2021-003301
回転角度検出装置および回転角度検出方法
- 審判番号
- 2021-003301
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-547080外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年03月12日
- 審決日
- 2021年11月24日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (G01D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 21項目
第1 手続の経緯
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本願は、2016年(平成28年)10月31日を国際出願日とする日本語特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は次のとおりである。
1.本願の請求項1、2、8に係る発明は、以下の引用文献1~3、7、8に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
2.本願の請求項3に係る発明は、以下の引用文献1~4、7、8に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
3.本願の請求項4に係る発明は、以下の引用文献1~5、7、8に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
4.本願の請求項6に係る発明は、以下の引用文献1~8に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2006-329888号公報
2.特開2013-61346号公報
3.特開2008-209340号公報
4.特開2004-69655号公報
5.特開2003-50270号公報
6.国際公開第2011/104961号
7.特開2004-184115号公報
8.特開2008-29070号公報
第3 本願発明
本願の請求項1~8に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件発明1」などという。)は、令和3年3月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「 【請求項1】磁性体で構成された回転子と、それぞれバイアス磁界発生部と磁気検出素子からなるb個以上の磁気検出部を有する固定子であって、bは3以上の整数であるものと、前記磁気検出素子で得られた検出信号から前記回転子の回転角度を求める回転角度演算処理部と、続きを表示(全44行)を備え、前記回転子の固定子対向面は、機械角360度に対してx周期分変化する凹凸部を有し、xは1以上の整数であり、前記凹凸部は前記回転子が1回転する間、機械角の変化に対して前記バイアス磁界発生部との間の隙間の距離が概略正弦波となるよう滑らかに曲線的に変化する形状を有し、前記固定子の前記磁気検出部は、前記回転子の前記固定子対向面と隙間を空けて径方向に対向するように周方向に沿って前記凹凸部の1周期当りb個設けられ、機械角360×(n×b+m)/(x×b)度間隔で円弧上に配置されており、nは前記磁気検出部の基準位置からの周方向のずらし量を前記周期の数で示したもので0以上の整数、mはb個の前記磁気検出部のうちの配置順である1からbまでの整数である、回転角度検出装置。【請求項2】磁性体で構成された回転子と、それぞれバイアス磁界発生部と磁気検出素子からなるb個以上の磁気検出部を有する固定子であって、bは3以上の整数であるものと、前記磁気検出素子で得られた検出信号から前記回転子の回転角度を求める回転角度演算処理部と、を備え、前記回転子の固定子対向面は、機械角360度に対してx周期分変化する凹凸部を有し、xは1以上の整数であり、前記凹凸部は前記回転子が1回転する間、機械角の変化に対して前記バイアス磁界発生部との間の隙間の距離が概略正弦波となるよう滑らかに曲線的に変化する形状を有し、前記固定子の前記磁気検出部は、前記回転子の前記固定子対向面と隙間を空けて径方向に対向するように周方向に沿って前記凹凸部の1周期に亘りb個設けられ、機械角360/(x×b)度間隔で円弧上に配置されている、回転角度検出装置。【請求項3】前記バイアス磁界発生部は前記回転子の径方向に磁束を発生させ、前記磁気検出素子は検出面が径方向の磁束を検出する方向に配置された、請求項1または2に記載の回転角度検出装置。【請求項4】前記回転角度演算処理部が、前記磁気検出素子の検出信号の直流分による基準電圧からの直流オフセット値を求める直流オフセット算出部と、b個の前記磁気検出素子の検出信号を、前記直流オフセット値に基づいて補正する直流オフセット補正部と、補正されたb個の検出信号をb相-2相変換して2相信号を求めるb相-2相変換部と、2相信号の正接逆関数を演算して回転角度を算出する角度算出部と、を含む請求項1から3までのいずれか1項に記載の回転角度検出装置。【請求項5】前記直流オフセット算出部は、b個の前記磁気検出素子の瞬時値の和の平均値を算出し、前記直流オフセット補正部は、b個の前記磁気検出素子の検出信号それぞれから得られた平均値を減算する、請求項4に記載の回転角度検出装置。【請求項6】前記直流オフセット算出部は、b個の前記磁気検出素子のそれぞれの最大値と最小値の中央値を算出し、前記直流オフセット補正部は、b個の前記磁気検出素子の検出信号から得られた中央値をそれぞれに減算する、請求項4に記載の回転角度検出装置。【請求項7】b個の前記中央値を各々の前記磁気検出素子の検出信号と比較し、各磁気検出素子の機能が正常か否かを検査する検査部を含む、請求項6に記載の回転角度検出装置。【請求項8】磁性体で構成された回転子に、それぞれバイアス磁界発生部と磁気検出素子からなるb個以上の磁気検出部を有する固定子を間に隙間を空けて配置し、前記回転子の固定子対向面に、機械角360度に対してx周期分変化する凹凸部を形成し、ここでxは1以上の整数であり、前記凹凸部は前記回転子が1回転する間、機械角の変化に対して前記バイアス磁界発生部との間の隙間の距離が概略正弦波となるよう滑らかに曲線的に変化する形状とし、前記固定子の前記磁気検出部を、前記回転子の前記固定子対向面と隙間を空けて径方向に対向するように周方向に沿って前記凹凸部の1周期当りb個設け、機械角360×(n×b+m)/(x×b)度間隔で円弧上に配置し、nは0以上の整数、mは1からbまでの整数であり、前記磁気検出部の前記磁気検出素子の検出信号の直流分による基準電圧からの直流オフセット値を求め、b個の前記磁気検出素子の検出信号を、前記直流オフセット値に基づいて補正し、補正されたb個の検出信号をb相-2相変換して2相信号を求め、2相信号の正接逆関数を演算して回転角度を算出する、回転角度検出方法。」
第4 引用文献に記載された発明の認定等
1 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定
(1) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に発行された特開2006-329888号公報(以下、原査定において引用された順番に従って、この文献を「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当審が付したもので、以下同様である。
「【技術分野】【0001】本発明は、回転軸に対して回転自在に固定された磁性を有する回転体と、回転体の円周方向で直列接続され、回転体の外周面に対向配置された少なくとも一対の磁気抵抗素子を有し、回転体の回転に基づいて周期的に変動する出力信号を出力する磁気回路と、一対の磁気抵抗素子に一定のバイアス磁界を与える磁石とを備え、工作機械のスピンドルやモータ出力軸の回転速度及び回転位置を検出して、スピンドルやモータ出力軸の速度や位置の制御に用いられる磁気センサ装置に関するものである。【背景技術】【0002】一般に、被検出体である回転体の回転角度や回転方向を検出する磁気センサ装置として、In-Sb半導体磁気抵抗素子を用いた回転角度センサ装置が知られている。図3に示すように、この磁気センサ装置30は、工作機械のスピンドルやモータ出力軸37などの制御に使用されるものであり、回転体としての磁気歯車31に磁気センサ32が対向配置されている。磁気センサ32は、それぞれ直列接続されている2組の磁気抵抗素子33a~33dを有する磁気回路33と、磁気抵抗素子33a~33dに一定のバイアス磁界を与える磁石34とを備えている。各一対の磁気抵抗素子33a~33dの両端には、駆動電圧が印加されるようになっている。【0003】図4に示すように、2組の磁気抵抗素子33a~33dは、一対のA相の磁気抵抗素子33a,33bと、他の一対のB相の磁気抵抗素子33c,33dである。A相とB相の磁気抵抗素子33a~33dは、磁気歯車31の回転角度や回転方向を検出すべく、出力信号の2つ正弦波35,36の位相差が90゜(図5)になるように、一列に配置されている。また、各組の一対の磁気抵抗素子33a~33dは、磁気歯車31の隣り合う山のピッチをPとすると、1/2Pの間隔(検出信号の正弦波でピーク出力が得られる間隔)で離れている。【0004】この種の磁気センサ装置の例として、2組の磁気抵抗素子の間隔を定めたものや(特許文献1)、2組の磁気抵抗素子を相互補間関係に配置したものが開示されている(特許文献2)。」
「【図3】[図:0001386807000001.jpg]」
「【図4】[図:0001386807000002.jpg]」
「【図5】[図:0001386807000003.jpg]」
【図4】から、磁気歯車31の外周が山と谷からなる部分を有しており、当該部分は、磁気歯車31の外周と磁石34の間の距離が、台形波となるように変化する形状であることが読み取れる。
【図4】と【0003】の「A相とB相の磁気抵抗素子33a~33dは」、「出力信号の2つ正弦波35,36の位相差が90゜(図5)になるように、一列に配置されている」という記載から、磁気抵抗素子33a~33dが、磁気歯車31の外周面と径方向に対向するように周方向に沿って、1/4Pの間隔で、隣り合う山のピッチPあたり、4個設けられていることが読み取れる。
【図4】から、磁石34は、磁気検出素子33a~33dと重なるように周方向に延びていることが読み取れる。
(2) 引用発明の認定
上記(1)の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「被検出体である回転体の回転角度や回転方向を検出する磁気センサ装置30であって、この磁気センサ装置30は、回転軸に対して回転自在に固定された磁性を有する回転体としての磁気歯車31に磁気センサ32が対向配置されており、磁気センサ32は、それぞれ直列接続されている2組の磁気抵抗素子33a~33dを有する磁気回路33と、磁気抵抗素子33a~33dに一定のバイアス磁界を与える磁石34とを備え(【0001】、【0002】)、2組の磁気抵抗素子33a~33dは、一対のA相の磁気抵抗素子33a,33bと、他の一対のB相の磁気抵抗素子33c,33dであり、A相とB相の磁気抵抗素子33a~33dは、磁気歯車31の回転角度や回転方向を検出すべく、出力信号の2つの正弦波35,36の位相差が90゜になるように、一列に配置され、各組の一対の磁気抵抗素子33a~33dは、磁気歯車31の隣り合う山のピッチをPとすると、1/2Pの間隔(検出信号の正弦波でピーク出力が得られる間隔)で離れており(【0003】)、磁気歯車31の外周が山と谷からなる部分を有しており、当該部分は、磁気歯車31の外周と磁石34の間の距離が、台形波となるように変化する形状であり(【図4】)、磁気抵抗素子33a~33dは、磁気歯車31の外周面と径方向に対向するように周方向に沿って、1/4Pの間隔で、隣り合う山のピッチPあたり、4個設けられ(【0003】、【図4】)、磁石34は、磁気検出素子33a~33dと重なるように周方向に延びている(【図4】)、磁気センサ装置30。」
2 引用文献3に記載された事項の認定
(1) 引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に発行された特開2008-209340号公報(以下、原査定において引用された順番に従って、この文献を「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0028】図1(a)の断面図は、2色成形の手法で作製した磁石回転子である。リング状のバックヨーク用の仮成形体の外周に、磁石片用の仮成形体を複数個並べて配置し、本成形することで一体化した。各磁極は一つの仮成形体に対応しており、仮成形の際に1軸の異方性を付与した。本成形で圧縮された仮成形体の部分は異方性ボンド磁石となった。各磁石片2a,2b及び2cは隣り合う磁石片同士で異極、すなわち、ある磁石片がN極であれば、隣はS極であるように着磁した。【0029】図1(b)、は図1(a)の磁極形状を変えた磁石回転子の一部断面図であり、(a)よりも更に波形歪みを抑制した正弦波に近づけた表面磁束密度分布を得ることができた。磁石回転子の外接円の半径10mm、磁極数8極で、前記半径よりも小さい円弧(この円弧の半径を磁石外半径rと称する。)を、周方向の磁極中心と原点の2点を結んだ直線上で、磁石外周から磁石中心方向へr離れた位置に描き、それを表面の磁極形状として構成した。図2(a)のグラフにおいて、磁石回転子の外接円の位置を表面とし、この表面から0.2mm離隔した位置で測定した磁束密度Bの分布を示し、図2(b)の棒グラフに第3次高調波発生率を示す。この結果、r=10mmすなわち、表面が円形状の場合は磁束密度分布は略台形波になったが、r=3mmにすると、磁石密度分布が略三角波になることが分かった。またその際の第3次高調波発生率は0%をまたがって変化していることから、rを調整することで、略正弦波が得られることも分かった。これは、磁石片の形状によって磁石片とB測定用のプローブ間のギャップが変わり、パーミアンス係数が変化するためである。図1(b)や図2(b)のように磁石回転子の径方向における磁石厚さを、磁石の両端部から中央部に向って増大する形状とすることで、より波形歪みを抑制した正弦波の表面磁束密度分布を得ることができ、特に高い精度で回転角度を検出することができた。続きを表示(全15行)【0030】磁束密度Bは、磁石回転子の外接円から所定の距離をおいてガウスメータのプローブ(ホール素子を内臓するプローブ)の先端の側面が磁石回転子に対向するように配置して測定した。この際、プローブの長手方向は磁石回転子の回転方向(又は円周方向)と平行に配置した。【0031】第3次高調波発生率(%)は、数1の数式で表わされる。基本波の振幅A1、2次高調波の振幅A2、3次高調波の振幅A3、4次高調波の振幅A4、5次高調波の振幅A5とする。ただし、偶数高調波のA2及びA4はゼロである。高調波が基本波を台形波状に歪ませる場合、第3次高調波発生率はプラスである。高調波が基本波を鋭い三角波状に歪ませる場合、第3次高調波発生率はマイナスである。【0032】【数1】[図:0001386807000004.jpg]【0033】図1(b)のように半径が一定ではない磁石回転子を、半径が一定である磁石回転子(すなわち、外形が円形である磁石回転子)を必要とする用途に適用するため、外形の凹みを埋めるために、前記凹みを埋められる形状の仮成形体(すなわち非磁性体の粉末からなる仮成形体)を作製した。この仮成形体を図1(b)の磁石回転子を得るための仮成形体と共に一体成形することで、図1(b)と同じ配向と正弦波状の磁束密度分布を有すると共に外形が円形である磁石回転子を得ることができた。【0034】図3(b)は、外周面を円周形状に保ちつつ、正弦波状の表面磁束密度分布を得ることができた磁石回転子の一部断面図である。図3(b)では半径10mm、磁極数8極で、磁石表面上の磁極境界の点(点a,b)を直線で結ぶ。ついで、前記直線と周方向の磁極中心と磁石中心の2点を結んだ直線の交点(点c)と、磁石表面上の磁極境界の点aまたはbを通る、磁石中心側に原点を持つ円弧(半径r)を点a,bごとにそれぞれ描き、磁石表面と点a,c,bを結ぶ領域から、各円が重複する領域を除いた領域を磁極とする磁石回転子とした図4(A)に磁束密度分布(磁石回転子の外接円からから0.2mm離れた位置で測定した分布)を示し、図4(B)に第3次高調波発生率を示す。図4(A)に示すように、円弧を描かない構造(図3(a)に対応)は、すなわち、磁石表面と点a,b,cを結ぶ領域を磁極形状とする構造は、磁束密度分布として略台形波が得られ、r=10mmとすると(図3(b)に相当)、略三角波が得られることが分かった。図4(B)に示すように、第3次高調波発生率は0%をまたがって変化していることから、rを調整することで、略正弦波が得られることも分かった。これらは、パーミアンス係数の変化によって得られる。磁石回転子の極数が増加すると、1つの磁極あたりの磁石体積が極端に減少するが、磁石とヨークのみの構造で円筒状の磁石回転子を構成することができた。」
「【図1】[図:0001386807000005.jpg]」
「【図2】[図:0001386807000006.jpg]」
「【図3】[図:0001386807000007.jpg]」
「【図4】[図:0001386807000008.jpg]」
【0034】の記載における点a~c、半径rは、【図3】に明示されていないところ、【0034】の記載内容に従って当審が図示すると、以下に示すとおりであると認められる(点a~c、半径rは、当審による)。
[図:0001386807000009.jpg]
(2) 引用文献3に記載された事項の認定
上記(1)を総合すると、引用文献3には、次の事項が記載されているものと認められる。
<引用文献3記載事項>
「半径10mm、磁極数8極で、磁石表面上の磁極境界の点(点a,b)を結ぶ直線と、周方向の磁極中心と磁石中心の2点を結んだ直線の交点(点c)と、磁石表面上の磁極境界の点aまたはbを通る、磁石中心側に原点を持つ円弧(半径r)を点a,bごとにそれぞれ描き、磁石表面と点a,c,bを結ぶ領域から、各円が重複する領域を除いた領域を磁極とする磁石回転子であって、rを調整することで、外周面を円周形状に保ちつつ、正弦波状の表面磁束密度分布を得ることができ、それによって、特に高い精度で回転角度を検出する磁石回転子(【0029】、【0034】、【図3(b)】)。」
3 引用文献8に記載された事項の認定
(1) 引用文献8に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に発行された特開2008-29070号公報(以下、原査定において引用された順番に従って、この文献を「引用文献8」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】【0006】従来の薄型のレゾルバは、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。続きを表示(全36行)すなわち、図4及び図5に開示された従来構成においては、レゾルバ部と回転トランス部とが軸方向に重合されているため、レゾルバ自体の厚さが厚く(16mmが最小)なり、より扁平な形状とすることは極めて困難であった。また、図6の他の従来構成においては、コイルとしてはレゾルバステータコイルのみで済むが、ステータに巻回したレゾルバステータコイルがステータの両面に突出するため、このレゾルバステータコイルの絶縁用の絶縁カバー及びコイルカバー等を必要とし、これらのステータへの装置によって厚さが厚く(10mmが最小)なり、前述と同様に、扁平状に構成することが極めて困難であった。また、ロータにコイルを有していないため、検出精度には限界があった。また、従来構成においては、ロータの外周とステータの各磁極の内周とのギャップパーミアンスの変化により回転検出を行うため、回転軸振れが発生すると空隙変動に影響していた。また、固定子が一体構造であるため、励磁巻線により発生する磁界分布が検出用回転子極の機械的な位置により影響を受けていた。【課題を解決するための手段】【0007】本発明による角度検出器は、磁性材からなる輪状固定子板の面上に突出して形成された複数の巻線磁芯と、前記各巻線磁芯に設けられた固定子巻線と、前記輪状固定子板の面上に突出して設けられ前記固定子巻線の内側又は外側に設けられた磁束帰路台と、前記磁束帰路台上でかつ前記固定子巻線と非接触に対向して回転自在に設けられた輪状回転子板と、前記輪状回転子板の内面に設けられ波状に突出状態が変化する板内面を有する空隙形成板と、を備え、前記輪状回転子板の回転により、前記巻線磁芯と前記空隙形成板の板内面との間の空隙が変化するようにした構成であり、また、前記空隙形成板の板内面は、正弦波状に変化する曲面が回転方向に沿って形成されている構成であり、また、前記固定子巻線は、シートコイル、プリント基板コイル、整列巻線の何れかよりなる構成であり、また、前記空隙形成板の曲面が、複数の周期で形成されている構成であり、また、前記輪状回転子板の内部又は前記板内面には、永久磁石が設けられている構成であり、また、請求項1ないし5の何れかの前記角度検出器が軸方向に複数個重合して配設されている構成である。【発明の効果】【0008】本発明による角度検出器は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。すなわち、磁性材よりなる輪状固定子板の面上に複数の固定子巻線を設け、この固定子巻線に対して空隙を介して輪状回転子板を回転自在に面対向させ、輪状回転子板の回転による空隙の変化により角度信号を検出しているため、面対向による超薄型の角度検出器を得ることができる。また、輪状固定子板に磁束帰路台が設けられているため、各固定子巻線、すなわち、各磁極毎の磁束分布が安定化し、検出精度の向上に寄与することができる。【発明を実施するための最良の形態】【0009】本発明は、輪状固定子板上に複数の固定子巻線を設け、この固定子巻線に対し空隙を介して輪状回転子板を回転自在に面対向させて設け、輪状回転子板の回転による空隙の変化により角度信号を検出し、超薄型の構成とした角度検出器を提供することを目的とする。【実施例】【0010】以下、図面と共に本発明による角度検出器の好適な実施の形態について説明する。尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。図1において符号5で示されるものは輪状固定子板であり、この輪状固定子板5の面上には、周期的あるいは非周期的に複数の巻線磁芯11が突出し互いに独立して形成されている。【0011】前記各巻線磁芯11の周囲には、励磁巻線4aと出力巻線4bとからなる固定子巻線4が設けられており、この固定子巻線4の内側位置には、輪状で所定の高さを有する突条形状の磁性材からなる磁束帰路台12が軸方向に所定の高さを有して設けられ、磁束帰路の役割をなし、磁束のクロストークを防止し、検出精度の向上に寄与している。尚、この磁束帰路台12は、輪状固定子板5上の内側に設けられているが、前記固定子巻線4の外側位置に配設しても前述と同様の作用を有している。【0012】前記磁束帰路台12の面上には、これに摺動する状態で、かつ、固定子巻線4と非接触で輪状回転子板6が回転自在に設けられており、この輪状回転子板6の内面6aに設けられた輪状の空隙形成板13の板内面13aには、正弦波状に変化する波形の曲面(図示せず)が回転方向に沿って単周期又は複数周期で形成され、この波状の突出形状が変化する輪状の空隙14が空隙形成板13の板内面13aと固定子巻線4の巻線磁芯11との間に形成されている。尚、前記輪状回転子板6の内部又は対向面に永久磁石(図示せず)を設けると、検出感度を一層向上させることができる。【0013】次に、前述の構成において、4個の各励磁巻線4aに励磁信号を供給した状態で、輪状回転子板6を回転させると、前記輪状固定子板5の巻線磁芯11に対面した前記板内面13aの波状の突出形状が変化(周知のバリアブルリラクタンス型(VR型)レゾルバにおけるギャップパーミアンスの変化と同様の磁気作用)することにより、この変化に応じた正弦波状の電圧変化が出力信号(レゾルバ出力)として出力巻線4bより得られる。【0014】尚、この固定子巻線4の数(整数m)及び板内面13aの曲面の周期の数(周期n)は、角度検出器の用途等に応じて設定できる。また、前述の図1の角度検出器20の軸方向の厚さtは、実験のプロトタイプにおいても4mmであり、従来構成に比較すると、約1/4であり、超薄型の角度検出器を得ることができる。また、前述の図1及び図3では、輪状回転子板6を一部断面にして示しているが、説明を容易とするためで、実際には完全な輪状に形成されている。」
「【図1】[図:0001386807000010.jpg]」
「【図2】[図:0001386807000011.jpg]」
「【図3】[図:0001386807000012.jpg]」
(2) 引用文献8に記載された事項の認定
上記(1)を総合すると、引用文献8には、次の事項が記載されているものと認められる。
<引用文献8記載事項>
「磁性材よりなる輪状固定子板の面上に複数の固定子巻線を設け、この固定子巻線に対して空隙を介して輪状回転子板を回転自在に面対向させ、輪状回転子板の回転による空隙の変化により角度信号を検出する、面対向による超薄型の角度検出器であって(【0008】)、輪状回転子板6の内面6aに設けられた輪状の空隙形成板13の板内面13aには、正弦波状に変化する波形の曲面が回転方向に沿って単周期又は複数周期で形成され、この波状の突出形状が変化する輪状の空隙14が空隙形成板13の板内面13aと固定子巻線4の巻線磁芯11との間に形成されている(【0012】)、角度検出器。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 本願発明1と引用発明の対比
本願発明1と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「回転軸に対して回転自在に固定された磁性を有する回転体としての磁気歯車31」は、本願発明1の「磁性体で構成された回転子」に相当する。
イ 引用発明の「それぞれ直列接続されている2組の磁気抵抗素子33a~33d」、「磁気抵抗素子33a~33dに一定のバイアス磁界を与える磁石34」は、それぞれ本願発明1の「磁気検出素子」、「バイアス磁界発生部」に相当する。
そして、引用発明の「磁気センサ32」は、本願発明1の「回転子」に相当する「磁気歯車31」の外周の「山と谷からなる部分」との距離に基づいて変化する出力を用いて、「回転体の回転角度や回転方向を検出する」ものであるから、「回転体としての磁気歯車31」の回転軸に対して固定されていることは明らかであり、本願発明1の「固定子」に相当する。
よって、引用発明の「それぞれ直列接続されている2組の磁気抵抗素子33a~33dを有する磁気回路33と、磁気抵抗素子33a~33dに一定のバイアス磁界を与える磁石34とを備え」る「磁気センサ32」と、本願発明1の「それぞれバイアス磁界発生部と磁気検出素子からなるb個以上の磁気検出部を有する固定子であって、bは3以上の整数であるもの」は、「バイアス磁界発生部と磁気検出素子からなる磁気検出部を有する固定子」である点で共通する。
ウ 引用発明の「2組の磁気抵抗素子33a~33dは、一対のA相の磁気抵抗素子33a,33bと、他の一対のB相の磁気抵抗素子33c,33dであり、A相とB相の磁気抵抗素子33a~33dは、磁気歯車31の回転角度や回転方向を検出すべく、出力信号の2つの正弦波35,36の位相差が90゜になるように、一列に配置され」ているから、引用発明の「磁気センサ装置30」は、「一対のA相の磁気抵抗素子33a,33b」の正弦波である出力信号と、「他の一対のB相の磁気抵抗素子33c,33d」の正弦波である出力信号に基づいて、「磁気歯車31の回転角度や回転方向を検出」していることは明らかであり、当該検出のための演算を行う構成を有していることも明らかである。
そして、引用発明の当該演算を行う構成は、本願発明1の「前記磁気検出素子で得られた検出信号から前記回転子の回転角度を求める回転角度演算処理部」に相当する。
エ 引用発明の「磁気歯車31の外周」の「山と谷からなる部分」は、本願発明1の「前記回転子の固定子対向面」が有する「凹凸部」に相当する。
また、引用発明の「磁気歯車31の外周と磁石34の間の距離」は、本願発明1の「前記バイアス磁界発生部との間の隙間の距離」に相当する。
そして、引用発明では、「隣り合う山のピッチをPとすると、1/2Pの間隔」で「検出信号の正弦波でピーク出力が得られる間隔」となるから、「磁気歯車31の外周と磁石34の間の距離」は、「隣り合う山のピッチ」「P」を1周期とする「台形波となるように変化している形状」となり、本願発明1と引用発明は、「前記凹凸部は前記回転子が1回転する間、機械角の変化に対して前記バイアス磁界発生部との間の隙間の距離が波状となるように変化する形状を有」する点で共通する。
また、引用発明の「磁気歯車31」が1回転すると、「隣り合う山のピッチ」「P」を1周期とする複数周期分の「山と谷からなる部分」が「磁気センサ32」に対向して通過するから、このことは、本願発明1の「凹凸部」が、「機械角360度に対してx周期分変化する」こと(「xは1以上の整数」)に相当する。
よって、本願発明1と引用発明は、「前記回転子の固定子対向面は、機械角360度に対してx周期分変化する凹凸部を有し、xは1以上の整数であり、前記凹凸部は前記回転子が1回転する間、機械角の変化に対して前記バイアス磁界発生部との間の隙間の距離が波状となるように変化する形状を有」する点で共通する。
オ 引用発明の「磁気検出素子33a~33dと重なるように周方向に延びている」「磁石34」は1個であるから、「磁気抵抗素子33a~33d」と「磁石34」からなる「磁気センサ32」も1個である。
よって、引用発明の「磁気抵抗素子33a~33dは、磁気歯車31の外周面と径方向に対向するように周方向に沿って、1/4Pの間隔で、隣り合う山のピッチPあたり、4個設けられ、磁石34は、磁気検出素子33a~33dと重なるように周方向に延びている」ことと、本願発明1の「前記固定子の前記磁気検出部は、前記回転子の前記固定子対向面と隙間を空けて径方向に対向するように周方向に沿って前記凹凸部の1周期当りb個設けられ、機械角360×(n×b+m)/(x×b)度間隔で円弧上に配置されており、nは前記磁気検出部の基準位置からの周方向のずらし量を前記周期の数で示したもので0以上の整数、mはb個の前記磁気検出部のうちの配置順である1からbまでの整数である」ことは、「前記固定子の前記磁気検出部は、前記回転子の前記固定子対向面と隙間を空けて径方向に対向するように設けられ」ている点で共通する。
カ 引用発明の「被検出体である回転体の回転角度や回転方向を検出する磁気センサ装置30」は、本願発明1の「回転角度検出装置」に相当する。
(2) 一致点及び相違点
上記(1)の検討を総合すると、本願発明1と引用発明の両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点において相違する。
<一致点>
磁性体で構成された回転子と、
バイアス磁界発生部と磁気検出素子からなる磁気検出部を有する固定子であって、
前記磁気検出素子で得られた検出信号から前記回転子の回転角度を求める回転角度演算処理部と、
を備え、
前記回転子の固定子対向面は、機械角360度に対してx周期分変化する凹凸部を有し、xは1以上の整数であり、前記凹凸部は前記回転子が1回転する間、機械角の変化に対して前記バイアス磁界発生部との間の隙間の距離が波状となるように変化する形状を有し、
前記固定子の前記磁気検出部は、前記回転子の前記固定子対向面と隙間を空けて径方向に対向するように設けられている、
回転角度検出装置、である点。
<相違点1>
本願発明1では、「バイアス磁界発生部と磁気検出素子からなる」「磁気検出部」が、「b個以上」(「bは3以上の整数」)であるのに対して、引用発明では、2組の磁気抵抗素子33a~33dと磁石34からなる磁気センサ32が1個である点。
<相違点2>
本願発明1では、「凹凸部は前記回転子が1回転する間、機械角の変化に対して前記バイアス磁界発生部との間の隙間の距離が概略正弦波となるよう滑らかに曲線的に変化する形状を有し」ているのに対して、引用発明では、磁気歯車31の外周が、磁石34との距離が台形波となるように変化する形状である点。
<相違点3>
「前記回転子の前記固定子対向面と隙間を空けて径方向に対向するように設けられている」「前記固定子の前記磁気検出部」が、本願発明1では、「周方向に沿って前記凹凸部の1周期当りb個設けられ、機械角360×(n×b+m)/(x×b)度間隔で円弧上に配置されており、nは前記磁気検出部の基準位置からの周方向のずらし量を前記周期の数で示したもので0以上の整数、mはb個の前記磁気検出部のうちの配置順である1からbまでの整数である」のに対して、引用発明では、1個である点。
(3) 相違点についての当審の判断
事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。
引用文献3には、前記第4の2の「(2) 引用文献3に記載された事項の認定」において示したとおり、「半径10mm、磁極数8極で、磁石表面上の磁極境界の点(点a,b)を結ぶ直線と、周方向の磁極中心と磁石中心の2点を結んだ直線の交点(点c)と、磁石表面上の磁極境界の点aまたはbを通る、磁石中心側に原点を持つ円弧(半径r)を点a,bごとにそれぞれ描き、磁石表面と点a,c,bを結ぶ領域から、各円が重複する領域を除いた領域を磁極とする磁石回転子であって、rを調整することで、外周面を円周形状に保ちつつ、正弦波状の表面磁束密度分布を得ることができ、それによって、特に高い精度で回転角度を検出する磁石回転子」の技術事項が記載されている。
しかしながら、当該技術事項は、磁石回転子の表面磁束密度分布を正弦波状にするものであり、上記相違点2に係る構成である「回転子の固定子対向面」が有する「凹凸部」が「前記回転子が1回転する間、機械角の変化に対して前記バイアス磁界発生部との間の隙間の距離が概略正弦波となるよう滑らかに曲線的に変化する形状を有」するものではない。また、引用発明において「磁石34」は回転子側でなく、固定子側に設けられているから、引用発明に、磁石回転子である上記引用文献3に記載された技術事項を適用する動機付けも存在しない。
そして、引用文献8には、前記第4の3の「(2) 引用文献8に記載された事項の認定」において示したとおり、「磁性材よりなる輪状固定子板の面上に複数の固定子巻線を設け、この固定子巻線に対して空隙を介して輪状回転子板を回転自在に面対向させ、輪状回転子板の回転による空隙の変化により角度信号を検出する、面対向による超薄型の角度検出器であって、輪状回転子板6の内面6aに設けられた輪状の空隙形成板13の板内面13aには、正弦波状に変化する波形の曲面が回転方向に沿って単周期又は複数周期で形成され、この波状の突出形状が変化する輪状の空隙14が空隙形成板13の板内面13aと固定子巻線4の巻線磁芯11との間に形成されている角度検出器」の技術事項が記載されている。
しかしながら、当該技術事項は、固定子板と回転子板を面対向させ、両板間の空隙を正弦波状に変化するように形成したものであり、それによって、超薄型の角度検出器としたものであるところ、引用発明は、固定子側の磁気抵抗素子33a~33d及び磁石34は、回転子側の磁気歯車31の外周面と径方向に対向しており、面対向ではないから、引用発明に引用文献8に記載された技術事項を適用する動機付けは存在しない。
そして、上記相違点2に係る構成は、原査定において引用された引用文献2、4~7のいずれにも記載されていない。
したがって、本願発明1は、上記相違点1、3を検討するまでもなく、当業者であっても引用発明、引用文献2~8に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2 本願発明2~7について
本願発明2~7も、前記相違点2に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2~8に記載された事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
3 本願発明8について
本願発明8は、本願発明4(請求項1を引用する請求項4に係る発明)に対応する方法の発明であり、前記相違点2に係る構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明4と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2~8に記載された事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第6 原査定の理由(特許法29条2項)について
上記第5の1(3)で示したとおり、本願発明1~7は前記相違点2に係る構成を有し、本願発明8は前記相違点2に係る構成に対応する構成を有しているから、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1~8に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-003301