2021-015710
導電性基板、導電性基板の製造方法
- 審判番号
- 2021-015710
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-513115外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年11月16日
- 審決日
- 2022年05月24日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】住友金属鉱山株式会社
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 分類
- P18 .121-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 9項目
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)4月7日(優先権主張 平成28年4月18日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
同 年 4月5日 : 意見書の提出
同 年 8月3日付け : 拒絶査定
同 年11月16日 : 審判請求書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和3年8月3日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第3 本願発明
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、令和3年11月16日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、それらのうちの本願発明1は、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】透明基材と、前記透明基材の少なくとも一方の面上に形成された金属配線と、を有し、前記金属配線は、銅配線層と、ニッケルと銅とを含有する黒化配線層とが積層された構造を有し、前記金属配線間から露出する前記透明基材は、可視光透過率が90%以上であり、かつb* が0.1以上1.0以下である導電性基板。」
第4 引用文献、引用発明
1 引用文献1、引用発明
(1)原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。
「[0032](2)本発明に係る電極基板フィルムとこの製造に用いられる積層体フィルム(2-1)本発明に係る電極基板フィルム図1(C)に示すように樹脂フィルムから成る透明基板52と、該透明基板52に設けられかつ金属製の積層細線から成るメッシュ構造の回路パターンを有する本発明に係る電極基板フィルムは、続きを表示(全22行)上記積層細線が、透明基板52側から数えて第1層目の膜厚が20nm以上30nm以下である金属吸収層51と第2層目の金属層50を有し、かつ、可視波長領域(400~780nm)における上記金属吸収層51の光学定数が、波長400nmにおける屈折率が1.8~2.2、消衰係数が1.8~2.4、波長500nmにおける屈折率が2.2~2.7、消衰係数が1.9~2.8、波長600nmにおける屈折率が2.5~3.2、消衰係数が1.9~3.1、波長700nmにおける屈折率が2.7~3.6、消衰係数が1.7~3.3、波長780nmにおける屈折率が3.1~3.8、消衰係数が1.5~3.4、であると共に、透明基板52と金属吸収層51および金属吸収層51と金属層50の各界面での反射による可視波長領域(400~780nm)における最高反射率が40%以下であることを特徴とし、また、上記電極基板フィルムにおいて、金属製の積層細線が、透明基板52側から数えて第3層目の膜厚が20nm以上30nm以下である第2の金属吸収層を有し、かつ、可視波長領域(400~780nm)における上記第2の金属吸収層の光学定数が、波長400nmにおける屈折率が1.8~2.2、消衰係数が1.8~2.4、波長500nmにおける屈折率が2.2~2.7、消衰係数が1.9~2.8、波長600nmにおける屈折率が2.5~3.2、消衰係数が1.9~3.1、波長700nmにおける屈折率が2.7~3.6、消衰係数が1.7~3.3、波長780nmにおける屈折率が3.1~3.8、消衰係数が1.5~3.4、であることを特徴とするものである。」
「[0033](2-2)本発明に係る電極基板フィルムの製造に用いられる積層体フィルム図1(A)に示すように樹脂フィルムから成る透明基板42と該透明基板42に設けられた積層膜とで構成される上記積層体フィルムは、上記積層膜が、透明基板42側から数えて第1層目の膜厚が20nm以上30nm以下である金属吸収層41と第2層目の金属層40を有し、かつ、続きを表示(全21行)可視波長領域(400~780nm)における上記金属吸収層41の光学定数が、波長400nmにおける屈折率が1.8~2.2、消衰係数が1.8~2.4、波長500nmにおける屈折率が2.2~2.7、消衰係数が1.9~2.8、波長600nmにおける屈折率が2.5~3.2、消衰係数が1.9~3.1、波長700nmにおける屈折率が2.7~3.6、消衰係数が1.7~3.3、波長780nmにおける屈折率が3.1~3.8、消衰係数が1.5~3.4、であると共に、図1(A)~(B)に示すように透明基板42と金属吸収層41および金属吸収層41と金属層40の各界面での反射による可視波長領域(400~780nm)における最高反射率が40%以下であることを特徴とし、また、上記積層体フィルムにおいて、上記積層膜が、透明基板42側から数えて第3層目の膜厚が20nm以上30nm以下である第2の金属吸収層を有し、かつ、可視波長領域(400~780nm)における上記第2の金属吸収層の光学定数が、波長400nmにおける屈折率が1.8~2.2、消衰係数が1.8~2.4、波長500nmにおける屈折率が2.2~2.7、消衰係数が1.9~2.8、波長600nmにおける屈折率が2.5~3.2、消衰係数が1.9~3.1、波長700nmにおける屈折率が2.7~3.6、消衰係数が1.7~3.3、波長780nmにおける屈折率が3.1~3.8、消衰係数が1.5~3.4、であることを特徴とするものである。」
「[0036](3-2)金属吸収層本発明に係る金属吸収層の膜材料としては、上述したようにNi単体、若しくは、Ti、Al、V、W、Ta、Si、Cr、Ag、Mo、Cuより選ばれる1種以上の元素が添加されたNi系合金、および、Cu単体、若しくは、Ti、Al、V、W、Ta、Si、Cr、Ag、Mo、Niより選ばれる1種以上の元素が添加されたCu系合金が好ましい。」
「[0039](3-3)金属層本発明に係る金属層の構成材料としては、電気抵抗値が低い金属であれば特に限定されず、例えば、Cu単体、若しくは、Ti、Al、V、W、Ta、Si、Cr、Agより選ばれる1種以上の元素が添加されたCu系合金、または、Ag単体、若しくは、Ti、Al、V、W、Ta、Si、Cr、Cuより選ばれる1種以上の元素が添加されたAg系合金が挙げられ、特に、Cu単体が、回路パターンの加工性や抵抗値の観点から望ましい。」
「[0053](5)電極基板フィルムの製造方法(5-1)上記積層体フィルムの積層膜(透明基板42側から数えて第1層目の金属吸収層41と第2層目の金属層40から成る積層膜)をエッチング処理して金属製の積層細線に配線加工することで本発明に係る電極基板フィルムを得ることができる。そして、電極基板フィルムの電極(配線)パターンをタッチパネル用のストライプ状若しくは格子状とすることで、本発明に係る電極基板フィルムをタッチパネルに用いることができる。」
「[図:0001387310000001.jpg]」
(2)引用発明
上記(1)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「樹脂フィルムから成る透明基板52と、該透明基板52に設けられかつ金属製の積層細線から成るメッシュ構造の回路パターンを有する電極基板フィルムは、上記積層細線が、透明基板52側から数えて第1層目の膜厚が20nm以上30nm以下である金属吸収層51と第2層目の金属層50を有し、樹脂フィルムから成る透明基板42と該透明基板42に設けられた積層膜とで構成される、電極基板フィルムの製造に用いられる積層体フィルムは、上記積層膜が、透明基板42側から数えて第1層目の膜厚が20nm以上30nm以下である金属吸収層41と第2層目の金属層40を有し、金属吸収層の膜材料としては、Cuより選ばれる1種以上の元素が添加されたNi系合金、Niより選ばれる1種以上の元素が添加されたCu系合金であり、金属層の構成材料としては、Cu単体であって、上記積層体フィルムの積層膜(透明基板42側から数えて第1層目の金属吸収層41と第2層目の金属層40から成る積層膜)をエッチング処理して金属製の積層細線に配線加工することで得ることができる電極基板フィルム。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明の「透明基板」は、本願発明1の「透明基材」に相当する。
(イ)引用発明の「積層細線」は「透明基板52」の一方の面上に形成され、かつ、金属層50と金属吸収層51とを有するから、本願発明1の「前記透明基材の少なくとも一方の面上に形成された金属配線」に相当する。
(ウ)引用発明の「積層細線」は、金属層50と金属吸収層51とが積層されている。
「金属層50」はCu単体である「金属層40」をエッチングして得るものであって、Cuは銅を示す元素記号であることからみて、金属層50の材料は銅単体といえ、本願発明1の「銅配線層」に相当する。
「金属吸収層51」はCuが添加されたNi系合金又はNiが添加されたCu合金である「金属吸収層41」をエッチングして得るものであって、Niはニッケルを示す元素記号であることからみて、金属吸収層51はニッケルと銅を含有しているから、本願発明1の「ニッケルと銅とを含有する黒化配線層」と、金属付加層である点で共通する。
(エ)引用発明の「電極基板フィルム」が有する金属層50は導電性であり、「透明基板」をも有している点で、本願発明1の「導電性基板」に相当する。
イ 上記アから、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「透明基材と、前記透明基材の少なくとも一方の面上に形成された金属配線と、を有し、前記金属配線は、銅配線層と、ニッケルと銅とを含有する金属付加層とが積層された構造を有する導電性基板。」
(相違点1)
金属付加層に関し、本願発明1は「黒化配線層」であるのに対し、引用発明は「金属吸収層51」である点で相違する。
(相違点2)
本願発明1は、「前記金属配線間から露出する前記透明基材は、可視光透過率が90%以上であり、かつb*が0.1以上1.0以下である」のに対して、引用発明においては可視光透過率及びb*の値が不明な点。
(2)判断
事案に鑑みて、上記相違点2について、先に検討する。
導電性基板を作成する際に、可視光透過率が90%以上であり、かつb*が0.1以上1.0以下を満たすほど残渣を除去することは、引用文献1には開示も示唆もなく自明なことでもないから、透明基材及び金属配線が一致するとしても、引用発明の透明基板は相違点2に係る構成を有するほどに金属配線間の残渣を除去しているとまではいえない。
金属配線間のエッチング残渣が光透過性を低下させるために残渣の発生を防止することや、エッチングにより基板を露出させることは周知技術であるとしても、特に、残渣に関して「b*が0.1以上1.0以下である」黄色を許容することはまで周知技術といえない。
よって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 原査定について
本件補正によりb*の下限値が限定されることで、本願発明1における金属配線間から露出する透明基材は、可視光透過率が90%以上であり、かつb*が0.1以上1.0以下の黄色であるとの技術的事項を含むこととなり、当該技術的事項については、引用文献1には記載されておらず、本願優先日前において周知技術であったとも認められないので、本願発明1は、当業者であっても原査定における引用文献1に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。
なお、請求項2に係る発明は、特に、第2エッチング液を用いてエッチングするものであるところ、引用発明において2回目のエッチングを行うことは記載も示唆もなく自明なことでもないから、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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