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特許異議申立

2021-700642

車両用の画像表示機能付きミラー

審判番号
2021-700642
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-112668外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6806848
請求日
2021年07月06日
審決日
2022年09月29日
公報発行日
2022年12月28日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1652. -YAA(B60R)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6806848号発明「車両用の画像表示機能付きミラー」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第6806848号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4~9〕、3、10~20について訂正することを認める。
特許第6806848号の請求項1、2、9に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 24項目
理 由

第1 手続の経緯

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特許第6806848号(以下「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願は、平成27年6月24日に出願した特願2015-126431号の一部を、令和1年6月18日に新たな特許出願としたものであって、令和2年12月8日にその特許権の設定登録がされ、令和3年1月6日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対して特許異議申立人田中清明(以下「申立人」という。)により請求項1、2、9に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、その手続の主な経緯は、次のとおりである。

令和3年 7月 6日 :特許異議の申立て

同年 9月16日付け:取消理由通知書

同年11月22日 :特許権者による意見書の提出
同年12月22日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和4年 3月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出

同年 5月 2日 :申立人による意見書の提出

第2 訂正の適否

1 訂正の内容

令和4年3月1日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~11について、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~20に記載されたとおりに訂正するというものであり、その訂正の内容は、次のとおりのものである。

(1)訂正事項1

本件訂正前の請求項1に記載の「車両のルームミラー」を、「リアガラスに強化ガラスが使用されている車両のルームミラー」に訂正する。(請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2及び9も同様である。)

(2)訂正事項2

本件訂正前の請求項1に記載の「直線偏光反射層または円偏光反射層」を「直線偏光反射層」に訂正する。(請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2及び9も同様である。)

(3)訂正事項3

本件訂正前の請求項1の記載を引用する請求項3の記載を独立形式にあらため、新たな請求項3として、「車両のルームミラーである画像表示機能付きミラーであって、/ハーフミラーおよび画像表示装置を含み、/前記画像表示装置は直線偏光を出射して画像を形成し、/前記ハーフミラーは高Re位相差膜および反射層を含み、/前記画像表示機能付きミラーにおいて、前記高Re位相差膜、前記反射層、および前記画像表示装置がこの順に配置されており、/前記高Re位相差膜は5000nm以上の正面位相差を有し、/前記反射層は円偏光反射層である、画像表示機能付きミラー。」(「/」は改行を表す。以下同じ。)に訂正する。

(4)訂正事項4

本件訂正前の請求項9に記載の「請求項1~8のいずれか一項に記載の画像表示機能付きミラー。」を、「請求項1または2に記載の画像表示機能付きミラー。」に訂正する。

(5)訂正事項5

本件訂正前の請求項1の記載を引用する請求項10の記載を独立形式にあらため、新たな請求項10として、「車両のルームミラーである画像表示機能付きミラーであって、/ハーフミラーおよび画像表示装置を含み、/前記画像表示装置は直線偏光を出射して画像を形成し、/前記ハーフミラーは高Re位相差膜および反射層を含み、/前記画像表示機能付きミラーにおいて、前記高Re位相差膜、前記反射層、および前記画像表示装置がこの順に配置されており、/前記高Re位相差膜は5000nm以上の正面位相差を有し、/前記反射層は直線偏光反射層または円偏光反射層であり、/前記ハーフミラーが前面板を含み、/前記前面板が2枚のガラス板と前記2枚のガラス板の間の中間層とを含む合わせガラスであり、/前記中間層が前記高Re位相差膜を含む、画像表示機能付きミラー。」に訂正する。

(6)訂正事項6

本件訂正前の請求項1の記載を引用する請求項11の記載を独立形式にあらため、新たな請求項11として、「車両のルームミラーである画像表示機能付きミラーであって、/ハーフミラーおよび画像表示装置を含み、/前記画像表示装置は直線偏光を出射して画像を形成し、/前記ハーフミラーは高Re位相差膜および反射層を含み、/前記画像表示機能付きミラーにおいて、前記高Re位相差膜、前記反射層、および前記画像表示装置がこの順に配置されており、/前記高Re位相差膜は5000nm以上の正面位相差を有し、/前記反射層は直線偏光反射層または円偏光反射層であり、/前記ハーフミラーが2枚のガラス板と前記2枚のガラス板の間の中間層とを含む合わせガラスであり、/前記中間層が前記高Re位相差膜と前記反射層とを含む、画像表示機能付きミラー。」に訂正する。

(7)訂正事項7

訂正事項3に伴って、本件訂正前の請求項3又はこれを引用する請求項4~8のいずれか一項に記載の画像表示機能付きミラーの一部を、新たな請求項12として、「前記正面位相差が7000nm以上である請求項3~8のいずれか一項に記載の画像表示機能付きミラー。」に訂正する。

(8)訂正事項8

訂正事項3及び7に伴って、本件訂正前の請求項3又はこれを引用する請求項4~8のいずれか一項に記載の画像表示機能付きミラーの一部を、新たな請求項13として、「前記ハーフミラーが前面板を含み、/前記前面板、前記高Re位相差膜および前記反射層をこの順に含む請求項3~8、12のいずれか一項に記載の画像表示機能付きミラー。」に訂正する。

(9)訂正事項9

訂正事項5及び6に伴って、本件訂正前の請求項2の記載を引用する請求項10又は請求項11のいずれか一項に記載の画像表示機能付きミラーの一部を、新たな請求項14として、「前記正面位相差が7000nm以上である請求項10または11に記載の画像表示機能付きミラー。」に訂正する。

(10)訂正事項10

訂正事項5、6及び9に伴って、本件訂正前の請求項3の記載を引用する請求項10又は請求項11のいずれか一項に記載の画像表示機能付きミラーの一部を、新たな請求項15として、「前記反射層が円偏光反射層である請求項10、11、または14に記載の画像表示機能付きミラー。」と訂正する。

(11)訂正事項11

訂正事項5、6及び10に伴って、本件訂正前の請求項4の記載を引用する請求項10又は請求項11のいずれか一項に記載の画像表示機能付きミラーの一部を、新たな請求項16として、「前記円偏光反射板反射層がコレステリック液晶層を含む請求項15に記載の画像表示機能付きミラー。」に訂正する。

(12)訂正事項12

訂正事項5及び6及び11に伴って、本件訂正前の請求項5の記載を引用する請求項10又は請求項11のいずれか一項に記載の画像表示機能付きミラーの一部を、新たな請求項17として、「前記円偏光反射板反射層が3層以上のコレステリック液晶層を含む請求項16に記載の画像表示機能付きミラー。」に訂正する。

(13)訂正事項13

訂正事項5、6、11及び12に伴って、本件訂正前の請求項6を引用する請求項10又は請求項11のいずれか一項に記載の画像表示機能付きミラーの一部を、新たな請求項18として、「1/4波長板を含み、/前記ハーフミラーが、前記高Re位相差膜、前記円偏光反射層、前記1/4波長板をこの順に含む請求項16または17に記載の画像表示機能付きミラー。」に訂正する。

(14)訂正事項14

訂正事項5、6及び13に伴って、本件訂正前の請求項7を引用する請求項10又は請求項11のいずれか一項に記載の画像表示機能付きミラーの一部を、新たな請求項19として、「前記円偏光反射層と前記1/4波長板とが互いに直接接している請求項18に記載の画像表示機能付きミラー。」に訂正する。

(15)訂正事項15

訂正事項5、6及び10に伴って、本件訂正前の請求項8を引用する請求項10又は請求項11のいずれか一項に記載の画像表示機能付きミラーの一部を、新たな請求項20として「前記円偏光反射層が前記高Re位相差膜側から前記1/4波長板および直線偏光反射板をこの順に含む、請求項15に記載の画像表示機能付きミラー。」に訂正する。

2 一群の請求項

本件訂正は、本件訂正前の請求項2~11が請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、一群の請求項〔1~11〕について請求されたものである。

また、訂正後の請求項3、10~20に係る訂正について、特許権者は、当該訂正が認められるときに請求項1、2、4~9とは別の訂正単位として扱われることを求めている。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について

訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の記載事項を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的にするものである。

訂正事項1は、本件特許の明細書の段落【0028】の「そのため、特に上述のように作製した強化ガラスが使用されている車両のリアガラスなどを通過して画像表示機能付きミラー前面に入射する光は、ミラー反射像に上述のムラが生じると考えられる。」との記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。

また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2について

訂正事項2は、本件訂正前の請求項1の記載において択一的な記載の一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的にするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3について

訂正事項3は、本件訂正前の請求項3について請求項1との引用関係を解消することを目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)訂正事項4について

訂正事項4は、訂正事項1及び2に伴って、本件訂正前の請求項9の記載において択一的な記載の一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的にするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)訂正事項5について

訂正事項5は、本件訂正前の請求項1の記載を引用する請求項10について請求項1との引用関係を解消することを目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(6)訂正事項6について

訂正事項6は、本件訂正前の請求項1の記載を引用する請求項11について請求項1との引用関係を解消することを目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(7)訂正事項7について

訂正事項7は、訂正事項3に伴って引用関係を整理したものであるから、請求項間の引用関係を解消することを目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(8)訂正事項8について

訂正事項8は、訂正事項3及び7に伴って引用関係を整理したものであるから、請求項間の引用関係を解消することを目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(9)訂正事項9について

訂正事項9は、訂正事項5及び6に伴って引用関係を整理したものであるから、請求項間の引用関係を解消することを目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(10)訂正事項10について

訂正事項10は、訂正事項5、6及び9に伴って引用関係を整理したものであるから、請求項間の引用関係を解消することを目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(11)訂正事項11について

訂正事項11は、訂正事項5、6及び10に伴って引用関係を整理したものであるから、請求項間の引用関係を解消することを目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(12)訂正事項12について

訂正事項12は、訂正事項5、6及び11に伴って引用関係を整理したものであるから、請求項間の引用関係を解消することを目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(13)訂正事項13について

訂正事項13は、訂正事項5、6、11及び12に伴って引用関係を整理したものであるから、請求項間の引用関係を解消することを目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(14)訂正事項14について

訂正事項14は、訂正事項5、6及び13に伴って引用関係を整理したものであるから、請求項間の引用関係を解消することを目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(15)訂正事項15について

訂正事項15は、訂正事項5、6及び10に伴って引用関係を整理したものであるから、請求項間の引用関係を解消することを目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(16)独立特許要件について

訂正事項1、2及び4は、本件訂正前の請求項1、2及び9に対して異議申立てがされていることから、独立特許要件は課されない。

また、訂正事項3、5~15は、引用関係の解消を目的とするものに該当するから、独立特許要件は課されない。

4 小括

以上のとおりであるから、本件訂正の訂正事項1~15は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9号で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。

したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4~9〕、3、10~20について訂正することを認める。

第3 本件発明

上記第2のとおり、本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1~20に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明20」という。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲1~20に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
リアガラスに強化ガラスが使用されている車両のルームミラーである画像表示機能付きミラーであって、
ハーフミラーおよび画像表示装置を含み、
前記画像表示装置は直線偏光を出射して画像を形成し、
続きを表示(全73行)
前記ハーフミラーは高Re位相差膜および反射層を含み、
前記画像表示機能付きミラーにおいて、前記高Re位相差膜、前記反射層、および前記画像表示装置がこの順に配置されており、
前記高Re位相差膜は5000nm以上の正面位相差を有し、
前記反射層は直線偏光反射層である、画像表示機能付きミラー。
【請求項2】
前記正面位相差が7000nm以上である請求項1に記載の画像表示機能付きミラー。
【請求項3】
車両のルームミラーである画像表示機能付きミラーであって、
ハーフミラーおよび画像表示装置を含み、
前記画像表示装置は直線偏光を出射して画像を形成し、
前記ハーフミラーは高Re位相差膜および反射層を含み、
前記画像表示機能付きミラーにおいて、前記高Re位相差膜、前記反射層、および前記画像表示装置がこの順に配置されており、
前記高Re位相差膜は5000nm以上の正面位相差を有し、
前記反射層は円偏光反射層である、画像表示機能付きミラー。
【請求項4】
前記円偏光反射層がコレステリック液晶層を含む請求項3に記載の画像表示機能付きミラー。
【請求項5】
前記円偏光反射層が3層以上のコレステリック液晶層を含む請求項4に記載の画像表示機能付きミラー。
【請求項6】
1/4波長板を含み、
前記ハーフミラーが、前記高Re位相差膜、前記円偏光反射層、前記1/4波長板をこの順に含む請求項4または5に記載の画像表示機能付きミラー。
【請求項7】
前記円偏光反射層と前記1/4波長板とが互いに直接接している請求項6に記載の画像表示機能付きミラー。
【請求項8】
前記円偏光反射層が前記高Re位相差膜側から1/4波長板および直線偏光反射板をこの順に含む、請求項3に記載の画像表示機能付きミラー。
【請求項9】
前記ハーフミラーが前面板を含み、
前記前面板、前記高Re位相差膜および前記反射層をこの順に含む請求項1または2に記載の画像表示機能付きミラー。
【請求項10】
車両のルームミラーである画像表示機能付きミラーであって、
ハーフミラーおよび画像表示装置を含み、
前記画像表示装置は直線偏光を出射して画像を形成し、
前記ハーフミラーは高Re位相差膜および反射層を含み、
前記画像表示機能付きミラーにおいて、前記高Re位相差膜、前記反射層、および前記画像表示装置がこの順に配置されており、
前記高Re位相差膜は5000nm以上の正面位相差を有し、
前記反射層は直線偏光反射層または円偏光反射層であり、
前記ハーフミラーが前面板を含み、
前記前面板が2枚のガラス板と前記2枚のガラス板の間の中間層とを含む合わせガラスであり、
前記中間層が前記高Re位相差膜を含む、画像表示機能付きミラー。
【請求項11】
車両のルームミラーである画像表示機能付きミラーであって、
ハーフミラーおよび画像表示装置を含み、
前記画像表示装置は直線偏光を出射して画像を形成し、
前記ハーフミラーは高Re位相差膜および反射層を含み、
前記画像表示機能付きミラーにおいて、前記高Re位相差膜、前記反射層、および前記画像表示装置がこの順に配置されており、
前記高Re位相差膜は5000nm以上の正面位相差を有し、
前記反射層は直線偏光反射層または円偏光反射層であり、
前記ハーフミラーが2枚のガラス板と前記2枚のガラス板の間の中間層とを含む合わせガラスであり、
前記中間層が前記高Re位相差膜と前記反射層とを含む、画像表示機能付きミラー。
【請求項12】
前記正面位相差が7000nm以上である請求項3~8のいずれか一項に記載の画像表示機能付きミラー。
【請求項13】
前記ハーフミラーが前面板を含み、
前記前面板、前記高Re位相差膜および前記反射層をこの順に含む請求項3~8、12のいずれか一項に記載の画像表示機能付きミラー。
【請求項14】
前記正面位相差が7000nm以上である請求項10または11に記載の画像表示機能付きミラー。
【請求項15】
前記反射層が円偏光反射層である請求項10、11、または14に記載の画像表示機能付きミラー。
【請求項16】
前記円偏光反射層がコレステリック液晶層を含む請求項15に記載の画像表示機能付きミラー。
【請求項17】
前記円偏光反射層が3層以上のコレステリック液晶層を含む請求項16に記載の画像表示機能付きミラー。
【請求項18】
1/4波長板を含み、
前記ハーフミラーが、前記高Re位相差膜、前記円偏光反射層、前記1/4波長板をこの順に含む請求項16または17に記載の画像表示機能付きミラー。
【請求項19】
前記円偏光反射層と前記1/4波長板とが互いに直接接している請求項18に記載の画像表示機能付きミラー。
【請求項20】
前記円偏光反射層が前記高Re位相差膜側から1/4波長板および直線偏光反射板をこの順に含む、請求項15に記載の画像表示機能付きミラー。」

第4 取消理由の通知(決定の予告)について

1 取消理由の概要

当審が令和3年12月22日付けで特許権者に対して通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。

本件特許の請求項1、2、9に係る発明は、本件特許の原出願である特願2015-126431号の出願(以下「原出願」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、原出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

記

<刊行物等一覧>

甲第1号証 :特開2014-26058号公報
甲第2号証 :特開2014-112185号公報
甲第4号証 :特開2001-311907号公報
甲第5号証 :国際公開第2014/97591号
甲第6号証 :特開2009-192825号公報
甲第7号証 :特開平10-255978号公報
甲第8号証 :特開2015-102811号公報
甲第9号証 :特開2014-219632号公報
甲第11号証:特開平6-258634号公報
甲第13号証:特表2011-527773号公報

(甲第1号証~甲第13号証を、以下それぞれ「甲1」~「甲13」という。)

第5 刊行物の記載事項等

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1 甲1

(1)記載事項

甲1には図面とともに次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付加した。以下同様。)。

「【0007】
しかしながら、上述のような特性の反射型偏光板を用い、表示素子としてもミラーとしても機能する液晶表示素子では、使用上、問題が生じる懸念がある。それは、液晶表示素子の視認者がサングラス等の偏光メガネを着用して、この液晶表示素子を視認しようとする場合である。
【0008】
視認者が偏光メガネを着用した状態で上述の反射型偏光板を用いた液晶表示素子を観察すると、液晶表示素子における表示が見えなくなってしまうことや、逆に、ミラーとしての機能が消失してしまうことがあった。
続きを表示(全14行)
【0009】
サングラス等の偏光メガネは、眩しさやギラツキやにじみ等を抑えることのできるように、着用したときの上下方向(水平面と垂直な方向)の直線偏光のみが透過されるように構成されている。すなわち、サングラス等の偏光メガネは透過軸が上下方向となるように設定されている。
【0010】
その場合、上述の液晶表示素子の前面に配置される反射型偏光板の反射軸が上下方向(垂直方向)に設定されていると、反射型偏光板の透過軸は水平方向となり、結果として、偏光メガネの透過軸は、反射型偏光板の反射軸と平行になって、反射型偏光板の透過軸と直交することになる。そのため、反射型偏光板の透過軸と平行な方向に偏光した光として液晶表示素子から出射される画像光は、偏光メガネを透過できずに吸収されてしまう。その結果、液晶表示素子はミラーとしての機能は発揮できるが、表示素子としての機能は失われることになる。
【0011】
また、上述の液晶表示素子の前面に配置される反射型偏光板の反射軸が水平方向(上述した上下方向と垂直な方向)に設定されていると、反射型偏光板の透過軸は上下方向となり、結果として、偏光メガネの透過軸は、反射型偏光板の反射軸と直交し、反射型偏光板の透過軸とは平行な方向に設定されることになる。そのため、液晶表示素子において、反射型偏光板からの反射光は、偏光メガネを透過できずに吸収されてしまう。その結果、表示素子としての機能は発揮できるが、ミラーとしての機能は失われることになる。
【0012】
そこで、液晶表示素子では、反射型偏光板を用い、偏光メガネを着用した視認者に対してもミラーとしての機能と表示素子としての機能とを両立して発揮できる技術が求められている。
【0013】
本発明は、こうした点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、ミラーとしての機能と表示素子としての機能を両立できる液晶表示素子を提供することである。」
「【0024】
そして、本発明者は、開発された技術を、自動車等車両の運転席前方のフロントガラスの上部付近に配置されるバックミラー(ルームミラー等とも称されることがある。)に適用し、バックミラー機能と情報表示機能とを両立できる液晶表示素子を開発した。」
「【0040】
図5に示す、本発明の実施形態の液晶表示素子1は、図1に例示された液晶表示素子100と同様のバックミラー状の外観を有し、ミラー状態を示すミラー部を有する。そして、そのミラー部の一部で文字情報や画像表示ができるように構成されている。
【0041】
図5に示すように、本実施形態の液晶表示素子1は、バックライト2、偏光板3、液晶パネル4、F偏光板5、反射型偏光板6および位相差板7をこの順で積層して構成される。すなわち、液晶表示素子1は、液晶パネル4が、視認者(図示されない)の側となる前面側に配置されるF偏光板5と、背面側に配置されるR偏光板3とからなる一対の偏光板によって挟持される。液晶パネル4の背面側には、R偏光板3の背面側に、バックライト2が配置される。そして、F偏光板5の前面側には、反射型偏光板6が配置され、さらに、反射型偏光板6の前面側には、位相差板7が配置される。」
「【0048】
液晶パネル4の前面側にはF偏光板5が配置され、背面側にはR偏光板3が配置される。したがって、液晶パネル4の液晶層の上下の両外側には、一対の偏光板が配置される。そして、視認者側となる前面側のF偏光板5は、その透過軸が、液晶層が電圧の印加によって傾斜する傾斜方向と35°~55°の方向、好ましくは、45°の方向に配置される。より具体的には、F偏光板5は、その透過軸が、上述した液晶配向膜の配向処理の方向と35°~55°の方向、好ましくは、45°の方向に配置される。」
「【0050】
このとき、本実施形態の液晶表示素子1では、視認者側となる前面側のF偏光板5の透過軸が、視認者が着用するサングラス等の偏光メガネの透過軸と平行な方向に設定されることが好ましい。偏光メガネは、通常、上下方向(水平方向と垂直な方向)に透過軸の設定がなされており、F偏光板5の透過軸は、同様に、上下方向となるように設定されることが好ましい。その場合、R偏光板3の透過軸は、水平方向となるように設定され、液晶配向膜の配向処理方向は、上述したように、F偏光板5の透過軸の方向である上下方向を基準に、反時計回りに、例えば、45°となるように設定されることが好ましい。
【0051】
F偏光板5の前面側には、反射型偏光板6が配置される。反射型偏光板6は、上述したように、特定方向に偏光した光だけに限って透過させる透過軸を有し、その透過軸と直交する方向に偏光した光は反射させる偏光板である。本実施形態の液晶表示素子1の反射型偏光板6としては、市販されているものを用いることができ、例えば、住友スリーエム株式会社によるDBEF(登録商標)シリーズ等の反射型偏光板を用いることができる。」
「【0053】
反射型偏光板6の前面側には、位相差板7が配置される。位相差板7は、1/4波長板とすることが好ましい。位相差板7である1/4波長板の位相差方向に対応する延伸軸は、反射型偏光板6の透過軸の方向と35°~55°の方向、好ましくは、45°の方向となるように設定される。尚、延伸軸は、遅相軸あるいは進相軸と言い換えることができる。また、反射型偏光板6の偏光度が非常に高い場合、例えば偏光度が99%以上の場合、反射型偏光板6はF偏光板5の機能も兼ねることができ、F偏光板5を使用しなくてもよくなる。」
「【0057】
以上の構成を有する本実施形態の液晶表示素子1は、上下方向に透過軸を有するサングラス等の偏光メガネを着用した視認者が視認する場合、外部から液晶表示素子1に入射する光が、反射型偏光板6で反射されて、位相差板7である1/4波長板を2回透過することになる。その結果、液晶表示素子1から出射される光の偏光方向が、例えば、90°回転されて、視認者の着用するサングラス等の偏光メガネの透過軸と平行になり、偏光メガネを透過できるようになる。すなわち、液晶表示素子1は、偏光メガネを着用した視認者に対してもミラーとしての機能を発揮することができる。
【0058】
そして、液晶表示素子において表示を行うための、バックライト2等からの光は、位相差板7である1/4波長板を1回透過して出射されることになる。その結果、バックライト2等からの光は円偏光となり、視認者が偏光メガネを着用し
たとしても、その偏光メガネを透過することができる。すなわち、液晶表示素子1は、偏光メガネを着用した視認者に対しても表示素子としての機能を発揮することができる。」
「【0089】
次に、F偏光板1005の前面側に、反射型偏光板1006を配置した。反射型偏光板1006としては、住友スリーエム株式会社製のDBEF(登録商標)を用いた。
次いで、F偏光板1005の前面側に、位相差板1007として、JSR株式会社製のリタデーション(ΔnF(位相差板の屈折率異方性)×dF(位相差板の厚さ))=140nmのものを設置した。」

また、図5は、以下のとおりである。

【図5】

[図:0001391999000001.jpg]

(2)甲1発明

上記(1)より、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「 自動車等車両の運転席前方のフロントガラスの上部付近に配置されるバックミラー(ルームミラー等とも称されることがある。)に適用し、バックミラー機能と情報表示機能とを両立できる液晶表示素子1であって、
液晶表示素子1は、ミラー状態を示すミラー部を有し、そのミラー部の一部で文字情報や画像表示ができるように構成されており、
液晶表示素子1は、バックライト2、R偏光板3、液晶パネル4、F偏光板5、反射型偏光板6および位相差板7である1/4波長板をこの順で積層して構成されており、
視認者側となる前面側のF偏光板5は、その透過軸が、液晶層が電圧の印加によって傾斜する傾斜方向と45°の方向に配置され、
反射型偏光板6は、特定方向に偏光した光だけに限って透過させる透過軸を有し、その透過軸と直交する方向に偏光した光は反射させる偏光板である、
液晶表示素子1。」

2 甲2

(1)記載事項

甲2には図面とともに次の事項が記載されている。

「【0011】
[光学積層体]
本発明のインセルタッチパネル液晶素子の前面用の光学積層体は、位相差板、偏光膜及び透明基材をこの順に有し、さらに導電層を有してなる、光学積層体であって、前記透明基材は、前記偏光膜から出射される直線偏光を乱す光学異方性を有してなり、前記位相差板、偏光膜及び透明基材は、他の層を介さずに積層又は前記導電層のみを介して積層されてなり、当該光学積層体の厚みが32~200μmであるものである。以下、本発明の実施形態を説明する。」
「【0021】
<透明基材>
透明基材は、偏光膜から出射される直線偏光を乱す光学異方性を有するものである。当該機能を有する透明基材(光学異方性基材)は、偏光膜を保護する役割を果たしつつ、偏光サングラスを通しての視認性を良好にし得るものである。なお、偏光サングラスを通しての視認性が良好とは、液晶表示素子の前面に光学積層体を配置した際に、表示画面に色の異なるムラ(以下、「ニジムラ」ともいう)が観察されないことをいう。ニジムラは表示画面を斜めから観察したときに特に目立つものであるが、光学異方性表面保護フィルムを用いることにより、ニジムラを防止することができる。また、光学異方性表面保護フィルムを用いることにより、直線偏光と偏光サングラスの角度によって表示画面が視認できなくなることを防止することもできる。
従来の光学積層体は、図4に示すように、偏光膜を保護する役割のみでTAC(トリアセチルセルロース)フィルム7が用いられており、また、ニジムラを防止するために、カバーガラス上に光学異方性基材を接地していた。
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本発明の光学異方性基材は、偏光膜を保護する役割を果たしつつ、偏光サングラスを通して観察した際のニジムラを防止し得ることから、従来の構成と比べて、薄型化を図ることができるものである。
【0022】
光学異方性基材は、リタデーション値3000~30000nmのプラスチックフィルム又は1/4波長位相差のプラスチックフィルム等が挙げられる。
【0023】
リタデーション値3000~30000nmのプラスチックフィルム(以下、「高リタデーションフィルム」という場合もある)は、リタデーション値を3000nm以上とすることにより、偏光サングラスで観察した際に、液晶表示装置の表示画像にニジムラが生じることを防止している。また、リタデーション値が3000nm以上であると、光学異方性基材を原因とする反射光の干渉ムラ(光学異方性フィルム表面で反射する光と、光学異方性フィルムを通過して硬化層表面で反射する光とが干渉して生じる干渉ムラ)を防止できる点で好適である。なお、リタデーション値を上げすぎてもニジムラ改善効果の向上が見られなくなるため、リタデーション値を30000nm以下とすることにより、膜厚を必要以上に厚くすることを防止している。
高リタデーションフィルムのリタデーション値は、6000~30000nmであることが好ましい。
なお、上述したリタデーション値は、波長589.3nm前後の波長に対して満たしていることが好ましい。
【0024】
リタデーション値(nm)は、プラスチックフィルムの面内において最も屈折率が大きい方向(遅相軸方向)の屈折率(nx)と、遅相軸方向と直交する方向(進相軸方向)の屈折率(ny)と、プラスチックフィルムの厚み(d)(nm)とにより、以下の式によって表わされるものである。
リタデーション値(Re)=(nx-ny)×d
また、上記リタデーション値は、例えば、王子計測機器社製KOBRA-WRによって測定(測定角0°、測定波長589.3nm)することができる。
あるいは、上記リタデーション値は、二枚の偏光板を用いて、基材の配向軸方向(主軸の方向)を求め、配向軸方向に対して直交する二つの軸の屈折率(nx、ny)を、アッベ屈折率差計(アタゴ社製、NAR-AT)によって求め、大きい屈折率を示す軸を遅相軸と定義する。このようにして求めた屈折率差(nx-ny)に、電気マイクロメータ(アンリツ社製)を用いて測定した厚みを掛けて、リタデーション値が得られる。
なお、本発明では、上記nx-ny(以下、「Δn」という場合もある)は、ニジムラ抑制及び膜厚抑制の観点から0.05以上が好ましく、0.07以上がより好ましい。」
「【0068】
<カバーガラス、プラスチック板>
本発明の光学積層体は、光学異方性基材上にカバーガラス又はプラスチック板が設置されていることが好ましい。カバーガラス又はプラスチック板を設置することにより、光学積層体のコシ及び表面保護機能が向上する点で好適である。
カバーガラスは従来公知のものを用いることができ、厚みは0.3~1.0mmが好ましく、0.3~0.7mmがより好ましい。プラスチック板は従来公知のものを用いることができ、厚みは0.3~2.0mmが好ましく、0.3~1.0mmがより好ましい。
なお、カバーガラス又はプラスチック板を光学異方性基材上に設置する際は、接着層を介することが好ましい。接着層は、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ウレタン系接着剤等の接着剤と、必要に応じて用いる硬化剤等の添加剤を含む組成物から形成することができる。」

また、図1は、以下のとおりである。

【図1】

[図:0001391999000002.jpg]

(2)甲2技術事項

上記(1)より、甲2には、次の技術的事項(以下「甲2技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「 位相差板、偏光膜及び透明基材をこの順に有するインセルタッチパネル液晶素子の前面用の光学積層体であって、
偏光サングラスを通しての視認性を良好にし、また、直線偏光と偏光サングラスの角度によって表示画面が視認できなくなることを防止するために、偏光膜上に、偏光膜から出射される直線偏光を乱す光学異方性を有する透明基材(光学異方性基材)であるリタデーション値3000~30000nmのプラスチックフィルム(以下、「高リタデーションフィルム」という場合もある)又は1/4波長位相差のプラスチックフィルムを積層し、
高リタデーションフィルムのリタデーション値は、6000~30000nmであることが好ましく、
光学積層体のコシ及び表面保護機能が向上するために、光学異方性基材上にカバーガラス又はプラスチック板が設置されていることが好ましい、
光学積層体。」

3 甲4

甲4には次の事項が記載されている。

「【0020】ところで、虚像を観察する画像表示装置は、観察者の眼側から外光(例えば、太陽光)が入射すると、投写光学素子の光学作用により画像表示素子の近傍に光が集光する。この場合において、画像表示素子として液晶を用い、この画像表示素子に対して偏光板が使われているとき、偏光板を画像表示素子の近傍に配置すると、偏光板の近傍に集光点ができる。そして、眼側から入射する外光は無偏光の光であるので、偏光板による光の吸収があり、これにより偏光板が劣化するおそれがある。このため、偏光板を画像表示素子から離した位置(例えば、画像表示素子上の外光の強度に対して偏光板上の外光の強度が1/10以下になる位置)に配置するとよい。」

4.甲5

甲5には次の事項が記載されている。

「[0043] 一方、外光は無偏光の光である。外光は、表面17a側から調光フィルム17を透過して反射型偏光フィルム10bに入射する。「無偏光」とは、振動方向が規則的でない光であり、全ての方向に均一に振動する光のことである。全ての光が平均的に集まり、偏光に方向性がない。」

「[0153] ここで、外部から液晶表示装置400に照射された光(外光22)について考える。調光フィルム17が透明の状態では、外光22の一部は調光フィルム17と空気との界面で反射される。しかし、外光22の多くは、調光フィルム17に入射して、調光フィルム17を透過する。」

5 甲6

甲6には次の事項が記載されている。

「【0036】
先ず、無偏光に対する作用についは、トータルとしてニュートラル(無作用)であることが知られている。即ち、無偏光を位相差板に垂直入射させても、同位相差板から出射される光も無偏光である(理論的根拠については省略)。
そこで、本発明のケースでは、入力光に含まれる「完全偏光」に注目し、完全偏光に対する位相差板の偏光変換作用を考えれば十分であるということになる。」

6 甲7

甲7には図面とともに次の事項が記載されている。

「【0008】また、図6(b)からわかるように、有機ELディスプレイパネルの発光層103によって発せられるEL光を無偏光光とした場合、EL光は、1/4波長板106bに入射した後、無偏光のまま1/4波長板106bを通り抜けて偏光子106aに入射する。このとき偏光子106aに入射した光は、偏光子106aによって直線偏光成分Aだけが偏光子106aを通り抜けた後外部に放射される。」

また、図6は、以下のとおりである。

【図6】

[図:0001391999000003.jpg]

7 甲8

甲8には次の事項が記載されている。

「【0049】
位相差フィルム30は、入射した光の位相をλ/4だけ位相遅延させる。位相差フィルム30は、入射した直線偏光を円偏光に変換する役割を果たす。このとき、光源20から光は、無偏光のまま位相差フィルム30を透過して偏光フィルム40に入射し、当該偏光フィルム40で直線偏光に変換されて外部に出射する。」
「【0105】
即ち、変形例に係る発光装置2では、位相差フィルム30及び偏光フィルム40は、光源20から出射された無偏光の白色光を偏光させる。具体的には、変形例に係る発光装置2では、位相差フィルム30が光学フィルム10よりも光源20側に配置されるため、光源20から出射した光は、無偏光のまま位相差フィルム30を透過し、偏光フィルム40で直線偏光となる。偏光フィルム40は透過した光は、光学フィルム10に到達し、一部を光学フィルム10に吸収される。即ち、光学フィルム10は、位相差フィルム30及び偏光フィルム40により偏光に変換された白色光の一部を吸収するとともに、一部が吸収された白色光を外部に向けて透過させる。」

8 甲9

甲9には次の事項が記載されている。

「【背景技術】
【0002】
現在、大型テレビからパソコン、携帯電話やスマートフォン、カーナビ、家電器具等の表示装置として液晶表示装置が多く使用されているが、これらの液晶表示装置では少なくとも表面に偏光板が配置されているため、これから発する光は直線偏光となっている。強い光から目を保護するためにサングラスを着用することがあるが、このサングラスとして偏光サングラスを選定した場合、見る角度や首の傾け方によっては、液晶表示装置の画面が暗くなって文字や画像を認識できなくなる場合がある。特にカーナビ等を見る場合には、安全上重大な問題を引き起こす可能性があるため、これまでに多くの解決策が提案されてきた。最も一般的なものとしては、液晶表示装置の前面にλ/4波長板を配置して直線偏光を円偏光に返還する方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。λ/4波長板とは明示されていないが、それに近い位相差を有するフィルムを配置する特許も出願されている(例えば、特許文献3、4参照)。一方、位相差が4000nm以上、もしくは3000~30000と極端に大きいフィルムを使用するという提案もなされている(例えば、特許文献5、6参照)。また、複数の複屈折微粒子を分散状態で含む透光性樹脂層により偏光解消を図るという方法(例えば、特許文献7参照)や、特定の方法で作製された偏光解消性を有するポリアミド微粒子を用いた光学フィルムも提案されている(例えば、特許文献8、9参照)。」
「【0004】
特許文献1、2に示されるλ/4波長板というのは、ある波長の1/4の位相差を有する板(フィルム)を意味するものである。ここで位相差というのは、フィルムの面内方向の屈折率をnx、ny(nx>ny)、フィルムの厚さをdとした時に、屈折率差(Δn=nx-ny)と厚さdとの積(Re=Δn×d)で表される量であり、通常nmで表示される。λ/4波長板の位相差は、λを視感度曲線のピークである555nmとすると、約140nmとなる。この位相差を有するフィルムのx軸方向を偏光板の偏光軸に対して45度傾けて配置すると、偏光板を透過した直線偏光がλ/4波長板を透過することで円偏光に変換される。但し、これはある特定の波長の光に対してだけであって、その他の波長の光は長軸の向きがそれぞれ異なる楕円偏光となる。従って、λ/4波長板を透過した様々な波長の楕円偏光を含む光を偏光サングラスを通して観察すると、最も透過率の高い波長の光を感じるため画面が着色して見えることになる。また、液晶表示装置を斜めから見る場合には、面内方向の屈折率だけでなく厚さ方向の屈折率nZによる位相差も発生することになり、特に画面サイズが大きい場合には虹色の縞模様(着色ムラ)が見えたりすることもある。
【0005】
特許文献5、6では、可視光のそれぞれの色を示す波長の光が、極めて大きな位相差を有するフィルムを通過することで、楕円偏光の長軸の向きも様々な方位に分散されるために、着色を防ぐことが出来るとしている。しかし、この方法でもバックライトの光源の種類を問わず、あらゆる角度から見ても着色や着色ムラを完全になくすことは出来ない。また、このような大きな位相差を発現するフィルムを作ろうとすると、製造方法が特殊で困難であると共に、高価なものになる。」

9 甲11

(1)記載事項

甲11には図面とともに次の事項が記載されている。

「【0010】【実施例】つぎに、図面を参照しながら本発明を説明する。図1は本発明のTN型液晶表示デバイスを偏光めがねをかけて眺めたばあいの偏光めがねの吸収軸の方向などを示す分解説明図、図2は液晶セルに電界を印加したばあいに、位相差板から出た種々の波長の光の偏光めがねの透過率を表わすグラフである。
【0011】図1において、液晶層が2枚の透明基板に挾持された液晶セル1の両側にフロント側偏光板2およびリア側偏光板3が配設され、表示面側であるフロント側偏光板2の表面側にさらに位相差板4が配設されている。また裏面側には光源5が配設されている。液晶材料としては、たとえばTN液晶が用いられ、両透明基板間で90°のねじれが生じるため、両側の透明基板に設けられるラビング方向は、たとえば図1にA、Bで示されるように90°の方向をなしている。また両偏光板2、3の吸収軸の方向C、Dは図1に示すように、フロント側とリア側とで同じ方向にして、ネガ型TN液晶表示デバイスを構成している。6は偏光めがねを示し、位相差板4の光学軸の方向をE、偏光めがね6の吸収軸の方向をFで示している。位相差板4は、フロント側偏光板2の前に一定の間隔をあけて配置してもよいし、フロント側偏光板2の表面に密着または接着してもよい。また位相差板4の表面をアングレア処理し、乱反射機能をもたせてもよい。こうすることにより液晶表示パネル表面における外光反射による視認性低下を防止する効果がある。位相差板4はたとえばポリカーボネートなどの異常光線と常光線とのあいだで位相差を生じるフィルムからなり、高分子材料が熱延伸され、一軸延伸高分子フィルムに形成されている。また位相差板4は、雲母、人工雲母、水晶などの無機物により作製することもできる。位相遅れ(リターデイション)Rと屈折率ne、noとのあいだにはR=|ne-no|×d=Δn・dの関係が成り立つ。ここで、dは板材の厚さ、neは異常光線に対する屈折率、noは常光線に対する屈折率である。
【0012】前述のように表示面側に偏光板が配設された液晶表示デバイスでは、フロント側偏光板2から出射した光は、フロント側偏光板の吸収軸の方向と一致する直線偏光となっているが、本発明では位相差板4を配設しているため、位相差板4を透過する際に常光線と異常光線との間に位相のずれが生じ、楕円偏光に変わる。したがって位相差板4を配設することにより、偏光めがね6をかけて液晶表示デバイスを観賞したばあいでも、一般的にはどの方向からでも観賞できる筈である。しかし、光の波長と位相差板の厚さによっては殆ど直線偏光となったり、短軸が短い楕円偏光となったり、また可視光の波長領域は広く、波長によっては見づらい部分が生じ、見る方向によって見づらいばあいが生じる。そこで本発明者らは位相差板の光学軸の方向や厚さを種々変えて鋭意検討を重ねた結果、位相差板4をフロント側偏光板2の表面側に配置すると共に、位相差板4の光学軸方向Eとフロント側偏光板2の吸収軸方向Cとのなす角度(鋭角)αをほぼ35°~55°にし、同時に位相差板のリターデイションΔn・dをほぼ4000nm以上にすることにより、偏光めがねをかけてどの方向から観賞しても良好に視認できることを見出した。
【0013】前述の構成の液晶表示デバイスを製造し、位相差板4をフロント側偏光板2の表面に密着させ、位相差板4の光学軸の方向Eとフロント側偏光板2の吸収軸の方向Cとのなす角度αを、0~90°のあいだで5°または10°ずつ変えると共に、それぞれの角度αに対し、位相差板のリターデイションΔn・dを500~10000nmの範囲で変化させた。それぞれのリターデイションΔn・dの値と角度αのときに、偏光めがね6の吸収軸Fを360°回転させながら、観測者7が目視により液晶表示面の視認特性を測定した。表1にその結果を示す。
【0014】
【表1】
[図:0001391999000004.jpg]
【0015】表1から明らかなように、リターデイションΔn・dがほぼ4000nm以上で、かつ、角度αがほぼ35°~55°の範囲では、偏光めがね6の吸収軸方向Fを360°どの方向に向けても液晶表示面が認識できた。とくにリターデイションが5000nm以上で、かつ、角度αが45°の範囲で認識状態が最も優れており(表1のa)、またリターデイションが5000nm以上で、かつ、角度αが40°~50°の範囲でも良好に認識でき、好ましかった(表1のb)。さらにリターデイションが4000nm以上で、かつ、角度αが35°~55°の範囲でもやや視認特性は低下したが認識はできた(表1のc)。また、偏光めがねの角度によっては認識できないものを-で示した。
【0016】本発明ではリターデイションが大きな位相差板を使用しているため、位相差板に入射する直線偏光
の波長の違いがわずかであっても、位相差板による常光線と異常光線との位相のズレは大きなものとなり、図2に示すように、位相のズレが1/4波長となる波長の光が可視光の波長領域に多数存在する。そのため、前述の角度αがほぼ35°~55°、位相差板のリターデイションをほぼ4000nm以上にすることにより、偏光めがねをかけてどの方向から見ても、液晶表示デバイスの表示画面を認識することができる。」

また、図1は、以下のとおりである。

【図1】

[図:0001391999000005.jpg]

(2)甲11技術事項

上記(1)より、甲11には、次の技術的事項(以下「甲11技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「 液晶層が2枚の透明基板に挾持された液晶セル1の両側にフロント側偏光板2およびリア側偏光板3が配設され、
表示面側であるフロント側偏光板2の表面側にさらに位相差板4が配設され、
裏面側には光源5が配設され、
フロント側偏光板2から出射した光は、フロント側偏光板の吸収軸の方向と一致する直線偏光となっているが、位相差板4を透過する際に楕円偏光に変わり、 位相差板4を配設することにより、偏光めがね6をかけて液晶表示デバイスを観賞した場合でも、一般的にはどの方向からでも観賞でき、
位相差板のリターデイションΔn・dをほぼ4000nm以上にすることにより、偏光めがねをかけてどの方向から観賞しても良好に視認でき、
リターデイションが5000nm以上で、かつ、位相差板4の光学軸方向Eとフロント側偏光板2の吸収軸方向Cとのなす角度αが45°の範囲で認識状態が最も優れている、
TN型液晶表示デバイス。」

10 甲13

(1)記載事項

甲13には図面とともに次の事項が記載されている。

「【0024】
「偏光解消器」は、入射偏光光の基本的な偏光成分の違いが、上述の偏光器を通過するか又はそこから反射した後に低減されるように、透過又は反射された偏光光の偏光状態を偏光解消器によって異なる偏光状態に実質的に変える光学構造体である。本発明の目的に適する偏光解消器の一例は、入力がどうであれ光の偏光の波長を変えて不規則に偏光した光を出力する理想的な偏光解消器であると考えられる。このタイプの実際的な偏光解消器は、一般的に疑似ランダム出力偏光を生成する。例えば、このような要素を通過する入射直線偏光の光のs成分とp成分の間の位相差をランダム化する要素は、偏光解消器の一例になる。本発明の目的に適する偏光解消器の別の例は、直線偏光の光を例えば円偏光された光のような楕円偏光された光に又はランダムに偏光された光に変換する位相遅延器であると考えられる。ミラーアセンブリに偏光解消器を追加すると、結果として、視覚者が偏光サンガラスを着用した時に反射率及び透過率において傾斜角による強度分布の均一化が得られる場合がある。更に、このような偏光解消の存在により、反射かつ透過された画像に出現する特定のアーチファクトが最小にされる。」
「【0029】
様々なAPBFは、コンピュータディスプレイのようなエネルギ効率が高いディスプレイに使用されている。APBFの非限定的な例は、結晶体ベースのポリマー及び別の選択されたポリマーの交互層の本体を含む多層ポリマー薄膜により、又は輝度強化薄膜のような微細構造薄膜ベースの偏光器により、又は全て3Mインコーポレーテッドによる(例えばWO95/17303、米国特許第5,422,756号を参照されたい)二重輝度強化薄膜(例えばDBEF-E5及びDBEF-Q、「APF 25」、「APF 35」、「APF 50」)により、又は選択された方向に延伸された交互層ポリマー層を含む多層薄膜により達成されている。Steve Jurichich、TFTのLCD材料報告書の要約(www.displaysearch.com/products/samples/execsurnmary-materials.pdf)を参照し、また、http://solutions9.3m.com/wps/portal/3M/en_US/Vikuitil/BrandProducts/main/energyefficiencyでの3M製品説明を参照されたい。」
「【0057】
従来の用途において反射偏光器に偏光解消構成要素を追加する主要な影響は、従来技術バックライト照明系において考慮されており、反射偏光器は、LCDの知覚された輝度を強化するように示されてきた。このような強化をもたらすために、反射偏光薄膜は、反射偏光器を通じて光発光体から透過される光の偏光をLCDの最適作動に必要とされる方向に整列させるように光発光体とLCDの間に設けられてきた。反射偏光器及びLCD(すなわち、光発光体から見た時にRPの他の側で)の間のこのようなシステムへの偏光解消構成要素の追加により、反射偏光薄膜だけが存在する時にそうでなければ生じるいずれの偏光も低減されることが認められるであろう。この状況を図23に示している。実際、この場合、一連の反射偏光器及び偏光解消器を通じてLCDの方向へ光発光体から透過される光の偏光は、実質的にランダム化され、かつバックライト照明ディスプレイシステム全体は、まるで反射偏光器及び偏光解消器の組合せが光発光体とLCDの間に全く設けられていないかのようにある程度は作動する。図示のように、RP2310は、従来技術に説明されているように光発光体232Oの両側上に位置決めされたRP2310と反射器2350の間に放出された光の一部を再循環させることにより、従来のディスプレイ用途においてLCD2340を通じて光発光体2320からの非偏光光の透過を最適化するのに使用される。ここでは、偏光解消構成要素2360の追加は、ある程度は、RPによって得られる利点を無効にする。バックライト照明用途のような従来の用途とは対比的に、本発明の一実施形態におけるRP及び偏光解消器の組合せの使用により、以下で説明するような特定の利点が得られる。具体的には、バックミラーの得られる実施形態は、ミラーシステムを通じた光源からの光の最適化された透過率によって特徴付けられるだけでなく、一般的にそうでなければ偏光眼鏡を着用する画像観測者(運転者など)により気が付かれる角度効果によって実質的に影響されないように機能する。」
「【0069】
図8(A)~図8(J)を参照して説明する以下の例は、ミラーシステムの背後に位置決めされたディスプレイ(LCD又は他)を含む自動車バックミラーアセンブリ内に本発明の実施形態により積層される反射偏光器を使用する利点を示している。反射率、透過率、及び吸光度のようなシステムの光学的パラメータを表す様々なデータは、目視計量値(すなわち、550nmを中心とする光の場合)として示されている。ミラーシステムの例及び図8(A)、図8(D)~図8(G)を参照して説明するアセンブリは、エレクトロクロミック要素及びLCDを組み込むが、例えば、プリズムミラー要素のようなあらゆる他のタイプの自動車ミラー要素を利用することができ、同様に、あらゆる他の適切なタイプのディスプレイを使用することができることが理解される。ディスプレイからミラーシステムの特定的な実施形態を通ってユーザの方向の光収量に関する説明は、ディスプレイ出力時の基準ディスプレイの初期の輝度が8,000cd/m2であると仮定されている。この値は、制限的ではなく様々な実施形態の間の性能比較を目的として任意に選択されている。」
「【0071】
従来技術とは対比的に、本発明により、反射偏光器824(例えば、3Mインコーポレーテッドにより製作されるAPBF)を含む積層体828の実施形態は、バックミラーアセンブリ内に有利に組み込むことができる。図8(B)に関してここで説明するように、反射偏光器824は、ガラス826の単一の1.6mmの肉厚liteの表面Iに本発明の方法の実施形態により積層したものである。得られる透過反射性積層体828は、約51.1%の全体的な(非偏光光)反射率及び約46.5%の全体的な透過率によって特徴付けられたものであり、吸収時の損失は、約2.4%である。ガラス板826の吸光度が約0.7%であったので、反射偏光器824の吸光度は約1.7%であると推定した。」
「【0074】
図8(D)は、ITO層が表面II及びIIIで適切に上塗りされ、かつEC媒体チャンバ614を形成する2つのガラス板610及び635及びガラス板610の表面IVに結合された図8(B)の積層体の実施形態828を含むEC要素840を含むバックミラーアセンブリの実施形態83を示している。製作工程中に、ECチャンバ614は、EC媒体で板610と635との間の間隙を埋め、かつエポキシのような適切な材料で周囲に沿って密封することによって形成される。反射偏光器824は、次に、ガラス(すなわち、板826)の第3のliteの追加と共に、エレクトロクロミック要素の表面IVに積層される。代替的に、反射偏光器824は、最初に、lite826と610の間に、次に、EC空洞614及びEC要素840の形成により積層することができる。代替的に又は追加的に、板826は、適切な光学特性及び物理特性を有するプラスチック又は他の透明材料で製作することができる。上述のように、従って、板610は、積層体基板として見ることができ、板826は、積層体上板として見ることができる。この実施形態の全体的な反射率及び透過率は、それぞれ、測定により、約48%に42%の範囲、及び約47%に約41%の範囲であった。上述の実施形態828及び830と比較すると、反射率値は、EC要素840の光の吸収量のために実質的に小さくなっている。ここでは、実施形態836の全体的な吸光度は、約9%~11%であった。RP824の透過軸がLCD639によって生成された直線偏光の光820の偏光ベクトルと共線である状況に対応する積層体828の最適配向の場合、偏光光820(本明細書では偏光透過率値(Pt)とも呼ばれる)の最適透過率は、約75%から約85%の範囲であり、直交偏光を有する光の最適透過率は、約3%~約5%の範囲である。LCDサブアセンブリ639が8,000cd/m2の出力を生成する時、実施形態836を通じた透過において視覚者115により知覚されるディスプレイの正味有効輝度は、約6,720cd/m2である。実施形態836の全体的な(非偏光光)反射率の実験的に測定されたスペクトル分配を破線に示す図8(C)の実施形態830と比較して実線で図9(C)に示している。実施形態836の反射率及び透過率の値は、それぞれ、約47.2%及び約41.5%である。モデル化された吸光度は約11.3%であり、これは、実験的に取得した結果と類似のものである。」
「【0112】
一実施形態では、ディスプレイの光出力は、例えば、延伸ポリエステル薄膜のような偏光解消器、又はあらゆる他の適切な偏光解消器により偏光を解消することができる。偏光解消器の使用は、上述しており、かつ本出願人に譲渡された米国特許公報第2008/0068520号に詳細に説明されている。図13(A)に示すように、偏光解消器1302は、ディスプレイ639と透過反射性ミラーアセンブリ1304の間に設けることができる(例えば、図8(A)の実施形態800又は本発明のミラーシステムのいずれかの実施形態とすることができる)。ディスプレイからの光820の偏光解消は、偏光サンガラス1306がディスプレイ光を感知する運転者の機能を妨げることを防止する。類似の偏光解消効果は、エレクトロクロミック要素840の反射型偏光器824(DBEF-Q)及びガラス基板610の間に偏光解消器2010を設けることにより、例えば、図20のミラー構造体実施形態2020において得ることができる。図示のように、図20の実施形態2010は、図8(D)の実施形態836と類似ものであるが、更に、「Flexmark PM(登録商標)」200又は反射偏光器824と観測者115の間に設けられる被覆なしPP2500透過性薄膜(3Mインコーポレーテッドから販売)のような延伸ポリエステルを含む偏光解消層2010を含む。図示のように、感圧型接着剤(PSA)の層2030は、RP824及び偏光解消器2010を作動的に接続することができる。別の実施形態では、同じ効果は、ミラーアセンブリの表面上で直接に偏光解消器を設けることによって得ることができる。図8(D)の実施形態のような本発明の実施形態のいずれかと類似の実施形態では、例えば、偏光解消器は、ガラス板635の表面I上に配置することができる。別の実施形態では、同じ効果は、ECセルを形成するガラスのliteの一方又は両方の代わりにプラスチック層のような偏光解消透明層を使用することによって得ることができる。例えば、一実施形態では、図8(D)の板610及び635の少なくとも一方は、偏光解消プラスチック材料で製作することができる。別の実施形態では、同じ効果は、EC要素(図8(D)内の要素614など)のエレクトロクロミック流体内に設けられた光学的異方性又は複屈折性材料を使用して得ることができる。偏光度は、吸光値(T高-T低)/(T高+T低)として定めることができ、ここで、高及び低は、それぞれ、高い強度及び低い強度を有する2つの偏光状態の光の強度値を表している。光の偏光量が多い時、絶滅値は高い。下表9は、不透明金属の有無に関わらずシステムの透過偏光値及び反射偏光値を示している。透過及び反射の両方の場合に、偏光解消器の増設がないシステムに対する比較的高い吸光基線が表されている。使用する試料は、表9で説明しており、各構成の2つの実験的な試料が示されている。高及び低の偏光強度値も記載されている。これらの値は、先に定めた式を使用して吸光百分率を計算するのに使用される。低い吸光値は、2つの偏光状態の比較的等しい強度と同等である。表9に記載された差の値は、適切な基準試料に対する吸光の百分率変化を表している。」

また、図20は、以下のとおりである。

【図20】

[図:0001391999000006.jpg]

(2)認定事項

上記(1)から以下のことが認定できる。

ア 段落【0069】の下線部の記載、段落【0071】の下線部の記載、【0112】の下線部の記載及び図20から、自動車バックミラーアセンブリが、エレクトロクロミック要素840、偏光解消器2010、反射型偏光器824(DBEF-Q)を含む積層体828、ディスプレイ639を含み、エレクトロクロミック要素840、偏光解消器2010、反射型偏光器824(DBEF-Q)、ディスプレイ639がこの順に配置され、エレクトロクロミック要素840は、EC媒体チャンバ614を形成する2つのガラス板610及び635を含むこと。

イ 段落【0074】の図8(D)に関する下線部の記載、及び、段落【0112】の「図20の実施形態2010は、図8(D)の実施形態836と類似ものである」との記載から、図20の実施形態2010において、反射型偏光器824(DBEF-Q)の透過軸がディスプレイ639によって生成された直線偏光の光820の偏光ベクトルと共線である状況に対応する積層体828の最適配向の場合、偏光光820の最適透過率は、約75%から約85%の範囲であること。

(3)甲13発明

上記(1)、(2)より、甲13には、以下の発明(以下「甲13発明」という。)が記載されていると認められる。

「 ミラーシステムの背後に位置決めされたディスプレイ639を含む自動車バックミラーアセンブリであって、
エレクトロクロミック要素840、偏光解消器2010、反射型偏光器824(DBEF-Q)を含む積層体828、ディスプレイ639を含み、
エレクトロクロミック要素840、偏光解消器2010、反射型偏光器824(DBEF-Q)、ディスプレイ639がこの順に配置され、
エレクトロクロミック要素840は、EC媒体チャンバ614を形成する2つのガラス板610及び635を含み、
反射型偏光器824(DBEF-Q)の透過軸がディスプレイ639によって生成された直線偏光の光820の偏光ベクトルと共線である状況に対応する積層体828の最適配向の場合、偏光光820の最適透過率は、約75%から約85%の範囲であり、
偏光解消器2010は、直線偏光の光を楕円偏光された光に変換する位相遅延器であり、
偏光眼鏡を着用する画像観測者(運転者など)により気が付かれる角度効果によって実質的に影響されないように機能する、
自動車バックミラーアセンブリ。」

第6 対比・判断

1 本件発明1について(甲1発明を主引用発明とする場合)

(1)対比

本件発明1と甲1発明とを対比する。

ア 甲1発明の「自動車等車両の運転席前方のフロントガラスの上部付近に配置されるバックミラー(ルームミラー等とも称されることがある。)に適用し、バックミラー機能と情報表示機能とを両立でき」、「ミラー部の一部で文字情報や画像表示ができるように構成されて」いる「液晶表示素子1」と、本件発明1の「リアガラスに強化ガラスが使用されている車両のルームミラーである画像表示機能付きミラーであって、ハーフミラーおよび画像表示装置」とは、「車両のルームミラーである画像表示機能付きミラーであって、ハーフミラーおよび画像表示装置」という点で共通する。

イ 甲1発明の「反射型偏光板6」と「位相差板7である1/4波長板」とを「積層して構成」したものは、「反射型偏光板6」が「特定方向に偏光した光だけに限って透過させる透過軸を有し、その透過軸と直交する方向に偏光した光は反射させる」ものであり、「1/4波長板」が光を透過させるものであることを踏まえると、いわゆるハーフミラーとして機能することは明らかであるので、本件発明1の「ハーフミラー」に相当する。

ウ 甲1発明の「液晶表示素子1」は「ミラー状態を示すミラー部を有し、そのミラー部の一部で文字情報や画像表示ができるように構成されて」おり、これは、「バックライト2、R偏光板3、液晶パネル4、F偏光板5」を「この順で積層して構成」したものから出射される光により文字情報や画像表示ができるように構成されることは明らかである。

そうすると、甲1発明の「バックライト2、R偏光板3、液晶パネル4、F偏光板5」を「この順で積層して構成」したものは、本件発明1の「画像表示装置」に相当する。

エ 甲1発明の「バックライト2、R偏光板3、液晶パネル4、F偏光板5」を「この順で積層して構成」したものから出射される光は直線偏光であることは技術常識からみて明らかである。

そうすると、甲1発明の「バックライト2、R偏光板3、液晶パネル4、F偏光板5」を「この順で積層して構成」したものは、上記ウも踏まえると、本件発明1の「前記画像表示装置は直線偏光を出射して画像を形成」することに相当する。

オ 甲1発明の「位相差板7である1/4波長板」と本件発明1の「高Re位相差膜」とは、「位相差部材」という点で共通する。

カ 甲1発明の「反射型偏光板6」は、「特定方向に偏光した光だけに限って透過させる透過軸を有し、その透過軸と直交する方向に偏光した光は反射させる偏光板であ」るから、本件発明1の「反射層」に相当する。

キ 上記イ、オ及びカを踏まえると、甲1発明の「反射型偏光板6」と「位相差板7である1/4波長板」とを「積層して構成」したことと、本件発明1の「ハーフミラーは高Re位相差膜および反射層を含」むこととは、「ハーフミラーは位相差部材および反射層を含」むという点で共通する。

ク 甲1発明の「液晶表示素子1は、バックライト2、R偏光板3、液晶パネル4、F偏光板5、反射型偏光板6および位相差板7である1/4波長板をこの順で積層して構成されて」いることと、本件発明1の「前記画像表示機能付きミラーにおいて、前記高Re位相差膜、前記反射層、および前記画像表示装置がこの順に配置されて」いることとは、上記ア、ウ、オ及びカを踏まえると、「前記画像表示機能付きミラーにおいて、前記位相差部材、前記反射層、および前記画像表示装置がこの順に配置されて」いる点で共通する。

ケ 上記カで述べたとおり、甲1発明の「反射型偏光板6」が「特定方向に偏光した光だけに限って透過させる透過軸を有し、その透過軸と直交する方向に偏光した光は反射させる偏光板であ」ることは、直線偏光反射層であることを意味することから、本件発明1の「前記反射層は直線偏光反射層である」ことに相当する。

したがって、本件発明1と甲1発明との一致点、相違点は以下のとおりと認められる。

<一致点1>

「車両のルームミラーである画像表示機能付きミラーであって、
ハーフミラーおよび画像表示装置を含み、
前記画像表示装置は直線偏光を出射して画像を形成し、
前記ハーフミラーは位相差部材および反射層を含み、
前記画像表示機能付きミラーにおいて、前記位相差部材、前記反射層、および前
記画像表示装置がこの順に配置されており、
前記反射層は直線偏光反射層である、画像表示機能付きミラー。」

<相違点1―1>

車両に関して、本件発明1では、「リヤガラスに強化ガラスが使用されている」のに対し、甲1発明では、車両のリヤガラスに強化ガラスが使用されている特定を備えていない点。

<相違点1-2>

位相差部材に関して、本件発明1では、「高Re位相差膜」を含み「5000nm以上の正面位相差を有し」ているのに対し、甲1発明では、位相差部材として「位相差板7である1/4波長板」を備える点。

(2)判断

相違点1―1及び1-2について検討する。

ア 甲1の段落【0012】及び【0013】の記載を踏まえると、甲1発明は、偏光メガネを着用した視認者に対してもバックミラー機能と情報表示機能とを両立できるものである。

まず、甲1発明の「1/4波長板」と上記「バックミラー機能と情報表示機能」との関係について検討する。

(ア)甲1発明の「情報表示機能」に関して、甲1の段落【0058】には「液晶表示素子において表示を行うための、バックライト2等からの光は、位相差板7である1/4波長板を1回透過して出射されることになる。その結果、バックライト2等からの光は円偏光となり、視認者が偏光メガネを着用したとしても、その偏光メガネを透過することができる。」と記載されている。この記載から、反射型偏光板6から出射された直線偏光が1/4波長板を通過して円偏光となり、偏光メガネを透過することが理解できる。

(イ)甲1発明の「バックミラー機能」に関して、甲1の段落【0057】には「外部から液晶表示素子1に入射する光が、反射型偏光板6で反射されて、位相差板7である1/4波長板を2回透過することになる。その結果、液晶表示素子1から出射される光の偏光方向が、例えば、90°回転されて、視認者の着用するサングラス等の偏光メガネの透過軸と平行になり、偏光メガネを透過できるようになる。すなわち、液晶表示素子1は、偏光メガネを着用した視認者に対してもミラーとしての機能を発揮することができる。」と記載されているが、この記載には以下に示すとおり明らかな錯誤があるといえ、甲1発明の「液晶表示装置1」が「バックミラー」として機能することは当業者にとって明らかである。

すなわち、外光はそもそも無偏光であること(甲4の段落【0020】、甲5の段落【0043】、【0153】等参照)から、外光は1/4波長板を通過しても無偏光のままであること(甲6の【0036】、甲7の段落【0008】、図6(b)、甲8の段落【0049】、【0105】等参照)、また、直線偏光が1/4波長板を通過すると円偏光となること(甲1の段落【0051】、【0058】、甲9の段落【0004】等参照)は、いずれも技術常識であることを踏まえると、甲1発明の「反射型偏光板6」が「透過軸と直交する方向に偏光した光は反射させる偏光板である」(甲1の段落【0051】)ことから、外光は、まず、甲1発明の「1/4波長板」を無偏光のまま通過した後、「反射型偏光板6」で反射して直線偏光となり、当該反射した直線偏光は再び「1/4波長板」を通過して円偏光となることは明らかである。つまり、無偏光の外光は、甲1発明の「液晶表示素子1」で反射されて円偏光となり、その結果、偏光メガネを透過することから、「液晶表示素子1」は「バックミラー」として機能するといえる。

(ウ)上記(ア)及び(イ)のとおり、甲1発明は、反射型偏光板6を透過した直線偏光、及び、反射型偏光板6で反射された直線偏光を、1/4波長板により円偏光に変換することで偏光メガネを透過できるようにするものである。

イ 甲1発明の課題を検討すると、甲1発明は、サングラス等の偏光メガネの透過軸が上下方向となるように設定されているため(段落【0009】)、液晶表示素子の前面に配置される反射型偏光板の反射軸が上下方向(垂直方向)に設定されていると、反射型偏光板の透過軸は水平方向となり、反射型偏光板の透過軸と平行な方向に偏光した光として液晶表示素子から出射される画像光が偏光メガネを透過できず、(段落【0010】)、液晶表示素子の前面に配置される反射型偏光板の反射軸が水平方向(上述した上下方向と垂直な方向)に設定されていると、反射型偏光板からの反射光は、偏光メガネを透過できない(段落【0011】)ことを問題とし、当該問題を解決するために、1/4波長板により、反射型偏光板6を透過した直線偏光、及び、反射型偏光板6で反射された直線偏光を円偏光に変換している(上記ア(ウ))。

そうすると、甲1発明は、液晶表示素子から出射される画像光か反射型偏光板からの反射光かに関わらず、直線偏光が、偏光メガネの透過軸の向きとの関係で偏光メガネを透過できないことを課題としていると理解できる。

ウ 次に甲2技術事項について検討する。

甲2の段落【0024】の「リタデーション値」の定義に係る記載からみて、甲2技術事項の「リタデーション値」は本件発明1の「正面位相差」に相当するから、甲2技術事項において「高リタデーションフィルム」を備え、「高リタデーションフィルムのリタデーション値は、6000~30000nmであること」は、本件発明1において「高Re位相差膜」が配置され、「前記高Re位相差膜は5000nm以上の正面位相差を有」することに相当する。

そして、甲2技術事項の「高リタデーションフィルム」は「偏光膜から出射される直線偏光を乱す光学異方性を有する」ものであり、これにより、直線偏光と偏光サングラスの角度によって表示画面が視認できなくなることを防止するものである。ここで、偏光サングラスの角度によって表示画面が視認できない要因が、偏光サングラスの角度が変わると偏光サングラスの透過軸の向きが変わることであることは、技術常識からみて明らかである。そうすると、甲2技術事項は、直線偏光が偏光サングラスの透過軸の向きとの関係で偏光サングラスを透過できないことを課題としていると理解できる。

エ 甲1発明と甲2技術事項とは、液晶表示装置用の光学部材という共通の技術分野に属する。また、上記ア(ウ)、イ、ウから、甲1発明と甲2技術事項は、直線偏光が、偏光メガネの透過軸の向きとの関係で偏光メガネを透過できないという共通の課題を有し、甲1発明の「1/4波長板」も甲2技術事項の「高リタデーションフィルム」も、直線偏光が偏光メガネを透過しないことを踏まえて、直線偏光を偏光メガネを透過する状態に変換するという点で共通するものであるといえる。

さらに、甲2技術事項において、高リタデーションフィルム又は1/4波長位相差のプラスチックフィルムのいずれでもよい旨示されている。

オ また、甲9には、偏光サングラスにより表示画面が視認できなくなることを防止するための手段として、λ/4波長板を配置すること、及び、位相差が4000nm以上、もしくは3000~30000nmと極端に大きいフィルムを使用することが記載され、さらに、前者では画面サイズが大きい場合には虹色の縞模様(着色ムラ)が見えたりすることもあるが、後者は着色を防ぐことができることが記載されている。そして、甲1発明の液晶表示素子は、1/4波長板を備え、偏光メガネを着用して視認することを前提としているから、偏光メガネを着用して視認した際に着色ムラが生じるという課題が内在していることは明らかである。

そうすると、甲9に触れた当業者であれば、甲1発明において、虹色の縞模様(着色ムラ)が生じ得る「1/4波長位相差のプラスチックフィルム」よりも、甲2技術事項の「高リタデーションフィルム」の方が、着色を防ぐという点からはより優れていると理解することができ、甲1発明に甲2技術事項を適用するための一応の動機付けが存在するといえるが、あくまでも偏光メガネを着用して視認した際に生じる課題を解決するものにすぎないといえる。

カ 一方で、車両のリアガラスとしてその強度を高めるために強化ガラスを採用することは、周知の技術(例えば、令和4年5月6日に申立人が提出した意見書に例示された、以下の文献を参照。)である。

・特開2004-91311号公報(甲14号証)

・特開平11-321304号公報(甲15号証)

・特開2005-97033号公報(甲16号証)

・特開2003-119041号公報(甲17号証)

・国際公開第2007/010875号公報(甲18号証)

・特開2009-61820号公報(甲19号証)

(甲14~19号証を、それぞれ「甲14」~「甲19」という。)

キ 解決しようとする課題の違い

本件発明の解決しようとする課題は、本件明細書の段落【0004】に記載されているとおり、「明るい画像表示が可能であるとともに、ムラのないミラー反射像の観察が可能な車両用の画像表示機能付きミラーの提供」と認められる。

また、この課題に関して、

・「本発明者らが反射偏光板を利用して画像表示機能付きミラーを構成し車両に用いたところミラー反射像に明暗ムラや色ムラ(虹色など)が生じた」(【0004】)

・「強化ガラス(例えば、合わせガラスの構成ではない強化ガラス)は複屈折性分布を有する」(【0027】)

・「強化ガラスが使用されている車両のリアガラスなどを通過して画像表示機能付きミラー前面に入射する光は、ミラー反射像に上述のムラが生じると考えられる・・・複屈折分布により画像表示機能付きミラー前面に入射する光に分布を伴った偏光成分が生じると、画像表示機能付きミラー前面(最表面)での反射光と反射層での選択反射光との干渉によって反射光の強度の差が生じ、上述のミラー反射像のムラの原因となっていると考えられる」(【0028】)

などの説明が示されている。

そして、この課題とその原因を踏まえた上で、「本発明の画像表示機能付きミラーにおいては、所定の大きさの位相差を有する高Re位相差膜の利用によって、画像表示機能付きミラー前面に入射する光を、反射層に入射する前に疑似的に無偏光とすることにより、ムラを軽減する」(【0028】)という解決手段及び顕著な効果が示されている。

この点について、甲1、2、9、14~19の記載を子細に検討しても、本件発明1と同様の課題解決を示唆するものはない。

本件発明1では、強化ガラスの複屈曲性分布による「ミラー反射像のムラ」を解消しようとしているのに対して、甲1発明、甲2技術事項及び甲9の記載は、いずれも偏光メガネを着用した状態で反射型偏光板を用いた液晶表示素子を観察する際の視認性を高めるものであって、本件発明1のように偏光メガネに関係なく生じている「ミラー反射像のムラ」を解消する技術が示唆されているものとはいえない。

したがって、甲1発明、甲2技術事項、甲9の記載及び上記周知の技術(甲14~19)において、相違点1―1及び1-2に関する解決課題及び解決手段についての示唆を見出すことはできない。

(3)申立人の主張について

ア 主張の概要

申立人は、令和4年5月2日の意見書で、以下のように主張する。

(ア)「リアガラスに強化ガラスが使用されている車両」は周知の技術(甲14~19)であるから、訂正後の本件発明1は、甲1発明、甲2技術事項、甲9の記載及び上記周知技術(甲14~19)に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。

(イ)本件発明1について、「甲1、甲2、甲9」から予測できない「ミラー反射像によるムラを解消するとの効果」を新たに発見したからといって、該発見によって本件発明1に進歩性が生じるものではない。すなわち、甲1発明を主引用発明として構成される本件発明1も、本件特許発明の発明者らの着想によって構成された本件発明1も、同じ構成を有しかつ同じ態様で使用される以上、必然的に同じ効果を奏するものである。必然的に奏する効果である以上、予測できない効果とはいえない。したがって、本件特許発明の発明者らが認識した「ミラー反射像に生じるムラを解消するとの効果」は本件発明1の進歩性を生じさせるものではなく、進歩性のない本件発明1について新たに確認された効果にすぎない。

イ 検討

(ア)上記「ア(ア)」について

申立人は、「リアガラスに強化ガラスが使用されている車両」は周知の技術であると主張するが、上記「(2)カ」に示したとおり、それはあくまでも、車両のリアガラスを強化するために強化ガラスを使用することが周知の技術ということにすぎない。

そして、本件発明1は、上述のとおり、相違点1―1及び1-2に係る本件発明1の構成を有することで、リアガラスの強化とは異質の格別顕著な効果を奏するものである。

よって、請求人の主張は採用できない。

(イ) 上記「ア(イ)」について

申立人は、本件発明1の奏する作用効果は当業者が予測しうる程度のものであると主張するが、上記「(2)キ」に示したとおり、本件発明1は、運転者のサングラス着用の有無にかかわらず、車両のリアガラスが強化ガラスである場合に偏光によりミラー反射像にムラが生じるという課題を新たに見いだしてこれを解決するものであり、本件発明1の出願時にそのような着眼点があったことを示す証拠が何ら存在しない以上、当業者が必然的にそれと同じ作用効果を奏することを予測できたとは到底いえない。

よって、申立人の主張は採用することができない。

(4)小括

以上のとおり、本件発明1は、甲1発明、甲2技術事項、甲9の記載及び上記周知の技術(甲14~19)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本件発明1について(甲13発明を主引用発明とする場合)

(1)対比

本件発明1と甲13発明とを対比する。

ア 甲13発明の「ミラーシステムの背後に位置決めされたディスプレイ639を含む自動車バックミラーアセンブリ」と、本件発明1の「リアガラスに強化ガラスが使用されている車両のルームミラーである画像表示機能付きミラー」とは、「車両のルームミラーである画像表示機能付きミラー」という点で共通する。

イ 甲13発明の「反射型偏光器824(DBEF-Q)」は、「反射型」であるから、光を「反射」するものであり、また、「透過軸」を有するから、光を「透過」するものである。そうすると、甲13発明の「エレクトロクロミック要素840、偏光解消器2010、反射型偏光器824(DBEF-Q)を含む積層体828」で構成されたものは、本件発明1の「ハーフミラー」に相当する。また、甲13発明の「ディスプレイ639」は、本件発明1の「画像表示装置」に相当する。

ウ 甲13発明の「ディスプレイ639」が「直線偏光の光820」を「生成」するものであることは、上記イも踏まえると本件発明1の「前記画像表示装置は直線偏光を出射して画像を形成」することに相当する。

エ 甲13発明の「位相遅延器であ」る「偏光解消器2010」と本件発明の「高Re位相差膜」とは、「位相差部材」という点で共通する。

オ 甲13発明の「反射型偏光器824(DBEF-Q)」は光を「反射」するものであるから、反射層を含むことは明らかである。

カ 甲13発明の「エレクトロクロミック要素840、偏光解消器2010、反射型偏光器824(DBEF-Q)を含む積層体828」で構成されたものが「偏光解消器2010」及び「反射型偏光器824(DBEF-Q)」を含むことと本件発明1の「前記ハーフミラーは高Re位相差膜および反射層を含」むこととは、上記イ、エ及びオも踏まえると「前記ハーフミラーは位相差部材および反射層を含む」という点で共通する。

キ 甲13発明の「自動車バックミラーアセンブリ」において「偏光解消器2010、反射型偏光器824(DBEF-Q)、ディスプレイ639がこの順に配置され」ていることと本件発明1の「前記画像表示機能付きミラーにおいて、前記高Re位相差膜、前記反射層、および前記画像表示装置がこの順に配置されて」いることとは、上記ア、イ、エ及びオも踏まえると「前記画像表示機能付きミラーにおいて、前記位相差部材、前記反射層、および前記画像表示装置がこの順に配置されて」いるという点で共通する。

ク 甲13発明の「反射型偏光器824(DBEF-Q)」は、甲13の段落【0029】の下線部の記載も踏まえると、3MインコーポレーテッドのDBEF(登録商標)シリーズの反射型偏光板であるところ、当該反射型偏光板は、光を直線偏光として反射させるものである(甲1の段落【0051】参照)。そうすると、上記オも踏まえると、甲13発明の「反射型偏光器824(DBEF-Q)」が反射層を含むことは、本件発明1の「前記反射層は直線偏光反射層である」ことに相当する。

したがって、本件発明1と甲13発明との一致点、相違点は以下のとおりと認められる。

<一致点13>

「車両のルームミラーである画像表示機能付きミラーであって、
ハーフミラーおよび画像表示装置を含み、
前記画像表示装置は直線偏光を出射して画像を形成し、
前記ハーフミラーは位相差部材および反射層を含み、
前記画像表示機能付きミラーにおいて、前記位相差部材、前記反射層、および前記画像表示装置がこの順に配置されており、
前記反射層は直線偏光反射層である、画像表示機能付きミラー。」

<相違点13―1>

車両に関して、本件発明1では、「リヤガラスに強化ガラスが使用されている」のに対し、甲13発明では、車両のリヤガラスに強化ガラスが使用されている特定を備えていない点。

<相違点13-2>

位相差部材に関して、本件発明1では、「高Re位相差膜」を含み「5000nm以上の正面位相差を有し」ているのに対し、甲13発明では、「直線偏光の光を楕円偏光された光に変換する位相遅延器」である「偏光解消器2010」を備える点。

(2)判断

相違点13-1及び13-2について検討する。

ア 甲11技術事項の「位相差板4」は「フロント側偏光板2から出射」した「直線偏光」を「楕円偏光に変」えることにより、「偏光めがね6をかけて液晶表示デバイスを観賞した場合でも、一般的にはどの方向からでも観賞でき」るようにするものである。そして、そのための構成として、「位相差板4」を「リターデイションが5000nm以上で、かつ、位相差板4の光学軸方向Eとフロント側偏光板2の吸収軸方向Cとのなす角度αが45°の範囲」とするものである。

イ 甲13発明と甲11技術事項は「直線偏光を出射する表示装置」という共通の技術分野に属し、偏光眼鏡を着用しても表示画面を認識できるようにするという共通の課題を有するものである。さらに、甲13発明の「位相遅延器」と甲11技術事項の「位相差板4」は、直線偏光を楕円偏光に変えるという共通の機能を有する。

そうすると、甲13発明に甲11技術事項を適用する一応の動機づけがあるといえなくもないが、あくまでも偏光メガネを着用して視認した際に生じる課題を解決するものにすぎない。

ウ また、上記「1(2)カ」に説示したとおり、車両のリアガラスとしてその強度を高めるために強化ガラスを採用することは周知の技術(甲14~甲19)であるが、上記「1(3)キ」に説示した甲1発明を主引用文献とした場合の判断と同様に、甲13発明、甲11技術事項及び上記周知の技術に、相違点13-1及び13-2に関する解決課題及び解決手段についての示唆を見出すことはできない。

(4)小括

したがって、本件発明1は、甲13発明、甲11技術事項及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本件発明2、9について

(1)(甲1発明を主引用発明とする場合)

本件発明2及び9は、本件発明1の発明特定事項を全て含みさらに限定を付加したものであるから、本件発明1と同様の理由により、当業者であっても、甲1発明、甲2技術事項、甲9の記載及び上記周知の技術に基いて、容易に発明をすることができたものではない。

(2)(甲13発明を主引用発明とする場合)

本件発明2及び9は、本件発明1の発明特定事項を全て含みさらに限定を付加したものであるから、本件発明1と同様の理由により、当業者であっても、甲13発明、甲11技術事項及び上記周知の技術に基いて、容易に発明をすることができたものではない。

第7 むすび

以上のとおりであるから、本件特許の請求項1、2、9に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された申立ての理由及び証拠によっては、取り消すことができない。

また、他に本件特許の請求項1、2、9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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2021-700642

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