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特許拒絶査定不服審判

2021-014577

バイオPET樹脂の製造方法

審判番号
2021-014577
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-520984外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年10月27日
審決日
2023年03月13日
公報発行日
2023年06月30日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (C08G) / P18 .113-WZ (C08G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-520984「バイオPET樹脂の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月 7日国際公開、WO2017/209223〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 15項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、2017年(平成29年)5月31日(国内優先権主張 2016年(平成28年)5月31日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 2年11月 6日付け:拒絶理由通知
令和 2年12月14日提出:意見書、手続補正書
令和 3年 3月25日付け:拒絶理由通知
令和 3年 5月31日提出:意見書
令和 3年 7月14日付け:拒絶査定
令和 3年10月27日提出:拒絶査定不服審判の請求、手続補正書
令和 4年 4月28日提出:上申書
令和 4年11月24日付け:拒絶理由通知
令和 5年 1月19日提出:意見書、手続補正書

第2 本願発明

令和5年1月19日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「ペットボトルの製造方法であって、前記方法が、
アルミニウム化合物又はゲルマニウム化合物を含有する触媒の存在下において、バイオマス資源に由来するエチレングルコールとバイオマス資源に由来するテレフタル酸とを重合させてバイオPET樹脂を供する工程、ここで、前記バイオPET樹脂を供する工程は、固相重合工程を含む、及び
前記バイオPET樹脂をペットボトルに加工する工程を含み、
前記方法において共重合成分が添加されず、前記共重合成分が、イソフタル酸、シクロヘキサンジメタノール又はジエチレングリコールであり、そして
前記バイオPET樹脂の固有粘度(IV)が0.7~0.85dl/gであることを特徴とする、方法。」

第3 拒絶の理由

令和4年11月24日付けで当審が通知した拒絶理由の概要は、以下のとおりのものである。

1 請求項1、2、4~9に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、以下の引用文献4、1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

2 請求項1、3~9に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、以下の引用文献5、1、6~8に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献4.国際公開第2005/75539号(拒絶査定の引用文献4)

引用文献5.特開2005-132958号公報(令和3年3月25日付け拒絶理由通知書の引用文献5)

引用文献1.特開2011-219736号公報(令和2年11月6日付け拒絶理由通知書の引用文献1)

引用文献6.特開2002-37915号公報(令和4年1月11日付け前置報告書の周知文献6)

引用文献7.特開2012-12578号公報(令和4年1月11日付け前置報告書の周知文献7)

引用文献8.特開2004-26853号公報(令和4年1月11日付け前置報告書の周知文献8)

ところで、令和4年11月24日付け拒絶理由通知の「引用文献等一覧」において、「引用文献1」の番号を、「特開2012-72319号公報」と記載した。これに対して、審判請求人は、令和5年1月19日提出の意見書において、「引用文献1」を「特開2011-219736号公報」として認識し、意見釈明していることから、「引用文献1」を、「特開2011-219736号公報」として、以下判断する。

さらに、当該拒絶理由通知の「引用文献等一覧」において、「引用文献6」の番号を、「特開2001-37915号公報」と記載した。これに対して、審判請求人は、令和5年1月19日提出の意見書において、「引用文献6」を「特開2002-37915号公報」として認識し、意見釈明していることから、「引用文献6」を、「特開2002-37915号公報」として、以下判断する。

第4 引用文献等の記載及び引用発明

1 引用文献4に記載された事項及び引用文献4に記載された発明

(1)引用文献4に記載された事項

引用文献4には、以下の事項が記載されている。

「請求の範囲
[1] アルミニウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、リン化合物から選ばれる少なくとも1種からなる重縮合触媒の存在下で製造したポリエステルにおいて、ポリエステルに不溶なアルミニウム系異物が3500ppm以下であることを特徴とするポリエステル。
・・・
[4] ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のポリエステル。
・・・
[8] アルミニウム化合物およびリン化合物からなるポリエステル重合触媒であって、アルミニウム化合物およびリン化合物を溶媒中で混合してなることを特徴とするポリエステル重合触媒。
・・・
[21] 上記重合触媒の添加時期が、エステル交換反応あるいは直接エステル化反応後から重縮合反応までの間であることを特徴とする請求項8~19のいずれかに記載の重合触媒を用いたポリエステルの製造方法。
・・・」
「[0002] ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等に代表されるポリエステルは、機械的特性、及び化学的特性に優れており、それぞれのポリエステルの特性に応じて、例えば衣料用や産業資材用の繊維、包装用や磁気テープ用などのフィルムやシート、中空成形品であるボトル、電気・電子部品のケーシング、その他エンジニアリングプラスチック成形品等の広範な分野において使用されている。特に、ポリエチレンテレフタレートなどの飽和ポリエステルからなるボトルは、機械的強度、耐熱性、透明性およびガスバリヤー性に優れるため、ジュース、炭酸飲料、清涼飲料などの飲料充填用容器および目薬、化粧品などの容器として広く使用されている。
代表的なポリエステルである芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールを主構成成分とするポリエステルは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)の場合には、テレフタル酸もしくはテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとのエステル化反応もしくはエステル交換反応によってビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートなどのオリゴマー混合物を製造し、これを高温、真空下で触媒を用いて液相重縮合させ、粒状化後、固相重縮合し成形用ペレットが製造される。こうして製造されたポリエステルペレットは射出成形してプリフォームを製造し、次いでこのプリフォームをブロー成形するなどして二軸延伸し、ボトル状に成形されることで製造されている。」
「[0069] ポリエステルの用途
本発明のポリエステルは、ミネラルウオーター、ジュース、ワインやウイスキー等の飲料容器、ほ乳瓶、瓶詰め食品容器、整髪料や化粧品等の容器、住居および食器用洗剤容器等の中空成形体として好適に用いられる。」
「[0071] 実施例
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、評価法は以下の方法で実施した。
・・・
[0075] (15)中空成形体の成形
続きを表示(全29行)
ポリエステルを脱湿窒素を用いた乾燥機で乾燥し、各機製作所製M-150C(DM)射出成型機により樹脂温度295℃でプリフォームを成形した。このプリフォームの口栓部を自家製の口栓部結晶化装置で加熱結晶化させた後、コーポプラスト社製LB-01E延伸ブロー成型機を用いて二軸延伸ブロー成形し、引き続き約140℃に設定した金型内で約7秒間熱固定し、1500ccの中空成形体 (胴部は円形)を得た。
(16)中空成形体の透明性評価
上記(2)(当審注:(15)の誤記と認められる)の方法で成形加工して得た中空成形体の透明性評価を、次に示すような 目視による3段階評価法を用いて評価した。
〇:透明性に優れている。
△:透明性にやや劣る。
×:透明性に劣る。
[0076] (アルミニウム化合物の調製例1)
塩基性酢酸アルミニウム(ヒドロキシアルミニウムジアセテート;Aldrich社製、水に 対する不溶分量400ppm)の20g/l水溶液に対して等量(容量比)のエチレングリコールをともにフラスコに仕込み、室温で6時間攪拌した後、減圧(133Pa)下、70~90℃で数時間攪拌しながら系から水を留去し、20g/lのアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液を調製した。
(リン化合物の調製例1)
リン化合物として(化39)で表されるIrganox1222(チバ・スペシャルテーケミカルズ社製)をエチレングリコールとともにフラスコに仕込み、窒素置換下攪拌しながら液温160℃で12時間加熱し、30g/lのリン化合物のエチレングリコール溶液を調製した。
[0077] (アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液/リン化合物のエチレングリコール溶液の混合物の調製例1)
上記アルミニウム化合物の調製例1および上記リン化合物の調整例1で得られたそれぞれのエチレングリコール溶液をフラスコに仕込み、アルミニウム原子とリン原子がモル比で1:2となるように室温で混合し、1日間攪拌して触媒溶液を調製した。
(アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液/リン化合物のエチレングリコール溶液の混合物の調製例2)
上記アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液/リン化合物のエチレングリコール溶液の混合物の調製例1で得たものをフラスコに仕込み、窒素置換下攪拌しながら、160℃に昇温し、そのまま30分間維持した後、約40℃まで冷却しポリエステル用重合触媒とした。
(アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液/リン化合物のエチレングリコール溶液の混合物の調製例3)
リン化合物の調製例1の方法で調製したリン化合物の溶液にアルミニウムアセチルアセトネートをアルミニウム原子とリン原子がモル比で1:2となるようにフラスコに仕込み、窒素置換下撹拌しながら、100℃で1時間加熱して触媒溶液を調製した。
(アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液/リン化合物のエチレングリコール溶液の混合物の調製例4)
上記アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液/リン化合物のエチレングリコール溶液の混合物の調製例1で得たものをフラスコに仕込み、窒素置換しないで攪拌しながら、160℃に昇温し、そのまま30分間維持した後、約40℃まで冷却しポリエステル用重合触媒とした。
[0078](実施例A-1)
攪拌機付き2リッターステンレス製オートクレーブに高純度テレフタル酸とその2倍モル量のエチレングリコールを仕込み、トリエチルアミンを酸成分に対して0.3モル%加え、0.25MPaの加圧下250℃にて水を系外に留去しながらエステル化反応を行いエステル化率が約95%のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびオリゴマーの混合物(以下BHET混合物という)を得た。このBHET混合物に重縮合触媒として、上記“アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液/リン化合物のエチレングリコール溶液の混合物の調製例1”の重合触媒を用い、ポリエステル中の酸成分に対してアルミニウム原子およびリン原子としてそれぞれ0.014モル%および0.028モル%になるように加え、次いで、窒素雰囲気下、常圧にて 250℃で10分間攪拌した。その後、60分間かけて280℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(0.1Torr)として、さらに280℃、13.3Paで重縮合反応を実施した。放圧に続き、微加圧下のレジンを冷水にストランド状に吐出して急冷し、その後20秒間冷水中で保持した後、カティングして長さ約3mm、直径約2mmのシリンダー形状のペレットを得た。重縮合反応に要した時間(重合時間)と得られたポリエステルのIVを表1に示す。
溶融重合で得られたポリエステルペレットを、減圧乾燥(13.3Pa以下、80℃、12時間)した後、引き続き結晶化処理(13.3Pa以下、130℃、3時間、さらに、13.3Pa以下、160℃、3時間)を行った。放冷後のこのポリエステルペレットレを固相重合反応器内で、系内を13.3Pa以下、215℃に保ちながら固相重合を行い、IVが0.78dl/gのポリエステルペレットを得た。次いで、上記の(2)、(3)および(4)記載の方法による、中空成形体の透明性および異物の評価結果を表1に示す。
・・・
[図:0001397555000001.jpg]
・・・
[0087] 本発明により、欠点を有するアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物およびチタン化合物を触媒主成分として含まず、触媒金属成分としてアルミニウム化合物を用いた、色調や熱安定性に優れかつ成形品の透明性に優れ、特に異物の少なぐ超微細繊維、光学用の高透明なフィルムあるいは超高透明な成型体等の分野においてその特徴を発揮することができるポリエステルが得られる。さらに、本発明により、このようなポリエステルを提供することのできる活性の高いポリエステル重合触媒、および、これを用いたポリエステルの製造方法が得られる。」

(2)引用文献4に記載された発明

実施例A-1において得られたポリエステルペレットを用いて、[0075]に記載された中空成形体を成形していることから、この中空成形体を成形する製造方法の観点について着目すると、引用文献4には次の発明が記載されていると認める。

「攪拌機付き2リッターステンレス製オートクレーブに高純度テレフタル酸とその2倍モル量のエチレングリコールを仕込み、トリエチルアミンを酸成分に対して0.3モル%加え、0.25MPaの加圧下250℃にて水を系外に留去しながらエステル化反応を行いエステル化率が約95%のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびオリゴマーの混合物(以下BHET混合物という)を得、このBHET混合物に重縮合触媒として、下記“アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液/リン化合物のエチレングリコール溶液の混合物の調製例1”の重合触媒を用い、ポリエステル中の酸成分に対してアルミニウム原子およびリン原子としてそれぞれ0.014モル%および0.028モル%になるように加え、次いで、窒素雰囲気下、常圧にて250℃で10分間攪拌し、その後、60分間かけて280℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(0.1Torr)として、さらに280℃、13.3Paで重縮合反応を実施し、放圧に続き、微加圧下のレジンを冷水にストランド状に吐出して急冷し、その後20秒間冷水中で保持した後、カティングして長さ約3mm、直径約2mmのシリンダー形状のペレットを得、溶融重合で得られたポリエステルペレットを、減圧乾燥(13.3Pa以下、80℃、12時間)した後、引き続き結晶化処理(13.3Pa以下、130℃、3時間、さらに、13.3Pa以下、160℃、3時間)を行い、放冷後のこのポリエステルペレットレを固相重合反応器内で、系内を13.3Pa以下、215℃に保ちながら固相重合を行い、IVが0.78dl/gのポリエステルペレットを得、
ポリエステルペレットを脱湿窒素を用いた乾燥機で乾燥し、各機製作所製M-150C(DM)射出成型機により樹脂温度295℃でプリフォームを成形し、このプリフォームの口栓部を自家製の口栓部結晶化装置で加熱結晶化させた後、コーポプラスト社製LB-01E延伸ブロー成型機を用いて二軸延伸ブロー成形し、引き続き約140℃に設定した金型内で約7秒間熱固定し、1500ccの中空成形体 (胴部は円形)を得る製造方法。
“アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液/リン化合物のエチレングリコール溶液の混合物の調製例1”
(アルミニウム化合物の調製例1)
塩基性酢酸アルミニウム(ヒドロキシアルミニウムジアセテート;Aldrich社製、水に 対する不溶分量400ppm)の20g/l水溶液に対して等量(容量比)のエチレングリコールをともにフラスコに仕込み、室温で6時間攪拌した後、減圧(133Pa)下、70~90℃で数時間攪拌しながら系から水を留去し、20g/lのアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液を調製した。
(リン化合物の調製例1)
リン化合物として(化39)で表されるIrganox1222(チバ・スペシャルテーケミカルズ社製)をエチレングリコールとともにフラスコに仕込み、窒素置換下攪拌しながら液温160℃で12時間加熱し、30g/lのリン化合物のエチレングリコール溶液を調製した。
上記(アルミニウム化合物の調製例1)および上記(リン化合物の調整例1)で得られたそれぞれのエチレングリコール溶液をフラスコに仕込み、アルミニウム原子とリン原子がモル比で1:2となるように室温で混合し、1日間攪拌して触媒溶液を調製した。」(以下、「引用発明4」という。)

2 引用文献1に記載された事項

引用文献1には、以下の事項が記載されている。

「【請求項1】
バイオマス資源由来グリコールとバイオマス資源由来テレフタル酸および/またはそのエステル形成性誘導体を原料として用いてなるポリアルキレンテレフタレート樹脂およびリン化合物を含有するポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物。
・・・
【請求項6】
バイオマス資源由来グリコールがエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールから選ばれる少なくとも1種である請求項1~5のいずれか1項記載のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物。
・・・
【請求項9】
バイオマス資源由来グリコールとバイオマス資源由来テレフタル酸および/またはそのエステル形成性誘導体とを、エステル化またはエステル交換反応させた後、重縮合反応を行いポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物を製造する際に、リン化合物を添加することを特徴とするポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法。」
「【0002】
化石資源である石油は化学工業の重要な原料であるが、将来的には枯渇の懸念があるうえ、製造工程及び焼却廃棄時に大量の二酸化炭素を排出するため、地球規模での温暖化など一連の問題を招いている。このような状況の中、再生原材料や環境負荷の低い材料の使用に大きな注目が集まっている。」
「【0006】
本発明は、化石資源の減少および二酸化炭素の増大を大幅に抑制しうる、バイオ化率が高く、かつ融点が高く、広範な用途へ展開可能なバイオマス資源由来のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物およびそれからなる繊維を提供しようとするものである。」
「【0013】
本発明で使用するグリコールのうち、バイオマス資源由来グリコールの割合は全グリコール成分に対して50~100モル%であることが好ましく、80~100モル%であることがより好ましい。」
「【0015】
エチレングリコールを得る方法としては、例えば、とうもろこし、さとうきび、小麦または農作物の茎などのバイオマス資源から得る方法がある。これらバイオマス資源はまずでんぷんに転化され、でんぷんは水と酵素でグルコースに転化され、続いて水素添加反応にてソルビトールに転化され、ソルビトールは引続き一定の温度と圧力で触媒存在下、水素添加反応にて各種のグリコールの混合物となり、これを精製してエチレングルコールを得る方法がある。別の方法として、さとうきび等の炭水化物系作物などから生物学的処理方法によりバイオエタノールを得た後、エチレンへ変換し、さらにエチレンオキサイドを経てエチレングリコールを得る方法がある。さらに別の方法として、バイオマス資源からグリセリンを得た後、エチレンオキサイドを経由してエチレングリコールを得る方法がある。このようにして得られるエチレングリコールは種々の不純物を含んでいるが、不純物として1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオールのそれぞれが1重量%以下であることが好ましく、得られるポリエステルの物性面から0.5重量%以下であることが更に好ましく、得られるポリエステルの色調の観点から0.1重量%以下であることがより好ましい。
・・・
【0018】
一方、バイオマス資源由来テレフタル酸を得る方法としては特に限定されず、どのような方法が用いられてもよいが、例えばとうもろこしや糖類、木材からイソブタノールを得た後、イソブチレンへ変換し、その2量化によってイソオクテンを得た後に文献既知の方法(Chemische Technik,vol.38,No.3,P116-119;1986)、すなわちラジカル開裂、再結合、環化を経てp-キシレンを合成し、これを酸化してテレフタル酸を得る方法が挙げられる。また別の方法として、ユーカリ属の植物から得られるシネオールからp-シメンを合成し(日本化学会誌、(2)、P217-219;1986)、その後p-メチル安息香酸を経て(Organic Syntheses,27;1947)、テレフタル酸を得る方法が挙げられる。このようにして得られたバイオマス資源由来テレフタル酸はさらにエステル形成性誘導体に変換されてもよい。ここで言うエステル形成性誘導体とは低級アルキルエステル、酸無水物、アシル塩化物などである。」
「【0020】
本発明で用いるバイオマス資源由来テレフタル酸および/またはそのエステル形成性誘導体の割合は、全ジカルボン酸成分に対して50~100モル%であることが好ましく、80~100モル%であることがより好ましい。」
「【0028】
本発明のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物は通常、次のいずれかのプロセスで製造される。
【0029】
すなわち、(A)テレフタル酸とアルキレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセス、(B)ジメチルテレフタレートとアルキレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセスである。ここでエステル化反応は無触媒でも反応は進行するが、エステル交換触媒と同様にマグネシウム、マンガン、カルシウム、コバルト、亜鉛、リチウム、チタン等の化合物を触媒として用いてもよい。また重縮合の際に用いられる触媒としては、チタン化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物などが用いられる。バイオマス資源由来の原料には不純物が多く含まれ、紡糸時に口金まわりの堆積物が増え、口金洗浄や糸切れの回数が増えて操業性を低下させるが、触媒として高活性なチタン化合物やアルミニウム化合物を用いると触媒の添加量を減らすことができ、結果として口金まわりの堆積物も減らすことが出来るため好ましい。一方、固相重合においてはバイオマス資源由来の原料中の不純物により触媒が失活されて重合時間が延びることがあるため、失活しにくいアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物を用いることが好ましい。」
「【0033】
バイオマス資源由来グリコール成分やバイオマス資源由来テレフタル酸成分は不純物を多く含むことがあるため、得られるポリアルキレンテレフタレート樹脂には不純物由来の異物が発生したり、色調、熱安定性が悪化する場合があるが、バイオマス資源由来グリコール成分と化石資源由来テレフタル酸成分からなるポリアルキレンテレフタレート樹脂、化石資源由来グリコール成分とバイオマス資源由来テレフタル酸成分からなるポリアルキレンテレフタレート樹脂のようにバイオ化率の低いバイオマス資源由来ポリアルキレンテレフタレート樹脂では大きな問題にはならなかった。
【0034】
しかしながら、バイオマス資源由来グリコール成分とバイオマス資源由来テレフタル酸成分からなる完全バイオマス資源由来ポリアルキレンテレフタレート樹脂では、その現象が顕著に現れ、色調、熱安定性の悪化するだけでなく、異物粒子が大量に発生し、成形加工性が大幅に悪化する。この原因は、バイオマス資源由来グリコール成分中に含まれる不純物とバイオマス資源由来テレフタル酸成分中に含まれる不純物同士が反応もしくは凝集物を形成することによるものと推定している。
【0035】
かかる課題に対して鋭意検討を重ねた結果、ポリアルキレンテレフタレート樹脂にリン化合物を含有させたポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物とすることによって、異物粒子の発生が抑制され、色調、熱安定性の良好なポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物が得られることが分かった。この効果は、ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物中のリン化合物が、不純物同士による反応、凝集を抑制することによるものと考えている。そのため、本発明では、ポリアルキレンテレフタレート樹脂に、リン化合物を含有させることが必須である。ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物中にリン化合物が含有することによって、はじめて繊維、フィルム等に容易に加工することが可能となる。」
「【0046】
また、本発明においてさらに高分子量のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物を得るため、上記の方法で得られたポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物について、固相重合を行ってもよい。固相重合は、装置・方法は特に限定されないが、不活性ガス雰囲気下または減圧下で加熱処理されることで実施される。不活性ガスはポリエステルに対して不活性なものであれば良く、例えば窒素、ヘリウム、炭酸ガスなどを挙げることができるが、経済性から窒素が好ましく用いられる。また、減圧下としては、装置内の圧力を133Pa以下の条件とすることが好ましく、より減圧条件にすることが固相重縮合反応に要する時間を短くできるため有利である。」
「【実施例】
【0052】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0053】
続きを表示(全32行)
用いた原料は以下のとおりである。
バイオマス資源由来エチレングリコール:
・EG*1:インディアグリコール社製(純度99.5%)
・EG*2:長春大成集団製(純度97.7%)
・バイオマス資源由来1,3-プロパンジオール:グルコースを発酵し、その後精製した。
・バイオマス資源由来1,4-ブタンジオール:バイオマス資源由来こはく酸を還元した。
・化石資源由来エチレングリコール:日本触媒社製。
・バイオマス資源由来テレフタル酸:バイオマス資源由来p-キシレンを酸化した。
・バイオマス資源由来テレフタル酸ジメチル:バイオマス資源由来テレフタル酸をメチルエステル化した。
・化石資源由来テレフタル酸:三井化学社製
・化石資源由来テレフタル酸ジメチル:SKケミカル社製
・・・
【0074】
実施例6
予め実測バイオ化率が100%のビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約100kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×105Paに保持されたエステル化反応槽にバイオマス資源由来テレフタル酸82.5kgとバイオマス資源由来エチレングリコール(インディアグリコール社製)35.4kgのスラリーを4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行い、得られたエステル化反応生成物101.5kgを重縮合槽に移送した。
【0075】
移送後、エステル化反応生成物に、得られるポリマーに対してアンチモン原子換算で250ppm相当の三酸化アンチモン、リン原子換算で10ppm相当のリン酸トリメチルのエチレングリコール(バイオマス資源由来、インディアグリコール社製)溶液を添加した。さらに5分後に酸化チタン粒子のエチレングリコール(バイオマス資源由来、インディアグリコール社製)スラリーを、得られるポリマーに対して酸化チタン粒子換算で0.3重量%添加した。その後、30rpmで撹拌しながら反応系を減圧して反応を開始した。反応器内を250℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクに到達したら反応系を窒素パージして常圧に戻して重縮合反応を停止させ、ストランド状に吐出して冷却後、直ちにカッティングしてポリマーのペレットを得た。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は2時間30分であった。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、色調、熱安定性ともに良好であった。ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の特性を表2にまとめた。
・・・
【0077】
実施例8~11
得られるポリマーに対してマグネシウム原子換算で10ppm相当の酢酸マグネシウムのエチレングリコール(バイオマス資源由来、インディアグリコール社製)溶液を重合時に添加し、重合触媒とその添加量、およびリン化合物を表1に示す通り変更した以外は実施例6と同様にしてポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を得た。重合時間、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の特性を表2にまとめた。
・・・
【表1】
[図:0001397555000002.jpg]
【0082】
【表2】
[図:0001397555000003.jpg]
」

3 引用文献5に記載された事項及び引用文献5に記載された発明

(1)引用文献5に記載された事項

引用文献5には、以下の事項が記載されている。

「【請求項1】
[A]テレフタル酸を含むジカルボン酸またはそのエステル誘導体と、エチレングリコールを含むジオールまたはそのエステル誘導体とを、重縮合触媒の存在下で加熱溶融して液相重縮合させて、フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン混合溶媒中で測定される固有粘度が0.7乃至1.5dl/gであるポリエステル(a)を製造する液相重縮合工程と、[C]液相重縮合工程で得られたポリエステル(a)を超臨界流体と接触させ、含有する揮発成分が減少したポリエステル(c)を製造する超臨界抽出工程を含み、得られるポリエステル(c)のアセトアルデヒド含有量が10ppm以下であることを特徴とするポリエステルの製造方法。」
「【0002】
従来より、ポリエステル樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂は、優れた機械的性質及び化学的特性に加え、その優れた透明性、ガスバリア性、安全衛生性等を生かして、射出成形したプリフォームを延伸ブロー成形したボトル等として、又、押出成形したシートを熱成形したトレイやカップ等として、或いは該シートを二軸延伸したフィルム等として、特に食品包装分野において著しい伸びを示している。該ポリエステルから得られるボトル中にアセトアルデヒドが残存すると、充填される内容物の味覚が著しく低下してしまう。このためボトルを成形するポリエステル中に含まれるアセトアルデヒド含量は、出来る限り少ないことが望ましい。ボトルを形成するポリエステル中に含まれるアセトアルデヒド量を少なくするには、成形前のアセトアルデヒド含有量が少ないとともにボトル成形時にもアセトアルデヒド量が増加しにくいポリエステルが必要とされる。
【0003】
ところでポリエステルは、テレフタル酸などのジカルボン酸またはそのエステル誘導体と、エチレングリコールなどのジオールまたはそのエステル誘導体とをエステル化反応させた後、エステル化物を重縮合触媒の存在下で重縮合反応させることにより製造されている。この重縮合反応は、液相重縮合工程と固相重縮合工程とで行われており、固有粘度が高く且つアセトアルデヒド含量が低下されたポリエステルが得られている。このようなポリエステルの製造方法では、液相重縮合工程及び固相重縮合工程を行わなければならないが、この固相重縮合には長時間を要するために、製造コストの上昇を招いていた。
ところで固相重縮合工程を省略して液相重縮合により得られたポリエステルをそのままボトルなどの成形体に製造しようとすると、成形時にアセトアルデヒドが生成し、このアセトアルデヒドがポリエステル成形体中に残存してしまうという問題点がある。
このためアセトアルデヒド含有量が微量であるとともに、ボトルなどの成形時にもアセトアルデヒドが増加しにくいポリエステルを提供することが出来、しかも固相重縮合工程を省略できるようなポリエステルの製造方法の出現が望まれている。」
「【0005】
本発明は、前述の従来の技術における現状に鑑みてなされたもので、従って、本発明は、ポリエステル樹脂と超臨界流体とを接触させる処理を施すことにより、アセトアルデヒド含有量が微量であるとともに、ボトルなどの成形時にアセトアルデヒドが増加しにくいポリエステルを提供することが出来、しかも固相重縮合工程を省略出来るポリエステルの製造方法を提供することを目的とする。」
「【0008】
本発明に係るポリエステルの製造法により得られたポリエステルは、アセトアルデヒド含有量が少ないのみならず、成形時に生成するアセトアルデヒドの量が少ないため、このポリエステルから得られる飲料ボトルなどの中空成形容器は、内容物の味覚を変化させることがない。また本発明に係るポリエステルの製造方法では、ポリエステルに固相重縮合工程を省略することも出来、生産性、経済性に優れている。このように本発明に係るポリエステルの製造法により得られたポリエステルはプリフォーム、飲料ボトル用材料として好適である。」
「【0010】
本発明では、液相重縮合[A]で得られたポリエステル(a)は、[B]120℃乃至200℃の雰囲気下に、1分間乃至4時間保つ予備結晶化工程を経た後、[C]超臨界抽出工程に供給されてもよい。更に得られたポリエステル(c)を必要があれば固相重縮合工程(図示せず)に供給してもよい。以下、各工程について詳細に説明する。
【0011】
[A]液相重縮合工程
本発明では、まず[A]液相重縮合工程において、テレフタル酸を含むジカルボン酸またはそのエステル誘導体(たとえば低級アルキルエステル、フェニルエステルなど)と、エチレングリコールを含むジオールまたはそのエステル誘導体(たとえばモノカルボン酸エステルなど)とを、重縮合触媒の存在下で加熱溶融して液相重縮合させてポリエステル(a)を製造する。本発明では、テレフタル酸とエチレングリコールとを用いてホモポリエチレンテレフタレートを製造してもよく、またテレフタル酸に加えてテレフタル酸以外のジカルボン酸を20モル%以下の量で含有するジカルボン酸および/またはエチレングリコールに加えてエチレングリコール以外のジオールを20モル%以下の量で含有するジオールを用いて共重合ポリエステルを製造することもできる。
・・・
【0013】
液相重縮合工程[A]においては、上記のようなジカルボン酸またはそのエステル誘導体(以下、単にジカルボン酸というときもある)と、ジオールまたはそのエステル誘導体(以下、単にジオールというときもある)とを重縮合させてポリエステルを製造するが、この液相重縮合工程では、通常まずジカルボン酸とジオールとをエステル化反応させ(エステル化反応工程[A-1])、ついで液相重縮合反応(重縮合反応工程[A-2])させる。具体的には、まずジカルボン酸とジオールとを含むスラリーを調製する。このようなスラリーには、ジカルボン酸1モルに対して1.02~2.0モル好ましくは1.03~1.5モルのジオールが含まれる。このスラリーは、エステル化反応工程[A-1]に連続的に供給される。エステル化反応は、たとえば2個のエステル化反応器を直列に連結した装置を用いてジオールが還流する条件下で、反応によって生成した水あるいはアルコールを精留塔で系外に除去しながら実施することができる。」
「【0017】
液相重縮合反応は、触媒の存在下に行われる。触媒としては、二酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ-n-ブトキシドなどのゲルマニウム化合物、三酸化アンチモン、酢酸アンチモンなどのアンチモン触媒およびチタニウムテトラ-n-ブトキシド、チタニウムテトラ-n-プロポキシド、チタニウムテトラ-イソ-プロポキシド、チタンハロゲン化物を加水分解してなる加水分解物などのチタン触媒を単独で或いは併用されて、または更に、マグネシウム、コバルト、ナトリウムなどの化合物が併用されて用いることができる。
これらの触媒のうち二酸化ゲルマニウム化合物を用いると、色相および透明性に優れたポリエステルが得られるので好ましい。また重縮合反応は、安定剤の共存下に実施されることが好ましい。」
「【0027】
[D]固相重縮合工程
この超臨界抽出工程で得られるポリエステル(c)は、所望によりさらに固相重縮合することもできる。超臨界抽出工程で処理されたポリエステルは、結晶化度が20~50%であることが望ましい。なお、この超臨界抽出工程によっては、いわゆるポリエステルの固相重縮合反応は進行せず、結晶化のみが進行する。ポリエステルの極限粘度は、液相重縮合後のポリエステルの極限粘度とほぼ同じであり、超臨界抽出処理されたポリエステルの極限粘度と予備結晶化される前のポリエステルの極限粘度との差は、通常0.06dl/g以下である。固相重縮合工程は、少なくとも1段からなり、温度が190~230℃、好ましくは195~225℃であり、圧力が0.1MPaG~10Torr、好ましくは常圧から100Torrの条件下で、窒素、アルゴン、炭酸ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行われる。使用する不活性ガスとしては窒素ガスが望ましい。
このようにして得られた粒状ポリエステルの極限粘度は、通常0.70~1.00dl/g、好ましくは0.75~0.95dl/gであることが望ましい。
【0028】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本実施例において、中空成形品の形成及びアセトアルデヒド濃度の測定は以下のようにして行った。
(成形品)得られたポリエステル樹脂チップを、除湿エア乾燥機を用いて170℃、4時間乾燥した。乾燥後の樹脂中の水分量は40ppm以下であった。乾燥したポリエステルを日精ASB機械株式会社製ASB-50を用いて、シリンダー設定温度265~275℃、成形サイクル26秒前後で成形し、プリフォームを得た。」
「【実施例1】
【0030】
テレフタル酸100重量部にエチレングリコール50.5重量部および二酸化ゲルマニウム0.026重量部を加え、常法によりエステル化反応を行った。反応終了時の液温は240℃であった。次いでトリメチルフォスフェート0.030重量部加え、重縮合反応を3段階で行った。最終段では、反応温度270℃、反応圧力1Torrで重縮合反応を行い、固有粘度0.84dl/gのポリエステルを得た。該ポリエステルチップのアセトアルデヒド濃度は28ppmであった。
【0031】
続きを表示(全11行)
このようにして得られたポリエステル(a)を、超臨界状態の流体と接触させた。恒温槽に設置した、内径14mm、長さ300mm、容量46.16Lの耐圧容器にポリエステル(a)を充填し、昇温、昇圧された二酸化炭素を供給し耐圧容器内を流通させた。耐圧容器の出口には圧力制御バルブを設置し、脱圧した。耐圧容器手前の二酸化炭素導入管に水供給装置を設置し、流体中の水濃度が6000ppmになるようにした。
恒温槽の温度は80℃に制御し、二酸化炭素の圧力は16MPaになるようにした。この状態で2時間保持した後降温して、ポリエステル粒(チップ)を取り出した。得られたポリエステル(c)は固有粘度が0.83dl/g、アセトアルデヒド濃度は1.6ppmであった。これらの値は固相重縮合したのと同等の品質であった。また、当該チップは結晶化しており、ボトル成形などの乾燥時に融着などの懸念が無く、取り扱いが容易である。当該チップを日精ASB機械株式会社製ASB-50を用いて成形し、ボトル用プリフォームを得た。プリフォーム中のアセトアルデヒド濃度は3.5ppmであった。
・・・
【0035】・・・
[比較例1]
【0036】
実施例1に記載の、液相重縮合工程で到達する固有粘度を0.64dl/gで打ち切り、チップ状ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステルは超臨界流体と接触処理することなしに、窒素気流下固相重縮合を行った。重合条件は、初めに170℃で予備結晶化を行った後、215℃で固相重縮合を10時間行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.84dl/gであり、実施例1に記載のポリエステルと同等の固有粘度であった。アセトアルデヒド含有量は1.4ppmであった。このようにして得られたポリエステルを射出成形してボトル用プリフォームを得た。プリフォーム中のアセトアルデヒド濃度は9.0ppmであった。」
「【0040】
本発明に係るポリエステルの製造法により得られたポリエステルは、アセトアルデヒド含有量が少ないのみならず、成形時に生成するアセトアルデヒドの量が少ないため、このポリエステルから得られる飲料ボトルなどの中空成形容器は、内容物の味覚を変化させることがない。また本発明に係るポリエステルの製造方法では、ポリエステルに固相重縮合工程を省略することも出来、生産性、経済性に優れている。このように本発明に係るポリエステルの製造法により得られたポリエステルはプリフォーム、飲料ボトル用材料として好適である。」

(2)引用文献5に記載された発明

引用文献5の請求項1と、段落【0010】、同【0027】の、必要に応じて設けられる固相重縮合工程に着目しつつ、さらに同【0002】における、ポリエステル樹脂を射出成形したプリフォームを延伸ブロー成形したボトル等として用いる記載、同【0008】、同【0040】における、飲料ボトル用途への適用する記載、同【0028】における、ポリエステル樹脂チップから成形してプリフォームを得る記載、実施例1における、ポリエステル粒(チップ)からボトル用プリフォームを作成した記載に着目すると、以下の発明が記載されているものと認める。

「[A]テレフタル酸を含むジカルボン酸またはそのエステル誘導体と、エチレングリコールを含むジオールまたはそのエステル誘導体とを、重縮合触媒の存在下で加熱溶融して液相重縮合させて、フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン混合溶媒中で測定される固有粘度が0.7乃至1.5dl/gであるポリエステル(a)を製造する液相重縮合工程と、[C]液相重縮合工程で得られたポリエステル(a)を超臨界流体と接触させ、含有する揮発成分が減少したポリエステル(c)を製造する超臨界抽出工程を含み、さらに必要に応じて固相重縮合工程を有する、得られるポリエステル(c)のアセトアルデヒド含有量が10ppm以下であるポリエステルの製造方法によりポリエステルチップを得、該ポリエステルチップを射出成形して飲料ボトル用プリフォームを得、該飲料ボトル用プリフォームを延伸ブロー成形して飲料ボトルを製造する方法。」(以下、「引用発明5」という。)

4 引用文献6に記載された事項

引用文献6には、以下の事項が記載されている。

「【0003】
【発明が解決しようとする課題】
・・・ペレットのIV値が低いと、当該材料を用いて製造した容器等もIV値が低いものとなり、特に、炭酸飲料水などを収納するペットボトルとしては強度が不足するなど、再生用ポリエステル材料を用いて形成したリサイクル品が十分な製品品質を有しないものとなる場合があった。」

5 引用文献7に記載された事項

引用文献7には、以下の事項が記載されている。

「【0006】
ポリエステル樹脂の重合過程では、脱水反応であるエステル化反応と、エステル及びアルコールを反応させるエステル交換反応とが進行し、エステル化交換反応では例えば脱エチレングリコール(脱EG)する。従来、ポリエステルは分子量をある程度高く維持するため、ポリエステルのIV(固有粘度)は比較的高いのが通例である。例えば,ペットボトル用樹脂では,IV=0.72~0.85,タイヤコード用樹脂ではIV=0.95~1.05が必要とされる。そのため、ポリエステルの分子量がより大きくなるように、エステル交換反応を優先的に進行させる合成方法が広く採用されている。」

6 引用文献8に記載された事項

「【0013】
固有粘度IV値をボトルグレードのレベルにまで上げるため、チップをさらに200℃の窒素雰囲気の下で固相重合させ、IV値を0.7~1.1dl/gまで引き上げる。IV値は0.72~0.88dl/gが好ましい。固相重合の温度が200℃以下のとき、固有粘度IV値の増加は緩慢で、固相重合しない場合もある。」

第5 当審の判断

1 引用文献4を主引用例とする進歩性欠如

(1)対比

本願発明と引用発明4とを対比する。

引用発明4の「ポリエステルペレット」は、「エチレングリコール」と「高純度テレフタル酸」とから形成される「ペレット」であるから、上記「ポリエステル」は、「ポリエチレンテレフタレート(英表記では「PET」、和表記では「ペット」)」である。そして、引用発明4の「1500ccの中空成形体(胴部は円形)」は、引用文献4の[0002]、[0069]によると、飲料充填用容器(飲料容器)を想定していることから、本願発明の「ボトル」に相当し、引用発明4の「ポリエステルペレット」から成形された「1500ccの中空成形体(胴部は円形)」は、本願発明の「ペットボトル」に相当する。そうすると、引用発明4の「1500ccの中空成形体 (胴部は円形)を得る製造方法」は、本願発明の「ペットボトルの製造方法」に相当する。

ついで、引用発明4の「エチレングリコール」、「高純度テレフタル酸」と、本願発明の「バイオマス資源に由来するエチレングリコール」、「バイオマス資源に由来するテレフタル酸」とは、それぞれ「エチレングリコール」、「テレフタル酸」である限りにおいて一致する。そして、引用発明4の「ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)」と、本願発明の「バイオPET樹脂」とは、「PET樹脂」である限りにおいて一致する。

そして、引用発明4の「ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)」は、「エチレングリコール」と「高純度テレフタル酸」とから形成されるポリマーであり、それ以外の共重合成分を含まないものであるから、引用発明4の「ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)」と、本願発明の「共重合成分が添加されず、前記共重合体成分が、イソフタル酸、シクロヘキサンジメタノール又はジエチレングリコールであ」る「バイオPET樹脂」とは、「共重合成分が添加されず、前記共重合体成分が、イソフタル酸、シクロヘキサンジメタノール又はジエチレングリコールであ」る「PET樹脂」である限りにおいて一致する。

さらに、引用発明4の「“アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液/リン化合物のエチレングリコール溶液の混合物の調製例1”の重合触媒」は、本願発明の「アルミニウム化合物を含有する触媒」に相当する。そして、引用発明4の上記「重合触媒」を用いて、「エチレングリコール」と「高純度テレフタル酸」とからエステル化反応を行って得られた「ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびオリゴマーの混合物(以下BHET混合物という)」をさらに重合して「ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)」を得ることと、本願発明の「アルミニウム化合物又はゲルマニウム化合物を含有する触媒の存在下において」、「バイオマス資源に由来するエチレングリコール」と「バイオマス資源に由来するテレフタル酸」とを重合させて「バイオPET樹脂を供する工程」とは、「アルミニウム化合物を含有する触媒の存在下において」、「エチレングリコール」と「テレフタル酸」とを重合させて「PET樹脂を供する工程」である限りにおいて一致する。

また、引用発明4の「ポリエステルペレット」を「固相重合」していることから、本願発明の「固相重合工程を含む」ことに相当する。そして、引用発明4の「固相重合」した後の「ポリエステルペレット」の「IVが0.78dl/gである」ことと、本願発明の「バイオPET樹脂」の「固有粘度(IV)が0.7~0.85dl/gである」こととは、「PET樹脂」の「固有粘度(IV)が0.7~0.85dl/gである」ことである限りにおいて一致する。

そして、引用発明4の「中空成形体 (胴部は円形)を得る製造方法」は、「固相重合」後に「ポリエステルを脱湿窒素を用いた乾燥機で乾燥し、各機製作所製M-150C(DM)射出成型機により樹脂温度295℃でプリフォームを成形し、このプリフォームの口栓部を自家製の口栓部結晶化装置で加熱結晶化させた後、コーポプラスト社製LB-01E延伸ブロー成型機を用いて二軸延伸ブロー成形し、引き続き約140℃に設定した金型内で約7秒間熱固定」していることから、固相重合後にペットボトルへと加工しているものであり、引用発明4の「中空成形体(胴部は円形)を得る製造方法」と、本願発明の「ペットボトルの製造方法」において、「バイオPET樹脂をペットボトルに加工する工程を含」むこととは、「ペットボトルの製造方法」において、「PET樹脂をペットボトルに加工する工程を含」むことである限りにおいて一致する。

してみると、本願発明と引用発明4とは、

「ペットボトルの製造方法であって、前記方法が、
アルミニウム化合物を含有する触媒の存在下において、エチレングルコールとテレフタル酸とを重合させてPET樹脂を供する工程、ここで、前記PET樹脂を供する工程は、固相重合工程を含む、及び
前記PET樹脂をペットボトルに加工する工程を含み、
前記方法において共重合成分が添加されず、前記共重合成分が、イソフタル酸、シクロヘキサンジメタノール又はジエチレングリコールであり、そして
前記PET樹脂の固有粘度(IV)が0.7~0.85dl/gであることを特徴とする、方法。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1-1>

エチレングリコールについて、本願発明1では「バイオマス資源に由来する」ものであるのに対し、引用発明4はそのようなものであるか不明な点

<相違点1-2>

テレフタル酸について、本願発明1では「バイオマス資源に由来する」ものであるのに対し、引用発明4はそのようなものであるか不明な点

<相違点1-3>

PET樹脂について、本願発明1では「バイオ」、つまり「バイオマス資源に由来する」ものであるのに対し、引用発明4はそのようなものであるか不明な点

(2)判断

最初に、バイオマス資源由来の原料からなるバイオPET樹脂も、石油資源由来の原料からなるPET樹脂も、PET樹脂としてみた場合、両者は化学構造的には何ら変わらないものであることはいうまでもないことである。

この点を踏まえて、以下に、相違点1-1~相違点1-3をまとめて検討する。

引用文献1には、化石資源である石油は化学工業の重要な原料であるが、将来的には枯渇の懸念があるうえ、製造工程及び焼却廃棄時に大量の二酸化炭素を排出するため、地球規模での温暖化など一連の問題をまねいており、再生原材料や環境負荷の低い材料の使用に大きな注目が集まっていること(【0002】)、本発明は化石資源の減少および二酸化炭素の増大を大幅に抑制しうる、バイオ化率が高く、かつ融点が高く、広範な用途への展開可能なバイオマス資源由来のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物およびそれらからなる繊維を提供するものであること(【0006】)、バイオマス資源由来グリコールの割合が全グリコール成分に対して50~100モル%であることが好ましく、80~100モル%であることがより好ましいこと(【0013】)、バイオマス資源由来テレフタル酸および/またはそのエステル形成性誘導体の割合が全ジカルボン酸成分に対して50~100モル%であることが好ましく、80~100モル%であることがより好ましいこと(【0020】)、バイオマス資源由来の原料には不純物が多く含まれ、紡糸時に口金まわりの堆積物が増え、口金洗浄や糸切れの回数が増えて操業性を低下させるが、触媒として高活性なチタン化合物やアルミニウム化合物を用いると触媒の添加量を減らすことができ、結果として口金まわりの堆積物も減らすことが出来るため好ましいこと(【0029】)、実施例8で塩基性酢酸アルミニウムを触媒としてバイオマス資源由来グリコール100モル%、バイオマス資源由来テレフタル酸100モル%を重合して、バイオ化率100%のPETを得たことが記載されている。

ここで、引用文献1に見られるような、化石資源の枯渇化、地球規模での温暖化へ対処することは本願出願時には周知な課題であり、引用文献1では、ポリエチレンテレフタレートを製造する際に、その原料であるエチレングリコール、テレフタル酸を、化石資源からバイオマス資源由来のものに置き換えることによって、バイオマス資源由来のポリエチレンテレフタレートを製造して上記課題に対処しており、実際に、引用発明4と同じく、塩基性酢酸アルミニウムである「アルミニウム化合物を含有する」触媒を用いてバイオ化率100%のPET樹脂を製造している。このことを踏まえると、引用発明4においても、上記周知の課題を解決するべく、引用文献1に見られる知見、すなわちポリエチレンテレフタレートの原料であるエチレングリコール、テレフタル酸としてバイオマス資源由来のものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。その結果として、製造されるポリエステルは、バイオPET樹脂となることは明らかである。

してみると、本願発明は、引用発明4、すなわち引用文献4に記載された発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本願発明の効果について

本願発明は、アルミニウム化合物又はゲルマニウム化合物を触媒として用い、バイオマス資源に由来するエチレングリコール及びテレフタル酸を重合することにより、共重合成分としてイソフタル酸等を添加しなくても、ペットボトルとしての使用に耐えられるバイオPET樹脂を製造できるという効果を得るものである(本願明細書【0006】、【0008】)。

他方、引用文献4には、石油資源に由来する原料を用いたPET樹脂ではあるものの、実施例A-1でアルミニウム化合物を触媒として用いて重合して得た中空成形体(ペットボトル)の透明性が良好であること(表1)、触媒金属成分としてアルミニウム化合物を用いることで、色調や熱安定性に優れかつ成形品の透明性に優れ、異物が少なく、超微細繊維、光学用の高透明なフイルムあるいは超高透明な成型体等の分野においてその特徴を発揮することができるポリエステルが得られること(【0087】)が記載されている。

ここで、本願明細書【0014】には、「従来のPET樹脂の製造方法においては、触媒として、安価で優れた触媒活性を持つ三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物や、安全性や反応性に優れたチタン化合物が用いられている。しかしながら、アンチモン化合物やチタン化合物を用いる場合には、重合時の添加量を多くする必要があることからPET樹脂中への残渣量が増大し、結晶化速度が速くなる。それにより、透明性が損なわれたり、ボトル用途としての物性(例えば、耐熱性や耐圧性など)に適応しなくなってしまう。そのため、モノエチレングリコールやテレフタル酸といった主要な重合成分の他に、過度の結晶化を抑制する成分としてイソフタル酸、シクロヘキサンジメタノール又はジエチレングリコールといった共重合成分を添加する必要がでてくる。PET樹脂に含有されるイソフタル酸、シクロヘキサンジメタノール又はジエチレングリコールなどの共重合成分は、僅か数重量%(0.1~3重量%)程に過ぎないが、世界中で膨大な量のPET樹脂が消費されていることを鑑みれば、このような微量成分であったとしても、その製造において石油資源に由来する原料の使用を回避することができれば、地球環境に多大な貢献をもたらすことは明らかである。本発明者らは、このたび、触媒活性が比較的高いアルミニウム化合物やゲルマニウム化合物を触媒として用いることにより、バイオPET樹脂の製造において、イソフタル酸、シクロヘキサンジメタノール又はジエチレングリコールなどの共重合成分の添加を回避することができるという驚くべき知見を得た。」と記載されている。この記載によると、触媒としてアンチモン化合物やチタン化合物を用いた場合、添加量が多いため、残渣量も多く、その残渣が結晶化速度を速めるため、透明性が損なわれたり、耐熱性や耐圧性などの物性がペットボトルに適さないものになり、イソフタル酸等の共重合成分を添加する必要性のあるところ、上記アンチモン化合物やチタン化合物よりも添加量が少なく(必然的に残渣量も少なく)、その残渣が結晶化速度をそれほど速めないアルミニウム化合物やゲルマニウム化合物を用いた場合には、上記共重合成分を添加せずとも、透明性に優れ、耐熱性や耐圧性などの物性がペットボトルに適するポリエステル樹脂が得られるものと解される。そして、上記「透明性に優れ、耐熱性や耐圧性などの物性がペットボトルに適すること」が、「ペットボトルとしての使用に耐えられる」という本願発明の効果を意味していると認められ、そのような「バイオPET樹脂」を製造できることが本願発明の効果であるといえる。

一方、引用文献4では、イソフタル酸等の共重合成分を含むことなく、触媒金属成分としてアルミニウム化合物を用い、色調や熱安定性に優れかつ成形品の透明性に優れるポリエステル樹脂が製造できることが記載されており、本願発明にいう、「ペットボトル」としての使用に耐えられるポリエステル樹脂を製造できることが読み取れるから、引用文献4に記載された中空成形体(ペットボトル)は、本願発明と同様の性質を示すものといえる。

してみると、バイオマス資源由来の原料からなるバイオPET樹脂も、石油資源由来の原料からなるPET樹脂も、化学構造的には何ら変わらないものであるから、原料がバイオマス資源に由来するか、あるいは石油資源に由来するかにかかわらず、作用効果に大きな差異があるとは認められないものであって、本願発明の効果は、引用文献4及び引用文献1に記載された事項から、当業者が予測可能なものである。

(4)小括

以上から、本願発明は、引用発明4及び引用文献1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 引用文献5を主引用例とする進歩性欠如

(1)対比

ア 本願発明について

本願発明と引用発明5とを対比する。

引用発明5の「ポリエステル(a)」及び「ポリエステル(c)」は、「エチレングリコールを含むジオール又はそのエステル誘導体」と「テレフタル酸を含むジカルボン酸またはそのエステル誘導体」とを原料とするものであるから、上記「ポリエステル(a)」及び「ポリエステル(c)」は、「ポリエチレンテレフタレート(英表記では「PET」、和表記では「ペット」)」である。そして、引用発明5の「飲料ボトル」は、ポリエチレンテレフタレートのボトルであるから、本願発明の「ペットボトル」に相当する。そうすると、引用発明5の「飲料ボトルを製造する方法」は、本願発明の「ペットボトルの製造方法」に相当する。

ついで、引用発明5の「エチレングリコールを含むジオール又はそのエステル誘導体」、「テレフタル酸を含むジカルボン酸またはそのエステル誘導体」と、本願発明の「バイオマス資源に由来するエチレングリコール」、「バイオマス資源に由来するテレフタル酸」とは、それぞれ「エチレングリコール」、「テレフタル酸」である限りにおいて一致する。そして、引用発明5の「ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)」と、本願発明の「バイオPET樹脂」とは、「PET樹脂」である限りにおいて一致する。

さらに、引用発明5の「重縮合触媒の存在下で」「エチレングリコールを含むジオール又はそのエステル誘導体」と「テレフタル酸を含むジカルボン酸またはそのエステル誘導体」とを「液相重縮合工程」を行うことと、本願発明の「アルミニウム化合物又はゲルマニウム化合物を含有する触媒の存在下において」、「バイオマス資源に由来するエチレングリコール」と「バイオマス資源に由来するテレフタル酸」とを重合させて「バイオPET樹脂」を供する工程とは、「触媒の存在下において」、「エチレングリコール」と「テレフタル酸」とを重合させて「PET樹脂を供する工程」である限りにおいて一致する。

また、引用発明5の「ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)」は必要に応じて「固相重縮合工程」を施してよいものであるから、本願発明の「固相重合工程を含む」とは、固相重合工程を含みうる限りにおいて一致する。

そして、引用発明5の「ポリエステルチップを得、該ポリエステルチップを射出成形して飲料ボトル用プリフォームを得、該飲料ボトル用プリフォームを延伸ブロー成形して飲料ボトルを製造する方法」は、ポリエステルチップから射出成形された飲料ボトル用プリフォームを経て、延伸ブロー成形により、飲料ボトルを製造しているから、引用発明5の「ポリエステルチップを得、該ポリエステルチップを射出成形して飲料ボトル用プリフォームを得、該飲料ボトル用プリフォームを延伸ブロー成形して飲料ボトルを製造する方法」と、本願発明の「ペットボトルの製造方法」において「バイオPET樹脂をペットボトルに加工する工程を含」む製造方法とは、「ペットボトルの製造方法」において「PET樹脂をペットボトルに加工する工程を含」むことである限りにおいて一致する。

してみると、本願発明と引用発明5とは、

「ペットボトルの製造方法であって、前記方法が、
触媒の存在下において、エチレングルコールとテレフタル酸とを重合させてPET樹脂を供する工程、ここで、前記PET樹脂を供する工程は、必要に応じて固相重合工程を含む、及び
前記PET樹脂をペットボトルに加工する工程を含む、
方法。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点2-1>

エチレングリコールについて、本願発明1では「バイオマス資源に由来する」ものであるのに対し、引用発明5はそのようなものであるのか不明な点

<相違点2-2>

テレフタル酸について、本願発明1では「バイオマス資源に由来する」ものであるのに対し、引用発明5はそのようなものであるのか不明な点

<相違点2-3>

PET樹脂について、本願発明1では「バイオ」、つまり「バイオマス資源に由来する」ものであるのに対し、引用発明5はそのようなものであるのか不明な点

<相違点3>

触媒において、本願発明1では、「アルミニウム化合物又はゲルマニウム化合物を含有する」のに対し、引用発明5では、そのような特定がない点

<相違点4>

本願発明1では、共重合体成分が添加されず、前記共重合体成分が、イソフタル酸、シクロヘキサンジメタノール又はジエチレングリコールであるのに対し、引用発明5では、そのような特定がない点

<相違点5>

固相重合工程において、本願発明1では、必ず行う工程であるのに対し、引用発明5では、必要に応じて行う工程である点

<相違点6>

PET樹脂の固有粘度(IV)において、本願発明1では、0.7~0.85dl/gであるのに対し、引用発明5では、そのような特定がない点

(2)判断

最初に、バイオマス資源由来の原料からなるバイオPET樹脂も、石油資源由来の原料からなるPET樹脂も、PET樹脂としてみた場合、両者は化学構造的には何ら変わらないものであることはいうまでもないことである。

この点を踏まえて、以下、順に検討する。

(ア)相違点2-1~相違点2-3について

相違点2-1~相違点2-3をまとめて検討する。

引用文献1には、化石資源である石油は化学工業の重要な原料であるが、将来的には枯渇の懸念があるうえ、製造工程及び焼却廃棄時に大量の二酸化炭素を排出するため、地球規模での温暖化など一連の問題をまねいており、再生原材料や環境負荷の低い材料の使用に大きな注目が集まっていること(【0002】)、本発明は化石資源の減少および二酸化炭素の増大を大幅に抑制しうる、バイオ化率が高く、かつ融点が高く、広範な用途への展開可能なバイオマス資源由来のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物およびそれらからなる繊維を提供するものであること(【0006】)、バイオマス資源由来グリコールの割合が全グリコール成分に対して50~100モル%であることが好ましく、80~100モル%であることがより好ましいこと(【0013】)、バイオマス資源由来テレフタル酸および/またはそのエステル形成性誘導体の割合が全ジカルボン酸成分に対して50~100モル%であることが好ましく、80~100モル%であることがより好ましいこと(【0020】)、固相重合においてはバイオマス資源由来の原料中の不純物により触媒が失活されて重合時間が延びることがあるため、失活しにくいアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物を用いることが好ましいこと(【0029】)が記載されている。

ここで、引用文献1に見られるような、化石資源の枯渇化、地球規模での温暖化へ対処することは本願出願時には周知な課題であり、引用文献1では、ポリエチレンテレフタレートを製造する際に、その原料であるエチレングリコール、テレフタル酸を、化石資源からバイオマス資源由来のものに置き換えることによって、バイオマス資源由来のポリエチレンテレフタレートを製造して上記課題に対処すること、固相重合工程の際には触媒が失活しにくいゲルマニウム化合物を用いることが好ましいことが記載されている。これらのことを踏まえると、引用発明5においても、上記周知の課題を解決するべく、引用文献1に見られる知見、すなわちポリエチレンテレフタレートの原料であるエチレングリコール、テレフタル酸としてバイオマス資源由来のものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。その結果として、製造されるポリエステルは、バイオPET樹脂となることは明らかである。

してみると、相違点2-1~相違点2-3に係る発明特定事項は、引用発明5、すなわち引用文献5に記載された発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(イ)相違点3について

バイオマス資源由来の原料を用いること、それらにより製造されるバイオPET樹脂については、上記「(ア)」に記載のとおりである。

そして、引用文献1には、固相重合工程の際には触媒が失活しにくいゲルマニウム化合物を用いることが好ましいこと(【0029】)が記載され、引用文献5には、液相重縮合反応は触媒の存在下で行われ、該触媒が「二酸化ゲルマニウムなどのゲルマニウム化合物」、三酸化アンチモンなどのアンチモン触媒およびチタニウムテトラ-n-ブトキシドなどのチタン触媒が用いられること、なかでも「二酸化ゲルマニウム化合物」を用いると、色相および透明性に優れたポリエスエルが得られるので好ましいこと(【0017】)が記載され、実際、実施例1では、石油資源由来の原料ではあるものの、テレフタル酸、エチレングリコールを「二酸化ゲルマニウム」の存在下でエステル化し、重縮合反応を行ってポリエステルを得ている。

これら記載によると、固相重合工程を考慮して、また色相および透明性の観点で、触媒として「ゲルマニウム化合物」を用いることが理解できるから、引用発明5において、触媒として、「ゲルマニウム化合物」を選択することが実質的に記載されているといえるし、あるいは当業者が容易に想到し得たことである。

してみると、相違点3は、実質的な相違点でないか、引用発明5、すなわち引用文献5に記載された発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(ウ)相違点4について

バイオマス資源由来の原料を用いること、それらにより製造されるバイオPET樹脂については、上記「(ア)」に記載のとおりである。

そして、引用文献5には、実施例1でテレフタル酸、エチレングリコールを二酸化ゲルマニウムの存在下でエステル化し、重縮合反応を行ってポリエステルを得た後、ボトル用プリフォームを作成したことが記載されている。

この記載によると、二酸化ゲルマニウムの存在下において、「テレフタル酸、エチレングリコール以外の他の共重合成分を含まずに」、ペットボトル用のポリエステルを重合することが理解できるから、引用発明5において、「テレフタル酸、エチレングリコール以外の他の共重合体成分を含まない」構成にすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

してみると、相違点4に係る発明特定事項は、引用発明5、すなわち引用文献5に記載された発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(エ)相違点5及び相違点6について

バイオマス資源由来の原料を用いること、それらにより製造されるバイオPET樹脂については、上記「(ア)」に記載のとおりである。

そして、引用文献5には、ポリエステル樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂は、優れた機械的性質及び化学的特性に加え、その優れた透明性、ガスバリア性、安全衛生性等を活かして、射出成形したプリフォームを延伸ブロー成形したボトル等として、特に食品包装分野において著しい伸びを示していること、該ポリエステルから得られるボトル中にアセトアルデヒドが残存すると、充填される内容物の味覚が著しく低下するため、ボトルを形成するポリエステル中に含まれるアセトアルデヒド含量はできる限り少ないことが望ましいこと(以上、【0002】)、ポリエステルは、テレフタル酸などのジカルボン酸またはそのエステル誘導体と、エチレングリコールなどのジオールまたはそのエステル誘導体とをエステル化反応させた後、エステル化物を重縮合触媒の存在下で重縮合反応させることにより製造されているところ、この重縮合反応は、液相重縮合工程と固相重縮合工程とで行われており、固有粘度が高く且つアセトアルデヒド含量が低下されたポリエステルが得られていること、このようなポリエステルの製造方法では、液相重縮合工程及び固相重縮合工程を行わなければならないが、この固相重縮合には長時間を要するために、製造コストの上昇を招いていたこと、固相重縮合工程を省略して液相重縮合により得られたポリエステルをそのままボトルなどの成形体に製造しようとすると、成形時にアセトアルデヒドが生成し、このアセトアルデヒドがポリエステル成形体中に残存してしまうという問題点があること(以上、【0003】)が記載されている。

これら記載によると、ボトルを形成するポリエステル中に含まれるアセトアルデヒド含量を減らすために、固相重合工程を設けることが理解できる。

さらに、引用文献6には、ペレットのIV値が低いと、当該材料を用いて製造した容器等もIV値が低いものとなり、特に、炭酸飲料水などを収納するペットボトルとして強度が低下すること(【0003】)、引用文献7には、ペットボトル用樹脂では,IV=0.72~0.85が必要とされること(【0006】)が記載され、引用文献8には、固有粘度IV値をボトルグレードのレベルにまで上げるため、チップをさらに200℃の窒素雰囲気の下で固相重合させ、IV値を0.7~1.1dl/gまで引き上げること、IV値は0.72~0.88dl/gが好ましいこと(以上、【0013】)が記載されている。

これら記載によると、ペットボトルには、その強度を担保するために、IV値として0.72~0.85dl/g程度が求められるところ、固相重合によりIV値を高めていることが把握できる。

そうすると、ペットボトルには、成形時のアセトアルデヒド含量を減らすこと、ペットボトルの強度を担保することが求められており、いずれも固相重合工程を設けることにより解消されていることを踏まえると、所望のアセトアルデヒド含量でなかったり、所望のIV値(0.72~0.85dl/g程度)でなかったりした場合に、固相重合を行い、所望のIV値(0.72~0.85dl/g程度)とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。よって、相違点5及び相違点6に係る発明特定事項は、当業者が容易になし得ることである。

してみると、相違点5及び相違点6に係る発明特定事項は、引用発明5、すなわち引用文献5に記載された発明及び引用文献1に記載された事項並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本願発明の効果について

本願発明は、バイオマス資源の原料を重合するにあたり、アルミニウム化合物又はゲルマニウム化合物を触媒として用い、バイオマス資源に由来する原料を用いたことにより、共重合成分としてイソフタル酸等を添加しなくても、ペットボトルとしての使用に耐えられるバイオPET樹脂を製造できるという効果を得るものである(【0006】、【0008】)。

他方、引用文献5には、石油資源に由来する原料を用いたPET樹脂であるものの、液相重縮合反応は触媒の存在下で行われ、該触媒が「二酸化ゲルマニウムなどのゲルマニウム化合物」などが用いられ、なかでも「二酸化ゲルマニウム化合物」を用いると、色相および透明性に優れたポリエスエルが得られるので好ましいこと(【0017】)が記載されている。

ここで、上記「1」「(3)」で述べたように、本願明細書【0014】の記載から、触媒として、アンチモン化合物やチタン化合物よりも添加量が少なく、その残渣に基づいて結晶化速度をそれほど速めないアルミニウム化合物やゲルマニウム化合物を用いた場合には、上記共重合成分を添加せずとも、透明性に優れ、耐熱性や耐圧性などの物性がペットボトルに適するものと解され、本願発明のような発明特定事項とすることで、使用に耐えられる「ペットボトル」、つまり「透明性に優れ、耐熱性や耐圧性などの物性がペットボトルに適する」ペットボトルを製造できるという、本願発明の効果が得られるものといえる。

一方、引用文献5には、触媒金属成分として「二酸化ゲルマニウム化合物」を用いて、色相および透明性にすぐれることが記載されており、本願発明にいう、「ペットボトル」としての使用に耐えられるポリエステル樹脂を製造できるものであると認められ、引用文献5に記載された飲料ボトル(ペットボトル)は、本願発明と同様の性質を示すものといえる。

してみると、バイオマス資源由来の原料からなるバイオPET樹脂も、石油資源由来の原料からなるPET樹脂も、化学構造的には何ら変わらないものであるから、原料がバイオマス資源に由来するか、あるいは石油資源に由来するかにかかわらず、作用効果に大きな差異があるとは認められないものであって、本願発明の効果は、引用文献5及び引用文献1、並びに周知技術(引用文献6~8)に記載された事項から、当業者が予測可能なものである。

(4)小括

以上から、本願発明は、引用発明5、すなわち引用文献5に記載された発明及び引用文献1に記載された事項並びに引用文献6~8に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 審判請求人の主張について

審判請求人は、令和5年1月19日提出の意見書において、以下の意見を主張している。

主張ア 引用文献1の【0021】には、本発明の効果が実質的に損なわれない範囲内で共重合成分として、例えばイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体などのようなジカルボン酸成分や、ジエチレングリコールなどのようなジオール成分を含有してよいことが明示されていること

主張イ 引用文献1には、「ペットボトルの製造方法においてバイオPET樹脂を用いること」、「バイオPET樹脂の固有粘度(IV)が0.7~0.85dl/gである」という技術的特徴が具体的に開示されておらず、表2における実施例8で得られたPET樹脂のIVが0.66であり、0.7未満であることから、固有粘度(IV)の下限を0.7とする動機付けがなく、当該文献を参酌しても、上記技術的特徴を有する本発明には想到し得ないこと

主張ウ 引用文献1の実施例に示される樹脂が、その固有粘度の値から、耐熱性等が要求される「ペットボトル」用のバイオPET樹脂としては適当でなく、「繊維」用のものと考えられ、このことは引用文献1【0006】に記載される発明が解決しようとする課題からも明らかであるし、特許第4495214号公報【0012】には「イソフタル酸(IPA)が、結晶化を遅らせるためにボトルグレードのPETを製造するためにコモノマーとして用いられるが、繊維およびフィラメントグレードのPETには一般に用いられない。」ことが明示されており、本発明は、ペットボトルとして求められる機能(材料強度、成型性)を考慮・想定してなされた設計であり、これに加えて、耐熱性を持たせた上でのバイオ化に関するものであり、引用文献1に記載の発明とはまったく異なることから、引用文献1には、本発明に相当するための動機付けとはならないこと

主張エ 引用文献4及び引用文献1において、「バイオマス資源に由来するエチレングルコールとバイオマス資源に由来するテレフタル酸との重合工程において、アルミニウム化合物又はゲルマニウム化合物を触媒として用いることにより、共重合成分としてイソフタル酸、シクロヘキサンジメタノール又はジエチレングリコールなどの共重合成分を添加しなくとも、PET製品(特に、ペットボトル)としての使用に耐えられるバイオPET樹脂を製造できる」という知見について、なんら教示も示唆もされていない以上、これらの文献に基づき、本願発明1には想到し得ないことは明らかであること

主張オ 引用文献6~8においても、「バイオマス資源に由来するエチレングルコールとバイオマス資源に由来するテレフタル酸との重合工程において、アルミニウム化合物又はゲルマニウム化合物を触媒として用いることにより、共重合成分としてイソフタル酸、シクロヘキサンジメタノール又はジエチレングリコールなどの共重合成分を添加しなくとも、PET製品(特に、ペットボトル)としての使用に耐えられるバイオPET樹脂を製造できる」という知見については、なんら教示も示唆もされていないこと

本審決の要旨は、引用文献4又は引用文献5を主引用文献として進歩性を判断したものである。つまり、引用発明4又は引用発明5は、PETボトルの製造方法であって、該PETボトルを構成するPET樹脂が、イソフタル酸等の共重合成分を含まずに、石油資源由来のエチレングリコールと石油資源由来のテレフタル酸を原料とし、それらを重合して製造するものであるところ、化石資源の枯渇化、地球規模での温暖化へ対処するべく、該原料を引用文献1に記載されたバイオマス資源由来のエチレングリコールとバイオマス資源由来のテレフタル酸に代えてバイオPET樹脂を製造することが、当業者には容易想到であることを述べたものである。

そこで、この点を踏まえて、上記主張について、以下検討する。

主張アについて

引用文献1には、化石資源の枯渇化、地球規模での温暖化へ対処するべく、バイオ化率が高いポリエステルを得ることが記載され(【0002】、【0006】)、実施例8ではアルミニウム化合物を触媒としてバイオマス資源由来の原料を用いてバイオPET樹脂を製造したことが示されており、このような知見が本願出願時には公知であることを示すために引用文献1を引用したものである。

そして、引用文献1は、主引用文献ではなく、上記知見を示すための副引用文献として用いられたものであるから、【0021】において、イソフタル酸等の共重合成分を含むことが記載されていたとしても、本審決において、進歩性の判断を左右しないものである。

してみると、上記主張アに係る主張は、採用できない。

主張イ、ウ、エについて

まず、引用文献1は、その請求項1の末尾から見て、「ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物」に関する発明が記載されていることから、引用文献1におけるバイオPET樹脂が「繊維用」にのみ用いることを意図しているとはいえない。

そして、引用文献1【0006】には、「本発明は、化石資源の減少および二酸化炭素の増大を大幅に抑制しうる、バイオ化率が高く、かつ融点が高く、広範な用途へ展開可能なバイオマス資源由来のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物およびそれからなる繊維を提供しようとするものである。」と記載されているように、当該樹脂組成物の主な用途は、繊維ではあるのかもしれないが、「繊維」以外の用途に用いることを妨げるような記載は見当たらない。

そうすると、引用文献1には、バイオマス資源由来のエチレングリコールとバイオマス資源由来のテレフタル酸とを、アルミニウム化合物を触媒として、バイオPET樹脂を製造することが記載されており、該バイオPET樹脂が「繊維」以外には用いられないことを示しているとは認められず、引用発明4又は引用発明5に引用文献1に記載された事項を適用するにあたって、動機付けを有していないとはいえない。

さらに、PETボトル用のPET樹脂として要請される固有粘度は、引用文献6~8に見られるように0.72~0.85dl/g程度であることから、その下限は当業者が適宜最適化しうる事項である。そして、石油資源由来のPET樹脂が、引用文献4及び引用文献5に見られるように、PETボトル用のPET樹脂の原料として、イソフタル酸等の共重合成分を含まずとも、使用に耐えられるPETボトルが得られていることから、イソフタル酸等の共重合成分を含まずとも使用に耐えられるPETボトルを製造するためには、バイオPET樹脂でなければならないわけではない。

また、バイオマス資源に由来するエチレングリコールとバイオマス資源に由来するテレフタル酸との重合工程において、アルミニウム化合物又はゲルマニウム化合物を触媒として用いることにより、共重合成分としてイソフタル酸等を添加せずとも、PETボトルとしての使用に耐えられるバイオPET樹脂を製造できる」ということについては、上記「1」で述べたとおり、引用発明4及び引用文献1に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。

してみると、上記イ、ウ、エに係る主張は、採用できない。

主張オについて

引用文献6~8は、ペットボトルに求められるIV値を示すために提示したものである。

ここで、上記「1」「(3)」で述べたように、本願明細書【0014】より、触媒として、アンチモン化合物やチタン化合物よりも添加量が少なく、その残渣に基づいて結晶化速度をそれほど速めないアルミニウム化合物やゲルマニウム化合物を用いた場合には、上記共重合成分を添加せずとも、透明性に優れ、耐熱性や耐圧性などの物性がペットボトルに適するものと解され、本願発明のような発明特定事項とすることで、「透明性に優れ、耐熱性や耐圧性などの物性がペットボトルに適する」PET樹脂を製造できるという、本願発明の効果が得られるものであるところ、そもそもバイオマス資源由来の原料からなるバイオPET樹脂も、石油資源由来の原料からなるPET樹脂も、化学構造的には何ら変わらないものであるから、両者ともPET樹脂としての物性は同等の性質を示すものと解される。そうすると、バイオマス資源由来する、又は石油資源由来する、いずれのPET樹脂を用いてペットボトルを製造したとしても、ペットボトルとして要求されるIV値は大差ないものであり、「透明性に優れ、耐熱性や耐圧性などの物性がペットボトルに適する」ペットボトルを製造できるといえる。

そして、ペットボトルとしての使用に耐えられるPET樹脂の製造が、バイオマス資源由来の原料からなるバイオPET樹脂でなければ達成できないという技術常識があるわけではない。

してみると、引用文献6~8において、バイオPET樹脂に関する記載の有無は問題とならないものであって、上記オに係る主張は、採用できない。

以上のとおりであるから、審判請求人の、主張ア~オに係る、いずれの主張も採用できない。

第6 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用文献4に記載された発明又は引用文献5に記載された発明、及び引用文献1に記載された事項並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2021-014577

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