商標取消審判
2021-300814
ゼットジイ、ゼットアイジイ、ジグ
- 審判番号
- 2021-300814
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願1992-200340
- 登録番号
- 3006498
- 請求日
- 2021年10月19日
- 審決日
- 2023年02月15日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【請求人】コネクトフリー 株式会社
- 【請求人代理人】竹内 充春
- 【被請求人】株式会社 呉竹
- 【被請求人代理人】弁理士法人藤本パートナーズ
- 審判長/審判官
- 審判長 岩崎 安子
- 審判官 馬場 秀敏
- 審判官 茂木 祐輔
- 分類
- T132 .1 -Z (041)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条第2項、商標法第50条、商標法第50条第1項、商標法第2条第3項第8号、商標法第2条第3項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第3006498号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第3006498号商標の指定役務中、第41類「図書及び記録の供覧,図書の貸与」についての商標登録を取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第3006498号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成4年9月21日登録出願、第41類「技芸・スポ―ツ又は知識の教授,図書及び記録の供覧,美術品の展示,図書の貸与」を指定役務として、同6年10月31日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録は、令和3年11月1日であり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、平成30年11月1日から令和3年10月31日までの期間(以下「要証期間」という。)である。
第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務中、第41類「図書及び記録の供覧,図書の貸与」(以下「請求に係る指定役務」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用をした事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人が提出した証拠について
ア 乙第1号証について
乙第1号証は、被請求人のホームページの写しであり、被請求人が商品「ペン」等について「ZIG」の語を使用していることを示すページ、カリグラフィーやカリグラフィーに使用するペン等の紹介をしているページが含まれる。しかし、これらは役務「図書の貸与」についての商標の使用証拠でない。
なお、乙第1号証の1は被請求人の会社概要の写しであるが、その事業内容に「図書の貸与」又はこれに類する事業を行っている旨の記載はない。
イ 乙第2号証について
乙第2号証は、「カリグラフィー」の定義や説明に関する辞書や第三者のウェブサイトであり、被請求人の事業や役務に関するものではないから、本件商標の使用証拠にはなり得ない。
ウ 乙第3号証について
乙第3号証は、被請求人の「オンラインショッピングサイト」の写しであるところ、被請求人が商品としての「印刷物」や「書籍」を販売していることを示すものであり、役務「図書の貸与」についての商標の使用証拠でない。
エ 乙第4号証ないし乙第6号証について
乙第4号証ないし乙第6号証の証拠からは、一見して、被請求人が、ある種の「図書を貸与する活動」を行っていることがうかがえる。しかし、後述するとおり、被請求人による「ZIGカリグラフィーテキスト」のレンタルサービス(以下「本件サービス」という。)は、被請求人の主たる事業である商品「文房具」の営業活動に付随したものというべきであって、商標法上の役務ということはできない。
(2)本件サービスは商標法上の役務ではない
ア 商標法上の役務について
「役務「図書の貸与」についての「商標の使用」を立証するにあたっては、登録商標が「独立して商取引の目的たりうべき他人のための労務又は便益」について使用されていることを要する。
イ 被請求人のカリグラフィー関連商品について
乙第1号証の3及び甲第3号証の記載、並びに乙第1号証の1(被請求人の会社概要)から、被請求人は自社の製品である「カリグラフィーに適したマーカーペン」の需要を創出するために「マーカーで書くカリグラフィー」の手法をまとめたテキスト等を作成、販売しているものである。
ウ 企業の販促活動について
自社商品をアピールするための販促物の提供は、無償で行われることが一般的である。
エ 本件サービスは商標法上の役務ではない
(ア)被請求人が答弁書において述べていることから明らかなように、本件サービスは、被請求人の主たる事業である商品「文房具」の取引先を対象にしたものである。
また、乙第4号証の記載から、本件サービスの目的は、取引先の文房具店の顧客に「マーカーペンを使用したカリグラフィー」を紹介して興味を持ってもらい、同文房具店における「関連商品」(すなわちカリグラフィー用のマーカーペン)の販売を促進することであると理解できる。
(イ)以上の記載から明らかなように、本件サービスは、被請求人が自らの商品の取引先に対して、自社商品である「カリグラフィー用のマーカーペン」の販売を促進するために、販促物たるカリグラフィーのテキストを無償で提供しているにすぎない。したがって、本件サービスは、商品「文房具」の営業活動の一環として提供されるものであって、「文房具の譲渡に付随して提供される便益」といえる。
(ウ)「商標法上の役務」について、東京高裁平11(行ケ)390号(シャディ事件)の趣旨に照らせば、商標法上の役務たる「図書の貸与」とは、典型的には「貸本屋」のようなサービスが該当すると考えられる。いわゆる貸本屋のサービスは、不特定多数の消費者に対して、様々な図書を有償で貸与するサービスといえ、漫画本等の書籍を店舗や宅配によって貸与する事業が広く行われている(甲5)。このようなサービスは市場における独立した取引の対象であって、市場において商標がその出所を識別したり、品質を保証するために機能している。
これに対して、本件サービスは、自社商品の取引先というごく限定的な対象に対して、「カリグラフィーのテキストや練習帳」というわずか3種類の書籍を、自社商品の販売促進の目的で、無償で貸与しているものである。このような小規模かつ限定的なサービスは、「文房具」という商品の営業活動に付随するものに過ぎず、市場において独立して取引される対象でないことは明白である。
(エ)不使用取消審判において、「付随的な役務」についての商標の使用が商標の使用に当たらないと判断された事例は多数存在する(甲6~甲8)。
(オ)上述したとおり、本件サービスは商取引の目的物として一般市場で取引されるものではなく、被請求人の商品「文房具」の取引先という特定の者に対して、カリグラフィー用のペンの販売促進という特定の目的のもとに閲覧させるためのテキス卜を無償で貸与するものである。ここでは、貸与を受ける者にとって、その出所は明確であり、本件商標がテキスト等に付されているとしても、それは「図書の貸与」という役務の出所を識別するものとして認識されるものではない。
3 まとめ
以上より、本件サービスが商標法上の役務にあたるとは到底いえず、被請求人は取消対象役務について要証期間における本件商標の使用を証明していない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証(枝番を含む。枝番の全てを引用する場合は、その枝番の記載を省略する。)を提出した。
1 本件審判について
本件商標の商標権者である「株式会社呉竹」は、本件審判請求の登録前3年以内にあたる2021年6月1日からから現在まで、継続して日本国内でその請求に係る指定商品及び指定役務中、第41類「図書の貸与」について、本件商標を使用している事実がある。
2 被請求人(本件商標権者)について
被請求人は、明治35年(1902年)10月1日創業、昭和7年(1932年)8月16日設立の墨、書道液、書道用品、筆ぺん、マーキングペン、カリグラフィーマーカー等の製造、販売及び輸出入等に係る事業を営む、我が国有数の文具メーカーの一つに数えられる会社である(乙1の1)。
3 本件商標の使用事実について
(1)被請求人は、1978年より「ZIG」の使用を開始して以来、長年、当該「ZIG」ブランドの商品を表示する商標として多数の商品、役務に本件商標「Z↑G」を使用している(乙1の2)。
(2)上記ZIGブランドの商品は、「ゴシック体、イタリック体などさまざまな書体によって美的に文字を書く書法。」等を意味する「カリグラフィー」(乙2)に用いられることがあるが(乙1の3)、マーカーを用いてカリグラフィーを書くには、基本的な知識やテクニックの習得が必要であることから、被請求人はカリグラフィーの基本やテクニックを分かりやすく紹介するテキスト及びカリグラフィーの練習帳をカリグラフィー愛好者向けに提供している(乙3)。
(3)被請求人は、2021年6月1日に文房具(小売)店向けに本件サービスを開始し、現在まで継続して提供している事実がある。
(4)本件サービスは、カリグラフィーの基本的な知識やテクニックが分かり易く記載された下記3つのテキスト及び練習帳(以下、これらテキスト及び練習帳をまとめて「本件テキスト及び練習帳」という。)を被請求人の商品を取扱う文房具店に一定期間貸与し、文具店は、店頭のZIGブランド商品(主にペン)の販売エリアにてお客様(商品の購入者)が本件テキスト及び練習帳を自由に閲覧できるように設置することができるサービスである(乙4)。本件サービスは、文房具店に訪れる需要者にカリグラフィーに興味をもっていただき、新規のカリグラフィー愛好者を獲得することを目的に提供されている(乙4)。
(5)本件テキスト及び練習帳は、いずれもその表紙に赤字で長方形の枠内に「Z↑G」が表示された商標(以下「本件使用商標」という。)が表示されていることが確認できる(乙4)。
(6)被請求人は、2021年6月1日より、乙第4号証のチラシ(以下「本件チラシ」という。)を取引先の文房具店に配布し、本件サービスの提供を開始した(乙4)。
本件チラシには、本件使用商標が使用されている(乙4)。
(7)また、本件チラシには、本件サービスにおいて貸与の対象となる本件テキスト及び練習帳が表示されているが、その全てに本件使用商標が使用されている(乙4)。
(8)実際に本件サービスにおいて使用された申込票を乙第5号証の1ないし乙第5号証の3(これらをまとめて「本件申込票」という。)として提出する。
(9)乙第6号証は、実際に貸与された練習帳が申込者の売り場コーナーに設置されていることを示す写真である。これにより、実際に貸与された本件練習帳が申込者の店頭に設置されていることが認められる。
(10)また、本件申込票の右上には、長方形の枠内に本件使用商標が使用されていることが認められる(乙5の1~乙5の3)。
4 本件商標の使用者について
本件使用商標は、被請求人が提供する本件サービスと関連して使用されているため、本件使用商標の使用者は本件商標権者(被請求人)である。
5 本件使用商標について
本件使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められるものである。
6 使用役務、使用行為及び使用時期について
(1)本件サービスは、図書に該当する本件テキスト及び練習帳を貸与する役務であることから、本件商標の指定役務中、第41類「図書の貸与」に該当するものといえる。
(2)本件チラシは本件サービスの広告に当たるものであり、また、本件申込書は本件サービスの取引書類に当たるものであることから、これらに本件使用商標を付し、これを用いて本件サービスを提供する行為は、商標法第2条第3項第8号の規定に該当する。
(3)また、本件サービスにおいて貸与の対象となる本件テキスト及び練習帳は、役務の提供に当たりその提供を受けるものの利用に供するものに当たることから、これらに本件使用商標を付し、これを用いて本件サービスを提供する行為は、商標法第2条第3項第3号の規定及び同項第4号の規定に該当する。
(4)さらに、本件サービスは、要証期間内にあたる2021年6月1日にその提供が開始され、現在も継続して提供されている。よって、本件使用商標の使用時期は、要証期間内である。
(5)そうすると、被請求人は、要証期間内に、本件審判の請求に係る指定役務である第41類「図書の貸与」に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用したことが認められる。
7 まとめ
以上より、被請求人が、本件審判請求の登録前3年以内に我が国においてその請求に係る指定役務中、第41類「図書の貸与」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したため、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消されるべきはなく、維持されるべきものである。
第4 当審における審尋
当審において、令和4年10月27日付け審尋により、被請求人に対し、被請求人が商標法第50条第2項の規定する本件商標の使用している事実を証明したものとは認められない旨の暫定的見解を示し、期間を指定して、これに対する回答を求めた。
第5 審尋に対する被請求人の回答
被請求人は、上記第4の審尋に対し、何ら回答をしていない。
第6 当審の判断
1 事実認定
被請求人(商標権者)は、本件商標を、請求に係る指定役務のうち「図書の貸与」について、要証期間に日本国内において使用している旨を主張し、その証拠として乙第1号証ないし乙第6号証(枝番を含む。)を提出したところ、同人の主張、立証によれば、以下のとおりである。
(1)商標権者は、カリグラフィーの基本的な知識やテクニック等が記載された「本件テキスト及び練習帳」を、商標権者の商品を取扱う文房具店に無償で一定期間貸与するサービスを行っている(乙4)(以下「商標権者サービス」という。)。
(2)商標権者が文房具店向けに商標権者サービスの内容を示したチラシ(乙4)には、「ユーザーの方にカリグラフィーにご興味をもっていただき、初めての方でもカリグラフィーが楽しく書ける様に、カリグラフィーの基本をわかりやすく掲載した下記テキストを、店舗様向けに無料でお貸し出し致します。店舗様の関連商品販売エリアにて、お客様がテキストを自由に閲覧できるよう店舗内に設置戴けます。ぜひこの機会に、ご利用頂きカリグラフィーファンの獲得にご活用下さい。」の記載がある。当該記載からすれば、商標権者サービスの目的は、文房具店を訪問する一般客(以下「店舗訪問客」という。)に「本件テキスト及び練習帳」を自由に閲覧させることにより、店舗訪問客がカリグラフィーに興味を持ってもらうことにあるというべきである。
(3)上記(2)のチラシ(乙4)に記載されている「本件テキスト及び練習帳」は、商標権者のウェブサイト(乙3)に掲載されている販売を目的とするテキスト及び練習帳の一部商品と、写真及び品番が一致するものである(品番:ECF2-2、ECF4、ECF6-1)から、本来的には商品として販売されるものということができる。
(4)被請求人は、「マーカーを用いてカリグラフィーを書くには、基本的な知識やテクニックの習得が必要である・・(略)」(第3 3(2))旨述べ、また、「本件テキスト及び練習帳」は、「マーカーで書く」、「ZIGマーカーで書く」と紹介されている(乙3、乙4)ことから、「本件テキスト及び練習帳」は、マーカーで書くことを前提にしたカリグラフィーの習得のための知識や技術を修得又は練習するためのものであり、カリグラフィーを書くためにはマーカーの使用が前提とされている。
2 判断
上記1からすると、商標権者サービスは、商標権者が自社の取引先である文房具店に対し、本来商品として販売される「本件テキスト及び練習帳」を、無償で提供するものであるが、その目的及び用途は、文房具店自身が直接閲覧などして利用するというよりは、文房具店が店舗訪問客に自由に閲覧をさせて、カリグラフィーへの興味を獲得させることにある。そして、上記1(4)のとおり、「本件テキスト及び練習帳」は、マーカーで書くことを前提にしたカリグラフィーの習得のための知識や技術を修得又は練習するためのものであるから、店舗訪問客のカリグラフィーへの興味獲得を目的とするほかに、「本件テキスト及び練習帳」及びマーカーの購入につなげることをも目的とし、文房具店の店頭に無償で設置されたものというべきである。
そうすると、商標権者サービスは、独立した役務(図書の貸与)というよりは、カリグラフィーの興味獲得や「本件テキスト及び練習帳」及びマーカーの購入を促すための宣伝広告の一環と捉えられるものであり、当該行為に付随して行われるサービスというべきである。
以上よりすれば、商標権者サービスは、商取引の対象である独立した役務であるということはできず、商標権者が要証期間内に、請求に係る指定役務のうち「図書の貸与」について、本件商標(社会通念上同一の商標を含む。以下同じ。)を使用したと認めることはできない。
その他、乙各号証から、商標権者が、本件商標を請求に係る指定役務について使用しているとみるべき特段の事情は見当たらない。
3 まとめ
以上のとおり、商標権者である被請求人は、要証期間に日本国内において、商標権者、通常使用権者又は専用使用権者のいずれかが、請求に係る指定役務について、本件商標を使用していた事実を証明したものとは認めることはできない。
また、被請求人は、本件商標を請求に係る指定役務に使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、その指定役務中、第41類「図書及び記録の供覧,図書の貸与」について、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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