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特許拒絶査定不服審判

2021-003759

液体吐出装置

審判番号
2021-003759
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-048105
請求日
2021年03月23日
審決日
2022年01月25日
公報発行日
2022年04月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ブラザー工業株式会社
審判長/審判官
  • 審判長 藤本 義仁
  • 審判官 佐々木 創太郎
  • 審判官 吉村 尚
分類
P18 .121-Z (B41J) / P18 .56 -Z (B41J) / P18 .575-Z (B41J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019- 48105「液体吐出装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月11日出願公開、特開2019-111829〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成26年4月8日(以下、「原出願日」という。)に出願した特願2014-079373号の一部を、平成31年3月15日に新たな特許出願としたものであって、同年4月11日付けで手続補正書及び上申書が提出され、令和2年5月28日付けで拒絶理由が通知され、同年7月31日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月22日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対して令和3年3月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、令和3年11月2日に上申書が提出されたものである。 第2 令和3年3月23日に提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 令和3年3月23日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和2年7月31日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項2を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1へと補正することを含むものである。(下線は当審決で付した。以下同じ。) (1)本件補正前の特許請求の範囲 「【請求項1】 筐体と、 液体が貯留される液体貯留室、上記液体貯留室に液体を補充するための注入口、及び上記液体貯留室から液体を流出させる液体流出路が形成されたタンクと、 上記注入口に対して着脱可能なキャップと、 記録媒体を支持する給送トレイと、 記録媒体を支持する排出トレイと、 上記給送トレイから上記排出トレイまで搬送経路に沿って記録媒体を搬送する搬送機構と、 上記搬送経路に対面する位置において左右方向へ移動するキャリッジと、 上記キャリッジに搭載されており、上記液体流出路を通じて上記液体貯留室から流出された液体を上記搬送機構によって搬送された上記記録媒体に向かって吐出するノズルを有するヘッドと、を備えており、 上記筐体は、少なくとも上記タンクの上記注入口を上記筐体外に露出する開口を有しており、且つ上記筐体は上記開口を開閉可能なカバーと、を備えており、 上記搬送経路及び上記キャリッジは、上記筐体内に配置されており、 上記タンクは、上記左右方向において上記搬送経路の外側に配置されて上記筐体内に固定配置されており、 上記タンクは、一部が上記左右方向において上記キャリッジの移動領域の両端より内側にあり、他の部分が上記左右方向において上記キャリッジの移動領域の両端より外側になるように配置されており、 上記タンクと上記給送トレイとは、上下方向から視て重ならず、上記左右方向から視て重なる液体吐出装置。 【請求項2】 上記タンクは、上記左右方向及び上下方向に直交する前後方向において上記キャリッジより前方に配置されている請求項1に記載の液体吐出装置。 【請求項3】 上記筐体の開口は、上記前後方向の前側となる側壁に形成されたものである請求項2に記載の液体吐出装置。 【請求項4】 上記タンクは、複数の上記液体貯留室と、複数の上記液体貯留室それぞれに液体を注入するための複数の注入口と、を有するものであり、 上記複数の注入口は、上記左右方向に一列に並んで配置されている請求項3に記載の液体吐出装置。 【請求項5】 上記カバーは、左右方向に沿って延出する回動軸の周りに回動するものであり、上記回動軸は、上記カバーが上記開口を閉じているときに、上記カバーの上端よりも下端に近い位置に設けられている請求項1から4のいずれかに記載の液体吐出装置。 【請求項6】 上記筐体の前側となる側壁であって、上記上下方向において上記タンクより上方に、外部からの入力を受け付ける入力部又は画像を表示する表示部の少なくとも一方を有する操作パネルが配置されている請求項1から5のいずれかに記載の液体吐出装置。 【請求項7】 上記給送トレイは、上記上下方向から視たときに、上記搬送経路と重なる位置に配置されており、 上記給送トレイは、上記筐体の前方へ引き出し可能である請求項1から6のいずれかに記載の液体吐出装置。 【請求項8】 上記排出トレイは、上記給送トレイの上方に配置されており、上記筐体は、上記排出トレイの上方に記録用紙を排出するための内部空間を有するものである請求項7に記載の液体吐出装置。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲 「【請求項1】 筐体と、 液体が貯留される液体貯留室、上記液体貯留室に液体を補充するための注入口、及び上記液体貯留室から液体を流出させる液体流出路と、連結部が形成されたタンクと、 上記注入口に対して着脱可能なキャップと、 記録媒体を支持する給送トレイと、 記録媒体を支持する排出トレイと、 上記給送トレイから上記排出トレイまで搬送経路に沿って記録媒体を搬送する搬送機構と、 上記搬送経路に対面する位置において左右方向へ移動するキャリッジと、 上記キャリッジに搭載されており、上記液体流出路を通じて上記液体貯留室から流出され、上記連結部に連結されたチューブを通じて導かれた液体を上記搬送機構によって搬送された上記記録媒体に向かって吐出するノズルを有するヘッドと、を備えており、 上記筐体は、少なくとも上記タンクの上記注入口を上記筐体外に露出する開口を有しており、且つ上記筐体は上記開口を開閉可能なカバーと、を備えており、 上記搬送経路及び上記キャリッジは、上記筐体内に配置されており、 上記タンクは、上記左右方向において上記搬送経路の外側に配置されて上記筐体内に固定配置されており、 上記タンクは、一部が上記左右方向において上記キャリッジの移動領域の両端より内側にあり、他の部分が上記左右方向において上記キャリッジの移動領域の両端より外側になるように配置されており、 上記タンクと上記給送トレイとは、上下方向から視て重ならず、上記左右方向から視て重なり、 上記タンクは、上記キャリッジの移動領域と上下方向から視て重ならず、上記左右方向及び上下方向に直交する前後方向において上記キャリッジより前方に配置されている液体吐出装置。 【請求項2】 上記筐体の開口は、上記前後方向の前側となる側壁に形成されたものである請求項1に記載の液体吐出装置。 【請求項3】 上記タンクは、複数の上記液体貯留室と、複数の上記液体貯留室それぞれに液体を注入するための複数の注入口と、を有するものであり、 上記複数の注入口は、上記左右方向に一列に並んで配置されている請求項2に記載の液体吐出装置。 【請求項4】 上記カバーは、左右方向に沿って延出する回動軸の周りに回動するものであり、上記回動軸は、上記カバーが上記開口を閉じているときに、上記カバーの上端よりも下端に近い位置に設けられている請求項1から3のいずれかに記載の液体吐出装置。 【請求項5】 上記筐体の前側となる側壁であって、上記上下方向において上記タンクより上方に、外部からの入力を受け付ける入力部又は画像を表示する表示部の少なくとも一方を有する操作パネルが配置されている請求項1から4のいずれかに記載の液体吐出装置。 【請求項6】 上記給送トレイは、上記上下方向から視たときに、上記搬送経路と重なる位置に配置されており、 上記給送トレイは、上記筐体の前方へ引き出し可能である請求項1から5のいずれかに記載の液体吐出装置。 【請求項7】 上記排出トレイは、上記給送トレイの上方に配置されており、上記筐体は、上記排出トレイの上方に記録用紙を排出するための内部空間を有するものである請求項6に記載の液体吐出装置。」 2 本件補正の適否について 本件補正は、本件補正前の請求項2の「液体吐出装置」の発明特定事項である「タンク」について「連結部が形成され」たものであるとの限定、及び、「上記キャリッジの移動領域と上下方向から視て重ならず」「配置されている」との限定を付加するものである。 また、本件補正は、本件補正前の請求項2の「液体吐出装置」の発明特定事項である「ヘッド」が有する「ノズル」が吐出する「液体」について「上記連結部に連結されたチューブを通じて導かれた」ものであるとの限定を付加するものである。 また、本件補正前の請求項2に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書の 「【0048】 [インク導出路117、戻り流路119] インクタンク100の右側面には、図8に示されるように、インク導出路117B、117M、117C、117Y(液体導出路の一例)が設けられている。インク導出路117B、117M、117C、117Yは、一端が開口116B、116M、116C、116Yの位置で対応するインク流出路114B、114M、114C、114Yに接続され、他端が連結部118B、118M、118C、118Yに接続されている。インクタンク100の上壁104に突設された連結部118には、各色のインクに対応した4本のインクチューブ32B、32M、32C、32Y(図3参照)が連結される。すなわち、インク導出路117は、対応するインク流出路114を通じてインク室111から流出されたインクを、対応する連結部118に連結されたインクチューブ32を通じて記録ヘッド39に導く流路である。なお、各インク導出路117及び各インクチューブ32の容積は、概ね同一である。」 との記載及び図3に基づいており、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。 3 独立特許要件について 本件補正の目的が、特許請求の範囲の減縮を目的としているので、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】に記載したとおりのものと認める。 (2)引用例 ア 引用例1 原査定の拒絶の理由において引用され、原出願日前の平成26年2月6日に頒布された刊行物である特開2014-24349号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は液体カートリッジ及び画像形成装置に関する。」 (イ)「【0012】 この画像形成装置は、シリアル型画像形成装置であり、装置本体100の上面側に開閉可能にカバー101が設けられ、このカバー101を開くことで内部の機構部にアクセスすることができる。また、装置本体100の前面側には給紙トレイ102と排紙トレイ103を備えている。 【0013】 さらに、装置本体100の右側前面には開閉可能なカバー104が設けられ、カバー104を開くことで、装置本体100のカートリッジホルダ61に対して本発明に係る液体カートリッジであるインクカートリッジ62の着脱を行うことができる。」 (ウ)「【0017】 また、キャリッジ4には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液滴を吐出する画像形成手段としての液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド11a、11b(区別しないときは、「記録ヘッド11」という。以下、同様)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、滴吐出方向を下方に向けて装着している。 【0018】 記録ヘッド11はそれぞれ2列のノズル列を有し、4つのノズル列にそれぞれY、M、C、Kの各色の液滴を吐出するように割り当てている。 【0019】 記録ヘッド11a、11bにはこの記録ヘッド11にインクを供給するヘッドタンク12a、12bが一体的に設けられている。一方、装置本体側には、カートリッジホルダ61に液体カートリッジ(メインタンク、以下「インクカートリッジ」という。)62が交換可能に着脱され、インクカートリッジ62から送液ポンプユニット63によって供給チューブ64を介してヘッドタンク12にインク(液体)を供給する。 … 【0021】 一方、キャリッジ4の下方側には、用紙10を副走査方向に搬送する搬送手段としての搬送ベルト21を配置している。この搬送ベルト21は、無端状ベルトであり、搬送ローラ22とテンションローラ23との間に掛け回されて、副走査モータ31によってタイミングベルト32及びタイミングプーリ33を介して搬送ローラ22が回転駆動されることによって副走査方向に周回移動される。」 (エ)「【0024】 このように構成したこの画像形成装置においては、給紙された用紙を搬送ベルト21で間歇的に搬送し、キャリッジ4を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド11を駆動することにより、停止している用紙に液滴を吐出して1行分を記録し、用紙を所定量搬送後、次の行の記録を行なう動作を繰り返して用紙上に画像を形成し、画像形成後用紙を排紙する。 … 【0027】 インクカートリッジ62は、記録ヘッド11のヘッドタンク12に供給する液体であるインクを収容する液体収容部材であるインク袋600と、インク袋600を内部に収納したケース部材であるカートリッジケース601とを有している。」 (オ)「【0050】 導出部材702は、平板状の本体部711のほぼ中央部(インク袋の辺方向)に、袋本体701内のインクを外部に導出する供給口部712が設けられている。また、本体部711には、供給口部712に隣り合って、袋本体701にインクを充填するときに使用する充填口部720が設けられている。」 (カ)「【0057】 このように、本実施形態のインクカートリッジ62においては、インク袋600をケースベース611に容易に位置決めして取り付けることができ、また、インク袋600の倒れも防止できる。 【0058】 また、本実施形態におけるインク袋600の導出部材702は、供給口部712と穴部713との間、供給口部712と穴部714との本体部711と一体の補強リブ717が設けられている。なお、供給口部712と穴部714との間には充填口部720が介在している。」 (キ)「【0092】 そして、正しい種類のインクカートリッジ62が差し込まれることで、インクカートリッジ62内に収納されているインクと連通可能な流路を形成するためのカートリッジホルダ61側のニードルなどの供給部材(図示しない)が前記インク袋600の供給口部712に刺し込まれる。」 (ク)上記(エ)、(オ)及び図7より、インクが貯留されるインク袋600及びインク袋600からインクを流出させる供給口部712を備えるインクカートリッジ62が看取できる。 (ケ)上記(ウ)、図1ないし図4より、装置本体100内で、キャリッジ4は、搬送ベルト21の直上に配置され、その移動方向は用紙10を副走査方向に搬送する搬送ベルト21と直交することが看取できる。 (コ)図3より、インクカートリッジ62は、キャリッジ4の移動方向において搬送ベルト21の外側に配置されていることが看取できる。 (サ)図1ないし図3より、インクカートリッジ62と給紙トレイ102とは、上下方向から視て重ならないことが看取できる。 (シ)図2及び図3より、インクカートリッジ62は、キャリッジ4の移動領域と上下方向から視て重ならず、左右方向及び上下方向に直交する前後方向においてキャリッジ4より前方に配置されていることが看取できる。 そうすると、上記(ア)乃至(シ)の記載事項から、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「画像形成装置は、装置本体100の前面側に給紙トレイ102と排紙トレイ103を備え、 装置本体100の右側前面には開閉可能なカバー104が設けられ、カバー104を開くことで、装置本体100のカートリッジホルダ61に対して液体カートリッジであるインクカートリッジ62の着脱を行うことができ、 給紙された用紙を搬送ベルト21で間歇的に搬送し、キャリッジ4を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド11を駆動することにより、停止している用紙に液滴を吐出して1行分を記録し、用紙を所定量搬送後、次の行の記録を行なう動作を繰り返して用紙上に画像を形成し、画像形成後用紙を排紙し、 インクカートリッジ62は、インクが貯留されるインク袋600及びインク袋600からインクを流出させる供給口部712を備え、 インク袋600には、袋本体701に、インクを充填するときに使用する充填口部720が設けられ、 装置本体100内で、キャリッジ4は、搬送ベルト21の直上に配置され、その移動方向は用紙10を副走査方向に搬送する搬送ベルト21と直交し、 キャリッジ4は、ノズル列を有し、インクカートリッジ62からインクが供給され、用紙に液滴を吐出して記録する記録ヘッド11を装着し、 インクカートリッジ62は、キャリッジ4の移動方向において搬送ベルト21の外側に配置され、 インクカートリッジ62と給紙トレイ102とは、上下方向から視て重ならず、 インクカートリッジ62は、キャリッジ4の移動領域と上下方向から視て重ならず、左右方向及び上下方向に直交する前後方向においてキャリッジ4より前方に配置されている、画像形成装置。」 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用発明1とを対比すると、 ア 後者の「装置本体100」、「インク」、「インク袋600」、「インクカートリッジ62」、「用紙」、「給紙トレイ102」、「排紙トレイ103」、「搬送ベルト21」、「キャリッジ4」、「記録ヘッド11」、「カバー104」及び「画像形成装置」は、それぞれ、前者の「筐体」、「液体」、「液体が貯留される液体貯留室」、「タンク」、「記録媒体」、「給送トレイ」、「排出トレイ」、「搬送機構」、「キャリッジ」、「ヘッド」、「カバー」及び「液体吐出装置」に相当する。 イ 後者の「インク袋600からインクを流出させる供給口部712」は、インク袋600からインクを流出させる「流路」になっていると認められるから一種の「液体流出路」であると言え、前者の「液体流出路」と「液体貯留室から液体を流出させる」点で共通する。 ウ 前者の「記録媒体を支持する給送トレイ」について、本願の当初明細書等の【0017】に「給送トレイ20は、積層された複数の用紙12を支持可能である。」と、【0018】に「給送部15は、給送トレイ20に支持された用紙12を搬送経路65へ給送する。」と記載されているだけであるから 、前者の「記録媒体を支持する給送カセット」とは、「記録媒体を収納している給送カセット」と解することができる。してみると、後者の「給紙トレイ102」が用紙を収納していることは明らかであるから、前者の「給送トレイ」と後者の「給紙トレイ102」とは、「記録媒体を支持する」点で共通する。 エ 後者の「排紙トレイ103」は、排紙された「用紙」を支持するものであるから、前者の「排出トレイ」と後者の「排紙トレイ103」は、「記録媒体を支持する」点で共通する。 オ 後者の「搬送ベルト21」は、給紙された用紙に対し、画像形成後、用紙を排紙するものであるから、後者の「搬送ベルト21」は、前者の「搬送機構」と「上記給送トレイから上記排出トレイまで搬送経路に沿って記録媒体を搬送する」点で共通する。 カ 後者の「キャリッジ4」は、装置本体100内で搬送ベルト21の直上に配置され、その移動方向は用紙10を副走査方向(前後方向)に搬送する搬送ベルト21と直交するものであるから、「上記搬送経路に対面する位置において左右方向へ移動するキャリッジ」であるといえ、後者の「搬送ベルト21」及び「キャリッジ4」は、「筐体内に配置されて」いるといえる。 キ 後者の「記録ヘッド11」は、キャリッジ4に装着され、ノズル列を有し、インクカートリッジ62からインクが供給され、用紙に液滴を吐出して記録するものであって、インクカートリッジ62のインク袋600から供給口部712を介してインクが供給されるのであるから、前者の「ヘッド」と後者の「記録ヘッド11」とは、「キャリッジに搭載されており、液体流出路を通じて液体貯留室から流出され」た「液体を搬送機構によって搬送された記録媒体に向かって吐出するノズルを有する」点で共通する。 ク 後者の「装置本体100」には、その右側前面には開閉可能なカバー104が設けられ、カバー104を開くことで、装置本体100のカートリッジホルダ61に対して液体カートリッジであるインクカートリッジ62の着脱を行うことができるものであるから、インクカートリッジ62を「筐体外に露出する開口を有して」いることは明らかであって、後者の「カバー104」が前記開口を開閉可能としていることも明らかであるから、前者の「カバー」と後者の「カバー104」とは、「開口を開閉可能なカバー」である点で共通する。 ケ 後者の「インクカートリッジ62」は、キャリッジ4の移動方向において搬送ベルト21の外側に配置されるものであるから、前者の「タンク」と後者の「インクカートリッジ62」とは、「左右方向において搬送経路の外側に配置されて」いる点で共通する。 コ 後者の「インクカートリッジ62」及び「給紙トレイ102」とは、上下方向から視て重ならないものであるから、前者の「タンク」及び「給送カセット」と後者の「インクカートリッジ62」及び「給紙トレイ102」とは、「上下方向から視て重なら」ない点で共通する。 サ 後者の「インクカートリッジ62」は、「キャリッジ4の移動領域と上下方向から視て重ならず、左右方向及び上下方向に直交する前後方向においてキャリッジ4より前方に配置されている」のであるから、前者の「タンク」と後者の「インクカートリッジ62」とは、「上記キャリッジの移動領域と上下方向から視て重ならず、上記左右方向及び上下方向に直交する前後方向において上記キャリッジより前方に配置されている」点で共通する。 したがって、両者は、 「筐体と、 液体が貯留される液体貯留室、及び上記液体貯留室から液体を流出させる液体流出路と、連結部が形成されたタンクと、 記録媒体を支持する給送トレイと、 記録媒体を支持する排出トレイと、 上記給送トレイから上記排出トレイまで搬送経路に沿って記録媒体を搬送する搬送機構と、 上記搬送経路に対面する位置において左右方向へ移動するキャリッジと、 上記キャリッジに搭載されており、上記液体流出路を通じて上記液体貯留室から流出された液体を上記搬送機構によって搬送された上記記録媒体に向かって吐出するノズルを有するヘッドと、を備えており、 上記筐体は、少なくとも上記タンクを上記筐体外に露出する開口を有しており、且つ上記筐体は上記開口を開閉可能なカバーと、を備えており、 上記搬送経路及び上記キャリッジは、上記筐体内に配置されており、 上記タンクは、上記左右方向において上記搬送経路の外側に配置されており、 上記タンクと上記給送トレイとは、上下方向から視て重ならず、 上記タンクは、上記キャリッジの移動領域と上下方向から視て重ならず、上記左右方向及び上下方向に直交する前後方向において上記キャリッジより前方に配置されている液体吐出装置。」 の点で一致し、以下の点で一応相違する。 [相違点1] タンクについて、本願補正発明が、「液体貯留室に液体を補充するための注入口」が形成され、「注入口に対して着脱可能なキャップ」が備えられ、「注入口」が、「筐体」の「開口」から「筐体外に露出」されるものであるのに対し、引用発明1は、インクカートリッジ62に備えられたインク袋600には、袋本体701に、インクを充填するときに使用する充填口部720が設けられるものであるものの、「液体貯留室に液体を補充するための注入口」が形成され、「注入口に対して着脱可能なキャップ」が備えられ、「注入口」が、「筐体」の「開口」から「筐体外に露出」するものではない点。 [相違点2] 本願補正発明は、ノズルが連結部に連結されたチューブを通じて導かれた液体を吐出するものであるのに対し、引用発明1は、ノズルが連結部に連結されたチューブを通じて導かれた液体を吐出するものではない点。 [相違点3] タンクについて、本願補正発明が、「筐体内に固定配置されて」いるものであるのに対し、引用発明1は、装置本体100に対して着脱可能である点。 [相違点4] 本願補正発明は、タンクが、一部が左右方向においてキャリッジの移動領域の両端より内側にあり、他の部分が左右方向においてキャリッジの移動領域の両端より外側になるように配置されているのに対し、引用発明1は、そのような特定を有していない点。 [相違点5] タンクと給送カセットについて、本願補正発明では、「左右方向から視て重なる」のに対し、引用発明1では、「左右方向から視て重なる」のか否か定かでない点。 (4)判断 上記各相違点について、以下、検討する。 ア [相違点1]について 液体吐出装置の分野において、タンクの液体貯留室に液体を補充するための注入口に対して着脱可能なキャップを設け、注入口を筐体に設けたカバーにより開閉可能となった開口から外部に露出させることは、周知の技術手段である(例えば、特開平7-205450号公報(【0045】、図1、2、5~7参照。)以下、「周知技術1」という。)。 そして、液体吐出装置に分野において、小型化・薄型化という課題は、内在する自明の課題であって、引用発明1及び上記周知技術1においても内在するものである。 そうすると、引用発明1の装置本体100の右側前面のカバー104内のカートリッジ62に、上記周知技術1を適用し、上記相違点1の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。 イ [相違点2]について 液体吐出装置の分野において、インクタンクに連結部を設け、連結部に連結されたチューブを通じて導かれた液体をノズルから吐出するようにする技術は、周知技術である。(例えば特開平11-78048号公報(【0025】、図5参照。)以下、「周知技術2」という。)。 してみると、引用発明1において、インクカートリッジ62から記録ヘッド11にインクを供給するための手段として、上記周知技術2を適用することで、上記相違点2の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。 ウ [相違点3]について 液体吐出装置の分野において、特開2014-54824号公報に示されているように(【0089】~【0092】参照。)、装置本体に対してねじでタンクケースを固着することは、周知の技術手段である(以下「周知技術3」という。)。が記載されている。 そして、液体吐出装置に分野において、筐体内に部材を設置するに際し、安定的に設置することは、当業者が当然考慮する事項である。 そうすると、引用発明1のインクカートリッジ62に対し、安定的に設置することを考慮して上記周知技術3を適用し、上記相違点3の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。 エ [相違点4]について 引用例1の図3において、キャリッジ4の移動領域の右側に、維持回復機構41があり、当該維持回復機構41の右端が、キャリッジ4の移動領域の右端であるものと認められるから、引用発明1も「上記タンクが、一部が上記左右方向において上記キャリッジの移動領域の両端より内側にあり、他の部分が上記左右方向において上記キャリッジの移動領域の両端より外側になるように配置されている」に相当する構成を有していることが看取でき、相違点4は実質的な相違点とは認められない。 また、仮に、当該点で相違しているとしても、引用発明1において、筐体の限られたスペースの中でカートリッジの大きさをどのような大きさにするかは、当業者が適宜設定するものであり、当業者が当該設定を行うなかで、「上記タンクが、一部が上記左右方向において上記キャリッジの移動領域の両端より内側にあり、他の部分が上記左右方向において上記キャリッジの移動領域の両端より外側になるように配置されている」という構成は、適宜採用し得た構成に過ぎない。 オ [相違点5]について 引用発明1において、インクカートリッジ62と給紙トレイ102とは、上下方向から視て重ならないものであって、引用文献1の図1及び図2を見ても、インクカートリッジ62の配置領域を下方向に拡大するのを阻害するような構成は把握できないから、引用発明1において、タンクと給送カセットとを、左右方向から視て重なるように配置することは、当業者が適宜なし得ることであって、格別なことではない。 カ そして、本願補正発明の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明1、上記周知技術1、上記周知技術2及び上記周知技術3から、当業者が予測し得る範囲内のものである。 キ よって、本願補正発明は、引用発明1、上記周知技術1、上記周知技術2及び上記周知技術3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることが出来ない。 (5)請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、 「令和2年7月31日付け意見書において申し述べましたように、本願発明の解決しようとする課題は、「タンクが比較的に大きい(具体的には、タンクの左右方向の寸法は、記録媒体を搬送する搬送経路の左右方向の一端と、キャリッジの移動領域の一端との間の距離よりも大きくなっている)場合、左右方向および上下方向において装置の外形を小さくして、液体吐出装置の小型化、薄型化が実現されるよう、タンクをどのように配置するか?」というものです。 この課題を解決するために、本発明は、 A.タンクは、左右方向において搬送経路の外側に配置されて筐体内に固定配置されている B.タンクは、一部が左右方向においてキャリッジの移動領域の両端より内側にあり、他の部分が左右方向においてキャリッジの移動領域の両端より外側になるように配置されている C.タンクと給送トレイとは、上下方向から視て重ならず、左右方向から視て重なる という構成A~Cに加え、 D.液体貯留室から流出された液体をヘッドに導くチューブが連結される連結部が形成されるタンクは、キャリッジの移動領域と上下方向から視て重ならず、左右方向及び上下方向に直交する前後方向においてキャリッジより前方に配置されている という構成Dを採用しております。 構成Dにより、本発明では、構成A~Cを採用する装置において、上下方向において装置の外形が大きくなるのを一層抑制することができます。 対して、引用文献1~4いずれにおいても、上記課題や構成A~Dを全て採用する記載や示唆がなく、さらに、構成Dについては、引用文献1~4いずれにおいても記載も示唆もされていません。 したがって、構成A~Cに構成Dを加えた本発明を容易に想到することは、到底できません。」 と主張する。 また、令和3年11月2日付け上申書において 「引用文献1は、少なくとも上記構成Dについて、開示も示唆もしていません。 尚、令和2年12月22日付けの拒絶査定によりますと、「引用文献1(特に、図1-2)記載の発明においても、インクカートリッジ62(タンクに相当)と給紙トレイ102(給送トレイに相当)とは、上下方向から視て重ならず、左右方向から視て一部重なっているものと認められる。」とされていますが、誤認であると思料します。引用文献1の図1,2では、インクカートリッジ62と排紙トレイ103とが左右方向から視て一部重なり、インクカートリッジ62が着脱されるカートリッジホルダ61の下方に位置する部材と給紙トレイ102とが左右方向から視て一部重なっていることは示されているものの、インクカートリッジ62と給紙トレイ102とが左右方向から視て一部重なっているか、不明です。したがって、引用文献1は、上記構成Cについても明示していません。 引用文献2は、少なくとも上記構成B~Dについて、開示も示唆もしていません。 引用文献3は、上記構成A~Dについて、開示も示唆もしていません。 引用文献4は、少なくとも上記構成A~Cについて、開示も示唆もしていません。 以上により、引用文献1~4の技術と本発明とは、相違点が存在します。 本発明では、これらの相違点、即ち、上記構成A~Dの全てを同時に備えることで、上述したような、液体を補充するときの前後方向におけるユーザのタンクへのアクセスを容易化しつつ、チューブが連結される連結部が形成されるタンクが筐体内に配置される液体吐出装置の左右方向及び上下方向における大型化を抑制しながらも、タンクの容量が小さくなることを抑制することができる、という特有の効果を奏します。」 と主張する。 そこで、上記主張について以下、検討する。 上記(4)において説示したとおり、上記構成A~Dは、それぞれ引用発明1、上記周知技術1、上記周知技術2及び上記周知技術3に基づいて当業者が容易に想到し得たものであり、本願補正発明が奏する効果も、引用発明1、上記周知技術1、上記周知技術2及び上記周知技術3から、当業者が予測し得る範囲内のものである。 してみると、引用文献1ないし4において、請求人が主張する課題や構成A~D全てを同時に備える構成の記載や示唆がないことを根拠に、本願補正発明が引用例1及び周知技術から、当業者が容易に想到し得たものではないとする上記請求人の主張は採用できない。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない発明であって、特許出願の際、独立して特許を受けることが出来ないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してされたものである。 (6)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和2年7月31日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項2に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 筐体と、 液体が貯留される液体貯留室、上記液体貯留室に液体を補充するための注入口、及び上記液体貯留室から液体を流出させる液体流出路が形成されたタンクと、 上記注入口に対して着脱可能なキャップと、 記録媒体を支持する給送トレイと、 記録媒体を支持する排出トレイと、 上記給送トレイから上記排出トレイまで搬送経路に沿って記録媒体を搬送する搬送機構と、 上記搬送経路に対面する位置において左右方向へ移動するキャリッジと、 上記キャリッジに搭載されており、上記液体流出路を通じて上記液体貯留室から流出された液体を上記搬送機構によって搬送された上記記録媒体に向かって吐出するノズルを有するヘッドと、を備えており、 上記筐体は、少なくとも上記タンクの上記注入口を上記筐体外に露出する開口を有しており、且つ上記筐体は上記開口を開閉可能なカバーと、を備えており、 上記搬送経路及び上記キャリッジは、上記筐体内に配置されており、 上記タンクは、上記左右方向において上記搬送経路の外側に配置されて上記筐体内に固定配置されており、 上記タンクは、一部が上記左右方向において上記キャリッジの移動領域の両端より内側にあり、他の部分が上記左右方向において上記キャリッジの移動領域の両端より外側になるように配置されており、 上記タンクと上記給送トレイとは、上下方向から視て重ならず、上記左右方向から視て重なる液体吐出装置。 【請求項2】 上記タンクは、上記左右方向及び上下方向に直交する前後方向において上記キャリッジより前方に配置されている請求項1に記載の液体吐出装置。」 2 原査定の拒絶の理由 原査定の理由は、この出願の請求項2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用例1に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない、という理由を含むものである。 引用例1.特開2014-24349号公報 3 引用例 令和2年5月28日付けの拒絶理由通知に引用された引用例1、及び、その記載内容は上記「第2 3 (2)引用例」に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、実質的に、本願補正発明の「液体吐出装置」の発明特定事項である「タンク」について「連結部が形成され」たものであるとの限定、及び、「上記キャリッジの移動領域と上下方向から視て重ならず」「配置されている」との限定を省き、「液体吐出装置」の発明特定事項である「ヘッド」が有する「ノズル」が吐出する「液体」について「上記連結部に連結されたチューブを通じて導かれた」ものであるとの限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]3に記載したとおり、引用例1に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に想到し得たものであるから、本願発明も、引用例1に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に想到し得たものである。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に想到し得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-003759

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