特許拒絶査定不服審判
2021-014295
オーディオ信号の高周波再構成のための高調波転換器の後方互換な統合
- 審判番号
- 2021-014295
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-026248外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年10月21日
- 審決日
- 2023年04月18日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ドルビー・インターナショナル・アーベー
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 【請求人代理人】宮崎 修
- 分類
- P18 .121-WZ (G10L) / P18 .575-WZ (G10L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020- 26248「オーディオ信号の高周波再構成のための高調波転換器の後方互換な統合」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 5月14日出願公開、特開2020- 74052〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年3月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年3月23日、米国)を国際出願日とする特願2019-536556号の一部を、令和2年2月19日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 2月 8日付け:拒絶理由通知書
同年 5月11日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月 5日付け:拒絶査定
同年10月21日 :審判請求書の提出
令和4年11月14日付け:拒絶理由通知書(当審:最後)
同年12月28日 :意見書、手続補正書の提出
第2 令和4年12月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年12月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであり、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。(下線部は、補正箇所である。)
なお、各構成の符号A~F2等は、説明のために当審で付したものであり、以下「構成A」~「構成F2」等という。以下、同様である。
「【請求項1】
A エンコードされたオーディオ・ビットストリームをデコードする方法であって、当該方法は:
B エンコードされたオーディオ・ビットストリームを受領する段階であって、前記エンコードされたオーディオ・ビットストリームはオーディオ信号の低域部分を表わすオーディオ・データを含む、段階と;
C 前記オーディオ・データをデコードして、デコードされた低域オーディオ信号を生成する段階と;
D’ 前記エンコードされたオーディオ・ビットストリームから、高周波再構成メタデータを抽出する段階であって、前記高周波再構成メタデータは、前記オーディオ信号の低域部分から、いくつかのサブバンドを前記オーディオ信号の高域部分に移す高周波再構成のためにチューニングされた線形並進動作パラメータを含み、前記線形並進動作パラメータは、正弦波追加情報、時間/周波数格子情報、クロスオーバー周波数および逆フィルタリング・モードからなる群から選択される動作パラメータを含む、段階と;
E 前記エンコードされたオーディオ・ビットストリームから、信号適応的な周波数領域オーバーサンプリングを使用するかどうかを示すパラメータを抽出する段階と;
F 前記デコードされた低域オーディオ信号を分解フィルタバンクでフィルタリングして、フィルタリングされた低域オーディオ信号を生成する段階と;
G 前記エンコードされたオーディオ・ビットストリームから、線形並進または高調波転換のどちらが前記オーディオ・データに対して実行されるべきかを示すフラグを抽出する段階と;
H’ 前記フラグに従って、前記フラグが前記オーディオ・データに対して高調波転換が実行されるべきであることを示す場合、高調波転換を実行することによって、前記フィルタリングされた低域オーディオ信号および前記選択される動作パラメータを含む前記高周波再構成メタデータを使って前記オーディオ信号の高域部分を再生成する段階と;
I 前記フィルタリングされた低域オーディオ信号および再生成された高域部分を組み合わせて、広帯域オーディオ信号を形成する段階とを含み、
F1 前記分解フィルタバンクが、
【数2】
[図:0001402072000001.jpg]
に基づく、プロトタイプ・フィルタp0(n)の変調されたバージョンである分解フィルタhk(n)を含み、p0(n)は実数値のプロトタイプ・フィルタであり、Mは前記分解フィルタバンクにおけるチャネル数であり、Nはプロトタイプ・フィルタ次数であり、
F2 前記プロトタイプ・フィルタp0(n)が表4の係数から導出される、
A 方法。」
(2)本件補正前の、令和3年5月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
A エンコードされたオーディオ・ビットストリームをデコードする方法であって、当該方法は:
B エンコードされたオーディオ・ビットストリームを受領する段階であって、前記エンコードされたオーディオ・ビットストリームはオーディオ信号の低域部分を表わすオーディオ・データを含む、段階と;
C 前記オーディオ・データをデコードして、デコードされた低域オーディオ信号を生成する段階と;
D 前記エンコードされたオーディオ・ビットストリームから、高周波再構成メタデータを抽出する段階であって、前記高周波再構成メタデータは、前記オーディオ信号の低域部分から、いくつかのサブバンドを前記オーディオ信号の高域部分に移す高周波再構成のための動作パラメータを含む、段階と;
E 前記エンコードされたオーディオ・ビットストリームから、信号適応的な周波数領域オーバーサンプリングを使用するかどうかを示すパラメータを抽出する段階と;
F 前記デコードされた低域オーディオ信号を分解フィルタバンクでフィルタリングして、フィルタリングされた低域オーディオ信号を生成する段階と;
G 前記エンコードされたオーディオ・ビットストリームから、線形並進または高調波転換のどちらが前記オーディオ・データに対して実行されるべきかを示すフラグを抽出する段階と;
H 前記フラグに従って、前記フィルタリングされた低域オーディオ信号および前記高周波再構成メタデータを使って前記オーディオ信号の高域部分を再生成する段階と;
I 前記フィルタリングされた低域オーディオ信号および再生成された高域部分を組み合わせて、広帯域オーディオ信号を形成する段階とを含み、
F1 前記分解フィルタバンクが、
【数2】
[図:0001402072000002.jpg]
に基づく、プロトタイプ・フィルタp0(n)の変調されたバージョンである分解フィルタhk(n)を含み、p0(n)は実数値のプロトタイプ・フィルタであり、Mは前記分解フィルタバンクにおけるチャネル数であり、Nはプロトタイプ・フィルタ次数であり、
F2 前記プロトタイプ・フィルタp0(n)が表4の係数から導出される、
A 方法。」
2 補正の適否
(1)補正の目的について
請求項1に係る本件補正は、以下の補正事項を含むものである。
ア 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「高周波再構成のための動作パラメータ」について、「高周波再構成のためにチューニングされた線形並進動作パラメータを含み、前記線形並進動作パラメータは、正弦波追加情報、時間/周波数格子情報、クロスオーバー周波数および逆フィルタリング・モードからなる群から選択される動作パラメータを含む」との限定を付加する補正。
イ 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記高周波再構成メタデータを使って前記オーディオ信号の高域部分を再生成する段階」について、「前記フラグが前記オーディオ・データに対して高調波転換が実行されるべきであることを示す場合、高調波転換を実行することによって、」との限定、及び「前記高周波再構成メタデータ」について、「前記選択される動作パラメータを含む」との限定を付加する補正。
上記補正事項ア、イは、本件補正前の請求項1に係る発明を特定する事項を限定するものであって、本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正による請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は、それぞれオーディオ・データのデコード及び高周波再構成処理の改善であって同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2)独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
ア 本件補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
イ 引用文献の記載事項、引用発明等
(ア)引用文献1について
a 引用文献1の記載事項
令和4年11月14日付けの当審の拒絶の理由で引用された国際公開第2016/146492号(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、引用に際しては、引用文献1の日本語ファミリー文献である特表2018-508830号公報の該当記載を、原文の次に摘記した。また、以降の下線は、強調のために当審で付した。
「BACKGROUND OF THE INVENTION
A typical audio bitstream includes both audio data (e.g., encoded audio data) indicative of one or more channels of audio content, and metadata indicative of at least one characteristic of the audio data or audio content. One well known format for generating an encoded audio bitstream is the MPEG-4 Advanced Audio Coding (AAC) format, described in the MPEG standard ISO/IEC 14496-3:2009. In the MPEG-4 standard, AAC denotes "advanced audio coding" and HE-AAC denotes "high- efficiency advanced audio coding."
The MPEG-4 AAC standard defines several audio profiles, which determine which objects and coding tools are present in a complaint encoder or decoder. Three of these audio profiles are (1) the AAC profile, (2) the HE-AAC profile, and (3) the HE-AAC v2 profile. The AAC profile includes the AAC low complexity (or "AAC-LC") object type. The AAC-LC object is the counterpart to the MPEG-2 AAC low complexity profile, with some adjustments, and includes neither the spectral band replication ("SBR") object type nor the parametric stereo ("PS") object type. The HE-AAC profile is a superset of the AAC profile and additionally includes the SBR object type. The HE-AAC v2 profile is a superset of the HE-AAC profile and additionally includes the PS object type.
The SBR object type contains the spectral band replication tool, which is an important coding tool that significantly improves the compression efficiency of perceptual audio codecs. SBR reconstructs the high frequency components of an audio signal on the receiver side (e.g., in the decoder). Thus, the encoder needs to only encode and transmit low frequency components, allowing for a much higher audio quality at low data rates. SBR is based on replication of the sequences of harmonics, previously truncated in order to reduce data rate, from the available bandwidth limited signal and control data obtained from the encoder. The ratio between tonal and noiselike components is maintained by adaptive inverse filtering as well as the optional addition of noise and sinusoidals. In the MPEG-4 AAC standard, the SBR tool performs spectral patching, in which a number of adjoining Quadrature Mirror Filter (QMF) subbands are copied from a transmitted lowband portion of an audio signal to a highband portion of the audio signal, which is generated in the decoder.」(第1頁第15行~第2頁第10行)
(仮訳:
【背景技術】
【0002】
典型的なオーディオ・ビットストリームは、オーディオ・コンテンツの一つまたは複数のチャネルを示すオーディオ・データ(たとえばエンコードされたオーディオ・データ)と、前記オーディオ・データまたはオーディオ・コンテンツの少なくとも一つの特性を示すメタデータとの両方を含む。エンコードされたオーディオ・ビットストリームを生成するための一つのよく知られたフォーマットは、MPEG規格ISO/IEC14496-3:2009に記載されるMPEG-4先進オーディオ符号化(AAC: Advanced Audio Coding)フォーマットである。MPEG-4規格では、AACは「advanced audio coding(先進オーディオ符号化)」を表わし、HE-AACは「high-efficiency advanced audio coding(高効率先進オーディオ符号化)」を表わす。
【0003】
MPEG-4 AAC規格はいくつかのオーディオ・プロファイルを定義しており、それらのオーディオ・プロファイルがどのオブジェクトおよび符号化ツールが準拠するエンコーダまたはデコーダにおいて存在しているかを決める。これらのオーディオ・プロファイルのうちの三つは、(1)AACプロファイル、(2)HE-AACプロファイルおよび(3)HE-AAC v2プロファイルである。AACプロファイルはAAC低計算量(AAC low complexity)(または「AAC-LC」)オブジェクト型を含む。AAC-LCオブジェクト型は、若干の調整はあるがMPEG-2 AAC低計算量プロファイルに対応するものであり、スペクトル帯域複製(spectral band replication)(「SBR」)オブジェクト型もパラメトリック・ステレオ(parametric stereo)(「PS」)オブジェクト型も含まない。HE-AACプロファイルはAACプロファイルの上位集合であって、追加的にSBRオブジェクト型を含む。HE-AAC v2プロファイルはHE-AACプロファイルの上位集合であって、追加的にPSオブジェクト型を含む。
【0004】
SBRオブジェクト型は、スペクトル帯域複製ツールを含む。これは、知覚的オーディオ・コーデックの圧縮効率を著しく改善する重要な符号化ツールである。SBRは受信器側で(たとえばデコーダにおいて)オーディオ信号の高周波数成分を再構成する。そのため、エンコーダは低周波数成分をエンコードして伝送するだけでよく、低データ・レートにおいてずっと高いオーディオ品質を許容する。SBRは、データ・レートを削減するために以前に打ち切りされた高調波のシーケンスを、エンコーダから得られる利用可能な帯域幅制限された信号および制御データから複製することに基づく。トーン様成分とノイズ様成分の間の比は適応的な逆フィルタリングならびにノイズおよび正弦波の任意的な追加によって維持される。MPEG-4 AAC規格では、SBRツールは、いくつかの隣り合う直交ミラー・フィルタ(QMF)サブバンドがオーディオ信号の伝送された低域部分から、デコーダにおいて生成されるオーディオ信号の高域部分にコピーされる、スペクトル・パッチング(spectral patching)を実行する。)
「A second class of embodiments relates to methods for decoding an encoded audio bitstream. The method includes receiving at least one block of an encoded audio bitstream, demultiplexing at least some portions of the at least one block of the encoded audio bitstream, and decoding at least some portions of the at least one block of the encoded audio bitstream. The at least one block of the encoded audio bitstream includes a fill element with an identifier indicating a start of the fill element and fill data after the identifier. The fill data includes at least one flag identifying whether enhanced spectral band replication (eSBR) processing is to be performed on audio content of the at least one block of the encoded audio bitstream.」(第2頁第25~第33行)
(仮訳:
【0008】
第二のクラスの実施形態は、エンコードされたオーディオ・ビットストリームをデコードするための方法に関する。本方法は、エンコードされたオーディオ・ビットストリームの少なくとも一つのブロックを受領し、前記エンコードされたオーディオ・ビットストリームの前記少なくとも一つのブロックの少なくともいくつかの部分を多重分離し、前記エンコードされたオーディオ・ビットストリームの前記少なくとも一つのブロックの少なくともいくつかの部分をデコードすることを含む。前記エンコードされたオーディオ・ビットストリームの前記少なくとも一つのブロックは、充填要素(fill element)を含む。充填要素は、該充填要素の先頭を示す識別子と、該識別子後の充填データとをもつ。充填データは、そのエンコードされたオーディオ・ビットストリームの前記少なくとも一つのブロックのオーディオ・コンテンツに対して向上スペクトル帯域複製(eSBR: enhanced spectral band replication)処理が実行されるべきかどうかを同定する少なくとも一つのフラグを含む。)
「Detailed Description of Embodiments of the Invention
The MPEG-4 AAC standard contemplates that an encoded MPEG-4 AAC bitstream includes metadata indicative of each type of SBR processing to be applied (if any is to be applied) by a decoder to decode audio content of the bitstream, and/or which controls such SBR processing, and/or is indicative of at least one characteristic or parameter of at least one SBR tool to be employed to decode audio content of the bitstream. Herein, we use the expression "SBR metadata" to denote metadata of this type which is described or mentioned in the MPEG-4 AAC standard.」(第4頁第3パラグラフ)
(仮訳:
【0014】
〈本発明の実施形態の詳細な説明〉
MPEG-4 AAC規格は、エンコードされたMPEG-4 AACビットストリームが、該ビットストリームのオーディオ・コンテンツをデコードするためにデコーダによって適用されるべき(もし適用されるべきものがあるとして)SBR処理のそれぞれの型を示すおよび/ またはそのようなSBR処理を制御するおよび/ または該ビットストリームのオーディオ・コンテンツをデコードするために用いられるべき少なくとも一つのSBRツールの少なくとも一つの特性またはパラメータを示すメタデータを含むことを考えている。ここで、MPEG-4 AAC規格で記述または言及されているこの型のメタデータを表わすために「SBRメタデータ」という表現を使う。)
「Another standard for encoding audio bitstreams is the MPEG Unified Speech and Audio Coding (USAC) standard (ISO/IEC 23003-3:2012). The MPEG USAC standard describes encoding and decoding of audio content using spectral band replication processing (including SBR processing as described in the MPEG-4 AAC standard, and also including other enhanced forms of spectral band replication processing). This processing applies spectral band replication tools (sometimes referred to herein as "enhanced SBR tools" or "eSBR tools") of an expanded and enhanced version of the set of SBR tools described in the MPEG-4 AAC standard. Thus, eSBR (as defined in USAC standard) is an improvement to SBR (as defined in MPEG-4 AAC standard).
Herein, we use the expression "enhanced SBR processing" (or "eSBR processing") to denote spectral band replication processing using at least one eSBR tool (e.g., at least one eSBR tool which is described or mentioned in the MPEG USAC standard) which is not described or mentioned in the MPEG-4 AAC standard.
Examples of such eSBR tools are harmonic transposition, QMF-patching additional pre-processing or "pre-flattening," and inter-subband sample Temporal Envelope Shaping or "inter-TES."
A bitstream generated in accordance with the MPEG USAC standard(sometimes referred to herein as a "USAC bitstream") includes encoded audio content and typically includes metadata indicative of each type of spectral band replication processing to be applied by a decoder to decode audio content of the USAC bitstream, and/or metadata which controls such spectral band replication processing and/or is indicative of at least one characteristic or parameter of at least one SBR tool and/or eSBR tool to be employed to decode audio content of the USAC bitstream.
Herein, we use the expression "enhanced SBR metadata" (or "eSBR metadata") to denote metadata indicative of each type of spectral band replication processing to be applied by a decoder to decode audio content of an encoded audio bitstream (e.g., a USAC bitstream) and/or which controls such spectral band replication processing, and/or is indicative of at least one characteristic or parameter of at least one SBR tool and/or eSBR tool to be employed to decode such audio content, but which is not described or mentioned in the MPEG-4 AAC standard. An example of eSBR metadata is the metadata (indicative of, or for controlling, spectral band replication processing) which is described or mentioned in the MPEG USAC standard but not in the MPEG-4 AAC standard. Thus, eSBR metadata herein denotes metadata which is not SBR metadata, and SBR metadata herein denotes metadata which is not eSBR metadata.
A USAC bitstream may include both SBR metadata and eSBR metadata. More specifically, a USAC bitstream may include eSBR metadata which controls the performance of eSBR processing by a decoder, and SBR metadata which controls the performance of SBR processing by the decoder. In accordance with typical embodiments of the present invention, eSBR metadata (e.g., eSBR-specific configuration data) is included (in accordance with the present invention) in an MPEG- 4 AAC bitstream (e.g., in the sbr_extension() container at the end of an SBR payload).
Performance of eSBR processing, during decoding of an encoded bitstream using an eSBR tool set (comprising at least one eSBR tool), by a decoder regenerates the high frequency band of the audio signal, based on replication of sequences of harmonics which were truncated during encoding. Such eSBR processing typically adjusts the spectral envelope of the generated high frequency band and applies inverse filtering, and adds noise and sinusoidal components in order to recreate the spectral characteristics of the original audio signal.」(第5頁第18行~第7頁第2行)
(仮訳:
【0020】
オーディオ・ビットストリームをエンコードするためのもう一つの規格は、MPEG統合音声音響符号化(USAC: Unified Speech and Audio Coding)規格(ISO/IEC 23003-3:2012)である。MPEG USAC規格は、スペクトル帯域複製処理(MPEG-4 AAC規格に記述されるSBR処理を含み、他の向上された形のスペクトル帯域複製処理をも含む)を使ってオーディオ・コンテンツをエンコードおよびデコードすることを記述している。この処理は、MPEG-4 AAC規格において記述されているSBRツールの集合の、拡張され、向上されたバージョンのスペクトル帯域複製ツール(本稿では時に「向上SBRツール」または「eSBRツール」と称される)を適用する。このように、eSBR(USAC規格において定義されている)はSBR(MPEG-4 AAC規格において定義されている)に対する改良である。
【0021】
本稿において、「向上SBR処理」(enhanced SBR processing)(または「eSBR処理」)という表現は、MPEG-4 AACにおいて記述または言及されていない少なくとも一つのeSBRツール(たとえば、MPEG USAC規格において記述または言及されている少なくとも一つのeSBRツール)を使うスペクトル帯域複製処理を表わすために使う。そのようなeSBRツールの例は高調波転換(harmonic transposition)、QMFパッチング追加的前処理もしくは「前置平坦化(preflattening)」およびサブバンド・サンプル間時間包絡整形(Temporal Envelope Shaping)または「インターTES」である。
【0022】
MPEG USAC規格に従って生成されたビットストリーム(本稿では時にUSACビットストリームと称される)は、エンコードされたオーディオ・コンテンツを含み、典型的には、該USACビットストリームのオーディオ・コンテンツをデコードするためにデコーダによって適用されるべきスペクトル帯域複製処理のそれぞれの型を示すメタデータおよび/またはそのようなスペクトル帯域複製処理を制御するおよび/または該USACビットストリームのオーディオ・コンテンツをデコードするために用いられるべき少なくとも一つのSBRツールおよび/またはeSBRツールの少なくとも一つの特性またはパラメータを示すメタデータを含む。
【0023】
ここでは、「向上SBRメタデータ」(または「eSBRメタデータ」)という表現は、エンコードされたオーディオ・ビットストリーム(たとえばUSACビットストリーム)のオーディオ・コンテンツをデコードするためにデコーダによって適用されるべきスペクトル帯域複製処理のそれぞれの型を示すおよび/またはそのようなスペクトル帯域複製処理を制御するおよび/またはそのようなオーディオ・コンテンツをデコードするために用いられるべき少なくとも一つのSBRツールおよび/またはeSBRツールの少なくとも一つの特性またはパラメータを示すメタデータであって、MPEG-4 AAC規格において記述または言及されていないものを表わすために使う。eSBRメタデータの例は、MPEG USAC規格において記述または言及されているがMPEG-4 AAC規格では記述も言及もされていない(スペクトル帯域複製処理を示すまたは制御するための)メタデータである。このように、本稿でのeSBRメタデータは、SBRメタデータではないメタデータを表わし、本稿でのSBRメタデータはeSBRメタデータではないメタデータを表わす。
【0024】
USACビットストリームは、SBRメタデータおよびeSBRメタデータ両方を含んでいてもよい。より具体的には、USACビットストリームは、デコーダによるeSBR処理の実行を制御するeSBRメタデータおよびデコーダによるSBR処理の実行を制御するSBRメタデータを含んでいてもよい。本発明の典型的な実施形態によれば、eSBRメタデータ(たとえばeSBR固有の構成設定データ)が(本発明に従って)(たとえばSBRペイロードの末尾のsbr_extension()コンテナにおいて)MPEG-4 AACビットストリームに含められる。
【0025】
(少なくとも一つのeSBRツールを含む)eSBRツール集合を使ったエンコードされたビットストリームのデコードの間の、デコーダによるeSBR処理の実行は、エンコードの間に打ち切りされた高調波のシーケンスの複製に基づいてオーディオ信号の高周波数帯域を再生成する。そのようなeSBR処理は典型的には、もとのオーディオ信号のスペクトル特性を再現するために、生成された高周波数帯域のスペクトル包絡を調整し、逆フィルタリングを適用し、ノイズおよび正弦波成分を加える。)
「FIG. 3 is a block diagram of a system including decoder (200) which is an embodiment of the inventive audio processing unit, and optionally also a postprocessor (300) coupled thereto. Any of the components or elements of decoder 200 and post-processor 300 may be implemented as one or more processes and/or one or more circuits (e.g., ASICs, FPGAs, or other integrated circuits), in hardware, software, or a combination of hardware and software. Decoder 200 comprises buffer memory 201 , bitstream payload deformatter (parser) 205, audio decoding subsystem 202 (sometimes referred to as a "core" decoding stage or "core" decoding subsystem), eSBR processing stage 203, and control bit generation stage 204, connected as shown. Typically also, decoder 200 includes other processing elements (not shown).
Buffer memory (buffer) 201 stores (e.g., in a non-transitory manner) at least one block of an encoded MPEG-4 AAC audio bitstream received by decoder 200. In operation of decoder 200, a sequence of the blocks of the bitstream is asserted from buffer 201 to deformatter 205.
In variations on the Fig. 3 embodiment (or the Fig. 4 embodiment to be described), an APU which is not a decoder (e.g., APU 500 of FIG. 6) includes a buffer memory (e.g., a buffer memory identical to buffer 201 ) which stores (e.g., in a non- transitory manner) at least one block of an encoded audio bitstream (e.g., an MPEG-4 AAC audio bitstream) of the same type received by buffer 201 of Fig. 3 or Fig. 4 (i.e., an encoded audio bitstream which includes eSBR metadata).
With reference again to Fig. 3, deformatter 205 is coupled and configured to demultiplex each block of the bitstream to extract SBR metadata (including quantized envelope data) and eSBR metadata (and typically also other metadata) therefrom, to assert at least the eSBR metadata and the SBR metadata to eSBR processing stage 203, and typically also to assert other extracted metadata to decoding subsystem 202 (and optionally also to control bit generator 204). Deformatter 205 is also coupled and configured to extract audio data from each block of the bitstream, and to assert the extracted audio data to decoding subsystem (decoding stage) 202.
The system of FIG. 3 optionally also includes post-processor 300. Postprocessor 300 includes buffer memory (buffer) 301 and other processing elements (not shown) including at least one processing element coupled to buffer 301. Buffer 301 stores (e.g., in a non-transitory manner) at least one block (or frame) of the decoded audio data received by post-processor 300 from decoder 200. Processing elements of post-processor 300 are coupled and configured to receive and adaptively process a sequence of the blocks (or frames) of the decoded audio output from buffer 301 , using metadata output from decoding subsystem 202 (and/or deformatter 205) and/or control bits output from stage 204 of decoder 200.
Audio decoding subsystem 202 of decoder 200 is configured to decode the audio data extracted by parser 205 (such decoding may be referred to as a "core" decoding operation) to generate decoded audio data, and to assert the decoded audio data to eSBR processing stage 203. The decoding is performed in the frequency domain and typically includes inverse quantization followed by spectral processing. Typically, a final stage of processing in subsystem 202 applies a frequency domain-to-time domain transform to the decoded frequency domain audio data, so that the output of subsystem is time domain, decoded audio data. Stage 203 is configured to apply SBR tools and eSBR tools indicated by the eSBR metadata and the eSBR (extracted by parser 205) to the decoded audio data (i.e., to perform SBR and eSBR processing on the output of decoding subsystem 202 using the SBR and eSBR metadata) to generate the fully decoded audio data which is output (e.g., to post-processor 300) from decoder 200. Typically, decoder 200 includes a memory (accessible by subsystem 202 and stage 203) which stores the deformatted audio data and metadata output from deformatter 205, and stage 203 is configured to access the audio data and metadata (including SBR metadata and eSBR metadata) as needed during SBR and eSBR processing. The SBR processing and eSBR processing in stage 203 may be considered to be post-processing on the output of core decoding subsystem 202. Optionally, decoder 200 also includes a final upmixing subsystem (which may apply parametric stereo ("PS") tools defined in the MPEG-4 AAC standard, using PS metadata extracted by deformatter 205 and/or control bits generated in subsystem 204) which is coupled and configured to perform upmixing on the output of stage 203 to generated fully decoded, upmixed audio which is output from decoder 200.
Alternatively, post-processor 300 is configured to perform upmixing on the output of decoder 200 (e.g., using PS metadata extracted by deformatter 205 and/or control bits generated in subsystem 204).」(第9頁第10行~第11頁第6行)
(仮訳:
【0037】
図3は、本発明のオーディオ処理ユニットの実施形態であるデコーダ(200)を含み、任意的にはそれに結合された後処理器(300)をも含むシステムのブロック図である。デコーダ200のコンポーネントまたは要素のいずれも、一つまたは複数のプロセスおよび/または一つまたは複数の回路(たとえばASIC、FPGAまたは他の集積回路)として、ハードウェア、ソフトウェアまたはハードウェアとソフトウェアの組み合わせにおいて、実装されてもよい。デコーダ200は、図のように接続された、バッファ・メモリ201、ビットストリーム・ペイロード・フォーマット解除器(パーサー)205、オーディオ・デコード・サブシステム202(時に「コア」デコード段または「コア」デコード・サブシステムと称される)、eSBR処理段203および制御ビット生成段204を有する。典型的には、デコーダ200は、他の処理要素(図示せず)をも含む。
【0038】
バッファ・メモリ(バッファ)201は、デコーダ200によって受領されるエンコードされたMPEG-4 AACオーディオ・ビットストリームの少なくとも一つのブロックを(たとえば非一時的な仕方で)記憶する。デコーダ200の動作において、ビットストリームのブロックのシーケンスがバッファ201からフォーマット解除器205に呈される。
【0039】
図3実施形態の変形(またはのちに述べる図4の実施形態)では、デコーダではないAPU(たとえば図6のAPU 500)が、図3または図4のバッファ201によって受領されるのと同じ型のエンコードされたオーディオ・ビットストリーム(たとえばMPEG-4 AACオーディオ・ビットストリーム)(すなわち、eSBRメタデータを含むエンコードされたオーディオ・ビットストリーム)の少なくとも一つのブロックを(たとえば非一時的な仕方で)記憶するバッファ・メモリ(たとえばバッファ201と同一のバッファ・メモリ)を含む。
【0040】
再び図3を参照するに、フォーマット解除器205は、ビットストリームの各ブロックを多重分離して、それからSBRメタデータ(量子化された包絡データを含む)およびeSBRメタデータを(典型的には他のメタデータも)抽出し、少なくとも前記eSBRメタデータおよび前記SBRメタデータをeSBR処理段203に呈するとともに、典型的にはさらに他の抽出されたメタデータをデコード・サブシステム202に(任意的には制御ビット生成器204にも)呈するよう結合され、構成される。フォーマット解除器205は、ビットストリームの各ブロックからオーディオ・データを抽出し、抽出されたオーディオ・データをデコード・サブシステム(デコード段)202に呈するようにも結合され、構成される。
【0041】
図3のシステムは任意的には、後処理器300をも含む。後処理器300はバッファ・メモリ(バッファ)301と、バッファ301に結合された少なくとも一つの処理要素を含む他の処理要素(図示せず)とを含む。バッファ301は、デコーダ200から後処理器300によって受領されたデコードされたオーディオ・データの少なくとも一つのブロック(またはフレーム)を(たとえば非一時的な仕方で)記憶する。後処理器300の処理要素は、バッファ301から出力されたデコードされたオーディオのブロック(またはフレーム)のシーケンスを受領し、デコード・サブシステム202(および/またはフォーマット解除器205)から出力されたメタデータおよび/またはデコーダ200の段204から出力された制御ビットを使って適応的に処理するよう結合され、構成される。
【0042】
デコーダ200のオーディオ・デコード・サブシステム202は、パーサー205によって抽出されたオーディオ・データをデコードして(そのようなデコードは「コア」デコード動作と称されてもよい)、デコードされたオーディオ・データを生成し、デコードされたオーディオ・データをeSBR処理段203に呈するよう構成される。デコードは周波数領域で実行され、典型的には逆量子化とそれに続くスペクトル処理(spectral processing)を含む。典型的には、サブシステム202における処理の最終段が、デコードされた周波数領域オーディオ・データに周波数領域から時間領域への変換を適用し、そのためサブシステムの出力は時間領域のデコードされたオーディオ・データである。段203は、(パーサー205によって抽出された)SBRメタデータおよびeSBRメタデータによって示されるSBRツールおよびeSBRツールを、デコードされたオーディオ・データに適用して(すなわち、SBRおよびeSBRメタデータを使ってデコード・サブシステム202の出力に対してSBRおよびeSBR処理を実行して)、デコーダ200から(たとえば後処理器300に)出力される完全にデコードされたオーディオ・データを生成するよう構成される。典型的には、デコーダ200は、フォーマット解除器205から出力されるフォーマット解除されたオーディオ・データおよびメタデータを記憶するメモリ(サブシステム202および段203によってアクセス可能)を含み、段203はSBRおよびeSBR処理の間に必要に応じてオーディオ・データおよびメタデータ(SBRメタデータおよびeSBRメタデータを含む)にアクセスするよう構成される。段203におけるSBR処理およびeSBR処理は、コア・デコード・サブシステム202の出力に対する後処理であると考えられてもよい。任意的に、デコーダ200は、最終的なアップミックス・サブシステム(これは、フォーマット解除器205によって抽出されたPSメタデータおよび/またはサブシステム204において生成された制御ビットを使って、MPEG-4 AAC規格において定義されているパラメトリック・ステレオ(「PS」)ツールを適用しうる)をも含む。アップミックス・サブシステムは、段203の出力に対してアップミックスを実行して、デコーダ200から出力される、完全にデコードされた、アップミックスされたオーディオを生成するよう結合され、構成される。あるいはまた、後処理器300が(たとえばフォーマット解除器205によって抽出されたPSメタデータおよび/またはサブシステム204において生成された制御ビットを使って)デコーダ200の出力に対してアップミックスを実行するよう構成さ
れる。)
「In accordance with some embodiments, eSBR metadata is included (e.g., a small number of control bits which are eSBR metadata are included) in an encoded audio bitstream (e.g., an MPEG-4 AAC bitstream), such that legacy decoders (which are not configured to parse the eSBR metadata, or to use any eSBR tool to which the eSBR metadata pertains) can ignore the eSBR metadata but nevertheless decode the bitstream to the extent possible without use of the eSBR metadata or any eSBR tool to which the eSBR metadata pertains, typically without any significant penalty in decoded audio quality. However, eSBR decoders configured to parse the bitstream to identify the eSBR metadata and to use at least one eSBR tool in response to the eSBR metadata, will enjoy the benefits of using at least one such eSBR tool. Therefore, embodiments of the invention provide a means for efficiently transmitting enhanced spectral band replication (eSBR) control data or metadata in a backward-compatible fashion.
Typically, the eSBR metadata in the bitstream is indicative of (e.g., is indicative of at least one characteristic or parameter of) one or more of the following eSBR tools (which are described in the MPEG USAC standard, and which may or may not have been applied by an encoder during generation of the bitstream):
# Harmonic transposition;
# QMF-patching additional pre-processing (pre-flattening); and
# Inter-subband sample Temporal Envelope Shaping or "inter-TES."
For example, the eSBR metadata included in the bitstream may be indicative of values of the parameters (described in the MPEG USAC standard and in the present disclosure): harmonicSBR[ch], sbrPatchingMode[ch], sbrOversamplingFlag[ch], sbrPitchlnBins[ch], sbrPitchlnBins[ch], bsjnterTes, bs_temp_shape[ch][env], bs_inter_temp_shape_mode[ch][env], and bs_sbr_preprocessing.
・・・
The parameter "harmonicSBR" indicates the use of harmonic patching (harmonic transposition) for SBR. Specifically, harmonicSBR = 0 indicates non-harmonic, spectral patching as described in Section 4.6.18.6.3 of the MPEG-4 AAC standard; and harmonicSBR = 1 indicates harmonic SBR patching (of the type used in eSBR, as described Section 7.5.3 or 7.5.4 of the MPEG USAC standard). Harmonic SBR patching is not used in accordance with non-eSBR spectral band replication (i.e., SBR that is not eSBR). Throughout this disclosure, spectral patching is referred to as a base form of spectral band replication, whereas harmonic transposition is referred to as an enhanced form of spectral band replication.
・・・
During decoding of an encoded bitstream, performance of harmonic transposition during an eSBR processing stage of the decoding (for each channel, "ch", of audio content indicated by the bitstream) is controlled by the following eSBR metadata parameters: sbrPatchingMode[ch]: sbrOversamplingFlag[ch];
sbrPitchlnBinsFlag[ch]; and sbrPitchlnBins[ch].
The value "sbrPatchingMode[ch]" indicates the transposer type used in eSBR: sbrPatchingMode[ch] = 1 indicates non-harmonic patching as described in Section 4.6.18.6.3 of the MPEG-4 AAC standard; sbrPatchingMode[ch] = 0 indicates harmonic SBR patching as described in Section 7.5.3 or 7.5.4 of the MPEG USAC standard.
The value "sbrOversamplingFlag[ch]" indicates the use of signal adaptive frequency domain oversampling in eSBR in combination with the DFT based harmonic SBR patching as described in Section 7.5.3 of the MPEG USAC standard. This flag controls the size of the DFTs that are utilized in the transposer: 1 indicates signal adaptive frequency domain oversampling enabled as described in Section 7.5.3.1 of the MPEG USAC standard; 0 indicates signal adaptive frequency domain oversampling disabled as described in Section 7.5.3.1 of the MPEG USAC standard.」(第13頁第1行~第15頁第2行)
(仮訳:
【0049】
いくつかの実施形態によれば、(eSBRメタデータをパースしたりeSBRメタデータが関係する何らかのeSBRツールを使ったりするよう構成されていない)レガシー・デコーダがeSBRメタデータを無視するが、それでもビットストリームをeSBRメタデータやeSBRメタデータが関係する何らかのeSBRツールを使うことなく、典型的にはデコードされたオーディオ品質におけるいかなる有意なペナルティもなしに可能な限りデコードできるように、eSBRメタデータが(たとえば、eSBRメタデータである少数の制御ビットが)エンコードされたオーディオ・ビットストリーム(たとえばMPEG-4 AACビットストリーム)に含められる。しかしながら、ビットストリームをパースしてeSBRメタデータを識別し、該eSBRメタデータに応答して少なくとも一つのeSBRツールを使うよう構成されたeSBRデコーダは、少なくとも一つのそのようなeSBRツールを使うことの恩恵を享受する。したがって、本発明の実施形態は、向上されたスペクトル帯域複製(eSBR)制御データまたはメタデータを、後方互換な仕方で効率的に伝送する手段を提供する。
【0050】
典型的には、ビットストリーム中のeSBRメタデータは、(MPEG USAC規格において記述されており、ビットストリームの生成の際にエンコーダによって適用されていてもいなくてもよい)次のeSBRツールのうちの一つまたは複数を示す(たとえば、次のeSBRツールのうちの一つまたは複数の、少なくとも一つの特性またはパラメータを示す):
・高調波転換;
・QMFパッチング追加的前処理(前置平坦化(pre-flattening));および
・サブバンド・サンプル間時間包絡整形(Temporal Envelope Shaping)または「インターTES」。
たとえば、ビットストリームに含まれるeSBRメタデータは、(MPEG USAC規格および本開示において記述される)パラメータ: harmonicSBR[ch]、sbrPatchingMode[ch]、sbrOversamplingFlag[ch]、sbrPitchInBins[ch]、sbrPitchInBins[ch]、bs_interTes、bs_temp_shape[ch][env]、bs_inter_temp_shape_mode[ch][env]およびbs_sbr_preprocessingの値を示してもよい。
・・・
【0054】
パラメータharmonicSBRは、SBRについての高調波パッチング(harmonic patching)(高調波転換(harmonic transposition))の使用を示す。具体的には、harmonicSBR= 0は、MPEG-4 AAC規格の4.6.18.6.3節に記載される非高調波(non-harmonic)スペクトル・パッチングを示し; harmonicSBR= 1は、(MPEG USAC規格の7.5.3または7.5.4節に記載される、eSBRにおいて使われる型の)高調波SBRパッチングを示す。高調波SBRパッチングは、非eSBRスペクトル帯域複製(すなわち、eSBRでないSBR)によれば使われない。本開示を通じて、スペクトル帯域複製の基本形としてはスペクトル・パッチング(spectral patching)といい、スペクトル帯域複製の向上された形としては高調波転換(harmonic transposition)という。
・・・
【0057】
エンコードされたビットストリームのデコードの間、(ビットストリームによって示されるオーディオ・コンテンツの各チャネル「ch」についての) デコードのeSBR処理段の間の高調波転換の実行が、以下のeSBRメタデータ・パラメータによって制御される: sbrPatchingMode[ch]; sbrOversamplingFlag[ch]; sbrPitchInBinsFlag[ch]およびsbrPitchInBins[ch]。
【0058】
sbrPatchingMode[ch]の値は、eSBRにおいて使われる転換器(transposer)の型を示す。sbrPatchingMode[ch]= 1はMPEG-4 AAC規格の4.6.18.6.3節に記載される非高調波パッチングを示し; sbrPatchingMode[ch]= 0は、MPEG USAC規格の7.5.3または7.5.4節に記載される高調波SBRパッチングを示す。
【0059】
sbrOversamplingFlag[ch]の値は、MPEG USAC規格の7.5.3節に記載されるDFTベースの高調波SBRパッチングと組み合わせたeSBRにおける信号適応的な周波数領域オーバーサンプリングの使用を示す。このフラグは転換器において利用されるDFTのサイズを制御する。1はMPEG USAC規格の7.5.3.1節に記載されるように有効にされた信号適応的な周波数領域オーバーサンプリングを示し; 0はMPEG USAC規格の7.5.3.1節に記載されるように無効にされた信号適応的な周波数領域オーバーサンプリングを示す。)
「 In a first class of embodiments, the invention is an audio processing unit (e.g., a decoder), comprising:
a memory (e.g., buffer 201 of Fig. 3 or 4) configured to store at least one block of an encoded audio bitstream (e.g., at least one block of an MPEG-4 AAC bitstream);
a bitstream payload deformatter (e.g., element 205 of Fig. 3 or element 215 of Fig. 4) coupled to the memory and configured to demultiplex at least one portion of said block of the bitstream; and
a decoding subsystem (e.g., elements 202 and 203 of Fig. 3, or elements 202 and 213 of Fig. 4), coupled and configured to decode at least one portion of audio content of said block of the bitstream, wherein the block includes:
a fill element, including an identifier indicating a start of the fill element (e.g., the "id_syn_ele" identifier having value 0x6, of Table 4.85 of the MPEG-4 AAC standard), and fill data after the identifier, wherein the fill data includes:
at least one flag identifying whether enhanced spectral band replication (eSBR) processing is to be performed on audio content of the block (e.g., using spectral band replication data and eSBR metadata included in the block).
The flag is eSBR metadata, and an example of the flag is the sbrPatchingMode flag.Another example of the flag is the harmonicSBR flag. Both of these flags indicate whether a base form of spectral band replication or an enhanced form of spectral replication is to be performed on the audio data of the block. The base form of spectral replication is spectral patching, and the enhanced form of spectral band replication is harmonic transposition.」(第19頁第32行~第20頁第20行)
(仮訳:
【0078】
第一のクラスの実施形態では、本発明は、オーディオ処理ユニット(たとえばデコーダ)であって:
エンコードされたオーディオ・ビットストリームの少なくとも一つのブロック(たとえばMPEG-4 AACビットストリームの少なくとも一つのブロック)を記憶するよう構成されたメモリ(たとえば図3または図4のバッファ201)と;
前記メモリに結合され、前記ビットストリームの前記ブロックの少なくとも一部を多重分離するよう構成されているビットストリーム・ペイロード・フォーマット解除器(たとえば、図3の要素205または図4の要素215)と;
前記ビットストリームの前記ブロックのオーディオ・コンテンツの少なくとも一つの部分をデコードするよう結合され、構成されたデコード・サブシステム( たとえば図3の要素202および203または図4の要素202および213)とを有し、前記ブロックは、
充填要素を含み、該充填要素の先頭を示す識別子(たとえば、MPEG-4 AAC規格の表4.85の値0x6をもつid_syn_ele識別子)と、該識別子後の充填データとを含み、前記充填データは:
前記ブロックのオーディオ・コンテンツに対して(たとえば前記ブロックに含まれるスペクトル帯域複製データおよびeSBRメタデータを使って)向上スペクトル帯域複製(eSBR)処理が実行されるべきかどうかを同定する少なくとも一つのフラグを含む、
オーディオ処理ユニットである。
【0079】
前記フラグは、eSBRメタデータであり、前記フラグの例はsbrPatchingModeフラグである。前記フラグのもう一つの例はharmonicSBRフラグである。これらのフラグはいずれも、基本形のスペクトル帯域複製または向上した形のスペクトル複製のどちらが前記ブロックのオーディオ・データに対して実行されるべきかを示す。基本形のスペクトル複製はスペクトル・パッチングであり、向上した形のスペクトル帯域複製は高調波転換である。)
「The above syntax enables an efficient implementation of an enhanced form of spectral band replication, such as harmonic transposition, as an extension to a legacy decoder. Specifically, the eSBR data of Table 3 includes only those parameters needed to perform the enhanced form of spectral band replication that are not either already supported in the bitstream or directly derivable from parameters already supported in the bitstream. All other parameters and processing data needed to perform the enhanced form of spectral band replication are extracted from pre-existing parameters in already-defined locations in the bitstream.
For example, an MPEG-4 HE-AAC or HE-AAC v2 compliant decoder may be extended to include an enhanced form of spectral band replication, such as harmonic transposition. This enhanced form of spectral band replication is in addition to the base form of spectral band replication already supported by the decoder. In the context of an MPEG-4 HE-AAC or HE-AAC v2 compliant decoder, this base form of spectral band replication is the QMF spectral patching SBR tool as defined in Section 4.6.18 of the MPEG-4 AAC Standard.
When performing the enhanced form of spectral band replication, an extended HE-AAC decoder may reuse many of the bitstream parameters already included in the SBR extension payload of the bitstream. The specific parameters that may be reused include, for example, the various parameters that determine the master frequency band table. These parameters include bs_start_freq (parameter that determines the start of master frequency table parameter), bs_stop_freq (parameter that determines the stop of master frequency table), bs_freq_scale (parameter that determines the number of frequency bands per octave), and bs_alter_scale (parameter that alters the scale of the frequency bands). The parameters that may be reused also include parameters that determine the noise band table (bs_noise_bands) and the limiter band table parameters (bs_limiter_bands). Accordingly, in various embodiments, at least some of the equivalent parameters specified in the USAC standard are omitted from the bitstream, thereby reducing control overhead in the bitstream. Typically, where a parameter specified in the AAC standard has an equivalent parameter specified in the USAC standard, the equivalent parameter specified in the USAC standard has the same name as the parameter specified in the AAC standard, e.g. the envelope scalefactor EorigMapped However, the equivalent parameter specified in the USAC standard typically has a different value, which is "tuned" for the enhanced SBR processing defined in the USAC standard rather than for the SBR processing defined in the AAC standard.
In addition to the numerous parameters, other data elements may also be reused by an extended HE-AAC decoder when performing an enhanced form of spectral band replication in accordance with embodiments of the invention. For example, the envelope data and noise floor data may also be extracted from the bs_data_env and bs_noise_env data and used during the enhanced form of spectral band replication.
In essence, these embodiments exploit the configuration parameters and envelope data already supported by a legacy HE-AAC or HE-AAC v2 decoder in the SBR extension payload to enable an enhanced form of spectral band replication requiring as little extra transmitted data as possible. Accordingly, extended decoders that support an enhanced form of spectral band replication may be created in a very efficient manner by relying on already defined bitstream elements (for example, those in the SBR extension payload) and adding only those parameters needed to support the enhanced form of spectral band replication (in a fill element extension payload). This data reduction feature combined with the placement of the newly added parameters in a reserved data field, such as an extension container, substantially reduces the barriers to creating a decoder that supports an enhanced for of spectral band replication by ensuring that the bitstream is backwards-compatible with legacy decoder not supporting the enhanced form of spectral band replication.」(第23頁下から2行~第25頁第19行)
(仮訳:
【0087】
・・・
上記のシンタックスは、高調波転換のような向上した形のスペクトル帯域複製の、レガシー・デコーダへの拡張としての効率的な実装を可能にする。具体的には、表3のeSBRデータは、向上した形のスペクトル帯域複製を実行するために必要とされるパラメータであって、ビットストリームにおいてすでにサポートされていたりビットストリームにおいてすでにサポートされているパラメータから直接導入可能であったりするものではないもののみを含む。向上した形のスペクトル帯域複製を実行するために必要とされる他のすべてのパラメータおよび処理データは、ビットストリームにおいてすでに定義されている位置にある既存のパラメータから抽出される。
【0088】
たとえば、MPEG-4 HE-AACまたはHE-AAC-v2準拠デコーダは、高調波転換のような向上した形のスペクトル帯域複製を含むよう拡張されてもよい。この向上した形のスペクトル帯域複製は、デコーダによってすでにサポートされている基本形のスペクトル帯域複製に加えてのものである。MPEG-4 HE-AACまたはHE-AAC-v2準拠デコーダのコンテキストでは、この基本形のスペクトル帯域複製は、MPEG-4 AAC規格の4.6.18節において定義されているQMFスペクトル・パッチングSBRツールである。
【0089】
向上した形のスペクトル帯域複製を実行するとき、拡張されたHE-AACデコーダは、ビットストリームのSBR拡張ペイロードにすでに含まれているビットストリーム・パラメータの多くを再利用しうる。再利用されうる具体的なパラメータは、たとえば、マスター周波数帯域テーブルを決定するさまざまなパラメータを含む。これらのパラメータは、bs_start_freq(マスター周波数テーブル・パラメータの先頭を決定するパラメータ)、bs_stop_freq(マスター周波数テーブルの終わりを決定するパラメータ)、bs_freq_scale(オクターブ当たりの周波数帯域の数を決定するパラメータ)およびbs_alter_scale(周波数帯域のスケールを変更するパラメータ)を含む。再利用されうるパラメータは、ノイズ帯域テーブルを決定するパラメータ(bs_noise_bands)およびリミッター帯域テーブル・パラメータ(bs_limiter_bands)をも含む。よって、さまざまな実施形態において、USAC規格において指定されている等価なパラメータの少なくともいくつかがビットストリームから省略され、それによりビットストリームにおける制御オーバーヘッドを軽減する。典型的には、AAC規格において指定されているパラメータがUSAC規格において指定されている等価なパラメータをもつ場合には、USAC規格において指定されている等価なパラメータはAAC規格において指定されているパラメータと同じ名前をもつ。たとえば、包絡スケール因子(envelope scalefactor)EOrigMapped。しかしながら、USAC規格において指定されている等価なパラメータは典型的には、AAC規格において定義されているSBR処理のためではなくUSAC規格において定義されている向上SBR処理のために「チューニングされた」異なる値をもつ。
【0090】
前記の数多くのパラメータに加えて、他のデータ要素も、本発明の実施形態に従って向上した形のスペクトル帯域複製を実行するときに、拡張されたHE-AACデコーダによって再利用されてもよい。たとえば、包絡データおよびノイズ・フロア・データは、bs_data_envおよびbs_noise_envデータから抽出されて、向上した形のスペクトル帯域複製の間に使われてもよい。
【0091】
本質的には、これらの実施形態は、SBR拡張ペイロードにおいてレガシーのHE-AACまたはHE-AAC v2デコーダによってすでにサポートされている構成設定パラメータおよび包絡データを、できるだけ追加的な伝送データを必要とせずに向上した形のスペクトル帯域複製を可能にするために、活用する。よって、向上した形のスペクトル帯域複製をサポートする拡張されたデコーダは、すでに定義されたビットストリーム要素(たとえばSBR拡張ペイロード内のもの)に頼り、向上した形のスペクトル帯域複製をサポートするために必要とされるパラメータのみを(充填要素拡張ペイロード内に)追加することによって、非常に効率的な仕方で生成されうる。このデータ削減特徴は、新たに追加されたパラメータを拡張コンテナのようなリザーブされたデータ・フィールドに配置することと組み合わさって、ビットストリームが向上した形のスペクトル帯域複製をサポートしないレガシー・デコーダと後方互換であることを保証することによって、向上した形のスペクトル帯域複製をサポートするデコーダを作り出すことへの障壁を実質的に軽減する。)
b 引用文献1に記載された発明(引用発明)
(a)【0008】、【0037】の記載から、引用文献1には、エンコードされたオーディオ・ビットストリームをデコーダがデコードする方法の発明が記載されているといえる。
また、【0002】、【0003】の記載から、オーディオ・ビットストリームはオーディオ・コンテンツの一つまたは複数のチャネルを示すエンコードされたオーディオ・データと、前記オーディオ・データまたはオーディオ・コンテンツの少なくとも一つの特性を示すメタデータとの両方を含み、エンコードのフォーマットはMPEG規格ISO/IEC14496-3:2009に記載されるMPEG-4 AACフォーマットで、SBRオブジェクト型を含むHE-AACプロファイルに対応したものであるとともに、【0020】、【0049】の記載から、さらにMPEG USAC規格で定義されるeSBRツールにも対応したものであるといえる。
(b)上記(a)から、引用文献1の方法のエンコードのフォーマットはSBRオブジェクト型を含むHE-AACプロファイルに対応したものであり、また、【0004】の「SBRは受信器側で(たとえばデコーダにおいて)オーディオ信号の高周波数成分を再構成するといえる。そのため、エンコーダは低周波数成分をエンコードして伝送するだけでよく」との記載から、引用文献1において、エンコードされたオーディオ・ビットストリームは、オーディオ信号の低周波数成分を表わすオーディオ・データを含むといえる。
また、【0038】の記載から、引用文献1の方法では、エンコードされたオーディオ・ビットストリームをデコーダが受領するといえる。
(c)上記(b)から、引用文献1のエンコードされたオーディオ・ビットストリームは、オーディオ信号の低周波数成分を表わすオーディオ・データを含むことを踏まえると、【0042】の「デコーダ200のオーディオ・デコード・サブシステム202は、パーサー205によって抽出されたオーディオ・データをデコードして・・・デコードされたオーディオ・データを生成」との記載から、引用文献1の方法では、オーディオ・データをデコードして、デコードされた低周波数成分を表わすオーディオ・データを生成するといえる。
(d)【0040】の記載から、引用文献1の方法では、エンコードされたオーディオ・ビットストリームから、SBRメタデータ及びeSBRメタデータを抽出するといえる。
また、【0004】の「MPEG-4 AAC規格では、SBRツールは、いくつかの隣り合う直交ミラー・フィルタ(QMF)サブバンドがオーディオ信号の伝送された低域部分から、デコーダにおいて生成されるオーディオ信号の高域部分にコピーされる、スペクトル・パッチング(spectral patching)を実行する」との記載から、引用文献1の方法では、オーディオ信号の低域部分から、いくつかのサブバンドをオーディオ信号の高域部分にコピーするSBRツールを備えていることが、【0014】の記載から、SBRメタデータは、SBRツールの特性またはパラメータを示すメタデータであることが、それぞれいえる。
したがって、引用文献1の方法では、エンコードされたオーディオ・ビットストリームから、SBRメタデータ及びeSBRメタデータを抽出するものであり、このうちSBRメタデータは、オーディオ信号の低域部分から、いくつかのサブバンドをオーディオ信号の高域部分にコピーするSBRツールの特性またはパラメータを示すものであることがいえる。
(e)【0050】、【0059】の記載から、引用文献1の方法では、エンコードされたオーディオ・ビットストリームから、MPEG USAC規格のeSBRにおける信号適応的な周波数領域オーバーサンプリングを使用するかどうかを示すフラグであるsbrOversamplingFlag[ch]を抽出するといえる。
(f)【0004】の「MPEG-4 AAC規格では、SBRツールは、いくつかの隣り合う直交ミラー・フィルタ(QMF)サブバンドがオーディオ信号の伝送された低域部分から、デコーダにおいて生成されるオーディオ信号の高域部分にコピーされる」との記載から、引用文献1の方法では、デコードされたオーディオ信号の低域部分を直交ミラー・フィルタ(QMF)でフィルタリングして、フィルタリングされたオーディオ信号の低域部分を生成するといえる。
(g)【0054】、【0058】の記載から、引用文献1の方法では、基本形のスペクトル帯域複製のことをMPEG-4 AAC規格の「非高調波スペクトル・パッチング」、「スペクトル・パッチング」、「非高調波パッチング」と表現し、向上された形のスペクトル帯域複製のことをMPEG USAC規格の「高調波転換」、「高調波SBRパッチング」と表現しているといえる。
また、【0050】、【0078】、【0079】の記載から、引用文献1の方法では、エンコードされたオーディオ・ビットストリームから、基本形のスペクトル帯域複製または向上した形のスペクトル複製のどちらがオーディオ・データに対して実行されるべきかを示すharmonicSBRやsbrPatchingMode[ch]のフラグを抽出するといえる。
したがって、引用文献1の方法では、エンコードされたオーディオ・ビットストリームから、MPEG-4 AAC規格の非高調波スペクトル・パッチングまたはMPEG USAC規格の高調波SBRパッチング(高調波転換)のどちらがオーディオ・データに対して実行されるべきかを示すharmonicSBRやsbrPatchingMode[ch]のフラグを抽出するといえる。
(h)【0004】、【0024】、【0025】の記載から、引用文献1の方法におけるSBRツール及びeSBRツールによるSBR処理及びeSBR処理は、フィルタリングされたオーディオ信号の低域部分並びにSBRメタデータ及びeSBRメタデータを用いて、オーディオ信号の高周波数帯域を再生成するものであるといえる。
したがって、【0054】、【0058】の記載から、harmonicSBR やsbrPatchingMode[ch]が、オーディオ・データに対してMPEG USAC規格の高調波SBRパッチング(高調波転換)が実行されるべきであることを示す場合、【0042】の「SBRメタデータおよびeSBRメタデータによって示されるSBRツールおよびeSBRツールを、デコードされたオーディオ・データに適用して(すなわち、SBRおよびeSBRメタデータを使ってデコード・サブシステム202の出力に対してSBRおよびeSBR処理を実行して)」との記載から、引用文献1の方法では、MPEG USAC規格の高調波SBRパッチング(高調波転換)を実行することによって、フィルタリングされたオーディオ信号の低域部分及びSBRメタデータ及びeSBRメタデータを使ってオーディオ信号の高周波数帯域を再生成するといえる。
(i)【0004】、【0042】の記載から、引用文献1の方法では、フィルタリングされた低域部分のオーディオ信号及び再構成された高域部分のオーディオ信号とから、完全にデコードされたオーディオ・データを生成するものといえる。
(j)【0049】、【0089】-【0091】の記載から、引用文献1の方法では、レガシー・デコーダはeSBRメタデータを無視してSBRメタデータを利用し、eSBRデコーダはeSBRメタデータを利用するとともに、bs_start_freq、bs_stop_freq、bs_freq_scale、bs_alter_scale、bs_noise_bands、bs_limiter_bandsやそれ以外のレガシーのHE-AACまたはHE-AAC v2デコーダによってすでにサポートされている構成設定パラメータおよび包絡データを再利用することで、レガシー・デコーダとeSBRデコーダの両方によってデコードできる後方互換な仕方で、USAC規格において指定されている等価なパラメータの少なくともいくつかがビットストリームから省略されることで、ビットストリームにおけるオーバーヘッドを軽減してできるだけ追加的な伝送データを必要とせずに効率的に伝送しながら向上した形のスペクトル帯域複製を可能にするといえる。
したがって、上記摘記事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、各構成の符号a~iは、説明のために当審で付したものであり、以下「構成a」~「構成i」という。
[引用発明]
a エンコードされたオーディオ・ビットストリームをデコーダがデコードする方法であって、
a1 オーディオ・ビットストリームはオーディオ・コンテンツの一つまたは複数のチャネルを示すエンコードされたオーディオ・データと、前記オーディオ・データまたはオーディオ・コンテンツの少なくとも一つの特性を示すメタデータとの両方を含み、エンコードのフォーマットはMPEG規格ISO/IEC14496-3:2009に記載されるMPEG-4 AACフォーマットで、SBRオブジェクト型を含むHE-AACプロファイルに対応したものであり、さらに MPEG USAC規格で定義されるeSBRツールにも対応したものであり、当該方法は
b オーディオ信号の低周波数成分を表わすオーディオ・データを含むエンコードされたオーディオ・ビットストリームをデコーダが受領し、
c オーディオ・データをデコードして、デコードされた低周波数成分を表わすオーディオ・データを生成し、
d エンコードされたオーディオ・ビットストリームから、SBRメタデータ及びeSBRメタデータを抽出し、このうちSBRメタデータは、オーディオ信号の低域部分から、いくつかのサブバンドをオーディオ信号の高域部分にコピーするSBRツールの特性またはパラメータを示すものであり、
e エンコードされたオーディオ・ビットストリームから、MPEG USAC規格のeSBRにおける信号適応的な周波数領域オーバーサンプリングを使用するかどうかを示すフラグであるsbrOversamplingFlag[ch]を抽出し、
f デコードされたオーディオ信号の低域部分を直交ミラー・フィルタ(QMF)でフィルタリングして、フィルタリングされたオーディオ信号の低域部分を生成し、
g エンコードされたオーディオ・ビットストリームから、MPEG-4 AAC規格の非高調波スペクトル・パッチングまたはMPEG USAC規格の高調波SBRパッチング(高調波転換)のどちらがオーディオ・データに対して実行されるべきかを示すharmonicSBRやsbrPatchingMode[ch]のフラグを抽出し、
h harmonicSBRやsbrPatchingMode[ch]が、オーディオ・データに対してMPEG USAC規格の高調波SBRパッチング(高調波転換)が実行されるべきであることを示す場合、MPEG USAC規格の高調波SBRパッチング(高調波転換)を実行することによって、フィルタリングされたオーディオ信号の低域部分並びにSBRメタデータ及びeSBRメタデータを使ってオーディオ信号の高周波数帯域を再生成し、
i フィルタリングされた低域部分のオーディオ信号及び再構成された高域部分のオーディオ信号とから、完全にデコードされたオーディオ・データを生成する、
方法であって、
a2 レガシー・デコーダはeSBRメタデータを無視してSBRメタデータを利用し、eSBRデコーダはeSBRメタデータを利用するとともに、bs_start_freq、bs_stop_freq、bs_freq_scale、bs_alter_scale、bs_noise_bands、bs_limiter_bandsやそれ以外のレガシーのHE-AACまたはHE-AAC v2デコーダによってすでにサポートされている構成設定パラメータおよび包絡データを再利用することで、レガシー・デコーダとeSBRデコーダの両方によってデコードできる後方互換な仕方で、USAC規格において指定されている等価なパラメータの少なくともいくつかがビットストリームから省略されることで、ビットストリームにおけるオーバーヘッドを軽減してできるだけ追加的な伝送データを必要とせずに効率的に伝送しながら向上した形のスペクトル帯域複製を可能にする、
a 方法。
(イ)引用文献3について
a 引用文献3の記載事項
同じく当審の拒絶の理由で引用された「lnformation technology - Coding of audio-visual objects - Part 3: Audio, ISO/IEC 14496-3, 2009.9」(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
「
[図:0001402072000003.jpg]
[図:0001402072000004.jpg]
[図:0001402072000005.jpg]
[図:0001402072000006.jpg]
[図:0001402072000007.jpg]
[図:0001402072000008.jpg]
[図:0001402072000009.jpg]
[図:0001402072000010.jpg]
[図:0001402072000011.jpg]
[図:0001402072000012.jpg]
[図:0001402072000013.jpg]
[図:0001402072000014.jpg]
[図:0001402072000015.jpg]
[図:0001402072000016.jpg]
[図:0001402072000017.jpg]
[図:0001402072000018.jpg]
[図:0001402072000019.jpg]
」
「4.6.18.4.4 Complex-exponential phase-shifting in combination with the SBR QMF banks
・・・
[図:0001402072000020.jpg]
」
(仮訳:
ここで、p0(n)は実数値の対称型ローパス・プロトタイプ・フィルタであり、Mはチャネル数であり、Nはプロトタイプ・フィルタ次数である。・・・・・かくして、SBRで用いられるQMFバンクにおいて、分解フィルタと合成フィルタはいずれも以下の式で表される。)
「
[図:0001402072000021.jpg]
・・・
[図:0001402072000022.jpg]
」
b 引用文献3に記載された技術(文献3技術)
(a)「4.5.2.8 Payloads for the audio object type SBR」における「4.5.2.8.1 Definitions」の記載から、引用文献3には、MPEG規格ISO/IEC14496-3:2009に記載されるMPEG-4 AACにおけるSBR処理のペイロードとして、bs_start_freq、bs_stop_freq、bs_freq_scale、bs_alter_scale、bs_noise_bands、bs_limiter_bandsや、bs_add_harmonic、sbr_grid()、bs_xover_band、bs_invf_mode等の各パラメータが含まれることが記載されているといえる。
(b)「4.6.18.4.4 Complex-exponential phase-shifting in combination with the SBR QMF banks」の記載から、引用文献3の技術は、SBRで用いられるQMFの分解フィルタhk(n)として、実数値のプロトタイプ・フィルタp0(n)を変調したものであり、Mはチャネル数であり、Nはプロトタイプ・フィルタ次数であり、以下の式(1)で示されるものを用いるといえる。
[式(1)]
[図:0001402072000023.jpg]
(c)「4.A.6.2 Miscellaneous SBR tables」における「Table 4.A.89 - Coefficients c[i] of the QMF bank window」の記載から、引用文献3の技術は、SBRで用いられるQMFバンク窓の係数として「Table 4.A.89」の係数を用いるといえる。
上記摘記事項及び(a)~(c)から、引用文献3には次の技術(以下「文献3技術」という。)が記載されているといえる。
[文献3技術]
MPEG規格ISO/IEC14496-3:2009に記載されるMPEG-4 AACにおけるSBR処理のペイロードとして、bs_start_freq、bs_stop_freq、bs_freq_scale、bs_alter_scale、bs_noise_bands、bs_limiter_bandsや、bs_add_harmonic、sbr_grid()、bs_xover_band、bs_invf_mode等の各パラメータが含まれ、
QMFの分解フィルタhk(n)として、実数値のプロトタイプ・フィルタp0(n)を変調したものであり、Mはチャネル数であり、Nはプロトタイプ・フィルタ次数であり、以下の式(1)で示されるものを用い、
[式(1)]
[図:0001402072000024.jpg]
QMFバンク窓の係数として「Table 4.A.89」の係数を用いる技術。
ウ 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)構成Aについて
引用発明の構成aの「エンコードされたオーディオ・ビットストリームをデコーダがデコードする方法」は、本件補正発明の構成Aの「エンコードされたオーディオ・ビットストリームをデコードする方法」に相当する。
(イ)構成Bについて
引用発明の構成bの「オーディオ信号の低周波数成分を表わすオーディオ・データを含むエンコードされたオーディオ・ビットストリーム」は、本件補正発明の構成Bの「オーディオ信号の低域部分を表わすオーディオ・データを含む」「エンコードされたオーディオ・ビットストリーム」に相当する。
したがって、引用発明の構成bの「オーディオ信号の低周波数成分を表わすオーディオ・データを含むエンコードされたオーディオ・ビットストリームをデコーダが受領」することは、本件補正発明の構成Bの「エンコードされたオーディオ・ビットストリームを受領する段階であって、前記エンコードされたオーディオ・ビットストリームはオーディオ信号の低域部分を表わすオーディオ・データを含む、段階」に相当する。
(ウ)構成Cについて
引用発明の構成cの「オーディオ・データをデコードして、デコードされた低周波数成分を表わすオーディオ・データを生成」することは、本件補正発明の構成Cの「前記オーディオ・データをデコードして、デコードされた低域オーディオ信号を生成する段階」に相当する。
(エ)構成D’について
本件の明細書【0004】の「SBRオブジェクト型は、スペクトル帯域複製ツールを含む。これは、知覚的オーディオ・コーデックの圧縮効率を著しく改善する重要な高周波再構成(「HFR」)符号化ツールである。」との記載から、本件補正発明の「高周波再構成メタデータ」は、SBRメタデータを含むものであるといえる。
また、「(キ)構成Gについて」で後述するように、本件補正発明の「線形並進」は、MPEG-4 AAC規格のSBRにおける「スペクトル・パッチング」や「非高調波パッチング」であるといえることから、引用発明の構成dの「SBRツールの特性またはパラメータ」は、本件補正発明の構成D’の「高周波再構成のためにチューニングされた線形並進動作パラメータ」に相当する。
したがって、引用発明の構成dの「このうちSBRメタデータは、オーディオ信号の低域部分から、いくつかのサブバンドをオーディオ信号の高域部分にコピーするSBRツールの特性またはパラメータを示す」ものであることは、本件補正発明の構成D’の「前記高周波再構成メタデータは、前記オーディオ信号の低域部分から、いくつかのサブバンドを前記オーディオ信号の高域部分に移す高周波再構成のためにチューニングされた線形並進動作パラメータを含」むことに相当することから、本件補正発明と引用発明とは、「前記エンコードされたオーディオ・ビットストリームから、高周波再構成メタデータを抽出する段階」を含む点で共通する。
しかしながら、本件補正発明では、高周波再構成メタデータに含まれる「前記線形並進動作パラメータ」は、「正弦波追加情報、時間/周波数格子情報、クロスオーバー周波数および逆フィルタリング・モードからなる群から選択される動作パラメータを含む」のに対して、引用発明では、そのような特定はされていない点で、相違する。
(オ)構成Eについて
引用発明の構成eの「エンコードされたオーディオ・ビットストリームから、MPEG USAC規格のeSBRにおける信号適応的な周波数領域オーバーサンプリングを使用するかどうかを示すフラグであるsbrOversamplingFlag[ch]を抽出」することは、本件補正発明の構成Eの「前記エンコードされたオーディオ・ビットストリームから、信号適応的な周波数領域オーバーサンプリングを使用するかどうかを示すパラメータを抽出する段階」に相当する。
(カ)構成F、F1、F2について
引用発明の構成fの「直交ミラー・フィルタ(QMF)」がフィルタバンクであることは周知の事項であることから、引用発明の構成fの「デコードされたオーディオ信号の低域部分を直交ミラー・フィルタ(QMF)でフィルタリングして、フィルタリングされたオーディオ信号の低域部分を生成」は、本件補正発明の構成Fの「前記デコードされた低域オーディオ信号を分解フィルタバンクでフィルタリングして、フィルタリングされた低域オーディオ信号を生成する段階」に相当する。
しかしながら、本件補正発明では分解フィルタが、実数値のプロトタイプ・フィルタp0(n)の変調されたバージョンであり、【数2】の式で示され、プロトタイプ・フィルタp0(n)が表4の係数から導出されるのに対して、引用発明では、QMFとしてどのようなフィルタを用いるのか明らかでない点で、相違する。
(キ)構成Gについて
本件の明細書【0004】の「MPEG-4 AAC規格では、SBRツールは、いくつかの連続する直交ミラー・フィルタ(QMF)サブバンドがオーディオ信号の伝送された低域部分から、デコーダにおいて生成されるオーディオ信号の高域部分にコピーされる(または「パッチ」される)、スペクトル・パッチング(spectral patching)(線形並進(linear translation) またはスペクトル並進(spectral translation)とも呼ばれる)を実行する。」、【0060】の「sbrPatchingMode[ch]の値は、eSBRにおいて使われる転換器(transposer)の型を示す。sbrPatchingMode[ch]= 1はMPEG-4 AAC規格の4.6.18.6.3節に記載される非高調波パッチングを示し; sbrPatchingMode[ch]= 0は、MPEG USAC規格の7.5.3または7.5.4節に記載される高調波SBRパッチングを示す。」、【0077】の「向上スペクトル帯域複製(eSBR)処理が実行されるべきかどうかを同定する少なくとも一つのフラグを含む」、及び【0078】の「前記フラグは、eSBRメタデータであり、前記フラグの例はsbrPatchingModeフラグである。前記フラグのもう一つの例はharmonicSBRフラグである。・・・基本形のスペクトル複製はスペクトル・パッチングであり、向上した形のスペクトル帯域複製は高調波転換である。」との記載から、本件においては、MPEG-4 AAC規格における基本形のスペクトラル複製(SBR)について、「スペクトル・パッチング」、「線形並進」、「スペクトル並進」、「非高調波パッチング」は同義で用いられているといえ、また、MPEG USAC規格における向上した形のスペクトル帯域複製(eSBR)について、「高調波SBRパッチング」、「高調波転換」は同義で用いられているといえる。
したがって、引用発明の構成gの「エンコードされたオーディオ・ビットストリームから、MPEG-4 AAC規格の非高調波スペクトル・パッチングまたはMPEG USAC規格の高調波SBRパッチング(高調波転換)のどちらがオーディオ・データに対して実行されるべきかを示すharmonicSBRやsbrPatchingMode[ch]のフラグを抽出」することは、本件補正発明の構成Gの「前記エンコードされたオーディオ・ビットストリームから、線形並進または高調波転換のどちらが前記オーディオ・データに対して実行されるべきかを示すフラグを抽出する段階」に相当する。
(ク)構成H’について
上記(キ)で述べた事項も踏まえると、引用発明の構成hの「harmonicSBRやsbrPatchingMode[ch]が、オーディオ・データに対してMPEG USAC規格の高調波SBRパッチング(高調波転換)が実行されるべきであることを示す場合、MPEG USAC規格の高調波SBRパッチング(高調波転換)を実行することによって、フィルタリングされたオーディオ信号の低域部分並びにSBRメタデータ及びeSBRメタデータを使ってオーディオ信号の高周波数帯域を再生成」することは、本件補正発明の構成H’の「前記フラグに従って、前記フラグが前記オーディオ・データに対して高調波転換が実行されるべきであることを示す場合、高調波転換を実行することによって、前記フィルタリングされた低域オーディオ信号および前記高周波再構成メタデータを使って前記オーディオ信号の高域部分を再生成する段階」に相当する。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、「前記フラグに従って、前記フラグが前記オーディオ・データに対して高調波転換が実行されるべきであることを示す場合、高調波転換を実行することによって、前記フィルタリングされた低域オーディオ信号および前記高周波再構成メタデータを使って前記オーディオ信号の高域部分を再生成する段階」を含む点で共通する。
しかしながら、上記(エ)で述べたように、本件補正発明では、高周波再構成メタデータが構成D’で選択される「前記選択される動作パラメータを含む」のに対して、引用発明では、そのような特定はされていない点で、相違する。
(ケ)構成Iについて
引用発明の構成iの「完全にデコードされたオーディオ・データ」は、「フィルタリングされた低域部分のオーディオ信号及び再構成された高域部分のオーディオ信号」とから生成されるものであることから、引用発明の構成iの「完全にデコードされたオーディオ・データ」は、本件補正発明の構成Iの「広帯域オーディオ信号」に相当する。
したがって、引用発明の構成iの「フィルタリングされた低域部分のオーディオ信号及び再構成された高域部分のオーディオ信号とから、完全にデコードされたオーディオ・データを生成する」ことは、本件補正発明の構成Iの「前記フィルタリングされた低域オーディオ信号および再生成された高域部分を組み合わせて、広帯域オーディオ信号を形成する段階」に相当する。
以上の対比から、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
エンコードされたオーディオ・ビットストリームをデコードする方法であって、当該方法は:
エンコードされたオーディオ・ビットストリームを受領する段階であって、前記エンコードされたオーディオ・ビットストリームはオーディオ信号の低域部分を表わすオーディオ・データを含む、段階と;
前記オーディオ・データをデコードして、デコードされた低域オーディオ信号を生成する段階と;
前記エンコードされたオーディオ・ビットストリームから、高周波再構成メタデータを抽出する段階であって、前記高周波再構成メタデータは、前記オーディオ信号の低域部分から、いくつかのサブバンドを前記オーディオ信号の高域部分に移す高周波再構成のためにチューニングされた線形並進動作パラメータを含む、段階と;
前記エンコードされたオーディオ・ビットストリームから、信号適応的な周波数領域オーバーサンプリングを使用するかどうかを示すパラメータを抽出する段階と;
前記デコードされた低域オーディオ信号を分解フィルタバンクでフィルタリングして、フィルタリングされた低域オーディオ信号を生成する段階と;
前記エンコードされたオーディオ・ビットストリームから、線形並進または高調波転換のどちらが前記オーディオ・データに対して実行されるべきかを示すフラグを抽出する段階と;
前記フラグに従って、前記フラグが前記オーディオ・データに対して高調波転換が実行されるべきであることを示す場合、高調波転換を実行することによって、前記フィルタリングされた低域オーディオ信号および前記選択される動作パラメータを含む前記高周波再構成メタデータを使って前記オーディオ信号の高域部分を再生成する段階と;
前記フィルタリングされた低域オーディオ信号および再生成された高域部分を組み合わせて、広帯域オーディオ信号を形成する段階とを含む、
方法。
[相違点1]
本件補正発明では、高周波再構成メタデータに含まれる「前記線形並進動作パラメータは、正弦波追加情報、時間/周波数格子情報、クロスオーバー周波数および逆フィルタリング・モードからなる群から選択される動作パラメータを含」むのに対し、引用発明では、そのような特定はされていない点。
[相違点2]
本件補正発明では、分解フィルタが、実数値のプロトタイプ・フィルタp0(n)の変調されたバージョンであり、【数2】の式で示され、プロトタイプ・フィルタp0(n)が表4の係数から導出されるのに対し、引用発明では、QMFとしてどのようなフィルタを用いるのか明らかでない点。
エ 判断
各相違点について検討する。
(ア)相違点1について
引用文献3には、MPEG規格ISO/IEC14496-3:2009に記載されるMPEG-4 AACにおけるSBR処理のパラメータとして、bs_start_freq、bs_stop_freq、bs_freq_scale、bs_alter_scale、bs_noise_bands、bs_limiter_bandsに加えて、bs_add_harmonic、sbr_grid()、bs_xover_band、bs_invf_mode等の各パラメータを用いることが記載されている(上記イ(イ)bの文献3技術参照。)。
ここで、引用発明は、構成a2から、eSBRデコーダはeSBRメタデータを利用するとともに、bs_start_freq、bs_stop_freq、bs_freq_scale、bs_alter_scale、bs_noise_bands、bs_limiter_bandsやそれ以外のレガシーのHE-AACまたはHE-AAC v2デコーダによってすでにサポートされている構成設定パラメータおよび包絡データを再利用するものであることから、再利用するパラメータとして、bs_start_freq、bs_stop_freq、bs_freq_scale、bs_alter_scale、bs_noise_bands、bs_limiter_bandsのみならず、これらのパラメータとともに文献3技術において用いられる、bs_add_harmonic(本件補正発明の「正弦波追加情報」に相当)、sbr_grid()(本件補正発明の「時間/周波数格子情報」に相当)、bs_xover_band(本件補正発明の「クロスオーバー周波数」に相当)、bs_invf_mode(本件補正発明の「逆フィルタリング・モード」に相当)等の各パラメータについても再利用して相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
(イ)相違点2について
引用文献3には、MPEG規格ISO/IEC14496-3:2009に記載されるMPEG-4 AACにおけるSBR処理のパラメータとして、bs_start_freq、bs_stop_freq、bs_freq_scale、bs_alter_scale、bs_noise_bands、bs_limiter_bandsや、bs_add_harmonic、sbr_grid()、bs_xover_band、bs_invf_mode等の各パラメータを用い、
QMFの分解フィルタhk(n)として、実数値のプロトタイプ・フィルタp0(n)の変調されたバージョンであり、Mは分解フィルタバンクにおけるチャネル数であり、Nはプロトタイプ・フィルタ次数であり、以下の式(1)で示されるものを用い、
[式(1)]
[図:0001402072000025.jpg]
QMFの係数として「Table 4.A.89」の係数を用いる技術が記載されており(上記イ(イ)bの文献3技術参照。)、文献3技術の式(1)は本件補正発明の【数2】と同一の数式であり、また、文献3技術の「Table 4.A.89」の係数は、本件補正発明の表4の係数と同一の係数である。
ここで、引用発明と文献3技術はいずれもオーディオ・ビットストリームのエンコードやデコードにおいてSBRを用いるという共通の技術分野に属するものであり、また、引用発明は、構成a2から、レガシーのHE-AACまたはHE-AAC v2デコーダによってすでにサポートされている構成設定パラメータおよび包絡データを再利用するものであることから、引用発明に文献3技術の式(1)や「Table 4.A.89」のQMFの係数を適用して、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び文献3技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
オ 請求人の主張について
令和4年12月28日付けで提出された意見書において、請求人は、次の主張をしている。
「正弦波追加情報、時間/周波数格子情報、クロスオーバー周波数および逆フィルタリング・モードは、もともと線形並進(スペクトル・パッチ)に基づくHFRのためにチューニングされたメタデータですが、高調波転換に基づく向上された形のHFRのために有利に使用されます(本願明細書0087)。驚くことに、該メタデータはもともと線形並進のためにチューニングされているのに、高調波転換において再利用できます。これは、(上記の線形並進動作パラメータに基づく)線形並進を用いるレガシー・デコーダと、高調波転換を用いる請求項1に記載のデコーダの両方によってデコードできる後方互換なビットストリームを可能にします。それでいて、高調波転換デコード・プロセスにおいて線形並進パラメータを再利用することにより、高調波転換パラメータのためのオーバーヘッドが低減されます。
・・・・
よって、請求項1に係る発明は、引用文献1、3に基づいて当業者が容易に発明できたものではありません。」
しかしながら、引用発明は、構成a2から、レガシーのHE-AACまたはHE-AAC v2デコーダによってすでにサポートされている構成設定パラメータおよび包絡データを再利用することで、レガシー・デコーダとeSBRデコーダの両方によってデコードできる後方互換な仕方で、USAC規格において指定されている等価なパラメータの少なくともいくつかがビットストリームから省略されることで、ビットストリームにおけるオーバーヘッドを軽減してできるだけ追加的な伝送データを必要とせずに効率的に伝送しながら向上した形のスペクトル帯域複製を可能にするものであることから、請求人が主張する「該メタデータはもともと線形並進のためにチューニングされているのに、高調波転換において再利用でき」、「後方互換なビットストリームを可能に」し、「それでいて、高調波転換デコード・プロセスにおいて線形並進パラメータを再利用することにより、高調波転換パラメータのためのオーバーヘッドが低減され」るという点は、引用発明に文献3技術を適用することで得られるものであり、当該主張は採用することはできない。
3 小括
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年12月28日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和3年5月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2」の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 当審の拒絶の理由
本願発明についての当審の拒絶の理由は、次のとおりのものである。
本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項1-7について:引用文献1、3
<引用文献等一覧>
1.国際公開第2016/146492号
3.lnformation technology - Coding of audio-visual objects - Part 3: Audio, ISO/IEC 14496-3, 2009.9, Subpart4 pp.112-116, Subpart4 pp.242-244, Subpart4 pp.360-364
3 引用文献
上記拒絶の理由で引用された引用文献1、引用文献3、及びその記載事項は、上記「第2」の[理由]2のイに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記「第2」の[理由]2で検討した本件補正発明から、構成D’及び構成H’において上記「第2」の[理由]2(1)のア、イで述べた補正事項の限定を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明との相違点は、上記「第2」の[理由]2のウにおいて相違点2とした次の相違点のみとなる。
[相違点]
本願発明では、分解フィルタが、実数値のプロトタイプ・フィルタp0(n)の変調されたバージョンであり、【数2】の式で示され、プロトタイプ・フィルタp0(n)が表4の係数から導出されるのに対し、引用発明では、QMFとしてどのようなフィルタを用いるのか明らかでない点。
上記相違点について検討すると、上記「第2」の[理由]2のエ(イ)に記載したとおり、引用発明に文献3技術を適用して、相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
してみると、本願発明は、引用発明及び文献3技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 本願発明についてのまとめ
以上のことから、本願発明は、当審の拒絶の理由で通知したとおり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-014295