。」(5頁 5(1)ウ) [図:0001394729000001.jpg] イ 「(オ) 加えて、被請求人は、請求人を被告とする特許権侵害訴訟において、「一般的に、揚水システムを用いて地下水等を汲み上げる場合、排出側の配管先端はタンク等の機器や撒水対象物に対して大気開放されて水が放出されるため、原告実験においても吐出管の先端部は大気開放しているのである。」と主張している(甲第20号証の原告準備書面2の第10頁参照)。このため、甲4発明においても「吐出管7の先端は大気に通じている」と解釈することは妥当であって、吸込管2内の負圧は大気圧に近づくとの結論に至ることも妥当である。また、このように甲4発明では、吸込管2内の負圧は大気圧に近づくことから、吸液管の一次側(揚水管5内)は、二次側(吸込管2内)よりも絶対値の大きな負圧となっているとの結論に至ることも妥当である。」(13頁 5(3)キ) ウ 「(カ) さらに、本件特許明細書の段落【0025】に記載されているように、本件特許の第一実施形態においては、「バルブ100が閉止された状態で、停止したポンプ20の吸込側SSはリークして雰囲気圧(大気圧)に近づく。」のであるから、その真偽は別にして、甲第4号証においても同様に、ポンプ1にリークが生じて吸込管2内の負圧は大気圧に近づくとの結論に至ることも妥当であって、吸液管の一次側(揚水管5内)は、二次側(吸込管2内)よりも絶対値の大きな負圧となっているとの結論に至ることも妥当である。」(13頁 5(3)キ) (2)令和3年12月17日に提出された上申書において次の主張をしている。 「(イ) 侵害訴訟において原告である被請求人は、原告準備書面2(甲第20号証)の第13頁のエにおいて「また、「リークのメカニズム」に関して言えば、段落【0025】における「リーク」とは、「配管内の圧力の漏出」という意味でのリークであり、これは本件特許出願当時、揚水用によく用いられていた「グランドパッキン式ポンプ」という種類のポンプにおいては不可避的に発生することである(甲10)。グランドパッキン式ポンプにおいては、駆動軸の冷却や潤滑のために駆動部分から内部液体が漏出する構造となっており、この部分から大気と連通し内部の圧力も大気圧に近付くのである。・・・このため、ポンプの吸込側すなわちバルブの二次側の吸液管内の負圧絶対値が減少(漏出)する。」と主張する。以上のような被請求人主張に従えば、ポンプの駆動部分が大気と連通しており、内部の圧力は大気圧に近付くというリークが発生することは不可避的に発生する事象であり、本件特許の優先日の時点における技術常識であるから、甲4発明において、仮に吐出管に逆止弁が設けられていたとしても、二次側である吸込管2内の負圧は大気圧に近付くこととなる。」(7~8頁 5(3)ア) 3 証拠方法 審判請求書等に添付して甲第1号証~甲第22号証(枝番含む。)が提出された。(以下、各証拠について、証拠番号に従って「甲1」などという。) 甲1 特許第5350568号公報 甲2 審判被請求人から審判請求人に対する通知書 甲3-1 株式会社荏原製作所の「エバラナイロンコーティング製片吸込渦巻ポンプFS2N型」の取扱説明書 甲3-2 甲3-1のダウンロードページ 甲3-3 甲3-1の「図2据付図」を拡大し、部材名称を加えたもの 甲4 特公昭50-32448号公報 甲5 株式会社酉島製作所の「片吸込渦巻ポンプ」の取扱説明書 甲6 スーパー工業株式会社の「防音型ディーゼル散水機 SEL-300SSW」の取扱説明書 甲7-1 日立評論の1957年別冊19号の「農地用揚,排水ポンプとその計画」 甲7-2 甲7-1のダウンロードページ 甲8 「だれでもわかる解説と演習 流体力学と流体機械の基礎」(抜粋) 甲9-1 独立行政法人水資源機構が定めた機械設備工事共通仕様書(抜粋) 甲9-2 甲9-1のダウンロードページ 甲10 「わかる!ポンプの選び方・使い方」(抜粋) 甲11-1 平成22年度 2級管工事施工管理技術検定 学科試験問題(抜粋) 甲11-2 甲11-1の解答 甲12 令和3年(ワ)第11000号における被告準備書面(2) 甲13 「井戸ポンプドットコム」のウエブページを紙媒体に印刷したもの 甲14 特開昭49-129905号公報 甲15 特開昭52-86508号公報 甲16 技術情報・便利ツールの用語集における「容積式ポンプ」のウエブページを紙媒体に印刷したもの 甲17 特開2009-112980号公報 甲18 特開2008-260012号公報 甲19 被請求人がインターネット上で公開する「スモレンだより」Vol.74号 甲20 令和3年(ワ)第11000号における原告準備書面(2) 甲21-1 エバラステンレス製自吸式渦流ポンプRQST型 取扱説明書 甲21-2 甲21-1のダウンロードページ 甲21-3 甲21-1の図1を拡大し、部材名称を加えたもの 甲22-1 スモレンだよりVol.23 甲22-2 スモレンだよりVol.33 甲22-3 スモレンだよりVol.56 甲22-4 スモレンだよりVol.57 甲22-5 スモレンだよりVol.58 甲22-6 スモレンだよりVol.60 第4 被請求人の主張 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、乙第1号証~乙第14号証(以下,各証拠について,証拠番号に従って「乙1」などという。)の証拠方法を提出し、無効理由がない旨主張する。 (証拠方法) 乙1 特開2009-6158号公報 乙2 特開平11-166644号公報 乙3 特開2004-278470号公報 乙4 実公平3-9716号公報 乙5 特開平1-271694号公報 乙6 特開平11-201074号公報 乙7 特開2001-263252号公報 乙8 特開2007-40155号公報 乙9 特開平11-30191号公報 乙10 被請求人がインターネット上で公開する「スモレンだより」Vol.86号 乙11 特開2012-207810号公報 乙12 令和3年(ワ)第11000号における被告準備書面(2) 乙13 乙12とともに提出された「揚水システム実証実験報告書」 乙14 令和3年(ワ)第11000号における原告準備書面(1) 第5 当審の判断 1 甲3-1~甲11-2について (1)甲3-1について 甲3-1には、以下の事項が記載されている。 ア 「CF4407K-H001 REV.4 エバラナイロンコーティング製片吸込渦巻ポンプFS2N型 取扱説明書」(1頁1~4行) イ 「(b)吸込配管の末端は、異物などを吸込まないようストレーナ付きフート弁を取付けてください。 (c)吸込配管は、空気だまりができないよう、ポンプに向かって上り勾配(1/100以上)にしてください。」(「5 据付」の「2.配管」の「(5)吸上げの場合」の項目として。6頁18~21行) ウ 甲3-1の図2(当該図2を拡大し、部材名称を加えた甲3-3参照)からは、「水が貯められた貯水槽と、地上に設置されて水を吸い上げるポンプと、貯水槽とポンプとを接続する吸込配管と、吸込配管の一部であって地上に配置されている横管(横引き)と、ポンプから吸い上げられた水が吐出される吐出配管と、吸込配管の下端部に設けられたフート弁」が看取される。 エ フート弁が、接続されている配管を開放可能に遮断する弁であることは、弁の技術分野において技術常識である。 オ 上記イの記載事項と甲3-1の図2の図示内容から、吸込配管の横管(横引き)がポンプに向かって上り勾配とされていることが明らかである。 甲3-3 「 [図:0001394729000002.jpg] 」 カ そうすると、甲3-1には以下の発明が記載されていると認められる(以下、「甲3発明」という。)。 「水が貯められた貯水槽と、地上に設置されて水を吸い上げるポンプと、貯水槽と前記ポンプとを接続する吸込配管と、前記ポンプから吸い上げられた水が吐出される吐出配管と、前記吸込配管の下端部に設けられて、前記吸込配管を開放可能に遮断するフート弁とを備え、 フート弁が吸込配管の下端部に設けられているとともに、 地上に配置されている前記吸込配管の横管(横引き)が、前記ポンプに向かって上り勾配とされている揚水システム。」 (2)甲4について 甲4には、以下の事項が記載されている。 ア 「第1図は浅井戸に配管したときの概略図を示し、うず巻ポンプ1の吸込管2を井戸3の真上まで横引きし、逆止弁4を介して井戸内に伸びた揚水管5を接続している。揚水管5の下端にはストレーナ6が設けられている。7はうず卷ポンプ1の吐出管である。 第1図に示す如く浅井戸配管時には逆止弁4は保守点検の際の作業性と呼び水量を少くするためにできるだけ地上に近いところに設けられる。すなわち、逆止弁4が井戸の底近くにあると点検のたびに揚水管を地上に引き上げなければならず、自吸の際の呼び水も逆止弁4よりポンプ側の破管をすべて水で満さなければならず、非常に多くの呼び水を必要とするからである。」(1欄30行~2欄6行) イ 「第3図は本発明を実施した逆止弁の浅井戸使用時の状態を示し、弁本体4には上下及び側面に開ロA,B,Cを有し、それぞれの開口の内面には同一径の管用ねじが切られている。開口Bの上方には弁座13が形成され、この弁座上には弁体12が載置されている。弁体12は弁座13と当接する個所にシールを完全ならしめるためバルブクツシヨン14と、弁座13の内側に形成した案内面16により案内される案内片15を備え、上方には弁体12を外部に取り出す際のつまみ部になると同時に弁体12のリフトを規制する突起17を有する。弁体12の上方には前記突起17が当接するストツパー11が開口Cに設けたねじの基部にある逃げ部20に係合して取り付けられている。 開口Cにはキヤツプ18がパツキング19を介してねじ込まれ開口Cを塞いでいる。浅井戸配管時には開口Aを吸込管2に接続し、開口Bを揚水管5に接続する。 浅井戸に配管された場合、逆止弁4がエルボの代用をなし、しかも逆止弁4は地上に設けられているため呼び水は逆止弁4よりポンプ1側を満すだけで良いから水量は少くて足りる。」(2欄27行~3欄12行) ウ 第1図からは、うず巻ポンプ1は地上に設置されていること、井戸3とうず巻ポンプ1とを接続する吸込管2と揚水管5とで構成される流路の地上部分に、逆止弁4が設けられていることが看取される。 「 [図:0001394729000003.jpg] 」 エ 上記アの「井戸内に伸びた揚水管5」との記載から、井戸3には水が貯められており、揚水管5は井戸3と連通していることがわかる。 上記アの「うず巻ポンプ1の吸込管2を井戸3の真上まで横引きし、逆止弁4を介して井戸内に伸びた揚水管5を接続している。」との記載から、うず巻ポンプ1は井戸3から水を揚水するポンプであり、揚水管5と吸込管2との間に逆止弁4が接続されており、吸込管2がうず巻ポンプ1と連通していることがわかる。また、うず巻ポンプ1により井戸3の水が定常的に吸い上げられているとき、吸込管2と揚水管5とで構成される流路は水で満たされ、かつ負圧であることは、技術常識から明らかである。 上記アの「7はうず卷ポンプ1の吐出管である。」との記載から、吐出管7は、うず巻ポンプ1から吐出される水を吐出する管であることがわかる。 オ 逆止弁が、接続されている配管の間を開放可能に遮断する弁であることは、弁の技術分野において技術常識である。また、上記アの「うず巻ポンプ1の吸込管2を井戸3の真上まで横引きし、逆止弁4を介して井戸内に伸びた揚水管5を接続している。」との記載から、うず巻ポンプ1が揚水している間、井戸3の水は、揚水管5、逆止弁4、吸込管2の順に流れることになるから、逆止弁4は揚水管5から吸込管2に向かって一方的に水を流通させるものであることがわかる。 カ そうすると、甲4には以下の発明が記載されていると認められる(以下、それぞれ「甲4発明1」などという。)。 (ア) 甲4発明1 「水が貯められた井戸3と、地上に設置されて水を揚送するうず巻ポンプ1と、前記井戸3と前記うず巻ポンプ1とを接続する吸込管2と揚水管5とで構成される流路と、前記うず巻ポンプ1から吐出される水を吐出する吐出管7と、前記揚水管5が前記井戸3と連通し、前記吸込管2が前記うず巻ポンプ1と連通し、前記揚水管5と前記吸込管2との間を開放可能に遮断する逆止弁4と、を備え、 前記逆止弁4が流路の地上部分に設けられているとともに、前記うず巻ポンプ1により前記井戸3の水が吸い上げられているときに、前記流路の前記揚水管5が水で満たされ、かつ負圧である揚水システム。」 (イ) 甲4発明2 「前記逆止弁4が、前記揚水管5から前記吸込管2に向かって一方的に水を流通させるものである甲4発明1の揚水システム。」 (3)甲5について 甲5には、以下の事項が記載されている。 ア 「吸込配管は空気溜りができないように配管を施工する。 吸込配管に空気が溜り続けると、遂には揚液が途切れて揚水不能になります。 (吸上げの場合) ●吸込配管はポンプに向かって上り勾配(1/50~1/100程度)としてください。」(目次前に掲載されている「ポンプ取扱注意事項〔全ポンプ共通〕」と題する一覧表のうち、<据付・配管>と題する表の3行目) イ 「(3)吸込配管は空気溜りができないように、吸上配管の場合はポンプに向かって上り勾配としてください。」(8頁9行) (4)甲6について 甲6には、以下の事項が記載されている。 ア 「運転準備」(16頁1行) イ 16頁には次の図が掲載されている 「 [図:0001394729000004.jpg] 」 (5)甲7-1について 甲7-1には、以下の事項が記載されている。 「吸込管に水平部を有する場合は、必ずポンプに向つて1/50~1/200の上り勾配を付け、空気溜を作らぬようにする。」(74頁右欄22~24行) (6)甲8について 甲8には、以下の事項が記載されている。 「ゆえに,吸込管の長さは,これらの条件を考慮しながら適正に決めるべきである。また,吸込み管に空気が侵入するとポンプ効率が低下するのはもちろん,揚水できなくなる場合もあるので,管の継手などは正しく締め付ける必要がある。さらに,吸込み管の中に図7・51のように空気がたまらないように配管しなければならない。」(182頁11~18行) 「 [図:0001394729000005.jpg] 」 (7)甲9-1について 甲9-1には、以下の事項が記載されている。 「(2)配管は、空気だまりが出来ないような形とし、ポンプに向且つて1/50~1/100の上り勾配となるよう配管するものとするが、やむを得ず空気だまりが出来る部分は排気出来る構造とする。」(1-156頁15~17行) (8)甲10について 甲10には、以下の事項が記載されている。 「吸込配管はできるだけ短くし,ポンプ吸込口に向かって昇り勾配にする。」(41頁22行) (9)甲11について 甲11には、以下の事項が記載されている。 ア 「【Nо.37】配管の施工に関する記述のうち、適当でないものはどれか。 (1)受水タンクより上部に設置する給水ポンプの吸込み管を、ポンプに向かって上り勾配とした。 (2)給水ポンプの吸込み側と吐出し側には、防振継手を設けた。 (3)受水タンクのオーバーフロー管を、直接最寄りの雑排水系統の配管に接続した。 (4)受水タンクに接続する給水管に、フレキシブルジョイントを設けた。」(甲11-1 13頁12~16行) イ 「解答 (3)」(甲11-2 【Nо.37】の解答・解説の欄) (10)周知技術1 上記(1)、(3)~(9)から、ポンプによる揚水システムにおいて、空気だまりが形成されてポンプ効率が低下することや揚水不能状態に陥ることを防ぐために、吸込配管をポンプに向かって上り傾斜させることは、周知技術(以下、「周知技術1」という。)であるといえる。 2 無効理由2について 事案に鑑み、無効理由2から先に検討する。 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲4発明1とを、その有する機能に照らして対比すると、甲4発明1の「水」は本件発明1の「液体」に相当し、以下同様に、「水が貯められた」という事項は「液体を貯留する」という事項に、「井戸3」は「貯液槽」あるいは「貯液槽の内部」に、「うず巻ポンプ1」は「ポンプ」に、「吸込管2と揚水管5とで構成される流路」は「吸液管」に、「吐出する」という事項は「流通させる」という事項に、「吐出管7」は「吐出管」に、「揚水管5」は「一次側」に、「吸込管2」は「二次側」に、「揚水管5と吸込管2との間を開放可能に遮断する」という事項は「吸液管を開放可能に遮断する」という事項に、「逆止弁4」は「バルブ」に、「前記うず巻ポンプ1により前記井戸3の水が吸い上げられているときに、前記流路の前記揚水管5が水で満たされ」という事項は「前記吸液管の前記一次側が前記液体で満たされ」という事項に、それぞれ相当する。 以上のことから、本件発明1と甲4発明1との一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「液体を貯留する貯液槽と、地上に設置されて前記液体を揚送するポンプと、前記貯液槽と前記ポンプとを接続する吸液管と、前記ポンプから吐出される前記液体を流通させる吐出管と、一次側が前記貯液槽の内部と連通し二次側が前記ポンプと連通し前記吸液管を開放可能に遮断するバルブと、を備え、 前記バルブが前記吸液管の地上部分に設けられているとともに、前記吸液管の前記一次側が前記液体で満たされ、かつ負圧である揚水システム。」 <相違点1-1> 本件発明1では、「ポンプが停止した状態で、吸液管の一次側及び二次側が液体で満たされ、かつ一次側が二次側よりも絶対値の大きな負圧であ」るのに対して、甲4発明1では、そのように構成されているのか明らかでない点。 <相違点1-2> 本件発明1においては、「バルブからポンプまでの吸液管の地上部分がポンプに向かって上り傾斜している」のに対して、甲4発明1においては、逆止弁4からうず巻ポンプ1までの吸込管2は存在するものの、当該吸込管2がうず巻ポンプ1に向かって上り傾斜するものとはされていない点。 イ 判断 相違点1-1について検討する。 甲4には、上記1(2)ア~オにおいて示したとおり、流れの上流側から、ストレーナ6、揚水管5、逆止弁4、吸込管2、うず巻ポンプ1、吐出管7の順に接続されることは記載されているが、揚水管5と吸込管2における圧力の大小関係に関する記載は無い。 そして、この接続関係が同じであっても、圧力関係まで同じ関係になるわけではない。揚水管5と吸込管2の内部の圧力は、接続されている各部材の仕様、図示されていない部材の接続関係、流体の流れを止めるときの制御方法、流れを止めた後の状況、その他、種々の要素に依存する。したがって、甲4発明においてポンプが停止した状態で、揚水管5(吸液管の一次側)が吸込管2(二次側)よりも絶対値の大きな負圧である圧力状況が維持されているか否かを特定するためには、これら種々の要素について特定されなければならない。 具体的には、内部の圧力に影響を与える、接続されている各部材の仕様や図示されていない部材の接続関係としては、揚水管5や吸込管2に用いられている配管の長さや断面積、逆止弁4の構造や密封性能、吐出管7の先に逆止弁等が接続されているか否か、などが挙げられる。例えば、配管内を流れる流体内に空気が混入した場合、空気の混入量が同じであれば、配管の容積(配管の長さと断面積の積)が大きいほど空気の混入による圧力変化への影響は小さくなる。また、逆止弁4の構造や密封性能などによって、流体の逆流量や流体への空気の混入量などは変わる。 内部の圧力に影響を与える、流体の流れを止めるときの制御方法としては、流れを止める前のポンプの回転速度、流体の速度、弁を閉じる速度、弁が複数ある場合は弁を閉じる順番などが挙げられる。例えば、流体が流れている時にポンプを急に止めたり、弁の開度を急激に小さくしたりすると、ポンプや弁の下流側の管内では流体が慣性力で流れ続けるが上流側から流体の供給が無くなるため、管内では水柱分離という現象が生じるなどして圧力低下が起きる。また、上流側の管内では、それまで流れていた流体が行き場を失い圧力上昇が起きる。さらに、弁が複数ある場合は、上述した流体の過渡期の状況と弁を閉めるタイミングに応じて、複数の弁で挟まれた管内の圧力は様々な圧力になり得る。なお、停止中のポンプは、その構造次第で逆止弁と同様の作用を奏する。例えば、弁1と弁2とで挟まれた管を想定すると、下流側の弁2を閉じるとそれまで流れていた流体が行き場を失い弁2付近で圧力上昇が起きて逆流が生じ、その逆流が弁1に到達する前に弁1を閉じれば弁1と弁2とで挟まれた管内の圧力は高くなる。弁1を閉めるタイミングが遅くなり、逆流が弁1を通過した後に弁1を閉めれば、弁1と弁2とで挟まれた管内の圧力は低くなる。 内部の圧力に影響を与える、流れを止めた後の状況としては、吐出管7の閉塞状態(甲4では図示が省略されているが、吐出管7の先は大気開放されているのか、弁等によって閉じられているのかなど)、うず巻ポンプ1を停止させた際のポンプ室と外部との密閉状況、呼び水の注入方法、揚水管5や吸込管2と逆止弁4との接続部分からのリーク量、逆止弁4そのもののリーク量、吸込管2とうず巻ポンプ1との接続部分からのリーク量などが挙げられる。例えば、大気開放された開口部から呼び水を入れるのか、呼び水用の閉じた配管から入れるのか等によって、呼び水後の圧力は変わる。また、密閉性が低い場所やリークが発生する場所では、リークが発生する隙間の大きさ、リークの上流側と下流側の圧力差、リーク先の容積等に応じて圧力は変わる。 本願発明では、ポンプが停止した状態で、吸液管の一次側が二次側よりも絶対値の大きな負圧である圧力状況を実現・維持するための一例として、発明の詳細な説明の【0058】~【0067】には、ポンプの吸込側から逆止弁の弁座及び弁体までの経路長、ポンプの吸込側から液面までの経路長、吸液管の平均開口面積、弁体の面積、液体の密度、逆止弁内の弾性体の圧縮長、ポンプの定常運転時における吸込圧、ポンプの定常運転時における平均流速、逆止弁の閉止遅れ時間、閉止遅れ時刻におけるポンプの残留吸込圧などに基づいて、逆止弁の弾性体のバネ定数を決定することが記載されている。すなわち、甲4のように揚水管5、逆止弁4、吸込管2、うず巻ポンプ1等の接続関係を揃えても、漫然と実施したら揚水管5と吸込管2の圧力関係は上述した種々の要素によって変化してしまい、接続関係のみから圧力関係を予測することは困難であるため、本願発明では明確な目的をもって特定の負圧関係を実現・維持していることがわかる。なお、ポンプが停止した状態で、吸液管の一次側が二次側よりも絶対値の大きな負圧である圧力状況を実現・維持するという目的があれば、一次側と二次側のリーク量を予め調整しておくなどによっても実現可能であることは当業者にとって明らかである。 一方、甲4には吸液管の一次側と二次側の圧力関係をコントロールする技術思想は何ら記載されていない。甲4において特定の圧力状況を実現・維持するためには、上述したように、内部の圧力に影響を与える、接続されている各部材の仕様、図示されていない部材の接続関係、流体の流れを止めるときの制御方法、流れを止めた後の状況、その他、種々の要素を調整する必要があるが、周知技術1として挙げられている証拠の中にも、特定の圧力状況を実現・維持するという目的を開示した証拠や、逆止弁の閉止力が小さくとも弁体の閉止状態を維持するために負圧の大小関係を特定する技術思想を開示した証拠はなく、これらの目的や技術思想は周知とはいえないから、甲4発明において、複雑に関係し合う上記種々の要素を考慮して特定の圧力状況を実現しようと試みる動機は無く、甲4発明において上記種々の要素を調整して相違点1-1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 そして、本願の発明の詳細な説明の【0032】によれば、ポンプが停止した状態で、吸液管の一次側が二次側よりも絶対値の大きな負圧である圧力状況を実現することには、逆止弁の閉止力が小さくとも、弁体は閉止状態を維持することができ、これにより、逆止弁の設置方向と重力方向との関係によらず、弁体は閉止状態で二次側の水を止水することが可能であるという技術的意義がある。 ウ 効果について 本件発明1は、「前記バルブが吸液管の地上部分に設けられているとともに」、「ポンプが停止した状態で、吸液管の一次側及び二次側が液体で満たされ、かつ一次側が二次側よりも絶対値の大きな負圧であり」、且つ、「バルブから」ポンプまでの吸液管の地上部分がポンプに向かって上り傾斜している構成を備えることにより、バルブの保守および点検作業が容易であり、ポンプの作動までの減圧幅を軽減することができるため、ポンプの揚水始動時間を短くすることができ、省エネルギーに資するとともに、揚水システム全体の負荷を軽減してその耐久性を向上することができ、地上部分の内部に気泡が混入したとしても、これがバルブの弁箱の内部に滞留することがないという特有の作用効果を奏する。特に、吸液管の一次側と二次側の上記負圧を実現・維持することで、逆止弁の閉止力が小さくとも、弁体は閉止状態を維持することができることにより、落水を防止することもできるため、ポンプの揚水始動時間を短くすることに寄与する。 エ 小括 以上のとおりであるから、相違点1-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明1及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 (2)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1を特定するための事項を全て含むものであるから、その余の事項を検討するまでもなく、本件発明2は、本件発明1と同様の理由により、甲4発明1、甲4発明2及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 (3)まとめ 以上のとおり、本件発明1~2は、甲4発明1、甲4発明2及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められないから、無効理由2は理由がない。 3 無効理由1について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲3発明とを、その有する機能に照らして対比すると、甲3発明の「水が貯められた貯水槽」あるいは「貯水槽」は本件発明1の「液体を貯留する貯液槽」あるいは「貯液槽」に相当し、以下同様に、「水を吸い上げる」という事項は「液体を揚送する」という事項に、「吸込配管」は「吸液管」に、「ポンプから吸い上げられた水が吐出される吐出配管」は「ポンプから吐出される液体を流通させる吐出管」に、それぞれ相当する。 甲3発明の「前記吸込配管の下端部に設けられて、前記吸込配管を開放可能に遮断するフート弁」と本件発明1の「一次側が前記貯液槽の内部と連通し二次側が前記ポンプと連通し前記吸液管を開放可能に遮断するバルブ」という事項は、「吸液管を開放可能に遮断するバルブ」という限りにおいて一致する。 甲3発明の「地上に配置されている吸込配管の横管(横引き)が、ポンプに向かって上り勾配とされている」という事項と本件発明1の「前記バルブから前記ポンプまでの前記吸液管の前記地上部分が前記ポンプに向かって上り傾斜している」という事項は、「前記ポンプまでの前記吸液管の前記地上部分が前記ポンプに向かって上り傾斜している」という限りにおいて一致する。 以上のことから、本件発明1と甲3発明との一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「液体を貯留する貯液槽と、地上に設置されて前記液体を揚送するポンプと、前記貯液槽と前記ポンプとを接続する吸液管と、前記ポンプから吐出される前記液体を流通させる吐出管と、前記吸液管を開放可能に遮断するバルブと、を備え、 前記ポンプまでの前記吸液管の前記地上部分が前記ポンプに向かって上り傾斜している揚水システム。」 <相違点2-1> 本件発明1における、吸液管を開放可能に遮断するバルブは、「一次側が貯液槽の内部と連通し二次側がポンプと連通し」ているのに対して、甲3発明における、吸込配管を開放可能に遮断するフート弁は、吸込配管の下端部に設けられている点。 <相違点2-2> 本件発明1では、「バルブが吸液管の地上部分に設けられている」のに対して、甲3発明では、フート弁が吸込配管下端部に設けられている点。 <相違点2-3> 本件発明1では、「吸液管の一次側が液体で満たされ、かつ負圧であ」るのに対して、甲3発明では、そのように構成されていない点。 <相違点2-4> 本件発明1では、「ポンプが停止した状態で、吸液管の一次側及び二次側が液体で満たされ、かつ一次側が二次側よりも絶対値の大きな負圧であ」るのに対して、甲3発明では、そのように構成されていない点。 <相違点2-5> 本件発明1では、「バルブから」ポンプまでの吸液管の地上部分がポンプに向かって上り傾斜しているのに対して、甲3発明では、地上に配置されている吸込配管の横管(横引き)が、がポンプに向かって上り勾配とされているものの、上り勾配の始端が明らかでない点。 イ 判断 以下、相違点について検討する。 (ア)相違点2-1~相違点2-3について 甲4発明1は、バルブの「一次側が貯液槽の内部と連通し二次側がポンプと連通し」、「前記バルブが吸液管の地上部分に設けられているとともに、前記吸液管の前記一次側が前記液体で満たされ、かつ負圧であ」る構成を備えている。 しかし、甲3-1はエバラナイロンコーティング製片吸込渦巻ポンプFS2N型の取扱説明書であり、当該渦巻ポンプFS2N型の製品仕様、運転、保守、故障の原因と対策、構造、分解・組立、保証、修理・アフターサービス等の項目と並んで、「据付」の項目があり、その中に上記1(1)で摘記した事項が記載されているのであって、エバラナイロンコーティング製片吸込渦巻ポンプFS2N型を据付ける際の配管に関する留意事項を説明するための記載である。つまり、「取扱説明書」に記載された据付・配管(図2)は、この渦巻ポンプの使用にあたり最も推奨される据付・配管であり、それを前提とした留意事項が記載されていることに鑑みれば、これ以外の据付・配管は意図されておらず、このように配置されたフート弁についても、その配置による不具合を想定していないことは明らかであるから、吸込配管の末端に取付けられたフート弁を吸込配管の地上部分に変更する動機は存在しない。 したがって、当業者といえども、甲3発明及び甲4発明1から、相違点2-1~相違点2-3に係る本件発明1の構成を容易に想到することはできない。 (イ)相違点2-4について 上記2(1)イにおいて相違点1-1について検討したとおり、相違点2-4に係る本件発明1の「ポンプが停止した状態で」「一次側が二次側よりも絶対値の大きな負圧である」という構成は、甲4には記載されていない。また、その他のいずれの文献にも記載が無く、当該構成が自明であるともいえない。 したがって、当業者といえども甲3発明及び甲4発明1から、相違点2-4に係る本件発明1の上記構成を容易に想到することはできない。 ウ 効果について 本件発明1は、「前記バルブが吸液管の地上部分に設けられているとともに」、「ポンプが停止した状態で、吸液管の一次側及び二次側が液体で満たされ、かつ一次側が二次側よりも絶対値の大きな負圧であり」、且つ、「バルブからポンプまでの吸液管の地上部分がポンプに向かって上り傾斜している」構成を備えることにより、バルブの保守および点検作業が容易であり、ポンプの作動までの減圧幅を軽減することができるため、ポンプの揚水始動時間を短くすることができ、省エネルギーに資するとともに、揚水システム全体の負荷を軽減してその耐久性を向上することができ、地上部分の内部に気泡が混入したとしても、これがバルブの弁箱の内部に滞留することがないという特有の作用効果を奏する。 エ 小括 以上の通り、相違点2-1~相違点2-4に係る本件発明1の構成は、甲3に記載されておらず、且つ、甲3発明に甲4発明1を適用する動機はないから、相違点2-5について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明及び甲4発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 (2)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1を特定するための事項を全て含むものであるから、その余の事項を検討するまでもなく、本件発明2は、本件発明1と同様の理由により、甲3発明及び甲4発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 (3)まとめ 以上のとおり、本件発明1~2は、甲3発明及び甲4発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められないから、無効理由1は理由がない。 4 請求人の主張について (1)甲4の吐出管7の大気開放について 請求人は、甲4における吸込管2と揚水管5の圧力状態について、上記第3・2における主張をしている。 上記第3・2(1)アでは、甲4の第1図において吐出管7には逆止弁が記載されていないことを捉えて、吐出管7の出口は大気に通じていることを前提とした主張をしている。しかし、同図は吐出管7の記載が途中で省略されているものであり、吐出管7の全貌は明らかにされていないから、吐出管7に逆止弁が設けられていないとまで認めることはできない。したがって、請求人の当該主張を採用することは出来ない。 上記第3・2(1)イでは、甲20を根拠として、甲4の吐出管7の先端は大気に通じていることを前提とした主張をしている。しかし、甲20は、甲4に記載されている発明を説明したものではなく、甲20と甲4に記載されている発明とに直接的な関係は無いから、甲4の吐出管7の先端が大気に通じているとまでは認めることはできない。したがって、請求人の当該主張を採用することはできない。 仮に、吐出管7の出口が大気に通じていたとしても、吐出管7と吸込管2とは、うず巻ポンプ1を介して接続されているから、吸込管2の圧力が直ちに吐出管7と同じ圧力になるとはいえないし、吸込管2と揚水管5における負圧の大小関係は、上記2(1)イで検討したとおり種々の要素に依存するものであるから、吐出管7の大気開放状態のみによって特定することはできない。 (2)甲4のうず巻ポンプ1のリークについて 上記第3・2(1)ウ及び3・2(2)では、本件特許明細書の【0025】の記載を根拠として、甲4のうず巻ポンプ1も本件特許明細書の【0025】に記載されたポンプと同様の構造を有していると推定し、甲4のうず巻ポンプ1にもリークが生じて吸込管2内の圧力は大気圧に近づく旨の主張をしている。しかし、甲4のうず巻ポンプ1が本件特許明細書の【0025】に記載されたポンプと同様の構造であるか否かは不明であるから、甲4のうず巻ポンプ1が本件特許明細書の記載と同様のリークをすることを前提とした請求人の当該主張を採用することは出来ない。 仮に、甲4のうず巻ポンプ1から吸込管2へのリークが生じるとしても、吸込管2と揚水管5における負圧の大小関係は、上記2(1)イで検討したとおり種々の要素に依存するものであり、甲4には、吸込管2や揚水管5の圧力状態や上記種々の要素に関する具体的な記載は無いから、甲4においてリークによる圧力変化を定量的に特定することはできない。したがって、吸込管2内及び揚水管5内の負圧が低下するとしても、いずれの低下量が大きいのかを特定することもできない。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 第6 むすび 以上のとおり、無効理由1及び無効理由2はいずれも理由がなく、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明の特許を無効とすることができない。 審判に関する費用については、特許法169条2項において準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-800037

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