特許拒絶査定不服審判
2021-014170
微小液滴ベースの多置換増幅(MDA)方法及び関連組成物
- 審判番号
- 2021-014170
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-508210外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年10月19日
- 審決日
- 2023年08月01日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
- 【請求人代理人】内田 直人
- 分類
- P18 .113-WZ (C12Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-508210「微小液滴ベースの多置換増幅(MDA)方法及び関連組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月23日国際公開、WO2017/031125、平成30年 9月 6日国内公表、特表2018-525004〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯、本願発明
本願は平成28年8月16日(優先権主張 平成27年8月17日 米国)を国際出願日とする出願であって、令和3年6月18日付け拒絶査定に対して同年10月19日に拒絶査定不服の審判請求がなされ、当審より令和4年11月9日付けで拒絶理由が通知され、令和5年5月15日付けで意見書および手続補正書が提出された。
本願の請求項1~57に係る発明は、令和5年5月15日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1~57に記載されるものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。
【請求項1】
生物試料から得られた複数の核酸鋳型分子と、複数の多置換増幅(MDA)試薬と、複数のMDAプライマーとを含む溶液を調製すること、
前記溶液を封入して、複数の微小液滴を生成することであって、このとき各微小液滴の内容積が等容積である、前記生成すること、及び
MDA増幅産物の生成に効果的な条件下で前記複数の微小液滴をインキュベートすることであって、前記核酸鋳型分子からMDA増幅産物を生成するのに効果的である、前記インキュベートすること、
を含む、核酸鋳型分子の非特異的増幅方法。
第2 当審拒絶理由
当審が通知した令和4年11月9日付けの拒絶理由は、この出願の請求項1~59に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献1 国際公開第2014/153071号
第3 当審の判断
1.引用文献1の記載事項
本願の優先日前の公知文献である国際公開第2014/153071号(以下、「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。なお、英文であるから、当審による翻訳文を記載する。
下線は当審が付したものである。
(1) 「特許請求の範囲
1.核酸を定量する方法であって、
(a)試験される試料を全ゲノム増幅(WGA)反応成分および色素分子または他のプローブと接触させて反応試料を形成し、ここで色素分子は核酸を検出し、
(b)反応試料を分割し、ここで各分割反応試料は単一の反応に対応する、
(c) 分割された反応試料中で反応を起こさせ、
(d) 染料分子を有する分割された反応試料の数を決定し、ここで、色素分子は核酸の存在を示し、それによって、核酸が検査される試料中で定量化される。
ことを含む方法。
・・・・
3.WGAは、多重置換増幅法(MDA)により行われる、請求項1または2に記載の方法。
・・・・
9.区分された反応試料が液滴である、請求項1-8のいずれか1つ記載の方法。
10.液滴が単分散液滴である、請求項9に記載の方法。
・・・・
30.更なる分析のために、液滴またはマトリックスから材料を回収することをさらに含む、請求項1-29のいずれか1つに記載の方法。
31.さらなる分析が、PCRまたは配列決定である、請求項30に記載の方法。」
(2) 「[0062] 本発明は、マイクロ流体液滴の所定の特性、及び単一又は複数の細胞を有する1つ又は複数の液滴の組合せを系統的に生成及び操作するための閉じたフィードバック制御システムを提供し得る。本明細書に記載される発明は、油中水型エマルジョンとしてマイクロ流体チップ内で1つずつ生成される単分散または多分散水滴の使用、あるいは代わりに混合、巻き込み、または押出などのバルクプロセスによって、細胞、核酸、タンパク質などを含むことができる個々の乳剤液滴への試薬の高スループットおよび高解像度送達を可能にする。液滴は、油などの非混和性連続相に懸濁され、界面活性剤によって安定化される。1つの態様において、単一細胞または単一分子(タンパク質、RNA、DNA)は、数kHzまでの速度で水溶液/分散液から均一な液滴にカプセル化される。関連する側面として、複数の細胞または複数の分子が、単一細胞または単一分子の代わりを務めてもよい。1pLから10nLの範囲の体積の水性液滴は、個々の反応器として機能する。開示された実施形態は、液滴ベースのマイクロ流体工学を使用して、液滴を1日あたり108の速度で操作および測定することができることを提供する。
[0063] 微小液滴を迅速な大規模化学スクリーニングまたは複雑な生物学的ライブラリの同定に利用するためには、それぞれ関心のある特定の化学化合物または生物学的プローブを含む異なる種の微小液滴を生成し、好ましい条件、例えば、混合比および組み合わせの順序で組み合わせなければならない。例えば、米国特許公開第2011/0000560号明細書に記載されているように、種Aの1つの微小液滴は種Bの1つの微小液滴と組み合わせなければならず、種Bの2つの微小液滴または種Cの1つの微小液滴とは組み合わせない。異なる種の微小液滴の組み合わせ比率は、組み合わせの部位に微小液滴を送達する周波数を調整することによって達成される。用語「周波数」または「頻度」は、特定の種の微小液滴が特定の場所に送達される速度を意味する。さらに、この頻度またはレートは、単位時間当たりの数であり、典型的には、1秒当たり数百から数万である。さらに、用語「周波数」または「頻度」は、特定の種の液滴が特定の場所に送達される回数を指す。その場所は、液滴の特定の挙動(例えば、対になること。合体など)が起こる場所、または、特定の動作(帯電、機械的変形など)が液滴に適用される場所であってもよい。好ましくは、液滴の組み合わせが発生する場所である。
[0064] 液滴の各化学種は、別々の入口マイクロ流体チャネルから主マイクロ流体チャネルの合流点に導入される。好ましくは、液滴容積は、1つの種は他のものよりも大きく、キャリア流体中の異なる速度、通常は他の種よりも遅い速度で移動し、米国特許公開第2007/0195127号明細書及び 国際公開第2007/089541号(これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるような設計によって選択される。流路の幅及び長さは、高速の液滴種が低速の液滴種に追いつくように選択される。流路の大きさの制約により、速く移動する液滴が低速で移動する液滴を追い越すことができないことによって、液滴の列が合流域に入る。合流域において、液滴は単一の液滴に合体するように誘導される。好ましくは、合体を誘導するのに電場が利用される。多段階化学反応、生化学反応、またはアッセイ検出化学は、異なる種類の種は、反応に添加される前に、一定の反応時間を必要とすることが多い。多段階反応は、別個の合流点と第2、第3またはそれ以上の合流点と処理を複数回繰り返すことによって達成される。入口チャネルからの液滴の頻度を最適な比率で一致させ、種の量を一致させることで、結合した液滴に最適な反応条件を提供し、高効率で精度が高い反応、および反応の分析を実現する。
[0065] 液滴を処理するためにマイクロ流体チャンネルを使用するための重要な要素には、以下が含まれる。(1)正しい体積の液滴を生成すること、(2)正しい周波数で液滴を生成すること、(3)サンプル液滴の第1の流れの周波数がサンプル液滴の第2の流れの周波数に一致するように、サンプル液滴の第1の流れとサンプル液滴の第2の流れとを一緒にすることである。好ましくは、ライブラリ液滴の頻度がサンプル液滴の頻度に一致するような方法で、サンプル液滴のストリームを予め作られたライブラリ液滴のストリームと一緒にすることである。
[0066] 一様な体積の液滴を一定の頻度で生成する方法は、当技術分野でよく知られている。一つの方法は、米国特許出願公開第2005/0172476号及び国際公開 第2004/002627号に開示されているような、分散相流体と非混和性キャリア流体の流体力学的集束を使用して液滴を生成することである。・・・・」
(3) 「[0072] 本発明は、少なくとも1つのフルオロサーファクタントを含んでいてもよい非混和性フルオロカーボン油内の複数の水性液滴を含んでいてもよく、各液滴はサイズが均一で、同じ水性流体を含んでいて、異なるライブラリー要素を含んでいてもよいエマルジョンライブラリーを提供する。本発明はまた、異なるライブラリー要素を含んでいてもよい単一の水性流体を提供することと、少なくとも1つのフルオロサーファクタントを含んでいてもよい非混和性フルオロカーボン油内の水性液滴に各ライブラリー要素をカプセル化することとを含んでいてもよいエマルジョンライブラリーを形成する方法を提供し、該方法は、以下の通りである。ここで、各液滴はサイズが均一で、同じ水性流体からなり、異なるライブラリー要素からなる可能性があり、少なくとも1つのフッ素系界面活性剤を含む非混和性フルオロカーボン油内で水性液滴をプールし、それによってエマルジョンライブラリーを形成する。」
(4) 「実施例I:マイクロ流体液滴
[0095] マイクロ流体デバイスの作製。マイクロ流体デバイスは、標準的なPDMSソフトリソグラフィー(McDonald JC、他(2000)Fabrication of microfluidic systems in poly(dimethylsiloxane). Electrophoresis 21 :27-40)、FineLine Imaging社の透明マスクを用いて形成した18ミクロンのSU8オンSiウエハーのモールドを用いた。硬化後、PDMSデバイスは80℃で2時間ガラスに接着される。
[0096] 多重変位反応。標準試料にラムダDNAを5e-5、5e-4、5e-3ng/μL添加し、プロトコル(Qiagen Repli-G Midi Kit)に従いMDA反応を調製した。各反応液には、滴下形成前に0.3% Tween-20とEvagreenを添加した。滴下試料とバルク試料は30℃で16h、65℃で20分インキュベートした。インキュベーション後のドロップサンプルの半分を半量の1H,1H,2H,2H-Perfluoro-1-Octanol(Sigma Aidrich)でバルクに変え、インキュベーション後のバルクサンプルの半分をドロップにした。
[0097] 単分散液滴の扇形化 フローフォーカシングマイクロ流体デバイスを用いて、フッ素オイル中に単分散水性滴を形成した。予混合された水性試料は、十字型の液滴形成接合部の中央入口に導かれた。出口を4水銀柱インチの真空にすることで、液滴の形成を促した。3つのジャンクション入口の抵抗は、油相と水相の間の流量比を決定し、直径50 umの滴を生成するように最適化された。
[0098] 定量的ポリメラーゼ連鎖反応。バルクまたは液滴間反応を1:200に希釈し、等量のJumpstart Taq ReadyMix(Sigma-Aldrich)を用いてqPCRにおける鋳型として使用した。各反応は、プライマー(5'-AGTGCCGAATCACGCCGCAA-3'および5'-AGTGTGCGTCGCTGCCAT-3')を0.2μΜに、EvagreenおよびROX染料を受け取った。
[0099] 画像化。画像は、0時間および16時間に、10x空気対物レンズを有するNikonエピ蛍光顕微鏡に取り付けられたCanon EOS Rebel 60Dで撮影された。0時間目のサンプルは、撮像前に65℃で20m熱殺菌した。
[00100] 図1および図2は、ラムダファージゲノムを鋳型とする液滴中のMDA反応を描いたものであり、シングルゲノム増幅だけでなくシングルセル解析の代表例である。
[00101] 図1は、適切なテンプレート濃度のMDA反応を、製造者のプロトコルに従ってQiagen Repli-G Midiキット(Qiagen、Valencia、CA)を使用して調製し、Evagreen DNA色素を補充したことを描写している。単分散液滴を、フッ素化オイル連続相を有するフローフォーカシングマイクロ流体デバイス内で形成し、30℃で16時間インキュベートした。
[00102] 図2は、単分散液滴を形成するためのマイクロ流体デバイスを示す図である。液滴形成は、入口からの正流、出口からの真空(1)、または分散相の蠕動ポンプによって駆動することができる。」
(5) 「図面の簡単な説明
[0018] 例示として与えられるが、記載された特定の実施形態にのみ本発明を限定することを意図しない以下の詳細な説明は、添付の図面と共に最も良く理解され得る。
[0019] 図1は、製造業者のプロトコール(Qiagen,Valencia,CA)に従ってQiagen Repli-ミディ(Midi)キットを使用して適切な鋳型濃度で調製しDNA色素を添加したMDA反応を示している。単分散液滴はフッ素化油連続相を有する流れ集束マイクロ流体デバイスに形成され、30℃で16時間インキュベートされた。
[0020] 図2は、単分散液滴を形成するためのマイクロ流体デバイスを示す図である。液滴形成は、入口からの正流、出口からの真空ポンプ(1)、または分散相の蠕動ポンプによって駆動することができる。」
(6)
図1
[図:0001405136000001.jpg]
(7)
図2
[図:0001405136000002.jpg]
2.引用発明
上記1.より、引用文献1には次の方法が記載されていると認められる。
「核酸を定量する方法であって、
(a)試験サンプルを、全ゲノム増幅(WGA)反応成分と色素分子または他のプローブと接触させて、反応サンプルを調製する工程であって、色素分子は核酸を検出するものであり、
(b)反応サンプルを単一の反応に対応する区分された反応サンプルに分割する工程、
(c)区分された反応サンプルの反応を起こさせる工程、および
(d)色素分子を有する区分された反応サンプルの数を決定する工程であって、色素分子は核酸の存在を示すものであり;これにより試験サンプル中の核酸を定量する工程、を含み、
WGAは、多重置換増幅(MDA)により行われ、
区分された反応サンプルは単分散液滴であり、
単分散液滴は図1に示されるような均一なサイズの液滴である、方法。」
そして、上記核酸を定量化する方法の中には、(d)核酸を定量する工程に先立って、(a)~(c)工程を含む、以下の核酸を増幅する方法の発明(以下、「引用発明」という。)が存在することは技術的に明らかである。
「核酸を増幅する方法であって、
(a)試験サンプルを、全ゲノム増幅(WGA)反応成分と色素分子または他のプローブと接触させて、反応サンプルを調製する工程であって、色素分子は核酸を検出するものであり、
(b)反応サンプルを単一の反応に対応する区分された反応サンプルに分割する工程、
(c)区分された反応サンプルの反応を起こさせる工程、を含み、
WGAは、多重置換増幅(MDA)により行われ、
区分された反応サンプルは単分散液滴であり、
単分散液滴は図1に示されるような均一なサイズの液滴である、方法。」
(3)対比、判断
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「核酸」は本願発明の「生物試料から得られた複数の核酸鋳型分子」に相当し、引用発明の多重置換増幅(MDA)反応成分はMDA試薬と複数のMDAプライマーとを含むといえるから、引用発明の核酸と多重置換増幅(MDA)反応成分とを含む「反応サンプルを調製する工程」は、本願発明の「生物試料から得られた複数の核酸鋳型分子と、複数の多置換増幅(MDA)試薬と、複数のMDAプライマーとを含む溶液を調製すること」に相当すると認められる。
また、引用発明の「単分散液滴」は、引用文献1の図2に示されるデバイスで形成されるものであって、図1に示されるものであるところ、このデバイスは、本願のデジタル液滴MDAの液滴(等容積の液滴)を形成するために使用されると認められる本願の図9に示されるマイクロ流体デバイスと類似しており、かつ、引用文献1の図1は、本願のデジタル液滴MDAの液滴(等容積の液滴)を示す本願の図1Cおよび図8と酷似しているから、引用発明の「単分散液滴」は、本願発明にいう「各微小液滴の内容積が等容積である」ものといえ、したがって、引用発明の反応サンプルを区分された反応サンプル(単分散液滴)に分割する工程は、本願発明の「前記溶液を封入して、複数の微小液滴を生成することであって、このとき各微小液滴の内容積が等容積である、前記生成すること」に相当すると認められる。
そして、引用発明の「区分された反応サンプル(単分散液滴)の反応を起こさせる工程」では、本願発明と同様にMDA反応により反応サンプル中の核酸が非特異的に増幅するといえるから、この工程を含む引用発明の「核酸を増幅する方法」は、本願発明の「MDA増幅産物の生成に効果的な条件下で前記複数の微小液滴をインキュベートすることであって、前記核酸鋳型分子からMDA増幅産物を生成するのに効果的である、前記インキュベートすること」である「核酸鋳型分子の非特異的増幅方法」に相当すると認められる。
そうすると、両者は、
「生物試料から得られた複数の核酸鋳型分子と、複数の多置換増幅(MDA)試薬と、複数のMDAプライマーとを含む溶液を調製すること、
前記溶液を封入して、複数の微小液滴を生成することであって、このとき各微小液滴の内容積が等容積である、前記生成すること、及び
MDA増幅産物の生成に効果的な条件下で前記複数の微小液滴をインキュベートすることであって、前記核酸鋳型分子からMDA増幅産物を生成するのに効果的である、前記インキュベートすること、
を含む、核酸鋳型分子の非特異的増幅方法。」である点で一致し、両者の間に相違点はない。
4.小括
したがって、本願発明は引用文献1に記載された発明である。
第4 審判請求人の主張について
審判請求人は令和5年5月15日付け意見書において、概ね以下の点を主張している。
ア マイクロ流体デバイスの分野の当業者は、「単分散」の用語を体積の分布が狭いことを指すために用い、「単分散」の用語を「等体積」と同じ意味では用いない。
イ 引用文献1の段落[0064]には、「好ましくは、液滴容積は、一部が他よりも大きく、異なるスピードで移動するような設計で選択される」、「チャネルの幅と長さは、より液滴の速いものが最も遅いものに追いつくように選択される。チャネルのサイズ条件により、動きの速い液滴が動きの遅い液滴を通過するのを防ぎ、その結果、一連の液滴がマージゾーンに入る。」と記載されており、液滴を異なる容積とする利点が示されている。
そこで、以下検討する。
アについて
本願発明にいう「等容積」とは、発明の詳細な説明に唯一記載された「等容積」という記載が、図1パネルCの模式図についてのものであって(段落[0246])、図1パネルCには、デジタル液滴MDAと明記されていることから、本願の図8に「デジタル液滴MDA」として示されているものと認められ、液滴の正規化した直径分布を表すパネルB、および液滴の正規化した容積分布を表すパネルCからみて、本願発明にいう「等容積」とは容積(体積)の分布が狭いことを指す用語であると認められる。
また、第3の(3)で示したとおり、引用発明の反応サンプルを区分された反応サンプル(単分散液滴)に分割する工程は、本願発明の「前記溶液を封入して、複数の微小液滴を生成することであって、このとき各微小液滴の内容積が等容積である、前記生成すること」に相当すると認められるから、本願発明にいう「等容積」は、引用発明にいう「単分散」と区別できない。
イについて
引用文献1の段落[0064]の記載は、この段落で引用されている、米国特許公開第2007/0195127号明細書及び 国際公開第2007/089541号の実施例、各図に記載された、2種類の流体液滴の合体を前提とする方法において、合体させる一方の液滴と他方の液滴についての、互いの大きさや移動速度に関して述べるものであり、図1の液滴と直接関係するものとはいえない。
したがって、上記記載が引用文献1で液滴を異なる容積とする利点を示すものとはいえないし、引用文献1の図1に示される液滴が互いに均一なサイズの液滴であることを左右するものともいえない。
したがって、審判請求人の主張は、いずれも採用することはできない。
第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明及び他の拒絶の理由について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2021-014170