2021-012882
ゲームプログラムおよびゲームシステム
- 審判番号
- 2021-012882
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-087040外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年09月27日
- 審決日
- 2022年10月11日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .113-Z (A63F) / P18 .121-Z (A63F) / P18 .55 -Z (A63F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 13項目
第1 手続の経緯
本件拒絶査定不服審判事件に係る出願(以下、「本願」という。)は、2019年(平成31年)4月30日に出願された特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 令和3年9月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年9月27日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし5を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし5へと補正するものである。
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】コンピュータを、ユーザがゲーム内で所持するゲーム内通貨が消費されたとき、その消費に対応するゲーム内イベントを前記ユーザに付与する第一付与手段、前記ゲーム内通貨とは異なるポイントであってゲーム内で消費可能なポイントを、前記ゲーム内通貨の消費量に応じてユーザに付与する第二付与手段、続きを表示(全22行)ゲームに関する複数の所定条件の成立を判断する判断手段、として機能させ、前記第二付与手段は、少なくとも前記ゲーム内通貨が消費されたタイミングでの前記所定条件の成立状況と前記消費量とに基づいて、前記ポイントの数量を算出する、ゲームプログラム。【請求項2】前記所定条件のそれぞれには、設定値が対応付けられ、前記第二付与手段は、成立した所定条件の設定値を予め設定されている基本付与率に加算又は乗算して付与率を算出し、前記消費量に前記付与率を乗算して前記ポイントの数量を算出する、請求項1に記載のゲームプログラム。【請求項3】前記コンピュータを、さらに、現在の前記所定条件の成立状況を、ユーザに報知する報知手段、として機能させる請求項1または2に記載のゲームプログラム。【請求項4】前記基本付与率は、所定タイミングで変化する、請求項2または3に記載のゲームプログラム。【請求項5】請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のゲームプログラムを記憶する記憶部と、前記ゲームプログラムを実行する制御部と、を備えたゲームシステム。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】コンピュータを、ユーザがゲーム内で所持するゲーム内通貨が消費されたとき、その消費に対応するゲーム内イベントを前記ユーザに付与する第一付与手段、前記ゲーム内通貨とは異なるポイントであってゲーム内で消費可能なポイントを、前記ゲーム内通貨の消費量に応じてユーザに付与する第二付与手段、続きを表示(全21行)前記ゲームを有利に進行させるための条件であって同一の前記ゲーム内にて達成されうる複数の所定条件それぞれの成立を判断する判断手段、として機能させ、前記第二付与手段は、少なくとも前記ゲーム内通貨が消費されたタイミングでの、前記判断手段の判断結果であるそれぞれの前記所定条件の成立状況と前記消費量とに基づいて、前記ポイントの数量を算出する、ゲームプログラム。【請求項2】前記所定条件のそれぞれには、設定値が対応付けられ、前記第二付与手段は、成立した所定条件の設定値を予め設定されている基本付与率に加算又は乗算して付与率を算出し、前記消費量に前記付与率を乗算して前記ポイントの数量を算出する、請求項1に記載のゲームプログラム。【請求項3】前記コンピュータを、さらに、現在の前記所定条件の成立状況を、ユーザに報知する報知手段、として機能させる請求項1または2に記載のゲームプログラム。【請求項4】前記基本付与率は、所定タイミングで変化する、請求項2に記載のゲームプログラム。【請求項5】請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のゲームプログラムを記憶する記憶部と、前記ゲームプログラムを実行する制御部と、を備えたゲームシステム。」
(下線部は補正箇所であり、審決で付した。)
2 補正の適否
(1)新規事項の追加について
本件補正は、
ア 補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「ゲームに関する複数の所定条件の成立を判断する判断手段」について、その判断対象を「ゲームに関する複数の所定条件の成立」とすることから「前記ゲームを有利に進行させるための条件であって同一の前記ゲーム内にて達成されうる複数の所定条件それぞれの成立」を判断対象とすることへと補正すること(以下、「補正事項ア」という。)、
を含むものである。
そして、上記補正事項アに関連して、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、以下の記載がある。
「【請求項3】前記コンピュータを、さらに、ゲームに関する複数の所定条件の成立を判断する判断手段、として機能させ、前記第二付与手段は、前記所定条件の成立数および前記基本付与率に基づいて付与率を算出し、前記消費量に該付与率を乗算して前記ポイントの数量を算出する、請求項1または請求項2に記載のゲームプログラム。」
「【0008】上記発明において、コンピュータを、さらに、ゲームに関する複数の所定条件の成立を判断する判断手段として機能させてもよい。」
「【0035】ユーザに付与されるポイントの数量(付与ポイント)は、例えば、図2(B)に示す式を用いて算出される。「通貨消費量」は、ゲーム内通貨の消費量である。「付与率」は、変動値であり、固定値である「基本付与率」と変動値である「成立した加算条件の加算値の合計」との和となる。基本付与率は、例えば1であり、ゲームデータに予め含まれる。「成立した加算条件の加算値の合計」は、複数の加算条件(所定条件)の成立(達成)状況によって決定される0以上の数値である。複数の加算条件のそれぞれには、加算値(設定値)が対応付けられている。成立した加算条件のそれぞれに対応付けられている加算値の合計が、「成立した加算条件の加算値の合計」となる。したがって、付与率は、成立した加算条件が多くなるほど増大していく。【0036】なお、加算条件は、図3に示すようにゲームでの達成に関する条件であるが、この条件が成立しない場合であっても、ポイントの付与数が変動すうのみでゲームの進行が変化するものではない。図3に示す加算条件リスト(常時)および加算条件リスト(期間)は、ゲームデータに含まれていてもよい。【0037】図3(A)および図3(B)は、加算条件リスト(常時)および加算条件リスト(期間限定)を示す図である。加算条件リスト(常時)の加算条件は、適用期間が設定されていない。一方、加算条件リスト(期間)の加算条件は、適用期間が設定されている。【0038】加算条件リスト(常時)は、管理番号に、加算条件、説明および加算値などが対応付けられている。加算条件には、条件の情報が設定されている。説明には、加算条件のユーザ向けの説明内容が、テキストデータとして設定されている。加算値には、加算条件の加算値(数値)が設定されている。【0039】また、加算条件リスト(期間限定)は、管理番号に、加算条件、説明、加算値および適用期間等が対応付けられている。適用期間は、加算条件としての有効期限が設定されている。期間限定の加算条件は、サーバ2から受信して、加算リスト(期間限定)に追加的に登録されていく。」
「【0050】図6のフローチャートを参照して算出処理及び付与処理について説明する。図6(A)は、加算条件の成立を判断して付与率を算出する付与率算出処理を示すフローチャートである。算出処理は、クエスト等の各種コンテンツの実行中に定期的に繰り返し実行される。【0051】まず、図3(A)、(B)の加算条件リストに記載された加算条件の成立可否を全て判定し、どの加算条件が成立したかを判断する(S11)。今回成立している加算条件と前回の付与率算出処理で成立していた加算条件(ユーザデータに成立が記憶されている加算条件)とを比較し(S12)、新たに達成された加算条件があるかを判断する(S13)。新たに達成された加算条件がある場合(S13でYES)、現在成立している全ての加算条件で、付与率を算出する(S14)。その後、ユーザデータを更新する(S15)。ここでは、ユーザデータの付与率が、新たに算出された付与率で更新され、達成実績に成立した加算条件の管理番号が追加される。新たに成立した加算条件がなかった場合には(S13でNO)、なにもしないで処理を終了する。」
「【0056】上述の実施形態において、付与率の算出は、基本付与率に加算値(設定値)を加算していく例を挙げたが、加算に限定されない。例えば、基本付与率と所定条件に対応付けられた設定値との乗算で付与率を算出してもよい。例えば、所定条件A,Bが成立した場合、所定条件A,Bの設定値が1.5,2.0であれば、付与率=基本付与率×1.5×2.0となる。また、付与率の算出は、加算条件(所定条件)の成立によって増加していく例を挙げたが、常に増加させる構成としなくてもよい。付与率が減少する所定条件を設けてもよい。この場合、付与率は、負の値となる場合がある。さらに、付与率は、加算条件(所定条件)の成立に対して増加するものに限定されない。例えば、所定期間だけ基本付与率を1から5に変更する構成を設けてもよい。この場合、毎週火曜日は、ポイント5倍デーとして基本付与率を1から5に変更する。」
「図3[図:0001391550000001.jpg]」
ここで、上記補正事項アの「前記ゲームを有利に進行させるための条件であって同一の前記ゲーム内にて達成されうる複数の所定条件それぞれ」について、当初明細書等には、「ゲームを有利に進行させる」という記載はなく、また、所定条件がゲームを有利にさせるための条件であるとの記載もない。
そこで、「所定条件」が「ゲームを有利に進行させるための条件」であることが、当初明細書等の記載から自明な事項であるかについて検討する。
まず、「所定条件」に関し、当初明細書等には、所定条件が「加算条件」を指すことが記載されている。さらに、加算条件の例として、「ゲーム内通貨購入額≧5000円」、「所持ライダー1体のレベル≧50」、「所持モンスター1体のレベル≧50」、「PvP対戦の勝利数≧5」、「ガチャ実行回数≧5」、「プレイヤランク≧100」等が記載(図3等)されている。
これらが「ゲームを有利に進行させるための条件」といえるか否かについて検討すると、出願時におけるゲーム分野の技術常識では、一般に、ゲーム内通貨購入額、PvP対戦の勝利数、ガチャ実行回数等の「ゲームの実績値」が所定値以上であることによって、直ちにゲームが有利に進行するとはいうことはできない。
すなわち、例えば、ゲーム内通貨購入額が所定額以上であるからといって、ゲームを有利に進めるための何らかのアイテムの付与や、ゲームシナリオの変更等が行われることは、その旨の特段の記載がない限りは想定されず、ゲーム内通貨購入額が所定額以上であること自体が、直ちにゲームを有利に進めるための条件とはならない。
一方、出願時におけるゲーム分野の技術常識において、レベルやランクが高いことにより攻撃力等が強くなり敵等を倒し易くなるといった、ゲームが有利に進行する効果が発揮されるような設定とすることはあり得る。
しかしながら、図3で例示された「所持ライダー1体のレベル」及び「所持モンスター1体のレベル」が「50以上」である場合や「プレイヤランク」が「100以上」である場合に、それらを充足した場合において、必ずしも、ゲームが有利に進行するものとも認められない。
図3で「加算条件」として例示されているものは、それ自体が「条件」ではあるものの、「加算条件」が充足された場合には、特典としての「加算値」が基本付与率へ合算され、通貨消費量に「乗算」した結果、初めて「ゲームを有利に進行させるため」のポイントがユーザに付与されることになるのであるから、「同一の前記ゲーム内にて達成されうる」「所定条件」自体が「ゲームを有利に進行させるための条件」とはならない。
そうすると、上記補正事項アの「ゲームを有利に進行させるための条件であ」る「所定条件」との構成は、当初明細書等から自明な事項や技術常識から導かれる事項でもないため、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
以上のとおりであるから、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
審判請求人は、審判請求書の【請求の理由】の「(3)手続補正について」の「<補正の根拠>」において、上記補正事項アの補正の根拠として、「出願当初の明細書の[0016]~[0018]、[0036]、図3(A)に基づくものであり、新規事項の追加には該当しません。」と主張しているが、出願当初の[0016]~[0018]、[0036]、図3(A)には、ゲームを有利に進行させるための条件について何ら記載されていないから、審判請求人の上記主張は採用できない。
3 まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項に違反するものであるから、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、令和3年2月19日の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(1)の【請求項1】に記載のとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は本願の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、という理由を含むものである。
第4 引用文献等1 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1は,本件出願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであるところ,当該引用文献1には次の記載がある。(下線は、後述する引用発明の認定に特に関係する箇所を示す。)
「神ゲー攻略ブラウンダスト攻略・・・(中略)・・・マイルの効率的な集め方と使い道・・・(中略)・・・続きを表示(全30行)ブランダスト(ブラダス)のマイルの効率的な集め方と使い道を紹介。マイルを集めるメリットについても記載するので、ぜひ参考にしてマイルを集めよう!・・・(中略)・・・マイルの効率的な集め方ダイヤを消費してガチャを回すマイルの効率的な集め方は、ダイヤを消費してガチャを回すことだ。なぜならば、マイルはダイヤを消費してガチャを回さなければ入手できないアイテムだからである。・・・(中略)・・・マイルの効率的な集め方は、ダイヤを消費してガチャを回すことだ。なぜならば、マイルはダイヤを消費してガチャを回さなければ入手できないアイテムだからである。ガチャは期間によってピックアップされているキャラが異なるため、欲しいキャラがいるタイミングでダイヤを消費して引くのがおすすめ。・・・(中略)・・・11連を連続で引きキャラ入手がおすすめ[図:0001391550000002.jpg]ガチャには単発と11連の2種類の引き方があるが、11連ガチャを連続で引いてキャラと同時にマイルを入手するのがおすすめ。なぜならば、連続で11連ガチャを引くことでダイヤ540個で引けて60個分のダイヤがお得な上、マイルを90枚とキャラ11体を入手できるからである。11連ガチャを連続で引いてマイルの数が中途半端になってしまうのが嫌な場合は、11連ガチャを引いた後に単発ガチャを引いて数合わせをしても良い。・・・(中略)・・・マイルの使い道星5キャラ選択券と交換する[図:0001391550000003.jpg]マイルは、星5キャラ選択券と交換する際に使用する。・・・(中略)・・・マイルガチャを引く・・・(中略)・・・マイルは、マイルガチャを引く際に使用する。マイルガチャには、マイルガチャでしか排出されない限定キャラが存在して、傭兵合成に使用する貴重なキャラ「アセラ」がいるためアセラを持っていない場合はアセラを狙ってマイルガチャを引くのがおすすめ。」
2 引用文献1に記載された発明
(1)引用文献1の「神ゲー攻略 ブラウンダスト攻略」の記載について、「神ゲー」とは、人気のあるゲームソフトであることがゲームの技術分野において技術常識であることからすると、引用文献1に記載された内容は『ブラウンダスト』という名のゲーム用のゲームプログラムに関する事項であると認められる。
(2)引用文献1の「ダイヤを消費してガチャを回す」の記載について、「消費」とは「費やしてなくすること」(広辞苑)との意味であり、費やしてなくする前提として、費やす主体がものやサービス等を所持していたことは明らかである。ここで、消費する主体はゲームのプレイヤ(ユーザ)であることも明らかであるから、当該記載から、ゲームのプレイヤ(ユーザ)がゲーム内でダイヤを所持しており、所持するダイヤを消費してガチャを回しているものと認められる。
(3)引用文献1の「マイルはダイヤを消費してガチャを回さなければ入手できないアイテム」の記載から、マイルとダイヤは異なるものであることは明らかである。
(4)引用文献1の「マイルは、星5キャラ選択券と交換する際に使用する。」、「マイルは、マイルガチャを引く際に使用する。」の記載から、マイルは、ゲーム内で使用、つまり、消費することが可能であるものと認められる。
(5)引用文献1の「11連を連続で引きキャラ入手がおすすめ」との記載の下の表(例えば、「単発 ダイヤ60消費、マイル10枚獲得」の記載)、及び「ガチャには単発と11連の2種類の引き方があるが、11連ガチャを連続で引いてキャラと同時にマイルを入手するのがおすすめ。」の記載から、ダイヤの消費量に応じて、ユーザが入手するマイル数が決定されるものと認められる。
(6)引用文献1の「11連を連続で引きキャラ入手がおすすめ」との記載の下の表、及び「ガチャには単発と11連の2種類の引き方がある」の記載から、ガチャには単発と11連の2種類の引き方があるとともに、それぞれには10%割引の場合も存在し、それぞれの引き方でダイヤの消費量及びマイルの獲得枚数が異なることから、複数の引き方の中から1つの引き方をユーザが選択できるものと認められる。また、選択した引き方に応じたダイヤを消費すれば、選択したガチャを引くことができ、その際のダイヤの消費量に応じたマイル数を獲得できるようにしたことが認められる。
(7)そうすると、前記1で摘記した引用文献1の記載から把握することができる発明の構成は次のとおりである。
「ブラウンダストという名のゲーム用のゲームプログラムであって、ユーザがゲーム内で所持するダイヤを消費してガチャを回し、ダイヤとは異なるものであって、ゲーム内で消費可能なマイルが存在し、ダイヤの消費量に応じてユーザが入手するマイル数が決定され、ガチャには単発と11連の2種類の引き方があり、それぞれには消費ダイヤと獲得マイルの量が10%割引となる10%割引の引き方も存在し、ユーザは複数の引き方の中から1つの引き方を選択し、選択した引き方に応じたダイヤを消費すればガチャを引くことができ、その際のダイヤの消費量に応じたマイル数を獲得できるようにした、ブラウンダストという名のゲーム用のゲームプログラム。」(以下、「引用発明」という。)
第5 対比・判断
1 本願発明と引用発明との対比
(1)引用発明の「ブラウンダストという名のゲーム用のゲームプログラム」が、ハードウェアに、当該ゲームプログラムが備える所定の機能を実行させるためのプログラムであることは明らかであるのだから、本願発明の「ゲームプログラム」と引用発明の「ブラウンダストという名のゲーム用のゲームプログラム」とは、「コンピュータ」を所定の「手段として機能させ」る「プログラム」との概念で一致する。
(2)引用発明の「ダイヤ」、「マイル」及び「消費量」は、本願発明の「ゲーム内通貨」、「ポイント」及び「消費量」にそれぞれ相当する。
(3)引用発明の「ガチャ」は、本願発明の「ゲーム内イベント」に相当する。
してみると、引用発明の「ユーザがゲーム内で所持するダイヤを消費してガチャを回し」とは、ユーザがダイヤを消費することにより、ガチャを回す、すなわち、ゲーム内イベントに参加できることとなるのであるから、ユーザは、ガチャを回すというゲーム内イベントを付与されているといえる。
したがって、本願発明の「ゲームプログラム」と引用発明の「ブラウンダストという名のゲーム用のゲームプログラム」とは、「コンピュータ」を「ユーザがゲーム内で所持するゲーム内通貨が消費されたとき、その消費に対応するゲーム内イベントを前記ユーザに付与する第一付与手段」として機能させるプログラムとの概念で一致する。
(4)引用発明の「ダイヤとは異なるものであって、ゲーム内で消費可能なマイル」は、上記(2)も考慮すると、本願発明の「前記ゲーム内通貨とは異なるポイントであってゲーム内で消費可能なポイント」に相当する。
(5)引用発明は「ダイヤの消費量に応じてユーザが入手するマイル数が決定され」るところ、引用発明の「ダイヤの消費量」は本願発明の「前記ゲーム内通貨の消費量」に相当することから、引用発明の「ブラウンダストという名のゲーム用のゲームプログラム」がダイヤの消費量に応じてユーザに付与するマイル数を決定している処理をしていることは明らかである。
そして、引用発明は、「選択した引き方に応じたダイヤを消費すればガチャを引くことができ、その際のダイヤの消費量に応じたマイル数を獲得できる」のであるから、ユーザは、マイル数を付与されているといえる。
したがって、本願発明の「ゲームプログラム」と引用発明の「ブラウンダストという名のゲーム用のゲームプログラム」とは、「コンピュータ」を「前記ゲーム内通貨とは異なるポイントであってゲーム内で消費可能なポイントを、前記ゲーム内通貨の消費量に応じてユーザに付与する第二付与手段」として機能させるプログラムとの概念で一致する。
(6)引用発明は、「ガチャには単発と11連の2種類の引き方があり、それぞれには消費ダイヤと獲得マイルの量が10%割引となる10%割引の引き方も存在し、ユーザは複数の引き方の中から1つの引き方を選択し」ているところからすると、引用発明の「ブラウンダストという名のゲーム用のゲームプログラム」は、ユーザが、単発、単発(10%割引)、11連、11連(10%割引)の4種のガチャの引き方のうちのいずれを選択したのかを検出していることは明らかである。
ここで、「条件」とは、“ある物事の成立または生起のもととなることがらのうち、それの直接の原因ではないが、それを制約するもの”(広辞苑)との意味であるが、引用発明における「複数の引き方」(4種のガチャの引き方)のそれぞれは、ゲームプログラムにおいて、ガチャの実行とマイル付与という物事の成立のもととなることがらであって、4種のガチャの引き方のうちどの種を選択するかにより、マイルの獲得数が変化することから、当該物事の結果を制約するものといえるため、「条件」といえるものである。
そうすると、引用発明における「複数の引き方」のそれぞれ、つまり、単発を選択する、単発(10%割引)を選択する、11連を選択する、11連(10%割引)を選択するという事項は、本願発明の「複数の所定条件」に相当する。
(7)引用発明の「ユーザは複数の引き方の中から1つの引き方を選択し、選択した引き方に応じたダイヤを消費すればガチャを引くことができ、その際のダイヤの消費量に応じたマイル数を獲得できるようにした」ことからすれば、引用発明の「ブラウンダストという名のゲーム用のゲームプログラム」は、ユーザにより複数の引き方の中からいずれの引き方が選択されたかを判断しているといえる。
したがって、本願発明の「ゲームプログラム」と引用発明の「ブラウンダストという名のゲーム用のゲームプログラム」とは、「コンピュータ」に「ゲームに関する複数の所定条件の成立を判断する判断手段」として機能させるプログラムとの概念で一致する。
(8)また、引用発明の「ユーザは複数の引き方の中から1つの引き方を選択し、選択した引き方に応じたダイヤを消費」するのであるから、引用発明の「ブラウンダストという名のゲーム用のゲームプログラム」は、複数の引き方の中から、どの1つの引き方の選択がされたかを、判断しているのであるから、引用発明の「ブラウンダストという名のゲーム用のゲームプログラム」は、「コンピュータ」に「所定条件」であるところの、「複数の引き方」のそれぞれのうちの、いずれの引き方が選択されたかという「成立状況」を取得する機能をさせるプログラムとの概念で一致する。
(9)さらに、引用発明は、「ガチャには単発と11連の2種類の引き方があり、それぞれには消費ダイヤと獲得マイルの量が10%割引となる10%割引の引き方も存在し、ユーザは複数の引き方の中から1つの引き方を選択し、選択した引き方に応じたダイヤを消費すればガチャを引くことができ、その際のダイヤの消費量に応じたマイル数を獲得できるようにした」ところ、引用発明の「10%割引の引き方」では、通常の単発、11連の引き方に設定された(消費ダイヤと)獲得マイルの数量を10%割り引いた数量にしており、通常の引き方に対して設定された獲得マイルの数量に対して、0.9を乗ずる計算をして、10%割引の引き方の場合のマイルの数量を算出する処理を行っているといえる。
そうすると、引用発明の「その際のダイヤの消費量に応じたマイル数を獲得できるようにした」ことからすれば、引用発明の「ブラウンダストという名のゲーム用のゲームプログラム」は、「消費量」「に基づいて、ポイントの数量を算出する」といえる。
また、引用発明の「ブラウンダストという名のゲーム用のゲームプログラム」は、「選択した引き方に応じて」「ダイヤの消費量に応じたマイル数」を算出しているのであるから、本願発明の「ゲームプログラム」と引用発明の「ブラウンダストという名のゲーム用のゲームプログラム」とは、「コンピュータ」に「所定条件の成立状況」「に基づいて、ポイントの数量を算出する」機能をさせるプログラムとの概念で一致する。
(10)そして、引用発明は、「ダイヤを消費すれば」、すなわち、ダイヤの消費を契機として、ユーザが「マイルを獲得できる」、すなわち、ユーザはマイルを付与されるのであるから、ユーザへのマイルの付与の前段階で「ダイヤ」の「消費」が実行されるものといえる。
したがって、上記(8)、(9)も併せると、本願発明の「ゲームプログラム」と引用発明の「ブラウンダストという名のゲーム用のゲームプログラム」とは、「コンピュータ」に「前記第二付与手段は、少なくとも前記ゲーム内通貨が消費されたタイミングでの前記所定条件の成立状況と前記消費量とに基づいて、前記ポイントの数量を算出する」機能をさせるプログラムとの概念で一致する。
(11)したがって、本願発明と引用発明1とは、「コンピュータを、 ユーザがゲーム内で所持するゲーム内通貨が消費されたとき、その消費に対応するゲーム内イベントを前記ユーザに付与する第一付与手段、 前記ゲーム内通貨とは異なるポイントであってゲーム内で消費可能なポイントを、前記ゲーム内通貨の消費量に応じてユーザに付与する第二付与手段、 ゲームに関する複数の所定条件の成立を判断する判断手段、として機能させ、 前記第二付与手段は、少なくとも前記ゲーム内通貨が消費されたタイミングでの前記所定条件の成立状況と前記消費量とに基づいて、前記ポイントの数量を算出する、 ゲームプログラム。」の点で一致し、本願発明の発明特定事項を、すべて引用発明が備えているから、本願発明と、引用発明とに差異はない。したがって、本願発明は、引用発明である。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-012882