特許拒絶査定不服審判
2021-007258
遊技機
- 審判番号
- 2021-007258
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-236040外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年06月03日
- 審決日
- 2021年12月28日
- 公報発行日
- 2022年03月25日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .55 -Z (A63F) / P18 .161-Z (A63F) / P18 .572-Z (A63F) / P18 .575-Z (A63F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条の2
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-236040号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月24日出願公開、特開2019- 98120号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年12月8日の出願であって、令和1年12月25日に手続補正書が提出され、令和2年6月30日付けで拒絶の理由が通知されたところ、同年8月27日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月27日付けで最後の拒絶の理由が通知され、それに対し、同年12月23日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和3年2月17日付け(謄本送達日:同年3月9日)で、令和2年12月23日付け手続補正書でした補正が却下されるとともに拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、それに対して、令和3年6月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書(以下、この手続補正書による補正を「本件補正」という。)が提出されたものである。
第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の概要
本件補正は、特許請求の範囲を補正する補正であり、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前の令和2年8月27日に提出された手続補正書において、
「【請求項1】
遊技中に抽選契機が発生すると、遊技において所定の抽選を実行する抽選実行手段と、
電力供給の遮断に際し、遊技の内容の制御に利用する記憶領域の記憶内容をバックアップ情報として保存する退避処理を含む電断時処理を実行する電断時処理実行手段と、
電力供給の開始に際し、前記バックアップ情報に基づいて前記記憶領域の記憶内容を遊技の内容の制御に利用可能な状態に復帰させる復帰処理を実行する復帰時処理実行手段と、
前記復帰処理の後に遊技機本体を構成する開閉部材が開放中であることを条件に、少なくとも前記所定の抽選の当選確率に関する設定の処理を遊技中以外に実行可能であり、前記開閉部材が開放中でも前記設定の処理を終了する事が可能な設定手段とを備えた遊技機。」とあったものを、
「【請求項1】
遊技中に抽選契機が発生すると、遊技において所定の抽選を実行する抽選実行手段と、
電力供給の遮断に際し、遊技の内容の制御に利用する記憶領域の記憶内容をバックアップ情報として保存する退避処理を含む電断時処理を実行する電断時処理実行手段と、
電力供給の開始に際し、前記バックアップ情報に基づいて前記記憶領域の記憶内容を遊技の内容の制御に利用可能な状態に復帰させる復帰処理を実行する復帰時処理実行手段と、
電力供給の開始後に遊技機本体を構成する開閉部材が開放中であることを条件に、少なくとも前記所定の抽選の当選確率に関する設定の処理を遊技中以外に実行可能であり、前記開閉部材が開放中でも前記設定の処理を終了する事が可能な設定手段とを備えた遊技機。」とする補正である(下線は、補正箇所を明示するために当審で付した。)。
2 本件補正の適否
(1)新規事項
本件補正は、補正前の請求項1について、
「前記復帰処理の後に遊技機本体を構成する開閉部材が開放中であることを条件に、少なくとも前記所定の抽選の当選確率に関する設定の処理を遊技中以外に実行可能であり」という記載を、
「電力供給の開始後に遊技機本体を構成する開閉部材が開放中であることを条件に、少なくとも前記所定の抽選の当選確率に関する設定の処理を遊技中以外に実行可能であり」とする補正事項である。
そして、上記補正事項は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の明細書【0079】-【0081】、【0163】、【0905】、【図10】、【図74】、【図75】に記載された事項であり、新たな技術事項を導入するものではないから、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定を満たす。
(2)本件補正の目的
ア 補正事項について
上記補正事項は、「遊技機本体を構成する開閉部材が開放中であることを条件に、」「遊技中以外に実行可能であ」る「前記所定の抽選の当選確率に関する設定の処理」を実行するタイミングについて、本件補正前に「前記復帰処理の後に」としていたのを、本件補正後に「電力供給の開始後に」とするものである。
そして、本件補正前の請求項1において、「電力供給の開始に際し、前記バックアップ情報に基づいて前記記憶領域の記憶内容を遊技の内容の制御に利用可能な状態に復帰させる復帰処理を実行する復帰時処理実行手段」と記載されているとおり、本件補正前の請求項1は、「復帰処理」を「電力供給の開始に際し」実行することを特定している。そして、遊技機の分野において、遊技を進行するために必要な各種の処理が、電力供給の開始後に行われることは技術常識であるから、「復帰処理」は、電力供給の開始後に行われるものであり、本件補正前の請求項1が特定する「所定の抽選の当選確率に関する設定の処理」を実行するタイミングである「復帰処理の後」は、電力供給の開始後のいずれかのタイミングを意味すると解される。
これに対し、本件補正により、「所定の抽選の当選確率に関する設定の処理」を実行するタイミングが、「電力供給の開始後」であることが特定されているものの、具体的なタイミングは記載されていないから、当該タイミングには、「電力供給の開始後」の全てのタイミングが包含されることになる。
そうすると、「所定の抽選の当選確率に関する設定の処理」が実行されるタイミングを「復帰処理の後」から「電力供給の開始後」とする本件補正は、本件補正前の「所定の抽選の当選確率に関する設定の処理」を実行するタイミングを限定しているとはいえない。
したがって、上記補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当しない。
そして、上記補正事項が、同法第17条の2第5項第1、3及び4号にそれぞれ掲げる請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないことは明らかである。
イ 本件補正の目的についてのむすび
上記アより、本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
3 本願補正発明の独立特許要件についての検討
本件補正が目的外補正であることを理由として却下すべきであることは、上記2(2)イで説示したとおりであるが、仮に本件補正が特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとして、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。
(1)本願補正発明について
本願補正発明は、上記1の「本件補正の概要」に示した次のとおりのものである(A~Eは、本願補正発明を分説するため当審にて付与した)。
(本願補正発明)
「【請求項1】
A 遊技中に抽選契機が発生すると、遊技において所定の抽選を実行する抽選実行手段と、
B 電力供給の遮断に際し、遊技の内容の制御に利用する記憶領域の記憶内容をバックアップ情報として保存する退避処理を含む電断時処理を実行する電断時処理実行手段と、
C 電力供給の開始に際し、前記バックアップ情報に基づいて前記記憶領域の記憶内容を遊技の内容の制御に利用可能な状態に復帰させる復帰処理を実行する復帰時処理実行手段と、
D 電力供給の開始後に遊技機本体を構成する開閉部材が開放中であることを条件に、少なくとも前記所定の抽選の当選確率に関する設定の処理を遊技中以外に実行可能であり、前記開閉部材が開放中でも前記設定の処理を終了する事が可能な設定手段とを備えた
E 遊技機。」
(2)引用文献等に記載されている事項
令和3年2月17日付けの補正の却下の決定に引用された、本願の出願日前の他の特許出願であって、本願の出願後に出願公開された特願2017-177678号(特開2019-51081号)(出願日:平成29年9月15日、出願人:株式会社三洋物産、発明者:倉田豪)(以下、「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 記載事項
(ア)「【0011】
パチンコ機10は、図1に示すように、当該パチンコ機10の外殻を形成する外枠11と、この外枠11に対して前方に回動可能に取り付けられた遊技機本体12と、を有する。外枠11は木製の板材を四辺に連結し構成されるものであって矩形枠状をなしている。パチンコ機10は、外枠11を島設備に取り付け固定することにより、遊技ホールに設置される。なお、パチンコ機10において外枠11は必須の構成ではなく、遊技ホールの島設備に外枠11が備え付けられた構成としてもよい。
・・・・・
【0030】
第1作動口33又は第2作動口34への入賞をトリガとして当たり抽選が行われる。そして、当該抽選結果は特図ユニット37及び可変表示ユニット36の図柄表示装置41における表示演出を通じて明示される。」
(イ)「【0063】
主制御装置60は、遊技の主たる制御を司る主制御基板61と、電源を監視する停電監視基板67と、を具備している。主制御基板61には、MPU62が搭載されている。MPU62には、制御部及び演算部を含む演算処理装置である主側CPU63の他に、主側ROM64、主側RAM65及び管理用IC66が内蔵されている。なお、MPU62には、上記素子以外に、割込回路、タイマ回路、データ入出力回路、乱数発生器としての各種カウンタ回路などが内蔵されている。
・・・・・
【0080】
主側CPU63は遊技に際し各種カウンタ情報を用いて、大当たり発生抽選、特図表示部37aの表示の設定、図柄表示装置41の図柄表示の設定、普図表示部38aの表示の設定などを行うこととしており、具体的には、図7に示すように、当たり発生の抽選に使用する当たり乱数カウンタC1と、大当たり種別を判定する際に使用する大当たり種別カウンタC2と、図柄表示装置41が外れ変動する際のリーチ発生抽選に使用するリーチ乱数カウンタC3と、当たり乱数カウンタC1の初期値設定に使用する乱数初期値カウンタCINIと、特図表示部37a及び図柄表示装置41における表示継続時間を決定する変動種別カウンタCSと、を用いることとしている。さらに、第2作動口34の普電役物34aを普電開放状態とするか否かの抽選に使用する普電役物開放カウンタC4を用いることとしている。なお、上記各カウンタC1~C3,CINI,CS,C4は、主側RAM65の各種カウンタエリア65bに設けられている。
・・・・・
【0096】
これら低確当否テーブル64a~64fは高い設定値ほど大当たり結果の当選確率が高くなるように設定されている。具体的には、設定1用の低確当否テーブル64aが参照された場合には約1/320で大当たり結果となり、設定2用の低確当否テーブル64bが参照された場合には約1/310で大当たり結果となり、設定3用の低確当否テーブル64cが参照された場合には約1/300で大当たり結果となり、設定4用の低確当否テーブル64dが参照された場合には約1/290で大当たり結果となり、設定5用の低確当否テーブル64eが参照された場合には約1/280で大当たり結果となり、設定6用の低確当否テーブル64fが参照された場合には約1/270で大当たり結果となる。これにより、パチンコ機10の設定状態が高い設定値である方が低確率モードにおいて大当たり結果が発生し易くなり、遊技者にとって有利となる。」
(ウ)「【0710】
上記第1の実施形態ではMPU62に管理用IC66が設けられている構成としたが、本実施形態ではMPU62に管理用IC66が設けられていない。管理用IC66が設けられていない代わりに、本実施形態では遊技履歴を管理するための処理が主側CPU63にて実行される。また、本実施形態では主側CPU63は特定制御と非特定制御とに区別して各種制御を実行する。具体的には、遊技履歴の管理に関する制御が非特定制御とされ、遊技者による遊技操作に基づき遊技を進行させるための制御を含めて非特定制御以外の制御が特定制御とされている。
・・・・・
【0721】
ここで、主側CPU63において特定制御に対応する処理を実行する場合には、主側CPU63は特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222への情報の書き込みが可能であるとともに、特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222からの情報の読み出しが可能である。一方、主側CPU63において特定制御に対応する処理を実行する場合には、主側CPU63は非特定制御用のワークエリア223及び非特定制御用のスタックエリア224からの情報の読み出しは可能であるものの、非特定制御用のワークエリア223及び非特定制御用のスタックエリア224への情報の書き込みは不可である。これにより、特定制御に対応する処理が実行されている状況において、非特定制御に対応する処理にて利用される情報を誤って消去してしまわないようにすることが可能となる。」
(エ)「【0907】
その後、ステップS5019にて設定値更新処理を実行した後に、ステップS5012の処理に移行する。以下、設定値更新処理について説明する。図85は設定値更新処理を示すフローチャートである。なお、設定値更新処理におけるステップS5101~ステップS5114の処理は、主側CPU63において特定制御用のプログラム及び特定制御用のデータを利用して実行される。
・・・・・
【0923】
また、設定値更新処理が完了しない場合には遊技を進行させるための処理に復帰しない構成において、設定値更新処理において選択した設定値を確定させて当該設定値更新処理を終了させるためには、アウト口24aに遊技球を入球させてアウト口検知センサ48aに遊技球を検知させ、その後に設定キー挿入部68aをOFF操作する必要がある。これにより、設定値更新処理を不正に実行させたとしても、その後に設定値更新処理を終了させて遊技を進行させるための処理に復帰させるための操作を行いづらくさせることが可能となる。
・・・・・
【1142】
まず電源投入ウェイト処理を実行する(ステップS6601)。当該電源投入ウェイト処理では、例えばメイン処理が起動されてからウェイト用の所定時間(具体的には1秒)が経過するまで次の処理に進行することなく待機する。かかる電源投入ウェイト処理の実行期間において図柄表示装置41の動作開始及び初期設定が完了することとなる。その後、主側RAM65のアクセスを許可する(ステップS6602)。
【1143】
その後、主側RAM65における特定制御用のワークエリア221に設けられた停電フラグに「1」がセットされているか否かを判定する(ステップS6603)。停電フラグに「1」がセットされている場合(ステップS6603:YES)、特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222についてチェックサムを算出する(ステップS6604)。
・・・・・
【1146】
その後、MPU62への動作電力の供給が停止される直前に実行された停電時処理において算出されて特定制御用のワークエリア221に保存された特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222についてのチェックサムを特定制御用のワークエリア221から読み出すとともに、その読み出したチェックサムを、ステップS6604にて算出したチェックサムと比較する(ステップS6605)。そして、それらチェックサムが一致しているか否かを判定する(ステップS6606)。
【1147】
ここで、図101のフローチャートを参照しながら主側CPU63にて実行される停電情報記憶処理について説明する。なお、停電情報記憶処理は後述するタイマ割込み処理(図103)におけるステップS6801にて実行される。
・・・・・
【1149】
その後、MPU62の入力ポートに受信している停電信号の情報を読み込む処理を実行する(ステップS6703)。この場合、電源遮断が発生していないことに対応した停電信号(LOWレベルの停電信号)を受信している場合には入力ポートに非電断情報として「0」の情報が格納されており、電源遮断が発生していることに対応した停電信号(HIレベルの停電信号)を受信している場合には入力ポートに電断発生情報として「1」の情報が格納されている。ステップS6703では、かかる停電信号の情報を主側CPU63のレジスタに読み込む処理を実行する。
・・・・・
【1153】
その後、特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222についてチェックサムを算出する(ステップS6710)。この場合、チェックサムの算出に際して演算対象となる特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222における記憶エリアは、メイン処理(図100)のステップS6604にてチェックサムの演算対象となる特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222における記憶エリアと同一である。また、このチェックサムの算出に際して演算対象となる記憶エリアには、特定制御用のワークエリア221においてパチンコ機10の設定状態を示す設定値の情報が設定されたエリア(具体的には設定値カウンタ)が含まれている。そして、その算出したチェックサムを特定制御用のワークエリア221における当該チェックサムを記憶するための記憶エリアであってチェックサムの算出対象から除外されている記憶エリアに記憶させる。
・・・・・
【1163】
ステップS6603及びステップS6606の両方にて肯定判定をした場合、特定制御用のワークエリア221における設定値カウンタの値を確認することでパチンコ機10の設定値が正常か否かを判定する(ステップS6614)。具体的には、設定値カウンタに設定された設定値が「設定1」~「設定6」のいずれかである場合に正常であると判定し、「0」又は7以上である場合に異常であると判定する。設定値が異常である場合(ステップS6614:NO)、後述する設定値を新たに設定するための処理(ステップS6619~ステップS6621)を実行する。
【1164】
設定値が正常である場合(ステップS6614:YES)、リセットボタン68cが押圧操作されているか否かを判定し(ステップS6615)、設定キー挿入部68aが設定キーを利用してON操作されているか否かを判定し(ステップS6616)、内枠13に対して前扉枠14が開放状態であるか否かを判定し(ステップS6617)、外枠11に対して遊技機本体12が開放状態であるか否かを判定する(ステップS6618)。
・・・・・
【1166】
また、本実施形態では外枠11に対して遊技機本体12が開放状態となっているか否かを検知するための本体開放センサ96が主側CPU63と電気的に接続されており、本体開放センサ96の検知結果は主側CPU63に入力される。この場合、外枠11に対して遊技機本体12が閉鎖状態である場合に本体開放センサ96は閉鎖検知信号を主側CPU63に送信し、外枠11に対して遊技機本体12が開放状態である場合に本体開放センサ96は開放検知信号を主側CPU63に送信する。主側CPU63は、本体開放センサ96から閉鎖検知信号を受信している場合に遊技機本体12が閉鎖状態であると特定し、本体開放センサ96から開放検知信号を受信している場合に遊技機本体12が開放状態であると特定する。
【1167】
リセットボタン68cが押圧操作されていない場合(ステップS6615:NO)、ステップS6609にて電源投入設定処理を実行した後に、ステップS6610~ステップS6613の残余処理を繰り返す。つまり、リセットボタン68cが押圧操作されていない場合には特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222のクリア処理を実行することなく、遊技の進行を制御するための処理に移行する。
・・・・・
【1169】
リセットボタン68cが押圧操作されている場合であって(ステップS6615:YES)、ステップS6616~ステップS6618の全てで肯定判定をした場合、設定値を更新するための処理を実行する。また、ステップS6608又はステップS6614にて設定値が異常であると判定した場合にも、設定値を更新するための処理を実行する。」
(オ)「【図85】
[図:0001382289000001.jpg]
・・・・・
【図100】
[図:0001382289000002.jpg]
【図101】
[図:0001382289000003.jpg]
」
イ 認定事項
(カ)記載事項(エ)の【1153】及び記載事項(オ)の【図101】より、特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222についてチェックサムを算出し、その算出したチェックサムを特定制御用のワークエリア221のチェックサムを記憶エリアに記憶する処理(【図101】のS6710)は、停電情報記憶処理の中で行われていることから、先願明細書等において、停電情報記憶処理が、特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222についてチェックサムを算出し、その算出したチェックサムを特定制御用のワークエリア221のチェックサムを記憶エリアに記憶する処理を含むことを認定できる(認定事項(カ))。
(キ)記載事項(エ)の【1164】、【1166】及び記載事項(オ)の【図100】より、外枠11に対して遊技機本体12が開放状態であると特定した場合(【図100】のS6618でYES)に、その後、設定値更新処理(同図のS6621)を実行していることから、設定値更新処理を実行するためには、外枠11に対して遊技機本体12が開放状態であると特定することを条件としていることは明らかである。
そうすると、先願明細書等において、設定値更新処理の実行にあたり、電源投入ウェイト処理の実行後に、外枠11に対して遊技機本体12が開放状態であると特定することを条件としている点を認定できる(認定事項(キ))。
(ク)また、遊技機の分野において、外枠11に対して遊技機本体12が開放状態である場合に、遊技者による遊技が行われていないことは技術常識であることに鑑みると、外枠11に対して遊技機本体12が開放状態であると特定した場合に実行する設定値更新処理は、遊技中以外に実行されると認められる。
そうすると、先願明細書等において、設定値更新処理が遊技中以外に実行される点を認定できる(認定事項(ク))。
(ケ)さらに、上記認定事項(キ)、記載事項(エ)の【0923】及び記載事項(オ)の【図85】より、電源投入ウェイト処理の実行後に、外枠11に対して遊技機本体12が開放状態であると特定することを条件として実行する設定値更新処理を終了させるためには、アウト口24aに遊技球を入球させてアウト口検知センサ48aに遊技球を検知させ(【図85】のS5103)、その後に設定キー挿入部68aをOFF操作する(同図のS5109)ことを条件としているものの、外枠11に対して遊技機本体12が開放状態であるか否かは条件としていないものと認められる。
そして、アウト口24aに遊技球を入球させてアウト口検知センサ48aに遊技球を検知させ、その後に設定キー挿入部68aをOFF操作し、設定値更新処理を終了させるための各種処理を終えたタイミングにおいて、外枠11に対して遊技機本体12が開放状態、閉鎖状態のいずれの状態であるかは、設定値更新処理を行う作業者の作業スピードに依存するものであって、外枠11に対して遊技機本体12が開放状態、閉鎖状態のいずれの状態も発生し得ると解するのが相当である。
そうすると、先願明細書等において、外枠11に対して遊技機本体12が開放状態であっても、設定値更新処理を終了させる点を認定できる(認定事項(ケ))。
以上の記載事項(ア)~(オ)及び認定事項(カ)~(ケ)を総合すると、先願明細書等には、以下の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている(分説a~eは、本願補正発明の分説A~Eに概ね対応させて付与した)。
(先願発明)
「a 遊技に際し第1作動口33又は第2作動口34への入賞をトリガとして大当たり発生抽選を行う主側CPU63を内蔵し(【0030】、【0063】、【0080】)、
b 主側CPU63は、
MPU62の入力ポートに電源遮断が発生していることに対応した停電信号を受信している場合には(【1149】)、遊技者による遊技操作に基づき遊技を進行させるための制御である特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222の情報についてチェックサムを算出し、その算出したチェックサムを特定制御用のワークエリア221のチェックサムを記憶するための記憶エリアに記憶する処理を含む停電情報記憶処理を実行し(【0710】、【0721】、【1147】、【1153】、認定事項(カ))、
c 電源投入ウェイト処理の実行後に、特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222の情報についてチェックサムを算出し(【1142】、【1143】)、その後、MPU62への動作電力の供給が停止される直前に実行された停電時処理において算出されて特定制御用のワークエリア221に保存された特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222の情報についてのチェックサムを特定制御用のワークエリア221から読み出すとともに、その読み出したチェックサムを、算出したチェックサムと比較し、それらチェックサムが一致しているか否かを判定し(【0721】、【1146】)、肯定判定をした場合に、特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222のクリア処理を実行することなく、遊技の進行を制御するための処理を実行し(【1163】、【1167】)、
d 電源投入ウェイト処理の実行後に、外枠11に対して遊技機本体12が開放状態であると特定することを条件に(認定事項(キ))、高い設定値ほど大当たり結果の当選確率が高くなるように設定されている設定値を更新するための設定値更新処理を遊技中以外に実行し(【0096】、【0907】、【1169】、認定事項(ク))、設定値更新処理において、アウト口24aに遊技球を入球させてアウト口検知センサ48aに遊技球を検知させ、その後に設定キー挿入部68aをOFF操作すると、外枠11に対して遊技機本体12が開放状態であっても、設定値更新処理を終了させる(【0923】、認定事項(ケ))
e パチンコ機10(【0011】)。」
(3)対比
本願補正発明と先願発明とを対比する。
ア 先願発明の構成aの「遊技に際し」は、本願補正発明の構成Aの「遊技中に」、「遊技において」に相当する。
また、先願発明の構成aの「第1作動口33又は第2作動口34への入賞」、「大当たり発生抽選」は、本願補正発明の構成Aの「抽選契機」、「所定の抽選」に相当する。
さらに、先願発明の構成aの「トリガとして」は、「トリガ」という用語が、ある事象が発生することを契機として、別の事象が生じる際に用いられる用語であることから、本願補正発明の構成Aの「発生すると」に相当する。
よって、先願発明の構成aの「遊技に際し第1作動口33又は第2作動口34への入賞をトリガとして大当たり発生抽選を行う主側CPU63」は、本願補正発明の構成Aの「遊技中に抽選契機が発生すると、遊技において所定の抽選を実行する抽選実行手段」に相当する。
イ 先願発明の構成bの「MPU62の入力ポートに電源遮断が発生していることに対応した停電信号を受信している場合」は、本願補正発明の構成Bの「電力供給の遮断に際し」に相当する。
また、先願発明の構成bの「遊技を進行させるための制御である特定制御」は、本願補正発明の構成Bの「遊技の内容の制御」に相当する。
さらに、先願発明の構成bの「特定制御用」は、「特定制御」に利「用」することを意味していることは明らかであるから、先願発明の構成bの「遊技を進行させるための制御である特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222」は、本願補正発明の構成Bの「遊技の内容の制御に利用する記憶領域」に相当し、先願発明の構成bの「遊技を進行させるための制御である特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222の情報」は、本願補正発明の構成Bの「遊技の内容の制御に利用する記憶領域の記憶内容」に相当する。
また、先願発明の構成bは、「特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222の情報についてチェックサムを算出し、その算出したチェックサムを特定制御用のワークエリア221のチェックサムを記憶するための記憶エリアに記憶する」ことを特定しており、「算出したチェックサム」は、「特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222の情報」とは別に「記憶」されるものであると認められる。そうすると、「特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222の情報について」「算出したチェックサム」は、本願補正発明の構成Bの「バックアップ情報」に相当する。
よって、先願発明の構成bの「遊技を進行させるための制御である特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222の情報についてチェックサムを算出し、その算出したチェックサムを特定制御用のワークエリア221のチェックサムを記憶するための記憶エリアに記憶する処理」は、本願補正発明の構成Bの「遊技の内容の制御に利用する記憶領域の記憶内容をバックアップ情報として保存する退避処理」に相当する。
また、先願発明の構成bの「停電情報記憶処理」、「主側CPU63」は、本願補正発明の構成Bの「電断時処理」、「電断時処理実行手段」に相当する。
以上より、先願発明の構成bの「MPU62の入力ポートに電源遮断が発生していることに対応した停電信号を受信している場合には、」「遊技を進行させるための制御である特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222の情報についてチェックサムを算出し、その算出したチェックサムを特定制御用のワークエリア221のチェックサムを記憶するための記憶エリアに記憶する処理を含む停電情報記憶処理を実行」する「主側CPU63」は、本願補正発明の構成Bの「電力供給の遮断に際し、遊技の内容の制御に利用する記憶領域の記憶内容をバックアップ情報として保存する退避処理を含む電断時処理を実行する電断時処理実行手段」に相当する。
ウ 先願発明の構成cの「電源投入ウェイト処理の実行後に」は、本願補正発明の構成Cの「電力供給の開始に際し」に相当する。
また、先願発明の構成cにおいて、「特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222の情報についてチェックサムを算出し、その後、MPU62への動作電力の供給が停止される直前に実行された停電時処理において算出されて特定制御用のワークエリア221に保存された特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222の情報についてのチェックサムを特定制御用のワークエリア221から読み出すとともに、その読み出したチェックサムを、算出したチェックサムと比較し、それらチェックサムが一致しているか否かを判定し、肯定判定をした場合」に、「特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222のクリア処理を実行することなく、遊技の進行を制御するための処理を実行」することを特定している。
そして、先願発明の構成cにおいて、「特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222のクリア処理を実行することなく、遊技の進行を制御するための処理を実行」することにより、「特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222の情報」が、その後、「遊技の進行」の「制御」に利「用」されることは明らかであるから、「特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222のクリア処理を実行することなく、遊技の進行を制御するための処理」は、本願補正発明の構成Cの「前記記憶領域の記憶内容を遊技の内容の制御に利用可能な状態に復帰させる復帰処理」に相当する。
さらに、先願発明の構成cにおいて、「特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222のクリア処理を実行することなく、遊技の進行を制御するための処理を実行」するための前提条件である、「特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222の情報について」「算出し」た「チェックサム」と「MPU62への動作電力の供給が停止される直前に」「算出され」た「チェックサム」「が一致」「した場合に」は、本願補正発明の構成Cの「前記バックアップ情報に基づいて」に相当する。
また、先願発明の構成bの「主側CPU63」は、本願補正発明の構成Cの「復帰時処理実行手段」に相当する。
してみると、先願発明の構成b、cの「電源投入ウェイト処理の実行後に、特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222の情報について」「算出し」た「チェックサム」と「MPU62への動作電力の供給が停止される直前に」「算出され」た「チェックサム」「が一致」「した場合に」「特定制御用のワークエリア221及び特定制御用のスタックエリア222のクリア処理を実行することなく、遊技の進行を制御するための処理を実行」する「主側CPU63」は、本願補正発明の構成Cの「電力供給の開始に際し、前記バックアップ情報に基づいて前記記憶領域の記憶内容を遊技の内容の制御に利用可能な状態に復帰させる復帰処理を実行する復帰時処理実行手段」に相当する。
エ 先願発明の構成dの「電源投入ウェイト処理の実行後に」、「外枠11に対して遊技機本体12が開放状態であると特定することを条件に」は、本願補正発明の構成Dの「電力供給の開始後に」、「遊技機本体を構成する開閉部材が開放中であることを条件に」に相当する。
また、先願発明の構成dの「大当たり結果の当選確率」は、本願補正発明の構成Dの「前記所定の抽選の当選確率」に相当するから、先願発明の構成dの「高い設定値ほど大当たり結果の当選確率が高くなるように設定されている設定値を更新するための設定値更新処理」は、本願補正発明の構成Dの「前記所定の抽選の当選確率に関する設定の処理」に相当する。
よって、先願発明の構成dの「電源投入ウェイト処理の実行後に、外枠11に対して遊技機本体12が開放状態であると特定することを条件に、高い設定値ほど大当たり結果の当選確率が高くなるように設定されている設定値を更新するための設定値更新処理を遊技中以外に実行」することは、本願補正発明の構成Dの「電力供給の開始後に遊技機本体を構成する開閉部材が開放中であることを条件に、少なくとも前記所定の抽選の当選確率に関する設定の処理を遊技中以外に実行可能であ」ることに相当する。
さらに、先願発明の構成dの「外枠11に対して遊技機本体12が開放状態であっても、設定値更新処理を終了させる」ことは、本願補正発明の構成Dの「前記開閉部材が開放中でも前記設定の処理を終了する」ことに相当する。
してみると、先願発明の構成b、dの「電源投入ウェイト処理の実行後に、外枠11に対して遊技機本体12が開放状態であると特定することを条件に、高い設定値ほど大当たり結果の当選確率が高くなるように設定されている設定値を更新するための設定値更新処理を遊技中以外に実行し、」「外枠11に対して遊技機本体12が開放状態であっても、設定値更新処理を終了させる」「主側CPU63」は、本願補正発明の構成Dの「電力供給の開始後に遊技機本体を構成する開閉部材が開放中であることを条件に、少なくとも前記所定の抽選の当選確率に関する設定の処理を遊技中以外に実行可能であり、前記開閉部材が開放中でも前記設定の処理を終了する事が可能な設定手段」に相当する。
よって、先願発明の構成b、dは、本願補正発明の構成Dに相当する構成を備える。
オ 先願発明の構成eの「パチンコ機10」は、本願補正発明の構成Eの「遊技機」に相当する。
カ 以上のことから、本願補正発明と先願発明は、
「A 遊技中に抽選契機が発生すると、遊技において所定の抽選を実行する抽選実行手段と、
B 電力供給の遮断に際し、遊技の内容の制御に利用する記憶領域の記憶内容をバックアップ情報として保存する退避処理を含む電断時処理を実行する電断時処理実行手段と、
C 電力供給の開始に際し、前記バックアップ情報に基づいて前記記憶領域の記憶内容を遊技の内容の制御に利用可能な状態に復帰させる復帰処理を実行する復帰時処理実行手段と、
D 電力供給の開始後に遊技機本体を構成する開閉部材が開放中であることを条件に、少なくとも前記所定の抽選の当選確率に関する設定の処理を遊技中以外に実行可能であり、前記開閉部材が開放中でも前記設定の処理を終了する事が可能な設定手段とを備えた
E 遊技機。」
で一致し、相違点はない。
(4)審判請求人の主張について
ア 審判請求人は、令和3年6月3日に提出した審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の「〔4〕」「(3)本願発明の特許性」において、本件補正により補正された請求項1に記載の発明の構成及び効果について、以下の主張を行っている。
「本願の発明は、「開閉部材が開放中であることを条件に、設定の処理を遊技中以外に実行可能とする」という構成により、設定の処理にはある程度の手間を必要とすることで外見上も目立ちやすくさせる一方で、「開閉部材が開放中でも設定の処理を終了することが可能」という明確な構成を敢えて採用することで、不正行為の発見等については多少は不利になるが、それよりも設定の処理を簡便に終了可能とすることで、管理者による正当な行為の場合に操作性をより向上させることができるという有利な効果を達成するものであり、先願1にはない新規な構成を備えた発明である。・・・・・」
イ ここで、審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の「〔2〕補正の根拠の明示」において、上記構成の補正の根拠として挙げた段落【0905】には、以下の記載がある。
「【0905】
上記のタイミングチャートの基本構成に加えて、以下の変形例も可能である。
(1)設定変更状態(設定変更モード)又は設定参照状態(設定参照モード)への移行条件として、「内枠開放中である」という条件も設定されており、「設定キーOFF、かつ、内枠閉鎖が一定時間継続(100ms継続)で設定変更状態又は設定参照状態を終了する。
(1a)内枠の状態を考慮せず、設定キーOFFの状態が一定時間継続(例えば100ms継続)したことによって、設定変更状態又は設定参照状態を終了してもよい。」
そして、上記【0905】の「(1a)「内枠の状態を考慮せず、設定キーOFFの状態が一定時間継続(例えば100ms継続)したことによって、設定変更状態又は設定参照状態を終了してもよい。」との記載を参酌すれば、「設定変更状態又は設定参照状態を終了」するにあたり、「内枠の状態を考慮」しないのであるから、「設定変更状態又は設定参照状態を終了」する際は、「内枠の状態」が開放状態、閉鎖状態のいずれの場合もあり得ると認められ、本願補正発明では、上記2つの場合のうち、「内枠の状態」が開放状態の場合に「設定変更状態又は設定参照状態を終了」することを特定していると解される。
ウ これに対して、先願明細書等において、上記3(2)イ(ケ)で説示したとおり、設定値更新処理を終了させるためには、アウト口24aに遊技球を入球させてアウト口検知センサ48aに遊技球を検知させ、その後に設定キー挿入部68aをOFF操作することを条件としているものの、外枠11に対して遊技機本体12が開放状態であるか否かは条件としていない。
そうすると、設定値更新処理を終了させるための各種処理を終えたタイミングでは、外枠11に対して遊技機本体12が開放状態、閉鎖状態のいずれの状態も発生し得ると解するのが相当である。
よって、先願明細書等には、設定値更新処理を終了させる際、外枠11に対して遊技機本体12が開放状態である場合が開示されていると認められるから、先願明細書等に基づき認定した先願発明と本願補正発明との間に、「設定の処理を終了」するための構成に関し、明確な差異があるとは認められない。
以上のことから、先願発明は、請求人の主張する上記構成を有しているといえるから、審判請求人の主張は採用できない。
(5)小括
以上のとおり、本願補正発明は、先願発明と同一の発明であり、しかも、本願補正発明の発明者が先願発明の発明者と同一であるとはいえず、また、本願の出願の時において、その出願人が先願発明の出願人と同一であるともいえないので、特許法第29条の2の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 補正の却下の決定についてのむすび
本件補正は、上記2(2)イのとおり、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、仮に本件補正が特許法第17条の2第5項の規定に違反しないものだとしても、本願補正発明は、上記3(5)のとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和2年8月27日に提出された手続補正書により補正された、上記第2[理由]1で示した特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
(本願発明)
「【請求項1】
遊技中に抽選契機が発生すると、遊技において所定の抽選を実行する抽選実行手段と、
電力供給の遮断に際し、遊技の内容の制御に利用する記憶領域の記憶内容をバックアップ情報として保存する退避処理を含む電断時処理を実行する電断時処理実行手段と、
電力供給の開始に際し、前記バックアップ情報に基づいて前記記憶領域の記憶内容を遊技の内容の制御に利用可能な状態に復帰させる復帰処理を実行する復帰時処理実行手段と、
前記復帰処理の後に遊技機本体を構成する開閉部材が開放中であることを条件に、少なくとも前記所定の抽選の当選確率に関する設定の処理を遊技中以外に実行可能であり、前記開閉部材が開放中でも前記設定の処理を終了する事が可能な設定手段とを備えた
遊技機。」(下線は、補正箇所を明示するために当審で付した。)。
2 原査定の拒絶の理由の概略
原査定の拒絶の理由の概略は、以下のとおりである。
(新規事項)令和2年8月27日付け手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
●理由(新規事項)について
・請求項 1
補正後の請求項1には「前記復帰処理の後に遊技機本体を構成する開閉部材が開放中であることを条件に、少なくとも前記所定の抽選の当選確率に関する設定の処理を遊技中以外に実行可能であり、」と新たに記載され、出願人は意見書において補正の根拠は「出願当初における明細書及び図面の記載(例えば、段落0078-0084、0905、図74、図75等)」であると主張する。
上記新たな記載によれば、請求項1の「電力供給の開始に際し、前記バックアップ情報に基づいて前記記憶領域の記憶内容を遊技の内容の制御に利用可能な状態に復帰させる復帰処理」を実行した後に「前記所定の抽選の当選確率に関する設定の処理」を実行することが規定されている。
しかしながら、当初明細書等には、「設定キーを右方向に回転した状態で、RAMクリアスイッチ304をONにしながら、電源をONにすると、設定が変更な状態となる(設定変更状態)」(段落0081)と記載され、図10を参酌すると、当該記載の状態、かつ、内枠が開放状態(S109およびS110がYes)である場合、バックアップの復帰処理(段落0187、図10のS117)が実行されず、少なくとも、バックアップの復帰処理を実行した後に設定変更処理(図27、28)を実行する構成となっておらず、請求項1の上記新たな記載の通りとなっていない。
したがって、当該補正事項を含む本件補正は、出願当初明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものと判断される。
3 願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)に記載された事項
当初明細書等には、「前記所定の抽選の当選確率に関する設定の処理」に関し、以下の(1)ないし(4)の事項が記載されている(下線は、関連する記載を明示するために当審で付した。)。
(1)「【0078】・・・設定の変更の手順は、様々な手法を採用することができるが、例えば、以下の手順で行うことができる。
・・・・・
【0080】
(5)これにより、設定キーが変更位置に回転されたことを示す信号(ON)が設定キースイッチ302により入力され、この入力信号に基づいて設定の変更が可能な状態となる。このとき、図示しないロック機構により安全ロックが掛けられる。したがって、設定キーは、元の位置に戻されない限りは抜き取ることが不可能となる。
【0081】
ここで、設定キーを右方向に回転した状態で、RAMクリアスイッチ304をONにしながら、電源をONにすると、設定が変更な状態となる(設定変更状態)。一方、設定キーを右方向に回転した状態で、RAMクリアスイッチ304をONにせずに、電源をONにすると、設定の参照が可能な状態となる(設定参照状態)。」
(2)「【0172】
ステップS110:主制御CPU72は、先のステップS104で退避させた入力ポート値の特定ビットをチェックすることによりRAMクリア信号を参照し、RAMクリアスイッチ304が押下されていたか否かを確認する。
【0173】
その結果、RAMクリアスイッチ304が押下されていたことを確認した場合(Yes)、主制御CPU72は、ステップS112を実行する。一方、RAMクリアスイッチ304が押下されていたことを確認できない場合(No)、主制御CPU72は、ステップS111aを実行する。
・・・・・
【0178】
ステップS111b:主制御CPU72は、設定変更中フラグに「03H」をセットする処理を実行する。次に、主制御CPU72は、ステップS114を実行する(ページ内結合子2→2)。
【0179】
ステップS112:主制御CPU72は、設定変更中フラグに「01H」をセットする処理を実行する。次に、主制御CPU72は、ステップS120を実行する(ページ内結合子3→3)。
【0180】
ステップS113:主制御CPU72は、RAMクリアスイッチ304が押下されていたか否かを確認する。
【0181】
その結果、RAMクリアスイッチ304が押下されていたことを確認した場合(Yes)、主制御CPU72は、ステップS120を実行する(ページ内結合子3→3)。一方、RAMクリアスイッチ304が押下されていたことを確認できない場合(No)、主制御CPU72は、ステップS114を実行する。
【0182】
ステップS114:主制御CPU72は、バックアップフラグとチェックサムが正常か否かを確認する処理を実行する。
・・・・・
【0185】
その結果、バックアップフラグとチェックサムが正常であることを確認した場合(Yes)、主制御CPU72は、ステップS116を実行する。一方、バックアップフラグとチェックサムが正常であることを確認できない場合(No)、主制御CPU72は、ステップS120を実行する。
【0186】
ステップS116:主制御CPU72は、電源復帰時の初期化処理を実行する。具体的には、主制御CPU72は、RAM76の一部領域の記憶内容をクリアする。RAM76の一部領域とは、電源復帰時にクリア対象とするメモリ領域である。
【0187】
ステップS117:主制御CPU72は、バックアップの復帰処理を実行する。主制御CPU72は、保存されている有効なバックアップ情報を復帰させる。これにより、主制御CPU72は電源遮断時の状態を復旧させることができる。
・・・・・
【0262】
図16は、メインループ処理の手順例を示すフローチャートである。以下、各手順について説明する。
メインループ処理では、乱数の更新(乱数のかきまぜ等)を行いつつ、以下の3種類の割込みの発生を待つ。
(1)シリアル通信受信割込み(払出制御装置からのコマンド受信時)
(2)タイマ割込み(4msに1回のタイマタイムアップ時)
(3)電源断予告時割込み(電源断による入力電圧降下時)
そして、遊技に係る処理の大半は、タイマ割込み処理にて実行される。」
(3)「【0905】
上記のタイミングチャートの基本構成に加えて、以下の変形例も可能である。
(1)設定変更状態(設定変更モード)又は設定参照状態(設定参照モード)への移行条件として、「内枠開放中である」という条件も設定されており、「設定キーOFF、かつ、内枠閉鎖が一定時間継続(100ms継続)で設定変更状態又は設定参照状態を終了する。
(1a)内枠の状態を考慮せず、設定キーOFFの状態が一定時間継続(例えば100ms継続)したことによって、設定変更状態又は設定参照状態を終了してもよい。」
(4)
「【図10】
[図:0001382289000004.jpg]
【図11】
[図:0001382289000005.jpg]
」
4 原査定の拒絶の理由についての判断
(1)本願発明の請求項1には、「前記復帰処理の後に遊技機本体を構成する開閉部材が開放中であることを条件に、少なくとも前記所定の抽選の当選確率に関する設定の処理を遊技中以外に実行可能である」ことが記載されており、「前記所定の抽選の当選確率に関する設定の処理」を「実行可能である」タイミングが、「復帰処理の後」であることを特定している。
また、本願発明の請求項1は、「復帰処理」が「電力供給の開始に際し、前記バックアップ情報に基づいて前記記憶領域の記憶内容を遊技の内容の制御に利用可能な状態に復帰させる復帰処理」であることを特定している。
以上の点を踏まえると、本願発明の請求項1は、「電力供給の開始に際し、前記バックアップ情報に基づいて前記記憶領域の記憶内容を遊技の内容の制御に利用可能な状態に復帰させる復帰処理の後」に「前記所定の抽選の当選確率に関する設定の処理」を「実行可能であ」ることを特定していると認められる。
(2)これに対し、上記3の(1)ないし(4)の事項を踏まえると、当初明細書等には、内枠開放中であって、設定キーを右方向に回転したことを示す信号(ON)が設定キースイッチ302により入力されると(【0080】、【0081】、【図10】のS109でYES)、その後、RAMクリアスイッチ304が押下されているか否かに応じて(【0172】、【図10】のS110)、設定変更状態あるいは設定参照状態に移行する(【0178】、【0179】、【図10】のS111b、S112)ことが記載されている。
また、内枠開放中であって、設定キーを右方向に回転したことを示す信号(ON)が設定キースイッチ302により入力される場合ではないとき(【図10】のS109でNo)には、RAMクリアスイッチ304が押下されておらず、バックアップフラグとチェックサムが正常であることを確認した場合に、保存されている有効なバックアップ情報を復帰させる復帰処理を実行する(【0181】、【0182】、【0185】、【0186】、【0187】、【図10】のS117)ことが記載されている。
さらに、バックアップ情報を復帰させる復帰処理を実行した後(【図10】のS117)は、各種の処理を実行した後、メインループ処理を実行する(【図10】のS118以降の処理、【図11】)ことが記載されている。 上記記載に鑑みると、当初明細書等には、内枠開放中であって、設定キーを右方向に回転したことを示す信号(ON)が設定キースイッチ302により入力される場合と、そうでない場合とでは、その後に実行される各種処理が異なっている。そして、バックアップ情報を復帰させる復帰処理を実行した場合(【図10】のS117)には、その後、メインループ処理を実行するまでの間に各種の処理が実行されているものの、「前記所定の抽選の当選確率に関する設定の処理」、すなわち、内枠の開放や設定キースイッチによる入力、RAMクリアスイッチの押下の有無の判定が必要である、設定変更状態あるいは設定参照状態への移行処理は実行されていない。
そうすると、当初明細書等には、「電力供給の開始に際し、前記バックアップ情報に基づいて前記記憶領域の記憶内容を遊技の内容の制御に利用可能な状態に復帰させる復帰処理の後」に「前記所定の抽選の当選確率に関する設定の処理」を「実行可能であ」ることは記載も示唆もされておらず、また、自明であるとも認められない。
(3)以上のとおりであるから、請求項1において、「前記復帰処理の後に遊技機本体を構成する開閉部材が開放中であることを条件に、少なくとも前記所定の抽選の当選確率に関する設定の処理を遊技中以外に実行可能であ」とした補正は、当初明細書等の記載との関係で新たな技術的事項を導入するものである。
4 むすび
以上のとおり令和2年8月27日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法17条の2第3項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-007258