特許無効審判
2021-800106
給水装置及び給水装置を用いた給水システム
- 審判番号
- 2021-800106
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2007-222851
- 登録番号
- 5085236
- 請求日
- 2021年12月27日
- 審決日
- 2023年06月09日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 荏原製作所
- 【請求人代理人】森 友宏
- 【被請求人】株式会社 川本製作所
- 【被請求人代理人】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
- 【被請求人代理人】蔵田 昌俊
- 【被請求人代理人】井上 正
- 【被請求人代理人】峰 隆司
- 【被請求人代理人】飯野 茂
- 【被請求人代理人】森川 元嗣
- 【被請求人代理人】鷹巣 明彦
- 審判長/審判官
- 審判長 窪田 治彦
- 審判官 関口 哲生
- 審判官 長馬 望
- 分類
- P1113.113-YAA(F04B) / P1113.121-YAA(F04B) / P1113.537-YAA(F04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第9項、特許法第29条第2項、特許法第134条の2第1項、特許法第29条第1項第3号、特許法第134条の2第6項、特許法第134条の2第3項、特許法第36条第6項第2号、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第5085236号発明「給水装置及び給水装置を用いた給水システム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第5085236号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件無効審判の請求に係る特許5085236号(以下「本件特許」という。)の手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成19年 8月29日 本件特許出願(特願2007-222851号)
平成24年 9月14日 設定登録
令和 3年12月27日 審判請求書の提出
令和 4年 4月18日 答弁書、訂正請求書の提出
令和 4年 6月24日 審判事件弁駁書の提出
令和 4年 7月27日付け 審理事項通知
令和 4年 8月24日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人)
令和 4年 9月14日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)
令和 4年10月 6日 口頭審理
令和 4年10月 6日 上申書の提出(請求人)
令和 4年10月31日付け 審決の予告
令和 4年12月27日 訂正請求書、上申書の提出(被請求人)
令和 5年 2月17日 審判事件弁駁書の提出
令和 5年 3月14日 上申書の提出(被請求人)
なお、令和4年4月18日付け訂正請求書による訂正請求は、その後、同年12月27日付け訂正請求書による訂正請求がされたことにより、取り下げられたものとみなされる(特許法第134条の2第6項)。
第2 令和4年12月27日付け訂正請求書による訂正請求について
1 訂正事項
令和4年12月27日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲を、令和4年12月27日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正するというものであり、訂正事項は以下のとおりである。なお、下線部が訂正箇所である。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記圧力検出器で検出された前記ポンプの吐出圧力に基づいて前記モータを制御するとともに、前記モータの制御情報及び前記圧力検出器で検出された前記ポンプの吐出圧力を送信する制御回路部」とあるのを、「前記圧力検出器で検出された前記ポンプの吐出圧力に基づいて前記モータを制御するとともに、ポンプ装置に設定された、他のポンプ装置と差別化可能な識別信号、前記モータの制御情報及び前記圧力検出器で検出された前記ポンプの吐出圧力を送信する制御回路部」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1の「有するポンプ装置と」とあるのを、「有するポンプ装置と(ただし、該識別信号について、通信規格に規定された送信元の識別子を除く)」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「前記通信部を介して前記モータの制御情報及び前記制御回路部から受信した前記圧力検出器で検出された前記吐出圧力を表示する表示部」とあるのを、「前記通信部を介して前記制御回路部から受信した、前記モータの制御情報及び前記圧力検出器で検出された前記吐出圧力を表示する表示部」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に「前記モータの制御情報及び前記圧力検出器で検出された前記吐出圧力を、前記制御回路部を介して前記無線通信により受信するとともに、前記入力部により入力された前記制御指示を前記無線通信により前記制御回路部へ送信可能に形成された通信装置」とあるのを、「前記識別信号、前記モータの制御情報及び前記圧力検出器で検出された前記吐出圧力を、前記制御回路部を介して前記無線通信により受信するとともに、前記入力部により入力された前記制御指示を前記無線通信により前記制御回路部へ送信可能に形成された通信装置」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3に「前記前記流量検出器」とあるのを、「前記流量検出器」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項5も同様に訂正する)。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正後の請求項1は、「前記圧力検出器で検出された前記ポンプの吐出圧力に基づいて前記モータを制御するとともに、ポンプ装置に設定された、他のポンプ装置との差別化可能な識別信号、前記モータの制御情報及び前記圧力検出器で検出された前記ポンプの吐出圧力を送信する制御回路部」との記載により、「ポンプ装置に設定された、他のポンプ装置と差別化可能な識別信号」を制御回路部が送信することを特定し、限定するものである。
すなわち、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アに記載したとおり、訂正事項1は、「ポンプ装置に設定された、他のポンプ装置と差別化可能な識別信号」を制御回路部が送信することを特定し、限定するものであり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1の「ポンプ装置に設定された識別信号、・・・を送信する制御回路部」は、本件特許明細書の段落0050、0055、0056、0065の記載に基づくものである。
すなわち、本件特許明細書には、「【0050】 図4に示すように、作業者Hは、通信装置40Aを持ちながら、各ポンプ装置10が設けられた個所を巡回する。制御盤12の通信部28からは、ポンプ装置10の運転における、検出結果及び制御設定値が電波として常時発信されている。」、「【0055】 図5に示すように、集合住宅地等に置いて、同様のポンプ装置10を用いている場合には、複数のポンプ装置10へ電波を送信することが可能となる。尚、これらポンプ装置10の台数は、1~7台となっており、これらポンプ装置10には、例えば識別番号(信号)が設定されている。」、「【0056】 このような場合でも、通信装置40Aを作業者Hが持ち、ポンプ装置10の周囲を巡回する。このとき、各ポンプ装置10は識別信号及び各ポンプ装置10の運転情報を常時発信しており、通信装置40Aは、これら識別信号及び運転状況を通信部47で受信する。・・・」、「【0065】・・・また、ポンプ装置10の制御部25は、それぞれ識別番号等、他のポンプ装置10と差別化可能な信号も同時に発信する。」との記載からみて、訂正事項1の「ポンプ装置に設定された識別信号、・・・を送信する制御回路部」との構成が記載されていることは明らかである。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 特許出願の際独立して特許を受けることができること
本件においては、全ての請求項について特許無効審判が請求されているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2
訂正後の請求項1は、「有するポンプ装置と(ただし、該識別信号について、通信規格に規定された送信元の識別子を除く)」との記載により、識別信号のうち、通信規格に規定された送信元の識別子を除外するものであり、かかる識別子を除外することにより訂正前の請求項1に係る発明に限定を付加している。
すなわち、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アに記載したとおり、訂正事項2は、ポンプ装置に設定された識別信号について、識別信号のうち、通信規格に規定された送信元の識別子を除外するものであり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2の「有するポンプ装置と(ただし、該識別信号について、通信規格に規定された送信元の識別子を除く)」は、令和4年10月31日付けの審決の予告における、「IEEE802.11(Wi-Fi)やIEEE802.15.1(Bluetooth)の規格を使用して制御手段65の送受信部73から制御情報等を送信する際に、送信される情報に同時に入る送信元の識別子は、ポンプ装置10を識別する識別信号であるともいえる。」、「無線通信に、IEEE802.11やIEEE802.15.1の規格を使用した際、制御手段65からの送信には、自ずと送信元の識別子も含まれ、すなわち、ポンプ装置10の識別信号も含まれることになる。」、「本件発明1の識別信号は、ポンプ装置10を制御するに当たり、それぞれの送信元であるポンプ装置を識別するために使用されるものであると理解され、通信規格に規定されている送信元を識別する情報と差異は認められない。」との説示を受けて、識別信号について、通信規格に規定された送信元の識別子を除外するものである。
そして、訂正後の発明についても、訂正前の発明と同様の効果を奏するものであり、識別信号について、「通信規格に規定された送信元の識別子を除くこと」によって、本件特許明細書に記載された本件訂正前の発明に関する技術的事項に何らかの変更を生じさせているものではないから、訂正事項2が本件特許明細書に開示された技術的事項に新たな技術的事項を付加したものでないことは明らかである。
したがって、訂正事項2は、当業者によって、本件特許明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
よって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 特許出願の際独立して特許を受けることができること
本件においては、全ての請求項について特許無効審判が請求されているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項2に関して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項1において、「前記通信部を介して前記モータの制御情報及び前記制御回路部から受信した前記圧力検出器で検出された前記吐出圧力を表示する表示部」とされていたことで、「前記モータの制御情報」が「制御回路部から受信した」ものであるか否かが不明確であり、明瞭でない記載であったものを、訂正後の請求項1において、「前記通信部を介して前記制御回路部から受信した、前記モータの制御情報及び前記圧力検出器で検出された前記吐出圧力を表示する表示部」と訂正することで明瞭にしたものである。
すなわち、訂正事項3は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アに記載したとおり、訂正事項3は、「前記通信部を介して前記制御回路部から受信した、前記モータの制御情報及び前記圧力検出器で検出された前記吐出圧力を表示する表示部」と訂正することで訂正前は、単に「前記モータの制御情報」であったものを、訂正後はこれが「制御回路部から受信した」ものであることを明確にしたものであり、訂正前後で実質上特許請求の範囲が拡張又は変更はされていないから、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3の「前記通信部を介して前記制御回路部から受信した、前記モータの制御情報及び前記圧力検出器で検出された前記吐出圧力を表示する表示部」は、本件特許明細書の段落0024、0025、0027-0029の記載、及び図2の記載に基づくものである。
すなわち、本件特許明細書には、「【0024】 このとき流量検出器19及び圧力検出器21は、常時、ポンプ18からの吐出圧力(及び流量)を検出し、この検出結果(圧力及び流量)を信号線Sを介して制御部25へ送信する。・・・」、「【0025】 また、制御部25は、受信した検出結果及び制御設定値を通信部28から、電波を無線通信Rにより通信装置40の通信部47へと送信する。通信装置40のCPU41は、通信部47で受信した検出結果をRAM43(又はHDD44)で記憶させるとともに、表示部45で、これら検出結果を表示させる。」、「【0027】 次に、作業員が、給水装置1の給水量を変更する場合や、水道本管の圧力低下等により制御部25の設定値、即ち運転制御設定値の変更を行なう場合について説明する。まず、上述にもあるように、表示部45に表示された流量検出器19及び圧力検出器21による検出結果を作業員は確認する。」、「【0028】 この確認時に、給水量が不足(又は過多)している場合には、作業員は、入力部46からRAM43に記憶されている制御設定値の変更用プログラムを起動させる指示を入力する。この入力により、CPU41は、RAM43からプログラムを起動させ、この起動させたプログラムを表示部45に表示させる。」、「【0029】 作業員は、表示されたプログラムに、制御設定値の変更値のデータを入力する。CPU41は、このデータをRAM43(又はHDD44)に記憶させるとともに、通信部47からデータを電波により無線通信Rを行い、制御盤12の通信部28へ送信させる。」と記載され、これら記載と、図2の記載からみて、訂正事項2の「前記通信部を介して前記制御回路部から受信した、前記モータの制御情報及び前記圧力検出器で検出された前記吐出圧力を表示する表示部」との構成が記載されていることは明らかである。
よって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正後の請求項1は、「前記識別信号、前記モータの制御情報及び前記圧力検出器で検出された前記吐出圧力を、前記制御回路部を介して前記無線通信により受信するとともに、前記入力部により入力された前記制御指示を前記無線通信により前記制御回路部へ送信可能に形成された通信装置」との記載により、通信装置が、訂正事項1、2に係る「識別信号」も受信することを特定し、限定するものである。
すなわち、訂正事項4は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アに記載したとおり、訂正事項4は、「前記識別信号(ポンプ装置に設定された、他のポンプ装置と差別化可能な識別信号)」を通信装置が受信することを特定し、限定するものであり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4の「前記識別信号、前記モータの制御情報及び前記圧力検出器で検出された前記吐出圧力を、前記制御回路部を介して前記無線通信により受信する」は、本件特許明細書の段落0056の記載に基づくものである。
すなわち、本件特許明細書には、「【0056】 このような場合でも、通信装置40Aを作業者Hが持ち、ポンプ装置10の周囲を巡回する。このとき、各ポンプ装置10は識別信号及び各ポンプ装置10の運転情報を常時発信しており、通信装置40Aは、これら識別信号及び運転状況を通信部47で受信する。・・・」との記載からみて、訂正事項4の「前記識別信号、・・・を、前記制御回路部を介して前記無線通信により受信する」との構成が記載されていることは明らかである。
よって、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 特許出願の際独立して特許を受けることができること
本件においては、全ての請求項について特許無効審判が請求されているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項4に関して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項3の「前記前記流量検出器」との記載では、流量検出器が指し示すものが不明確であり、「前記前記流量検出器」とされていることで明瞭でない記載であったものを「前記流量検出器」と明瞭な記載としたものである。
すなわち、訂正事項5は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アに記載したとおり、訂正事項5は、「前記流量検出器」と訂正することで、流量検出器が指し示すものを明確にしたものであり、訂正前後で実質上特許請求の範囲が拡張又は変更はされていないから、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アに記載したとおり、訂正事項5は、「前記流量検出器」と訂正することで、訂正後の請求項3に係る発明の流量検出器を明確にしたものであり、訂正事項5は特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
(6)一群の請求項について
訂正前の請求項1~5について、請求項2~5は、請求項1を直接的に、又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1~4によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項である。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲について、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
前記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ、請求項の番号に従って「本件発明1」などといい、総称して「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
モータにより駆動されるポンプ、このポンプの吐出管上に設けられた圧力検出器、並びに、前記圧力検出器で検出された前記ポンプの吐出圧力に基づいて前記モータを制御するとともに、ポンプ装置に設定された、他のポンプ装置と差別化可能な識別信号、前記モータの制御情報及び前記圧力検出器で検出された前記ポンプの吐出圧力を送信する制御回路部を有するポンプ装置と(ただし、該識別信号について、通信規格に規定された送信元の識別子を除く)、
前記制御回路部と2.4GHz以上2.485GHz以下のISM帯の周波数帯の電波を用いた無線通信を行なう通信部、前記通信部を介して前記制御回路部から受信した、前記モータの制御情報及び前記圧力検出器で検出された前記吐出圧力を表示する表示部、並びに、前記モータの制御指示を入力する入力部を有し、前記識別信号、前記モータの制御情報及び前記圧力検出器で検出された前記吐出圧力を、前記制御回路部を介して前記無線通信により受信するとともに、前記入力部により入力された前記制御指示を前記無線通信により前記制御回路部へ送信可能に形成された通信装置と、を備え、
前記制御回路部は、前記通信装置からの前記制御指示を受信するとともに、前記制御指示に基づいて前記モータを制御することを特徴とする給水装置。
【請求項2】
前記ポンプ装置は、前記ポンプを複数備えることを特徴とする請求項1に記載の給水装置。
【請求項3】
前記ポンプ装置は、前記ポンプの吐出管上に設けられた流量検出器をさらに備え、前記制御回路部により前記流量検出器で検出された流量を前記通信装置に送信可能に形成され、
前記通信装置は、受信した前記流量検出器で検出された流量を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項1に記載の給水装置。
【請求項4】
前記ポンプ装置を1台以上7台以下有することを特徴とする請求項1に記載の給水装置。
【請求項5】
前記請求項1~4のいずれかに記載の給水装置と、
前記通信装置にネットワーク接続されたサーバと、
前記通信装置から少なくとも前記給水装置により実行された運転の情報を前記サーバで受信するとともに、少なくとも前記給水装置に実行させる運転の情報を前記サーバから前記通信装置に送信する通信手段と、
前記サーバに設けられ、前記給水装置に関する情報が記憶された記憶手段と、
前記給水装置から送信される前記情報と前記記憶手段に記憶された情報とを比較する比較手段と、
この比較手段の比較結果に基づいて、少なくとも前記給水装置の運転の情報を変更可能な変更手段と、を備えることを特徴とする給水システム。」
第4 当事者の主張
1 請求人の主張
請求人は、本件発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、甲第1号証~甲第10号証(以下、各証拠について、証拠番号に従って「甲1」などという。)の証拠を提出し、以下の無効理由を主張する。
(1)無効理由1
本件特許の請求項1、2、4に係る発明は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(2)無効理由2
本件特許の請求項1、2、4に係る発明は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(3)無効理由3
本件特許の請求項3に係る発明は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(4)無効理由4
本件特許の請求項5に係る発明は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲1に記載された発明、甲3に記載された発明及び甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(5)無効理由5
本件特許の請求項1~5に係る発明は以下の点で明確であるとはいえず、その特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に付与されたものであるから、本件の請求項1~5に係る発明の特許は、同法第123条第1項第4号の規定に該当し、無効とすべきである。
ア 請求項1に「前記通信部を介して前記モータの制御情報及び前記制御回路部から受信した前記圧力検出器で検出された前記吐出圧力を表示する表示部」との記載があるところ、「前記通信部を介して」との語は「受信した」に係るものと解されるが、「前記圧力検出器で検出された前記吐出圧力」がどのようにして「前記モータの制御情報」から受信されるのかが技術的に明確でない。したがって、請求項1に係る発明及び請求項1を引用する請求項2~5に係る発明は明確でない。
イ 請求項3には「前記前記流量検出器」との記載があるが、この記載中の「前記前記」は不明確である。したがって、請求項3に係る発明及び請求項3を引用する請求項5に係る発明は明確でない。
<証拠方法>
甲1:特開2006-219988号公報
甲2:特開2003-36321号公報
甲3:特開2004-270451号公報
甲4:特開2003-322087号公報
甲5:鄭立、「ワイヤレスセンサーネットワークの標準化」、計測と制御、計測自動制御学会、2005年6月、第44巻、第6号、p.384-389
甲6:「Specification of the Bluetooth System」(抄本)、米国電気電子技術者協会、2001年2月22日
甲7:「~安心して無線LANを使用するために~参考資料」、総務省、平成16年4月26日
甲8:「IEEE Std 802.11TM -2007」(抄本)、米国電気電子技術者協会、2007年6月12日
甲9:特開2002-231465号公報
甲10:特開2006-297589号公報
2 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、乙第1号証(以下、「乙1」という。)の証拠を提出し、無効理由がない旨主張する。
<証拠方法>
乙1 特開2003-56469号公報
第5 甲号証に記載された発明
1 甲1について
(1)甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付与した。以下同様。)。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、建築設備(例えばビル)等に給水するポンプ装置及びポンプ装置用携帯端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マンション等のビルに設置され、ビル内の需要家に給水するポンプ装置が知られている。この種のポンプ装置は、例えば特許文献1に示すように、共通のベースの上に、複数台(通常2、3台)のポンプを設置してそれらの吐出配管を並列に接続し、これらポンプを駆動することで、受水槽に溜められている水を吸引して、吐出配管から建物各階の部屋の蛇口等に給水を行うように構成されている。
【0003】
そして前記ポンプ装置には制御盤(制御手段)が取り付けられており、この制御盤からの制御信号によってポンプ装置は吐出配管内の圧力を一定値以上に保つように自動運転され、各部屋への給水圧力を一定値以上に保つようにしている。具体的には、例えばポンプ吐出側の圧力が下がったことを検出することでポンプを始動し、ポンプ吐出側の使用水量が極小水量になったことを検出することでポンプを停止するように自動運転する。
【0004】
また前記制御盤は、ポンプ装置への制御信号によって、ポンプ停止毎に次に運転するポンプを別のポンプに切り換える交互運転制御や、使用水量が増えると複数台のポンプを並列運転させる追加運転制御や、使用水量が減ると追加運転していたポンプを停止させる解列運転制御等を自動的に行う。また制御盤は、試験的に個々のポンプを運転・停止させる試験運転機能や、ポンプの電流値や吐出圧力値を表示する表示機能も有している。
【0005】
そしてこの制御盤には、前記ポンプの電流値や吐出圧力値等を表示する表示部や、ポンプの運転停止を指示するボタン等を設けた操作・表示パネルが取り付けられており、ポンプを様々に操作できるようになっている。図3はこの種の操作・表示パネル90を示す図である。同図に示すように操作・表示パネル90には、運転モード/ポンプ選択ボタン91、運転/停止ボタン93、始動圧力ボタン95、警報解除/ブザー停止ボタン97、表示部99等が設けられている。
【0006】
ここで運転モード/ポンプ選択ボタン91は、ボタン1つで、「手動(試験)で1号ポンプ運転」→「手動で2号ポンプ運転」→「自動で1号ポンプ運転」→「自動で2号ポンプ運転」→「自動で1号・2号の交互運転」→「手動(試験)で1号ポンプ運転」と、順番に切り替えていくように構成されている。自動運転とは、ポンプ吐出側の吐出配管に設置した圧力検知器が測定した吐出配管内のポンプ吐出圧力が予め設定しておいた始動圧力値よりも低下したらポンプを始動し、またポンプ吐出側に設置したフロースイッチの測定水量値が予め設定しておいた設定水量値以下になったことを検知したらポンプを停止する運転方法である。また手動(試験)運転は始動圧力値や設定水量値にかかわらず、指定したポンプを手動で運転・停止する運転方法である。
【0007】
次に運転/停止ボタン93はポンプ運転時にこれを押すとポンプが停止し、ポンプ停止時にこれを押すとポンプが始動するボタンである。始動圧力ボタン95はこれを押すと上下キー101、103及び表示部99を用いて始動圧力値を設定できるようになり、再び始動圧力ボタン95を押すと、始動圧力値が確定し同時に上下キー101、103は通常の表示部99の表示(ポンプの吐出圧力測定値とポンプ電流測定値)を切り替える状態に戻すボタンである。つまり上下キー101、103は通常は表示部99の表示切替用のボタンである。警報解除/ブザー停止ボタン97はブザーが鳴っているときはブザー停止ボタンとして働き、ブザーが鳴っていないときは警報解除ボタンとして働く。表示部99は、7セグメントによって構成され、ポンプの吐出圧力測定値と、ポンプ電流測定値の何れかを表示し、さらに始動圧力ボタン95を押した際は始動圧力値を表示するものである。
【0008】
上記操作・表示パネル90では、1つの上下キー(入力ボタン)101、103によって、始動圧力値の入力と、表示部99への表示の切り替え(ポンプ吐出圧力測定値とポンプ電流測定値の切り替え)を行うようにしたり、1つの運転/停止ボタン93によって運転開始と停止とを行うようにしたり、1つの警報解除/ブザー停止ボタン97によってブザーの停止と警報解除とを行ったりすることで、ボタンの数を減らし、その操作をできるだけ簡素化するようにしている。
【0009】
しかしながら以上のように構成しても、操作・表示パネル90のボタンの数及び操作の簡素化には限界があり、さらなる構造及び操作の簡素化、及び製造コストの低減化が求められていた。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、操作を簡素化でき、またその低コスト化を図ることができるポンプ装置及びポンプ装置用携帯端末を提供することにある。」
ウ 「【発明の効果】
【0017】
本願発明によれば、誰でも持っている携帯電話のような携帯端末のボタンや表示機能を本ポンプ装置の表示パネルとして機能させてポンプ装置の操作、メンテナンスができ、ポンプ装置に取り付ける表示パネル自体をポンプ装置からなくしたり、または簡素化することができ、ポンプ装置の低コスト化が図れる。同時に、操作をしなれた携帯端末によって操作でき、しかも遠隔操作なので、作業員にとって操作がし易くなる。
【0018】
さらに携帯端末にポンプ装置との交信プログラム等が記憶されていない場合であっても、ポンプ装置側に設置した情報記録部材から交信プログラムを入手でき、さらに必要に応じてその他、操作のやり方に関する情報や、装置の情報等を入手でき、従ってこれら情報の事前の準備が不要となって便利であり、また習熟度の低いメンテナンス員でもポンプ装置を適切に操作することが可能になる。」
エ 「【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明を適用するポンプ装置10の一例の全体図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は正面図、図1(c)は左側面図である。同図に示すポンプ装置10は、ベース20の上に、二台のポンプ30A、30Bと、これらポンプ30A、30Bの中間に配置される圧力タンク50とを載置し、さらに両ポンプ30A、30Bの吐出側に接続される吐出配管40と、圧力タンク50の上部に設置される制御盤60とを具備して構成されている。以下各構成部品について説明する。
【0020】
ベース20は略矩形の平板状で、長手方向の両側辺は下方向に折り曲げられた後に外方向に折り曲げられることで、L字状の固定辺23、23を構成している。
【0021】
ポンプ30A、30Bは、それぞれポンプ部31A、31Bと、これらを駆動するモータ部33A、33Bとを具備して構成されている。ポンプ部31A、31Bの手前側の端面には、図示しない受水槽や水道配管(本管側)を接続する吸込部35A、35Bが設けられ、またポンプ部31A、31Bの上面には吐出部37A、37Bが設けられている。
【0022】
吐出配管40は略T字状の配管であり、両ポンプ30A、30Bの吐出部37A、37Bに接続されたフロースイッチ49A、49B、及びチェッキ弁(逆止弁)47A、47Bを介してその両端が接続されている。また吐出配管40の中央には1つの吐出部43が設けられている。これによって両ポンプ30A、30Bの吐出側は並列に接続され、両ポンプ30A、30Bの吐出流体は合流する。また前記チェッキ弁47A、47Bによって、ポンプ30A、30Bが停止したときに吐出配管40内の水はポンプ30A、30B側に逆流しない。また吐出配管40の中央の下部にはこの吐出配管40を圧力タンク50に連結する連結配管45が取り付けられ、さらに吐出配管40には配管内圧力を検出する圧力検知器48が取り付けられている。そして圧力タンク50とチェッキ弁47A、47Bの効果によって、ポンプ30A、30Bが停止した後の吐出配管40内の圧力は、水が使用されない限り一定圧力に保持される。
【0023】
制御盤60は、ケース61内に、ポンプの運転制御を行う各種電気回路からなる制御手段65を内蔵して構成されている。この制御手段65は、携帯端末(ポンプ装置用携帯端末)80から発信される制御信号を受信する送受信部73を具備している。」
オ 「【0025】
そして例えば携帯端末80からポンプ装置10を自動運転するようにポンプ制御信号が発信された場合は、吐出配管40内の圧力を予め設定しておいた始動圧力値(一定値)以上に保つように、自動運転される。即ち吐出側の圧力が始動圧力値以下に下がったことを圧力検知器48が検出したらポンプ30A又は30Bを始動し、吐出側の水量が極小水量になったことをフロースイッチ49A又は49Bが検出するか、もしくは吐出側の圧力が予め設定しておいた停止圧力値以上になったことを圧力検知器48が検出したらポンプ30A又は30Bを停止する。また携帯端末80からのポンプ制御信号によってこのポンプ装置10をポンプ30Aで手動運転するように命令した場合は、吐出側の圧力値や水量が何れであっても、そのポンプ30Aを強制運転する。なお本ポンプ装置10はポンプ30A又は30Bを可変速運転するインバータ等の可変速手段を備えていてもよく、この場合、吐出側の圧力に基づいてポンプ30A又は30Bの回転数を制御することにより圧力一定制御や推定末端圧力一定制御を行うことができる。
【0026】
次に図2は制御手段65と携帯端末80の概略ブロック構成図である。同図に示すように制御手段65は、ポンプ制御用の各種ポンプ制御プログラムや設定値データや検出データ等を記憶する記憶部67と、携帯端末80から受信したポンプ制御信号に基づいて、前記記憶部67に記憶した各種ポンプ制御プログラムやデータ等を用いてポンプ30A、30Bの運転制御信号を出力する制御部69と、入出力部71と、携帯端末80から発信されるポンプ制御信号を受信して制御部69に送信する送受信部(又は受信部)73とを具備して構成されている。制御手段65は、このポンプ装置10に設けた圧力検知器48やフロースイッチ49A、49B等からの検出データが入力されると共に、携帯端末80との間でポンプ制御信号の送受信が行われ、ポンプ30A、30Bを運転制御する。
【0027】
一方携帯端末80は、各種表示を行う表示部81と、ポンプ制御内容及び各ポンプ制御内容に対応する記号(制御内容対応記号)に関するデータ及びこれらポンプ制御内容及び記号を前記表示部81に表示するデータ表示プログラム及びメンテナンス員確認データ(IDコード〔Identificationコード〕及び/又はパスワード等)その他の制御プログラム等を記憶した記憶部83と、前記記号を入力する入力部85と、制御手段65の送受信部(又は受信部)73及びインターネットに代表されるネットワークNの送受信部N1と送受信を行なう送受信部(又は送信部)87と、入出力部88と、制御部89と、前記二次元コード63の記録データを読み込む読み込み手段86とを具備して構成されている。読み込み手段86としては例えば携帯端末80に内蔵されているカメラ機構を用いる。
【0028】
この携帯端末80は前記読み込み手段86によって、前記制御盤60に取り付けられている二次元コード63から前記交信プログラムと前記ウエブサイトへのURLとを読み込み、記憶部83に記憶する。
【0029】
一方この携帯端末80は、前記記憶部83に記憶したデータ表示プログラムによって、前記記憶部83に記憶したポンプ制御内容及び記号を前記表示部81に表示するとともに、入力部85から入力された記号に対応するポンプ制御内容となるように送受信部87を介して制御手段65にポンプ30A、30B操作用の各種ポンプ制御信号を発信してポンプ装置を遠隔操作によって運転制御する。ここで表示部81は例えば液晶画面であり、各種数字・記号・画像等を表示するものである。次に記憶部83に記憶するポンプ制御内容としては、例えば、ポンプの運転停止、運転モードの選択(手動運転モードと自動運転モードの選択)、手動運転の際に運転するポンプの選択、始動圧力値の設定等である。また記憶部83に記憶する記号(制御内容対応記号)とは、例えばポンプの停止の場合は記号「0」、運転モードが手動でポンプ30A又は30Bを起動する場合は記号「1」、運転モードが自動でポンプ30A又は30Bを起動する場合は記号「2」、手動で運転するポンプを30Aに選択する場合は記号「3」、手動で運転するポンプを30Bに選択する場合は記号「4」、等である。次に入力部85は携帯端末80に設けた各種操作釦などである。
【0030】
そして携帯端末80の表示部81にポンプ制御内容及び記号を表示し、携帯端末80の使用者がこの表示部81を見ながら設定しようとするポンプ制御内容に対応する記号を選び、この記号を入力部85から入力すれば、制御部89によってそのポンプ制御内容を行うように命令するポンプ制御信号が送受信部87から制御手段65の送受信部73に送信され、制御手段65はその受信したポンプ制御信号によってポンプ30A、30Bの運転制御を行う。」
カ 「【0031】
以上のようにポンプ装置10を携帯端末80からのポンプ制御信号によって運転制御するようにしたので、誰でも持っている携帯電話のような携帯端末80のボタン(入力部85)や表示機能(表示部81)を本ポンプ装置10の表示パネルとして機能させることができ、ポンプ装置10本体に取り付ける表示パネル自体をポンプ装置10本体からなくしたり、または表示パネルを簡素化することができ、ポンプ装置10の低コスト化が図れるばかりか、操作をしなれた携帯端末80によって操作でき、しかも遠隔操作なので、作業員にとって操作がし易くなる。
【0032】
また携帯端末80に制御手段65との交信プログラム等が記憶されていない場合であっても、ポンプ装置10側に設置した二次元コード63から交信プログラムを入手でき、従って携帯端末80に交信プログラムがないまま現地に行っても、ポンプ装置10の運転操作が行える。さらに必要に応じて二次元コード63に記録されているURLを介してサービスウエブサイトにアクセスすることにより、ポンプ制御内容の設定やメンテナンスに必要なガイダンスが受けられ、必要に応じてより詳細なユーティリティープログラムやデータをダウンロードすることができる。そしてダウンロードしたプログラムやデータを用い、制御手段65と交信することにより前記した各種作業を進めていくことができる。従ってこれら情報の事前の準備が不要となって便利であり、また習熟度の低いメンテナンス員でもポンプ装置10を適切に操作することが可能になる。」
キ 「【0033】
ところでこの実施形態においては、前記サービスウエブサイトにアクセスして必要な情報をダウンロードする際、アクセスした人が適切なメンテナンス員であることを確認できるようにするため、前記サービスウエブサイト側にIDコード及び/又はパスワードを入力しない限りユーティリティープログラム等がダウンロードできないようにしてなるセキュリティーシステムが設置されている。そこで携帯端末80からサービスウエブサイトにアクセスした際は、前記予め携帯端末80の記憶部83に記憶しておいたIDコード及び/又はパスワードからなるメンテナンス員確認データを用い、このデータをサービスウエブサイトに出力することのみによって前記ユーティリティープログラム等がダウンロードできるようにしている。これによってポンプ装置10がむやみに操作されて事故を招くことを防止できる。
【0034】
なお上記実施形態は標準的なポンプ装置10を例に説明したが、本発明はこれをさらに簡素化したポンプ装置などにも適用できる。即ち制御手段65は記憶部67や制御部69を有さない簡単な電気回路で構成したものであってもよい。同様に携帯端末80もこのポンプ装置10専用のものではなく、通常市販されている携帯電話によって構成してもよく、その場合は携帯電話が本来有している機能を用いるだけでもよい(その場合は専用の制御部89や記憶部83等は有さない)。また上記実施形態では情報記録媒体として二次元コード63を用いたが、その代りに例えば、バーコード、ICタグ、ICチップ等の他の各種情報記録媒体を用いても良い。」
ク 「【0038】
〔具体例2〕
具体例2は前記図示して説明した実施形態に相当する構成のポンプ装置10であり、携帯端末80として、赤外線通信機能を備え多くの情報を送受信できる携帯端末80を用いたものである。この場合でも予め携帯端末80はポンプ装置10に貼り付けられた二次元コード63から交信プログラムを読み込む。そしてこの携帯端末80は、ポンプの始動停止操作等の他に、センサによって検出された現在のポンプ吐出圧力やポンプ回転数のデータを制御手段65の送受信部73から受信して携帯端末80の表示部81に表示させることや、制御手段65の記憶部67に記憶されている運転時間、故障履歴、始動停止回数等のメンテナンスのためのデータや、メンテナンス記録、設定値データ等を読み出し書き込みできるように構成することもできる。制御手段65の送受信部73は赤外線通信の各規格や、IEEE802.11、IEEE802.15.1等に準拠したものを使用する。
【0039】
携帯端末80の記憶部83に記憶されている交信プログラムを起動すると、ポンプ装置10の制御手段65と自動的に通信を行い、現在のポンプ装置10の運転状況(前記ポンプ吐出圧力やポンプ回転数等)をこの携帯端末80の表示部81に表示するように動作する。また携帯端末80の表示部81には前記図3に示す操作・表示パネル90に相当する表示がなされ、ポンプの運転状況等を数値として表示する欄と、ポンプ装置10を操作するための各種ボタンが表示された表示部81の画面を介して、あたかも従来と同じ制御盤60の操作・表示パネル90を使用するようにポンプ装置10を操作することができる。制御部89はこのとき制御手段65との通信を継続させ、携帯端末80の使用者の入力に従ったポンプ制御信号を制御手段65に送信すると共に、制御手段65からポンプの運転状況を受信し、表示部(画面)81上の数値を更新表示する。
【0040】
ところで上記した各種データや各種プログラムは、二次元コード63から読み込んだURLによってメンテナンス会社等のウエブサイトからポンプ装置10の機種、各携帯端末80や通信規格に対応したものをダウンロードすることができ、携帯端末80を選ばずにポンプ装置10の制御に用いることができる。また1台の携帯端末80に複数のデータとプログラムを記憶させておくことで、1台の携帯端末80で複数のポンプ装置10(現場)に対応することができる。」
ケ 「【図1】
[図:0001402115000001.jpg]
【図2】
[図:0001402115000002.jpg]
」
(2)甲1に記載された事項(前記(1))から次のことがいえる。
ア 前記(1)エの段落0023に「制御盤60は、ケース61内に、ポンプの運転制御を行う各種電気回路からなる制御手段65を内蔵して構成されている。この制御手段65は、携帯端末(ポンプ装置用携帯端末)80から発信される制御信号を受信する送受信部73を具備している。」と、前記(1)オの段落0025に「吐出側の圧力が始動圧力値以下に下がったことを圧力検知器48が検出したらポンプ30A又は30Bを始動し、・・・吐出側の圧力が予め設定しておいた停止圧力値以上になったことを圧力検知器48が検出したらポンプ30A又は30Bを停止する。」と、段落0026に「制御手段65は、ポンプ制御用の各種ポンプ制御プログラムや設定値データや検出データ等を記憶する記憶部67と、携帯端末80から受信したポンプ制御信号に基づいて、前記記憶部67に記憶した各種ポンプ制御プログラムやデータ等を用いてポンプ30A、30Bの運転制御信号を出力する制御部69と、入出力部71と、携帯端末80から発信されるポンプ制御信号を受信して制御部69に送信する送受信部(又は受信部)73とを具備して構成されている。制御手段65は、このポンプ装置10に設けた圧力検知器48・・・等からの検出データが入力されると共に、携帯端末80との間でポンプ制御信号の送受信が行われ、ポンプ30A、30Bを運転制御する。」と記載され、そして、ポンプの回転制御はモータ部を制御することにより行われるから、ポンプ30A、30Bの運転を制御することは、ポンプ30A、30Bを駆動するモータ部33A、33Bを制御することともいえる。
以上によれば、甲1には、「圧力検知器48で検出された前記ポンプ30A、30Bの吐出圧力に基づいて前記モータ部33A、33Bを制御する制御手段65を有するポンプ装置10」が示されているといえる。
イ 前記(1)オの段落0026に「制御手段65は、このポンプ装置10に設けた圧力検知器48やフロースイッチ49A、49B等からの検出データが入力されると共に、携帯端末80との間でポンプ制御信号の送受信が行われ、ポンプ30A、30Bを運転制御する。」と、段落0027に「携帯端末80は、・・・制御手段65の送受信部(又は受信部)73及びインターネットに代表されるネットワークNの送受信部N1と送受信を行なう送受信部(又は送信部)87と、・・・を具備して構成されている。」と、前記(1)クの段落0038に「携帯端末80は、ポンプの始動停止操作等の他に、センサによって検出された現在のポンプ吐出圧力やポンプ回転数のデータを制御手段65の送受信部73から受信して携帯端末80の表示部81に表示させることや、制御手段65の記憶部67に記憶されている運転時間、故障履歴、始動停止回数等のメンテナンスのためのデータや、メンテナンス記録、設定値データ等を読み出し書き込みできるように構成することもできる。」と、段落0039に「携帯端末80の記憶部83に記憶されている交信プログラムを起動すると、ポンプ装置10の制御手段65と自動的に通信を行い、現在のポンプ装置10の運転状況(前記ポンプ吐出圧力やポンプ回転数等)をこの携帯端末80の表示部81に表示するように動作する。」と記載され、圧力検知器48で検出されたポンプ30A、30Bの吐出圧力やポンプ回転数のデータが制御手段65の送信部73から携帯端末80に送信されることがわかる。また、「ポンプ回転数のデータ」は、ポンプ30A、30Bを駆動するモータ部33A、33Bの回転数に関する情報、すなわち、モータ部33A、33Bの制御の情報であるともいえる。
以上によれば、甲1には、「モータ部33A、33Bの制御の情報及び圧力検知器48で検出されたポンプ30A、30Bの吐出圧力を送信する制御手段65を有するポンプ装置10」が示されているといえる。
ウ 前記(1)オの段落0027に「携帯端末80は、・・・制御手段65の送受信部(又は受信部)73及びインターネットに代表されるネットワークNの送受信部N1と送受信を行なう送受信部(又は送信部)87と、・・・を具備して構成されている。」と、前記(1)クの段落0038に「具体例2は・・・ポンプ装置10であり、携帯端末80として、赤外線通信機能を備え多くの情報を送受信できる携帯端末80を用いたものである。」と記載され、また、赤外線通信は無線通信の1つであるから、赤外線を用いた無線通信であるといえる。
以上によれば、甲1には、「制御手段65と赤外線を用いた無線通信を行う送受信部87を有する携帯端末80」が示されているといえる。
エ 前記(1)オの段落0026に「制御手段65は、このポンプ装置10に設けた圧力検知器48やフロースイッチ49A、49B等からの検出データが入力されると共に、携帯端末80との間でポンプ制御信号の送受信が行われ、ポンプ30A、30Bを運転制御する。」と、段落0027に「携帯端末80は、・・・制御手段65の送受信部(又は受信部)73及びインターネットに代表されるネットワークNの送受信部N1と送受信を行なう送受信部(又は送信部)87と、・・・を具備して構成されている。」と記載され、前記(1)クの段落0038に「携帯端末80は、ポンプの始動停止操作等の他に、センサによって検出された現在のポンプ吐出圧力やポンプ回転数のデータを制御手段65の送受信部73から受信して携帯端末80の表示部81に表示させる・・・ように構成することもできる。」と、段落0039に「携帯端末80の記憶部83に記憶されている交信プログラムを起動すると、ポンプ装置10の制御手段65と自動的に通信を行い、現在のポンプ装置10の運転状況(前記ポンプ吐出圧力や回転数等)をこの携帯端末80の表示部81に表示するように動作する。」と記載され、携帯端末80が、圧力検知器48で検出されたポンプ30A、30Bの吐出圧力やポンプ回転数のデータを制御手段65の送信部73から受信することが分かる。また、前記イで示したように、「ポンプ回転数のデータ」は、モータ部33A、33Bの制御の情報であるともいえる。
以上によれば、甲1には、「モータ部33A、33Bの制御の情報及び圧力検知器48で検出された吐出圧力を、制御手段65を介して赤外線を用いた無線通信により受信する携帯端末80」及び「送受信部87を介して制御手段65から受信した、モータ部33A、33Bの制御の情報及び圧力検知器48で検出された吐出圧力を表示する表示部81を有する携帯端末80」が示されているといえる。
オ 前記(1)オの段落0027に「携帯端末80は、各種表示を行う表示部81と、ポンプ制御内容及び各ポンプ制御内容に対応する記号(制御内容対応記号)に関するデータ及びこれらポンプ制御内容及び記号を前記表示部81に表示するデータ表示プログラム及びメンテナンス員確認データ(IDコード〔Identificationコード〕及び/又はパスワード等)その他の制御プログラム等を記憶した記憶部83と、前記記号を入力する入力部85と、・・・を具備して構成されている。」と、前記(1)クの段落0029に「携帯端末80は、前記記憶部83に記憶したデータ表示プログラムによって、前記記憶部83に記憶したポンプ制御内容及び記号を前記表示部81に表示するとともに、入力部85から入力された記号に対応するポンプ制御内容となるように送受信部87を介して制御手段65にポンプ30A、30B操作用の各種ポンプ制御信号を発信してポンプ装置を遠隔操作によって運転制御する。」と、段落0030に「携帯端末80の表示部81にポンプ制御内容及び記号を表示し、携帯端末80の使用者がこの表示部81を見ながら設定しようとするポンプ制御内容に対応する記号を選び、この記号を入力部85から入力すれば、制御部89によってそのポンプ制御内容を行うように命令するポンプ制御信号が送受信部87から制御手段65の送受信部73に送信され、制御手段65はその受信したポンプ制御信号によってポンプ30A、30Bの運転制御を行う。」と記載され、ポンプ30A、30Bの運転制御をポンプ制御信号によって制御の指示をすることが示されているところ、ポンプ30A、30Bの制御の指示は、ポンプ30A、30Bを駆動するモータ33A、33Bの制御の指示といえる。
以上によれば、甲1には、「前記モータ部33A、33Bの制御の指示を入力する入力部85を有し、」「入力部85により入力された制御指示を前記無線通信により前記制御手段65へ送信可能に形成された携帯端末80」が示されているといえる。
カ 前記(1)オの段落0026に「制御手段65は、・・・携帯端末80から受信したポンプ制御信号に基づいて、前記記憶部67に記憶した各種ポンプ制御プログラムやデータ等を用いてポンプ30A、30Bの運転制御信号を出力する制御部69と、入出力部71と、携帯端末80から発信されるポンプ制御信号を受信して制御部69に送信する送受信部(又は受信部)73とを具備して構成されている。制御手段65は、・・・携帯端末80との間でポンプ制御信号の送受信が行われ、ポンプ30A、30Bを運転制御する。」と記載され、また、前記オで示したように、ポンプ30A、30Bの制御の指示は、ポンプ30A、30Bを駆動するモータ33A、33Bの制御の指示といえる。
以上によれば、「制御手段65は、携帯端末80からの制御の指示を受信するとともに、制御の指示に基づいてモータ部33A、33Bを制御する」ことが示されているといえる。
キ 前記(1)アの段落0001の「本発明は、建築設備(例えばビル)等に給水するポンプ装置及びポンプ装置用携帯端末に関するものである。」との記載から、甲1に、ポンプ装置10と携帯端末80を備えた「給水装置」が示されていることは明らかである。
(3)そうすると、甲1には以下の発明が記載されていると認められる(以下、それぞれ「甲1発明1」などという。)。
ア 甲1発明1
「モータ部33A、33Bにより駆動されるポンプ30A、30B、このポンプ30A、30Bの吐出配管40上に設けられた圧力検知器48、並びに、前記圧力検知器48で検出された前記ポンプ30A、30Bの吐出圧力に基づいて前記モータ部33A、33Bを制御するとともに、前記モータ部33A、33Bの制御の情報及び前記圧力検知器48で検出された前記ポンプ30A、30Bの吐出圧力を送信する制御手段65を有するポンプ装置10と、
前記制御手段65と赤外線を用いた無線通信を行う送受信部87、前記送受信部87を介して前記制御手段65から受信した、前記モータ部33A、33Bの制御情報及び前記圧力検知器48で検出された前記吐出圧力を表示する表示部81、並びに、前記モータ部33A、33Bの制御の指示を入力する入力部85を有し、前記モータ部33A、33Bの制御の情報及び前記圧力検知器48で検出された前記吐出圧力を、前記制御手段65を介して前記赤外線を用いた無線通信により受信するとともに、前記入力部85により入力された前記制御の指示を前記無線通信により前記制御手段65へ送信可能に形成された携帯端末80と、を備え、
前記制御手段65は、前記携帯端末80からの前記制御の指示を受信するとともに、前記制御の指示に基づいて前記モータ部33A、33Bを制御する、
給水装置。」
イ 甲1発明2
「前記ポンプ装置10は、前記ポンプ30A、30Bを2台備える、甲1発明1に係る給水装置。」
ウ 甲1発明3
「前記ポンプ装置10は、前記ポンプ30A、30Bの吐出配管40に設けられたフロースイッチ49A、49Bをさらに備える、甲1発明1に係る給水装置。」
エ 甲1発明4
「前記ポンプ装置10を1台有する、甲1発明1に係る給水装置。」
オ 甲1発明5
「甲1発明1~甲1発明4のいずれかに係る給水装置と、
前記携帯端末80にネットワーク接続されたサービスウエブサイトと、を備える給水システム。」
2 甲2について
(1)甲2には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各地に点在設置されているタンク内に貯蔵された液化ガスを汲み上げるための各ポンプの異常原因を統合的に診断する方法及び装置に関する。」
イ 「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この従来の液化ガス用ポンプの異常診断方法及び装置においては、ユーザがポンプの異常に気付いてからメーカに連絡をすることで、メーカの保守サービスが発生する。しかし、メーカはユーザのポンプの異常発生時の状況を知らないため、異常原因の調査には長時間を要し、原因が判明してから必要な部品の手配を行うため、ポンプを再び駆動させるのに要する時間が長くなってしまう。したがって、プラントの生産量が低下したり、保守サービスのためのコストが高くなってしまうという課題があった。また、液化ガスは例えば約-160℃という極低温でタンク内に貯蔵されているため、ユーザ自身がポンプの異常をいち早く検出するのは困難であり、タンクは世界中の様々な場所に設置されているので、保守サービスを行うメーカ自身が、世界中に点在した各ポンプの異常を検出することは非常に困難であるという課題があった。
【0005】本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ポンプから遠隔した場所で、世界中に点在した液化ガス用ポンプの異常をいち早く統合的に検出し、異常原因の診断を行うことで、ポンプに異常が発生した場合のポンプの停止時間を大幅に削減することができる液化ガス用ポンプの異常診断方法及び装置を提供することを目的とする。」
ウ 「【0019】図1は、本発明の実施形態に係る液化ガス用ポンプの異常診断方法が実施される装置の構成を示す図である。世界中の各地に存在するプラントに設置されたタンク10内には液化ガス12、例えばLNG(液化天然ガス)が、約-160℃の極低温に冷却されることにより液化された状態で貯蔵されている。タンク10内には揚液管34が垂下設置され、この揚液管34の上部には吐出管36が設けられている。揚液管34内には液化ガス12を汲み上げるためのポンプ14が吊り下げ配置され、ポンプ14は、例えばうず巻ポンプや軸流ポンプが用いられる。なお図示はしていないが、ポンプ14はタンク10の内と外の両方にそれぞれ複数配置されることが多い。
【0020】ポンプ14の回転軸にはポンプ14を駆動するためのモータ16が連結されている。モータ16の制御及びポンプ14の異常検出を行うため、各プラントには異常検出手段を含むポンプ制御システム18が設置されている。ポンプ制御システム18は、ポンプ14の回転速度が定格回転速度を維持するようにモータ16を制御する。なお図示はしていないが、ポンプ制御システム18はプラント内のすべてのポンプ14を統合的に制御してもよいし、プラント内に複数のポンプ制御システム18を設置し、各ポンプ制御システム18をローカルエリアネットワークにより通信可能にしてもよい。
【0021】ポンプ14の運転状態を検出する状態検出手段として、ポンプ14の吐出圧力を検出する圧力センサ20、ポンプ14の吐出流量を検出する流量センサ22が吐出管36に、ポンプ14の振動を検出する加速度センサ24がポンプ14に、タンク10内の液化ガス12の液面高さを検出する液面センサ26がタンク10内に、モータ16の電流を検出する電流センサ28がモータ16の電源供給設備に設置されている。各センサ20~28の検出値がポンプ制御システム18に読み込まれることにより、ポンプ14の運転状態がポンプ制御システム18によって監視される。
【0022】各プラントにおけるすべてのポンプ14の異常を統合的に監視するための遠隔監視手段としての統合監視システム30が各ポンプ14から遠隔した場所に設置されている。統合監視システム30とポンプ制御システム18とは広域ネットワーク32により接続されていて、統合監視システム30と各地におけるポンプ制御システム18との間で通信が可能になっている。広域ネットワーク32には、例えば電話回線等の公衆回線が用いられる。
【0023】本実施形態において特徴的な点は、ポンプ14の異常がポンプ制御システム18により検出された場合、ポンプ制御システム18から広域ネットワーク32を通じてポンプ14から遠隔して設置された統合監視システム30に異常信号を送信することにより、ポンプ14から遠隔した場所で各ポンプ14の異常を統合的に監視することである。さらに、異常検出前後におけるポンプ14の運転状態の検出値をポンプ制御システム18から広域ネットワーク32を通じて統合監視システム30に送信し、統合監視システム30は、送信された検出値に基づいてポンプ14の異常原因の診断を行い、診断結果を広域ネットワーク32を通じてポンプ制御システム18に送信することにより、ポンプ14から遠隔した場所で各ポンプ14の異常原因の調査及び調査結果の報告を行うことである。」
エ 「【0024】図2は、ポンプ制御システム18内で実行されるポンプ14の異常を検出するための異常検出ルーチンを示すフローチャートであり、このルーチンは所定時間おきに繰り返される。異常検出ルーチンにおいては、まずステップ(以下Sと記述する)101が実行され、ポンプ14の運転状態を検出するための各センサ20~28の値がポンプ制御システム18に読み込まれる。次にS102に進み、各センサ20~28の値がポンプ制御システム18に記録される。
【0025】S103においては、各センサ20~28の値からポンプ14に異常が発生しているか否かを判定する。ポンプ14の異常の判定は、例えば各センサ20~28の値がそれぞれ規定値の範囲内にあるか否かによって行われ、1つでも規定値から外れたセンサの値があった場合にはポンプ14に異常が発生したと判定する。規定値の範囲は、例えばポンプ14の試運転時等の正常運転時の検出値に基づいて実験的に決定される。
【0026】S103においてNOの場合は、S104に進み、統合監視システム30にポンプ14の正常状態における各センサ20~28のデータを送信するか否かを判定する。ただし、各センサ20~28のデータを送信するタイミングについては、任意に設定が可能である。
【0027】S104においてNOの場合は、本ルーチンの実行を終了する。一方、S104においてYESの場合は、S105に進み、ポンプ制御システム18から広域ネットワーク32を通じて統合監視システム30に、ポンプ14の正常状態における各センサ20~28のデータを送信し、本ルーチンの実行を終了する。送信されたポンプ14の正常状態における各センサ20~28のデータは統合監視システム30に記録される。」
オ 「【0030】図3は、統合監視システム30内で実行されるポンプの異常診断を行うための異常診断ルーチンを示すフローチャートであり、このルーチンは異常信号が統合監視システム30に送信された場合に実行される。異常診断ルーチンにおいては、まずS201が実行され、各地のプラントに設置されたポンプ14の中から、異常が発生したプラント及びポンプ14及び異常現象を特定する。次にS202に進み、異常が発生したポンプ14について、ポンプ14の異常検出前後における各センサ20~28のデータが、ポンプ制御システム18から広域ネットワーク32を通じて統合監視システム30に送信される。S203では、異常検出前後における各センサ20~28のデータが統合監視システム30に記録される。
【0031】S204においては、異常検出前後における各センサ20~28のデータを解析し、ポンプ14の異常診断を行う。S205においては、統合監視システム30から広域ネットワーク32を通じてポンプ制御システム18に診断結果を送信する。次にS206に進み、診断結果を統合監視システム30に記録し、本ルーチンの実行を終了する。」
カ 「【0032】次にS204において実行されるポンプ14の異常診断について詳細に説明する。
【0033】図4は、正常運転時と異常検出前後における各センサ20~28の検出値を時系列に表示した1例を示す図であり、統合監視システム30にこのような図が表示される。正常運転時における各センサ20~28の検出値は、異常検出ルーチンのS105において統合監視システム30に読み込まれている。一方、異常検出前後における各センサ20~28の検出値は、異常診断ルーチンのS202において統合監視システム30に読み込まれている。図4において今回の場合は、異常発生時において加速度センサ24の値が急増している。また、このとき液面センサ26の検出値も規定値以下となっている。なお、圧力センサ20と流量センサ22の検出値はほぼ一定である。
【0034】図5は、ポンプ14の定格回転速度での流量-揚程特性、図6は、流量-モータ電流特性、図7は、流量-振動加速度特性を示す図であり、統合監視システム30にこのような図が表示される。ここで揚程は、圧力センサ20の検出値を用いて求められる。図5~7の実線は試運転時等の正常運転時の特性を示し、○は異常検出後の各センサ20~28の検出値による値を示す。図5~7において、異常検出後の流量-揚程特性及び流量-モータ電流特性は、正常運転時の特性から所定の範囲内にあるが、流量-振動加速度特性が正常運転時の特性から大きく外れている。」
キ 「【図1】
[図:0001402115000003.jpg]
【図2】
[図:0001402115000004.jpg]
【図4】
[図:0001402115000005.jpg]
」
(2)そうすると、甲2には以下の発明が記載されていると認められる(以下「甲2発明」という。)。
「ポンプ14の吐出管36上に、吐出圧力を検出する圧力センサ20、ポンプの吐出流量を検出する流量センサ22が設置され、
ポンプ制御システム18より圧力センサ20や流量センサ22の検出値を統合監視システム30に送信し、
統合監視システム30は、受信した圧力センサ20や流量センサ22の検出値を表示させる
液化ガス用ポンプの異常診断装置。」
3 甲3について
(1)甲3には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は回転機械の管理システム及び記憶装置に係り、更に詳しくは、資源の有効活用に寄与することのできる回転機械の管理システム及び記憶装置に関する。」
イ 「【0008】
【発明の目的】
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、ポンプ等の回転機械の運用管理や解体管理等の各種管理をより確実且つ詳細に行い、資源の有効活用に寄与することができる回転機械の管理システム及び記憶装置を提供することにある。」
ウ 「【0019】
なお、本明細書における「稼動データ」とは、回転機械の運転中に検出可能なデータを意味し、回転機械の駆動電流値、温度値、振動周波数、振幅等を例示できる。」
エ 「【0023】
図1には、本実施形態に係る管理システムの概略構成図が示されている。この図において、管理システム10は、回転機械としてのポンプPの運用管理や解体管理等を総合的に行うシステムであって、所定の通信ネットワーク12により相互に接続されたクライアント側装置13及びサーバ14により構成されている。
【0024】
前記通信ネットワーク12は、インターネット通信網により構成されているが、これに限定されず、その他の有線通信網、無線通信網、衛星通信網等、クライアント側装置13及びサーバ14との間で、双方向にデータ通信を可能とする構成であれば何でもよい。
【0025】
前記クライアント側装置13は、実際に稼動しているポンプPに付設される使用者用装置16と、ポンプPのリース業者やポンプPの解体等を行う廃棄物処理業者等が利用する非使用者用装置17とからなる。
【0026】
前記使用者用装置16は、所定の電源Eから実際に稼動しているポンプPに供給される電流値を検出するカレントトランス(CT)19と、ポンプPの回転部分の温度値を検出する温度センサ20と、ポンプPに一体的に取り付けられ、所定のデータが記憶されるICタグ等の記憶装置22と、この記憶装置22に対してデータの読み取り及び書き込みを行うリーダライタ23と、リーダライタ23に対してデータの伝送を可能に接続されるとともに、サーバ14との間で双方向のデータ通信を行うパーソナルコンピュータ(PC)等の端末25とを備えて構成されている。
【0027】
前記記憶装置22は、図2に示されるように、それと一体化されたポンプPに関する各種データを記憶するデータ記憶部27と、このデータ記憶部27でのデータの記憶の際に用いられるタイマー部28と、前記リーダライタ23に対してデータ記憶部27のデータを送受信する送受信部29と、以上の各部27~29の起動電流を供給する電源部31とを備えている。
【0028】
前記データ記憶部27は、前記カレントトランス19及び温度センサ20からの検出値(稼動データ)をデジタル変換して読み込むようになっており、図3に示されるように、製品番号等の不変情報が記憶される固定情報記憶手段33と、カレントトランス19及び温度センサ20の各検出値に基づく各種データ及びメンテナンス情報等の可変情報が記憶される可変情報記憶手段34とにより構成されている。なお、これら各手段33、34で記憶された情報は、その一部若しくは全部が、リーダライタ23及び端末25を介して前記サーバ14(図1参照)に適宜送信され、当該サーバ14に設けられた後述の個体情報データベース51Bに記憶されるようになっている。
【0029】
前記固定情報記憶手段33は、前記記憶装置22に一体化されたポンプPの銘板情報が記憶されており、当該銘板情報は、ポンプPの製造時に記憶され、以降の書き換えを不能としている。本実施形態における銘板情報は、特に限定されるものではないが、機種名、製造番号、製造年月日、商品コード、定格(流量、圧力、回転速度、容量、電圧等)、電流レンジ、及び温度レンジである。
【0030】
前記可変情報記憶手段34は、ポンプPの累積運転時間を記憶する運転時間記憶部36と、ポンプPの起動回数を記憶する起動回数記憶部37と、ポンプPの稼動データである電流値を記憶する電流記憶部38と、ポンプPの稼動データである回転部分の温度値を記憶する温度記憶部39と、前記電流値の大きさ毎にポンプPの運転時間を累積して記憶する電流別累積時間記憶部42と、前記温度値の大きさ毎にポンプPの運転時間を累積して記憶する温度別累積時間記憶部43と、ポンプPのメンテナンス情報を記憶するメンテナンス情報記憶部44とにより構成されている。」
オ 「【0035】
前記電流別累積時間記憶部42は、図4に示されるように、電流値を所定の範囲毎に区分し、当該範囲毎にポンプPの運転時間を累積するようになっている。つまり、電流別累積時間記憶部42では、カレントトランス19で検出された電流値が、どの範囲に入っているかを判断するとともに、当該電流値が検出された時間をタイマー部28で計測し、当該計測時間が、該当する電流値の範囲の運転時間に加算されるようになっている。なお、特に限定されるものではないが、本実施形態では、ポンプPに供給される許容電流値を100パーセントとして、20パーセント毎五範囲に分け、これら範囲毎にポンプPの運転時間を累積するようになっている。」
カ 「【0040】
前記サーバ14は、図1に示されるように、ポンプPに関する所定の情報を形成する情報形成手段50と、各ポンプPの情報等が記憶されたデータベース部51と、クライアント側装置13の端末25、25と情報形成手段50との間でデータの送受信を行う送受信部52とを備えて構成されている。
【0041】
前記情報形成手段50は、稼動中のポンプPに対する各種診断を行い、当該診断情報をクライアント側装置13に提供する診断部54と、使用済みポンプPの解体時に必要な解体情報を形成してクライアント側装置13に提供する解体情報形成部55と、前記データベース部51に記憶された各ポンプPの個体情報の書き換え及び抽出を行う個体情報書換抽出手段56とを備えて構成されている。
【0042】
前記診断部54は、使用者用装置16に付設されたポンプP(以下、「使用ポンプP」と称する。)の運転状態を診断する運転状態診断機能58と、使用ポンプPの運転効率を診断する運転効率診断機能59とを備え、これら各診断機能58、59を総合的に利用した使用ポンプPの故障診断を行えるようになっている。
【0043】
前記運転状態診断機能58は、使用ポンプPの稼動データとなる電流値及び温度値の関係から正常運転か異常運転を判断し、異常運転であれば、その原因となる故障箇所や現象を限定するように機能する。ここでは、前記データベース部51を構成する診断用データベース51Aに記憶された図5(A)のグラフ61及び同(B)のテーブル62が用いられる。これらグラフ61及びテーブル62は、過去の実績や経験等に基づいて設定された経験的データであるが、クライアント側装置13で経時的に発生する使用ポンプPのデータを反映して、逐次更新するようにしてもよい。
【0044】
ここで、グラフ61は、横軸を電流とする一方、縦軸を温度とし、原点から単調に増加する二本の比例直線L1、L2を基準にして領域A~Eを区分するものである。前記領域Aは、比例直線L1、L2の間に位置し、且つ、電流値i、温度値t以下となる領域であり、この領域Aの範囲内に、使用ポンプPの電流値及び温度値が存在するときには正常運転状態と判断される。なお、判断対象となる電流値及び温度値は、使用者用装置16の電流記憶部38及び温度記憶部39(図3参照)のデータが、定期的或いは不定期的にサーバ14にアップロードされることで得られる。
一方、領域A以外の領域B~Eは、異常運転状態を表す領域である。本実施形態の領域Bは、グラフ61上で領域Aよりも上方に位置し、且つ、電流値i以下となる領域であり、領域Cは、グラフ61上で領域Aよりも下方に位置し、且つ、電流値i以下となる領域である。また、領域Dは、電流値iを超え、温度値t以下の領域であり、領域Eは、電流値i、温度値tをそれぞれ超える領域である。」
キ 「【0046】
前記運転効率診断機能59は、前記電流別累積時間記憶部42に記憶されたデータ(図3及び図4参照)を利用して、使用ポンプPの運転効率の良否を判断するようになっている。なお、以下においては、電流別累積時間記憶部42に記憶されたデータを「効率診断用データ」と称することとする。
【0047】
すなわち、運転効率診断機能59は、一定期間における使用ポンプPの効率診断用データが、前記診断用データベース51Aに予め記憶された最適曲線L3(図6の実線部分参照)と対比され、これによって、使用ポンプPの運転効率の過不足が判断されるようになっている。ここでの最適曲線L3は、過去の実績や経験等に基づいて制定された経験的データであって、使用ポンプPの最適運転パターンを表す基本データである。この基本データは、診断用データベース51Aに固定的に記憶されるようにしてもよいが、クライアント側装置13で経時的に発生する前記効率診断用データに基づき、逐次更新することが好ましい。このようにすると、前記基本データの精度を一層高めることが可能となる。なお、この基本データは、今後のポンプ開発に際しての仕様の設定や運転試験に活用することも可能である。」
ク 「【0050】
以上の各診断結果は、クライアント側装置13の端末25からの要求に応じて、当該クライアント側装置13に提供される。これにより、例えば、ポンプPのユーザにとっては、当該ポンプPの故障状態の早期発見や故障箇所の限定に有用となる他、前記運転効率診断機能59により提供される運転効率の診断結果から、ポンプPの運転状態の見直しや、ポンプPの交換或いは増設時におけるポンプPの選択に有用となる。また、リース業者にとっては、ポンプPの使用中の故障やその傾向を早期に発見することができ、しかも、前記運転効率の診断結果により、リース期間中のポンプPの運転状況を把握することができるため、次回リース時におけるポンプPのメンテナンスを効率的に行える。」
ケ 「【図1】
[図:0001402115000006.jpg]
【図5】
[図:0001402115000007.jpg]
」
(2)そうすると、甲3には以下の発明が記載されていると認められる(以下「甲3発明」という。)。
「端末25に通信ネットワーク12を介して接続されたサーバ14と、
サーバ14に設けられ、端末25から使用者用装置16において稼働されているポンプPの運転の情報をサーバ14で受信するとともに、サーバ14から端末25に稼働されているポンプPの運転の診断結果の情報を送信する送受信部52と、
サーバ14に設けられ、使用者用装置16に関する情報が記憶されたデータベース部51と、
サーバ14に設けられ、使用者用装置16から送信される情報とデータベース部51に記憶された情報とを比較する運転状態診断機能58及び運転効率診断機能59と、
通信ネットワーク12に接続されたクライアント側装置13と、
を備えた管理システム10。」
4 甲4について
(1)甲4には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポンプの状況を管理するポンプの管理装置、複数のポンプの運転を管理するシステム、ポンプの運転管理システムの設計装置に関する。」
イ 「【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ポンプの劣化具合を予測し、ポンプが故障する前に、ポンプの保守点検を行う警報を出す、ポンプの運転管理装置に関する。更に、施設内の全てのポンプを集中的に管理するポンプの運転管理システムに関する。加えて、そのポンプの使用状態に応じたポンプの運転管理装置を設計することができる、ポンプ運転管理システムの設計装置に関する。」
ウ 「【0015】また、本発明は、複数のポンプの運転を管理するポンプの運転管理システムであって、前記複数のポンプの各々を駆動させているモータの電力値を測定する複数の電力測定手段と、前記複数の電力測定手段で測定された電力値の各々を管理する複数の電力モニター手段と、前記複数の電力モニター手段で測定された複数の電力値を、ネットワーク手段を介して管理する集中管理手段とを含む構成を採用することにより課題を解決している。」
エ 「【0020】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を、図を用いて説明する。図1は、本発明によるポンプ12の運転管理装置10の構成図である。本発明によるポンプ12の運転管理装置10は、ポンプ12を駆動させているモータの電力値を測定する電力測定手段14と、電力測定手段14で測定された電力値を管理する電力モニター手段16とから構成されている。詳しくは、電力モニター手段16が、測定された電力値を記憶する電力値記憶手段18、モータが故障する前に示す電力値の変動パターンである基準電力値を入力する基準値入力手段20、測定された電力値と入力された基準電力値とを比較する電力値比較手段22、及び電力値比較手段22で得られた情報を表示する表示手段24によって構成されている。」
オ 「【0035】次に、図2を用いて上述したポンプ12の運転管理装置10の構成を利用したポンプ12の運転管理システム60の説明をする。このポンプ12の運転管理システム60は、上述のポンプ12の運転管理装置10を、複数のポンプ12ごとに装備する。この複数の運転管理装置10ごとに送信手段26を新たに加えて、ポンプ12の運転管理を集中的に行う。以後、従来の電力モニター手段16に、新たに送信手段26が追加された電力モニター手段16aと、電力測定手段から構成される装置を、第1運転管理装置10aと呼ぶ。」
カ 「【0036】本発明によるポンプ12の運転管理システム60は、図3に示すように、ネットワーク手段50に接続された複数の第1運転管理装置10aによって、複数のポンプ12各々を駆動させているモータの電力値を管理している。この集中管理は、ネットワーク手段50に接続された集中管理手段28で行っている。
【0037】複数の第1運転管理装置10a各々の、電力値比較手段22で得られた情報は、各々の電力モニター手段16aに新たに加えられた送信手段26により、集中管理手段28に送信されている。このネットワーク手段50を介して集中管理手段28に送信されるデータは、複数のポンプ12各々を駆動させているモータの電力値、及び警報データ等である。」
キ 「【0041】集中管理手段28は、送信手段26によって送信された情報を受信する受信手段30、受信手段30によって受信した情報を記録する情報記憶手段32、及び受信手段30によって受信した情報を表示する情報表示手段34により構成されている。詳しくは、ポンプ12を集中管理する、集中管理ソフトが組み込まれたコンピュータによって実現している。このコンピュータは、コンピュータ本体と、ディスプレー、キーボード、マウス等から構成されている。
【0042】受信手段30は、複数の送信手段26から送信された情報を受信する手段である。この受信手段30は、ネットワーク手段50に対応したものがコンピュータ本体に設けられている。情報記憶手段32は、コンピュータ本体に組み込まれた集中管理ソフトで実現している。情報表示手段34は、上述のディスプレーによって実現している。
【0043】このポンプ12を集中管理する、集中管理ソフトで実現される内容を説明する。集中管理ソフトは、複数のポンプ12の運転状況を集中的に管理し、運転状況を記憶している。詳しくは、複数のポンプ12の運転状況をコンピュータのハードディスク等に記憶している。また、警報を発するポンプ12が存在したならば、ディスプレー上で視覚的に、及びコンピュータ本体が発する警告音によって、管理者にポンプ12の異常を報知する機能を有する。」
ク 「【0048】また、第1運転管理装置10aの電力モニター手段16aを構成している送信手段26に、新たに受信機能を備えた送受信手段38aが、電力モニター手段16bに設けられる。この送受信手段38aは、接続されるネットワーク手段50の種類に合わせて設けられる。例えば、ネットワーク手段50がLAN回線ならば、送受信手段38aもLAN回線に対応した、コネクタ手段、及びネットワークと送受信を行う手段によって実現される。同様に、集中管理手段28を構成している受信手段30に、新たに送信機能を備えた送受信手段38bが、集中管理手段28に設けられる。以後、電力モニター手段16bと、電力測定手段から構成される装置を、第2運転管理装置10bと呼ぶ。」
ケ 「【0049】次に、図5を用いて、ポンプ12の運転管理システム60における他の例を説明する。この他の例は、第1運転管理装置10aが接続されたポンプ12と、第2運転管理装置10bが接続されたポンプ12とが並存しているポンプ12の運転管理システム60である。この運転管理システム60においては、集中管理手段28が、第2運転管理装置10bに制御命令を出すことで、第2運転管理装置10bが接続されたポンプ12を遠隔操作することができるポンプ12の運転管理システム60である。
【0050】第2運転管理装置10bを構成している電力モニター手段16bにおいては、電力測定手段により測定された電力値を用いてポンプ12の運転状況を管理している。ポンプ12に異常が発生した場合、電力値比較手段22によりポンプ12の異常状態が認識される。ポンプ12の異常状態をCPUがコントロール手段36に伝達する。コントロール手段36により発せられた命令によりインバータ手段40が、ポンプ12を駆動させているモータの回転数を制御する。また、このポンプ12の異常状態は、CPUが送信手段26を用いて集中管理手段28に送信される。集中管理手段28は、ポンプ12に異常が起きたことを記録し、管理者に異常が起きたことを報知する。
【0051】また、集中管理手段28が設置されている場所にいる管理者が、第2運転管理装置10bを備えるポンプ12を遠隔操作することも可能である。例えば、第2運転管理装置10bを備えるポンプ12に異常が起きたならば、集中管理手段28が設置されている場所にいる管理者が、ポンプ12の回転数の制御等を行うことも可能である。」
コ 「【図2】
[図:0001402115000008.jpg]
【図3】
[図:0001402115000009.jpg]
【図4】
[図:0001402115000010.jpg]
【図5】
[図:0001402115000011.jpg]
」
(2)そうすると、甲4には以下の発明が記載されていると認められる(以下「甲4発明」という。)
「第2運転管理装置10bにネットワーク手段50を介して接続された集中管理手段28と、
集中管理手段28に設けられ、第2運転管理装置10bからポンプ12を駆動させるモータの電力値等を集中管理手段28で受信するとともに、集中管理手段28から第2運転管理装置10bに制御命令を出す送受信手段38bと、
集中管理手段28に設けられ、ポンプ12の運転状況を記憶する情報記憶手段32と、
電力モニター手段16b及び電力測定装置14から構成される第2運転管理装置10bと、を備え、
電力値比較手段22の結果に基づき、集中管理手段28から遠隔操作により、第2運転管理装置10bのポンプ12の回転数の制御等を行うことができる
運転管理システム60。」
5 甲5について
甲5には、以下の事項が記載されている。
(1)「3.1 IEEEの近距離ワイヤレス通信の標準化活動
IEEEは1998年に802.15 Working Group for Wireless Personal Area Networks というワーキンググループ(http://www.ieee802.org/15)を設立して、WPANの標準化を行って、すでに承認された規格は次のものがある:
(1)IEEE 802.15.1 中転送速度PANのBluetooth規格。
(2)IEEE 802.15.2 Bluetoothと無線LANとの共存。
(3)IEEE 802.15.3 高転送速度PANのWiMediaの規格、おもに画像信号などマルチメディア信号を目的にする。
(4)IEEE 802.15.4 低転送速度PAN規格、おもにワイヤレスセンサーネットワークをターゲットにする。」(386頁左欄23~33行)
(2)「3.2 Bluetoothへの挑戦
Bluetoothは1998年 Ericssonなど5社が母体になって成立したBluetooth Special Issue Group(http://www.bluetooth.com)により提案した近距離ワイヤレス通信プロトコルである。2002年4月にIEEEへ提案して、IEEE最初の近距離ワイヤレス規格 IEEE 802.15.1として承認された。
Bluetoothはほとんどの国で無線免許なしで利用できる2.4GHz 周波数帯を用いて、通信距離は数m~数十mで、1Mbpsの通信速度である。通信方式はFHSS(Frequency Hopping Spectrum Spread)を採用している。FHSSとは利用する周波数が固定ではなく、きわめて短かい時間ごとに一定のルールでホッピング(変更)を行う変調方式である。
2001年頃、BluetoothはIT業界で大きな話題になり、ワイヤレスセンサーネットワークへの適用を期待された。しかし、Bluetoothは当初期待された普及状況にはいたっていない。特にワイヤレスセンサーネットワークへの適用の実績はあまり多くはない。以下に考えられる理由を列挙する。
(1)前述したように、ワイヤレスセンサーネットワークのもっとも有効な省電力方法は、通信しない間にセンサーノードのスリープである。このため、スリープから立ち上げ時間ができるだけ短いことが望ましい。Bluetoothの周波数ホッピング変調方式によって、立ち上げたノードがネットワークへ参加するには、かなりの時間(3秒以上)を必要とする。頻繁にスリープ・立ち上げを繰り返すワイヤレス・センサーとって、電力消費の問題はとても深刻である。
(2)Bluetoothのピコネットは、1台のマスターノードに対し7つスレーブノードしか接続できない。これは、場合によっては数十ノード以上もの大きな構成も考えられるセンサーネットワークにとって、大きな制約となる。
(3)Bluetoothの通信プロトコルはかなり複雑であり、市場から期待される5ドル以下のチップコストは、なかなか達成されなかった。半導体メーカの努力によって、最近ようやくこの目標を実現されたとのことである。
ただし、これらの課題の解決を目指す動きもあり、特にピコネットのネットワーク容量の問題に対しては、ピコネット同士をリレー接続した「スキャターネット」を可能とするBluetooth 1.2が提案された。さらにBluetooth 1.2では、メッシュネット機能をオプション機能としてサポートする。また、よりコストダウンが可能な「Bluetooth Lite」も検討されているが、規格化までの見通しは不透明である。
最近製品化されたBluetoothの実績をみると、ワイヤレスセンサーではなく、ほとんどが近距離のオーディオ・アプリケーションである。このような近距離オーディオの分野でも、これから登場するUWBの脅威を受けることが予想される。」(386頁右欄12行~387頁左欄11行)
(3)「
[図:0001402115000012.jpg]
」(387頁右欄)
6 甲6について
甲6には、以下の事項が記載されている。(訳は、請求人が提出した甲6の翻訳文である。)
(1)「The Bluetooth transceiver is operating in the 2.4 GHz ISM band. This specification defines the requirements for a Bluetooth transceiver operating in this unlicensed band.」(19頁1~3行)
(Bluetooth トランシーバーは2.4 GHz ISM バンドで動作している。本仕様書は、この免許不要の帯域で動作するBluetooth トランシーバーに関する要件を定義するものである。)
(2)「The Bluetooth system is operating in the 2.4 GHz ISM (Industrial Scientific Medicine) band. In a vast majority of countries around the world the range of this frequency band is 2400 - 2483.5 MHz.」(20頁1~3行)
(Bluetooth システムは、2.4 GHz ISM(Industrial Scientific Medicine)バンドで動作する。世界の大半の国では、この周波数帯の範囲は2400~2483.5 MHz となっている。)
(3)「Bluetooth is a short-range radio link intended to replace the cable(s) connecting portable and/or fixed electronic devices. Key features are robustness, low complexity, low power, and low cost.」(41頁1~3行)
(Bluetooth は、携帯機器や固定電子機器を接続するケーブルの代わりになる、短距離無線通信技術である。主な特徴として、堅牢であること、複雑性が低いこと、消費電力が小さいこと、低コストであることが挙げられる。)
(4)「The Bluetooth system provides a point-to-point connection (only two Bluetooth units involved), or a point-to-multipoint connection, see Figure 1.2 on page 42. In the point-to-multipoint connection, the channel is shared among several Bluetooth units. Two or more units sharing the same channel form a piconet. One Bluetooth unit acts as the master of the piconet, whereas the other unit(s) acts as slave(s). Up to seven slaves can be active in the piconet. In addition, many more slaves can remain locked to the master in a so-called parked state.
These parked slaves cannot be active on the channel, but remain synchronized to the master. Both for active and parked slaves, the channel access is controlled by the master.」(41頁下から5行~42頁5行)
(Bluetooth システムでは、ポイントツーポイント接続(関与するBluetooth ユニットが2 台のみ)、またはポイントツーマルチポイント接続が可能である(42ページの図1.2を参照)。ポイントツーマルチポイント接続では、複数のBluetooth ユニットがチャンネルを共有する。同じチャンネルを共有する複数のユニットがピコネットを形成する。1台のBluetooth ユニットがピコネットのマスターとして機能し、他のユニットはスレーブとして機能する。ピコネットでは最大7台のスレーブをアクティブにできる。また、これより多くのスレーブがマスターにロックされた、いわゆる待機状態にしておくこともできる。これらの待機状態のスレーブは、チャンネル上でアクティブになることはできないが、マスターに同期したままとなる。アクティブスレーブ、待機スレーブともに、チャンネルへのアクセスはマスターによって制御される。)
(5)「
[図:0001402115000013.jpg]
」(42頁)
(図1.2:単一スレーブ運用(a)、マルチスレーブ運用(b)、スキャッターネット運用(c)のピコネット)
(6)「The data on the piconet channel is conveyed in packets. The general packet format is shown in Figure 4.1 on page 47. Each packet consists of 3 entities : the access code, the header, and the payload. In the figure, the number of bits per entity is indicated. The access code and header are of fixed size : 72 bits and 54 bits respectively. The payload can range from zero to a maximum of 2745 bits. Different packet types have been defined.」(47頁13~19行)
(ピコネットチャンネルのデータは、パケットで伝達される。一般的なパケット形式を47ページの図4.1に示している。各パケットは、アクセスコード、ヘッダー、ペイロードの3つの要素で構成されている。図中では、各要素のビット数を示している。アクセスコードとヘッダーはそれぞれ、72ビットと54ビットの固定サイズである。ペイロードは0から最大2745ビットの範囲に収まる。さまざまなタイプのパケットが定義されている。)
(7)「
[図:0001402115000014.jpg]
」(47頁)
(図4.1:標準的なパケット形式)
(8)「The header contains link control (LC) information and consists of 6 fields:
・ AM_ADDR: 3- bit active member address
・ TYPE: 4-bit type code
・ FLOW: 1-bit flow control
・ ARQN: 1-bit acknowledge indication
・ SEQN: 1-bit sequence number
・ HEC: 8-bit header error check
The total header, including the HEC, consists of 18 bits, see Figure 4.5 on page 51, and is encoded with a rate 1/3 FEC (not shown but described in Section 5.1 on page 66) resulting in a 54-bit header. Note that the AM_ADDR and TYPE fields are sent with their LSB first. The function of the different fields will be explained next.」(51頁2~13行)
(ヘッダーにはリンク制御(LC)情報が格納されており、以下の6つのフィールドで構成される。
・ AM_ADDR:3ビットのアクティブメンバーアドレス
・ TYPE:4ビットのタイプコード
・ FLOW:1ビットのフロー制御
・ ARQN:1ビットの確認応答表示
・ SEQN:1ビットのシーケンス番号
・ HEC:8ビットのヘッダーエラーチェック
HEC を含むヘッダー全体は18ビットで構成され(51ページの図4.5を参照)、レート1/3FEC(ここでは図示していないが、66ページの5.1項で説明)で符号化され、54ビットのヘッダーとなる。なお、AM_ADDR フィールドとTYPE フィールドはLSB を先頭にして送信される。各フィールドの機能については、次に説明する。)
(9)「
[図:0001402115000015.jpg]
」(51頁)
(図4.5:ヘッダー形式)
(10)「The AM_ADDR represents a member address and is used to distinguish between the active members participating on the piconet. In a piconet, one or more slaves are connected to a single master. To identify each slave separately, each slave is assigned a temporary 3-bit address to be used when it is active. Packets exchanged between the master and the slave all carry the AM_ADDR of this slave; that is, the AM_ADDR of the slave is used in both master-to-slave packets and in the slave-to-master packets.」(51頁15~21行)
(AM_ADDR はメンバーアドレスを表し、ピコネットに参加しているアクティブメンバーを区別するために使用される。ピコネットでは、1つのマスターに1つ以上のスレーブが接続される。各スレーブを個別に識別するために、各スレーブにはアクティブ時に使用される一時的な3ビットアドレスが割り当てられる。マスターとスレーブ間で交換されるパケットは、すべてこのスレーブのAM_ADDR を運ぶ。つまり、スレーブのAM_ADDR は、マスターからスレーブに送信されるパケットとスレーブからマスターに送信されるパケットの両方で使用される。)
7 甲7について
甲7には、以下の事項が記載されている。
(1)「(3)LANの規格
現在利用されているLANには多くの規格があり、その多くがIEEE802委員会によって標準化されている。IEEE802委員会とは、175か国36万人以上が参加する世界最大の学会IEEE(米国電気電子技術者協会)が1980年2月にLAN及びMAN(Metropolitan Area Network)の標準化を目的に設けた委員会である。委員会は約20のグループに分かれ、上位インターフェイス、論理リンク制御、音声/データ統合などについて討議するグループの他にアクセス制御方式別にグループが存在する。表1に代表的なグループを示す。」(3頁下から6行~4頁2行)
(2)「
[図:0001402115000016.jpg]
」(4頁)
(3)「(1)無線LANとは
無線LANとは、有線ケーブルの代わりに、電波を利用することでパソコン同士を接続し、LANを構築しようとするものである。最近のノートパソコンは、無線LAN機能が標準装備されているものが多く、無線LANの普及は急速に拡大している。現在では、企業や学校のみならず、一般家庭においても広く利用されるようになっており、喫茶店やファーストフード店、空港、駅、ホテルなどの公衆エリアにアクセスポイントを設置して無線LAN環境を提供する公衆無線LANサービスも行われている。 (2)無線LANの周波数
1987年に米国のFCC(Federal Communications Commission:米国連邦通信委員会)の規則改定により、それまで軍用にしか認められていなかった「スペクトラム拡散」方式による通信が開放され、民間でもISMバンド(Industry Science Medical band 米国では900MHz帯、2.4GHz帯、5.7GHz帯)を利用してスペクトラム拡散通信を行うことが可能になった。この周波数帯では、無線局免許を不要としており、多くのベンダーが競って製品を作るようになった。また、当初は、数100kbps程度と低速であったが、高速化の需要と共に、製品の本格的普及のため標準化の重要性が認識されるようになり、1990年からIEEE802委員会のIEEE802.11グループにおいて2.4GHz帯と赤外線(Ir:Infrared)の無線LANに関する標準化が正式にスタートした。
日本における無線LANに適用される周波数帯は、2.4GHz帯、5GHz帯であり、その他に準ミリ波帯(19GHz帯、25GHz帯及び27GHz帯)を利用するものなどがある。また、赤外線やレーザーを用いるものもある。
日本における無線LAN(2.4GHz帯及び5GHz帯)の周波数割当状況について図1及び図2に示す。」(4頁下から8行~5頁15行)
(4)「
[図:0001402115000017.jpg]
」(5頁)
(5)「エ 電波干渉の影響
現在、無線LANで用いられている2.4GHz帯では、無線局免許を不要としている。この周波数帯は、工業用や医療用の高周波機器や家庭用の電子レンジなどにも利用されており、同じ場所で同時に利用すれば干渉が起こる。また、アクセスポイント同士及び無線LAN端末同士でも干渉が起こる。」(9頁7~11行)
(6)「
[図:0001402115000018.jpg]
」(11頁)
8 甲8について
甲8には、以下の事項が記載されている。(訳は、請求人が提出した甲8の翻訳文である。)
(1)「7.1 MAC frame formats
Each frame consists of the following basic components:
a) A MAC header, which comprises frame control, duration, address, and sequence control information, and, for QoS data frames, QoS control information;
b) A variable length frame body, which contains information specific to the frame type and subtype;
c) A FCS, which contains an IEEE 32-bit CRC.」(59頁8~13行)
(7.1 MAC フレームの形式
各フレームは、以下の基本構成要素で構成されています。
a) フレーム制御、存続期間、アドレス、順序制御情報、およびQoS 制御情報(QoS データフレームの場合)から成るMAC ヘッダー。
b) フレームのタイプとサブタイプに固有の情報を格納した可変長フレーム本体部。
c) IEEE32 ビットCRC を格納したFCS。)
(2)「7.1.2 General frame format
The MAC frame format comprises a set of fields that occur in a fixed order in all frames. Figure 7-1 depicts the general MAC frame format. The first three fields (Frame Control, Duration/ID, and Address 1) and the last field (FCS) in Figure 7-1 constitute the minimal frame format and are present in all frames, including reserved types and subtypes. The fields Address 2, Address 3, Sequence Control, Address 4, QoS Control, and Frame Body are present only in certain frame types and subtypes.」(60頁13~18行)
(7.1.2 一般的なフレームの形式
MAC フレームは、すべてのフレームで一定の順序で出現する一連のフィールドで構成されています。図7-1 に、一般的なMAC フレームの形式を示しています。図7-1 の最初の3つのフィールド(Frame Control、Duration/ID、Address 1)と最後のフィールド(FCS) は、最小限のフレーム形式を構成し、これらのフィールドは、予約されたタイプおよびサブタイプを含むすべてのフレームに存在します。Address 2、Address 3、Sequence Control、Address 4、QoS Control、Frame Body の各フィールドは、特定のフレームタイプおよびフレームサブタイプにのみ存在します。)
(3)「
[図:0001402115000019.jpg]
」(60頁)
(図7-1 - MAC フレームの形式)
(4)「7.1.3.3 Address fields
There are four address fields in the MAC frame format. These fields are used to indicate the basic service set identification (BSSID), source address (SA), destination address (DA), transmitting STA address (TA), and receiving STA address (RA). Certain frames may not contain some of the address fields.」(65頁1~4行)
(7.1.3.3 アドレスフィールド
MAC フレームには、4つのアドレスフィールドがあります。これらのフィールドは、基本サービスセット識別(BSSID)、送信元アドレス(SA)、宛先アドレス(DA)、送信STAアドレス(TA)、受信STAアドレス(RA)を示すために使用されます。フレームによっては、アドレスフィールドの一部が含まれない場合があります。)
(5)「7.2.2 Data frames
The frame format for a data frame is dependent on the QoS subfield of the Subtype field and is as defined in Figure 7-17.
Data frames with a value of 1 in the QoS subfield of the Subtype field are collectively referred to as QoS data frames. Each of these data subtypes contains QoS in their names, and this frame format is distinguished by the presence of a QoS Control field in the MAC header. Data frames with a value of 0 in the QoS subfield of the Subtype field do not have the QoS Control field.」(77頁5~11行)
(7.2.2 データフレーム
データフレームのフレーム形式は、Subtype フィールドのQoS サブフィールドによって決まり、図7-17の定義に従います。
Subtype フィールドのQoS サブフィールドの値が1のデータフレームは、QoS データフレームと総称されます。これらの各データサブタイプの名前には、QoS が含まれており、このフレーム形式は、MACヘッダーのQoS Control フィールドの有無によって区別されます。Subtype フィールドのQoS サブフィールドの値が0のデータフレームは、QoS Control フィールドを持ちません。)
(6)「
[図:0001402115000020.jpg]
」(77頁)
(図7-17 - データフレーム)
(7)「The content of the address fields of data frames are dependent upon the values of the To DS and From DS fields in the Frame Control field and are defined in Table 7-7. Where the content of a field is shown as not applicable (N/A), the field is omitted. Note that Address 1 always holds the receiver address of the intended receiver (or, in the case of multicast frames, receivers), and that Address 2 always holds the address of the STA that is transmitting the frame.」(77頁20~24行)
(データフレームのアドレスフィールドの内容は、Frame Control フィールドのTo DS フィールドとFrom DS フィールドの値によって決まり、表7-7 の定義に従います。フィールドの内容が「該当なし(N/A)」と表示される場合、そのフィールドは省略されます。なお、Address 1 には、意図された受信機(マルチキャストフレームの場合は複数の受信機)の受信機アドレスが常に保持され、Address 2 には、フレームを送信しているSTAのアドレスが常に保持されます。)
(8)「
[図:0001402115000021.jpg]
」(77頁)
(表 7-7 - アドレスフィールドの内容)
9 甲9について
甲9には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はRF信号を利用した無線式の照明システムに関するものである。」
(2)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら両方の従来例とも赤外線での通信であり、同一空間で見通しの良い位置でしか制御が難しいという欠点があり、制御する空間が入り組んでいたり、照明器具とセンサ部(リモコン送信部を含む)の設置位置が赤外線のビーム角から外れるようなときには送信が不確実になる恐れが多分にあった。これらを改善しようとすると赤外線送信パワーを増加したり、ビーム角を広げる必要があり、消費電力の増加、赤外線LEDの個数増加によるコストアップという欠点を有していた。
【0005】本発明はこれらの課題を解決し、一つの空間だけでなく他の空間も含めて確実に制御できる電波(RF信号)による無線式の照明システムを提供することを目的とする。」
(3)「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の照明システムによれば、図1に示すように、ランプ10と、点灯状態信号に基づいてランプ10の点灯を制御する負荷制御部11と、所定の点灯状態の制御指令または設定情報に基づいて前記点灯状態信号を送出する点灯制御部12を備え、この点灯制御部12に無線信号の送受信部13を備えて、点灯状態の制御指令又は現在の点灯状態又は前記所定の設定情報を伝達可能とした照明器具1と、無線信号の送受信部51を備えて点灯状態の制御指令又は前記所定の設定情報を点灯制御部12に送信できるコントローラ5とから構成され、無線信号の送信時に送信元の識別符号および/または相手先の識別符号をあわせて送信することを特徴とするものである。」
(4)「【0007】
【発明の実施の形態】図1に実施形態1を示す。図1の照明システムは1台の照明器具1と1台のコントローラ5によって構成される。照明器具1はRF受信部13で受信したRF信号に基づき点灯状態を決定する点灯制御部12とこの決定した点灯状態に基づきランプ10を制御する負荷制御部11を有する。コントローラ5は操作部52とRF送信部51を備え、ユーザの操作内容に基づくRF信号を送信する。コントローラ5には固有のID番号(IDT1)が設定されており、このID番号と操作内容のデータがRF信号として送信される。例えば、操作部52によって、ランプ10を点灯させる操作が行われた場合は、RF信号として、送信側のID(=IDT1)とランプ点灯を表すデータが送信される。照明器具1はこのランプ点灯のデータを受信すると、ランプ10が点灯状態になるように負荷制御を行う。また点灯を表すデータではなく、特定の操作があったという情報を送信するものとし、RF信号を受信した器具1がこの特定の操作の情報に基づいて、ランプ10を点灯させるという形でもよい。
【0008】この時、送信側IDは一つ一つのコントローラ5に固有の値として設定されており、同様のシステムが近傍(電波の届く範囲)に複数存在している場合であっても、個別のID番号の判別により、RF信号を送信したコントローラ5の特定が可能となる。照明器具1はRF信号の中に含まれる送信ID番号を識別することにより、同一システム内の(対となっている)コントローラ5のRF信号であるかを判断し、対であるコントローラ5からの信号である場合に、受信したデータに基づいて点灯状態を決定するようにする。このように、送信元のIDをRF信号に含めることにより、いくつかのシステムが近傍に混在していても誤動作なく点灯制御が可能である。」
(5)「【0118】
【発明の効果】本発明の照明システムによれば、点灯状態の制御指令又は現在の点灯状態又は設定情報をRF信号により伝送するようにしたので、従来の赤外線での通信を用いる照明システムに比べると、一つの空間だけでなく他の空間も含めて確実に制御あるいは設定ができ、信号送受信部の方向の設定も容易になり、器具あるいはコントローラなどの取り付けを容易にするという効果がある。」
(6)「【図1】
[図:0001402115000022.jpg]
」
10 甲10について
甲10には、以下の事項が記載されている。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用ロボット、特に、このロボットに連結されており、かつワイヤレスモードでロボット制御ユニットと通信するよう設計されたポータブル端末を備えたロボットの可能な適用形態に関する。」
(2)「【0002】
「ワイヤレス」とは、本明細書においては、好ましくは無線周波数によるが、また別の周波数フィールド内の超音波又は赤外線放射又は放射によることもある、電磁波による信号のワイヤレス通信を伴う通信を指す。」
(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記を鑑み、十分に安全な状況において、ポータブル端末によるプログラミング及び手動制御を伴う、容易かつ用途の広い活動を可能にする、上記に示した工業用ロボットを実施することを目的とする。本発明は、さらに、プログラミング活動の安全レベルを向上させ、容易、安価かつ信頼できる製造を確実にする、上記に示したロボットを実施することを目的とする。」
(4)「【0014】
ユニット2及び端末3は、ワイヤレスモードで互いに通信するよう構成されており、このため、各アンテナ2a,3dを有する、無電で信号を交換する手段を備える。この手段は、数メートルの有効範囲を有し、したがってユニット2に対して端末3の動作フィールド内となるような大きさに作られる。知られている技術により、信号の空気伝播をなし得る。本発明の好ましい実施形態においては、ユニット2と端末3との間のワイヤレス通信が、ワイファイ(Wi-fi)システムという名で知られている、(さらなる詳細についてこの全体が示されている)標準IEEE802.111に定義されている伝送システムを使用して、無線周波数によって行われる。」
(5)「【0025】
端末3を使用してロボットをプログラミングすることを可能にするために、ユニット2及び端末3の両方に、対応する一義的な識別コードIDが付けられる。それぞれのIDコードは、IPネットワークアドレス(MACアドレスもあり得るが)及び一連の番号SNによって表されている、2つの部から構成されることが好ましい。
したがって、
ID_CU=IP_CU+SN_CU
ID_TP=IP_TP+SN_TPとなり、
ここで、
ID_CU及びID_TPは、それぞれ、ユニット2及び端末3の識別コードを示し、
IP_CU及びSN_CUは、それぞれ、ユニット2のIPアドレス及び一義的な一連の番号SNを示し、
IP_TP及びSN_TPは、それぞれ、端末3のIPアドレス及び一義的な一連の番号SNを示している。」
(6)「【0037】
このステップ中、ID_TPコードを記憶した後、ユニット2の制御システム20は、端末3の制御システム30に自身の識別コードID_CUを通信するが、この間、待ちステータスに切り換える。このため(図3も参照)、プロセッサ20dは、メモリ20gの内容を読み取り、回路20eにより結合命令と共にワイヤレスモードで関連情報を伝送する(前記伝送は、システム20が現在端末3の「識別情報」を認識していることにより、なし得る)。他方、ID_CUアドレスとの結合命令は、プロセッサ30dにより回路30eによって受信され、次いで、プロセッサ30dは、現在空領域がある、メモリ30hの予め定義されたレジスタ内に関連情報を格納する。前記手順は、論理結合が発生したことを確認する情報についての、ユニット2と端末3との間のワイヤレス交換で終了することが好ましい。
【0038】
たとえば図7に示されているように、ユニット2及び端末3は、互いに結合される。即ち、これらのそれぞれが、他方の識別コードIDを認識しており、したがって、ロボットプログラミングモードで動作することが可能となり、端末3は、ワイヤレスモードで、マニピュレータ1の動きの命令、及び安全装置(即ち、非常停止装置ES及びイネーブル装置ED)に関する必要なステータス情報を伝送し得る。」
(7)「【図1】
[図:0001402115000023.jpg]
【図2】
[図:0001402115000024.jpg]
」
第6 当審の判断
1 無効理由1及び2について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明1とを、その有する機能に照らして対比すると、甲1発明1の「モータ部33A、33B」は、本件発明1の「モータ」に相当し、以下同様に、「ポンプ30A、30B」は「ポンプ」に、「吐出配管40」は「吐出管」に、「圧力検知器48」は「圧力検出器」に、「制御の情報」は「制御情報」に、「制御手段65」は「制御回路部」に、「ポンプ装置10」は「ポンプ装置」に、「送受信部87」は「通信部」に、「表示部81」は「表示部」に、「制御の指示」は「制御指示」に、「入力部85」は「入力部」に、「携帯端末80」は「通信装置」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明1の「赤外線を用いた無線通信」と、本件発明1の「2.4GHz以上2.485GHz以下のISM帯の周波数帯の電波を用いた無線通信」は、「無線通信」の限りで共通する。
よって、本件発明1と甲1発明1とは、以下の一致点1で一致し、相違点1で相違する。
(一致点1)
「モータにより駆動されるポンプ、このポンプの吐出管上に設けられた圧力検出器、並びに、前記圧力検出器で検出された前記ポンプの吐出圧力に基づいて前記モータを制御するとともに、前記モータの制御情報及び前記圧力検出器で検出された前記ポンプの吐出圧力を送信する制御回路部を有するポンプ装置と、
前記制御回路部と無線通信を行う通信部、前記通信部を介して前記制御回路部から受信した、前記モータの制御情報及び前記圧力検出器で検出された前記吐出圧力を表示する表示部、並びに、前記モータの制御指示を入力する入力部を有し、前記モータの制御情報及び前記圧力検出器で検出された前記吐出圧力を、前記制御回路部を介して前記無線通信により受信するとともに、前記入力部により入力された前記制御指示を前記無線通信により前記制御回路部へ送信可能に形成された通信装置と、を備え、
前記制御回路部は、前記通信装置からの前記制御指示を受信するとともに、前記制御指示に基づいて前記モータを制御する給水装置。」
(相違点1)
本件発明1においては、ポンプ装置に「他のポンプ装置と差別化可能な識別信号」が設定されるとともに、制御回路部は「識別信号を送信する」「(ただし、該識別信号について、通信規格に規定された送信元の識別子を除く)」ものであり、また、通信装置は、「前記制御回路部と2.4GHz以上2.485GHz以下のISM帯の周波数帯の電波を用いた無線通信を行なう」通信部を有し、「前記識別信号」を前記制御回路部を介して受信するものであるのに対し、甲1発明1においては、ポンプ装置10に、他のポンプ装置と差別化可能な識別信号が設定されているか明らかでなく、そのため、ポンプ装置10の制御手段65が識別信号を送信することも明らかでなく、また、無線通信を行う携帯装置80は「赤外線を用いた無線通信を行う」送受信部87を有するものであり、更に、携帯装置80が前記識別信号について前記制御手段65を介して受信するか明らかでない点。
イ 判断
(ア)そこで、前記相違点1について検討する。
甲1の段落0032に「携帯端末80に制御手段65との交信プログラム等が記憶されていない場合であっても、ポンプ装置10側に設置した二次元コード63から交信プログラムを入手でき、従って携帯端末80に交信プログラムがないまま現地に行っても、ポンプ装置10の運転操作が行える。」と記載され、段落0038に「具体例2は前記図示して説明した実施形態に相当する構成のポンプ装置10であり、携帯端末80として、赤外線通信機能を備え多くの情報を送受信できる携帯端末80を用いたものである。この場合でも予め携帯端末80はポンプ装置10に貼り付けられた二次元コード63から交信プログラムを読み込む。」と記載され、また、段落0039に「携帯端末80の記憶部83に記憶されている交信プログラムを起動すると、ポンプ装置10の制御手段65と自動的に通信を行い、現在のポンプ装置10の運転状況(前記ポンプ吐出圧力やポンプ回転数等)をこの携帯端末80の表示部81に表示するように動作する。」と記載され、更に、段落0040に「各種データや各種プログラムは、二次元コード63から読み込んだURLによってメンテナンス会社等のウエブサイトからポンプ装置10の機種、各携帯端末80や通信規格に対応したものをダウンロードすることができ、携帯端末80を選ばずにポンプ装置10の制御に用いることができる。また1台の携帯端末80に複数のデータとプログラムを記憶させておくことで、1台の携帯端末80で複数のポンプ装置10(現場)に対応することができる。」と記載されるように、甲1には、携帯端末80を利用してポンプ装置10を制御することに関し、それぞれのポンプ装置10を制御するために、制御する対象のポンプ装置10に対応した交信プログラムをダウンロードし、携帯端末80に記憶された交信プログラムが起動されることで対応した当該ポンプ装置10と通信することが記載されているものの、ポンプ装置10が特定のポンプ装置であることを識別信号により識別することについては、何ら記載されていない。
また、甲1の明細書等の記載全体を参照しても、甲1には、ポンプ装置10が有する制御手段65が、ポンプ装置に設定された、他のポンプ装置と差別化可能な識別信号(ただし、該識別信号について、通信規格に規定された送信元の識別子を除く)を送信し、携帯端末80がこの識別信号を受信することについて、何ら記載されていない。
したがって、甲1発明1は、ポンプ装置に「他のポンプ装置と差別化可能な識別信号」が設定されるとともに、制御回路部は「識別信号を送信する」「(ただし、該識別信号について、通信規格に規定された送信元の識別子を除く)」ものでなく、また、通信装置は、「前記識別信号」を前記制御回路部を介して受信するものではない。
したがって、前記相違点1は、実質的な相違点であるといえる。
よって、本件発明1は、甲1発明1であるとはいえない。
(イ)また、前記(ア)で示した、甲1の段落0032、0038~0040の記載によれば、甲1で示される携帯端末80は、赤外線通信機能を備え、それぞれのポンプ装置10を制御するために、制御する対象のポンプ装置10に対応した交信プログラムをダウンロードし、携帯端末80に記憶された交信プログラムが起動されることで当該ポンプ装置10と通信するものであり、つまり、制御する対象のポンプ装置10に対応した、通信するポンプ装置10を定める交信プログラムの起動により、携帯端末80は、交信プログラムが対応するポンプ装置10と一対一の赤外線通信を行うものである。そして、甲1発明1は、携帯端末80が制御する対象のポンプ装置10に対応した交信プログラムを入手し、赤外線通信により交信プログラムを利用してポンプ装置10を運転操作することに特徴を有したものであり、それを前提としたものであると理解されるところ、そのような甲1発明1において、通信するポンプ装置10を定める交信プログラムを利用しないように変更する動機はない。そして、赤外線通信によりこのような交信プログラムを利用することで、制御する対象のポンプ装置10の運転制御は足りるから、甲1発明1において、更に、識別信号を利用する必要性は、特段見当たらない。
そうすると、甲1発明1において、ポンプ装置に「他のポンプ装置と差別化可能な識別信号」が設定されるとともに、制御回路部は「識別信号を送信する」「(ただし、該識別信号について、通信規格に規定された送信元の識別子を除く)」ものであり、また、通信装置は、「前記識別信号」を前記制御回路部を介して受信するように構成することには至らない。
(ウ)さらに、甲9には、RF信号を利用した無線式の照明システムにおいて、無線信号の送信時に送信元の識別符号および/または相手先の識別符号をあわせて送信することが、また、甲10には、ワイヤレスモードでロボット制御ユニットと通信するよう設計されたポータブル端末を備えたロボットにおいて、端末3を使用してロボットをプログラミングすることを可能にするために、ユニット2及び端末3の両方に、対応する一義的な識別コードIDが付けられることが記載されている(例えば、前者は、前記第5の9を、また、後者は、前記第5の10を参照。)ところ、甲9及び甲10に示される事項は、ポンプ装置である甲1発明1と技術分野が大きく異なるものであり、甲1発明1において、これらの事項を適用する動機はない。
また、令和5年2月17日付け審判事件弁駁書で請求人が主張するように、「一対多の通信においては、単一の通信機器側で受信した情報がいずれの通信機器からの情報であるかを特定する必要があるため、それぞれの通信機器から送信される信号に、送信元である通信機器を他の通信機器から差別化し、特定の通信機器であると識別するために使用される信号を含めることは、当業者にとって周知技術である」(9頁2~6行)としても、前記(イ)で検討したように、甲1で示される携帯端末80は、それぞれのポンプ装置10を制御するために、制御する対象のポンプ装置10に対応した交信プログラムをダウンロードしたものであり、通信するポンプ装置10を定める当該交信プログラムによって制御する対象のポンプ装置10を制御し対応するものであるから、甲1発明1において、更に、前記周知技術を適用する動機はない。
したがって、甲1発明1において、前記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者であっても容易になし得たことではない。
(エ)請求人の主張について
請求人は、令和5年2月17日付け審判事件弁駁書で、「本件訂正発明1(審決注:前記第3で示した「本件発明1」のこと。以下、同様。)において、「識別信号」から「通信規格に規定された送信元の識別子」が除外されたとしても、本件訂正発明1における「識別信号」は、「通信規格に規定された送信元の識別子」と同様に、ポンプ装置10を制御するに当たり、それぞれの送信元であるポンプ装置を他のポンプ装置から差別化し、特定のポンプ装置であると識別するために使用されるものに変わりはないから、通信規格に規定されている送信元を識別する情報と差異がないものである。」(8頁16~22行)と主張する。
しかしながら、本件発明1の「識別信号」は、「ポンプ装置に設定された、他のポンプ装置と差別化可能な識別信号」であり、また、「(ただし、該識別信号について、通信規格に規定された送信元の識別子を除く)」ものであるから、「通信規格に規定された送信元の識別子」でないことは、明らかである。
また、本件発明1の「識別信号」は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0065に「各ポンプ装置10の制御設定値や運転状況等の情報が通信部28から通信部47に送信される。また、ポンプ装置10の制御部25は、それぞれの識別番号等、他のポンプ装置10と差別化可能な信号も同時に発信する。この情報を通信装置40が受信すると、通信装置40は、インターネット回線100を介してサーバ101へ情報を送信する。」と記載されるように、ポンプ装置から通信装置へ送信されるだけでなく、通信装置からサーバにも送信されて用いることもできるものであると理解されることから、「通信規格に規定された送信元の識別子」と異なるものであることは明らかである。
以上によれば、前記請求人の主張は採用できない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明1ではなく、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当しない。
また、本件発明1は、甲1発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
(2)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲1発明2とをその有する機能に照らして対比すると、前記(1)アで示した点で相当し、共通するところ、更に、「2台」も「複数台」に含まれるものであるから、甲2発明2の「ポンプ30A、30Bを2台備える」は本件発明2の「ポンプを複数台備える」に相当する。
そうすると、前記(1)アで示した一致点1に加え、以下の点で一致し、前記相違点1で相違する。
(一致点2)
「前記ポンプ装置は、前記ポンプを複数備えること。」
イ 判断
前記(1)イ(ア)で検討したとおり、前記相違点1は、実質的な相違点であるといえる。
したがって、本件発明2は、甲1発明2であるとはいえない。
また、前記(1)イ(イ)、(ウ)で検討したとおりであるから、甲1発明2において、前記相違点1に係る本件発明2の構成とすることは、当業者であっても、容易になし得たものではない。
ウ 以上のとおりであるから、本件発明2は、甲1発明2ではなく、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当しない。
また、本件発明2は、甲1発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
(3)本件発明4について
ア 対比
本件発明4と甲1発明4とをその有する機能に照らして対比すると、前記(1)アで示した点で相当し、共通するところ、更に、甲1発明4の「ポンプ装置10を1台有する」は、本件発明4の「ポンプ装置を1台以上7台以下有する」と、「ポンプ装置を1台有する」点で一致する。
そうすると、前記(1)アで示した一致点1、相違点1に加え、以下の点で一致し、相違する。
(一致点3)
「前記ポンプ装置を1台有すること。」
(相違点2)
ポンプ装置について、本件発明4は、「7台以下有する」のに対し、甲1発明4は、7台以下有するか明らかでない点。
イ 判断
前記(1)イ(ア)で検討したとおり、前記相違点1は、実質的な相違点であるといえる。
したがって、本件発明1は、甲1発明4であるとはいえない。
また、前記相違点1は、前記(1)イ(イ)、(ウ)で検討したとおりであるから、甲1発明4において、前記相違点1に係る本件発明4の構成とすることは、当業者であっても、容易になし得たものではない。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明4は、当業者であっても、容易に発明をすることができたものではない。
ウ 以上のとおりであるから、本件発明4は、甲1発明4ではなく、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当しない。
また、本件発明4は、甲1発明4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
(4)まとめ
以上によれば、本件発明1、2、4についての特許は、無効理由1、2によって無効とすることはできない。
2 無効理由3について
(1)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と甲1発明3とを、その有する機能に照らして対比すると、前記1(1)アで示した点で相当し、共通する。
そうすると、前記1(1)アで示した一致点1で一致し、相違点1に加え、以下の点で相違する。
(相違点3)
本件発明3は、「前記ポンプ装置は、前記ポンプの吐出管上に設けられた流量検出器をさらに備え、前記制御回路部により前記流量検出器で検出された流量を前記通信装置に送信可能に形成され、前記通信装置は、受信した前記流量検出器で検出された流量を前記表示部に表示させる」事項を備えたものであるのに対し、甲1発明3は、前記ポンプ装置10は、前記ポンプ30A、30Bの吐出配管40に設けられたフロースイッチ49A、49Bをさらに備えたものであるものの、前記事項を備えていない点。
イ 判断
前記相違点1は、前記1(1)イ(イ)、(ウ)で検討したとおりであるから、甲1発明3において、前記相違点1に係る本件発明3の構成とすることは、当業者であっても、容易になし得たものではない。
したがって、相違点3について検討するまでもなく、本件発明3は、当業者であっても、容易に発明をすることができたものではない。
ウ 以上のとおりであるから、本件発明3は、甲1発明3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
(2)まとめ
以上によれば、本件発明3についての特許は、無効理由3によって無効とすることはできない。
3 無効理由4について
(1)本件発明5について
ア 対比
本件発明5と甲1発明5とをその有する機能に照らして対比すると、前記1(1)アで示した点で相当し、共通するところ、更に、甲1発明5の「サービスウエブサイト」は、本件発明5の「サーバ」に相当する。
そうすると、前記1(1)ア、1(2)ア、1(3)ア及び2(1)アで示した一致点1~3、相違点1~3に加え、以下の点で一致し、相違する。
(一致点4)
「前記給水装置と、前記通信装置にネットワーク接続されたサーバと、を備える給水システム。」
(相違点4)
本件発明5は「前記通信装置から少なくとも前記給水装置により実行された運転の情報を前記サーバで受信するとともに、少なくとも前記給水装置に実行させる運転の情報を前記サーバから前記通信装置に送信する通信手段と、前記サーバに設けられ、前記給水装置に関する情報が記憶された記憶手段と、前記給水装置から送信される前記情報と前記記憶手段に記憶された情報とを比較する比較手段と、この比較手段の比較結果に基づいて、少なくとも前記給水装置の運転の情報を変更可能な変更手段と、を備える」ものであるのに対し、甲1発明5はそのようなものを備えるか明らかでない点。
イ 判断
前記相違点1は、前記1(1)イ(イ)、(ウ)で検討したとおりであるから、甲1発明5において、前記相違点1に係る本件発明5の構成とすることは、当業者であっても、容易になし得たものではない。
したがって、相違点2~4について検討するまでもなく、本件発明5は、当業者であっても、容易に発明をすることができたものではない。
ウ 以上のとおりであるから、本件発明5は、甲1発明5に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
(2)まとめ
以上によれば、本件発明5についての特許は、無効理由4によって無効とすることはできない。
4 無効理由5について
(1)無効理由5は、前記第4の1(5)アに示したように、本件特許の請求項1において、「前記通信部を介して前記モータの制御情報及び前記制御回路部から受信した前記圧力検出器で検出された前記吐出圧力を表示する表示部」という事項が記載されていたことにより記載が不明確であった。
本件訂正後の本件発明1は、前記第2の1(3)に示されるように、前記事項が「前記通信部を介して前記制御回路部から受信した、前記モータの制御情報及び前記圧力検出器で検出された前記吐出圧力を表示する表示部」と訂正されたから、発明は明確となり、前記第4の1(5)アに示した無効理由は解消している。また、請求項1の記載を引用する請求項2~5についても同様である。
(2)無効理由5は、前記第4の1(5)イに示したように、本件特許の請求項3において、「前記前記流量検出器」という事項が記載されていたことにより記載が不明確であった。
本件訂正後の本件発明3は、前記第2の1(5)に示されるように、前記事項が「前記流量検出器」と訂正されたから、発明は明確となり、前記第4の1(5)イに示した無効理由は解消している。また、請求項3の記載を引用する請求項5についても同様である。
(3)以上のとおりであるから、無効理由5は理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由及び証拠方法によって、本件発明1~5についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-800106