特許拒絶査定不服審判
2021-014698
電力増幅器なしで電気エネルギーを伝送するための共振回路
- 審判番号
- 2021-014698
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-521503外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年10月29日
- 審決日
- 2022年12月15日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
- 【請求人代理人】弁理士法人相原国際知財事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (H02J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-521503「電力増幅器なしで電気エネルギーを伝送するための共振回路」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月 9日国際公開、WO2019/086320、令和 2年12月17日国内公表、特表2020-537482〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)10月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年11月3日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和3年 3月 2日付け:拒絶理由通知書
令和3年 5月24日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 6月24日付け:拒絶査定
令和3年10月29日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和4年 6月22日付け:拒絶理由通知書
令和4年 9月28日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~16に係る発明は、令和4年9月28日に提出された手続補正書に係る手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1~16に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
再充電可能な電池である少なくとも1つの電気消費器に、電気エネルギーを伝送するための装置(1)であって、
送信デバイス(2)において第1の共振タンク回路を生成するための少なくとも1つの第1のコイル(5)と少なくとも1つの第1のコンデンサ(6)とを有する、電気エネルギーを送信するための少なくとも1つの送信デバイス(2)と、
受信デバイス(3)において第2の共振タンク回路を生成するための少なくとも1つの第2のコイル(8)と少なくとも1つの第2のコンデンサ(9)とを備える、前記送信デバイス(2)によって送信された前記エネルギーを受信するための少なくとも1つの受信デバイス(3)であって、前記受信デバイス(3)が、電気接続を形成するために消費器(4)に接続可能である、受信デバイス(3)と、
前記受信デバイス(3)における前記第2の共振タンク回路と、前記消費器(4)と、の間のインピーダンスを整合するための巻線用のワイヤ(30)を含む変圧器(15)と、
前記送信デバイス(2)における前記第1の共振タンク回路に、電気エネルギーを供給するための電気エネルギー源(PIN)と、を備え、
前記第1のコイル(5)は、第1のフェライトコア(18)の周りに第1のワイヤが巻回されることにより構成され、前記第2のコイル(8)は、第2のフェライトコア(20)の周りに第2のワイヤが巻回されることにより構成され、前記第1のフェライトコア(18)と前記第2のフェライトコア(20)とは、互いに離間するとともに、電界放射が互いに対して向けられるよう常に互いに対向して配置されており、
前記送信デバイス(2)によって利用可能になった前記電気エネルギーを前記受信デバイス(3)において前記消費器(4)に供給することができるように、前記送信デバイス(2)から前記受信デバイス(3)に前記電気エネルギーを伝送するために、前記送信デバイス(2)の前記第1の共振タンク回路と前記受信デバイス(3)の第2の共振タンク回路とは誘導結合されており、
前記受信デバイス(3)はAC電圧を生成し、前記変圧器(15)には前記AC電圧が入力される、ことを特徴とする、装置(1)。」
第3 拒絶の理由
令和4年6月22日付けで当審において通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうちの理由2は、次のとおりのものである。
この出願の請求項1~15に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び3に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.国際公開第2014/068992号
引用文献2.特開平2-179232号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3.特開2009-60736号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用文献の記載及び引用発明等
1 引用文献1の記載及び引用発明
当審拒絶理由に引用された引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、強調のため当審で付した。以下、同じ。)。
「[0001] 本開示は、共振磁界結合を利用して電力を非接触で無線伝送する無線電力伝送システムに関する。本開示は、また、当該無線電力伝送システムに用いる無線送電装置及び無線受電装置と、当該無線送電装置及び無線受電装置の制御回路とに関する。」
「[0079] 無線受電装置3Aは、受電アンテナ31、受電回路32A、監視回路33A、及びセンサ34を備える。無線受電装置3Aの受電アンテナ31は、図3の受電アンテナ31又は図5の受電アンテナ31aと同様に構成される。受電回路32Aは、受電アンテナ31を介して無線送電装置2Aから送られた電力を受けて、負荷装置4に供給する。受電回路32Aは、負荷装置4への電力供給が不要になったとき(例えば、負荷装置4の電源をオフにするとき、又は、負荷装置4が充電池である場合には、充電が完了したとき)、電力伝送の停止を要求する信号を、受電アンテナ31及び送電アンテナ22を介して無線送電装置2Aの制御回路23Aに送る。センサ34は、受電アンテナ31の受電コイルLrの近傍の異物に起因する異常状態を検出し、監視回路33Aに通知する。センサ34は、例えば温度センサを含む。監視回路33Aは、センサ34によって異常状態が検出されたとき、異常状態の発生を示す信号を、受電アンテナ31及び送電アンテナ22を介して無線送電装置2Aの制御回路23Aに送る。」
「[0110]第3の実施形態.
図38は、第3の実施形態に係る無線電力伝送システム10Bの構成を示すブロック図である。無線電力伝送システム10Bは、電源装置1に接続された無線送電装置2Bと、負荷装置4に接続された無線受電装置3Bとを含み、無線送電装置2Bから無線受電装置3Bに高周波電力を無線伝送する。
[0111] 図38において、無線送電装置2Bは、発振回路21Bと、送電アンテナ22Bと、制御回路23Bとを備えて構成される。発振回路21Bは、入力された直流電力から高周波電力を発生し、送電アンテナ22Bに出力する送電回路として動作する。発振回路21Bは、予め決められた伝送周波数ftrを有するパルス列を発生するパルス発生器と、このパルス列に応じて動作するスイッチング素子を含むD級増幅器とを含み、伝送周波数ftrを有する高周波電力を発生する。送電アンテナ22Bは、可変なインダクタンス及び可変な容量値の少なくとも一方を有するLC共振回路を含む。無線送電装置2Bの制御回路23Bは、送電アンテナ22Bのインダクタンス及び容量値の少なくとも一方を変化させる。
[0112] 図38において、無線受電装置3Bは、受電アンテナ31Bと、整流回路32と、制御回路33Bとを備えて構成される。受電アンテナ31Bは、可変なインダクタンス及び可変な容量値の少なくとも一方を有するLC共振回路を含む。受電アンテナ31Bは、送電アンテナ22Bに電磁的に結合される。無線受電装置3Bの制御回路33Bは、無線送電装置2Bの制御回路23Bの制御下で、受電アンテナ31Bのインダクタンス及び容量値の少なくとも一方を変化させる。整流回路32は、送電アンテナ22B及び受電アンテナ31Bを介して無線送電装置2Bから送られた高周波電力を直流の出力電力に変換し、負荷装置4に供給する受電回路として動作する。
[0113] 無線送電装置2Bの制御回路23Bは、受電アンテナ31Bのインダクタンス及び容量値の少なくとも一方を変化させる制御信号を、例えば、送電アンテナ22B及び受電アンテナ31Bを介して無線受電装置3Bの制御回路33Bに送る。無線送電装置2Bの制御回路23Bは、送電アンテナ22B及び受電アンテナ31Bとは別の通信経路(図示せず)を介して制御信号を無線受電装置3Bの制御回路33Bに送ってもよい。」
「[0115] 図39~図49を参照して、送電アンテナ22B及び受電アンテナ31Bの詳細構成について、また、無線送電装置2Bの回路定数及び無線受電装置3Bの回路定数を設定する方法について説明する。
[0116] 図39は、図38の送電アンテナ22Bの第1の実施例に係る送電アンテナ22Baの構成を示す回路図である。図39の送電アンテナ22Baは、直列に接続された送電コイルLt1及び共振キャパシタCt1を含み、共振周波数fTを有するLC直列共振回路である。共振キャパシタCt1は、無線送電装置2Bの制御回路23Bの制御下で変化する容量値を有する。図40は、図38の送電アンテナ22Bの第2の実施例に係る送電アンテナ22Bbの構成を示す回路図である。図40の送電アンテナ22Bbは、直列に接続された送電コイルLt2及び共振キャパシタCt2を含み、共振周波数fTを有するLC直列共振回路である。送電コイルLt2は、無線送電装置2Bの制御回路23Bの制御下で変化するインダクタンスを有する。
[0117] 図41は、図38の受電アンテナ31Bの第1の実施例に係る受電アンテナ31Baの構成を示す回路図である。図41の受電アンテナ31Baは、並列に接続された受電コイルLr1及び共振キャパシタCr1を備え、共振周波数fRを有するLC並列共振回路である。共振キャパシタCr1は、無線受電装置3Bの制御回路33Bの制御下で変化する容量値を有する。図42は、図38の受電アンテナ31Bの第2の実施例に係る受電アンテナ31Bbの構成を示す回路図である。図42の受電アンテナ31Bbは、並列に接続された受電コイルLr2及び共振キャパシタCr2を備え、共振周波数fRを有するLC並列共振回路である。受電コイルLr2は、無線受電装置3Bの制御回路33Bの制御下で変化するインダクタンスを有する。」
「[0141] なお、図38において、送電アンテナ22B及び受電アンテナ31Bが互いに電磁的に結合しているとき、発振回路21Bの出力端子から送電アンテナ22Bの入力端子を臨むときの出力インピーダンスZt1は、送電アンテナ22Bの入力端子から発振回路21Bの出力端子を臨むときの入力インピーダンスZt2と実質的に等しいように設定される。さらに、送電アンテナ22B及び受電アンテナ31Bが互いに電磁的に結合しているとき、受電アンテナ31Bの出力端子から整流回路32を臨むときの出力インピーダンスZr2は、整流回路32から受電アンテナ31Bの出力端子を臨むときの入力インピーダンスZr1と実質的に等しいように設定される。このとき、無線送電装置2Bには電源装置1が接続され、無線受電装置3Bには負荷装置4が接続されている。」
[0142] また、発振回路21Bと送電アンテナ22Bの間に整合回路が接続されてもよく、受電アンテナ31Bと整流回路32との間に整合回路が接続されてもよい。」
「[0144] 図38の送電アンテナ22Bの送電コイル及び受電アンテナ31Bの受電コイル(図39~図44、図46~図49に示す送電コイルLt1~Lt3及び受電コイルLr1~Lr3)は、図1の送電アンテナ22の送電コイル及び受電アンテナ31の受電コイルと同様に、さまざまな形状、サイズ、巻回し方法、層の数、巻数、構造、材料、形成方法、などを有していてもよい。」
「[図38]
[図:0001397559000001.jpg]
」
「[図39]
[図:0001397559000002.jpg]
」
「[図41]
[図:0001397559000003.jpg]
」
前記[図38]には、段落[0110]~[0112]の記載を踏まえると、「電源装置1」が「無線送電装置2B」の「発振回路21B」に接続され、「負荷装置4」が「無線受電装置3B」の「整流回路32」に接続されていることが見て取れる。
したがって、前記引用文献1には、第3の実施形態の記載に注目すると、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、引用発明をA~Qに分説した。
「A 無線電力伝送システム10Bであって([0110])、
B 共振磁界結合を利用して電力を非接触で無線伝送する無線電力伝送システムに関し([0001])、
C 無線電力伝送システム10Bは、電源装置1に接続された無線送電装置2Bと、負荷装置4に接続された無線受電装置3Bとを含み、無線送電装置2Bから無線受電装置3Bに高周波電力を無線伝送し([0110])、
D 無線送電装置2Bは、発振回路21Bと、送電アンテナ22Bと、制御回路23Bとを備えて構成され([0111])、
E 発振回路21Bは、入力された直流電力から高周波電力を発生し、送電アンテナ22Bに出力する送電回路として動作し、発振回路21Bは、予め決められた伝送周波数ftrを有するパルス列を発生するパルス発生器と、このパルス列に応じて動作するスイッチング素子を含むD級増幅器とを含み、伝送周波数ftrを有する高周波電力を発生し([0111])、
F 送電アンテナ22Bは、可変なインダクタンス及び可変な容量値の少なくとも一方を有するLC共振回路を含み([0111])、送電アンテナ22Bに係る送電アンテナ22Baは、直列に接続された送電コイルLt1及び共振キャパシタCt1を含み、共振周波数fTを有するLC直列共振回路であり、共振キャパシタCt1は、無線送電装置2Bの制御回路23Bの制御下で変化する容量値を有し([0116])、
G 無線送電装置2Bの制御回路23Bは、送電アンテナ22Bのインダクタンス及び容量値の少なくとも一方を変化させ([0111])、
H 電源装置1が無線送電装置2Bの発振回路21Bに接続され([図38])、
I 無線受電装置3Bは、受電アンテナ31Bと、整流回路32と、制御回路33Bとを備えて構成され([0112])、
J 受電アンテナ31Bは、可変なインダクタンス及び可変な容量値の少なくとも一方を有するLC共振回路を含み、受電アンテナ31Bは、送電アンテナ22Bに電磁的に結合され([0112])、受電アンテナ31Bに係る受電アンテナ31Baは、並列に接続された受電コイルLr1及び共振キャパシタCr1を備え、共振周波数fRを有するLC並列共振回路であり、共振キャパシタCr1は、無線受電装置3Bの制御回路33Bの制御下で変化する容量値を有し([0117])、
K 無線受電装置3Bの制御回路33Bは、無線送電装置2Bの制御回路23Bの制御下で、受電アンテナ31Bのインダクタンス及び容量値の少なくとも一方を変化させ([0112])、
L 整流回路32は、送電アンテナ22B及び受電アンテナ31Bを介して無線送電装置2Bから送られた高周波電力を直流の出力電力に変換し、負荷装置4に供給する受電回路として動作し([0112])、
M 負荷装置4が無線受電装置3Bの整流回路32に接続され([図38])、
N 送電アンテナ22B及び受電アンテナ31Bが互いに電磁的に結合しているとき、受電アンテナ31Bの出力端子から整流回路32を臨むときの出力インピーダンスZr2は、整流回路32から受電アンテナ31Bの出力端子を臨むときの入力インピーダンスZr1と実質的に等しいように設定され、このとき、無線送電装置2Bには電源装置1が接続され、無線受電装置3Bには負荷装置4が接続されており([0141])、
O 受電アンテナ31Bと整流回路32との間に整合回路が接続されてもよく([0142])、
P 送電アンテナ22Bの送電コイル及び受電アンテナ31Bの受電コイルは、さまざまな形状、サイズ、巻回し方法、層の数、巻数、構造、材料、形成方法、などを有していてもよい([0144])、
Q 無線電力伝送システム10B」
2 周知技術1
(1)引用文献2の記載
当審拒絶理由に、周知技術を示すための文献として引用された引用文献2には、以下の事項が記載されている。
「 ここで、前述したように、光ファイバ11からは交流成分含有光が送られてくるから、これを光電変換したPINフォトダイオード12の出力側には交流電圧が得られることとなる。
フォトセルであるPINフォトダイオード12と負荷となる電子装置14との間には、インピーダンス整合器を兼ねる交流変圧器13が介在されており、この交流変圧器13によってPINフォトダイオード12から得られる交流電圧はその巻数比に応じた適当な値にまで昇圧された後、負荷となる電子装置14に供給される。」(3頁左上欄18行~右上欄8行)」
「第1図
[図:0001397559000004.jpg]
」
(2)引用文献3の記載
当審拒絶理由に、周知技術を示すための文献として引用された引用文献3には、以下の事項が記載されている。
「【0007】
インピーダンスの変換を行うことにより搬送波を用いた電力の無線伝送の効率を高める従来の技術は、電力供給を受ける側の装置である受電装置が、搬送波を受信するコイルまたはループアンテナ(通信アンテナ)に共振用のキャパシタを接続することによって特定の周波数で共振するように設定された共振回路を備え、コイルまたはループアンテナから中間タップを直接引き出すまたは結合コイルを別に設けることによりインピーダンスの変換を行う。しかしながら、一般的にコイルまたはループアンテナのサイズは共振用キャパシタのサイズより大きいことから、中間タップの引き出し線の配線や結合コイルの配置が実装を行う上で制約となる場合がある。また、中間タップや結合コイルによるインピーダンス変換はインピーダンス変換比が固定されることから、特定の場合にしかインピーダンスの整合を行うことができない。」
「【0075】
[受電装置350の構成例]
図8は、本発明の第2の実施形態に係る受電装置350の構成例の等価回路を示す説明図である。なお、図8では、搬送波を送信する送電装置200を併せて示している。
【0076】
受電装置350は、第1の実施形態に係る受電装置250と同様に、搬送波受信回路352、インピーダンス変換回路354、および処理回路356からなり、図8を参照すると、搬送波受信回路352、インピーダンス変換回路354、および処理回路356は、それぞれ以下の構成を有している。
〔搬送波受信回路352〕
所定のインダクタンスを有し中点タップが設けられないインダクタL(通信アンテナ)、および所定の静電容量を有するキャパシタからなる共振回路
〔インピーダンス変換回路354〕
トランス(例えば、一次側:二次側=4:1)
〔処理回路356〕
等価負荷抵抗RL’(図3(b)と同様)」
「【図8】
[図:0001397559000005.jpg]
」
(3)周知技術1について
ア 引用文献3の「インピーダンス変換回路354」である「トランス」は、「変圧器」であり、当該「トランス」が、インピーダンス変換により「搬送波受信回路352」と「処理回路356」との間のインピーダンスを整合するものであることは明らかである。
また、前記「トランス」に入力される電圧は、「搬送波受信回路352」である「共振回路」の出力電圧であるから、交流電圧である。
イ したがって、引用文献2及び引用文献3によれば、次の事項は周知技術(以下「周知技術1」という。)であるといえる。
「インピーダンス整合のために、交流電圧を変圧する変圧器を用いること」
3 周知技術2
(1)周知文献1の記載
周知技術を示すために当審で新たに引用する平成7年2月7日に公開された特開平7-39077号公報(以下「周知文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0002】
【従来の技術】先に携帯用電話機等の携帯用家電製品の2次電池を充電するのに非接触に電力を伝送するコードレスパワーステーションが提案されている。
【0003】このコードレスパワーステーションの原理につき、図2を参照して説明するに、1は電力送電装置を示し、この電力送電装置1においては、電源プラグ2に得られる商用電源を電力送電回路3に供給し、この電力送電回路3で得られる所定の周波数例えば100KHzの送電信号をこの電力送電装置1の樹脂より成る筐体の上面1aの内側に接触して設けたE型フェライトコア4の中央の足に巻回された送電コイル5に供給する如くする。
【0004】一方電力受電装置例えば携帯用電話機6においては、この携帯用電話機6の樹脂より成る筐体の下面6aの内側に接触して配したE型フェライトコア7の中央の足に受電コイル8を巻回する如くする。この受電コイル8に得られる送電信号をこの携帯用電話機6の筐体内に設けた充電回路に供給し、この携帯用電話機6の電源用の2次電池を充電する如くする。
【0005】このコードレスパワーステーションにおいては、電力送電装置1のE型フェライトコア4と電力受電装置6のE型フェライトコア7とを対応して配し、この送電コイル5と受電コイル8とを間隙を介して相対応させ、この送電コイル5及び受電コイル8間に生じる電磁誘導作用を利用し、非接触で電力送電装置1よりの電力を電力受電装置6に伝送するものである。」
「【図2】
[図:0001397559000006.jpg]
」
(2)周知文献2の記載
周知技術を示すために当審で新たに引用する昭和63年10月20日に公開された特開昭63-253836号公報(以下「周知文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
「〔従来の技術〕
従来、電気ひげ剃り器などの携帯用充電式電子機器や電気湯沸かし器等の各種の電気・電子機器への電力供給は、該機器に設けたACプラグを電源コンセントに差し込んだり、ACアダプタを使用してそのACアダプタに設けられたDCプラグを機器に設けた入力端子に差し込んだりすることにより行われていた。しかしながら、このように機器の使用にあたっていちいちプラグを差し込むなどの手数を要することは著しく煩わしいものであった。また、例えば電気湯沸かし器にあっては、持ち上げて内部の湯を他の容器に注ぐときには上記プラグとともに電源コードも持ち上げられてしまい、該電源コードが邪魔になるなどの不便があった。」(1頁右下欄7行~2頁左上欄1行)
「 本発明によれば、電力供給部と電力受給部とを近接又は接触させると、第1のコア及び第2のコアが1次巻線及び2次巻線を貫通する閉磁路を形成するため、これらが変圧器と同一の作用をなすものである。
したがって、1次巻線に供給された電力が2次巻線に伝達され、さらにダイオードにより半波整流されて直流電力として直流負荷に供給されるものである。」(2頁右上欄13行~左下欄1行)
「 第1図及び第2図において、(a)は電力供給部、(b)は電力受給部、(c)は直流負荷たる各種の電気・電子機器である。なお、第1図は電力供給部(a)と電力受給部(b)及び直流負荷(c)とを分離した状態を示す構成図、第2図はその電力伝達状態を示す電気回路図である。
本発明では、上記電力供給部(a)は交流電圧が入力される1次巻線(1)が巻装された第1のコア(2)を備えた構成とする。図面実施例の場合、電力供給部(a)には交流電圧を出力する交流電源回路(3)が設けられており、その出力端子に上記1次巻線(1)が接続されている。なお、図中(4)はコイルボビンである。」(3頁左上欄17行~右上欄9行)
「 また、電力受給部(b)はダイオード(23)を介して直流負荷(c)に接続される2次巻線(24)が巻装された第2のコア(25)を備えた構成とし、上記電力供給部(a)とは分離して上記直流負荷(c)と一体に構成する。なお、図中(26)はコイルボビンである。」(3頁左下欄18行~右下欄3行)
「 図面実施例の場合、第1のコア(2)は第2のコア(25)との対向面(2a)が電力供給部(a)の筐体の外表面に露出するように配設され、また第2のコア(25)は第1のコア(2)との対向面(25a)が電力受給部(b)の外表面に露出するように配設されており、直流負荷(c)に一体に設けた電力受給部(b)を電力供給部(a)上に載置することにより、第1のコア(2)及び第2のコア(25)が上記1次巻線(1)及び2次巻線(24)を貫通する閉磁路を形成するようになっている。もっとも、第1のコア(2)及び第2のコア(25)の各対向面(2a)及び(25a)が各筺体の外表面付近に位置するように配設し、第1のコア(2)及び第2のコア(25)の各対向面(2a)及び(25a)間のギャップを介して、第lのコア(2)及び第2のコア(25)が1次巻線(1)及び2次巻線(24)を貫通する閉磁路を形成するようにしてもよいものである。その場合には、ギャップによる磁気抵抗を小さくして閉磁路全体としての磁気抵抗を小さくするために、第1のコア(2)及び第2のコア(25)の各対向面(2a)及び(25a)の面積を第1のコア(2)の1次巻線(1)が巻装された部位(2b)の断面積及び第2のコア(25)の2次巻線(24)が巻装された部位(25b)の断面積より大きく構成することが望ましい、その際には、第1のコア(2)及び第2のコア(25)の対向端のうち一方に挿入部を構成するとともに他方にその受入部を構成して、対向面積を3次元的に広げることもできる。」(3頁右下欄9行~4頁左上欄17行)
「 なお、図面実施例の場合、第1のコア(2)及び第2のコア(25)の形状は略々コ字状の形状としているが、電力供給部(a)と電力受給部(b)とを近接又は接触させたときに第1のコア(2)及び第2のコア(25)が1次巻線(1)及び2次巻線(24)を貫通する閉磁路を形成すればよく、他の形状、例えばE字状の形状としてもよい。」(4頁左下欄1行~7行)
「 もっとも、電力供給部(a)に位置決め突起を設ける等の手段を講じ、上記位置ずれが生じないようにしてもよいことは勿論である。なお、上記第1のコア(2)及び第2のコア(25)は、うず電流損を軽減させるために、フェライトコアを用いて構成することが望ましい。」(4頁右下欄5行~10行)
「第1図
[図:0001397559000007.jpg]
」
(3)周知技術2について
ア(ア)周知文献1の「送電コイル5」が巻回された「E型フェライトコア4」は、「電力送電装置1」の「筐体の上面1aの内側に接触」して設けられたものであり、「受電コイル8」が巻回された「E型フェライトコア7」は、「携帯用電話機6」の「筐体の下面6aの内側に接触」して配されたものであるから、「電力送電装置1のE型フェライトコア4と電力受電装置6のE型フェライトコア7とを対応して配し」た際に、「電力送電装置1」の「筐体の上面1a」と「携帯用電話機6」の「筐体の下面6a」が、「E型フェライトコア4」と「E型フェライトコア7」の間に介在することは明らかである。
つまり、「E型フェライトコア4」と「E型フェライトコア7」は、離間して配置される。
(イ)周知文献1の第2図からは、「E型フェライトコア4」と「E型フェライトコア7」は、それぞれの「中央の足」及び左右の足が互いに突き合うように対向配置されることが見て取れる。
イ(ア)周知文献2の「電力供給部(a)」の「第1のコア(2)」に巻装された「1次巻線(1)」は、コイルであることは明らかであって、入力された「交流電圧」を「電力受給部(b)」の「2次巻線(24)」に伝達するものであるから、送電コイルといえる。また、「電力受給部(b)」の「第2のコア(25)」に巻装された「2次巻線(24)」は、受電コイルといえる。
(イ)周知文献2の第1図からは、コ字状の「第1のコア(2)」と「第2のコア(25)」は、それぞれの左右の足の「対向面(2a)及び(25a)」が対向するように、すなわち、それぞれの左右の足が互いに突き合うように対向配置されることが見て取れる。
ウ したがって、周知文献1及び周知文献2によれば、次の事項は周知技術(以下「周知技術2」という。)であるといえる。
「電力を伝送する送電コイル及び受電コイルを、それぞれフェライトコアに巻回し、送電コイルが巻回されたフェライトコアと、受電コイルが巻回されたフェライトコアとを、各々の足が互いに突き合うように離間して対向配置すること」
第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
1 「再充電可能な電池である少なくとも1つの電気消費器に、電気エネルギーを伝送するための装置(1)であって、」について
引用発明の「電力」は、本願発明の「電力エネルギー」に相当する。
引用発明の「無線電力伝送システム10B」は、「無線送電装置2Bから無線受電装置3Bに高周波電力を無線伝送し」(分説C)、「無線受電装置3B」の「整流回路32」から「負荷装置4」に「電力」が「供給」される(分説I、L)ものである。
前記「負荷装置4」が、「供給」された「電力」を消費することは明らかであるから、引用発明の「負荷装置4」と、本願発明の「再充電可能な電池である少なくとも1つの電気消費器」とは、「少なくとも1つの電気消費器」である点で共通する。
また、前記「無線電力伝送システム10B」は、「負荷装置4」に「電力」を「供給」するために「高周波電力を無線伝送」する装置といえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「少なくとも1つの電気消費器に、電気エネルギーを伝送するための装置(1)」である点で共通する。
2 「送信デバイス(2)において第1の共振タンク回路を生成するための少なくとも1つの第1のコイル(5)と少なくとも1つの第1のコンデンサ(6)とを有する、電気エネルギーを送信するための少なくとも1つの送信デバイス(2)と、」について
(1)引用発明の「高周波電力」(分説C)は、本願発明の「電気エネルギー」に相当する。
引用発明の「無線送電装置2B」は、「高周波電力」を「無線受電装置3B」に無線伝送(分説C)するものであるから、本願発明の「少なくとも1つの送信デバイス(2)」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、「電気エネルギーを送信するための少なくとも1つの送信デバイス(2)」を備える点で一致する。
(2)引用発明の「送電アンテナ22B」は、「直列に接続された送電コイルLt1及び共振キャパシタCt1を含み、共振周波数fTを有するLC直列共振回路」(分説F)であり、該「送電コイルLt1」、「共振キャパシタCt1」及び「LC直列共振回路」は、本願発明の「少なくとも1つの第1のコイル(5)」、「少なくとも1つの第1のコンデンサ(6)」及び「第1の共振タンク回路」にそれぞれ相当する。
また、前記「送電コイルLt1」及び「共振キャパシタCt1」が、「共振周波数fTを有するLC直列共振回路」を生成するためのものであることは明らかである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「第1の共振タンク回路を生成するための少なくとも1つの第1のコイル(5)と少なくとも1つの第1のコンデンサ(6)とを有する」点で一致する。
(3)引用発明の「無線送電装置2B」は、「送電アンテナ22B」を備える(分説D)ものである。
したがって、前記(1)及び(2)も考慮すると、本願発明と引用発明とは、「送信デバイス(2)において第1の共振タンク回路を生成するための少なくとも1つの第1のコイル(5)と少なくとも1つの第1のコンデンサ(6)とを有する、電気エネルギーを送信するための少なくとも1つの送信デバイス(2)」を備える点で一致する。
3 「受信デバイス(3)において第2の共振タンク回路を生成するための少なくとも1つの第2のコイル(8)と少なくとも1つの第2のコンデンサ(9)とを備える、前記送信デバイス(2)によって送信された前記エネルギーを受信するための少なくとも1つの受信デバイス(3)であって、前記受信デバイス(3)が、電気接続を形成するために消費器(4)に接続可能である、受信デバイス(3)と、」について
(1)引用発明の「無線受電装置3B」は、「無線伝送装置2B」から「高周波電力」を「無線伝送」される(分説C)ものである。
前記「無線受電装置3B」は、「受電アンテナ31B」を備える(分説I)ところ、「無線伝送装置2B」から「無線伝送」される「高周波電力」を、「受電アンテナ31B」が受信することは明らかであるから、「受電アンテナ31B」は、本願発明の「少なくとも1つの受信デバイス(3)」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記送信デバイス(2)によって送信された前記エネルギーを受信するための少なくとも1つの受信デバイス(3)」を備える点で一致する。
(2)引用発明の「受電アンテナ31B」は、「並列に接続された受電コイルLr1及び共振キャパシタCr1を備え、共振周波数fRを有するLC並列共振回路であ」り(分説J)、該「受電コイルLr1」、「共振キャパシタCr1」及び「LC並列共振回路」は、本願発明の「少なくとも1つの第2のコイル(8)」、「少なくとも1つの第2のコンデンサ(9)」及び「第2の共振タンク回路」にそれぞれ相当する。
また、前記「受電コイルLr1」及び「共振キャパシタCr1」が、「共振周波数fRを有するLC並列共振回路」を生成するためのものであることは明らかである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「受信デバイス(3)において第2の共振タンク回路を生成するための少なくとも1つの第2のコイル(8)と少なくとも1つの第2のコンデンサ(9)とを備える」点で一致する。
(3)ア 引用発明では、「送電アンテナ22B及び受電アンテナ31Bが互いに電磁的に結合しているとき」、「無線受電装置3Bには負荷装置4が接続されて」いる(分説N)のであるから、それ以外のときは、「無線受電装置3B」に「負荷装置4」が「接続されて」いることを要しないものである。つまり、「無線受電装置3B」と「負荷装置4」とは、常時接続を維持するものではなく、適時に接続可能なものといえる。
イ 引用発明の「受電アンテナ31B」は「無線受電装置3B」に備わるものであり(分説I)、「受電アンテナ31B」に送られた「高周波電力」は、「整流回路32」により「出力電力に変換」されて「負荷装置4に供給」される(分説L)から、「無線受電装置3B」と「負荷装置4」が、電気的に接続を形成することは明らかである。
そして、この電気的な接続は、前記アの「無線受電装置3B」と「負荷装置4」との接続によって形成されることも明らかである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記受信デバイス(3)が、電気接続を形成するために消費器(4)に接続可能である」点で一致する。
(4)前記(1)~(3)によれば、本願発明と引用発明とは、「受信デバイス(3)において第2の共振タンク回路を生成するための少なくとも1つの第2のコイル(8)と少なくとも1つの第2のコンデンサ(9)とを備える、前記送信デバイス(2)によって送信された前記エネルギーを受信するための少なくとも1つの受信デバイス(3)であって、前記受信デバイス(3)が、電気接続を形成するために消費器(4)に接続可能である、受信デバイス(3)」を備える点で一致する。
4 「前記受信デバイス(3)における前記第2の共振タンク回路と、前記消費器(4)と、の間のインピーダンスを整合するための巻線用のワイヤ(30)を含む変圧器(15)と、」について
引用発明の「無線受電装置3Bには負荷装置4が接続され」ている状態(分説N)は、具体的には、「負荷装置4」が「整流回路32」に接続されている(分説M)状態にあるから、「受電アンテナ31Bの出力端子から整流回路32を臨むときの出力インピーダンスZr2」(分説N)は、「負荷装置4」のインピーダンスである。
また、前記3(1)のとおり、「受電アンテナ31B」は「LC並列共振回路」であるから、「整流回路32から受電アンテナ31Bの出力端子を臨むときの入力インピーダンスZr1」(分説N)は、前記「受電アンテナ31B」の「LC並列共振回路」のインピーダンスである。
そうすると、前記「出力インピーダンスZr2」を前記「入力インピーダンスZr1」に「実質的に等しいように設定」することは、「負荷装置4」と「受電アンテナ31B」の「LC並列共振回路」との間のインピーダンス整合を行うことといえる。
そして、引用発明は、「受電アンテナ31Bと整流回路32との間に整合回路が接続され」る(分説O)ものであって、当該「整合回路」は、「受電アンテナ31Bの出力端子から整流回路32を臨むときの出力インピーダンスZr2は、整流回路32から受電アンテナ31Bの出力端子を臨むときの入力インピーダンスZr1と実質的に等しいように設定され」るようにするものといえるから、当該「整合回路」は、本願発明の「インピーダンスを整合するための巻線用のワイヤ(30)を含む変圧器(15)」と、「インピーダンスを整合するための手段」である点で共通する。
したがって、引用発明と、「前記受信デバイス(3)における前記第2の共振タンク回路と、前記消費器(4)と、の間のインピーダンスを整合するための巻線用のワイヤ(30)を含む変圧器(15)、を備え」る構成の本願発明とは、「前記受信デバイス(3)における前記第2の共振タンク回路と、前記消費器(4)と、の間のインピーダンスを整合するための手段」を備える点で共通する。
5 「前記送信デバイス(2)における前記第1の共振タンク回路に、電気エネルギーを供給するための電気エネルギー源(PIN)と、を備え、」について
(1)引用発明の「入力された直流電力」(分説E)及び「電源装置1」(分説C、H)は、それぞれ本願発明の「電気エネルギー」及び「電気エネルギー源(PIN)」に相当する。
(2)引用発明の「発振回路21B」は、「入力された直流電力から高周波電力を発生し、送電アンテナ22Bに出力する送電回路として動作」するものである(分説E)。
引用発明の「送電アンテナ22B」は、「LC直列共振回路」を含む(分説F)から、「送電アンテナ22B」に出力された「高周波電力」は「LC直列共振回路」に供給されることは明らかである。
そして、引用発明の「高周波電力」は「入力された直流電力」から発生するものである(分説E)。
引用発明の「入力された直流電力」が「電源装置1」から供給されることは、「電源装置1」が「発振回路21B」に接続されていること(分説H)から、明らかである。
また、引用発明の「LC直列共振回路」が「無線伝送装置2B」に含まれることは、前記2のとおりである。
(3)したがって、本願発明と引用発明とは、「前記送信デバイス(2)における前記第1の共振タンク回路に、電気エネルギーを供給するための電気エネルギー源(PIN)と、を備え」る点で一致する。
6 「前記第1のコイル(5)は、第1のフェライトコア(18)の周りに第1のワイヤが巻回されることにより構成され、前記第2のコイル(8)は、第2のフェライトコア(20)の周りに第2のワイヤが巻回されることにより構成され、前記第1のフェライトコア(18)と前記第2のフェライトコア(20)とは、互いに離間するとともに、電界放射が互いに対して向けられるよう常に互いに対向して配置されており、」について
引用発明は、「送電コイルLt1」及び「受電コイルLr1」の具体的な構成について示されていない。
7 「前記送信デバイス(2)によって利用可能になった前記電気エネルギーを前記受信デバイス(3)において前記消費器(4)に供給することができるように、前記送信デバイス(2)から前記受信デバイス(3)に前記電気エネルギーを伝送するために、前記送信デバイス(2)の前記第1の共振タンク回路と前記受信デバイス(3)の第2の共振タンク回路とは誘導結合されており、」について
引用発明は、「共振磁界結合を利用して電力を非接触で無線伝送する」ために、「受電アンテナ31B」が「送電アンテナ22B」に「電磁的に結合」され(分説J)、「無線送電装置2B」の「発振回路21B」で発生した「高周波電力」(分説E)を、「送電アンテナ22B」及び「受電アンテナ31B」を介して送り、「負荷装置4」に電力を供給する(分説L)ものである。
「送電アンテナ22B」と「受電アンテナ31B」の前記「電磁的」な「結合」は、「共振磁界結合」であるから、「送電アンテナ22B」の「LC直列共振回路」(分説F)と「受電アンテナ31B」の「LC並列共振回路」(分説J)の誘導結合であることは明らかである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記送信デバイス(2)によって利用可能になった前記電気エネルギーを前記受信デバイス(3)において前記消費器(4)に供給することができるように、前記送信デバイス(2)から前記受信デバイス(3)に前記電気エネルギーを伝送するために、前記送信デバイス(2)の前記第1の共振タンク回路と前記受信デバイス(3)の第2の共振タンク回路とは誘導結合されて」いる点で一致する。
8 「前記受信デバイス(3)はAC電圧を生成し、前記変圧器(15)には前記AC電圧が入力される」について
前記7のとおり、引用発明は、「送電アンテナ22B」と「受電アンテナ31B」とが「共振磁界結合」し、「送電アンテナ22B」の「LC直列共振回路」と「受電アンテナ31B」の「LC並列共振回路」とが「共振」することで、「無線送電装置2B」で発生させた「高周波電力」(分説E)を「受電アンテナ31B」から取り出すものである。そうすると、「受電アンテナ31B」は、「LC並列共振回路」により「高周波電力」を生成しているともいえる。また、該「高周波電力」が、交流(AC)電圧であることは明らかである。
したがって、前記4を踏まえると、「受電アンテナ31B」が「高周波電力」を生成し、「受電アンテナ31Bと整流回路32との間」の「整合回路」に前記「高周波電力」が入力される構成の引用発明と、「前記受信デバイス(3)はAC電圧を生成し、前記変圧器(15)には前記AC電圧が入力される」構成の本願発明とは、「前記受信デバイス(3)はAC電圧を生成し、前記インピーダンス整合をするための手段には前記AC電圧が入力される」点で共通する。
9 前記1~8で対比した事項を踏まえると、本願発明と引用発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「少なくとも1つの電気消費器に、電気エネルギーを伝送するための装置(1)であって、
送信デバイス(2)において第1の共振タンク回路を生成するための少なくとも1つの第1のコイル(5)と少なくとも1つの第1のコンデンサ(6)とを有する、電気エネルギーを送信するための少なくとも1つの送信デバイス(2)と、
受信デバイス(3)において第2の共振タンク回路を生成するための少なくとも1つの第2のコイル(8)と少なくとも1つの第2のコンデンサ(9)とを備える、前記送信デバイス(2)によって送信された前記エネルギーを受信するための少なくとも1つの受信デバイス(3)であって、前記受信デバイス(3)が、電気接続を形成するために消費器(4)に接続可能である、受信デバイス(3)と、
前記受信デバイス(3)における前記第2の共振タンク回路と、前記消費器(4)と、の間のインピーダンスを整合するための手段と、
前記送信デバイス(2)における前記第1の共振タンク回路に、電気エネルギーを供給するための電気エネルギー源(PIN)と、を備え、
前記送信デバイス(2)によって利用可能になった前記電気エネルギーを前記受信デバイス(3)において前記消費器(4)に供給することができるように、前記送信デバイス(2)から前記受信デバイス(3)に前記電気エネルギーを伝送するために、前記送信デバイス(2)の前記第1の共振タンク回路と前記受信デバイス(3)の第2の共振タンク回路とは誘導結合されており、
前記受信デバイス(3)はAC電圧を生成し、前記インピーダンス整合をするための手段には前記AC電圧が入力されることを特徴とする、装置(1)。」
<相違点>
[相違点1]
本願発明の「電気消費器」は、「再充電可能な電池」であるのに対し、引用発明は、「負荷装置4」が具体的に何であるのか示されていない点。
[相違点2]
第2の共振タンク回路と消費器(4)との間のインピーダンスを整合するための手段として、本願発明は「巻線用のワイヤ(30)を含む変圧器(15)」を備えるのに対し、引用発明の整合回路は、そのような構成を有していない点。
それに付随して、受信デバイス(3)が生成するAC電圧が入力されるのは、本願発明は、「前記変圧器(15)」であるのに対し、引用発明は、「整合回路」である点。
[相違点3]
「第1のコイル(5)」、「第2のコイル(8)」について、本願発明は、「前記第1のコイル(5)は、第1のフェライトコア(18)の周りに第1のワイヤが巻回されることにより構成され、前記第2のコイル(8)は、第2のフェライトコア(20)の周りに第2のワイヤが巻回されることにより構成され、前記第1のフェライトコア(18)と前記第2のフェライトコア(20)とは、互いに離間するとともに、電界放射が互いに対して向けられるよう常に互いに対向して配置されて」いるものであるのに対し、引用発明は、「送電コイルLt1」及び「受電コイルLr1」の具体的な構成は示されていないれていない点。
第6 判断
1 相違点について
相違点について検討する。
[相違点1について]
引用文献1には、「負荷装置4」に充電池を用いることも示唆されており([0079]に「負荷装置4が充電池である場合には」との記載がある。)、引用発明において、負荷装置に充電池を用いて、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
[相違点2について]
前記第5、4のとおり、引用発明の「整合回路」は、「負荷装置4」と「受電アンテナ31B」の「LC共振回路」との間のインピーダンス整合を行うものである。
また、前記第4、2(3)の周知技術1のとおり、「インピーダンス整合のために、交流電圧を変圧する変圧器を用いること」は、本願優先日前に周知のものであり、該変圧器が巻線(コイル)を含むことは技術常識である。
したがって、引用発明のインピーダンス整合をする整合回路に対し、周知技術1の「インピーダンス整合のために、交流電圧を変圧する変圧器を用いる」技術を適用し、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
[相違点3について]
前記第4、3(3)の周知技術2のとおり、「電力を伝送する送電コイル及び受電コイルを、それぞれフェライトコアに巻回し、送電コイルが巻回されたフェライトコアと、受電コイルが巻回されたフェライトコアとを、各々の足が互いに突き合うように対向配置すること」は、本願優先日前に周知のものである。
そして、引用発明は、「送電アンテナ22Bの送電コイル及び受電アンテナ31Bの受電コイルは、さまざまな形状、サイズ、巻回し方法、層の数、巻数、構造、材料、形成方法、などを有していてもよい」(分説P)のであるから、「送電コイルLt1」及び「受電コイルLr1」に前記周知技術2の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。また、周知技術2「各々の足が互いに突き合うように対向配置する」という構成によって、「送電コイルLt1」が巻回されたフェライトコアと、「受電コイルLr1」が巻回されたフェライトコアの電界放射が、互いに向けられることになるのは明らかである。
よって、相違点3に係る本願発明の構成は、引用発明及び周知技術2から当業者であれば容易になし得たものである。
なお、本願発明は、発明の名称のように「電力増幅器なし」であることは特定されていないが、仮に、本願発明が「電力増幅器なし」である場合について、念のため検討する。
引用発明の「発振回路21B」は「D級増幅器」を含むものである。
一方で、引用文献1には、第1の実施形態について、「また、図1の無線電力伝送システム10において、発振回路21を、D級増幅器を用いて構成したが、発振回路21の構成はこれに限られない。…(中略)…さらに、発振回路21は、電源装置1からの直流電圧を高周波電圧に変換する周波数変換回路であってもかまわない。いずれにせよ、発振回路21は、入力された直流電力を高周波エネルギーに変換して送電アンテナ22に出力すればよい。」([0048])との記載がある。
そのため、引用発明についても、「発振回路21B」を「D級増幅器」に代えて周波数変換回路を用いて構成とすること、換言すると、引用発明を「D級増幅器」を備えない構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
2 効果について
本願発明の奏する効果は、引用発明、周知技術1及び周知技術2の奏する効果から予測される範囲内のものに過ぎず、格別のものとは認められない。
3 請求人の主張について
(1)請求人の主張の概要
請求人は、令和4年9月28日に提出した意見書において、概ね以下の主張をしている。
ア 主張1
引用文献1に開示された送電コイルおよび受電コイルは、段落[0019]、図6及び7に記載を参照すると、絶縁性基板の一表面上において、配線が巻回をなすように配置することにより実現し得るものであって、本出願の補正後の請求項1に係る発明の特徴である「第1のコイルは、第1のフェライトコアの周りに第1のワイヤが巻回されることにより構成され、第2のコイルは、第2のフェライトコアの周りに第2のワイヤが巻回されることにより構成され」た構造とは、全く異なる構造を備えるものである(意見書4頁(5-2-1)第1段落)。
イ 主張2
引用文献1に記載の送電システムは、交流変圧器で芯材として一般的に用いられるような3次元形状の磁性体を排除して、低背化による小型化を達成しており、大きな電力を扱うことが困難であるから、引用文献1の技術を参照しても、本出願の補正後の請求項1に係る発明のように200Wもの電力を伝送する装置を想到し得ないことは明らかである(意見書4頁(5-2-1)第2段落)。
ウ 主張3
引用文献2に記載の交流変圧器13は、引用文献1の無線電力伝送システムとは全く異なる技術分野に属する上、引用文献1の送電コイル及び受電コイルに適用することには阻害事由がある(意見書4頁~5頁(5-2-2))。
エ 主張4
引用文献3に記載の受電装置の搬送波受信装置は、本出願の補正後の請求項1に係る発明の特徴である「第1のコイルは、第1のフェライトコアの周りに第1のワイヤが巻回されることにより構成され、第2のコイルは、第2のフェライトコアの周りに第2のワイヤが巻回されることにより構成され」た構造とは、明らかに異なる構造を有する。また、引用文献3に記載された技術を参照しても、200Wもの電力を非接触で伝送する構成は、想到し得ない(意見書5頁(5-2-3))。
(2)請求人の主張の検討
ア 主張1について
前記1の[相違点3について]に示したとおり、引用発明の「送電コイル」及び「受電コイル」は、「さまざまな形状、サイズ、巻回し方法、層の数、巻数、構造、材料、形成方法、などを有していてもよい」(分説P)ものであって、引用文献1の段落[0019]、図6及び7に記載された「実質的に平面上に巻回された巻線」に限られないものである。
そして、非接触給電分野において、「電力を伝送する送電コイル及び受電コイルを、それぞれフェライトコアに巻回し、送電コイルが巻回されたフェライトコアと、受電コイルが巻回されたフェライトコアとを、各々の足が互いに突き合うように対向配置すること」(周知技術2)は周知であって、当該周知の構成を引用発明に適用することは、当業者が容易になし得たものである。
したがって、請求人の主張1は採用することができない。
イ 主張2について
(ア)前記アのとおり、引用発明の「送電コイル」、「受電コイル」は、実質的に平面上に巻回された巻線に限られないものであって、3次元形状の磁性体を排除するものではない。
(イ)請求人の主張する200Wの電力の伝送について、本願明細書及び出願時の特許請求の範囲の請求項6には、以下の記載がある(下線は当審で付与。)。
「【0015】
更なる実施形態によれば、第1及び第2のコイルの両方が、105~106Ωmの抵抗率、及び50~500、特に125の透磁率も有するフェライトコアを含むことが有利であり得る。その結果、受信デバイスにおいて共振タンク回路を効率的な方法で生成することができ、その結果、送信デバイスから受信デバイスに大量のエネルギーを送信することができる。
【0016】
更にまた、フェライトコアが、ニッケル亜鉛合金(NiZn)を少なくとも部分的に含むことも可能である。その結果、受信デバイスにおいて共振タンク回路を効率的な方法で生成することができ、その結果、送信デバイスから受信デバイスに大量のエネルギーを送信することができる。
【0017】
更に、更なる実施形態によれば、フェライトコアをU字形に、且つ、5.65cm2の断面積を有するように構成することも可能であり得、それによって、送信デバイスから受信デバイスへの電気エネルギーの伝送中に、200Wの入力電力に対して35W/cm2の電力密度が達成可能である。その結果、受信デバイスにおいて共振タンク回路を効率的な方法で生成することができ、その結果、送信デバイスから受信デバイスに大量のエネルギーを送信することができる。
【0018】
更なる実施形態によれば、送信デバイスにおける共振タンク回路の周波数が2~30MHz、特に6.765~6.795MHz、例えば6.78MHzであることが有利であり得る。その結果、受信デバイスにおいて共振タンク回路を効率的な方法で生成することができ、その結果、送信デバイスから受信デバイスに大量のエネルギーを送信することができる。」
「【請求項6】
前記送信デバイス(2)から前記受信デバイス(3)への前記電気エネルギーの前記伝送中に、3~1000W、特に200Wの入力電力に対して、10~100W/cm2、特に35W/cm2の電力密度が達成可能であるように、前記フェライトコア(18、20)が、U字型に、且つ、2~10cm2、特に5.65cm2の有効断面積を有するように構成されていることを特徴とする、請求項4又は5に記載の装置(1)。」
(ウ)前記(イ)の明細書等の記載からは、フェライトコアを特定の形状及び断面積(【0016】、【請求項6】)、または特定の材質(【0015】)とし、第1及び第2のコイルを特定の抵抗率とし、かつ、フェライトコアを特定の透磁率とし(【0014】)、あるいは、送信デバイスの共振タンク回路を特定の周波数にした場合、大きな電力を送信可能であることが理解できる。
しかしながら、請求項1には、フェライトコア、第1及び第2のコイル及び送信デバイスの共振タンク回路について、前記のような形状、断面積等は何ら特定されていない。
(エ)また、本願発明の「前記第1のコイル(5)は、第1のフェライトコア(18)の周りに第1のワイヤが巻回されることにより構成され、前記第2のコイル(8)は、第2のフェライトコア(20)の周りに第2のワイヤが巻回されることにより構成され、前記第1のフェライトコア(18)と前記第2のフェライトコア(20)とは、互いに離間するとともに、電界放射が互いに対して向けられるよう常に互いに対向して配置されており」との構成(以下「構成A」という。)も、以下に示すとおり、大電力の伝送に限られないものである。
a 「電力を伝送する送電コイル及び受電コイルを、それぞれフェライトコアに巻回し、送電コイルが巻回されたフェライトコアと、受電コイルが巻回されたフェライトコアとを、各々の足が互いに突き合うように対向配置すること」は周知(周知技術2)であるところ、当該周知技術2を示すために引用した周知文献1には「先に携帯用電話機等の携帯用家電製品の2次電池を充電するのに非接触に電力を伝送するコードレスパワーステーションが提案されている。」(【0002】)、周知文献2には「従来、電気ひげ剃り器などの携帯用充電式電子機器や電気湯沸かし器等の各種の電気・電子機器への電力供給は、」(1頁右下欄8行~10行)、「第1図及び第2図において、(a)は電力供給部、(b)は電力受給部、(c)は直流負荷たる各種の電気・電子機器である。」(3頁左上欄17行~19行)との記載がある。
b 周知文献1の「携帯電話機等の携帯用家電製品」や周知文献2の「電気ひげ剃り器などの携帯用充電式電子機器や電気湯沸かし器等の各種の電気・電子機器」が、大きな電力供給を要しないことは明らかであるから、周知技術2は、大電力の伝送に特化した構成ということはできない。
c そして、本願発明の前記構成Aは、周知技術2と実質的に同一の構成であるから、本願発明の前記構成Aも、大電力の伝送に特化したものとは認められない。
(オ)その他、請求項1には、本願発明が大電力を伝送するものに限られると認め得る事項は存在しない。
したがって、本願発明が200Wもの電力を伝送する装置であるとの主張は、請求項1の記載に基づくものではない。
(カ)前記(ア)~(オ)のとおりであるから、請求人の主張2も、採用することはできない。
ウ 主張3及び主張4について
引用文献2及び3は、前記第4、2のとおり、「インピーダンス整合のために、交流電圧を変圧する変圧器を用いること」という周知技術1を示すために引用したものであって、引用文献2に記載された変圧器、または、引用文献3に記載の受電装置の搬送波受信装置を、引用文献1の「送電コイル」及び「受電コイル」に適用するために示したものではない。
したがって、請求人の主張3及び主張4も採用することはできない。
4 小括
よって、本願発明は、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明並びに周知技術1及び2に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-014698