特許拒絶査定不服審判
2016-013056
エレベータ用発電システム
- 審判番号
- 2016-013056
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-257125
- 請求日
- 2016年08月31日
- 審決日
- 2017年07月25日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】宮本 忠
- 【請求人代理人】杉山 誠二
- 【請求人】泉 和代
- 【請求人代理人】杉山 誠二
- 審判長/審判官
- 審判長 佐々木 芳枝
- 審判官 槙原 進
- 審判官 金澤 俊郎
- 分類
- P18 .113-Z (H02P) / P18 .121-Z (H02P) / P18 .575-Z (H02P)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-257125「エレベータ用発電システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月26日出願公開、特開2015- 57945〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件出願は、平成23年1月20日(優先権主張 平成22年3月19日)に出願した特願2011-9516号の一部を平成26年12月19日に新たな特許出願としたものであって、平成27年11月5日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成27年12月22日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年5月30日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成28年8月31日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたものである。
第2 平成28年8月31日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年8月31日付けの手続補正を却下する。
[理由]
〔1〕本件補正の内容
平成28年8月31日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成27年12月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された)下記の(A)に示す請求項1を、下記の(B)に示す請求項1と補正するものである。
(A)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
エレベータの釣合おもりの上端に設置され、巻上機を経たロープが掛けられた滑車と、前記滑車に隣接して配置された発電機とを備え、
エレベータかごの昇降に伴い回転する前記滑車の回転力を前記発電機に伝達することによって、発電を行うように構成されていることを特徴とするエレベータ用発電システム。」
(B)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
エレベータの昇降路の下部に配置された巻上機と、エレベータの釣合おもりの上端に設置され、エレベータかごから前記巻上機を経たロープが掛けられた滑車と、前記滑車に隣接して配置された発電機とを備え、
前記エレベータかごの昇降に伴い回転する前記滑車の回転力を前記発電機に伝達することによって、発電を行うように構成されていることを特徴とするエレベータ用発電システム。」(なお、下線は、請求人が補正箇所を明示するために付したものである。)
〔2〕本件補正の目的要件について
本件補正は、本件補正前の請求項1における「巻上機」との発明特定事項について、「エレベータの昇降路の下部に配置された」との事項を付加し、「巻上機」の配置位置を限定するものである。
また、本件補正は、本件補正前の請求項1における「巻上機を経たロープ」との発明特定事項について、「エレベータかごから」との事項を付加し、「巻上機を経たロープ」の接続箇所を限定するものである。
よって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定したものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
〔3〕本願補正発明の独立特許要件について
1 本願補正発明
本願補正発明は、平成28年8月31日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、上記〔1〕(B)の【請求項1】に示したとおりのものである。
2 引用刊行物
(1)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物であって、本件出願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2005-324885号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
本発明は、交流を整流器で直流に変換してさらにこの直流をインバータで交流に変換してエレベータのかごを上下移動するモータに供給するエレベータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベータ制御装置においては、外部の商用交流電源から供給される三相交流を整流器で一旦直流に変換して、さらにこの直流をインバータで交流に変換してエレベータのかごを上下移動するモータに供給するようにしている。また、モータの負担を軽減するために、かごに対してシーブを介して釣合い重りを設けるようにしている。さらに、釣合い重りを設けることにより生じる回生電力を蓄積する蓄電装置を設けて、この蓄電装置に蓄積された電力をモータの力行運転時にモータに供給して、外部から供給される電力のピーク値を低下して、電力消費量を低減すると共に、エレベータ制御装置の必要電力容量を低下するようにしている(特許文献1参照)。
【0003】
図3は、上述した蓄電装置が組込まれたエレベータ制御装置の概略構成図である。
三相商用交流電源である外部電源1から供給される三相交流はダイオードブリッジ回路からなる整流器2で全波整流され、平滑コンデンサ3でリップル分が吸収され、インバータ4に供給される。このインバータ4は、スイッチング素子5とダイオード6との並列回路をブリッジ接続した構成を有しており、運転制御部7からの各スイッチング素子5に対するゲート信号に基づいて、平滑コンデンサ3で平滑された直流を三相交流に変換して主モータ8に供給する。この主モータ8は主シーブ9を回転制御する。
【0004】
両端が建屋の最上階の天井に固定されたロープ13は、かご10が取付けられたかご用シーブ10a、10b、前記主モータ8が取付けられた主シーブ9、釣合い重り(C/W)12が取付けられた副シーブ11に掛られている。このように、ロープ13の両端にかご10及び釣合い重り12を接続しない2:1ローピング方法を採用することによって、主モータ8の必要とする回転力(トルク)を1/2に低減できる。
【0005】
したがって、運転制御部7は、このエレベータの乗客のかご呼び操作に応じて、インバータ4を介して主モータ8を運転制御して、かご10を目的階へ上下移動させる。
【0006】
乗客が搭乗している状態のかご10の重量と釣合い重り12の重量との関係において、重量が大きい側が上昇している期間において主モータ8は力行運転状態となり、重量が大きい側が下降している期間において主モータ8は発電機として動作し回生運転状態となる。なお、釣合い重り12の重量は、例えば、定員の半分程度の乗客が搭乗している状態のかご10の重量に対応する重量である。
【0007】
主モータ8の力行運転期間においては、インバータ4は整流器2で整流された直流を交流に変換して主モータ8に供給する。一方、主モータ8の回生運転期間においては、主モータ8の回生電力はインバータ4のダイオード6のブリッジ回路で直流に変換されて整流器2側に出力され、平滑コンデンサ3に蓄積される。インバータ4の整流器2側端には、抵抗14とスイッチング素子15との直列回路が接続されている。平滑コンデンサ3の両端には電圧計16が接続されている。
【0008】
主モータ8の回生運転期間においては、インバータ4から供給される回生電力に起因して、平滑コンデンサ3の端子電圧Vcが上昇するので、このコンデンサ電圧Vcが基準電圧VRに対してかなり高い値に設定されたエネルギー放出電圧VHSを超えると、各回路素子を高電圧から保護する目的で、エネルギー放出制御部17が起動して、スイッチング素子15を閉じて、平滑コンデンサ3に蓄積された回生電力(エネルギー)を抵抗14で消費させる。なお、基準電圧VRとは主モータ8が停止している状態の電圧である。
【0009】
さらに、インバータ4の整流器2側端には、インバータ4から供給される回生電力を蓄電器18に蓄積し、蓄積された電力をインバータ4を介してモータ8に供給する充放電回路19が接続されている。また、この充放電回路19の動作を制御する充放電制御部20が設けられている。
【0010】
次に、充放電回路19及び充放電制御部20の動作を説明する。
主モータ8の回生運転期間においては、インバータ4から供給される回生電力に起因して、平滑コンデンサ3の端子電圧(コンデンサ電圧)Vcが上昇し、このコンデンサ電圧Vcが、基準電圧VRより高くエネルギー放出電圧VHSより低い値に設定された上側電圧値VHを超えると、充放電制御部20は、充放電回路19のスイッチング素子21をオンする。すると、インバータ4から供給される回生電力が充電リアクトル22を介して蓄電器18に蓄積される。なお、充電リアクトル22の両端に逆流防止用のダイオード23が接続されている。
【0011】
主モータ8の力行運転期間においては、整流器2から出力される直流電力がインバータ4へ供給されるが、インバータ4の負荷に起因して、インバータ4の整流器2側電圧、すなわち平滑コンデンサ3の端子電圧(コンデンサ電圧)Vcが基準電圧VRより一時的に低下する。このコンデンサ電圧Vcが基準電圧VRより低い値に設定された下側電圧値VLを下回ると、充放電制御部20は、充放電回路19のスイッチング素子24をオンする。すると、蓄電器18、放電リアクトル25、スイッチング素子24の閉回路が形成され、この閉回路に放電電流が流れる。そこで、スイッチング素子24をオフすると放電リアクトル25に蓄えられた電力(エネルギー)がダイオード26を介してインバータ4の整流器2側端子へ供給される。このように、スイッチング素子24に対するオン、オフを繰り返すことにより、蓄電器18に蓄積された電力をインバータ4を介して、モータ8に供給することができる。
【0012】
このように、エレベータ制御装置内に、蓄電器18、充放電回路19、充放電制御部20を設けることにより、外部から供給される電力のピーク値を低下して、電力消費量を低減すると共に、エレベータ制御装置の必要電力容量を低下することができる。
【特許文献1】特開平10-236743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図3に示すエレベータ制御装置においてもまだ改良すべき次のような課題があった。
【0014】
すなわち、図3に示すつるべ式のエレベータにおいては、前述したように、釣合い重り12は、かご10と重量においてバランスさせ、主モータ8の負荷を軽減させるため必要不可欠な部材であるが、単なるおもりを積んでいるだけであり、釣合い重り12の昇降する空間も事実上無駄な空間となっている。
また、エレベータ制御装置において、さらに必要電力容量を低下することが求められている。
【0015】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、釣合い重りの近傍の副シーブに副モータを取付けることにより、エレベータの回生運転時にはこの副モータを回生運転して回生電力を蓄積し、エレベータの力行運転時時に蓄積した電力を副モータへ供給することができ、エレベータの必要空間を増加することなく、制御装置の必要電力容量をさらに低下することができるエレベータ制御装置を提供することを目的とする。」(段落【0001】ないし【0015】)
イ 「【0024】
図1は本発明の一実施形態に係わるエレベータ制御装置の概略構成図である。図3に示す従来のエレベータ制御装置と同一部分には同一符号を付して重複する部分の詳細説明は省略する。
【0025】
この実施形態のエレベータ制御装置においては、外部電源1から供給される三相交流は整流器2で全波整流され、平滑コンデンサ3でリップル分が吸収され、インバータ4に供給される。このインバータ4は、運転制御部7からのゲート信号に基づいて、平滑コンデンサ3で平滑された直流を三相交流に変換して主モータ8に供給する。両端が建屋の最上階の天井に固定されたロープ13は、かご10が取付けられたかご用シーブ10a、10b、前記主モータ8が取付けられた主シーブ9、釣合い重り(C/W)12が取付けられた副シーブ11に掛られている。
【0026】
運転制御部7は、このエレベータの乗客のかご呼び操作に応じて、インバータ4を介して主モータ8を運転制御して、かご10を目的階へ上下移動させる。また、エネルギー放出制御部17、充放電回路19、充放電制御部20の構成及び動作は、図3に示す従来のエレベータ制御装置のエネルギー放出制御部17、蓄電器18、充放電回路19、充放電制御部20の構成及び動作と同じである。
【0027】
この実施形態のエレベータ制御装置においては、釣合い重り12が取付けられた副シープ11の回転軸に副モータ30が取付られている。この副モータ30は本来の電動機(モータ)として力行運転できると共に発電機として回生運転できる。この副モータ30に副インバータ31が接続されている。この副インバータ31は主モータ8のインバータ4と同一構成を有しており、副モータ30の回生運転時には副モータ30の回生電力を直流に変換し、平滑コンデンサ32を介して、充放電回路33へ出力し、副モータ30の力行運転時には充放電回路33から供給された直流電力を交流に変換して副モータ30に供給する。
【0028】
充放電回路33は、充放電回路19と同一構成を有しており、運転制御部36の指示に基づいて、副インバータ31から出力された回生電力を蓄電器34に蓄積するとともに、蓄電器34に蓄積された電力を副インバータ31を介して副モータ30に供給する。蓄電器34に対する充電電流及び放電電流は電流検出回路35で検出されて運転制御部36へ送信される。蓄電器34の端子電圧は電圧検出回路37で検出されて運転制御部36へ送信される。
【0029】
かご10には乗客が搭乗している状態のかご重量を計測する重量計38が設けられ、計測されたかご重量は力行回生判定部39へ送信される。力行回生判定部39は、かご重量と記憶されている釣合い重り12の重量の大小比較結果、及びかご10の上下移動方向を用いて、前述したアルゴリズムに基づいて、エレベータ(主モータ8)が力行運転状態か回生運転状態かを判定し、判定結果を運転制御部36へ送信する。
【0030】
さらに、前述した主モータ8に対する運転制御部7は、主モータ8の回転数を回転数検出器41から読取って回転同期回路40へ送出する。回転同期回路40は副モータ30の回転数を回転数検出器42から読取って、この副モータ30の回転数が主モータ8の回転数に一致するように、副インバータ31を介して副モータ30を制御する。
【0031】
なお、主モータ8の回転数と副モータ30の回転数との同期を取る他の手法として、ワンウェイベアリング(一方向だけ駆動がかかるベアリング、反対方向の回転はフリーになる)等を使用して、回転数が同期するまで釣合い重り12の副シーブ11が主モータ8によって回転させる機械的手法がある。このワンウェイベアリング手法においては、同期して副モータ30より駆動力がかかると初めて力の方向が逆転し、トラクションがかかることを利用して同期制御を簡略化する。
【0032】
運転制御部36は、電流検出回路35で検出された蓄電器34の充電電流及び放電電流、電圧検出回路37で検出された蓄電器34の端子電圧を取込んで、端子電圧に充放電電流を乗算した電力を、この時点で蓄電器34に充放電される電力とし、この電力を過去の蓄積量=0と見なせる基準時点からの積算値を現在時点の蓄積量とする。このように、運転制御部36は蓄電器34の現在時点の蓄積量を算出する機能をも有する。
【0033】
なお、上述した副モータ30、平滑コンデンサ32、回転数検出器42、副インバータ31、充放電回路33、蓄電器34、各回路35,37,40、及び各部36,39は釣合い重り12の一部として、この釣合い重り12に組込まれている。」(段落【0024】ないし【0033】)
ウ 「【0040】
エレベータ(主モータ8)の現在の運転状態が力行運転でなくて(S1)、回生運転の場合、蓄電器34の電力の蓄積量が蓄電器34の最大蓄積容量の70%以下か否かを調べる。蓄積量が最大蓄積容量の70%以下の場合は(S10)、充放電回路33を制御するとともに副インバータ31を介して、副モータ30を発電機として起動する(S11)。
【0041】
回転同期回路40を起動して、主モータ8の回転数を検出して(S12)、主モータ8の回転数と副モータ30の回転数との同期をとる。具体的には、副モータ30の回転数を主モータ8の回転数に一致させる(S13)。
【0042】
次に、充放電回路33を制御して、副モータ30から副インバータ31を介して出力される回生電力を、蓄電器34に蓄積する(14)。その結果、蓄電器34の電力の蓄積量が上昇開始するので、同時に蓄電器34の電力の蓄積量を調べ、蓄積量が最大蓄積容量の70%以下の場合は(S15)、蓄電器34に対する電力蓄積を継続する。
【0043】
蓄積量が最大蓄積容量の70%を超えると(S16)、充放電回路33を制御するとともに副インバータ31を介して、副モータ30の発電機としての制御を停止し(S17)、これ以降、副モータ30を自由回転とする(S17)。
【0044】
エレベータ(主モータ8)の現在の運転状態が回生運転の場合で(S1)、かつ蓄電器34の電力の蓄積量が最大蓄積容量の70%を超える場合は(S10)、副モータ30を自由回転とする(S17)。
【0045】
このように構成されたエレベータ制御装置においては、エレベータのかご10と釣合い重り12とをロープ13を介して上下移動自在に支持する複数のシーブ10a、10b、9、11のうち主シーブ9を回転する主モータ8の他に、釣合い重り12が取付られた副シーブ11に取付けられた副モータ30が設けられている。
【0046】
エレベータ(主モータ8)の回生運転時においては、副モータ30も回生運転が可能であるので、この副モータ30の回生電力が副インバータ31を介して蓄電器34に蓄積される。この場合、電力が蓄電器34の最大蓄積容量の70%まで蓄積されると、副モータ30は発電機の機能を停止して自由回転になる。
【0047】
そして、エレベータ(主モータ8)の力行運転時においては、主シーブ9を回転する主モータ8には外部電源1から整流器2及びインバータ4を介して電力が供給される。さらに、副シーブ11を回転する副モータ30には蓄電器34から副インバータ31を介して電力が供給される。蓄電器34の蓄積量がこの蓄電器34の最大蓄積容量の60%まで低下すると、副モータ30はモータ(電動機)の機能を停止して自由回転になる。
【0048】
このように、エレベータ(主モータ8)の力行運転時においては、かご10は主モータ8と副モータ30とで上下移動されるが、副モータ30は蓄電器34に蓄積された電力が使用されるので、外部電源1から電力が供給される主モータ8の消費電力量が抑制される。その結果、エレベータ制御装置の必要電力容量をさらに低下することができる。」(段落【0040】ないし【0048】)
(2)上記(1)及び図面の記載から分かること
ア 上記(1)アないしウ及び図1ないし3の記載(特に、段落【0001】及び【0024】の記載)によれば、引用刊行物には、エレベータ制御装置が記載されていることが分かる。
イ 上記(1)イ及び図1の記載によれば、エレベータ制御装置は、主モータ8が取り付けられた主シーブ9と、エレベータの釣合い重り12の上端に設置され、かご10から前記主モータ8が取り付けられた主シーブ9を経たロープ13が掛けられた副シーブ11と、前記副シーブ11の回転軸に取り付けられた副モータ30とを備えることが分かる。
ここで、エレベータ制御装置が、エレベータの釣合い重り12の上端に設置され、かご10から主モータ8が取り付けられた主シーブ9を経たロープ13が掛けられた副シーブ11と、前記副シーブ11の回転軸に取り付けられた副モータ30とを備えることについては、引用刊行物の段落【0025】における「両端が建屋の最上階の天井に固定されたロープ13は、かご10が取付けられたかご用シーブ10a、10b、前記主モータ8が取付けられた主シーブ9、釣合い重り(C/W)12が取付けられた副シーブ11に掛られている。」との記載及び段落【0027】における「この実施形態のエレベータ制御装置においては、釣合い重り12が取付けられた副シープ11の回転軸に副モータ30が取付られている。」との記載並びに図1の記載からみて、明らかである。
ウ 上記(1)イ及びウ並びに図1及び2の記載(特に、段落【0027】、【0028】及び【0040】ないし【0046】並びに図1及び2の記載)によれば、エレベータ制御装置において、かご10の昇降に伴い回転する副シーブ11の回転力を副モータ30に伝達することによって、発電を行うことが分かる。
(3)引用発明
上記(1)及び(2)を総合して、本願補正発明の表現に倣って整理すると、引用刊行物には、次の事項からなる発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「主モータ8が取り付けられた主シーブ9と、エレベータの釣合い重り12の上端に設置され、かご10から前記主モータ8が取り付けられた主シーブ9を経たロープ13が掛けられた副シーブ11と、前記副シーブ11の回転軸に取り付けられた副モータ30とを備え、
前記かご10の昇降に伴い回転する前記副シーブ11の回転力を前記副モータ30に伝達することによって、発電を行うように構成されているエレベータ制御装置。」
3 対比
本願補正発明(以下、「前者」ともいう。)と引用発明(以下、「後者」ともいう。)とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・後者における「主モータ8が取り付けられた主シーブ9」は、前者における「巻上機」に相当し、以下同様に、「エレベータ」は「エレベータ」に、「釣合い重り12」は「釣合おもり」に、「かご10」は「エレベータかご」に、「ロープ13」は「ロープ」に、「副シーブ11」は「滑車」に、「エレベータ制御装置」は、発電を行うように構成されているから、「エレベータ用発電システム」に、それぞれ相当する。
・前者における「発電機」については、本件出願の明細書において、「【0009】・・・一端がエレベータかごを経て昇降路上端に取り付けられたロープが、巻上機および滑車32を経て、釣合おもりガイドレールの上端に取り付けられている。エレベータ用発電システム30は、滑車32に隣接して配置された発電機34を備えており、エレベータの昇降時に回転する滑車32の回転力がシャフト36を介して発電機34に伝達されるようになっている。なお、発電機34は、通常の型式のものを使用してよい。
【0010】
エレベータの作動に際して、巻上機を作動させるとロープが移動するとともに、ロープの移動に伴い滑車32が回転する。滑車32の回転がシャフト36を介して発電機34に伝達され、発電されるようになっている。」(下線は、当審で付した。)との記載があるものの、発電機自体の具体的な説明はされておらず、「なお、発電機34は、通常の型式のものを使用してよい。」と記載されているように、発電機の型式を問うものではない(発電機専用に限定されるものではない)。
一方、後者における「副モータ30」は、引用刊行物の段落【0027】における「この副モータ30は本来の電動機(モータ)として力行運転できると共に発電機として回生運転できる。」との記載及び段落【0040】における「蓄積量が最大蓄積容量の70%以下の場合は(S10)、充放電回路33を制御するとともに副インバータ31を介して、副モータ30を発電機として起動する(S11)。」との記載を参酌すると、回生運転時に発電機として機能するものである。
そうすると、後者における「副モータ30」は、前者における「発電機」に相当する。
そして、後者における「副シーブ11の回転軸に取り付けられた副モータ30」は、前者における「滑車に隣接して配置された発電機」に相当する。
したがって、両者は、
「巻上機と、エレベータの釣合おもりの上端に設置され、エレベータかごから前記巻上機を経たロープが掛けられた滑車と、前記滑車に隣接して配置された発電機とを備え、
前記エレベータかごの昇降に伴い回転する前記滑車の回転力を前記発電機に伝達することによって、発電を行うように構成されているエレベータ用発電システム。」の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点>
「巻上機」に関し、本願補正発明においては、「エレベータの昇降路の下部に配置された巻上機」であるのに対して、引用発明においては、「主モータ8が取り付けられた主シーブ9」であり、巻上機であるものの、その配置については特定されていない点(以下、「相違点」という。)。
4 判断
上記相違点について検討する。
エレベータにおいて、巻上機をエレベータの昇降路の下部に配置することは、本件出願の優先日前に周知の技術(以下、「周知技術」という。必要であれば、特開2005-206263号公報(特に、段落【0002】及び図9)、特開2001-335254号公報(特に、段落【0003】及び図8)、国際出願公開第01/89976号(特に、明細書1ページ10ないし18行及び図4)及び特開2007-230693号公報(特に、段落【0062】ないし【0065】及び図7)を参照。)である。
そして、周知技術により昇降路の上部に機械室を設ける必要がなく、エレベータの設置に必要な空間を小さくすることができることは明らかである。
一方、エレベータにおいて、エレベータの設置に必要な空間を小さくすることは、普遍的な課題であって、引用発明においても内在する課題である(引用刊行物の段落【0015】を参照。)から、引用発明において、上記周知技術を適用して、主モータ8が取り付けられた主シーブ9(本願補正発明の「巻上機」に相当。)をエレベータの昇降路の下部に配置されたものとし、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
そして、本願補正発明は、全体としてみても、引用発明及び周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
〔4〕むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成27年12月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、上記第2[理由]〔1〕(A)の【請求項1】に示したとおりのものである。
2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物及びその記載事項、並びに、引用発明は、上記第2[理由]〔3〕2に記載したとおりである。
3 対比・判断
本願発明は、上記第2[理由]〔3〕で検討した本願補正発明から「エレベータの昇降路の下部に配置された」という「巻上機」についての発明特定事項を省くとともに、「エレベータかごから」という「巻上機を経たロープ」についての発明特定事項を省いたものに相当する。
そして、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、上記第2[理由]〔3〕に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるところ、省かれた「エレベータの昇降路の下部に配置された」との発明特定事項は、上記第2[理由]〔3〕3において示した相違点に係る本願補正発明の発明特定事項ということができるから、本願発明と引用発明とを対比すると、両者に発明特定事項の相違はなく、本願発明は、引用発明と同一であり、また、仮に同一でないとしても、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2016-013056