2021-009080
積層体基板、導電性基板、積層体基板の製造方法、導電性基板の製造方法
- 審判番号
- 2021-009080
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-137717外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年07月07日
- 審決日
- 2022年02月28日
- 公報発行日
- 2022年04月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】住友金属鉱山株式会社
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 分類
- P18 .121-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 17項目
第1 手続の経緯
本願は、平成28年7月12日の出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
第2 原査定の概要
原査定(令和3年4月8日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1ないし14に係る発明は、以下の引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1 特開2013-129183号公報
引用文献2 特開2015-114690号公報
第3 本願発明
本願請求項1ないし11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明11」という。)は、令和3年7月7日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される発明であり、このうち、本願発明1、本願発明4、本願発明7及び本願発明10は、以下のとおりの発明である。
[本願発明1]
「 透明基材と、前記透明基材の少なくとも一方の面側に形成された積層体とを備え、前記積層体は、Cu、Ni-Cu合金、Crを7質量%以下含むNi-Cr合金のいずれかからなる下地金属層と、前記下地金属層上に配置され、酸素と、銅と、ニッケルとを含有する第1黒化層と、銅層と、を備え、前記下地金属層の厚さが、1.5nm以上、5nm以下であり、前記第1黒化層に含まれる金属成分のうち、ニッケルの割合が20質量%以上70質量%以下である積層体基板。」
[本願発明4]
「 透明基材と、前記透明基材の少なくとも一方の面側に形成された金属細線とを備え、前記金属細線が、Cu、Ni-Cu合金、Crを7質量%以下含むNi-Cr合金のいずれかからなる下地金属配線層と、前記下地金属配線層上に配置され、酸素と、銅と、ニッケルとを含有する第1黒化配線層と、銅配線層とを備えた積層体であり、前記下地金属配線層の厚さが、1.5nm以上、5nm以下であり、前記第1黒化配線層に含まれる金属成分のうち、ニッケルの割合が20質量%以上70質量%以下である導電性基板。」
[本願発明7]
「 透明基材を準備する透明基材準備工程と、前記透明基材の少なくとも一方の面側に積層体を形成する積層体形成工程とを有し、前記積層体形成工程は、Cu、Ni-Cu合金、Crを7質量%以下含むNi-Cr合金のいずれかからなる下地金属層を堆積する下地金属層成膜手段により下地金属層を形成する下地金属層形成ステップと、前記下地金属層上に、酸素と、銅と、ニッケルと含有する第1黒化層を堆積する第1黒化層成膜手段により第1黒化層を形成する第1黒化層形成ステップと、銅層を堆積する銅層成膜手段により銅層を形成する銅層形成ステップと、を含み、前記下地金属層形成ステップ、及び前記第1黒化層形成ステップは減圧雰囲気下において実施し、前記下地金属層の厚さが、1.5nm以上、5nm以下であり、前記第1黒化層に含まれる金属成分のうち、ニッケルの割合が20質量%以上70質量%以下である積層体基板の製造方法。」
[本願発明10]
「 請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の積層体基板の製造方法により得られた積層体基板の前記下地金属層と、前記第1黒化層と、前記銅層とをエッチングし、下地金属配線層と、第1黒化配線層と、銅配線層とを備えた積層体である金属細線を有する配線パターンを形成するエッチング工程を有し、前記エッチング工程により、前記下地金属層、前記第1黒化層、及び前記銅層に開口部を形成する導電性基板の製造方法。」
なお、本願発明2及び3、本願発明5及び6、本願発明8及び9、本願発明11はそれぞれ、本願発明1、本願発明4、本願発明7、本願発明10を減縮する発明である。
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
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引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は、強調のため当審が付与した(これ以降についても同様。)。
ア 「【0009】本発明は上記のような事情を鑑みてなされたものであり、配線部の金属光沢反射光によりタッチパネル下に配置されるディスプレイの視認性を低下することなく、メッシュ状としても2枚のフィルムの貼り合わせのズレが生じない透明導電性フィルムに適用することが可能な積層体を提供することを目的とする。」
イ 「【0020】[第一実施の形態]図1は本発明の第一実施の形態による積層体の構成を示す概略図である。つまり、本発明の第一実施の形態による積層体は、黒化層A1、金属層A1、基材、黒化層A2、金属層A2を、この順に有する。そしてより好ましい本発明の第一実施の形態による積層体は、金属層A1と基材の間に、密着層A1を有し、さらに、基材と黒化層A2の間に密着層A2を有する、つまり、黒化層A1、金属層A1、密着層A1、基材、密着層A2、黒化層A2、金属層A2を、この順に有する。【0021】黒化層A1、金属層A1、密着層A1、基材、密着層A2、黒化層A2、金属層A2がベタ膜からなる本発明の積層体においては、黒化層、金属層、及び密着層を部分的に除去して、パターン状の黒化層、金属層、及び密着層とすることで、タッチセンサーの電極として好適に用いることができる。なお、この場合、黒化層A1側から見て使用することが好ましい(つまり、黒化層A1が視認側である。)。」
ウ 「【0025】また基材(3)は、透明性を有することが好ましい。基材は、好ましくは全光線透過率が20%以上であり、より好ましくは全光線透過率が50%以上である。基材の全光線透過率は、高ければ高いほどよいが、99%を超えることが困難なので、現実的な上限は99%程度である。」
エ 「【0027】…(中略)…黒化層は、窒化銅、酸化銅、窒化ニッケル、及び酸化ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む層である。黒化層は、層の全体100原子%において、銅およびニッケルの合計含有量(原子数基準)が50原子%以上95原子%以下の層であり、かつ窒素および酸素の合計含有量(原子数基準)が5原子%以上50原子%以下の層であることが好ましい。この原子数の確認は、Ar+イオンによる積層体のエッチング(条件:加速電圧2kV、試料傾斜角度30°)とオージェ電子分光法(条件:加速電圧10kV、試料電流20nA、試料傾斜角30°)によって可能である。窒素および酸素の合計含有量が5原子%より小さいと黒化層が金属光沢を有し黒化機能が不足することがあり、50原子%より多い黒化層は作製することが困難である。」
オ 「【0029】黒化層の形成方法は特に限定されず、例えば、スパッタリング法やメッキ法によって形成することができる。」
カ 「【0032】金属層は、チタン、ニッケル、クロム以外の金属を含みさえすれば特に限定されないが、金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、コバルト、亜鉛、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の金属を含むことが好ましい。高い導電性を付与する観点から、金属層は、金、銀、銅、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属から構成されることがより好適であり、コストとのバランスを考えると金属層は銅であることがより好適である。」
キ 「【0036】金属層の形成方法は特に限定されず、選択される金属層の素材に応じて適宜形成方法を選ぶことができる。例えば、金属層が銅の場合には、金属層は真空蒸着法やスパッタリング法によって形成することができる。」
ク 「【0039】本発明でいう密着層は、チタン、ニッケル、及びクロムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含む層である。密着層は、黒化層と別の層(基材など)との間に存在して、これらの層間の密着性を向上する機能を有する層である。【0040】なお密着層は、チタン、ニッケル、及びクロムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含む層であるため、例えば、チタン、ニッケル、又はクロムの純粋な金属を含む層でもいいし、チタン、ニッケル、又はクロムを有する化合物を含む層であってもいい。そのため密着層は、黒化層と同様に窒化ニッケルや酸化ニッケルなどを含む層となる場合がある。【0041】なお密着層は、層の全体100原子%において、チタン、ニッケル、及びクロム元素の合計含有量(原子数基準)が、50原子%以上100原子%の層であることが好ましい。この原子数の確認は、前述の条件によるエッチングとオージェ電子分光法によって可能である。」
ケ 「【0043】密着層の形成方法は特に限定されず、選択される密着層の素材に応じて適宜形成方法を選ぶことができる。なお、スパッタリング法、蒸着法、又はイオンプレーティング法は、チタン、ニッケル、クロムのいずれを含む層の形成にも適用することができるために好ましい形成方法である。」
コ 「【0044】密着層の厚さは、0.5nm以上500nm以下が好適であり、1nm以上100nm以下がより好適であり、1nm以上50nm以下が更により好適である。密着層の厚さが0.5nmより小さいと、十分な密着効果が得られない事がある。また、密着層の厚さが500nmを超えても、得られる密着性が更に増すわけではないので、コストの観点から、密着層は500nm以下が好ましい。」
サ 「【0046】本発明の第一実施の形態の積層体は、エッチングやレーザーアブレーションなどによって金属層A1(4a)や金属層A2(4b)を部分的に除去して、パターン状の金属層を有する積層体に加工することができ、該積層体は透明導電性基材として使用することができる。[第二実施の形態]図6は本発明の第二実施の形態による積層体の構成を示す概略図である。つまり、本発明の第二実施の形態による積層体は、黒化層(以下、黒化層B1という)、金属層(以下、金属層B1という)、黒化層(以下、黒化層B2という)、基材を、この順に有する。【0047】また、より好ましい第二実施の形態の積層体は、黒化層B2と基材の間に、密着層B1を有する、つまり、黒化層B1、金属層B1、黒化層B2、密着層B1、基材を、この順に有する。」
シ 「【0062】…(中略)…(実施例1)図1を使って説明する。続きを表示(全22行)【0063】基材(3)として東レ株式会社製PETフィルム(商品名:ルミラーU48)を用いた。基材の厚みは100μmであった。基材(3)の全光線透過率は92%であった。【0064】基材の一方の面側(これを上面側とする)に、ロールトゥロールにて密着層A1(5a)(ニッケル)を、厚みが10nmとなるようにDCマグネトロンスパッタリング法で成膜した。この際ニッケルターゲットに印加した電圧は325Vであり、ターゲットに対する電力密度は66.7kW/m2であった。また、スパッタリングガスとしてはアルゴンを用い、圧力が0.1Paとなるように流量を調整した。【0065】次に密着層A1の図1の上面側に、ロールトゥロールにて金属層A1(4a)(銅)を、厚みが2μmとなるようにEB蒸着法で成膜した。電子銃の出力は成膜幅に対して53.5kW/mとした。【0066】次に金属層A1の上面側に、ロールトゥロールにて黒化層A1(2a)(窒化銅)を、厚みが40nmとなるように、DCマグネトロンスパッタリング法で成膜した。この際ニッケルターゲットに印加した電圧は500Vであり、ターゲットに対する電力密度は166.7kW/m2であった。また、スパッタリングガスとしては窒素を用い、圧力が0.1Paとなるように流量を調整した。【0067】次に基材の下面側に、密着層A2(5b)(ニッケル)を、厚みが10nmとなるように、DCマグネトロンスパッタリング法で成膜した。形成条件は、密着層A1(5a)と同じとした。【0068】次に密着層A2の下面側に、黒化層A2(2b)(窒化銅)を、厚みが40nmとなるように、DCマグネトロンスパッタリング法で成膜した。形成条件は、黒化層A1(2a)と同じとした。【0069】次に黒化層A2の下面側に、金属層A2(4b)(銅)を、厚みが2μmとなるようにEB蒸着法で成膜した。形成条件は、金属層A1と同じとした。【0070】その後、積層体の両面に旭化成イーマテリアルズ製のドライフィルムレジスト(商品名:サンフォートADH-151)を貼合し、両面をフォトマスク越しに露光、現像した。【0071】次に塩化第二鉄水溶液で両面の黒化層と金属層と密着層を部分的に除去し、透明導電性フィルムを得た。得られた積層体の金属層、黒化層、密着層のパターンは、両面とも線幅10μm、ピッチ250μmの90°メッシュ状であり、図1の上面側は下面側のメッシュパターンに対して、図3のように上下方向、左右方向ともピッチの半分(125μm)だけオフセットさせたものとした。」
ス 「【0074】…(中略)…(実施例2)図6で説明する。続きを表示(全17行)基材(3)として東レ株式会社製PETフィルム(商品名:ルミラーU48)を用いた。基材の厚みは100μmであった。基材(3)の全光線透過率は92%であった。【0075】基材の一方の面側(これを上面側とする)に、ロールトゥロールにて密着層B1(15a)(ニッケル)を、厚みが10nmとなるようにDCマグネトロンスパッタリング法で成膜した。成膜条件は実施例1の密着層A1形成時と同じにした。【0076】次に密着層B1(15a)の図中上面側に、ロールトゥロールにて黒化層B2(窒化銅)(12b)を厚みが40nmとなるように、DCマグネトロンスパッタリング法で成膜した。成膜条件は実施例1の黒化層A1形成時と同じにした。【0077】次に黒化層B2(12b)の上側に、ロールトゥロールにて金属層B1(14a)(銅)を、厚みが2μmとなるようにEB蒸着法で成膜した。成膜条件は実施例1の金属層A1形成時と同じにした。【0078】次に金属層B1(14a)の上面側に、ロールトゥロールにて黒化層B1(12a)(窒化銅)を、厚みが40nmとなるように、DCマグネトロンスパッタリング法で成膜した。成膜条件は実施例1の黒化層A1形成時と同じにした。【0079】その後、積層体の両面に旭化成イーマテリアルズ製のドライフィルムレジスト(商品名:サンフォートADH-151)を貼合し、フォトマスク越しに露光、現像した。【0080】次に塩化第二鉄水溶液で黒化層と金属層と密着層を部分的に除去し、透明導電性フィルムを得た。得られた積層体の金属層、黒化層、密着層のパターンは、線幅10μm、ピッチ250μmの90°メッシュ状とした。」
セ 「【図2】[図:0001383138000001.jpg]」
ソ 「【図6】[図:0001383138000002.jpg]」
(2)引用発明
前記(1)(特に、イないしエ、カ、ク、コ、サ、セ及びソ)より引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 黒化層、金属層、及び密着層を部分的に除去して、パターン状の黒化層、金属層、及び密着層とすることで、タッチセンサーの電極として好適に用いることができる積層体であって、基材は、透明性を有し、黒化層は、窒化銅、酸化銅、窒化ニッケル、及び酸化ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1つを含み、層の全体100原子%において、銅およびニッケルの合計含有量(原子数基準)が50原子%以上95原子%以下の層であり、金属層は、金、銀、銅、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属から構成されることがより好適であり、密着層は、黒化層と別の層(基材など)との間に存在して、これらの層間の密着性を向上する機能を有する層であり、チタン、ニッケル、及びクロムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含み、層の全体100原子%において、チタン、ニッケル、及びクロム元素の合計含有量(原子数基準)が、50原子%以上100原子%の層であることが好ましく、密着層の厚さは、1nm以上50nm以下が好適であり、積層体は、黒化層B1、金属層B1、黒化層B2、密着層B1、基材を、この順に有する、積層体。」
(3)引用方法発明
前記(1)、特に、オ、キ、ケ及びシに着目すると、引用文献1には、「積層体の製造方法」の発明が記載されているといえる。
よって、前記(2)の引用発明(積層体)を参酌すれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用方法発明」という。)が記載されていると認められる。
「 黒化層、金属層、及び密着層を部分的に除去して、パターン状の黒化層、金属層、及び密着層とすることで、タッチセンサーの電極として好適に用いることができる積層体の製造方法であって、基材は、透明性を有し、黒化層は、窒化銅、酸化銅、窒化ニッケル、及び酸化ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1つを含み、層の全体100原子%において、銅およびニッケルの合計含有量(原子数基準)が50原子%以上95原子%以下の層であり、黒化層は、例えば、スパッタリング法やメッキ法によって形成することができ、続きを表示(全17行)金属層は、金、銀、銅、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属から構成されることがより好適であり、金属層が銅の場合には、金属層は真空蒸着法やスパッタリング法によって形成することができ、密着層は、黒化層と別の層(基材など)との間に存在して、これらの層間の密着性を向上する機能を有する層であり、チタン、ニッケル、又はクロムを有する化合物を含む層であってもよく、層の全体100原子%において、チタン、ニッケル、及びクロム元素の合計含有量(原子数基準)が、50原子%以上100原子%の層であることが好ましく、密着層の厚さは、1nm以上50nm以下が好適であり、密着層は、スパッタリング法、蒸着法、又はイオンプレーティング法は、チタン、ニッケル、クロムのいずれを含む層の形成にも適用することができ、積層体は、黒化層B1、金属層B1、黒化層B2、密着層B1、基材を、この順に有し、実施例において、密着層を、スパッタリング法で成膜し、この際、スパッタリングガスとしては圧力が0.1Paとなるように流量を調整し、金属層を、EB蒸着法で成膜し、黒化層を、DCマグネトロンスパッタリング法で成膜し、この際、スパッタリングガスとしては、圧力が0.1Paとなるように流量を調整し、積層体の両面に旭化成イーマテリアルズ製のドライフィルムレジスト(を貼合し、両面をフォトマスク越しに露光、現像し、塩化第二鉄水溶液で両面の黒化層と金属層と密着層を部分的に除去する、積層体の製造方法。」
2 引用文献2について
引用文献2には図面とともに次の事項が記載されている。
「【0005】特許文献1に記載の配線構造の製造工程においては、銅ニッケル合金よりも銅の方がメタルエッチングのエッチング速度が速い(エッチングレートが高い)ため、メタルエッチング工程において、金属層と保護層に対して導電層が細くなってしまいやすい。さらに、ITOエッチング工程においは、エッチング液中での各層間の電池作用(電池効果)により各層が細くなりやすく、特に導電層の細りが進むため、保護層が導電層に対して「ひさし」状に外側に突出した形状になりやすい。このように製造された配線は、後の工程やエッチング中に保護層のひさし部分が剥離してしまうおそれがあり、剥離したひさし部分が配線間のショートの原因となるという問題があった。【0006】そこで本発明は、導電層の密着性を維持しつつ、各層、特に導電層の細りを抑え、保護層が導電層に対してひさし状に突出しない構造の配線パターンを備えた静電センサを提供することを目的とする。」
「【0028】次に、図2を参照しつつ、静電センサの配線パターン16の構造及び製造工程について説明する。図2は、実施形態に係る静電センサの配線パターン16の製造工程を示す断面図である。図2は、図1のA-A線に沿って切断し、矢印方向から見た部分拡大断面図である。図2(A)は、基材20上に透明電極層31、接続層32、導電層33、保護層34、及び、レジスト40を積層した状態を示す断面図、(B)は、(A)の状態からメタルエッチングを行った後の状態を示す断面図、(C)は(B)の状態からITOエッチングを行った後の状態を示す断面図、(D)は(C)の状態からレジスト40を剥離した状態を示す断面図である。【0029】図2(D)に示すように、配線パターン16は、基材20上に形成された透明電極層31と、透明電極層31上に形成された接続層32と、接続層32上に形成された導電層33と、導電層33上に形成された保護層34とからなる。続きを表示(全22行)【0030】透明電極層31はITO等の透明導電材料からなり、X電極パターン13またはY電極パターン14と連続して形成されている。【0031】接続層32、導電層33、及び保護層34は導電性材料で形成され、少なくとも導電層33は、透明電極層31よりも電気抵抗の低い導電性材料で構成する。【0032】接続層32と保護層34は、それぞれ、銅とニッケルを含む導電性の合金材料からなる。導電層33は、接続層32及び保護層34よりも銅の含有率の高い金属材料からなり、例えば銅のみで構成する。透明電極層31、接続層32、導電層33、及び、保護層34は、スパッタリングや蒸着その他のPVD(Physical vapor deposition)法やCVD(Chemical vapor deposition)法で成膜する。【0033】接続層32の膜厚は、保護層34よりも厚く、保護層34の膜厚の2倍以上であることが好ましい。また、導電層33の膜厚は、接続層32ならびに保護層34の膜厚よりも大きくなるように形成されている。ITOエッチングにおける電池効果で、接続層32と導電層33ならびに保護層34が細るように浸食される。そのため、厚さを加味した保護層34のエッチングレートを、厚さを加味した導電層33のエッチングレートの100%以上となるように、導電層33と保護層34の膜厚が決められることが好ましい。【0034】接続層32は、保護層34よりも膜厚が大きいため、膜厚を加味した接続層32のエッチングレートは、厚さを加味した導電層33のエッチングレートの90%未満となるように、接続層32の膜厚が設定されることが好ましい。【0035】接続層32を構成する合金全体に含まれるニッケルの含有率は、保護層34を構成する合金全体に含まれるニッケル含有率よりも大きい(含有量が多い)ことが好ましい。例えば、接続層32に含まれるニッケルの含有率は15wt以上50wt%以下であり、保護層34に含まれるニッケルの含有率は0.1wt以上15wt%未満であることが好ましい。【0036】ここで、ITOのエッチング時の電池効果によるエッチングレートは、銅とニッケルの合金ではニッケルの濃度が高いほど遅い。すなわち、ニッケルの濃度が低いほどエッチングが速く進み、浸食量が大きくなる。また、銅単体と、銅とニッケルの合金とでは、銅単体の方がエッチングレートが低く、エッチングが速く進む。【0037】レジスト40は、スクリーン印刷、フォトリソグラフィ等によって保護層34上に、配線パターンに対応したパターンで形成する。レジスト40は、メタルエッチング工程及びITOエッチング工程で使用するエッチング液に合わせて選択する。【0038】上述した、接続層32の膜厚を保護層34の膜厚よりも大きくする対策と、接続層32においてニッケルの量を保護層34よりも多くする対策は、一方のみを設定してもよいが、接続層32、導電層33、及び保護層34のエッチングレート等を考慮して両者を互いに関連させて設定することが好ましい。」
「【0050】以下、実施例及び比較例について説明する。<実施例1>実施例1においては、以下の条件で配線パターン16を形成した。実施例1は、保護層34より接続層32の方がニッケルの含有率が高く、接続層32の膜厚は保護層34の膜厚の4倍になっている。続きを表示(全11行)【0051】基材20:ポリエチレンテレプタレート、厚さ100μm透明電極層31:ITO、膜厚25nm接続層32:CuNi、膜厚40nm、Niの含有率25%導電層33:Cu、膜厚120nm保護層34:CuNi、膜厚10nm、Niの含有率15%レジスト40:ノボラック樹脂を使用」
「【図4】[図:0001383138000003.jpg]」
よって、引用文献2には、次の技術事項(以下、「引用文献2技術事項」という。)が記載されているといえる。
「 静電センサの配線パターン16は、基材20上に形成された透明電極層31と、透明電極層31上に形成された接続層32と、接続層32上に形成された導電層33と、導電層33上に形成された保護層34とからなり、透明電極層31はITO等の透明導電材料からなり、接続層32と保護層34は、それぞれ、銅とニッケルを含む導電性の合金材料からなり、導電層33は、接続層32及び保護層34よりも銅の含有率の高い金属材料からなり、例えば銅のみで構成し、接続層32の膜厚は、保護層34よりも厚く、保護層34の膜厚の2倍以上であることが好ましく、また、導電層33の膜厚は、接続層32ならびに保護層34の膜厚よりも大きくなるように形成され、ITOエッチングにおける電池効果で、接続層32と導電層33ならびに保護層34が細るように浸食されるため、厚さを加味した保護層34のエッチングレートを、厚さを加味した導電層33のエッチングレートの100%以上となるように、導電層33と保護層34の膜厚が決められ、接続層32は、保護層34よりも膜厚が大きいため、膜厚を加味した接続層32のエッチングレートは、厚さを加味した導電層33のエッチングレートの90%未満となるように、接続層32の膜厚が設定されることが好ましく、接続層32を構成する合金全体に含まれるニッケルの含有率は、保護層34を構成する合金全体に含まれるニッケル含有率よりも大きいことが好ましく、例えば、接続層32に含まれるニッケルの含有率は15wt以上50wt%以下であり、保護層34に含まれるニッケルの含有率は0.1wt以上15wt%未満であることが好ましく、ITOのエッチング時の電池効果によるエッチングレートは、銅とニッケルの合金ではニッケルの濃度が高いほど遅く、接続層32の膜厚を保護層34の膜厚よりも大きくする対策と、接続層32においてニッケルの量を保護層34よりも多くする対策は、一方のみを設定してもよいが、接続層32、導電層33、及び保護層34のエッチングレート等を考慮して両者を互いに関連させて設定することが好ましいこと。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「基材」は、「透明性を有」するものであるから、本願発明1の「透明基材」に相当する。
イ 引用発明の「積層体は、黒化層B1、金属層B1、黒化層B2、密着層B1、基材を、この順に有する」との構成によれば、引用発明の「積層体」は、「基材」の一方の面上に、順に「密着層」、「黒化層」、「金属層」、「黒化層」が積層されたものといえる。
ここで、「基材」の上に「密着層」、「黒化層」、「金属層」及び「黒化層」の順に積層される4つの層は、全体として「積層体」といい得るものである。
よって、引用発明において、「基材」の上に積層された「密着層」、「黒化層」、「金属層」及び「黒化層」は、本願発明1の「前記透明基材の少なくとも一方の面側に形成された積層体」に相当する。
ウ 前記ア及びイを参酌すれば、引用発明の「積層体」は、本願発明1の「透明基材と、」「積層体とを備え」る「積層体基板」に相当する。
エ 引用発明の「密着層」は、金属(「チタン、ニッケル、及びクロムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素」)で構成されているから、本願発明1の「下地金属層」とは、「金属層」である点において共通する。
また、引用発明の「密着層」は、「チタン、ニッケル、及びクロムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含」むものであるから、「チタン」と「クロム」とからなる場合、すなわち「Ni-Cr合金」である場合を含む。
よって、引用発明の「密着層」と、本願発明1の「Cu、Ni-Cu合金、Crを7質量%以下含むNi-Cr合金のいずれかからなる下地金属層」とは、「Ni-Cr合金からなる金属層」である点において共通する。
オ 引用発明の「黒化層B2」を「第1黒化層」と称することは任意である。
また、引用発明の「黒化層」は、「窒化銅、酸化銅、窒化ニッケル、及び酸化ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1つ」を含むから、「酸化銅」と「酸化ニッケル」とからなる場合を含む。
また、引用発明の「黒化層B2」は、「密着層」の上に配置された層である。
以上より、前記エを参酌すれば、引用発明の「黒化層B2」と、本願発明1の「前記下地金属層上に配置され、酸素と、銅と、ニッケルとを含有する第1黒化層」とは、「前記金属層上に配置され、酸素と、銅と、ニッケルとを含有する第1黒化層」である点において共通する。
カ 引用発明の「金属層」は、「金、銀、銅、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属」で構成されたものであるから、「銅層」である場合を含む。
よって、引用発明の「金属層」は、本願発明1の「銅層」に相当する。
キ 前記エないしカより、引用発明において、「基材」の上に積層された「密着層」、「黒化層」、「金属層」及び「黒化層」(積層体)が、「密着層」と「黒化層」と、「金属層」とを備えることと、本願発明1の「前記積層体は、」「下地金属層と、」「第1黒化層と、」「銅層と、を備え」ることとは、後述する相違点を除いて、「前記積層体は、」「金属層と、」「第1黒化層と、」「銅層と、を備え」る点において共通する。
ク 引用発明において、「密着層の厚さ」は、「1nm以上50nm以下」が好適とされているが、ここで、「1nm以上50nm以下」は、本願発明1の「1.5nm以上、5nm以下」を含む範囲である。
よって、前記エを参酌すれば、引用発明の「密着層の厚さ」が「1nm以上50nm以下」が好適とされていることと、本願発明1の「前記下地金属層の厚さが、1.5nm以上、5nm以下」であることとは、「前記金属層の厚さが、1.5nm以上、5nm以下」である点において共通する。
(2)一致点、相違点
前記(1)より、本願発明1と引用発明は、次の点において一致ないし相違する。
[一致点]
「 透明基材と、前記透明基材の少なくとも一方の面側に形成された積層体とを備え、前記積層体は、Ni-Cr合金からなる金属層と、前記金属層上に配置され、酸素と、銅と、ニッケルとを含有する第1黒化層と、銅層と、を備え、前記金属層の厚さが、1.5nm以上、5nm以下である、積層体基板。」
[相違点]
<相違点1>
「金属層」が、本願発明1においては、「下地金属層」であるのに対し、引用発明の「密着層」は、「下地金属層」として具体的に特定されていない点。
<相違点2>
「金属層」が、本願発明1においては、「Cu、Ni-Cu合金、Crを7質量%以下含むNi-Cr合金のいずれかからなる」ものであるのに対し、引用発明においては、「密着層」の要件として、「層の全体100原子%において、チタン、ニッケル、及びクロム元素の合計含有量(原子数基準)が、50原子%以上100原子%」と規定しているものの、「密着層」として、「ニッケル」と「クロム」とを選択した場合に、「クロム」単独の質量の割合を具体的に特定していない点。
<相違点3>
本願発明1は、「前記第1黒化層に含まれる金属成分のうち、ニッケルの割合が20質量%以上70質量%以下である」との構成を備えるのに対し、引用発明においては、「黒化層」の要件として、「層の全体100原子%において、銅およびニッケルの合計含有量(原子数基準)が50原子%以上95原子%以下の層」と規定しているものの、「黒化層」として「酸化銅」と「酸化ニッケル」とを選択した場合における「ニッケル」単独の質量の割合を具体的に特定していない点。
(3)相違点についての判断
事案に鑑みて、先に相違点3について検討する。
引用文献2技術事項にあるように、透明電極層を構成するITOのエッチング時における電池効果により、透明電極層の上に形成される接続層、導電層及び保護層が浸食され、ITOのエッチング時の電池効果によるエッチングレートは、銅とニッケルの合金ではニッケルの濃度が高いほど遅いことを考慮して、接続層におけるニッケルの量を保護層よりも多くする(例えば、接続層に含まれるニッケルの含有率は15wt以上50wt%以下、保護層に含まれるニッケルの含有率は0.1wt以上15wt%未満とする。)ことは、本願出願時の周知技術といえる。
しかしながら、「黒化層、金属層、及び密着層を部分的に除去して、パターン状の黒化層、金属層、及び密着層とする」引用発明において、パターン状となる「黒化層」、「金属層」及び「密着層」のいずれにおいても「ITO」を用いることを想定していないから、仮に引用発明がエッチングによりパターンを形成するものであるとしても、「ITO」のエッチング時における電池効果を前提とする周知技術を、「ITO」を用いることを想定していない引用発明に適用することを想起することは当業者といえども困難である。
加えて、引用発明の「黒化層」は、「窒化銅、酸化銅、窒化ニッケル、及び酸化ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1つを含み、層の全体100原子%において、銅およびニッケルの合計含有量(原子数基準)が50原子%以上95原子%以下の層」であり、「黒化層」を構成し得る複数の金属及びその組み合わせの中から、実施例(上記第4の(1)シの【0066】及びスの【0078】参照)において採用されている「窒化銅」とは異なる、「酸化銅」と「酸化ニッケル」とをあえて選択し、その上で、周知技術を参酌して、「黒化層」における「ニッケル」の割合を、周知技術の「接続層」(「黒化層」には対応しない。)における「ニッケル」の割合(15wt以上50wt%以下)と一部重複するものの完全には一致しない「20質量%以上70質量%以下」と規定することは、当業者といえども困難である。
また、相違点3に係る本願発明1の構成は、本願出願時の技術常識であるとは認められない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1及び2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 本願発明2及び3について
本願発明2及び3は、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1及び2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 本願発明4について
(1)対比
本願発明4は、本願発明1の「積層体」、「下地金属層」、「第1黒化層」、「銅層」及び「積層基板」のそれぞれを、「金属細線」、「下地金属配線層」、「第1黒化配線層」、「銅配線層」及び「導電性基板」として特定したものであり、本願発明1に対応する構成を備えた発明である。
そして、引用発明は、「黒化層、金属層、及び密着層を部分的に除去して、パターン状の黒化層、金属層、及び密着層とする」との構成を備えているから、「黒化層」、「金属層」及び「密着層」が、「金属細線」の配線パターンとして形成され、「積層体」が「導電性基板」として機能する態様を含む。
よって、本願発明4と引用発明とを対比した場合、その余の点は、前記1(1)のとおりである。
(2)一致点、相違点
前記(1)より、本願発明4と引用発明とは、以下の点において一致ないし相違するといえる。
[一致点]
「 透明基材と、前記透明基材の少なくとも一方の面側に形成された金属細線とを備え、前記金属細線は、Ni-Cr合金からなる金属配線層と、前記金属配線層上に配置され、酸素と、銅と、ニッケルとを含有する第1黒化配線層と、銅配線層とを備えた積層体であり、前記金属配線層の厚さが、1.5nm以上、5nm以下である、導電性基板。」
[相違点]
<相違点1’>
「金属配線層」が、本願発明1においては、「下地金属配線層」であるのに対し、引用発明の「密着層」は、「下地金属配線層」として具体的に特定されていない点。
<相違点2’>
「金属配線層」が、本願発明1においては、「Cu、Ni-Cu合金、Crを7質量%以下含むNi-Cr合金のいずれかからなる」ものであるのに対し、引用発明においては、「密着層」の要件として、「層の全体100原子%において、チタン、ニッケル、及びクロム元素の合計含有量(原子数基準)が、50原子%以上100原子%」と規定しているものの、「密着層」として、「ニッケル」と「クロム」とを選択した場合に、「クロム」単独の質量の割合を具体的に特定していない点。
<相違点3’>
本願発明1は、「前記第1黒化配線層に含まれる金属成分のうち、ニッケルの割合が20質量%以上70質量%以下である」との構成を備えるのに対し、引用発明においては、「黒化層」の要件として、「層の全体100原子%において、銅およびニッケルの合計含有量(原子数基準)が50原子%以上95原子%以下の層」と規定しているものの、「黒化層」として「酸化銅」と「酸化ニッケル」とを選択した場合における「ニッケル」単独の質量の割合を具体的に特定していない点。
(3)相違点についての判断
事案に鑑みて、先に相違点3’について検討するに、相違点3’は、前記1(2)の相違点3に対応したものであり、前記1(3)で述べた理由と同様の理由により、相違点3’に係る本願発明4の構成も、当業者が、引用発明に基づいて、引用文献2に記載された周知技術、本願出願時の技術常識を参酌することにより、容易に想到することができたものではない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明4は、当業者であっても、引用文献1及び2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
4 本願発明5及び6について
本願発明5及び6は、本願発明4と同一の構成を備えるものであるから、本願発明4と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1及び2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
5 本願発明7について
(1)対比
本願発明7と引用方法発明とを対比する。
ア 前記1(1)アを参酌すれば、引用方法発明の「基材」は、本願発明7の「透明基材」に相当する。
引用方法発明の「基材の一方の面側(上面側)に、密着層を、スパッタリング法で成膜」するに当たり、「基材」を準備する工程の存在を前提とすることは自明である。
よって、引用方法発明は、本願発明7の「透明基材を準備する透明基材準備工程」を備える。
イ 前記1(1)イを参酌すれば、引用方法発明において、「基材」の上に「密着層」、「黒化層」、「金属層」及び「黒化層」の順に積層される4つの層は、本願発明7の「積層体」に相当する。
よって、引用方法発明において、「基材」の上に前記4つの層を積層する工程は、本願発明7の「前記透明基材の少なくとも一方の面側に積層体を形成する積層体形成工程」に相当する。
ウ 前記1(1)エを参酌すれば、引用方法発明の「密着層」と、本願発明7の「Cu、Ni-Cu合金、Crを7質量%以下含むNi-Cr合金のいずれかからなる下地金属層」とは、「Ni-Cr合金からなる金属層」である点において共通する。
また、引用方法発明の「密着層は、スパッタリング法、蒸着法、又はイオンプレーティング法は、チタン、ニッケル、クロムのいずれを含む層の形成にも適用する」ステップ(実施例においては、「密着層を、スパッタリング法で成膜」するステップ)において、成膜方法に対応し、「密着層」を堆積する成膜手段により「密着層」が形成されることは自明である。
よって、引用方法発明の「密着層は、スパッタリング法、蒸着法、又はイオンプレーティング法は、チタン、ニッケル、クロムのいずれを含む層の形成にも適用する」ステップ(実施例においては、「密着層を、スパッタリング法で成膜」するステップ)と、本願発明7の「Cu、Ni-Cu合金、Crを7質量%以下含むNi-Cr合金のいずれかからなる下地金属層を堆積する下地金属層成膜手段により下地金属層を形成する下地金属層形成ステップ」とは、「Ni-Cr合金からなる金属層を堆積する金属層成膜手段により金属層を形成する金属層形成ステップ」である点において共通する。
エ 前記1(1)オを参酌すれば、引用方法発明の「黒化層B2」は、本願発明7の「酸素と、銅と、ニッケルとを含有する第1黒化層」に相当する。
また、引用方法発明の「黒化層は、例えば、スパッタリング法やメッキ法によって形成」するステップ(実施例においては、「黒化層を、DCマグネトロンスパッタリング法で成膜」するステップ)において、成膜方法に対応し、「黒化層」を堆積する成膜手段により「黒化層」が形成されることは自明である。
よって、前記ウを参酌すれば、引用方法発明の「黒化層は、例えば、スパッタリング法やメッキ法によって形成する」ステップ(実施例においては、「黒化層を、DCマグネトロンスパッタリング法で成膜」ステップ)と、本願発明7の「前記下地金属層上に、酸素と、銅と、ニッケルと含有する第1黒化層を堆積する第1黒化層成膜手段により第1黒化層を形成する第1黒化層形成ステップ」とは、「前記金属層上に、酸素と、銅と、ニッケルと含有する第1黒化層を堆積する第1黒化層成膜手段により第1黒化層を形成する第1黒化層形成ステップ」である点において共通する。
オ 前記1(1)カを参酌すれば、引用発明の「金属層」は、本願発明7の「銅層」に相当する。
また、引用方法発明において、「金属層が銅の場合には、金属層は真空蒸着法やスパッタリング法によって形成する」ステップ(実施例においては、「金属層を、EB蒸着法で成膜」ステップ)において、成膜方法に対応し、「金属層」を堆積する成膜手段により「金属層」が形成されることは自明である。
よって、引用方法発明の「金属層が銅の場合には、金属層は真空蒸着法やスパッタリング法によって形成する」ステップ(実施例においては、「金属層を、EB蒸着法で成膜」ステップ)は、本願発明7の「銅層を堆積する銅層成膜手段により銅層を形成する銅層形成ステップ」に相当する。
カ 前記イないしオより、後述する相違点を除いて、引用方法発明と、本願発明7の「前記積層体形成工程は、」「下地金属層形成ステップと、」「第1黒化層形成ステップと、」「銅層形成ステップと、を含」むこととは、「前記積層体形成工程は、」「金属層形成ステップと、」「第1黒化層形成ステップと、」「銅層形成ステップと、を含」むとの共通の構成を備えるといえる。
キ 引用方法発明の「密着層」及び「黒化層」の形成方法には、「スパッタリング方」を含み、当該「スパッタリング法」による成膜が、真空に近い雰囲気下、すなわち、減圧雰囲気下において実施されることは、本願出願時における技術常識であり、実際、引用方法発明の実施例においても、スパッタリグガスの圧力が「0.1Pa」という減圧雰囲気下となるように流量が調整されている。
よって、前記ウを参酌すれば、引用方法発明と、本願発明7の「前記下地金属層形成ステップ、及び前記第1黒化層形成ステップは減圧雰囲気下において実施」することとは、「前記金属層形成ステップ、及び前記第1黒化層形成ステップは減圧雰囲気下において実施」することとの共通の構成を備えるといえる。
ク 前記1(1)クを参酌すれば、引用方法発明の「密着層の厚さ」が「1nm以上50nm以下」が好適とされていることと、本願発明7の「前記下地金属層の厚さが、1.5nm以上、5nm以下」であることとは、「前記金属層の厚さが、1.5nm以上、5nm以下」である点において共通する。
ケ 引用方法発明の「積層体の製造方法」は、後述する相違点を除いて、本願発明7の「積層体基板の製造方法」に相当する。
(2)一致点、相違点
前記(1)より、本願発明7と引用方法発明とは、以下の点において一致ないし相違するといえる。
[一致点]
「 透明基材を準備する透明基材準備工程と、前記透明基材の少なくとも一方の面側に積層体を形成する積層体形成工程とを有し、前記積層体形成工程は、Ni-Cr合金からなる金属層を堆積する金属層成膜手段により金属層を形成する金属層形成ステップと、前記金属層上に、酸素と、銅と、ニッケルと含有する第1黒化層を堆積する第1黒化層成膜手段により第1黒化層を形成する第1黒化層形成ステップと、銅層を堆積する銅層成膜手段により銅層を形成する銅層形成ステップと、を含み、前記金属層形成ステップ、及び前記第1黒化層形成ステップは減圧雰囲気下において実施し、前記金属層の厚さが、1.5nm以上、5nm以下である、積層体基板の製造方法。」
[相違点]
<相違点1”>
「金属層」が、本願発明7においては、「下地金属層」であるのに対し、引用方法発明の「密着層」は、「下地金属層」として具体的に特定されていない点。
<相違点2”>
「金属層」が、本願発明7においては、「Cu、Ni-Cu合金、Crを7質量%以下含むNi-Cr合金のいずれかからなる」ものであるのに対し、引用方法発明においては、「密着層」の要件として、「層の全体100原子%において、チタン、ニッケル、及びクロム元素の合計含有量(原子数基準)が、50原子%以上100原子%」と規定しているものの、「密着層」として、「ニッケル」と「クロム」とを選択した場合に、「クロム」単独の質量の割合を具体的に特定していない点。
<相違点3”>
本願発明7は、「前記第1黒化層に含まれる金属成分のうち、ニッケルの割合が20質量%以上70質量%以下である」との構成を備えるのに対し、引用方法発明においては、「黒化層」の要件として、「層の全体100原子%において、銅およびニッケルの合計含有量(原子数基準)が50原子%以上95原子%以下の層」と規定しているものの、「黒化層」として「酸化銅」と「酸化ニッケル」とを選択した場合における「ニッケル」単独の質量の割合を具体的に特定していない点。
(3)相違点についての判断
事案に鑑みて、先に相違点3”について検討するに、相違点3”は、前記1(2)の相違点3に対応したものであり、前記1(3)で述べた理由と同様の理由により、相違点3”に係る本願発明7の構成も、当業者が、引用発明に基づいて、引用文献2に記載された周知技術、本願出願時の技術常識を参酌することにより、容易に想到することができたものではない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明7は、当業者であっても、引用文献1及び2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
6 本願発明8及び9について
本願発明8及び9は、本願発明7と同一の構成を備えるものであるから、本願発明7と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1及び2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
7 本願発明10について
本願発明10は、本願発明7ないし9に係る「積層体基板の製造方法」により得られた「積層体基板」に対する「エッチング工程」を行う「導電性基板の製造方法」の発明である。
よって、本願発明10は、本願発明7ないし9の構成(相違点3”に係る本願発明7の構成を含む。)を前提とするものであるから、本願発明7ないし9と同様に、当業者であっても、引用文献1及び2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
8 本願発明11について
本願発明11は、本願発明10と同一の構成を備えるものであるから、本願発明10と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1及び2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
第6 原査定について
前記第5で述べたとおり、本願発明1ないし11は、当業者が、引用文献1及び2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえないから、原査定の理由を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-009080