2021-004705
タッチパネル装置を備えた分析装置、その表示制御方法、及びプログラム
- 審判番号
- 2021-004705
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-508537外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年04月12日
- 審決日
- 2022年03月30日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
折りたたみ中(クリックで表示)
本願は、2017年(平成29年)10月27日(優先権主張 平成29年3月30日)を国際出願日とする出願であって、令和元年6月4日に手続補正書が提出され、令和2年4月24日付けで拒絶理由が通知され、令和2年8月27日に意見書が提出されたが、令和3年1月7日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対して令和3年4月12日に拒絶査定不服審判の請求がされ、令和3年12月1日付けで当審より拒絶理由が通知され(以下、「当審拒絶理由通知」という。)、令和4年2月4日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(令和3年1月7日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-6に係る発明は、以下の引用文献A-Dに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
A.特開2015-28768号公報
B.特開2007-241410号公報
C.特開2014-10568号公報
D.特開2016-177663号公報
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
本願請求項1-6に係る発明は、引用文献1-3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.米国特許公開第2011/0273477号明細書(当審において新たに引用した文献)
2.独国特許出願公開第102008011156号明細書(当審において新たに引用した文献)
3.特開2015-28768号公報(拒絶査定時の引用文献A)
第4 本願発明
本願請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、令和4年2月4日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であって、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】試料分析を行う分析部と、タッチパネル装置と、を備えた分析装置であって、前記タッチパネル装置は、a) 前記分析部による分析結果を表示する長方形の表示画面を備えた表示手段と、b)ユーザによる前記表示画面へのタッチに応じてタッチ位置を示す信号を発生する抵抗膜方式のタッチセンサと、c)前記信号に基づき、前記表示画面上でユーザによるタッチ位置の斜め方向へのスライド操作が行われたか否かを判定するスライド操作判定手段と、d)前記スライド操作判定手段により、斜め方向へのスライド操作がなされたと判定された場合に、その時点で前記表示画面に表示されている内容のうち、前記スライド操作の始点と終点を対角とする長方形であって、そのいずれか一辺が前記表示画面のいずれか一辺と平行である仮想的な長方形により囲まれた範囲を拡大して表示するよう、前記表示手段を制御する表示拡大手段と、を備えた分析装置。」
なお、本願発明2-5の概要は以下のとおりである。
本願発明2-4は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明5は、本願発明1に対応する分析装置の表示制御方法の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1及び引用発明
(1) 引用文献1
当審拒絶理由に引用した引用文献1には、図面とともに、以下の記
載がある(下線は、特に着目した箇所を示す。以下同様。)。
ア 段落[0013]
「[0013] The scale of the display content may also be enlarged. In this case, starting from the selected pixel, a segment of the graphical object is formed during the drawing of the line, and after completion of the line, a new graphical object is displayed which shows the display content of the segment of the original graphical object in an enlarged scale. In this context, preferably the aspect ratio of the segment corresponds to the aspect ratio of the graphical object. In the case of a rectangular object, the aspect ratio is yielded from the ratio of the two sides of the rectangle which forms the object. If the object has a different geometric shape, the aspect ratio is yielded from the extension of the object in two directions perpendicular to each other.」
(当審訳:
[0013] また、表示内容の縮尺を大きくしてもよい。この場合、選択されたピクセルを起点として、ラインの描画中にグラフィカル・オブジェクトのセグメントが形成され、ラインが完成した後に、元のグラフィカル・オブジェクトのセグメントの表示内容を拡大した縮尺で示す新しいグラフィカル・オブジェクトが表示される。この場合、セグメントのアスペクト比は、グラフィカル・オブジェクトのアスペクト比と一致していることが好ましい。長方形のオブジェクトの場合、アスペクト比は、オブジェクトを形成する長方形の2つの辺の比率から得られる。オブジェクトが他の幾何学的な形状をしている場合、アスペクト比はオブジェクトの互いに直角な2つの方向への延長から得られる。)
イ 段落[0029]
「[0029] For example, input device 4 is a touch-sensitive foil which is provided on display 1. The position at which display 1 disposed behind the foil is touched may be detected by the foil. For example, the foil may take the form of a resistive touch foil, capacitive touch foil or piezoelectric foil. In addition, the foil may be constructed such that a flow of heat which goes out from the finger of a user, for instance, may be measured. Various inputs may be obtained from the evolution of the touching of the foil over time. For example, in the simplest case, the touching of the foil at a specific position may be assigned to one object displayed on display 1. Sliding movements of the finger over the foil may be interpreted, as well. In particular, in this manner, the user is able to define a line on display 1 by touching the foil at one point, sliding on the foil toward another point, and taking the finger off the foil at this other point.」
(当審訳:
[0029] 例えば、入力装置4は、ディスプレイ1上に設けられたタッチセンサのフォイルである。フォイルの後ろに配置されたディスプレイ1がタッチされた位置を、フォイルによって検出することができる。フォイルは、例えば、抵抗膜方式、静電容量方式、圧電方式などの形式がある。また、例えば、ユーザの指から出る熱の流れを測定できるように構成してもよい。フォイルへの接触の経時的な変化によって、さまざまな情報を得ることができる。例えば、最も単純なケースでは、ディスプレイ1に表示されている1つのオブジェクトに対して、特定の位置でのフォイルへの接触を割り当てることができる。また、指をフォイル上でスライドさせる動きも同様に解釈できる。これにより、特に、ある点でフォイルに触れ、別の点に向かってフォイル上をスライドさせ、この別の点でフォイルから指を離すことで、ディスプレイ1上にラインを定義することができる。)
ウ 段落[0031]
「[0031] User-interface device 2 is also connected to a vehicle bus 7. User-interface device 2 may be coupled to the navigation system of the vehicle via this vehicle bus 7. From the data transmitted from the navigation system, user-interface device 2 generates graphics data, which are represented on display 1. In the present case, this is especially a geographical map 5, which is displayed in a specific scale.」
(当審訳:
[0031] また、ユーザインターフェース装置2は、車両バス7に接続される。ユーザインターフェース装置2は、この車両バス7を介して、車両のナビゲーションシステムに結合されていてもよい。ナビゲーションシステムから送信されたデータから、ユーザーインターフェース装置2は、グラフィックスデータを生成し、これをディスプレイ1に表示する。本実施例では、これは特に地理的な地図5であり、特定の縮尺で表示される。)
エ 段落[0037]-[0039]
「[0037] In the following, with reference to FIGS. 4 and 5, it is explained how the scale of geographical map 5 is enlarged:[0038] Using input device 4, that is, by touching the touch-sensitive foil on display 1, the user selects one pixel 6 on display 1 in this case, as well. Starting from this pixel 6, according to the convention of the exemplary embodiment described, he draws a line 8 downward and to the right. The user thereby draws a window 9 open which has the same aspect ratio as display 1 or the window in which map 5 is represented.[0039] When enlarging the scale of geographical map 5, however, the altered scale is not calculated and displayed during the drawing of line 8. Rather, the user is shown only one window 9 as segment D of the original geographical map, which is displayed in area C, that is, in the present case, in entire display 1. However, a segment D within area C is defined by window 9. After the user has finished drawing line 8, that is, for example, after letting go of display 1, arithmetic logic unit 3 of user-interface device 2 calculates graphics data which represent segment D in an enlarged scale, so that segment D fills up entire display 1.」
(当審訳:
[0037] 以下では、図4および図5を参照しながら、地理的な地図5の縮尺がどのように拡大されるかを説明する。
[0038] 入力装置4を使用して、すなわち、ディスプレイ1上のタッチ感知フォイルに触れることで、ユーザは、この場合もディスプレイ1上の1つのピクセル6を選択する。このピクセル6から出発して、説明した例示的な実施形態の慣例に従って、下向きかつ右向きにライン8を描く。これにより、ユーザは、ディスプレイ1または地図5が表示されたウィンドウと同じアスペクト比を持つウィンドウ9を開くように描く。
[0039] しかし、地理的な地図5の縮尺を拡大する場合、ライン8を描画している間は、変更された縮尺は計算されず、表示されない。むしろ、ユーザには、エリアC、つまり、本例ではディスプレイ1の全体に表示された元の地理的な地図のセグメントDとして、1つのウィンドウ9だけが表示される。ただし、エリアC内のセグメントDは、ウィンドウ9によって定義される。ユーザがライン8を描き終えた後、つまり、例えばディスプレイ1から手を離した後、ユーザインタフェース装置2の演算論理部3は、セグメントDがディスプレイ1全体を埋め尽くすように、セグメントDを拡大した縮尺で表示するグラフィックスデータを算出する。)
オ 図4-図5
「[図:0001386860000001.jpg]」
(2) 引用発明
よって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。
「表示内容の縮尺を大きくする場合、選択されたピクセルを起点として、ラインの描画中にグラフィカル・オブジェクトのセグメントが形成され、ラインが完成した後に、元のグラフィカル・オブジェクトのセグメントの表示内容を拡大した縮尺で示す新しいグラフィカル・オブジェクトが表示され、この場合、セグメントのアスペクト比は、グラフィカル・オブジェクトのアスペクト比と一致していることが好ましく、長方形のオブジェクトの場合、アスペクト比は、オブジェクトを形成する長方形の2つの辺の比率から得られ、ユーザインターフェース装置2は、車両バス7を介して、車両のナビゲーションシステムに結合されていてもよく、入力装置4は、ディスプレイ1上に設けられたタッチセンサのフォイルであり、フォイルの後ろに配置されたディスプレイ1がタッチされた位置を、フォイルによって検出することができ、フォイルは、例えば、抵抗膜方式、静電容量方式、圧電方式などの形式があり、ある点でフォイルに触れ、別の点に向かってフォイル上をスライドさせ、この別の点でフォイルから指を離すことで、ディスプレイ1上にラインを定義することができ、入力装置4を使用して、すなわち、ディスプレイ1上のタッチ感知フォイルに触れることで、ユーザは、ディスプレイ1上の1つのピクセル6を選択し、このピクセル6から出発して、下向きかつ右向きにライン8を描き、これにより、ユーザは、ディスプレイ1または地図5が表示されたウィンドウと同じアスペクト比を持つウィンドウ9を開くように描き、地理的な地図5の縮尺を拡大する場合、ライン8を描画している間は、変更された縮尺は計算されず、表示されず、むしろ、ユーザには、エリアC、つまり、ディスプレイ1の全体に表示された元の地理的な地図のセグメントDとして、1つのウィンドウ9だけが表示され、エリアC内のセグメントDは、ウィンドウ9によって定義され、ユーザがライン8を描き終えた後、つまり、ディスプレイ1から手を離した後、ユーザインタフェース装置2の演算論理部3は、セグメントDがディスプレイ1全体を埋め尽くすように、セグメントDを拡大した縮尺で表示するグラフィックスデータを算出する、ユーザインタフェース装置2。」
2 引用文献2-3について
(1) 引用文献2について
当審拒絶理由に引用した引用文献2には、図面と共に、下記の記載がある。
ア 段落[0028]-[0029]
「[図:0001386860000002.jpg][図:0001386860000003.jpg]」
(当審訳:
[0028] 図1は、画面1上のグラフ2の表現と、ズーム領域を表現するための長方形領域3を模式的に示したものである。長方形領域3は、例えば、マウスカーソルを左下から対角線方向に右上に引くことによって拡大できる。破線の矢印4は、必ずしも画面上に表示されているわけではなく、入力手段の動き、あるいは入力手段によって引き起こされる動きの表現をよりよく示すためのものである。また、画面の表面にタッチ機能がある場合は、タッチペンや指の動きなど、他の入力手段によっても領域3を定義することができる。破線の縦線と横線5は、画面1に目盛りを重ねることができることを示している。領域3を定義した後、さらにユーザ入力を実行することなく自動的に、ズーム機能(例えば、ズームイン、ズームアウト)が実行される。自動的に実行されるズーム機能は、カーソルが長方形を横断する移動の方向によって決定される。図1の例では左から右である。
[0029] 図2は、図1の長方形領域3に、ズームイン機能が適用された後の、出力手段1上のグラフ6を図示する。ズームイン機能では、 指定された領域3の内容が全画面で表示される。左端と下端のマーク5’は、画面1上に目盛りを重ねられることを示す。図1と図2の例では、領域3を左から右に引き延ばすことで、ズームイン機能が自動的に作動する。領域3を逆方向、つまり右から左に引き延ばすことで、ズームアウト機能が自動的に作動する、つまり領域3の内容に適用されることが考えられる。ズームアウトすると、矩形3内の画面の内容が圧縮されて表示され、それによって、これまで見えていなかったディスプレイ2の部分も表示される。)
イ 図1-図2
「[図:0001386860000004.jpg]」
ウ 引用文献2についてのまとめ
上記ア、イから、引用文献2には、画面1に、縦と横の破線で目盛りが表示されたグラフ2が表示された状態で、指などのタッチ機能により、破線の矢印4を、左から右に引き延ばす場合(図1)、グラフ2の矩形領域3の部分(グラフ6)をズームインし(図2)、領域3を逆方向、つまり右から左に引き延ばす場合、ズームアウトすることが記載されている。
(2) 引用文献3について
当審拒絶理由に引用した引用文献3の段落【0102】には、以下の記載がある。
「【0102】プロセッサ210は、所定の初期値の表示用倍率を用いて特定領域を拡大した第2の画像を生成する(ステップS420)。所定の初期値の表示用倍率は、1倍よりも大きい。なお、プロセッサ210が生成する第2の画像は、実施形態1における特定領域の算出処理と同様の拡大想定領域であってもよい。」
引用文献3には、上記の記載を参照すると、矩形領域の画像を、「所定の初期値の表示用倍率」で拡大表示する、周知技術が開示されていると認められる。
2.対比・判断
(1) 本願発明1について
本願発明1と、引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。
ア 引用発明の「ユーザインタフェース装置2」は、「ディスプレイ1上に設けられたタッチセンサのフォイル」を備えており、「地理的な地図5の縮尺を拡大する場合」に、「車両バス7を介して、車両のナビゲーションシステムに結合されていてもよ」いから、本願発明1の「試料分析を行う分析部と、タッチパネル装置と、を備えた分析装置」と、「タッチパネル装置、を備えた装置」である点で共通するといえる。
イ 引用発明の「ディスプレイ1」の形状は、「地理的な地図5の縮尺を拡大する場合」に、「セグメントのアスペクト比は、グラフィカル・オブジェクトのアスペクト比と一致していることが好ましく、長方形のオブジェクトの場合、アスペクト比は、オブジェクトを形成する長方形の2つの辺の比率から得られ」、「長方形のオブジェクト」を画面全体に表示するから、「長方形」であることが明らかであって、本願発明1の「a)前記分析部による分析結果を表示する長方形の表示画面を備えた表示手段」と、「a)長方形の表示画面を備えた表示手段」である点で共通するといえる。
ウ 引用発明の「ディスプレイ1上に設けられたタッチセンサのフォイル」は、「例えば、抵抗膜方式、静電容量方式、圧電方式などの形式があ」るから、本願発明1の「b)ユーザによる前記表示画面へのタッチに応じてタッチ位置を示す信号を発生する抵抗膜方式のタッチセンサ」に相当する。
エ 引用発明の「ある点でフォイルに触れ、別の点に向かってフォイル上をスライドさせ、この別の点でフォイルから指を離すことで、ディスプレイ1上にラインを定義することができ、入力装置4を使用して、すなわち、ディスプレイ1上のタッチ感知フォイルに触れることで、ユーザは、ディスプレイ1上の1つのピクセル6を選択し、このピクセル6から出発して、下向きかつ右向きにライン8を描」くことは、本願発明1の「c)前記信号に基づき、前記表示画面上でユーザによるタッチ位置の斜め方向へのスライド操作が行われたか否かを判定するスライド操作判定手段」を備えることに相当する。
オ 引用発明の「地理的な地図5の縮尺を拡大する場合」に、「ユーザは、ディスプレイ1上の1つのピクセル6を選択し、このピクセル6から出発して、下向きかつ右向きにライン8を描き、これにより、ユーザは、ディスプレイ1または地図5が表示されたウィンドウと同じアスペクト比を持つウィンドウ9を開くように描き」、「ユーザがライン8を描き終えた後、つまり、ディスプレイ1から手を離した後、ユーザインタフェース装置2の演算論理部3は、セグメントDがディスプレイ1全体を埋め尽くすように、セグメントDを拡大した縮尺で表示するグラフィックスデータを算出する」ことは、本願発明1の「d)前記スライド操作判定手段により、斜め方向へのスライド操作がなされたと判定された場合に、その時点で前記表示画面に表示されている内容のうち、前記スライド操作の始点と終点を対角とする長方形であって、そのいずれか一辺が前記表示画面のいずれか一辺と平行である仮想的な長方形により囲まれた範囲を拡大した縮尺で表示するよう、前記表示手段を制御する表示拡大手段」を備えることと、「d)前記スライド操作判定手段により、斜め方向へのスライド操作がなされたと判定された場合に、その時点で前記表示画面に表示されている内容のうち、仮想的な長方形により囲まれた範囲を拡大した縮尺で表示するよう、前記表示手段を制御する表示拡大手段」である点で共通するといえる。
カ 引用発明の「ユーザインタフェース装置2」は、「車両バス7を介して、車両のナビゲーションシステムに結合されていてもよ」いから、本願発明1の「分析装置」と、「装置」である点で共通するといえる。
キ したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
[一致点]
「タッチパネル装置、を備えた装置であって、前記タッチパネル装置は、a)長方形の表示画面を備えた表示手段と、b)ユーザによる前記表示画面へのタッチに応じてタッチ位置を示す信号を発生する抵抗膜方式のタッチセンサと、c)前記信号に基づき、前記表示画面上でユーザによるタッチ位置の斜め方向へのスライド操作が行われたか否かを判定するスライド操作判定手段と、d)前記スライド操作判定手段により、斜め方向へのスライド操作がなされたと判定された場合に、その時点で前記表示画面に表示されている内容のうち、仮想的な長方形により囲まれた範囲を拡大して表示するよう、前記表示手段を制御する表示拡大手段と、を備えた分析装置。」
[相違点1]
本願発明1は、「試料分析を行う分析部と、タッチパネル装置と、を備えた分析装置」に係るのに対して、引用発明の「ユーザインタフェース装置2」は、「車両バス7を介して、車両のナビゲーションシステムに結合されていてもよ」いものであって、「試料分析を行う分析部」を備えた「分析装置」ではない点。
[相違点2]
本願発明1では、「a)前記分析部による分析結果を表示する長方形の表示画面を備えた表示手段」を備えるのに対して、引用発明では、「地理的な地図5の縮尺を拡大する場合」に、「ディスプレイ1の全体に表示された元の地理的な地図」を表示するものであって、「前記分析部による分析結果を表示する」ものではない点。
[相違点3]
本願発明1では、「d)前記スライド操作判定手段により、斜め方向へのスライド操作がなされたと判定された場合に、その時点で前記表示画面に表示されている内容のうち、前記スライド操作の始点と終点を対角とする長方形であって、そのいずれか一辺が前記表示画面のいずれか一辺と平行である仮想的な長方形により囲まれた範囲を拡大して表示するよう、前記表示手段を制御する表示拡大手段」を備えるのに対して、引用発明では「車両のナビゲーションシステム」のために、「地理的な地図5の縮尺を拡大する場合」に、「地図5が表示されたウィンドウと同じアスペクト比を持つウィンドウ9」である「セグメントDがディスプレイ1全体を埋め尽くすように、セグメントDを拡大した縮尺で表示する」ものであって、「前記スライド操作の始点と終点を対角とする長方形であって、そのいずれか一辺が前記表示画面のいずれか一辺と平行である」仮想的な長方形の範囲を拡大表示するものではない点。
3.当審の判断
事案に鑑みて、上記[相違点3]について、先に検討する。
上記[相違点3]に係る、本願発明1の「d)前記スライド操作判定手段により、斜め方向へのスライド操作がなされたと判定された場合に、その時点で前記表示画面に表示されている内容のうち、前記スライド操作の始点と終点を対角とする長方形であって、そのいずれか一辺が前記表示画面のいずれか一辺と平行である仮想的な長方形により囲まれた範囲を拡大して表示するよう、前記表示手段を制御する表示拡大手段」は、上記引用文献1-3に記載されておらず、周知技術であるともいえない。
引用発明は、「車両のナビゲーションシステム」のために、「地理的な地図5の縮尺を拡大する場合」に、「地図5が表示されたウィンドウと同じアスペクト比を持つウィンドウ9」である「セグメントDがディスプレイ1全体を埋め尽くすように、セグメントDを拡大した縮尺で表示する」ものである。
「地図」を拡大・縮小して表示する場合には、上下方向と左右方向の拡大率(アスペクト比)は同一であって、上下方向と左右方向とで拡大率を異ならせることは、通常、想定し難い。
また、特に、「車両のナビゲーションシステム」で「地図」を表示する場合には、時々刻々変化する「車両の進行方向」に応じて、地図を表示する向きを任意の向きに回転可能とすることは普通に行われている。
よって、仮に、「d)前記スライド操作判定手段により、斜め方向へのスライド操作がなされたと判定された場合に、その時点で前記表示画面に表示されている内容のうち、前記スライド操作の始点と終点を対角とする長方形であって、そのいずれか一辺が前記表示画面のいずれか一辺と平行である仮想的な長方形により囲まれた範囲を拡大して表示するよう、前記表示手段を制御する表示拡大手段」が周知技術であるとしても、「車両のナビゲーションシステム」のために、「地理的な地図5の縮尺を拡大する場合」を前提とする引用発明に対して、上下方向と左右方向の拡大率(アスペクト比)が変化するとともに、地図を表示する向きが固定されるような、「前記スライド操作の始点と終点を対角とする長方形であって、そのいずれか一辺が前記表示画面のいずれか一辺と平行である」仮想的な長方形により囲まれた範囲を拡大した縮尺で表示する技術を適用するための動機付けや起因は見出し難い。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
(2) 請求項2-5について
本願発明2-5も、本願発明1の上記[相違点3]に係る「d)前記スライド操作判定手段により、斜め方向へのスライド操作がなされたと判定された場合に、その時点で前記表示画面に表示されている内容のうち、前記スライド操作の始点と終点を対角とする長方形であって、そのいずれか一辺が前記表示画面のいずれか一辺と平行である仮想的な長方形により囲まれた範囲を拡大して表示するよう、前記表示手段を制御する表示拡大手段」と、(実質的に)同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
第6 原査定についての判断
令和4年2月4日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5は、本願発明1の上記[相違点3]に係る「d)前記スライド操作判定手段により、斜め方向へのスライド操作がなされたと判定された場合に、その時点で前記表示画面に表示されている内容のうち、前記スライド操作の始点と終点を対角とする長方形であって、そのいずれか一辺が前記表示画面のいずれか一辺と平行である仮想的な長方形により囲まれた範囲を拡大して表示するよう、前記表示手段を制御する表示拡大手段」という技術的事項を有するものであり、当該技術的事項は、原査定における引用文献A-Dには記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1-5は、当業者であっても、原査定における引用文献A-Dに基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2021-004705