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特許拒絶査定不服審判

2021-007741

スポーツ飲料

審判番号
2021-007741
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2016-165386
請求日
2021年06月14日
審決日
2023年02月27日
公報発行日
2023年03月31日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
  • 【請求人】日油株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人雄渾
審判長/審判官
  • 審判長 平塚 政宏
  • 審判官 ▲吉▼澤 英一
  • 審判官 大島 祥吾
分類
P18 .561-WY (A23L) / P18 .121-WY (A23L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法17条の2第3項特許法53条1項特許法159条1項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第3項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2016-165386「スポーツ飲料」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月 1日出願公開、特開2018- 29552、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成28年8月26日の出願であって、令和2年5月22日付けで拒絶理由が通知され、同年8月4日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月9日付けで拒絶理由が通知され、令和3年2月18日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年3月12日付けで拒絶査定がなされ、同年6月14日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされ、同年8月6日に前置報告がなされ、同年9月12日に上申書が提出されたものである。 第2 令和3年6月14日付けの手続補正についての補正の却下の決定 1.結論 令和3年6月14日付けの手続補正を却下する。 2.理由 (1)補正の内容 令和3年6月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、審判請求と同時にされた補正であり、令和3年2月18日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面をさらに補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1について、 「中鎖脂肪酸トリグリセリドを含有する脂質を油滴として含有し、前記油滴の粒子径がメディアン径として100nm以下であり、 前記中鎖脂肪酸トリグリセリドを含有する脂質の含有量が0.1質量%以上7質量%以下であり、 前記中鎖脂肪酸トリグリセリドを含有する脂質中の中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有量が脂質に対して80質量%以上である、スポーツ飲料。」 を、 「中鎖脂肪酸トリグリセリドを含有する脂質を油滴として含有し、前記油滴の粒子径がメディアン径として100nm以下であり、 前記中鎖脂肪酸トリグリセリドを含有する脂質の含有量が0.1質量%以上7質量%以下であり、 前記中鎖脂肪酸トリグリセリドを含有する脂質中の中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有量が脂質に対して80質量%以上であり、 糖類の含有量が5.75質量%以下である、スポーツ飲料。」 とする、補正を含むものである。 (2)本件補正の適否について 本件補正の請求項1には、上記(1)のとおり、「糖類の含有量が5.75質量%以下である」との事項が記載されている。 そして、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「当初明細書等」という。)には、【0010】において「エネルギー補給のための成分として脂質を利用するため、糖質を利用する場合に比べて甘味を抑えることができる」ことが記載されており、【0044】において「本発明のスポーツ飲料には、必要に応じて甘味料、酸味料、無機塩、アミノ酸、ポリペプチド・タンパク質、核酸、有機酸塩、香料、果汁、栄養強化剤、着色料、保存料、抗酸化剤等を添加することができる」ことが記載されており、【0045】において具体的な甘味料が記載されており、【0060】ないし【0063】においてブドウ糖果糖液糖を49.2質量%配合した乳化組成物の粗乳化液を、高圧ホモジナイザーを用いて均質化して得られ、油滴の粒子径が86nmの乳化組成物である「試料1」が記載されており、【0065】において試料1を1.0質量%含む処方例1が記載されており、【0066】において試料1を3.0質量%含む処方例2が記載されており、【0068】において試料1を13.3質量%含む処方例3が記載されており、【0069】において試料1を16.7質量%含む処方例4が記載されている。 しかしながら、当初明細書等には、糖類を含有することは記載されているものの、「糖類の含有量が5.75質量%以下である」ことについては直接記載されておらず、当初明細書等の上記各記載事項を検討しても、「糖類の含有量が5.75質量%以下である」ことが、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)であれば、出願時の技術常識に照らして、当初明細書等に記載されていると同然であると理解することもできない。 そうすると、本件補正後の請求項1に記載された「糖類の含有量が5.75質量%以下である」が、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるとする根拠は見出せない。 したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。 ここで、本件請求人は、令和3年9月12日提出の上申書において、 「ここで、段落[0060]、[0065]-[0066]、[0068]-[0069]において、本願発明のスポーツ飲料の処方が記載されておりますが、各処方における糖類の含有量であれば、本願発明の効果である、甘みが抑えられていることが当業者において理解されます。すなわち、本願発明のスポーツ飲料は、甘味を抑えることができるものであり、この効果を発揮できる糖類の含有量が各処方において記載され、これら含有量の最大値を上限とすることにより、これを根拠に少なくとも本願発明の効果を発揮できる範囲を特定することができることは、当業者において理解できるものです。また、糖類の含有量が増えると甘くなることは技術常識であり、両者の関係には連続性があります。糖類利用による不快感を生じさせない範囲の上限値設定の根拠が、処方例において容易に見い出せるものであり、本願当初明細書の記載において、「糖類及びスポーツ飲料に関する一般的事項や、処方例1-4という特定のスポーツ飲料を構成する糖類(組成不明のブドウ糖果糖液糖、ショ糖、及び/又はブドウ糖)の含有量が個別に記載されているに留まり、当該記載を検討しても、スポーツ飲料における糖類の含有量の上限値(連続する数値範囲の境界)を特定する補正の根拠となる記載箇所が存在するものとは解されない。」との原審の審査官殿のご指摘は失当と考えます。 ・・・ 裁判例においては、「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項」について、「当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項を意味する」とされ、補正について、「当該補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるときは、当該補正は「明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる(知財高裁平成18年(行ケ)第10563号同20年5月30日特別部判決・判例タイムズ1290号224頁参照)。」と判示されております。さらに、知財高裁平成29年(行ケ)第10216号(平成30年8月22日判決)においては、この判決を受け、発明の名称を「染毛剤,その使用方法及び染毛剤用品」とする発明について,当初明細書等に開示されている乳化試験機の付属品である撹拌羽根の寸法(寸法自体は当初明細書には記載されていない。)を追加する補正について、証拠資料として提出されたカタログ(寸法が記載されている。)等から総合的に判断し、新たな技術的事項導入には当たらないことから、撹拌羽根の寸法を請求項に追加する補正が新規事項の追加に当たらないと判示されています。本願発明において、スポーツ飲料における糖類の含有量の上限値を「5.75質量%以下」する補正は、「甲第1号証」の日本農林規格基準の規定にあるブドウ糖果糖液糖における糖分の基準値に基づいて算出した値であり、ブドウ糖果糖液糖における糖分については当初明細書等に開示されてはいなくても、新たな技術的事項を導入するものではないので、上限値の算出のための基準値として利用でき、その結果において導かれた算出値を上限値として補正することは、上記の判示内容に照らしても、新規事項の追加には当たらず、補正として認められるものと考えます。」と主張している。 しかしながら、本件請求人が令和3年6月14日提出の審判請求書において提出した甲第1号証(日本農林規格、JAS0208「異性化液糖及び砂糖混合異性化液糖」、2019年10月18日改正)には、 「3.5 異性化液糖 ぶどう糖果糖液糖(3.2)・・・ ・・・ 4.1 異性化液糖 4.1.1 糖分 糖分は,6.2によって試験したとき,70%以上とする。」(2ページ) と記載されているが、上記「試料1」に配合されている「ブドウ糖果糖液糖」中の糖分の割合が下限である70%であることが、甲第1号証の当該記載から、当業者といえども自明であるとはいえないし、処方例4の糖分の割合が、糖分の割合を70%として算出された「5.75質量%」であることが、当業者といえども自明であるともいえず、さらに、上記裁判例の判示事項は、本件補正の適否の判断に影響を与えるものではない。 よって、本件請求人の上記主張は採用できない。 (3)本件補正についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第4 判断 令和3年6月14日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和3年2月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものである。 そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-007741

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