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特許拒絶査定不服審判

2021-010450

リンクの電力状態をコントロールするための方法および装置

審判番号
2021-010450
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-533452
請求日
2021年08月05日
審決日
2022年05月10日
公報発行日
2022年06月24日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
  • 【請求人】インテル コーポレイション
  • 【請求人代理人】伊東 忠重
  • 【請求人代理人】伊東 忠彦
  • 【請求人代理人】宮崎 修
審判長/審判官
  • 審判長 篠原 功一
  • 審判官 林 毅
  • 審判官 新田 亮
分類
P18 .55 -WY (G06F) / P18 .537-WY (G06F) / P18 .113-WY (G06F) / P18 .121-WY (G06F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-533452「リンクの電力状態をコントロールするための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月30日国際公開、WO2016/105731、平成30年 1月18日国内公表、特表2018-501576、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2015年(平成27年)11月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年12月24日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和元年11月28日付け:拒絶理由通知書 令和2年 3月 3日 :意見書、手続補正書の提出 令和2年 9月 8日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書 令和2年12月14日 :意見書、手続補正書の提出 令和3年 3月24日付け:令和2年12月14日付け手続補正書でした 補正の却下の決定 拒絶査定(原査定) 令和3年 8月 5日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定(令和3年3月24日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 [理由1]新規事項 令和2年3月3日付け手続補正書でした補正は、以下の点で国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては、当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、翻訳文等という。)(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあっては、翻訳文等又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法第184条の12第2項参照)。 請求項1について「前記少なくとも一つのコンポーネントのアイドル状態を判断すること」及び「前記少なくとも一つのコンポーネントの判断されたアイドル状態だけに基づいて、前記リンクの電源オフ状態を決定する」との事項を追加する補正は、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものでない。 翻訳文等には、少なくとも一つのコンポーネントがアクティブ状態であれば、リンクの電源オン状態を決定することが記載されている。 一方で、翻訳文等には、少なくとも一つのコンポーネントがアイドル状態である場合に、リンクの電源オフ状態を決定することは記載されていない。翻訳文等には、少なくとも一つのコンポーネントがアイドル状態であっても、少なくとも一つのコンポーネントがアクティブ状態であるときには、リンクの電源オフ状態を決定するのではなく、リンクの電源オン状態を決定することが記載されている。 [理由2]明確性要件 この出願は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 請求項1の「前記少なくとも一つのコンポーネントの判断されたアイドル状態だけに基づいて、前記リンクの電源オフ状態を決定する」との記載において、「だけ」との記載によりどのような事項を特定するのか不明であるから、請求項1に係る発明は、明確ではない。 請求項2ないし17に係る発明についても同様である。 なお、令和2年9月8日付けの拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書には、「●付記」の欄に、次の拒絶理由について付記されている。(なお、新規性に係る拒絶理由を「付記理由1」、進歩性に係る拒絶理由を「付記理由2」ということとする。) [付記理由1]新規性 本願請求項1ないし17に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 [付記理由2]進歩性 本願請求項1ないし17に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2011-175555号公報 第3 本願発明 本願請求項1ないし13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明13」という。)は、令和3年8月5日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定される発明であり、このうち本願発明1は、以下のとおりの発明である。 「 リンクをコントロールする方法であって、 前記リンクに対して接続されている第1デバイスに係る少なくとも一つのコンポーネントの状態を判断するステップであり、 前記状態を判断するステップは、前記少なくとも一つのコンポーネントのアイドル状態を判断すること、および、前記少なくとも一つのコンポーネントの非アイドル状態を判断することのうち少なくとも一つを含む、 ステップと、 前記第1デバイスにおいて、前記リンクに対して接続されている第2デバイスから所定のリンク状態に対する要求を受信するステップと、 前記所定のリンク状態に対する要求の受信に応じて、前記少なくとも一つのコンポーネントの判断されたアイドル状態に基づいて、前記リンクの電源オフ状態を決定するステップと、 前記所定のリンク状態に対する要求の受信に応じて、前記少なくとも一つのコンポーネントの判断された非アイドル状態に基づいて、前記リンクの電源オン状態を決定するステップと、 を含み、 前記非アイドル状態を判断するステップは、前記第1デバイスに係る少なくとも一つのコンポーネントのアクティブ状態を判断するステップ、を含む、 方法。」 なお、本願発明2及び3は、本願発明1を減縮するものであり、本願発明4ないし6はそれぞれ、本願発明1ないし3の各々を「システム」の発明として特定したものであり、本願発明7ないし9はそれぞれ、本願発明1ないし3の各々を「電子装置」の発明として特定したものであり、本願発明10ないし12はそれぞれ、本願発明1ないし3の各々を「コンピュータプログラム」の発明として特定したものであり、本願発明13は、本願発明10ないし12のいずれか1つを「コンピュータ読取り可能な記録媒体」として特定したものである。 第4 原査定の拒絶の理由についての判断 1 理由1(新規事項)について 前記理由1(新規事項)は、「前記リンクの電源オフ状態を決定する」処理の前提条件となる「第1デバイス」に係る「非アイドル状態」が、「第1デバイス」に係る「少なくとも一つのコンポーネントの非アイドル状態」であることが、翻訳文等には記載されていないことを趣旨とするものと認められる。 そこで、翻訳文等の記載について検討するに、明細書の翻訳文には、特に「コンポーネント」と「アイドル状態」との関係に関して、次の記載がある。(なお、下線は、強調のため、当審が付与した。) 「 【0060】 グローバルアイドル状態は、特定のシステム(または、プラットフォーム)に基づいて予め決定されてよい。グローバルアイドル状態は、一つまたはそれ以上のプラットフォームリソースが同時にアイドルである(または、同時のアイドル状態にある)ときであってよい。一つの例として、グローバルアイドル状態は、プラットフォームの全てのコアが同時にアイドルであるとき、全てのコアとメモリが同時にアイドルである(または、同時のアイドル状態にある)とき、及び/又は、全てのコア、メモリ、およびチップセットが同時にアイドルである(または、同時のアイドル状態にある)ときに、発生し得る。グローバルアイドル状態に対する基準(criteria)は、システムごとに(または、プラットフォームごとに)変動してよい。 【0061】 図4に示されるように、オペレーション250においては、グローバルアイドル状態が提供され得る。これは、例えば、プロセッサ100のコアに対するアクティビティが停止された(または、アイドルである)ときに発生し得る。上述のように、グローバルアイドル状態は、他の基準に基づいて発生してよい。グローバルアイドル状態は、プロセッサ100(または、プラットフォーム)がアイドルであるときに発生し得る。 【0062】 リンクに対して結合されたプロセッサ100(または、第1デバイス)の状態が判断され得る。(プロセッサ100の)マイクロコントローラ120は、プロセッサ100がアイドル状態(または、非アクティブ)にあると判断し得る。一つの例として、マイクロコントローラ120は、プラットフォームがc-状態エントリ(パッケージc-状態エントリといったもの)についてレディ(ready)であると判断することができる。グローバルアイドル状態が判断されるとき、他の特定のアクションが提供され得る。 【0063】 オペレーション252においては、グローバルアイドル状態に基づいて、マイクロコントローラ120が、PCIeのL1状態の使用をイネーブル(許可)することができる。マイクロコントローラ120は、(プロセッサ100の)PCIeルートコンプレクスデバイス110に対してイネーブル情報(enabling information)を提供してよい。 【0064】 オペレーション253において、ダウンストリームデバイス125のうち一つは、PCIeのL1状態を要求することができる。例えば、ダウンストリームデバイス125のうち一つは、プロセッサ100に対してPCIe L1状態(または、PCIe L1状態要求)に対する要求を提供し得る。要求は、所定の時間量についてダウンストリームデバイス125がアイドルであると判断されるときに提供され得る。オペレーション253は、プロセッサ(リンクが取り付けられたプロセッサについて)、PCH(PCHが取り付けられたリンクについて)、等といった、アップストリームデバイスに対して要求を提供するPCIeデバイスに関する。プロセッサ(または、第1デバイス)は、ダウンストリーム(または、第2デバイス)からの特定のリンク状態に対する要求を受け取ってよい。 【0065】 オペレーション254において、アップストリームコンポーネントは(ダウンストリームデバイス125によって送信された)PCIeのL1状態要求を許可することができる。例えば、PCIeルートコンプレクスデバイス110は、グローバルアイドル状態が存在してから、(ダウンストリームデバイス125のうち一つからの)L1状態要求を許可(付与)することができる。」 「 【0074】 図5のリンク電力管理オペレーションは、もはやグローバルアイドル状態にはない(つまり、プロセッサがアクティブ状態にある)プロセッサ100(または、第1デバイス)に関する。 【0075】 図5に示されるように、オペレーション300においては、割り込み条件が提供され得る。このことは、例えば、プロセッサ100に係る少なくとも一つのコアについてアクティビティが発生するときに起こり得る。一つの例として、プロセッサに対して割り込み信号が提供されてよく、イベントが発生して処理される必要があることを示している。割り込みは、プロセッサによって受信されてよく、そして、少なくとも一つのコアをウェイクアップさせることができる(つまり、アイドルからアクティブ状態への移行)。割り込みは、ネットワークコントローラ、ストレージコントローラ、等によって生成されてよい。グローバルアイドル状態の欠如は、プロセッサ100(または、プラットフォーム)がアクティブである(少なくとも一つのコアがアクティブ状態にある、といった)ときに、発生し得る。」 上記の特に【0062】ないし【0065】の記載によれば、明細書の翻訳文には、「プロセッサ100」(第1デバイス)が、自身が「グローバルアイドル状態」(アイドル状態)であると判断し、「ダウンストリームデバイス125」(第2デバイス)からの「L1状態要求」(所定のリンク状態に対する要求)を受信した場合に、前記「グローバルアイドル状態」であると判断したことに基づいて、前記「L1状態要求」(所定のリンク状態に対する要求)を許可(決定)することが記載されているといえる。 そして、明細書の翻訳文の【0060】の第2文には、「グローバルアイドル状態は、一つまたはそれ以上のプラットフォームリソースが同時にアイドルである(または、同時のアイドル状態にある)ときであってよい」と記載されていることからすれば、「プロセッサ100」(第1デバイス)の「グローバルアイドル状態」(アイドル状態)は、「プロセッサ100」(第1デバイス)における複数の「プラットフォームリソース」のうち「少なくとも一つ」がアイドルな状態であれば足りる。そして「プラットフォームリソース」は、「コンポーネント」といい得るものであるから、明細書の翻訳文には、「グローバルアイドル状態」とは、「少なくとも一つのコンポーネント」が「アイドル状態」であることが記載されているといえる。 そうすると、明細書の翻訳文には、「前記リンクの電源オフ状態を決定する」処理の前提条件となる「第1デバイス」に係る「非アイドル状態」が、「第1デバイス」に係る「少なくとも一つのコンポーネントの非アイドル状態」であることが、記載されているといえる。 なお、明細書の翻訳文の【0060】には、「一つの例として、グローバルアイドル状態は、プラットフォームの全てのコアが同時にアイドルであるとき、全てのコアとメモリが同時にアイドルである(または、同時のアイドル状態にある)とき、及び/又は、全てのコア、メモリ、およびチップセットが同時にアイドルである(または、同時のアイドル状態にある)ときに、発生し得る。」と記載されているが、明細書の翻訳文には、他の段落及び図面の記載を参酌しても、「プラットフォーム」(第1デバイス)が備えるすべてのプラットフォームリソース(コンポーネント)が明示されているわけではなく、【0060】に記載の「全てのコア」、「全てのコアとメモリ」及び「全てのコア、メモリ、およびチップセット」の各々が、「プラットフォーム」(第1デバイス)が備える全てのプラットフォームリソース(コンポーネント)であると直ちにいうことはできず、仮にそうであるとしても、「一つの例」としての上記記載をもって、同【0060】の第2文に記載の「一つまたはそれ以上のプラットフォームリソース」から、「少なくとも一つのコンポーネント」が除外されるということにはならない。 また、明細書の翻訳文には、【0075】に「グローバルアイドル状態の欠如は、プロセッサ100(または、プラットフォーム)がアクティブである(少なくとも一つのコアがアクティブ状態にある」と記載されているが、当該記載は、「少なくとも一つのコア」がアクティブ状態(非アイドル状態)にある場合に、「グローバルアイドル状態」ではないと判断することを示しているといえるが、この記載から直ちに、前記「少なくとも一つのコア」が「アイドル状態」にある場合に、「グローバルアイドル状態」であると判断しないことにはならない。(むしろ、予め定められた「少なくとも一つのコア」のみの状態に着目して「グローバルアイドル状態」であるか否かを判断すること、すなわち、前記「少なくとも一つのコア」が「非アイドル状態」である場合に「グローバルアイドル状態」ではないと判断し、逆に、前記「少なくとも一つのコア」が「アイドル状態」である場合に「グローバルアイドル状態」であると判断することも含む。) よって、本願発明1において、「第1デバイス」に係る「非アイドル状態」が、「第1デバイス」に係る「少なくとも一つのコンポーネントの非アイドル状態」であることは、翻訳文等に記載された事項の範囲のものである。 本願発明1の他の構成についても同様であるから、本願発明1は、翻訳文等に記載された事項の範囲のものである。 本願発明2ないし13についても同様である。 以上より、令和3年8月5日に提出された手続補正書に係る手続補正(以下、「本件補正」という。)は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。 よって、理由1(新規事項)を維持することはできない。 2 理由2(明確性)について 本件補正により、本件補正前の請求項1、7及び10に記載されていた「アイドル状態だけに基づいて」は、「アイドル状態に基づいて」に補正された。 よって、理由2(明確性)は、解消した。 第5 付記理由1(新規性)及び付記理由2(進歩性)について 念のため、付記理由1(新規性)及び付記理由2(進歩性)によって本願を拒絶することができるか否かについて検討する。 1 引用文献、引用発明等 (1)引用文献1について 付記理由1及び付記理由2に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、強調のため、当審が付与した。以降も同様。) 「【0024】 [PCI Expressの通信方式] 次に、PCI Expressによる通信方式を説明する。 図3には、PCI Expressにより通信する第1コンポーネント31と第2コンポーネント32とが図示されている。 第1コンポーネント31は、図1および図2の例においてたとえばホスト機器としてのカメラ装置2に対応する。 第2コンポーネント32は、メモリカード1のカードインタフェース部11に対応する。」 「【0029】 図4は、PCI Expressによるデータ伝送のために図3の2つのコンポーネント31、32に実現される通信プロトコルの説明図である。 図4には、第1コンポーネント31に実現される機能として、ソフトウェア層33、トランザクション層34、データリンク層35、物理層36、メカニカル層37が記載されている。 また、第2コンポーネント32にも、ソフトウェア層33、トランザクション層34、データリンク層35、物理層36、メカニカル層37が実現される。」 「【0037】 [PCI Expressの電源管理] 図6は、図3の各コンポーネントの動作状態の遷移図である。 PCI Expressのコンポーネントの動作状態には、たとえばL0ステート、L0sステート、L1ステートがある。 PCI Expressにより通信するコンポーネント31、32は、ASPM(Active State Power Management)により動作状態を切り替える。 【0038】 L0ステートは、データ通信を実行可能な通信可能状態である。 L0sステート、およびL1ステートは、スタンバイ状態(休止状態)であり、L0sステートよりL1ステートのほうが深い休止状態である。 【0039】 L0sステートでは、複数のレーンによるコンポーネント間のリンクが電気的にアイドル状態になる。各コンポーネントにはクロック信号が入力され、SerDes回路のPLL回路などは給電されて動作している。 L0sステートからL0ステートへの復旧時間は、たとえば数百ナノ秒から数マイクロ秒である。 【0040】 L1ステートでは、コンポーネント間のリンクが電気的にアイドル状態になる。L1ステートでは、給電は停止しない。 L1ステートからL0ステートへの復旧時間は、たとえば数マイクロ秒から数十マイクロ秒である。 また、L1ステートからL0ステートへ復旧する場合、コンポーネントは、L1ステートからリカバリステートとなり、リカバリステートからL0ステートへ復旧する。」 「【0041】 [L0からL1への切り替え動作] そして、コンポーネント31、32は、パケットの受信状況などに応じて動作状態を制御する。 【0042】 図7は、ホスト機器(2)とメモリカード1との動作状態をL0からL1へ切り替える場合のシーケンスチャートの一例である。 L0からL1への状態切替では、メモリカード1のトランザクション層34は、新たなパケットの送信を停止し、データリンク層35は、L0からL1への状態切替を要求するリクエストを繰り返し送信する(ステップST1)。 切替要求を受信すると、ホスト機器(2)のデータリンク層35は、自己の通信状態に応じて、切り替え許可(ACK)または不可(NAK)を送信する(ステップST2)。 また、切り替え許可が送信される場合、トランザクション層34は、新たなパケットの送信を禁止する。 【0043】 切り替え許可を受信した場合、メモリカード1のデータリンク層35は停止し、物理層36は、エレクトリカル・アイドル・オーダードセットを送信する(ステップST3)。 ホスト機器(2)の物理層36は、エレクトリカル・アイドル・オーダードセットを受信すると、通信を停止する。 また、物理層36は、エレクトリカル・アイドル・オーダードセットを送信する(ステップST4)。 これにより、2つのコンポーネント31、32の動作状態は、L0からL1に切り替わる。 L1の休止状態では、物理層36、データリンク層35、トランザクション層34は停止する。」 (2)引用発明 引用文献1の【0024】の記載より、引用文献1には、「第1コンポーネント31と第2コンポーネント32」が「PCI Expressにより通信する」方法が記載されているといえる。 前記(1)より、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「 第1コンポーネント31と第2コンポーネント32がPCI Expressにより通信する方法であって、 第1コンポーネント31は、ホスト機器としてのカメラ装置2に対応し、第2コンポーネント32は、メモリカード1のカードインタフェース部11に対応し、 通信プロトコルの、 第1コンポーネント31に実現される通信プロトコルの機能として、ソフトウェア層33、トランザクション層34、データリンク層35、物理層36、メカニカル層37があり、 第2コンポーネント32にも、ソフトウェア層33、トランザクション層34、データリンク層35、物理層36、メカニカル層37が実現され、 PCI Expressのコンポーネントの動作状態には、L0ステート、L1ステートがあり、 L0ステートは、データ通信を実行可能な通信可能状態であり、 L1ステートでは、コンポーネント間のリンクが電気的にアイドル状態になり、 メモリカード1のデータリンク層35は、L0からL1への状態切替を要求するリクエストを繰り返し送信し、 切替要求を受信すると、ホスト機器(2)のデータリンク層35は、自己の通信状態に応じて、切り替え許可(ACK)または不可(NAK)を送信し、 2つのコンポーネント31、32の動作状態は、L0からL1に切り替わる、 方法。」 2 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「コンポーネント間のリンク」は、本願発明1の「リンク」に相当する。 また、引用発明の「L0ステート」及び「L1ステート」は、「PCI Express」により通信する2つの「コンポーネント」の「動作状態」であるとともに、2つの「コンポーネント」間の「リンク」の「動作状態」であるといえる。 そして、引用発明は、「L0」から「L1」に切り替わる(切り替える)制御を行うものであるから、「リンク」の動作状態を制御するものであるといえる。 よって、引用発明の「第1コンポーネント31と第2コンポーネント32がPCI Expressにより通信する方法」は、後述する相違点に係る構成を除いて、本願発明1の「リンクをコントロールする方法」に相当する。 イ 引用発明において、「ホスト機器(2)のデータリンク層35」は、「自己の通信状態に応じて、切り替え許可(ACK)または不可(NAK)を送信」する際に、「自己の通信状態」すなわち、「データリンク層35」の「通信状態」を判断する処理(ステップ)を実行しているといえる。 ここで、引用発明の「データリンク層35」は、「少なくとも一つのコンポーネント」といい得るものである。 また、引用発明において、「コンポーネント31」である「ホスト機器(2)」は、後述する相違点を除いて本願発明1の「第1デバイス」に相当する。 また、引用発明の「通信状態」は、本願発明1の「状態」に含まれる。 よって、引用発明における「コンポーネント31」(「ホスト機器(2)」)の機能である「データリンク層35」の「通信状態」と、本願発明1の「前記リンクに対して接続されている第1デバイスに係る少なくとも一つのコンポーネントの状態」とは、「第1デバイスに係る少なくとも一つのコンポーネントの状態」である点において共通する。 そうすると、引用発明において、「データリンク層35」の「通信状態」を判断する処理(ステップ)と、本願発明1の「前記リンクに対して接続されている第1デバイスに係る少なくとも一つのコンポーネントの状態を判断するステップ」とは、「第1デバイスに係る少なくとも一つのコンポーネントの状態を判断するステップ」である点において共通する。 ウ 引用発明において、「データリンク層35」の「通信状態」を判断する処理(ステップ)の結果として、「切り替え許可(ACK)」と「(切り替え)不可(NAK)」という2つの排他的情報を「送信」していることから、判断対象とされる「通信状態」には少なくとも2つの異なる「状態」が含まれるといえる。 ここで、便宜的に、「切り替え許可(ACK)」を「送信」する場合に判断される「通信状態」を「第1の状態」、「(切り替え)不可(NAK)」を「送信」する場合に判断される「通信状態」を「第2の状態」と称することとすると、引用発明における「データリンク層35」の「通信状態」を判断する処理(ステップ)は、「データリンク層35」の「第1の状態」を判断することと、「データリンク層35」の「第2の状態」を判断することのうち少なくとも一つを含むものといえる。 よって、引用発明の「データリンク層35」の「通信状態」を判断する処理(ステップ)と、本願発明1の「前記状態を判断するステップは、前記少なくとも一つのコンポーネントのアイドル状態を判断すること、および、前記少なくとも一つのコンポーネントの非アイドル状態を判断することのうち少なくとも一つを含む」とは、「前記状態を判断するステップは、前記少なくとも一つのコンポーネントの所定の第1の状態を判断すること、および、前記少なくとも一つのコンポーネントの所定の第2の状態を判断することのうち少なくとも一つを含む」点において共通する。 エ 引用発明において、「ホスト機器(2)」(の「データリンク層35」)は、「メモリカード1」(の「データリンク層35」)から「L0からL1への状態切替(を要求するリクエスト)」を「受信する」処理(ステップ)を実行しているといえる。 ここで、引用発明の「メモリカード1」は、後述する相違点を除いて本願発明1の「第2デバイス」に相当する。 また、引用発明の「L0からL1への状態切替」は、本願発明1の「所定のリンク状態に対する要求」に相当する。 よって、引用発明において、「ホスト機器(2)」(の「データリンク層35」)は、「メモリカード1」(の「データリンク層35」)から「L0からL1への状態切替(を要求するリクエスト)」を「受信する」処理(ステップ)と、本願発明1の「前記第1デバイスにおいて、前記リンクに対して接続されている第2デバイスから所定のリンク状態に対する要求を受信するステップ」とは、「前記第1デバイスにおいて、第2デバイスから所定のリンク状態に対する要求を受信するステップ」である点において共通する。 オ 引用発明において、「切り替え許可(ACK)」を「送信」することは、本願発明1の「前記リンクの電源オフ状態を決定する」ことに相当する。 よって、前記ウを参酌すれば、引用発明において、「L0からL1への状態切替」を受信することに応じて、「第1の状態」と判断された「データリンク層35」の「通信状態」に基づいて、「切り替え許可(ACK)」を「送信」する処理(ステップ)と、本願発明1の「前記所定のリンク状態に対する要求の受信に応じて、前記少なくとも一つのコンポーネントの判断されたアイドル状態に基づいて、前記リンクの電源オフ状態を決定するステップ」とは、「前記所定のリンク状態に対する要求の受信に応じて、前記少なくとも一つのコンポーネントの判断された所定の第1の状態に基づいて、前記リンクの電源オフ状態を決定するステップ」である点において共通する。 カ 引用発明において、「(切り替え)不可(NAK)」を「送信」することは、本願発明1の「前記リンクの電源オン状態を決定する」ことに相当する。 よって、前記ウを参酌すれば、引用発明において、「L0からL1への状態切替」を受信することに応じて、「第2の状態」と判断された「データリンク層35」の「通信状態」に基づいて、「(切り替え)不可(NAK)」を「送信」する処理(ステップ)と、本願発明1の「前記所定のリンク状態に対する要求の受信に応じて、前記少なくとも一つのコンポーネントの判断された非アイドル状態に基づいて、前記リンクの電源オン状態を決定するステップ」とは、「前記所定のリンク状態に対する要求の受信に応じて、前記少なくとも一つのコンポーネントの判断された所定の第2の状態に基づいて、前記リンクの電源オン状態を決定するステップ」である点において共通する。 キ 前記ウを参酌すれば、引用発明において、「切り替え許可(ACK)」を「送信」する場合に判断される「データリンク層35」の「通信状態」(「第1の状態」)と、本願発明1の「前記第1デバイスに係る少なくとも一つのコンポーネントのアクティブ状態」とは、「前記第1デバイスに係る少なくとも一つのコンポーネントの所定の第3の状態」である点において共通する。 よって、前記ウ及びカを参酌すれば、引用発明と、本願発明1の「前記非アイドル状態を判断するステップは、前記第1デバイスに係る少なくとも一つのコンポーネントのアクティブ状態を判断するステップ」とは、「前記所定の第2の状態を判断するステップは、前記第1デバイスに係る少なくとも一つのコンポーネントの所定の第3の状態を判断するステップ」との構成を備える点において共通する。 (2)一致点、相違点 前記(1)より、本願発明1と引用発明は、次の点において一致ないし相違する。 [一致点] 「 リンクをコントロールする方法であって、 第1デバイスに係る少なくとも一つのコンポーネントの状態を判断するステップであり、 前記状態を判断するステップは、前記少なくとも一つのコンポーネントの所定の第1の状態を判断すること、および、前記少なくとも一つのコンポーネントの所定の第2の状態を判断することのうち少なくとも一つを含む、 ステップと、 前記第1デバイスにおいて、第2デバイスから所定のリンク状態に対する要求を受信するステップと、 前記所定のリンク状態に対する要求の受信に応じて、前記少なくとも一つのコンポーネントの判断された所定の第1の状態に基づいて、前記リンクの電源オフ状態を決定するステップと、 前記所定のリンク状態に対する要求の受信に応じて、前記少なくとも一つのコンポーネントの判断された所定の第2の状態に基づいて、前記リンクの電源オン状態を決定するステップと、 を含み、 前記所定の第2の状態を判断するステップは、前記第1デバイスに係る少なくとも一つのコンポーネントの所定の第3の状態を判断するステップ、を含む、 方法。」 [相違点] <相違点1> 本願発明1は、「前記リンクに対して接続されている第1デバイスに係る少なくとも一つのコンポーネント」の状態を判断するのに対し、引用発明においては、「通信プロトコル」の機能の一部である「ホスト機器(2)」の「データリンク層35」の「通信状態」を判断する点。 <相違点2> 「第2デバイス」が、本願発明1においては、「前記リンクに対して接続されている第2デバイス」であり、「リンク」に接続され、「リンク」とは異なるものと規定しているのに対し、引用発明の「メモリカード1」は、「通信プロトコル」の機能の一部である「データリンク層35」を含む構成である点。 <相違点3> 「所定の第1の状態」が、本願発明1においては、「アイドル状態」であるのに対し、引用発明においては、どのような状態であるのか具体的に特定していない点。 <相違点4> 「所定の第2の状態」が、本願発明1においては、「非アイドル状態」であるのに対し、引用発明においては、どのような状態であるのか具体的に特定していない点。 <相違点5> 「所定の第3の状態」が、本願発明1においては、「アクティブ状態」であるのに対し、引用発明においては、どのような状態であるのか具体的に特定していない点。 (3)相違点についての判断 事案に鑑みて、上記相違点1について先に検討する。 引用発明において、「ホスト機器(2)」と「メモリカード1」とは、「通信プロトコル」の機能として、それぞれが、「ソフトウェア層33、トランザクション層34、データリンク層35、物理層36、メカニカル層37」を備え、これらは、通信における「リンク」を構成しているといえるから、機能的にみれば、本願発明1の「リンク」に属しているというべきものである。 そうすると、引用発明は、実質的には「リンク」の一部の機能である「データリンク層35」の「通信状態」に基づいて、「リンク」全体の状態を決定するというものであって、「リンク」に接続され、「リンク」とは異なる「デバイス」に係る「コンポーネント」の「状態」に基づいて、「リンク」の状態を決定するという相違点1に係る本願発明1の構成とは本質的に異なるものである。 また、相違点1に係る本願発明1の構成は、本願優先日前の周知技術であるとも認められない。 したがって、上記相違点2ないし5について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、少なくとも上記相違点1は、実質的な相違点であるから、本願発明1は、引用文献1に記載された発明に該当しない。 2 本願発明2及び3について 本願発明2及び3も、相違点1に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献1に記載された発明に該当せず、また、当業者が引用文献1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 本願発明4ないし6について 本願発明4ないし6のそれぞれは、本願発明1ないし3の各々に対応する「システム」の発明であり、相違点1に係る本願発明1の構成に対応する技術事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用文献1に記載された発明に該当せず、また、当業者が引用文献1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 4 本願発明7ないし9について 本願発明7ないし9のそれぞれは、本願発明1ないし3の各々に対応する「電子装置」の発明であり、相違点1に係る本願発明1の構成に対応する技術事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用文献1に記載された発明に該当せず、また、当業者が引用文献1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 5 本願発明10ないし13について 本願発明10ないし12のそれぞれは、本願発明1ないし3の各々に対応する「コンピュータプログラム」の発明であり、また、本願発明13は、本願発明10乃至12のいずれか1つを「コンピュータ読取り可能な記録媒体」とした発明であり、いずれも相違点1に係る本願発明1の構成に対応する技術事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用文献1に記載された発明に該当せず、また、当業者が引用文献1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 6 小括 よって、付記理由1及び付記理由2によって、本願を拒絶することはできない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-010450

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