2021-012723
RFIDシステムおよび情報処理方法
- 審判番号
- 2021-012723
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-189624外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年09月22日
- 審決日
- 2022年05月31日
- 公報発行日
- 2022年06月24日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】オムロン株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人深見特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (G06K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第164条、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 19項目
第1 手続の経緯
本願は、平成29年9月29日の出願であって、令和3年2月2日付けで拒絶の理由が通知され、同年3月18日に意見書が提出され、同年6月15日付けで拒絶査定(謄本送達日同年6月22日)がなされ、これに対して同年9月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ、同年10月18日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和3年6月15日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1-10
・引用文献等 1-2
<引用文献等一覧>
1.特開2011-001132号公報
2.特開2013-192172号公報
第3 審判請求時の補正について
1 補正事項1
審判請求時の補正(以下、「本件補正」という。)は、特許法17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
本件補正によって請求項1及び9に「前記第3の画像は、時間を示す座標軸と、受信レベルを示す座標軸と、グラフ要素としての前記第3の時系列データと、を含むグラフである」(以下、「補正事項1」という。)という事項を追加する補正は、本件補正前の請求項1及び9に記載の「第3の画像」について限定的に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、補正事項1は、当初明細書の段落【0094】、【0100】~【0103】及び図面の図1、12に記載されているから、当該補正は新規事項を追加するものではない。
2 補正事項2
本件補正により、本件補正後の請求項2は次のとおりとなった。
「 【請求項2】RFID(RadioFrequencyIdentification)システムであって、表示装置と、移動する第1のRF(RadioFrequency)タグと非接触で交信する第1の交信装置と、続きを表示(全12行)前記第1のRFタグと非接触で交信する第2の交信装置とを備え、前記第1の交信装置と前記第2の交信装置とは、前記交信用の信号を繰り返し出力し、かつ前記交信用の信号に基づき前記第1のRFタグから送信される第1の信号の受信レベルを測定し、前記RFIDシステムは、予め定められた測定期間において前記第1の交信装置で受信された前記第1の信号の受信レベルを表す第1の時系列データと、前記測定期間において前記第2の交信装置で受信された前記第1の信号の受信レベルを表す第2の時系列データとを記憶する記憶手段と、 前記第1の時系列データおよび前記第2の時系列データにおいて、前記測定期間の開始時刻からの経過時間が対応している前記第1の交信装置での前記第1の信号の受信レベルと前記第2の交信装置での前記第1の信号の受信レベルとのうちの高い方の受信レベルを、前記開始時刻からの経過時間毎に特定し、かつ特定された前記受信レベルを表す第3の時系列データを生成する生成手段と、前記第1の時系列データに基づく第1の画像と前記第2の時系列データに基づく第2の画像と前記第3の時系列データに基づく第3の画像とのうちの少なくとも1つを選択的に、または、前記第1の画像と前記第2の画像と前記第3の画像とを同時に、前記表示装置に表示させる表示制御手段とを備え、前記表示制御手段は、前記第1のRFタグを含む複数のRFタグのうち前記測定期間において前記第1の交信装置によって読み取られたRFタグの個数の時間的推移を表した第1の棒グラフと、前記複数のRFタグのうち前記測定期間において前記第2の交信装置によって読み取られたRFタグの個数の時間的推移を表した第2の棒グラフとのうちの少なくとも1つを選択的に、または、前記第1の棒グラフと前記第2の棒グラフとを同時に、前記表示装置に表示させ、前記複数のRFタグのうち前記測定期間において前記第1の交信装置と前記第2の交信装置との両方によって読み取られたRFタグの個数の時間的推移を表した第3の棒グラフを、前記表示装置にさらに表示させる、RFIDシステム。」
本件補正前の請求項1,6及び7は次のとおりである。
「【請求項1】RFID(Radio Frequency Identification)システムであって、表示装置と、移動する第1のRF(Radio Frequency)タグと非接触で交信する第1の交信装置と、続きを表示(全14行)前記第1のRFタグと非接触で交信する第2の交信装置とを備え、前記第1の交信装置と前記第2の交信装置とは、前記交信用の信号を繰り返し出力し、かつ前記交信用の信号に基づき前記第1のRFタグから送信される第1の信号の受信レベルを測定し、前記RFIDシステムは、予め定められた測定期間において前記第1の交信装置で受信された前記第1の信号の受信レベルを表す第1の時系列データと、前記測定期間において前記第2の交信装置で受信された前記第1の信号の受信レベルを表す第2の時系列データとを記憶する記憶手段と、前記第1の時系列データおよび前記第2の時系列データにおいて、前記測定期間の開始時刻からの経過時間が対応している前記第1の交信装置での前記第1の信号の受信レベルと前記第2の交信装置での前記第1の信号の受信レベルとのうちの高い方の受信レベルを、前記開始時刻からの経過時間毎に特定し、かつ特定された前記受信レベルを表す第3の時系列データを生成する生成手段と、前記第1の時系列データに基づく第1の画像と前記第2の時系列データに基づく第2の画像と前記第3の時系列データに基づく第3の画像とのうちの少なくとも1つを選択的に、または、前記第1の画像と前記第2の画像と前記第3の画像とを同時に、前記表示装置に表示させる表示制御手段とを備える、RFIDシステム。【請求項6】前記表示制御手段は、前記第1のRFタグを含む複数のRFタグのうち前記測定期間において前記第1の交信装置によって読み取られたRFタグの個数の時間的推移を表した第1の棒グラフと、前記複数のRFタグのうち前記測定期間において前記第2の交信装置によって読み取られたRFタグの個数の時間的推移を表した第2の棒グラフとのうちの少なくとも1つを選択的に、または、前記第1の棒グラフと前記第2の棒グラフとを同時に、前記表示装置に表示させる、請求項1から5のいずれか1項に記載のRFIDシステム。【請求項7】前記表示制御手段は、前記複数のRFタグのうち前記測定期間において前記第1の交信装置と前記第2の交信装置との両方によって読み取られたRFタグの個数の時間的推移を表した第3の棒グラフを、前記表示装置にさらに表示させる、請求項6に記載のRFIDシステム。」
本件補正後の請求項2に係る発明は、本件補正前の請求項1に係る発明を引用する本件補正前の請求項6に係る発明を引用する本件補正前の請求項7に係る発明を独立形式に書き改めるものであり、本件補正後の請求項2に係る発明に係る補正事項(以下、「補正事項2」という。)は、請求項の削除を目的とするものと認められる。
そして、補正事項2は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1、6及び7に記載されているから、当該補正は新規事項を追加するものではない。
3 独立特許要件に関して
本件補正後の請求項1~9は、以下、第4~第6に示すように、独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願請求項1~9に係る発明(以下、「本願発明1」~「本願発明9」という。)は、令和3年9月22日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1~9に記載された、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】RFID(RadioFrequencyIdentification)システムであって、表示装置と、移動する第1のRF(RadioFrequency)タグと非接触で交信する第1の交信装置と、続きを表示(全47行)前記第1のRFタグと非接触で交信する第2の交信装置とを備え、前記第1の交信装置と前記第2の交信装置とは、前記交信用の信号を繰り返し出力し、かつ前記交信用の信号に基づき前記第1のRFタグから送信される第1の信号の受信レベルを測定し、前記RFIDシステムは、予め定められた測定期間において前記第1の交信装置で受信された前記第1の信号の受信レベルを表す第1の時系列データと、前記測定期間において前記第2の交信装置で受信された前記第1の信号の受信レベルを表す第2の時系列データとを記憶する記憶手段と、 前記第1の時系列データおよび前記第2の時系列データにおいて、前記測定期間の開始時刻からの経過時間が対応している前記第1の交信装置での前記第1の信号の受信レベルと前記第2の交信装置での前記第1の信号の受信レベルとのうちの高い方の受信レベルを、前記開始時刻からの経過時間毎に特定し、かつ特定された前記受信レベルを表す第3の時系列データを生成する生成手段と、前記第1の時系列データに基づく第1の画像と前記第2の時系列データに基づく第2の画像と前記第3の時系列データに基づく第3の画像とのうちの少なくとも1つを選択的に、または、前記第1の画像と前記第2の画像と前記第3の画像とを同時に、前記表示装置に表示させる表示制御手段とを備え、前記第3の画像は、時間を示す座標軸と、受信レベルを示す座標軸と、グラフ要素としての前記第3の時系列データと、を含むグラフである、RFIDシステム。【請求項2】RFID(RadioFrequencyIdentification)システムであって、表示装置と、移動する第1のRF(RadioFrequency)タグと非接触で交信する第1の交信装置と、前記第1のRFタグと非接触で交信する第2の交信装置とを備え、前記第1の交信装置と前記第2の交信装置とは、前記交信用の信号を繰り返し出力し、かつ前記交信用の信号に基づき前記第1のRFタグから送信される第1の信号の受信レベルを測定し、前記RFIDシステムは、予め定められた測定期間において前記第1の交信装置で受信された前記第1の信号の受信レベルを表す第1の時系列データと、前記測定期間において前記第2の交信装置で受信された前記第1の信号の受信レベルを表す第2の時系列データとを記憶する記憶手段と、 前記第1の時系列データおよび前記第2の時系列データにおいて、前記測定期間の開始時刻からの経過時間が対応している前記第1の交信装置での前記第1の信号の受信レベルと前記第2の交信装置での前記第1の信号の受信レベルとのうちの高い方の受信レベルを、前記開始時刻からの経過時間毎に特定し、かつ特定された前記受信レベルを表す第3の時系列データを生成する生成手段と、前記第1の時系列データに基づく第1の画像と前記第2の時系列データに基づく第2の画像と前記第3の時系列データに基づく第3の画像とのうちの少なくとも1つを選択的に、または、前記第1の画像と前記第2の画像と前記第3の画像とを同時に、前記表示装置に表示させる表示制御手段とを備え、前記表示制御手段は、前記第1のRFタグを含む複数のRFタグのうち前記測定期間において前記第1の交信装置によって読み取られたRFタグの個数の時間的推移を表した第1の棒グラフと、前記複数のRFタグのうち前記測定期間において前記第2の交信装置によって読み取られたRFタグの個数の時間的推移を表した第2の棒グラフとのうちの少なくとも1つを選択的に、または、前記第1の棒グラフと前記第2の棒グラフとを同時に、前記表示装置に表示させ、前記複数のRFタグのうち前記測定期間において前記第1の交信装置と前記第2の交信装置との両方によって読み取られたRFタグの個数の時間的推移を表した第3の棒グラフを、前記表示装置にさらに表示させる、RFIDシステム。【請求項3】前記第1の画像は、前記第1の時系列データをグラフ要素として含む第1のグラフであり、前記第2の画像は、前記第2の時系列データをグラフ要素として含む第2のグラフであり、前記第3の画像は、前記第3の時系列データをグラフ要素として含む第3のグラフである、請求項1または2に記載のRFIDシステム。【請求項4】前記表示制御手段は、前記第1のグラフ、前記第2のグラフ、および前記第3のグラフのうちの少なくとも1つを選択的に表示させるためのユーザ操作を受け付けるユーザインターフェイスを前記表示装置に表示させる、請求項3に記載のRFIDシステム。【請求項5】前記第1の交信装置および前記第2の交信装置は、前記第1のRFタグと同時に移動する第2のRFタグと非接触で交信し、前記第1の交信装置と前記第2の交信装置とは、前記交信用の信号の繰り返し出力によって、前記第2のRFタグから送信される第2の信号の受信レベルをさらに測定し、前記記憶手段は、前記測定期間において前記第1の交信装置で受信された前記第2の信号の受信レベルを表す第4の時系列データと、前記測定期間において前記第2の交信装置で受信された前記第2の信号の受信レベルを表す第5の時系列データとをさらに記憶し、 前記表示制御手段は、前記第1の画像として、前記第1の時系列データと前記第4の時系列データとの各々をグラフ要素として含むグラフを表示し、前記第2の画像として、前記第2の時系列データと前記第5の時系列データとの各々をグラフ要素として含むグラフを表示する、請求項1または2に記載のRFIDシステム。【請求項6】前記生成手段は、前記第4の時系列データおよび前記第5の時系列データにおいて、前記測定期間の開始時刻からの経過時間が対応している前記第1の交信装置での前記第2の信号の受信レベルと前記第2の交信装置での前記第2の信号の受信レベルとのうち、高い方の受信レベルを前記開始時刻からの経過時間毎に特定し、かつ特定された前記受信レベルを表す第6の時系列データをさらに生成し、前記表示制御手段は、前記第3の画像として、前記第3の時系列データと前記第6の時系列データとの各々をグラフ要素としてグラフを表示する、請求項5に記載のRFIDシステム。【請求項7】前記表示制御手段は、前記測定期間において前記第1の交信装置と前記第2の交信装置との両方が前記第1のRFタグと交信した場合、当該交信のときの受信レベルの最大値を、前記表示装置にさらに表示させる、請求項2に記載のRFIDシステム。【請求項8】前記表示制御手段は、前記測定期間における前記第1の交信装置と前記第1のRFタグとの間の交信回数の時間的推移を表した第1の棒グラフと、前記測定期間における前記第2の交信装置と前記第1のRFタグとの間の交信回数の時間的推移を表した第2のグラフとのうちの少なくとも1つを選択的に、または、前記第1の棒グラフと前記第2の棒グラフとを同時に、前記表示装置に表示させる、請求項1に記載のRFIDシステム。【請求項9】移動するRF(RadioFrequency)タグと非接触で交信する第1の交信装置と、前記RFタグと非接触で交信する第2の交信装置とを備えたRFID(RadioFrequencyIdentification)システムにおける情報処理方法であって、予め定められた測定期間において前記第1の交信装置で受信された信号の受信レベルを表す第1の時系列データと、前記測定期間において前記第2の交信装置で受信された信号の受信レベルを表す第2の時系列データとを記憶するステップと、前記第1の時系列データおよび前記第2の時系列データにおいて、前記測定期間の開始時刻からの経過時間が対応している前記第1の交信装置での信号の受信レベルと前記第2の交信装置での信号の受信レベルとのうちの高い方の受信レベルを、前記開始時刻からの経過時間毎に特定し、かつ特定された前記受信レベルを表す第3の時系列データを生成するステップと、前記第1の時系列データに基づく第1の画像と前記第2の時系列データに基づく第2の画像と前記第3の時系列データに基づく第3の画像とのうちの少なくとも1つを選択的に、または、前記第1の画像と前記第2の画像と前記第3の画像とを同時に、表示装置に表示させるステップとを備え、前記第3の画像は、時間を示す座標軸と、受信レベルを示す座標軸と、グラフ要素としての前記第3の時系列データと、を含むグラフである、情報処理方法。」
第5 引用例
1 引用例1に記載された事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に既に公知である、特開2011-1132号公報(平成23年1月6日公開。以下、これを「引用例1」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)
A 「【0025】図3は本発明の無線IDタグシステムの基本的な機器構成例を示す。この無線IDタグシステムは、1つのゲートに対するものであってリーダライタ制御装置10を中核として、ヒューマンインターフェースをとるための情報端末20と、RFIDリーダ/ライタ(以下、リーダライタと記す)31と、アンテナ32と、センサ33とで構成されている。…中略…【0028】続きを表示(全11行)図4は図3に示した機器構成に対する機能ブロックを示す。図4にはリーダライタ制御装置10の詳細が示されており、メインコントローラ11、情報端末インターフェース部12、リーダライタ制御部13、センサ制御部14、フィルタリング処理部15、リーダライタインターフェース部16、センサインターフェース部17、全データ記憶部18、個別データ記憶部19、基準信号強度記憶部1A、タグ通過順序判定部1Bおよびタグ通過順序記憶部1Cで構成されている。【0029】メインコントローラ11はリーダライタ制御装置10の全体的な制御を行い、情報端末インターフェース部12は情報端末20、リーダライタインターフェース部16はリーダライタ31、センサインターフェース部17はセンサ33それぞれとの間のインターフェースをとる。【0030】センサ制御部14は、センサインターフェース部17を介してセンサ33から監視信号を受け、センサオン時には、メインコントローラ11はフィルタリング処理部15とタグ通過順序判定部1Bをイネーブル化し、さらにリーダライタ制御部13を介してリーダライタ31をイネーブル化する。センサオフ時には、メインコントローラ11はフィルタリング処理部15とタグ通過順序判定部1Bをディセーブル化し、さらにリーダライタ制御部13を介してリーダライタ31をディセーブル化する。【0031】リーダライタ制御部13は、リーダライタインターフェース部16を介して、読取指令によりリーダライタ31にアンテナ32から一定周期で繰り返し問合せ信号を放射させ、また書込指令によりメインコントローラ11にアンテナ32が無線IDタグから受信したID情報等の全受信データ(後に詳細を示す)を全データ記憶部18へ書き込ませる。」
B 「【0034】上述の各テーブルは、無線IDタグシステムの、より現実的な構成例を示す図5と図6参照することにより理解できよう。図5は機器構成、図6は機能ブロックを示す。この無線IDタグシステムは、2つのゲートに対するものであって、ゲート毎に、リーダライタ31、41を備え、読取率を向上させるため、各リーダライタには図5では4つ、図6では2つのアンテナが接続されている。リーダライタテーブルはリーダライタ31、41毎に生成される。また、アンテナテーブルは、リーダライタ31の各アンテナ32、リーダライタ41のアンテナ42毎に生成される。そして、IDテーブルは、アンテナテーブルそれぞれについて、そこに含まれているID番号毎に生成される。なお、リーダライタ制御装置10は、図3および図4におけるものと異なるところがない。【0035】タグ通過順序判定部1Bは、個別データ記憶部19に書き込まれた不要タグ削除済みのデータからピークポイントを抽出し、そのピークポイントを時系列的に比較することで、所期の無線IDタグのゲート通過順序を判定し、その判定結果をタグ通過順序記憶部1Cに書き込む。ここで、ピークポイントとは、無線IDタグごとの受信信号強度の時系列的変化曲線上で最大のピーク値を与える時刻をいう。【0036】この実施例での判定処理は、ゲート通過待機中であったり、途中で引き返したりして、未だゲートを通過せず、ゲート周辺で静止したり移動したりしている無線IDタグからの応答信号をも読み取ることを想定し、そのような不要な無線IDタグのID情報を削除した上で、正しくゲートを通過した無線IDタグの通過順序を正確に判定するものである。そのため、読み取った無線IDタグの受信信号強度を受信時刻と共に採取して受信信号強度の時系列的な変化を計算し、その変化の様相から所期の無線IDタグ(被対象無線IDタグ)と不要な無線IDタグを識別し、かつ、所期の無線IDタグの受信信号強度の時系列的な変化曲線のピークポイントを抽出することでゲートを通過した所期の無線IDタグの通過順序を判別する。」
C 「[図:0001385058000001.jpg]図3」
D 「[図:0001385058000002.jpg]図5」
以上、上記記載事項A~Dから、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「リーダライタ制御装置10を中核として、ヒューマンインターフェースをとるための情報端末20と、リーダライタ31と、アンテナ32と、センサ33とで構成される無線IDタグシステムであって、(【0025】、図3)リーダライタ制御装置10は、メインコントローラ11、リーダライタ制御部13、全データ記憶部18を有し、(【0028】)リーダライタ制御部13は、読取指令によりリーダライタ31にアンテナ32から一定周期で繰り返し問合せ信号を放射させ、また書込指令によりメインコントローラ11にアンテナ32が無線IDタグから受信したID情報等の全受信データを全データ記憶部18へ書き込ませ、(【0031】)ゲート毎に、リーダライタ31,41を備え、(【0034】、図5)読み取った無線IDタグの受信信号強度を受信時刻と共に採取して受信信号強度の時系列的な変化を計算し、所期の無線IDタグの受信信号強度の時系列的な変化曲線のピークポイントを抽出する(【0036】)無線IDタグシステム。」
2 引用例2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に既に公知である、特開2013-192172号公報(平成25年9月26日公開。以下、これを「引用例2」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。
A 「【0049】図9は、図8の構成を用いて、受信アンテナ34を手動で切り替えたときの水平偏波H(図中点線)と、垂直偏波V(図中二点鎖線)と、それらを合成して最も受信レベルの高い状態の、それぞれの場合の、交信距離(横軸)とRFIDリーダライタ40の受信レベル(dB)との関係を示すグラフである。なお、図中には、参考までに、円偏波CIR(図中一点鎖線)の場合も示している。」
B 「[図:0001385058000003.jpg]図9」
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「無線IDタグ」は、本願発明1の「第1のRFタグ」に相当し、引用発明の「無線IDタグシステム」は、本願発明1の「RFIDシステム」に相当するから、引用発明と本願発明1とは、“RFID(RadioFrequencyIdentification)システム”である点で一致する。
イ 引用発明の「リーダライタ31」は、「移動する第1のRF(RadioFrequency)タグと非接触で交信する第1の交信装置」に相当し、「ゲート毎に」備えられる「リーダライタ…41」は、本願発明1の「第1のRFタグと非接触で交信する第2の交信装置」に相当するから、引用発明と本願発明1とは、“移動する第1のRF(RadioFrequency)タグと非接触で交信する第1の交信装置”と、“前記第1のRFタグと非接触で交信する第2の交信装置”とを備える点で一致する。
ウ 引用発明の「リーダライタ制御部13」は、「リーダライタ31にアンテナ32から一定周期で繰り返し問合せ信号を放射させ」ると共に、「アンテナ32」が「無線IDタグから…ID情報等」を「受信」することから、上記アの認定を踏まえると、当該「リーダライタ31」側からみれば、“前記交信用の信号を繰り返し出力”すると共に、“前記交信用の信号に基づき前記第1のRFタグ”から“第1の信号”を“受信”しているといえる。
また、引用発明は、「読み取った無線IDタグの受信信号強度を受信時刻と共に採取して受信信号強度の時系列的な変化を計算」するものでもあることから、“第1の信号の受信レベルを測定”しているともいえ、上記イの認定も踏まえ、以上を総合すると、引用発明と本願発明1とは、“前記第1の交信装置と前記第2の交信装置とは、前記交信用の信号を繰り返し出力し、かつ前記交信用の信号に基づき前記第1のRFタグから送信される第1の信号の受信レベルを測定”する点で一致する。
エ 引用発明の「リーダライタ制御部13」は、「書込指令によりメインコントローラ11にアンテナ32が無線IDタグから受信したID情報等の全受信データを全データ記憶部18へ書き込ませ」るものであり、また、「読み取った無線IDタグの受信信号強度を受信時刻と共に採取して受信信号強度の時系列的な変化を計算し、所期の無線IDタグの受信信号強度の時系列的な変化曲線のピークポイントを抽出する」ものでもあることから、上記ウの認定を踏まえると、引用発明の「無線IDタグから受信したID情報等の全受信データ」は、所定の測定期間における、“第1の交信装置で受信された前記第1の信号の受信レベルを表す第1の時系列データ”であると共に、“第2の交信装置で受信された前記第1の信号の受信レベルを表す第2の時系列データ”であるといえる。
そして、引用発明の「全データ記憶部18」は、本願発明1の「記憶手段」に相当するから、以上を総合して、引用発明と本願発明1とは、“RFIDシステム”が、“予め定められた測定期間において前記第1の交信装置で受信された前記第1の信号の受信レベルを表す第1の時系列データと、前記測定期間において前記第2の交信装置で受信された前記第1の信号の受信レベルを表す第2の時系列データとを記憶する記憶手段”を備える点で一致する。
オ 以上、ア~エの検討から、引用発明と本願発明1とは、次の一致点及び相違点を有する。
〈一致点〉
RFID(RadioFrequencyIdentification)システムであって、
移動する第1のRF(RadioFrequency)タグと非接触で交信する第1の交信装置と、
前記第1のRFタグと非接触で交信する第2の交信装置とを備え、
前記第1の交信装置と前記第2の交信装置とは、前記交信用の信号を繰り返し出力し、かつ前記交信用の信号に基づき前記第1のRFタグから送信される第1の信号の受信レベルを測定し、
前記RFIDシステムは、
予め定められた測定期間において前記第1の交信装置で受信された前記第1の信号の受信レベルを表す第1の時系列データと、前記測定期間において前記第2の交信装置で受信された前記第1の信号の受信レベルを表す第2の時系列データとを記憶する記憶手段を備える、RFIDシステム。
〈相違点1〉
本願発明1が、「表示装置」を備えると共に、「前記第1の時系列データおよび前記第2の時系列データにおいて、前記測定期間の開始時刻からの経過時間が対応している前記第1の交信装置での前記第1の信号の受信レベルと前記第2の交信装置での前記第1の信号の受信レベルとのうちの高い方の受信レベルを、前記開始時刻からの経過時間毎に特定し、かつ特定された前記受信レベルを表す第3の時系列データを生成する生成手段」及び「前記第1の時系列データに基づく第1の画像と前記第2の時系列データに基づく第2の画像と前記第3の時系列データに基づく第3の画像とのうちの少なくとも1つを選択的に、または、前記第1の画像と前記第2の画像と前記第3の画像とを同時に、前記表示装置に表示させる表示制御手段」を備えるのに対し、引用発明は、表示手段を有することが特定されておらず、第1画像ないし第3画像に相当する画像を表示手段に表示することが特定されていない点。
〈相違点2〉
本願発明1の「前記第3の画像は、時間を示す座標軸と、受信レベルを示す座標軸と、グラフ要素としての前記第3の時系列データと、を含むグラフである」のに対し、引用発明は、グラフを表示するものではない点。
(2)相違点についての判断
相違点1について検討する。
本願発明は、RFIDシステムおよびRFIDシステムにおける情報処理方法に関し(【0001】)、従来、RF(Radio Frequency)タグを荷物に貼付し、RFタグとリーダライタ(交信装置)とが非接触で交信(無線通信)を行うことにより荷物管理を行うことがなされていて、たとえば、荷物入出庫口にリーダライタを設置しておけば、運搬される荷物に付されたRFタグから自動的にID(Identification)等のデータを読み取ることができ、このような構成によれば、物流業務の効率化を図れたことを背景とし(【0002】)、UHF帯のRFID(Radio Frequency Identification)システムでは、複数のRFタグを一括に読み取るアプリケーションにおいて、ゲートと呼ばれる複数のリーダライタを連結させた構成が用いられるのが一般的であり、たとえば、入出荷検品または在庫管理業務において、荷台(パレット)上の複数の梱包箱に貼付されたUHF帯RFタグを一括で読み取る場合があり(【0008】)、このように複数のリーダライタを設置する場合、リーダライタ同士の離間距離、リーダライタの設置高さなどを事前に検討し、さらに、各リーダライタで読み取り可能な範囲(交信領域)を設計し、事前にテストすることが重要となり、このテストでは、どのアンテナがどのRFタグを何個読み取っているか、RFタグからの受信レベルや読み取り率(精度)等を測定し、リーダライタの設置位置を調整するものの、このようなリーダライタの設置位置を調整することについては、従来技術としては提示されていなかったことを課題とし(【0009】)、RFタグからの受信レベルを利用して、複数の交信装置を好適な位置に設置することをサポート可能なRFIDシステムおよび情報処理方法を提供することを目的としてなされたものと認められる。(【0010】)。
一方、引用発明は、「リーダライタ制御部13」が「読取指令によりリーダライタ31にアンテナ32から一定周期で繰り返し問合せ信号を放射させ、また書込指令によりメインコントローラ11にアンテナ32が無線IDタグから受信したID情報等の全受信データを全データ記憶部18へ書き込ませ」たり、「読み取った無線IDタグの受信信号強度を受信時刻と共に採取して受信信号強度の時系列的な変化を計算し、所期の無線IDタグの受信信号強度の時系列的な変化曲線のピークポイントを抽出」したりはするものの、当該「リーダライタ31」の設置位置を調整するために、所定の表示装置に、本願発明1の「第1の時系列データ」や「第2の時系列データ」に対応する、「読み取った無線IDタグの受信信号強度」などを表示するものではなく、単に当該「受信信号強度」を「受信時刻と共に採取して受信信号強度の時系列的な変化を計算し、所期の無線IDタグの受信信号強度の時系列的な変化曲線のピークポイントを抽出」するに過ぎない引用発明からは、当業者といえども上記相違点1に係る構成を導き出すことが容易とまではいえず、また、上記相違点1に係る構成は、本願の出願前に周知な構成ともいえない。
さらに、上記第5に示した、引用例2に記載された技術的事項をもってしても、上記相違点1に係る構成を見いだすことはできず、したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
2 本願発明2について
本願発明2も、上記1(1)の相違点1に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
3 本願発明3~8について
本願発明3~8は、本願発明1又は2を直接または間接的に引用するものであり、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
4 本願発明9について
本願発明9は、概ね本願発明1とカテゴリーのみが異なる発明であり、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定について
<特許法29条2項について>
本願発明1~9は、上記第6 1(1)の相違点1に係る構成を有するものであり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1及び2(上記第5の引用例1及び2)に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-012723