特許拒絶査定不服審判
2021-008940
撮像装置およびアクチュエータドライバ
- 審判番号
- 2021-008940
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-039018外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年07月05日
- 審決日
- 2022年03月17日
- 公報発行日
- 2022年06月24日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (G03B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-39018号「撮像装置およびアクチュエータドライバ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年9月20日出願公開、特開2018-146655号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)3月2日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年11月25日付け:拒絶理由通知書
令和3年 2月 1日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 3月31日付け:拒絶査定(謄本送達 同年4月6日)
令和3年 7月 5日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和3年7月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年7月5日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
光学手振れ補正機能を有する第1カメラモジュールと、
光学手振れ補正機能を有する第2カメラモジュールと、
ジャイロセンサと、
を備え、
各カメラモジュールは、
撮像素子と、
レンズと、
前記レンズを光軸と垂直な面内に位置決めするアクチュエータと、
前記レンズの位置を示す位置検出信号を生成する位置検出素子と、
前記ジャイロセンサの出力に応じて、前記レンズの目標変位を示すターゲットコードを生成し、前記位置検出信号に応じた検出コードが前記ターゲットコードに近づくようにフィードバック制御によって駆動信号を生成して前記アクチュエータを駆動するアクチュエータドライバと、
を備え、
前記レンズの前記撮像素子に対する基準位置が、前記第1カメラモジュールと前記第2カメラモジュールとで独立して設定可能であり、
各カメラモジュールの前記アクチュエータドライバには、前記レンズと前記撮像素子の相対的な位置関係が前記基準位置であるときの前記位置検出信号に応じた前記検出コードの値である基準値が保持されており、
実際の撮影時において、各カメラモジュールの前記アクチュエータドライバは、前記ターゲットコードが、手ブレ補正によるレンズシフト量がゼロに対応する値であるときに、前記検出コードが前記基準値となるように、前記駆動信号を生成することを特徴とする撮像装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和3年2月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
光学手振れ補正機能を有する第1カメラモジュールと、
光学手振れ補正機能を有する第2カメラモジュールと、
ジャイロセンサと、
を備え、
各カメラモジュールは、
撮像素子と、
レンズと、
前記レンズを光軸と垂直な面内に位置決めするアクチュエータと、
前記レンズの位置を示す位置検出信号を生成する位置検出素子と、
前記ジャイロセンサの出力に応じて、前記レンズの目標変位を示すターゲットコードを生成し、前記位置検出信号に応じた検出コードおよび前記ターゲットコードに応じた駆動信号を生成して前記アクチュエータを駆動するアクチュエータドライバと、
を備え、
前記レンズの前記撮像素子に対する基準位置が、前記第1カメラモジュールと前記第2カメラモジュールとで独立して設定可能であり、
実際の撮影時において、各カメラモジュールの前記アクチュエータドライバは、前記ターゲットコードが変位ゼロに対応する値であるときに、前記レンズが前記基準位置となるように、前記駆動信号を生成することを特徴とする撮像装置。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明である「駆動信号を生成」することに関して、補正前に「前記位置検出信号に応じた検出コードおよび前記ターゲットコードに応じた駆動信号を生成」するものであったものを、「前記位置検出信号に応じた検出コードが前記ターゲットコードに近づくようにフィードバック制御によって駆動信号」を生成」するものとの限定を付加するとともに、補正前に「実際の撮影時において、各カメラモジュールの前記アクチュエータドライバは、前記ターゲットコードが変位ゼロに対応する値であるときに、前記レンズが前記基準位置となるように、前記駆動信号を生成する」ものであったものを、「各カメラモジュールの前記アクチュエータドライバには、前記レンズと前記撮像素子の相対的な位置関係が前記基準位置であるときの前記位置検出信号に応じた前記検出コードの値である基準値が保持されており、実際の撮影時において、各カメラモジュールの前記アクチュエータドライバは、前記ターゲットコードが、手ブレ補正によるレンズシフト量がゼロに対応する値であるときに、前記検出コードが前記基準値となるように、前記駆動信号を生成する」と補正して、「レンズ」が「基準位置となる」ことを、「検出コード」が「基準値となる」ものとの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
(2-1)引用文献1について
ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2008-252254号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は当審が付した。以下同じ。)。
(ア)「【請求項1】
撮影レンズと、前記撮影レンズによって結像された被写体像を光電変換して撮像する撮像素子とを有する第1及び第2撮像部を備えた立体撮影装置において、
前記第1撮像部の光軸角度を調節する第1角度調節手段と、
前記第2撮像部の光軸角度を調節する第2角度調節手段と、
前記第1及び前記第2撮像部によって撮像された画像から主要被写体を検出する被写体検出手段と、
前記2つの画像間での前記主要被写体の位置ズレ量に基づいて、前記主要被写体の位置を光学的に一致させるための光軸補正角度を算出する補正角度算出手段と、
前記光軸補正角度を前記第1及び前記第2角度調節手段の一方で調節するか、または両方で調節するかを判定する判定手段と、
前記光軸補正角度及び前記判定手段の判定結果に基づいて、前記第1及び前記第2角度調節手段の少なくとも一方を制御して前記光軸角度を調節する制御手段とを備えていることを特徴とする立体撮影装置。」
(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影レンズ及び撮像素子を有する撮像部を2つ備え、2つの撮影レンズの光軸を調節して立体撮影を行う立体撮影装置、及びこれに用いられる光軸調節方法に関する。」
(ウ)「【0007】
上記課題を解決するために、本発明の立体撮影装置は、撮影レンズと、前記撮影レンズによって結像された被写体像を光電変換して撮像する撮像素子とを有する第1及び第2撮像部を備えた立体撮影装置であり、前記第1撮像部の光軸角度を調節する第1角度調節手段と、前記第2撮像部の光軸角度を調節する第2角度調節手段と、前記第1及び前記第2撮像部によって撮像された画像から主要被写体を検出する被写体検出手段と、前記2つの画像間での前記主要被写体の位置ズレ量に基づいて、前記主要被写体の位置を光学的に一致させるための光軸補正角度を算出する補正角度算出手段と、前記光軸補正角度を前記第1及び前記第2角度調節手段の一方で調節するか、または両方で調節するかを判定する判定手段と、前記光軸補正角度及び前記判定手段の判定結果に基づいて、前記第1及び前記第2角度調節手段の少なくとも一方を制御して前記光軸角度を調節する制御手段とを備えていることを特徴とするものである。」
(エ)「【0009】
さらに、前記判定手段は、前記光軸補正角度が前記第1または前記第2角度調節手段の最大補正角度未満であるか否かに基づいて判定を行うことが好ましい。また、前記被写体検出手段は、前記画像から被写体の顔を検出する顔検出手段であることが好ましい。さらに、前記第1及び前記第2角度調節手段は、手振れによる光軸の振れを補正する手振れ補正手段であることが好ましい。」
(オ)「【0013】
本発明によれば、第1及び第2撮像部によって撮像された2つの画像間での主要被写体の位置ズレ量に基づいて、主要被写体の位置を光学的に一致させるための光軸補正角度を算出し、この光軸補正角度を第1及び第2角度調節手段の一方で調節するか、または両方で調節するかを判定して、光軸補正角度及び判定結果に基づいて、第1及び第2角度調節手段の少なくとも一方を制御して光軸角度を調節するので、簡単な構成によって、2つの撮像部の光軸のズレを確実に補正することができる。また、画像の切り出しエリアを調節する場合よりも処理を簡略化できる。また、光軸補正角度が小さい場合には、一方の角度調節手段のみを制御して光軸のズレを補正できるので、光軸調節処理に要する時間をさらに短縮できる。
【0014】
また、ズームレンズをワイド端に移動して撮像された画像から主要被写体を検出するので、各撮像部の画角内に主要被写体が確実に入るため、光軸補正角度を確実に算出することが可能である。
【0015】
さらに、第1及び第2角度調節手段は、手振れ補正手段であり、手振れ補正手段を利用することによって、新たな装置を設けずに済むため製造コストを低減することが可能である。
【0016】
また、第1及び第2撮像部は、各々がユニット化されてカメラ本体に着脱自在に装着できるため、立体撮影以外の通常撮影時は一方の撮像部のみを装着して撮影可能であり、携帯性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1に示す立体撮影装置10は、カメラ本体11と、2つの撮像ユニット(撮像部)12A,12Bと、これらの撮像ユニット12A,12Bをカメラ本体11に接続するためのアダプタ13とで構成されている。また、各撮像ユニット12A,12Bは、撮影レンズ14と、この撮影レンズ14によって結像された被写体像を光電変換によって撮像する撮像素子であるCCDイメージセンサ(以下、単にCCDと称する)15とを備えている。」
(カ)「【0025】
次に、図4を参照して、撮像ユニット12Aの電気的構成を説明する。撮像ユニット12Aは、ユニット内の各部を制御するユニット制御部40が設けられている。ユニット制御部40は、各部を制御するための制御プログラムや制御データが記憶されたROM40aと、作業用データを一時的に記憶するRAM40bとを備えている。ユニット制御部40は、後述する本体制御部(図6参照)60からの指示を取得し、制御プログラム及び制御データに基づいて各部を制御する。また、前述のROM40aには、撮像ユニット12Aの仕様(例えば、撮影レンズ14の仕様やCCDの仕様等)を示す仕様情報が記憶されている。
【0026】
前述の撮影レンズ14は、ズームレンズ14aと、フォーカスレンズ14bと、補正レンズ14cとを備えて構成されている。ズームレンズ14a及びフォーカスレンズ14bは、レンズ駆動部41によって光軸LA方向に移動される。
【0027】
レンズ駆動部41は、例えば、ズームモータと、フォーカスモータと、各モータに駆動信号を入力するモータドライバとを備えて構成されており、ユニット制御部40と接続されている。ユニット制御部40は、このレンズ駆動部41を制御することによって、ズームレンズ14a及びフォーカスレンズ14bを光軸LA方向に移動させる。
【0028】
また、補正レンズ14cは、撮影レンズ14の光軸LAを補正するためのレンズであり、補正レンズ駆動部42によって、光軸LAと垂直な平面内で移動される。この補正レンズ駆動部42は、補正レンズ14cを水平方向に駆動するモータと、補正レンズ14cを垂直方向に駆動するモータとを備えて構成され、手振れ補正制御部43に接続されている。
【0029】
手振れ補正制御部43は、光軸LAの振れの角速度を検出するジャイロセンサを2つ備えており、一方は水平方向の角速度を検出し、他方は垂直方向の角速度を検出する。この手振れ補正制御部43は、各ジャイロセンサの角速度信号を積分して振れ角度を算出し、この振れ角度を補正するための補正レンズ14cのシフト量を算出する。
【0030】
さらに、手振れ補正制御部43は、このシフト量に基づいて、モータの駆動信号を生成して補正レンズ駆動部42に出力する。補正レンズ駆動部42は、この駆動信号に基づいて補正レンズ14cをシフトさせて、光軸LAの振れを補正する。なお、角度調節手段は、前述の補正レンズ14c、補正レンズ駆動部42、及び手振れ補正制御部43で構成される。
【0031】
また、後述するように、立体撮影を行う前に、ユニット制御部40が手振れ補正制御部43を制御して、被写体上で2つの撮像ユニット12A,12Bの各光軸LA,LBを補正して、被写体上で光軸LA,LBを合致させる。」
(キ)「【0051】
また、本体制御部60は、顔検出部(被写体検出手段)60cと、補正角度算出部(補正角度算出手段)60dと、判定部(判定手段)60eとを備えている。顔検出部60cは、フレームメモリ63に記憶された画像データに基づいて、2つの撮像ユニット12A,12Bによって撮像された各画像から顔を検出する。この顔検出方法としては、公知の方法、例えば、顔検出用のパターン画像をROM60aに記憶させておき、このパターン画像を参照してパターン認識によって顔検出を行う。
【0052】
補正角度算出部60dは、2つの画像内の顔位置を求めて差分を算出し、この差分に基づいて、2つの顔位置を光学的に一致させる(2つの撮像ユニット12A,12Bの光軸LA,LBを被写体上で合致させる)ために必要な光軸補正角度を算出する。・・・
【0056】
判定部60eは、光軸補正角度θH,θVが、1つの撮像ユニット12A,12Bの最大光軸補正角度よりも小さいか否かを判定する判定手段である。なお、この最大光軸補正角度は、補正レンズ14cの最大シフト量によって決まる。
【0057】
最大光軸補正角度よりも小さいと判定された場合、本体制御部60は、一方の撮像ユニットのみを制御して光軸角度を調節する。また、最大光軸補正角度以上であると判定された場合、判定部60eは、光軸補正角度が2つの撮像ユニット12A,12Bの最大光軸補正角度の合計よりも小さいか否かを判定する。最大光軸補正角度の合計よりも小さいと判定された場合、本体制御部60は、2つの撮像ユニット12A,12Bを制御して光軸角度を調節する。」
(ク)図1、4、7、9及び11は次のとおりである。
[図:0001384965000001.jpg]
[図:0001384965000002.jpg]
[図:0001384965000003.jpg]
[図:0001384965000004.jpg]
[図:0001384965000005.jpg]
イ 上記アから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「立体撮影装置10であって、該装置は、カメラ本体11と、2つの撮像ユニット(撮像部)12A,12Bと、これらの撮像ユニット12A,12Bをカメラ本体11に接続するためのアダプタ13とで構成され、各撮像ユニット12A,12Bは、撮影レンズ14と、この撮影レンズ14によって結像された被写体像を光電変換によって撮像する撮像素子であるCCDイメージセンサ(以下、単にCCDと称する)15とを備え(【0017】)、
撮影レンズ14は、ズームレンズ14aと、フォーカスレンズ14bと、補正レンズ14cとを備えて構成されており、(【0026】)、
補正レンズ14cは、撮影レンズ14の光軸LAを補正するためのレンズであり、補正レンズ駆動部42によって、光軸LAと垂直な平面内で移動され、この補正レンズ駆動部42は、補正レンズ14cを水平方向に駆動するモータと、補正レンズ14cを垂直方向に駆動するモータとを備えて構成され、手振れ補正制御部43に接続され(【0028】)、
手振れ補正制御部43は、光軸LAの振れの角速度を検出するジャイロセンサを2つ備えており、一方は水平方向の角速度を検出し、他方は垂直方向の角速度を検出し、この手振れ補正制御部43は、各ジャイロセンサの角速度信号を積分して振れ角度を算出し、この振れ角度を補正するための補正レンズ14cのシフト量を算出し(【0029】)、
手振れ補正制御部43は、このシフト量に基づいて、モータの駆動信号を生成して補正レンズ駆動部42に出力し、補正レンズ駆動部42は、この駆動信号に基づいて補正レンズ14cをシフトさせて、光軸LAの振れを補正し、なお、角度調節手段は、前述の補正レンズ14c、補正レンズ駆動部42、及び手振れ補正制御部43で構成され(【0030】)、
立体撮影を行う前に、ユニット制御部40が手振れ補正制御部43を制御して、被写体上で2つの撮像ユニット12A,12Bの各光軸LA,LBを補正して、被写体上で光軸LA,LBを合致させ(【0031】)、
本体制御部60は、顔検出部(被写体検出手段)60cと、補正角度算出部(補正角度算出手段)60dと、判定部(判定手段)60eとを備えており、顔検出部60cは、フレームメモリ63に記憶された画像データに基づいて、2つの撮像ユニット12A,12Bによって撮像された各画像から顔を検出し、(【0051】)、
補正角度算出部60dは、2つの画像内の顔位置を求めて差分を算出し、この差分に基づいて、2つの顔位置を光学的に一致させる(2つの撮像ユニット12A,12Bの光軸LA,LBを被写体上で合致させる)ために必要な光軸補正角度を算出し(【0052】)、
判定部60eは、光軸補正角度θH,θVが、1つの撮像ユニット12A,12Bの最大光軸補正角度よりも小さいか否かを判定する判定手段であり、なお、この最大光軸補正角度は、補正レンズ14cの最大シフト量によって決まり(【0056】)、
最大光軸補正角度よりも小さいと判定された場合、本体制御部60は、一方の撮像ユニットのみを制御して光軸角度を調節し、また、最大光軸補正角度以上であると判定された場合、判定部60eは、光軸補正角度が2つの撮像ユニット12A,12Bの最大光軸補正角度の合計よりも小さいか否かを判定し、最大光軸補正角度の合計よりも小さいと判定された場合、本体制御部60は、2つの撮像ユニット12A,12Bを制御して光軸角度を調節する(【0057】)、
立体撮影装置10。」
(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「立体撮影装置10」は、本件補正発明の「撮影装置」に相当する。
(イ)引用発明は、「手振れ補正制御部43がモータの駆動信号を生成して補正レンズ駆動部42に出力し、補正レンズ駆動部42は、この駆動信号に基づいて補正レンズ14cをシフトさせて、光軸LAの振れを補正する」から、本件補正発明の「光学手振れ補正機能」を有するといえる。
そして、引用発明の「立体撮影装置10」は、「2つの撮像ユニット(撮像部)12A,12B」を備え、各撮像ユニット12A,12Bが、補正レンズ14cを有する撮影レンズ14を備えており、また、ジャイロセンサを2つ備えているから、このことは、本件補正発明の「撮像装置」が、「光学手振れ補正機能を有する第1カメラモジュール」、「光学手振れ補正機能を有する第2カメラモジュール」及び「ジャイロセンサ」を備えることに相当する。
(ウ)引用発明の、「CCDイメージセンサ」、「撮影レンズ14」、「補正レンズ14cを水平方向に駆動するモータと、補正レンズ14cを垂直方向に駆動するモータ」、「手振れ補正制御部43」は、それぞれ、本件補正発明の、「撮像素子」、「レンズ」、「レンズを光軸と垂直な面内に位置決めするアクチュエータ」、「アクチュエータドライバ」に相当する。
(エ)引用発明は、「手振れ補正制御部43は、各ジャイロセンサの角速度信号を積分して振れ角度を算出し、この振れ角度を補正するための補正レンズ14cのシフト量を算出し、手振れ補正制御部43は、このシフト量に基づいて、モータの駆動信号を生成して補正レンズ駆動部42に出力し、補正レンズ駆動部42は、この駆動信号に基づいて補正レンズ14cをシフトさせて、光軸LAの振れを補正し」ており、このことは、本件補正発明の「アクチュエータドライバ」が、「ジャイロセンサの出力に応じて、駆動信号を生成してアクチュエータを駆動することに相当する。
(オ)引用発明は、「補正角度算出部60d」が、「2つの画像内の顔位置を求めて差分を算出し、この差分に基づいて、2つの顔位置を光学的に一致させるために必要な光軸補正角度を算出し」、「一方の撮像ユニットのみを制御して」「光軸角度を調節」するか、「2つの撮像ユニット12A,12Bを制御して光軸角度を調節する」ものであり、このことは、本件補正発明の「レンズの撮像素子に対する基準位置が、第1カメラモジュールと第2カメラモジュールとで設定可能」であることに相当する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「光学手振れ補正機能を有する第1カメラモジュールと、
光学手振れ補正機能を有する第2カメラモジュールと、
ジャイロセンサと、
を備え、
各カメラモジュールは、
撮像素子と、
レンズと、
前記レンズを光軸と垂直な面内に位置決めするアクチュエータと、 前記ジャイロセンサの出力に応じて、駆動信号を生成して前記アクチュエータを駆動するアクチュエータドライバと、
を備え、
前記レンズの前記撮像素子に対する基準位置が、前記第1カメラモジュールと前記第2カメラモジュールとで設定可能である、
撮像装置。」
【相違点】
(相違点1)
各カメラモジュールにつき、本件補正発明が、レンズの位置を示す位置検出信号を生成する位置検出素子を備えたのに対し、引用発明は、位置検出素子を備えていない点。
(相違点2)
アクチュエータドライバにつき、本件補正発明が、ジャイロセンサの出力に応じて、レンズの目標変位を示すターゲットコードを生成し、位置検出信号に応じた検出コードがターゲットコードに近づくようにフィードバック制御によって駆動信号を生成しているのに対して、引用発明は、シフト量を算出するものの、ターゲットコードを生成しておらず、位置検出信号に応じた検出コードがターゲットコードに近づくようにフィードバック制御によって駆動信号を生成していない点。
(相違点3)
レンズの前記撮像素子に対する基準位置につき、本件補正発明は、第1カメラモジュールと第2カメラモジュールとで独立して設定可能であるのに対して、引用発明は、独立して設定可能とは特定されない点。
(相違点4)
本件補正発明は、「各カメラモジュールのアクチュエータドライバには、レンズと撮像素子の相対的な位置関係が基準位置であるときの位置検出信号に応じた検出コードの値である基準値が保持されており、実際の撮影時において、各カメラモジュールのアクチュエータドライバは、ターゲットコードが、手ブレ補正によるレンズシフト量がゼロに対応する値であるときに、検出コードが基準値となるように、駆動信号を生成する」のに対して、引用発明は、そのような構成を採用していない点。
(4)判断
以下、各相違点について検討する。
ア 相違点1、2について
事案に鑑み、相違点1、2を併せて検討する。
手振れ補正を行うに際し、ジャイロセンサからの出力を用いるとともに、レンズの位置を検出する位置検出素子を備え、当該位置検出素子の出力も用いて、サーボ回路等でフィードバック制御を行うことは、後記周知文献1ないし3(後記カ参照)に開示されるように本願の出願前に周知の技術事項であり、当該技術事項を用いることにより、速く、正確にレンズの位置決めを行うことができるということもよく知られている。そうすると、当業者であれば、上記周知の技術事項を引用発明に適用する動機があるというべきである。
そして、引用発明に、上記周知の技術事項を適用すれば、レンズの位置を示す位置検出信号を生成する位置検出素子を備えることとなる(そうでなければ、フィードバック制御ができない。)。また、引用発明において、フィードバック制御する際に、ジャイロセンサの出力に応じた信号として、(「シフト量」に相当する信号に替えて)レンズの目標変位を示すターゲットコードとすること、位置検出信号に応じた検出コードがターゲットコードに近づくようにすることは、いずれも、当業者が適宜選択可能な設計上の事項に過ぎない。
結局、引用発明において、相違点1、2に係る本件補正発明の構成を採用することは当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点3について
引用発明においては、「最大光軸補正角度よりも小さいと判定された場合、本体制御部60は、一方の撮像ユニットのみを制御して光軸角度を調節」しているから、少なくともこのような場合には、一方の撮像ユニットのみが独立して制御されているといえる。また、本件補正発明における、「前記レンズの前記撮像素子に対する基準位置が、前記第1カメラモジュールと前記第2カメラモジュールとで独立して設定可能であり」との特定は、必ず「レンズの前記撮像素子に対する基準位置が、前記第1カメラモジュールと前記第2カメラモジュールとで独立して設定」されることを意味するものでもない。
そうすると、相違点3は実質的な相違であるとはいえない。
ウ 相違点4について
引用発明は、「ユニット制御部40が手振れ補正制御部43を制御して、被写体上で2つの撮像ユニット12A,12Bの各光軸LA,LBを補正して、被写体上で光軸LA,LBを合致させ」るものであるから、引用発明に、手振れ補正をフィードバック制御により行うための「位置検出素子」を配置すれば、当該位置検出素子を、「被写体上で光軸LA,LBを合致させ」るためにも活用して、フィードバック制御を行うことは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、「ユニット制御部40が手振れ補正制御部43を制御して、被写体上で2つの撮像ユニット12A,12Bの各光軸LA,LBを補正して、被写体上で光軸LA,LBを合致させ」ることをフィードバック制御により行う際には、目標となる値をどこかの部分が保持することになるといえるところ、当該「目標となる位置」を「手振れ補正制御部43」が保持するのは自然であるし、また、制御する際のパラメータとして手振れ補正の制御と合わせるべく「検出コード」を用いることも当業者が自然に行うことである。
また、その際、「実際の撮影時において、各カメラモジュールのアクチュエータドライバは、ターゲットコードが、手ブレ補正によるレンズシフト量がゼロに対応する値であるときに、検出コードが基準値となるように、駆動信号を生成する」ことは当然のことである。
エ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
オ したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
カ 周知文献
(ア)周知文献1:特開2009-145635号公報
「【0045】
次に、手振れによって被写体のぶれが生じた場合について説明する。レンズ駆動素子104によって駆動されるレンズの位置は、その光軸と撮像装置に備えられる撮像素子の中心が一致するため、内蔵CPU38は“0”を示すデジタルの補正された位置信号(HoleーX,HoleーY)を出力する。一方、手振れによって撮像装置が移動するため、積分回路32及びセンタリング処理回路34は撮像装置の移動量を示す振動成分信号(SVーX,SVーY)を出力する。
【0046】
サーボ回路24は、ADC20が出力する“0”を示す補正された位置信号(HoleーX)とセンタリング処理回路34が出力する振動成分信号(SVーX)とを加算した信号に応じて補正信号SRを生成する。このとき、補正された位置信号(HoleーX)は“0”であるにも関わらず、“0”でない振動成分信号(SVーX)が加算されているため、サーボ回路24はレンズを移動させる補正信号SRを生成する。この補正信号SRに応じてX軸のレンズ駆動素子104を制御する。同様に、ADC20が出力する“0”を示す補正された位置信号(HoleーY)とセンタリング処理回路34が出力する振動成分信号(SVーY)とを加算した信号に応じて、補正信号SRを生成する。このとき、補正された位置信号(HoleーY)は“0”であるにも関わらず、“0”でない振動成分信号(SVーY)が加算されているため、サーボ回路24はレンズを移動させる補正信号SRを生成する。この補正信号SRに応じてY軸のレンズ駆動素子104を制御する。サーボ回路24が出力する補正信号SRに基づいて、レンズ駆動素子104はレンズを移動させるため、撮像装置に備えられた撮像素子は手振れによる被写体のぶれを抑制した信号を得ることができる。このような制御を繰り返すことによって、防振制御回路200は手振れ補正制御を実現している。」
(イ)周知文献2:特開2012-134609号公報
「【0020】
<1.第1の実施の形態>
[複眼撮像装置の構成例]
図1は、本発明の実施の形態における複眼撮像装置100の一構成例を示すブロック図である。複眼撮像装置100は、レンズ位置指示部110と、加算器120および150と、左側PIDサーボ130と、左側シフトレンズ140と、右側PIDサーボ160と、右側シフトレンズ170と、補正値演算装置200とを備える。補正値演算装置200は、左側レンズ位置検出部210と、左側画像処理部220と、右側画像処理部230と、右側レンズ位置検出部240と、補正値演算部250とを備える。
【0021】
レンズ位置指示部110は、左側シフトレンズ140および右側シフトレンズ170の移動先の位置を指示するものである。レンズ位置指示部110は、複数の位置を指示する複数の指示値を生成して信号線501を介して加算器120および150と補正値演算部250とに出力する。それぞれの位置は、ピッチ軸上の座標とヨー軸上の座標とのうちの少なくも一方を含む。ここで、ピッチ軸は、左側シフトレンズ140および右側シフトレンズ170が露出した面を複眼撮像装置100の前面として左右方向に装置を貫通する軸である。ヨー軸は、複眼撮像装置100の上面から下面に向かって装置を貫通する軸である。そして、各指示値は、左側シフトレンズ140および右側シフトレンズ170の基準となる位置を原点とした座標を指示する。例えば、ピッチ軸においては、各シフトレンズの中心軸とピッチ軸とが交差する点の座標が、それぞれのシフトレンズの原点とされる。言い換えれば、指示値の示す位置は、基準位置に対する相対位置である。各位置の単位は、例えば、「μm」である。
【0022】
また、レンズ位置指示部110は、操作信号を生成して信号線502を介して補正値演算装置200へ出力する。操作信号は、ユーザの操作に基づいて調整モードに移行するか否かを指示する信号である。調整モードは、指示値を補正するための補正値を補正値演算装置200が演算するモードである。
【0023】
調整モードにおいては、指示値が出力されるたびに、所定の被写体が複眼撮像装置100により撮像される。この被写体は、特徴点を検出しやすいものが使用される。例えば、黒地に白い多角形を表示した試験用チャートが被写体として撮像され、この多角形の頂点が検出対象の特徴点とされる。この被写体が写った画像は、左側画像処理部220および右側画像処理部230により処理される。
【0024】
加算器120は、指示値および補正値CLを加算するものである。加算器120は、レンズ位置指示部110から指示値を受け取り、補正値演算装置200から補正値CLを受け取る。補正値CLは、指示値を補正するための値である。補正値CLを導出するための演算方法については、後述する。加算器120は、指示値に補正値CLを加算して、その結果を目標値として左側PIDサーボ130へ出力する。
【0025】
左側PIDサーボ130は、左側シフトレンズ140を目標値の示す位置に移動させるものである。左側PIDサーボ130は、加算器120から目標値を受け取り、左側レンズ位置検出部210が検出した左側シフトレンズ140の位置である左側レンズ検出位置を左側レンズ位置検出部210から受け取る。左側PIDサーボ130は、比例動作(Proportional Action:P動作)と、積分動作(Integral Action:I動作)と、微分動作(Derivative Action:D動作)の和を出力する。左側PIDサーボ130は、このPID制御により、左側レンズ検出位置が目標値となるように制御する。
【0026】
左側シフトレンズ140は、左目用の画像を撮像素子に結像するレンズである。左側シフトレンズ140は、左側PIDサーボ130により、ピッチ軸およびヨー軸に沿って可動される。」
(ウ)周知文献3:特開2011-215199号公報
「【0051】
低周波成分が除去された角度信号は補正感度回路168A,168Bに入力される。補正感度回路168A,168Bは角度信号にメカ係数を乗算することにより、補正レンズ141を変位させる変位信号を算出する。メカ係数は焦点距離に応じた値であり、焦点距離が大きいほどメカ係数の値は大きい。また、補正感度回路168A,168Bは変位信号に基準電圧を加算して補正レンズ141の目標位置信号を出力する。また、目標位置信号はリミット回路174A,174Bに入力され、ブレによる角度が補正可能な限界を越えている場合は越えた部分がカットされる。
【0052】
第2のA/Dコンバータ169A,169Bはホールセンサ142A,142Bからの補正レンズ141のアナログの現位置信号をデジタルの現位置信号に変換する。」
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和3年7月5日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年2月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~5に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものを含むものである。
引用文献1:特開2008-252254号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「近づくようにフィードバック制御によって」、「各カメラモジュールの前記アクチュエータドライバには、前記レンズと前記撮像素子の相対的な位置関係が前記基準位置であるときの前記位置検出信号に応じた前記検出コードの値である基準値が保持されており、「手ブレ補正によるレンズシフト量がゼロ」に対応する値であるときに、「前記検出コードが前記基準値となるように」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-008940