特許拒絶査定不服審判
2021-008294
分解促進剤及びこの分解促進剤を用いた環境浄化方法
- 審判番号
- 2021-008294
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-081203
- 請求日
- 2021年06月23日
- 審決日
- 2022年07月26日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】東急建設株式会社
- 【請求人代理人】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
- 【請求人】ADEKA総合設備株式会社
- 【請求人代理人】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 蔵野 雅昭
- 審判官 関根 裕
- 審判官 瀬下 浩一
- 分類
- P18 .121-Z (A62D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017- 81203「分解促進剤及びこの分解促進剤を用いた環境浄化方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月15日出願公開、特開2018-175529〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年4月17日の特許出願であって、令和2年8月25日付けで拒絶理由が通知され、同年10月26日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年3月11日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、同月23日に拒絶査定の謄本が送達された。
これに対して、令和3年6月23日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年10月6日に前置報告がなされ、その後、令和4年2月17日に上申書が提出されたものである。
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年6月23日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 手続補正の内容
令和3年6月23日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正を含むものである。本件補正前及び本件補正後の請求項1の記載は、以下のとおりである。下線は補正箇所を示す。
(1)本件補正前
「 土壌及び/又は地下水からなる浄化対象環境中の揮発性有機塩素化合物を微生物によって分解し、前記浄化対象環境を浄化するために、水素供与体とともに用いられる分解促進剤であって、
前記微生物が、Clostridium属、Dehalobacter属、Dehalococcoides属、Dehalospirilum属、Desulfobacterium属、Desulfomonas属、Desulfomonile属を含む群から選択される少なくとも1種の嫌気性微生物であり、
硫酸イオン除去剤を含有し、
前記硫酸イオン除去剤が、水と、バリウム塩とを少なくとも含有する水溶液であり、前記バリウム塩のうち、前記水溶液中のバリウムとしての含有量が、0.01~1.5質量%であることを特徴とする分解促進剤。」
(2)本件補正後
「 土壌及び/又は地下水からなる浄化対象環境中の揮発性有機塩素化合物を微生物によって分解し、前記浄化対象環境を浄化するために、水素供与体とともに用いられる分解促進剤であって、
前記微生物が、Clostridium属、Dehalobacter属、Dehalococcoides属、Dehalospirilum属、Desulfobacterium属、Desulfomonas属、Desulfomonile属を含む群から選択される少なくとも1種の嫌気性微生物であり、
硫酸イオン除去剤を含有し、
前記硫酸イオン除去剤が、水と、バリウム塩とを少なくとも含有する水溶液であり、前記バリウム塩のうち、前記水溶液中のバリウムとしての含有量が、0.08~0.8質量%であることを特徴とする分解促進剤。」
2 本件補正の目的
本件補正は、請求項1に係る発明の「水溶液中のバリウムとしての含有量」について、本件補正前に「0.01~1.5質量%」であったものを「0.08~0.8質量%」に限定するものである。
また、本件補正前後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下で検討する。
3 独立特許要件についての判断
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1の(2)に記載したとおりのものである。
(2)拒絶査定で引用された引用文献及びその記載事項
引用文献1:鶴岡佑樹、虫明晋哉、伊藤浩、クロロエテン類浄化に用いるバイオスティミュレーション用薬剤の適用検討、東急建設技術研究所報No.41、2015年、p.75-80
引用文献2:特開2005-177585号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2005-185967号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2002-210475号公報(周知技術を示す文献)
ア 本願の出願日より前に公開された引用文献1には、以下の記載がある。
(ア)p.75「要約」
「
[図:0001388861000001.jpg]
」
(イ)p.75「1. はじめに」
「
[図:0001388861000002.jpg]
・・・
[図:0001388861000003.jpg]
・・・」
(ウ)p.75「2.1 試験目的」
「
[図:0001388861000004.jpg]
」
(エ)p.75~76「2.2 使用した地下水」
「
[図:0001388861000005.jpg]
[図:0001388861000006.jpg]
[図:0001388861000007.jpg]
」
(オ)p.76「2.3 試験手順」
「
[図:0001388861000008.jpg]
」
(カ)p.76「3.1 サイトA-1の地下水を用いた試験」
「
[図:0001388861000009.jpg]
[図:0001388861000010.jpg]
[図:0001388861000011.jpg]
[図:0001388861000012.jpg]
[図:0001388861000013.jpg]
」
イ 本願の出願日より前に公開された引用文献2には、以下の記載がある。下線は、当審が付した。
「【0012】
本発明の写真廃液の処理方法の特徴は、写真廃液に生物処理を施すに先だって、物理化学的酸化処理とそれに続く硫酸イオン低減処理を施すことである。物理化学的酸化処理と生物処理を組合せて行う複合処理方法は公知であるが(前記従来技術参照)、両処理の間に硫酸イオン低減処理を施すと、生物処理における脱窒作用が促進されて全窒素量を排水基準を満たすまで低減できることが判明した。
【0013】
・・・
硫酸イオン低減処理は、硫酸イオンを難溶性塩にして被処理廃液から分離することが実際的であり、難溶性塩形成には、アルカリ土類金属化合物が適している。とくに硫酸塩の溶解度積が小さいカルシウム化合物やバリウム化合物が好ましい。
硫酸塩の低減の程度は、硫酸イオンの廃液中の濃度が1g/L以下とするのがよく、このレベルまで低減すると写真廃液成分の脱窒反応阻害作用は認められなくなる。
ウ 本願の出願日より前に公開された引用文献3には、以下の記載がある。下線は、当審が付した。
「【0002】
工場等からの廃水のような有機性廃水の処理においては、嫌気性処理のうちグラニュール(例えばグラニュールメタン菌)を利用するUASB式(Upflow Anaerobic Sludge Blanket:上向流嫌気性汚泥床式)或いはEGAB式(Expanded Granular Sludge Blanket:膨張粒状スラッジブランケット式)のメタン発酵処理が多く採用されている(特許文献1参照)。グラニュールを利用した処理の場合、処理槽内に嫌気性微生物を保持できるため、高負荷で廃水を処理することができる。
【0003】
しかしながら、有機性廃水中に硫酸イオンや亜硫酸イオンが含まれていると、嫌気性処理槽において硫化水素(H2S)等の硫化物が発生し、これがメタン発酵を阻害する。
【0004】
このため、従来においては、嫌気性処理槽の前段に、有機性廃水から硫酸イオン及び亜硫酸イオンを除去するための手段を設けている。すなわち、亜硫酸イオンに対して、曝気により亜硫酸イオンを大気中に放散するための曝気槽を設けている。また、硫酸イオンに対しては、バリウム等の無機剤と反応させて硫酸バリウムとするための反応槽と、得られた硫酸バリウムを沈降分離させる沈殿槽とを設けているのである。」
エ 本願の出願日より前に公開された引用文献4には、以下の記載がある。下線は、当審が付した。
「【請求項1】 硫酸酸性ホウ素含有排水にバリウム化合物および/またはストロンチウム化合物を添加して硫酸イオンを沈殿処理し、生じた沈殿を固液分離処理し、硫酸イオンが低減されたホウ酸含有溶液を得ることを特徴とする、硫酸酸性ホウ素含有排水の処理方法。
【請求項2】 バリウム化合物および/またはストロンチウム化合物が硫酸イオンに対してほぼ当量となるように、硫酸酸性ホウ素含有排水に添加されることを特徴とする請求項1記載の方法。」
(3)引用文献1に記載された発明
ア 引用文献1の(ア)p.75「要約」には、「テトラクロロエチレン等のクロロエテン類による土壌地下水汚染対策手法であるバイオスティミュレーション法」において、「栄養剤のみを画一的に使用するだけではなく,サイトの地下水環境に合わせ調節剤を使用することで、浄化速度の促進,高濃度汚染に対する適用性等」「が示唆された」ことが記載されている。
イ 引用文献1の(イ)p.75「1. はじめに」には、「テトラクロロエチレン」が「PCE」であること、「バイオスティミュレーション法は」「在来微生物を活用して汚染物質を嫌気的分解,浄化する」ものであること、及び「在来微生物は栄養剤(水素供与体)を与えてやることで,土中での活動が活発化すること」が記載されている。
ウ 引用文献1の(ウ)p.75「2.1 試験目的」には、「栄養剤(水素供与体)に環境因子を調整する為の調節剤を加えること」が記載され、同「表1 環境因子と薬剤」には、環境因子を調節する薬剤の一つとして、イオン除去剤が含まれることが記載されている。
また、同箇所には、「硫酸イオンは栄養剤が持つ水素と反応してしまうため分解阻害物質とされている」ことが記載され、「イオン除去剤」が「分解阻害物質(硫酸イオン)」を除去するものであることが記載されている。
エ 引用文献1の(カ)p.76「3.1 サイトA-1の地下水を用いた試験」には、「条件マル1(当審注:丸数字1のこと。以下同様。)-4」として、「栄養剤A」、「pH調整剤」及び「阻害物質除去剤」を添加した条件の試験を行ったこと、「初期濃度6mg/LとなるようにPCEを添加し濃度調整した」こと、「試験前のブランクのDehalococcoides属菌数は1.8×102copies/mLであった」こと、及び「阻害物質除去剤を添加した条件(マル1-4が記載されている。)については」「阻害物質除去剤として添加した調整剤が有効に作用したと考えられる」ことが記載されている。
したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
<引用発明>
「PCE等のクロロエテン類による土壌地下水汚染対策手法として、在来微生物を活用して汚染物質を嫌気的分解、浄化するバイオスティミュレーション法において用いる栄養剤(水素供与体)に加えられて環境因子を調整する調節剤であって、
在来微生物は、Dehalococcoides属菌であり、
調節剤は、硫酸イオンに対して使用されるイオン除去剤を含む、調整剤。」
(4)本件補正発明と引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「土壌地下水汚染」は本件補正発明の「土壌及び/又は地下水から成る浄化対象環境」に相当する。また、引用発明の「PCE等のクロロエテン類」は本願の明細書の段落【0023】において「揮発性有機塩素化合物」の具体例として例示されている物質であるから、本件補正発明の「揮発性有機塩素化合物」に相当する。
イ 引用発明の「調整剤」は、「栄養剤(水素供与体)に加えられて環境因子を調整する」ことにより微生物による分解、浄化を補助するものであって、「PCE等のクロロエテン類による土壌地下水汚染対策手法として、在来微生物を活用して汚染物質を嫌気的分解、浄化するバイオスティミュレーション法」に用いられるものであるから、本件補正発明の「土壌及び/又は地下水からなる浄化対象環境中の揮発性有機塩素化合物を微生物によって分解し、前記浄化対象環境を浄化するために、水素供与体とともに用いられる分解促進剤」に相当する。
ウ 引用発明の「Dehalococcoides属菌」は、本件補正発明の「微生物が、Clostridium属、Dehalobacter属、Dehalococcoides属、Dehalospirilum属、Desulfobacterium属、Desulfomonas属、Desulfomonile属を含む群から選択される少なくとも1種の嫌気性微生物」に相当する。
エ 引用発明の「硫酸イオンに対して使用されるイオン除去剤」は、本件補正発明の「硫酸イオン除去剤」に相当する。
(5)一致点及び相違点
本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「土壌及び/又は地下水からなる浄化対象環境中の揮発性有機塩素化合物を微生物によって分解し、前記浄化対象環境を浄化するために、水素供与体とともに用いられる分解促進剤であって、
前記微生物が、Clostridium属、Dehalobacter属、Dehalococcoides属、Dehalospirilum属、Desulfobacterium属、Desulfomonas属、Desulfomonile属を含む群から選択される少なくとも1種の嫌気性微生物であり、
硫酸イオン除去剤を含有する分解促進剤。」
<相違点>
「硫酸イオン除去剤」が、本件補正発明は「水と、バリウム塩とを少なくとも含有する水溶液であり、前記バリウム塩のうち、前記水溶液中のバリウムとしての含有量が、0.08~0.8質量%である」のに対し、引用発明の「硫酸イオンに対して使用されるイオン除去剤」は、その成分及びその含有割合が明らかでない点。
(6)相違点についての判断
まず、引用発明の「硫酸イオンに対して使用されるイオン除去剤」(以下、「除去剤」ともいう。)の成分について検討する。硫酸イオンがバリウムイオンと反応して硫酸バリウムが沈殿する現象は、Ba2++SO42-=BaSO4というバリウムイオンと硫酸イオンの化学反応式とともに当業者に周知な事項である。また、この現象は硫酸イオンの除去(低減)のために広く工業的に応用されていて、例えば、引用文献2の【0012】~【0013】には、写真廃液に生物処理を施すに先だって施される硫酸イオン低減処理において、難溶性塩形成にはカルシウム化合物やバリウム化合物が好ましいことが記載され、引用文献3の【0002】~【0004】には、有機性排水の処理において、嫌気性微生物によるメタン発酵が阻害されないように、硫酸イオンをバリウム等の無機剤と反応させて硫酸バリウムを沈降分離することが記載され、引用文献4の【請求項1】には、硫酸酸性ホウ素含有排水にバリウム化合物および/またはストロンチウム化合物を添加して硫酸イオンを沈殿処理し、硫酸イオンが低減されたホウ酸含有溶液を得ることが記載されている。
そうすると、引用発明において、除去剤の成分をバリウム化合物とすることは、当業者が容易になし得たことである。
次に、その含有割合について検討する。硫酸イオンを除去するのに必要なバリウムイオンの量(モル数)は、上記したBa2++SO42-=BaSO4という化学反応式から理解できるとおり、理論上は浄化対象に含まれる硫酸イオンの総量(モル数)と一致するから、使用するバリウムイオンの濃度は、使用する分解促進剤の総量を考慮して、浄化対象に含まれる硫酸イオンと反応するバリウムイオンの量が十分となるようにすることを要するものである。
本件補正発明の「水溶液中のバリウムとしての含有量が、0.08~0.8質量%」という範囲は、本件補正発明において、浄化対象の硫酸イオンの濃度が特定されおらず、浄化対象に含まれる硫酸イオンの総量や、浄化に用いられる硫酸イオン除去剤の総量も不明であることを勘案すれば、バリウムイオンの量が不足する場合を包含するものであって、技術的に意味のある数値範囲とは認められない。
そうすると、「水溶液中のバリウムとしての含有量」が「0.08~0.8質量%」とすることは、当業者が適宜なし得たことであるから、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7)請求人の主張について
請求人は審判請求書及び上申書において、本件補正発明の「水溶液中のバリウムとしての含有量が、0.08~0.8質量%であること」の数値範囲の臨界的意義について、縷々説明をしている。
しかしながら、本願の明細書における「水溶液中のバリウムとしての含有量」は、段落【0043】に[微生物による分解の促進効果の確認試験1]として「水酸化バリウムを0.185質量%の水溶液とした硫酸イオン除去剤」を用いたこと、及び、同【0056】に[微生物による分解の促進効果の確認試験2]として「水酸化バリウムを0.185質量%の水溶液とした硫酸イオン除去剤」を用いたことが記載されているのみで、「0.185質量%」以外の濃度についての実験は一切なされていない。そうすると、本願の明細書から、「0.08~0.8質量%」という範囲の臨界的意義を読み取ることはできない。
また、上記(6)で述べたとおり、硫酸イオン除去に最適なバリウム含有量は、浄化対象に含まれる硫酸イオン濃度やイオン総量に対応して決定されるべき量と考えられるから、分解促進剤に含まれる硫酸イオン除去剤水溶液中のバリウムとしての含有量を「0.08~0.8質量%」の範囲に特定することに、特段の技術的意義は認められない。
さらに、実際の浄化現場を想定した場合、浄化時に施用されるバリウムイオンの総量は、施用する分解促進剤の総量に比例して変化するものとなるから、浄化対象の硫酸イオンを除去するという目的に照らせば、「水溶液中のバリウムとしての含有量」を「0.08~0.8質量%」の範囲に設定したことによる影響は、施用する分解促進剤の総量に依存することになる。よって、「0.08~0.8質量%」という数値範囲のみに臨界的意義があるとは考えにくい。
また、審判請求書に添付された実験成績証明書のデータは、前提条件が揃っていない比較困難なものであって、「水溶液中のバリウムとしての含有量が、0.08~0.8質量%であること」の数値範囲の臨界的意義を示すのに十分なものとはいえない。例えば、上記数値範囲の意味について、数値範囲外の【添付資料2】でクロロエテン類が消失しているのに対し、数値範囲内の【添付資料3】、【添付資料7】及び【添付資料9】でクロロエテン類が残存していることから、「0.08~0.8質量%」という数値範囲と浄化の相関関係に有意な方向性は見られない。また、硫酸イオン濃度の推移について、【添付資料2】、【添付資料8】、【添付資料10】~【添付資料12】において、一度沈殿したはずの硫酸イオンが再び増加していたり、【添付資料5】及び【添付資料6】において、120日や210日を過ぎてから硫酸イオンが減少(バリウム塩の効果なら、硫酸イオンを沈殿させるのに100日以上もかかるはずがない。)していたりするなど、実験データとして不可解な点も見られる。
さらに、請求人は、令和4年2月17日に提出した上申書において、硫酸イオン除去剤のバリウム含有量を「0.148~0.8質量%」に補正する補正案を提示している。しかし、上述したとおり、添加する硫酸イオン除去剤中の成分の含有量は、浄化対象の硫酸イオン濃度が特定されることにより、意味を持つようになる数値と考えられるから、上記補正案により、拒絶理由が解消されるものではない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(8)独立特許要件についての判断のむすび
上記で検討したとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 補正の却下の決定のむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~6に係る発明は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1の(1)に記載したとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は次の引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:鶴岡佑樹、虫明晋哉、伊藤浩、クロロエテン類浄化に用いるバイオスティミュレーション用薬剤の適用検討、東急建設技術研究所報No.41、2015年、p.75-80(再掲)
引用文献2:特開2005-177585号公報(再掲)
引用文献3:特開2005-185967号公報(再掲)
引用文献4:特開2002-210475号公報(再掲)
3 引用文献の記載事項
引用文献の記載事項及び引用発明は、上記第2の[理由]の3の(2)及び(3)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]の3で検討した本件補正発明の「水溶液中のバリウムとしての含有量」が「0.08~0.8質量%」であるという限定を、「0.01~1.5質量%」の範囲に拡張したものである。
そして、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに上記の限定を付加した本件補正発明は、上記第2の[理由]の3に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうすると、本願発明も、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-008294