商標取消審判
2021-300180
ドスラム
- 審判番号
- 2021-300180
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2012-022925
- 登録番号
- 5519752
- 請求日
- 2021年03月11日
- 審決日
- 2022年03月09日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【請求人】オスラム ゲーエムベーハー
- 【請求人代理人】山本 秀策
- 【請求人代理人】飯田 貴敏
- 【請求人代理人】石川 大輔
- 【請求人代理人】山本 健策
- 【請求人代理人】井▲高▼ 将斗
- 【被請求人】株式会社 半導体エネルギー研究所
- 【被請求人代理人】特許業務法人不二商標綜合事務所
- 【被請求人代理人】古城 春実
- 【被請求人代理人】牧野 知彦
- 審判長/審判官
- 審判長 岩崎 安子
- 審判官 森山 啓
- 審判官 板谷 玲子
- 分類
- T132 .1 -Z (W4042)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第2条第3項第8号、商標法第50条第1項、商標法第50条、商標法第50条第2項、商標法第2条第3項第3号、商標法第2条第3項第4号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第5519752号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第5519752号商標の指定商品及び指定役務中、第40類「全指定役務」及び第42類「全指定役務」についての商標登録を取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第5519752号商標(以下「本件商標」という。)は、「DOSRAM」の欧文字を標準文字で表してなり、平成24年3月26日に登録出願、第9類に属する商標登録原簿記載の商品、並びに第40類「半導体の加工又は製造に関する情報の提供,半導体チップの製造・加工又は組立に関する情報の提供,半導体メモリーの製造・加工又は組立に関する情報の提供,半導体素子の製造・加工又は組立に関する情報の提供」及び第42類「半導体の設計に関するコンサルティング,電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路に関する試験又は研究,電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路に関する試験又は研究に関する情報の提供,電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路の設計,電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路の設計に関する情報の提供,半導体チップの試験・検査・研究」を指定商品及び指定役務として、同年8月15日に登録査定、同年9月7日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
なお、本件審判の請求の登録は、令和3年3月24日であり、本件審判の請求の登録前3年以内の平成30年3月24日から令和3年3月23日までを以下「要証期間」という。
第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第40類「全指定役務」及び第42類「全指定役務」(以下「請求に係る指定役務」という。)について継続して3年以上日本国内において本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)要証期間における使用がないこと
本件商標の存在が確認できる証拠は、乙第1号証の2、同第9号証ないし同第12号証及び同第16号証の2のみである。
乙第1号証の2の左上部分に「2021/5/6」と記載があることから明らかなように、これは、2021年5月6日当時の被請求人ウェブページの内容を示すものにすぎない。よって、乙第1号証の2は、要証期間における本件商標の使用を証明するものではない。
乙第9号証には「2019」と記載がある以外は日付に関する記載がなく、いつ作成されたものか不明であるほか、それがいつ展示、頒布等されたものかについても、乙第9号証自体からは全く不明というほかない。
被請求人は、乙第9号証を他の証拠と組み合わせることで、乙第9号証と同じ内容のものが、要証期間中の2019年4月3日から5日に開催されたEXPOにて掲示されていたなどと主張しているようにも見える。しかし、乙第10号証ないし同第12号証では、確かに本件商標の存在が確認できるものの、それ以上の内容は把握できず、乙第10号証ないし同第12号証に掲示のものが、乙第9号証と同じものであるかは不明である。もとより、乙第10号証ないし同第12号証が、要証期間中の様子を撮影したものか否かも明らかでない。よって、乙第9号証と同じ内容のものが、要証期間中のEXPOで掲示されていたことを証明する証拠は存在しない。
なお、被請求人は、乙第14号証を指摘しながら、要証期間中に、乙第9号証と同じ内容のものが、電磁的方法により提供されていた旨の主張も展開するが、乙第14号証のどこをみても、乙第9号証らしきものは見当たらず、この主張は明らかに失当である。
以上より、乙第9号証は、それ自体では、要証期間中における本件商標の使用を証明するものではないほか、他の証拠と組み合わせてみても、要証期間中に乙第9号証と同じ態様での使用があったことは証明されていないといわざるを得ない。
次に、乙第10号証ないし同第12号証について検討するに、これらが要証期間中の様子を撮影した写真であるか否かは、この証拠自体から不明であるほか、要証期間中の様子であることを証明する他の証拠も存在しない。ちなみに乙第8号証の2の内容自体を信用することはできず、これと乙第8号証の1との間の関連性も不明というほかなく、したがって、乙第8号証の1が要証期間中の様子を撮影した写真であることを裏付ける客観的証拠はない。そうすると、いかに乙第8号証の1と組み合わせて乙第10号証ないし同第12号証をみたところで、要証期間中の様子を撮影した写真であることの証明は一切ない。
さらに、乙第16号証の2について、それ自体に発行日などの日付に関する記載はない。したがって、乙第16号証の2は、要証期間における使用を明らかにする証拠とはいえない。被請求人の主張内容からすれば、乙第16号証の1にある「2018年10月10日発行」という記載とあわせてみたときに、乙第16号証の2が要証期間中の証拠といい得ると述べているようにも見える。しかし、乙第16号証の1が、乙第16号証の2の表紙であることを裏付ける証拠はない。よって、乙第16号証の1と同第16号証の2の関係性が不明である以上、同第16号証の2は、要証期間における本件商標の使用を証明するものではない。
結局、被請求人が提出した証拠によっては、本件商標が、要証期間中に使用されていたことの証明はないことに帰する。
(2)請求に係る指定役務への使用がないこと
商標法上の「役務」とは、「他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たり得べきもの」をいい(平成27年(行ケ)10223号)、請求に係る指定役務もそうした性質を有するものと証拠上評価できるものでなければならない。そして、「商取引」とは、「商業上の取引行為」をいい(甲2)、「取引」とは、「商人と商人、又は商人と顧客との間の売買行為。営利のためになす経済行為。相互の利益になるような交換条件で事を処理すること。」をいう(甲3)。
そうすると、請求に係る指定役務への使用があったというためには、証拠上、請求に係る指定役務に関わる、半導体等の加工、製造、組立、設計、試験、研究又は検査についての記載があるだけでは足らず、それらに関する交換条件(対価等)の記載など、それらが商取引の対象となっていることまで明らかにされる必要がある。
これを乙第9号証についてみると、「DRAM」という記載はあるものの、それを加工、製造、組立、設計、試験、研究又は検査することについての記載は存在せず、その対価等に関する記載も全くない。したがって、乙第9号証は、請求に係る指定役務についての記載を欠くものである。なお、被請求人は、本件商標の第9類の全指定商品を対象とした不使用取消審判(取消2021-300179)においても、乙第9号証と同じものを証拠として提出した上で、同証拠は、第9類の指定商品への使用の存在を示すものであるなどと主張するが、このこと自体、乙第9号証に具体的な商品・役務に関する記載がないことから、商品及び役務のいずれでも主張を展開できるたぐいの証拠であって、乙第9号証が本来的に説得力を欠くものにすぎないことを端的に示している。
したがって、乙第9号証では、請求に係る指定役務への使用を証明できないというほかない。よって、いくら乙第9号証と同じ内容のものが、要証期間中のEXPOなどで掲示されていたと主張してみたところで、結局のところ請求に係る指定役務への使用が認められないことに変わりはない。
次に、乙第16号証の2についてみるに、「OSLSIチップに関する共同開発、技術供与及び試作が可能」という記載がある。しかし、請求に係る指定役務の文言である「加工、製造、組立、設計、試験、研究又は検査」という記載ではない。また、対価等に関する記載も全くない。この証拠では、「新しいアプリケーションを探索してみませんか?」などと他社と一緒にアプリケーションを探索することが強調されているが、対価の記載もないままに、他社と一緒に新たなビジネスを探索することを誘う内容のものについて、商取引の目的となるべき「役務」の広告と評価することは困難といわざるを得ない。さらに言えば、被請求人が、当時どのような仕組みで利益を上げており、その仕組みが、請求に係る指定役務とどのように関わっているのかについても不明である。
したがって、乙第16号証の2も、請求に係る指定役務についての記載を欠くものである。
このほか、請求に係る指定役務に関する取引が実際に存在したのであれば、それに伴う様々な(対価等の記載を含む)取引書類が存在してしかるべきであり、被請求人はこうした書類を容易に証拠提出できるはずである。そうであるにもかかわらず、被請求人は、このような書類を一切提出しておらず、こうした被請求人の証拠提出に関する態度も、同人による請求に係る指定役務への本件商標の使用が存在しなかったことを示している。
(3)請求に係る指定役務「について」の本件商標の使用がないこと
商標法50条によれば、被請求人は、請求に係る指定役務「について」、本件商標が使用されていることを証明する必要がある。
そして、最判昭和43年2月9日民集22巻2号159頁は、上記「について」の解釈に関し、商品・役務との具体的関係において登録商標が使用されていることを要すると述べていることから、単に、請求に係る指定役務と本件商標の双方が同じ証拠上に存在するのみでは足りず、それらの間に具体的な関係性が認められることまで必要となる。
これを乙第9号証及び同第16号証の2についてみると、既に述べたとおりいずれも請求に係る指定役務の記載を欠くことから、上記の具体的な関係性を認めるべき前提を欠く。
また、百歩譲って、前記各証拠に請求に係る指定役務の記載があるとしても、乙第9号証から、請求に係る指定役務と本件商標の具体的関係性を見いだすことはできない。乙第16号証の2についても、この証拠中の「OSLSIチップに関する共同開発、技術供与及び試作が可能」という記載からは、「OSLSI」商標と「共同開発、技術供与及び試作」との間の具体的な関係性を見いだすことができるとしても、本件商標「DOSRAM」と「共同開発、技術供与及び試作」という記載部分との間の具体的な関係性は到底把握できない。
結局、乙第9号証及び同第16号証の2からは、請求に係る指定役務と本件商標の間の具体的な関係性が明らかでなく、請求に係る指定役務「について」の本件商標の使用は証明できていないことに帰する。
(4)結語
以上のとおり、被請求人が提出した証拠によっては、要証期間中に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者により請求に係る指定役務に本件商標が使用されたことが明らかになっていない。よって、本件商標は、請求に係る指定役務について、商標法第50条第1項により、その登録が取り消されるべきである。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、答弁において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第16号証(枝番を含む。)を提出した。
1 被請求人について
被請求人である株式会社半導体エネルギー研究所は、1980年に設立され、主に以下を事業内容とする会社である(乙1の1)。
<下記分野における研究開発>
・結晶性酸化物半導体を用いたトランジスタや集積回路、及びそれらを統合した半導体デバイス
・バッテリーの各材料、及びそれらを統合したデバイス
・液晶・有機ELの材料や素子、及びそれらを統合したディスプレイデバイス
<結晶性酸化物半導体を用いたデバイスの量産試作>
<研究開発成果の特許取得、権利活用>
被請求人社名の英語表記は、Semiconductor Energy Laboratory Co.,Ltd.であり、頭文字を取った「SEL」の略称や会社ロゴも被請求人の出所表示として併用している(乙1の1)。
2 商標の使用の事実
(1)乙第1号証の2は被請求人ウェブサイトからの写しであり、被請求人が研究開発した半導体関連の成果物につき本件商標を用いて紹介されている。被請求人は本件商標を自社のウェブサイトを含め、現在に至るまで継続的に使用しているが、2019年に国内で使用していた例として、「第3回AI・人工知能EXPO」を説明する。
(2)ここで「AI・人工知能EXPO」とは、リードエグジビションジャパン株式会社が主催する、AI・人工知能に特化した我が国最大級の専門展であり、2017年の第1回を皮切りに毎年開催されている(乙2)。2022年5月には第6回の開催が予定されている(乙3)。なお、2020年より毎10月に「AI・人工知能EXPO」の秋展も開催されており、従前から続く「AI・人工知能EXPO」を春展として開催回数のカウントは別となっている(乙2)。
「AI・人工知能EXPO」では各社によって最先端のAI技術が展示され、AIを導入している企業・開発者などが多数来場し、出展社と来場者による商談が活発に行われている。実際、「AI・人工知能EXPO」のウェブサイトには「本展は商談のための展示会です」のように、「AI・人工知能EXPO」が単なる技術見本市ではなく、商取引を目的とした展示会であることが強調して謳われている(乙4、乙5)。
商談においては、新製品の受発注や技術ライセンスの供与交渉のみならず、乙第1号証にいう量産試作にあたる新規技術を用いた製品の試作・製作、同製品の加工・製造又は組立等に関する情報の提供、同製品の設計に関するコンサルティング・試験・検査・研究といったことが顧客の求めに応じて行われている。試作・製作に関しより具体的には、バイヤー(乙2)からの求めに応じ被請求人が試作品たる商品を提供し、その先は被請求人が当該商品を卸すかたち、バイヤーと共に販売するかたち、技術を引き継いだバイヤーが販売するかたちが想定される。
(3)被請求人は、2019年の「第3回AI・人工知能EXPO」(以下「AI EXPO2019」という。)に出展して本件商標を使用した。「AI EXPO2019」は東京都江東区に所在する東京ビッグサイト(東京国際展示場)で2019年4月3日から5日にかけて開催された(乙6)。
乙第7号証は「AI EXPO2019」の会場案内図であり、左下にピンク色のマーカーで図示するとおり被請求人がブースを設けて出展していた事実が分かる。
乙第8号証の1は「AI EXPO2019」の初日となる4月3日に撮影された写真であり(乙8の2)、キーエンス社のブースを背にして被請求人ブースを見たとき、左奥にSOLIZE社のブースが視認できる。このことからも、被請求人が確かにブースを設けて「AI EXPO2019」に出展していた事実が分かる。
(4)「AI EXPO2019」において、被請求人は本件商標を付したポスター(以下「被請求人ポスター」という。)を自社ブースの壁面に展示していた(乙9~乙11)。乙第12号証は乙第8号証の1の略右半分を拡大したものであり、壁面に展示されている被請求人ポスターのタイトルを見ると左から順に「DOSRAM」「信頼性と特性ばらつき」「移動度・遮断周波数」と並んでいる。これは乙第10号証で壁面に展示されている被請求人ポスターの並び順と合致するから、被請求人が確かにブースで被請求人ポスターを展示していた事実が分かる。
被請求人ポスターの左最下部には被請求人の出所表示たる会社ロゴが表され、右最下部には「第3回AI・人工知能EXPO」の文字が表されているから(乙9)、被請求人ポスターは「AI EXPO2019」において被請求人が用いたものであることが分かる。
(5)加えて、被請求人ポスターは被請求人のブースにおける展示のみならず、ブースを訪問した来場者がポスターの内容を後から参照できるよう、電子データとしても頒布していた。その頒布方法は、ブースを訪問した来場者に名刺大のカードを手渡し(乙13)、カードを受け取った者はそこに印字されたQRコード(審決注:登録商標)をスマートフォン等で読み取る、又はQRコード(審決注:登録商標)下部のURLを入力することによって専用サイトヘアクセス可能となり、被請求人ポスターをPDF形式の電子データで取得することができる、というものであった(乙14)。
(6)そして、被請求人ポスターの最上部には本件商標と同じ「DOSRAM」の文字が大きく表されており、その右肩には被請求人の登録商標であることを示す「R」(Rマーク)(審決注「R」は、○の中にRの文字。)も付されている(乙9)。
本件商標の下には「動作周波数200MHz、1時間保持を達成したDRAM」と記載されているところ(乙9)、「DRAM(ディーラム)」とはコンピュータなどに使用される半導体メモリの一種であるDynamic Random Access Memory(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ)の略語として一般に知られている(乙15)。また、被請求人ポスター中「DOSRAMとは」という欄において、「CAAC-IGZO(審決注:Rマーク付き) FETの極小オフ電流特性を利用した長い保持時間が可能となり、低リフレッシュレートを実現」・「1 CAAC-IGZO FET+lCメモリセルをSi回路上に積層した構造」・「センスアンプの上に面積が増加することなくメモリセルアレイを積層可能」・「ビット線が分割でき、セル容量をDRAMの1/5~1/10に削減」といった説明が記載されている(乙9)。
これは、被請求人が開発した半導体メモリの製造・加工又は組立に関する技術情報や、試験又は研究に関する情報を宣伝・広告しているものといえる。
(7)実際、被請求人は独自開発した技術を用い、顧客の求めに応じて(あるいは顧客と共に)半導体メモリを試作・製造したり、試験・研究を行ったりしている。乙第16号証の1は2018年10月10日に応用物理学会が発行した月刊誌「応用物理」(第87巻第10号)の表紙写しであり、この月刊誌に、被請求人は本件商標を使用した広告を掲載している(乙16の2)。この広告において、「極低消費電力OSLSIRを試作して新しいアプリケーションを探索してみませんか?」の文字の下に本件商標「DOSRAM」が表されている。また、概要として「シリコンLSIでは難しい・・・チップに関する共同開発、技術供与および試作が可能」や、問い合わせ方法として「お問い合わせ先:・・・ご連絡ください。」のように情報が示されている。このように、被請求人は「DOSRAM」に関する共同開発や技術供与を業として行っているものであり、「AI EXPO2019」における商談もこれを受けて行われるものである。
3 商標法第50条第2項の要件を充足すること
上記2で述べた被請求人による本件商標の使用の事実を、商標法第50条第2項の要件にあてはめて以下検討する。
(1)審判の請求の登録前3年以内
「AI EXPO2019」は2019年4月3日から5日にかけて開催されたものであるから、要証期間内の展示会である。
(2)日本国内において
「AI EXPO2019」は東京都江東区に所在する東京国際展示場で開催されたものであるから、日本国内における展示会である。
(3)商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが
「AI EXPO2019」でブースを出展したのは被請求人であり、同ブースに展示された被請求人ポスターには被請求人の出所表示たる会社ロゴが表されているから、「AI EXPO2019」において本件商標を使用したのは商標権者たる被請求人である。
(4)請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかに
被請求人は独自開発した技術を用い、顧客の求めに応じて(あるいは顧客と共に)半導体メモリを試作・製造・試験・研究したり関連情報の提供を行ったりしている。これらは独立して取引対象とすることができ、他人のために行う労務又は便益である。そのため本件商標は、第40類の指定役務「半導体の加工又は製造に関する情報の提供,半導体チップの製造・加工又は組立に関する情報の提供,半導体メモリの製造・加工又は組立に関する情報の提供,半導体素子の製造・加工又は組立に関する情報の提供」、及び第42類の指定役務「電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路に関する試験又は研究,電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路に関する試験又は研究に関する情報の提供,電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路の設計,電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路の設計に関する情報の提供,半導体チップの試験・検査・研究」について使用されているといえる。
(5)登録商標を
被請求人ポスターの最上部には、黒色のゴシック体で「DOSRAM」の文字が大きく表されている。これは本件商標、すなわち被請求人の登録商標と同一視できるものである。
(6)使用した
被請求人ポスターは被請求人による半導体メモリの加工又は製造に関する情報や、半導体メモリに関する試験又は研究に関する情報の提供という役務についての広告物であり、これを被請求人のブースにおいて展示していたから、商標法第2条第3項第8号に規定する商標の広告的使用に該当する。
加えて、被請求人は「AI EXPO2019」において、来場者に被請求人ポスターをPDF形式の電子データで取得させており、ネットワークを通じて上記役務についての広告物を頒布したといえる。この行為についても商標法第2条第3項第8号に規定する商標の広告的使用に該当する。
4 むすび
以上、本件商標は、被請求人により、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件審判の請求に係る指定役務について使用されていることが明らかである。
したがって、本件商標は請求人主張の取消理由(商標法第50条第1項)に該当するものではなく、本件審判請求は成り立たない。
第4 審尋
当審より被請求人に対し、令和3年8月26日付け審尋において、「被請求人の主張及び提出された証拠からは、被請求人が、要証期間に、日本国内において、『半導体メモリの加工又は製造に関する情報の提供,半導体メモリに関する試験又は研究に関する情報の提供』を含む本件審判の請求に係る指定役務について、本件商標を使用していたことを確認することができない。この点に関し、被請求人は、乙第9号証のポスターが、被請求人による半導体メモリの加工又は製造に関する情報や半導体メモリに関する試験又は研究に関する情報の提供についての広告物であり、これを被請求人のブースにおいて展示等していたから、商標法第2条第3項第8号の広告的使用に該当する旨主張しているが、同ポスターからは、本件商標について、『半導体メモリの加工又は製造に関する情報の提供,半導体メモリに関する試験又は研究に関する情報の提供』の商標として、商標法第2条第3項第8号の使用が行われている事実を確認することができない。したがって、被請求人の提出した証拠によっては、被請求人が要証期間に、日本国内において、本件商標を本件審判の請求に係る指定役務について使用したことを証明したものと認めることができない。」旨の合議体の暫定的見解及び請求人が提出した令和3年7月5日付けの弁駁書に対する回答を求めた。
第5 審尋に対する回答
被請求人は、令和3年9月30日付けの回答書において、審尋に対する回答を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第17号証ないし乙第19号証を提出した。
1 乙第9号証は、被請求人である株式会社半導体エネルギー研究所が、「AI EXPO2019」において自社ブースの壁面に展示していたポスター(「被請求人ポスター」)である。
答弁書で述べたとおり、被請求人ポスターには、本件商標「DOSRAM」の下、被請求人が新規開発した半導体メモリの一種であるDRAM(ディーラム)の特性や構造等に関して図を交えて紹介されている。被請求人ポスターにおける情報に基づき、以下詳説する。
<セル(電子回路)及び積層構造>
被請求人ポスターの上段において、被請求人の新規開発にかかる半導体メモリ(以下「新半導体メモリ」という。)が、どのような回路で、どのような積層構造を備えるべきか図を用いて詳説されている。具体的には、CAAC-IGZO FET(酸化物半導体トランジスタ)と容量素子を接続させること、SiFET(シリコン電界効果トランジスタ)層上にCAAC-IGZO FET層を作ること等を説明し、これにより新半導体メモリを構成する部品をどのように接続するか、どのように作るかという情報の提供を行っているのである。
すなわち、請求人ポスターは、本件商標の指定役務にかかる第40類「半導体の加工又は製造に関する情報の提供,半導体チップの製造・加工又は組立に関する情報の提供,半導体メモリの製造・加工又は組立に関する情報の提供,半導体素子の製造・加工又は組立に関する情報の提供」や、第42類「電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路の設計に関する情報の提供」が、本件商標「DOSRAM」を用いて行われていることを示している。
<書き込み時間の見積もり、保持時間の見積もり>
被請求人ポスターの中段において、「書き込み時間の見積もり」と題する左図では、CAAC-IGZO FETを用い、新半導体メモリヘデータを書き込むための時間を算出する方法を提供している。また、「保持時間の見積もり」と題する右図では、CAAC-IGZO FETを用い、新半導体メモリヘデータを書き込んだデータがどれぐらい保持できるかを算出する方法を提供している。
これら方法は、被請求人たる株式会社半導体エネルギー研究所が、その主要事業とする半導体分野における研究開発の成果であり、日進月歩のグローバル開発競争下に身を置く業界関係者にとっては関心の高い情報である。
すなわち、被請求人ポスターは、本件商標の指定役務に係る第42類「電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路に関する試験又は研究に関する情報の提供」が、本件商標「DOSRAM」を用いて行われていることを示している。
<動作周波数の見積もり>
さらに、被請求人ポスターの中段において、「動作周波数VS.保持時間」と題する左下部のプロット(グラフ)によると、新半導体メモリを200MHz以上の周波数、-40℃~125℃で動作した際にデータを保持できる時間を示している。新半導体メモリによれば、データの長期保持ができ、リフレッシュ回数の削減も可能となり、低消費の電力メモリを実現できるという有益な情報が提供されているのである。
すなわち、この事実によっても、被請求人ポスターは、本件商標の指定役務にかかる第42類「電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路に関する試験又は研究に関する情報の提供」が、本件商標「DOSRAM」を用いて行われていることを示している。
<想定モジュール>
被請求人ポスターの下段において、新半導体メモリがどのようなメモリモジュール(構成要素)よりなるかを示し、どのような設計(配置・レイアウト)が想定されるかという設計情報を提供している。
すなわち、被請求人ポスターは、本件商標の指定役務にかかる第42類「電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路の設計に関する情報の提供」が、本件商標「DOSRAM」を用いて行われていることを示している。
なお、この被請求人ポスター下段には、SiFET層上にCAAC-IGZO FET層を作ること等を説明し、設計情報のみならず製造に関する情報も提供しているから、被請求人ポスターは、本件商標の指定役務にかかる第40類「半導体の加工又は製造に関する情報の提供,半導体チップの製造・加工又は組立に関する情報の提供,半導体メモリの製造・加工又は組立に関する情報の提供,半導体素子の製造・加工又は組立に関する情報の提供」が、本件商標「DOSRAM」を用いて行われていることを示している。
2 被請求人は、答弁書提出時に、応用物理学会が発行した月刊誌「応用物理」(第87巻第10号)において本件商標を使用した広告の掲載事実(乙16の1、乙16の2)を示しているところ、これに関して合議体の見解が示されていないため、改めて以下申し述べる。
乙第16号証の2に開示される広告(以下「被請求人広告」という。)の上段において、左から二番目に、「リフレッシュ頻度の低いDRAM」という説明と併せて本件商標「DOSRAM」の文字が見て取れる。この上に半導体メモリのモジュール写真が掲載されているため、「DOSRAM」が、商品についての商標であると理解され得る面は否定するものではないが、被請求人広告を下記(1)ないし(4)を踏まえ全体的に観察するに、他人の求めに応じて提供され、商取引の対象となるサービスに関する広告物として捉えることも十分に可能なはずである。
(1)被請求人広告の上段には、極低消費電力のOSLSI(酸化物半導体)につき「試作して新しいアプリケーションを探索してみませんか?」のように、被請求人の保有する技術を用いて、新規な半導体製品が試作可能である旨が記載されている。
(2)被請求人広告の中段左には、「概要」として、「OSLSIチップに関する共同開発、技術供与及び試作が可能」、「OSFET(酸化物半導体を用いたFET)技術を使用したアプリケーション試作案を募集」、「OSFETl層構造やOSFET2層構造、シリコンFET上にOSFETを配置した積層型ハイブリッド構造が可能」及び「試作は被請求人の施設で実施が可能」である旨が記載されている。
(3)被請求人広告の中段右には、「アプリケーション例」として、被請求人の技術を用いることにより、「デザインルールの緩いDRAM、フラッシュメモリ、SoC(集積回路の一種)、FPGA(同)、イメージセンサ等の信号処理系」、「生体内埋め込みチップ」、「極低消費電力センサチップ」及び「バッテリー安全制御技術」が実現可能な例として記載されている。
(4)被請求人広告の下段には、「お問い合わせ方法」として被請求人の連絡先が示され、量産化する際の担当企業についても明示されている。
これら(1)ないし(4)を本件商標の指定役務に照らしてみると、対応する関係は次のようであることが理解できる。
<第40類>
「半導体の加工又は製造に関する情報の提供,半導体チップの製造・加工又は組立に関する情報の提供,半導体メモリの製造・加工又は組立に関する情報の提供,半導体素子の製造・加工又は組立に関する情報の提供」について
(2)において、どのような技術を用いて製造・加工するか、どのような設計・構造とするか、について情報を提供している。また、(3)において、被請求人の技術により新規な半導体製品の製造が実現できる旨の情報を提供している。
<第42類>
a.「半導体の設計に関するコンサルティング」について
(1)(2)において、新規な半導体製品を被請求人と共に試作することや、(3)において具体的に実現可能なアプリケーションの設計例が示され、(4)において、具体点な連絡先を明示することにより、何時でも被請求人に相談して解決策の提案(コンサルティング)を受けることができる状況がうかがえる。
b.「電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路に関する試験又は研究,電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路の設計,半導体チップの試験・検査・研究」について
(1)(2)(3)において、被請求人が、他者のために新規な半導体製品の試作・開発・設計に応じることや、(4)において、具体点な連絡先を明示することにより、実際に何時でも応じることができる状況がうかがえる。
c.「電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路に関する試験又は研究に関する情報の提供,電子回路・半導体素子・集積回路・大規模集積回路の設計に関する情報の提供」について
(1)(2)において、被請求人の試験・研究による技術成果に関する情報や、(3)において、要求されるアプリケーションに応じて多様な回路設計ができる旨の情報を提供している。
以上のように被請求人ポスター(乙9)及び被請求人広告(乙16の2)を検討すると、被請求人が、本件商標にかかる標章を、その全ての指定役務に関する広告物に付し、展示・頒布等する(一般公衆による閲覧可能な状態に置く)行為を行っていると捉えることができるから、商標法第2条第3項第8号の使用に該当する。
ところで、本件商標「DOSRAM」は、LSI(大規模集積回路)開発に利用できる技術ラインナップの一種であるから、開発・技術供与・コンサルティングなどの際に、DOSRAMが目印となり、識別標識として機能するともいえる。そのような見方で考えると、被請求人ポスター及び被請求人広告は、被請求人が本件指定役務の提供に当たり、その提供を受ける者(例えば共同開発の相手方)の利用に供する物(技術情報等の選択肢を載せたメニューのようなもの)に、本件商標にかかる標章を付する行為を行っていると捉えることができるから、この場合、商標法第2条第3項第3号の使用に該当する。
さらに見方を変えて考えれば、被請求人ポスター及び被請求人広告は、被請求人が本件指定役務の提供に当たり、その提供を受ける者の利用に供する物に、本件商標にかかる標章を用いて役務を提供する(技術情報等を提供する)行為を行っていると捉えることもできるから、この場合は、商標法第2条第3項第4号の使用に該当することになる。
なお、下記3でも後述するが、被請求人たる半導体エネルギー研究所のビジネスモデルは一般的な企業と大きく異なっている。世の中のニーズを先取りしたテーマを探し、徹底的に研究開発を行い新しい原理を見つけ、問題を解決するための技術を発明し、特許・商標権等を取得して権利化を図り、これらが量産に活用されることで産業の発展に貢献し利益を得、その利益は次なる研究開発に再投資するというものである(乙17)。
3 実際の共同開発例
被請求人が、本件商標をその指定役務について使用している事実は上述のとおり明らかであるところ、実際に、被請求人が他者の求めに応じて半導体の加工・製造・組立・設計・試験・研究に関する情報を提供し、適宜コンサルティング(相談を受け、解決策を提示)を行い、必要に応じて試験・研究・回路設計を行った共同開発例があるので紹介する。
乙第18号証は、2013年9月2日付発行の雑誌「日経エレクトロニクス」(第1116号)に掲載された記事の写しである。この記事は、被請求人たる半導体エネルギー研究所と日本を代表する電機メーカーのS社が、酸化物半導体の実用化技術に関して共同開発を行った事例を紹介するものである。
記事中の記載及び被請求人が2012年6月付で発表したニュースリリース資料(乙19)のとおり、被請求人は、酸化物半導体の特殊な結晶構造(CAAC)を2009年に最初に発見し、同半導体を使った液晶ディスプレイの量産技術を確立すべく、液晶ディスプレイの試作を含め、S社と密接な共同開発を行った経緯がある。
被請求人たる半導体エネルギー研究所は、その名称が示すように研究開発を専門とする企業であって、他者に対する役務の提供につき、一般的な企業に比して特殊な商取引の実情が、客観的に把握し難い面は否めない。しかし、共同開発例を紹介する上記記事によれば、被請求人の特殊な取引実情を客観的にうかがうことができ、被請求人が他者の求めに応じて、半導体の加工・製造組立・設計・試験・研究に関する情報を提供し、適宜コンサルティングを行い、必要に応じて試験・研究・回路設計を行った状況を想像するのに何ら困難はない。
答弁書及び上記2でも述べたとおり、被請求人は、半導体・トランジスタ・集積回路等の研究開発、半導体を用いたデバイスの量産試作、研究開発成果の権利活用を主な事業内容とする、我が国でも特異なビジネスモデルを採る企業である。既に提出した乙号証の証拠類より、被請求人が、本件商標を指定役務について使用している事実を把握することは可能であるが、上記の共同開発例は、被請求人が、対価性あるサービス(半導体等に関する情報の提供,コンサルティング及び試験・研究・設計)を日頃から他者に対して行っていることが十分に理解できる事例である。
すなわち、被請求人には特異なビジネスモデル及び商取引性が存することを前提としつつ、被請求人が日常的に行っている上記のような共同開発例を踏まえて総合考慮すれば、乙号証(特に乙9、乙16の2)に示される事実はさらに説得力が増し、被請求人が、本件商標を全ての指定役務について使用していることが疑いようなく理解できるはずである。
4 むすび
本件商標は、被請求人により、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件審判の請求に係る指定役務について使用されていることが明らかである。
第6 当審の判断
1 事実認定
被請求人の提出した証拠及び当事者の主張によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)被請求人は、1980年に設立され、結晶性酸化物半導体を用いたトランジスタや集積回路及びそれらを統合した半導体デバイスの研究開発、結晶性酸化物半導体を用いたデバイスの量産試作等を主な事業内容とする株式会社である(乙1の1)。
被請求人社名の英語表記は、Semiconductor Energy Laboratory Co.,Ltd.(略称「SEL」)であり、会社ロゴは別掲のとおりである(乙1の1)。
(2)「AI・人工知能EXPO」は、リードエグジビションジャパン株式会社が主催する、AI・人工知能に特化した我が国最大級の専門展であり、2017年の第1回以降、毎年開催されている(乙2、乙3、乙5等)。「AI・人工知能EXPO」は、「商談のための展示会」(乙4、乙5)であり、各社によって最先端のAI技術が展示され、AIを導入している企業・開発者などが来場し、出展社と来場者による商談が行われている(乙4等)。
(3)被請求人は、東京都江東区に所在する東京ビッグサイト(東京国際展示場)で2019年(平成31年)4月3日から5日にかけて開催された「AI EXPO2019」(「第3回AI・人工知能EXPO」)にブースを設けて出展した(乙5~乙8の1)。
(4)被請求人ポスター(乙9)には、中央最上部に「DOSRAM」の文字が太字のゴシック体の書体で大きく表され、当該文字の下には「動作周波数200MHz、1時間保持を達成したDRAM」と記載され、「DOSRAMとは」、「単体FET特性によるDOSRAM動作周波数見積り」及び「DOSRAMモジュール」の各項目について説明がなされており、また、左最下部には被請求人の会社ロゴが表され、右最下部には「第3回AI・人工知能EXPO」の文字が表されている。そして、「DRAM(ディーラム)」とはコンピュータなどに使用される半導体メモリの一種であるDynamic Random Access Memory(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ)の略語(乙15)であることから、「DOSRAM」は、被請求人が開発した半導体メモリの商品名として使用されているものである。
(5)乙第8号証の1、乙第10号証ないし乙第12号証の写真は、ブースの壁面に展示されているポスターの文字等に一部読みづらい点はあるものの、タイトルを見ると左から順に「DOSRAM」「信頼性と特性ばらつき」「移動度・遮断周波数」と並んでいること、各ポスターの図表の位置や表し方が概ね合致していること、「導体エネルギー研究所」(「半」の文字は柱に隠れているものと認められる。)の看板が表示されていること、被請求人の会社ロゴを背中側に表示した被服を着用した者がブース来場者に応対していること、被請求人と「SOLIZE」のブースの位置関係(乙8の1)が「第3回AI・人工知能EXPO」の会場案内図(乙7)と合致すること等から、いずれの写真も「AI EXPO2019」(「第3回AI・人工知能EXPO」)における被請求人のブースの様子を撮影したものと認められる。
(6)そして、乙第10号証ないし乙第12号証の各写真において、被請求人のブースの壁面に展示された青色を基調としたポスターの左から2つ目のポスターにおける「DOSRAM」の文字の位置、図表の位置や表し方等が、色彩も含め、被請求人ポスター(乙9)と概ね合致していること、被請求人ポスター(乙9)の右最下部に「第3回AI・人工知能EXPO」の文字が表されていること等から、被請求人ポスター(乙9)は、「AI EXPO2019」における被請求人のブースにおいて展示されていたものと認められる。
(7)カード(乙13)には、日本語で記載された表面の上段に「株式会社半導体エネルギー研究所」の文字がeメールアドレス、URLとともに表示されており、中段に「この度は、SELブースにお立ち寄りいただきありがとうございました。弊社ブースに掲示されているポスター資料は、右記のQRコード(審決注:登録商標)/WEBアドレスより閲覧が可能です。」の説明が表示されているが、「第3回AI・人工知能EXPO」で被請求人が頒布したことは確認できない。
(8)被請求人ウェブサイト(乙14)には、「ポスターPDFダウンロード」として「弊社ブースに掲示したポスターをPDFでダウンロードできます。」との説明、「第3回AI・人工知能EXPO(2019年4月3~5日)」の項目にダウンロードされるポスターの画像が表示されているが、表示されているポスターの画像は、被請求人ポスター(乙9)ではないので、被請求人ポスター(乙9)の電子データが被請求人ウェブサイト(乙14)に格納されていて、ダウンロードできることは確認できない。
(9)2018年10月10日に応用物理学会が発行した「応用物理学(第87巻第10号)」(乙16の1)には、以下を主な内容とする被請求人の広告(乙16の2)が掲載されている。
ア 上段には、標題として、「結晶性酸化物半導体」及び「CAAC-IGZO」の文字が二段で併記されている。
イ 標題の下に「極低消費電力OSLSIを試作して新しいアプリケーションを探索してみませんか?」の文字が二段で記載され、その直下に4つの商品が写真付きで表示されており、その左から2つ目に「DOSRAM」の文字が「リフレッシュ頻度の低いDRAM」の説明とともに記載されている。「DOSRAM」は、被請求人が開発した半導体メモリの商品名として使用されている。
ウ 中段には、「OSLSIを使用したイノベーティブなアプリケーションを探しています!」の文字が、その「概要」や「アプリケーション例」とともに記載されている。
エ 下段には、「お問い合わせ方法」が記載されており、左下には、「株式会社半導体エネルギー研究所」の文字が、本社住所、電話番号、URL、eメールアドレスとともに表示されている。
(10)被請求人ウェブサイトの企業情報(乙17)には、「世の中のニーズを先取りしたテーマを探し、徹底的に研究開発を行い新しい原理を見つけ、問題を解決するための技術を発明。同時に、特許を取得し発明を守り、自らの技術・発明を世界中に認めてもらい、量産に活用されることで産業の発展に貢献し、利益を得る。その利益は次なる研究開発に再投資する。この知的創造サイクルの循環が、当社が目指すビジネスモデルです。」との記載があるが、本件商標の使用は確認できない。
(11)日経エレクトロニクス9月2日号(2013年9月2日発行)(乙18)には、被請求人が酸化物半導体の実用化技術に関してS社と共同開発を行った旨の記事が掲載されているが、要証期間外の雑誌であり、本件商標の使用も確認できない。
(12)ニュースリリース資料(2012年6月1日付)(乙19)と主張する資料には、被請求人が、酸化物半導体の新しい結晶構造(CAAC)を2009年に発見し、同半導体を使った液晶ディスプレイの量産技術を確立すべく、液晶ディスプレイの試作を含め、S社と共同開発を行った経緯等の記載があるが、要証期間外の資料であり、本件商標が請求に係る指定役務について使用された事実も確認できない。
2 判断
上記1で認定した事実によれば、本件商標の商標権者は、2019年(平成31年)4月3日から5日にかけて、東京都江東区に所在する東京ビッグサイト(東京国際展示場)で開催された「AI EXPO2019」(乙5~乙8の1、乙10~乙12)の展示ブースにおいて、「半導体メモリ」に関するポスター(乙9)に本件商標と社会通念上同一の商標を付して展示する行為をしていたことが認められる。また、本件商標の商標権者は、2018年(平成30年)10月10日に応用物理学会が発行した「応用物理学(第87巻第10号)」(乙16の1)に、「OSLSIチップに関する共同開発、技術供与及び試作」等に関する広告(乙16の2)を掲載しており、当該広告の一部には、本件商標と社会通念上同一の商標が、「リフレッシュ頻度の低いDRAM」(半導体メモリ)の商標として表示されていることも認められる。
しかしながら、被請求人が提出した全ての証拠をみても、被請求人が請求に係る指定役務との具体的関係において、本件商標(社会通念上同一の商標を含む。)を使用していたことを認めるに足る事実は見いだせない。
したがって、被請求人が、要証期間に日本国内において、請求に係る指定役務について、本件商標を使用したことを認めることができない。
3 被請求人の主張について
(1)被請求人は、「DOSRAM」の文字が付された被請求人ポスター(乙9)は、被請求人による半導体メモリの加工又は製造に関する情報や、半導体メモリに関する試験又は研究に関する情報の提供という役務についての広告物であり、これを被請求人のブースにおいて展示していたから、商標法第2条第3項第8号に規定する商標の広告的使用等に該当する旨主張している。
しかしながら、「DOSRAM」は、被請求人が開発した半導体メモリの名称であって、被請求人ポスター(乙9)は、当該半導体メモリの広告と認められるから、被請求人の主張を採用することはできない。
(2)被請求人は、被請求人広告(乙16の2)は、全体的に観察すれば、他人の求めに応じて提供され、商取引の対象となるサービスに関する広告物として捉えることも十分に可能であり、指定役務に関する広告物に本件商標を付し、頒布等する行為を行っていると捉えることができるから、商標法第2条第3項第8号の使用に該当する旨主張している。
しかしながら、被請求人広告(乙16の2)において、「DOSRAM」の文字は、「DRAM」(半導体メモリ)との関係で使用されており、請求に係る指定役務との関係で使用されているわけではないから、被請求人の主張は採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間に日本国内において、商標権者、通常使用権者又は専用使用権者のいずれかが、請求に係る指定役務について、本件商標を使用していた事実を証明したものとは認められない。
また、被請求人は、本件商標を請求に係る指定役務に使用していないことについて正当な理由があったということもできない。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品及び指定役務中、第40類「全指定役務」及び第42類「全指定役務」について、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-300180