2021-003066
光偏向フィルムおよびそれを用いた表示装置
- 審判番号
- 2021-003066
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-075576外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年03月08日
- 審決日
- 2022年01月14日
- 公報発行日
- 2022年07月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】微采視像科技股▲分▼有限公司
- 【請求人代理人】立花 顕治
- 分類
- P18 .113-Z (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続等の経緯
特願2019-75576号(以下「本件出願」という。)は、平成31年4月11日(パリ条約の例による優先権主張2018年4月24日、台湾)を出願日とする特許出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年3月8日にした手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の(令和2年7月7日にした手続補正後の)特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「光源上に配置されている光偏向フィルムであって、第1の層と、前記第1の層上に形成される第2の層と、前記第1の層と前記第2の層との界面に形成される光偏向構造とを備え、前記光源から放出される光は前記第1の層および前記第2の層を順次に通過し、前記第1の層に光が入射している状態で測定される前記光偏向フィルムの分配率DAは、前記第2の層に光が入射している状態で測定される前記光偏向フィルムの分配率DBよりも小さく、前記分配率DAは、赤色レーザ光が前記光偏向フィルムを垂直に通過し、前記第1の層に入射するときの、前記赤色レーザ光の全強度に対する、入射光の延在方向に対して25°の角度内の強度の比であり、前記分配率DBは、赤色レーザ光が前記光偏向フィルムを垂直に通過し、前記第2の層に入射するときの、前記赤色レーザ光の全強度に対する、入射光の延在方向に対して25°の角度内の強度の比である、光偏向フィルム。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。
「光源上に配置されている光偏向フィルムであって、第1の屈折率を有する第1の層と、前記第1の層上に形成されるとともに、第2の屈折率を有する第2の層と、前記第1の層と前記第2の層との界面に形成されるとともに、0.5から20μmの間の周期を有する光偏向構造とを備え、前記第1の屈折率は、前記第2の屈折率よりも大きく、前記光源から放出される光は前記第1の層および前記第2の層を順次に通過し、前記第1の層に光が入射している状態で測定される前記光偏向フィルムの分配率DAは、前記第2の層に光が入射している状態で測定される前記光偏向フィルムの分配率DBよりも小さく、前記分配率DAは、赤色レーザ光が前記光偏向フィルムを垂直に通過し、前記第1の層に入射するときの、前記赤色レーザ光の全強度に対する、入射光の延在方向に対して25°の角度内の強度の比であり、前記分配率DBは、赤色レーザ光が前記光偏向フィルムを垂直に通過し、前記第2の層に入射するときの、前記赤色レーザ光の全強度に対する、入射光の延在方向に対して25°の角度内の強度の比である、光偏向フィルム。」
(3)本件補正の内容
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明の、発明を特定するために必要な事項である「第1の層」および「第2の層」について、それぞれ「第1の屈折率」および「第2の屈折率」を有し、「前記第1の屈折率は、前記第2の屈折率よりも大き」いものに限定し、「光偏向構造」について、「0.5から20μmの間の周期を有する」ものに限定するものである。また、この補正は、本件出願の願書に最初に添付した明細書の【0030】-【0035】および表1の記載に基づくものである。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に適合するものであり、また、同条5項2号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的としたものといえる。
そこで、まず、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)が、同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
2 独立特許要件についての判断(新規性)
(1)引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献3(特開2009-48184号公報)は、本件出願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
ア 「【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】本発明は、微細形状転写性に優れる積層型光学部材用光硬化型樹脂組成物に関する。また本発明は、積層性に優れる積層型光学部材用光硬化型樹脂組成物に関し、さらに複数の積層型光学部材用光硬化型樹脂組成物を硬化させた樹脂層を積層し一体化することにより、屈折率の調整が可能なことを特徴とする積層型光学部材及び視野角拡大フィルムに関する。より具体的には、液晶表示装置に使用される視野角拡大フィルム用材料としての積層型光学部材用光硬化型樹脂組成物に関する。」
イ 「【0004】位相差補償型視野角拡大フィルムの表示モード毎に品種が必要となる点を解決する手段として、指向性の強いバックライトを用いて、液晶ディスプレイパネルの前面にマイクロビーズを分散した光拡散板(視野角拡大フィルムとして機能する)を配置する方法も提案されている(例えば、特許文献2)。この方法は、液晶ディスプレイの表示モードによらず適用できるが、マイクロビーズ分散では、光の拡散方向などを精密に制御することができないので(マイクロビーズの位置を精密には制御できないため)、充分に視野角拡大を図ることが困難である。【0005】一方、光の拡散方向を精密に制御できる光拡散シートとして、表面にミクロンオーダーの凹凸形状を形成した光学シートが提案されている(例えば、特許文献3)。このような光学シートを視野角拡大フィルムとして、上記のマイクロビーズを分散した光拡散板の代わりに用いると、凹凸形状の最適化を図ることにより、充分な視野角拡大効果を得ることができる。しかし、この液晶表示装置は、凹凸形状が空気層に接しているため、太陽光下など非常に明るい外光環境光では反射光が強くなり、「白ボケ」と呼ばれる表示コントラストの低下を招く。【0006】この「白ボケ」を改善するために、空気層を凹凸形状層の屈折率により近い樹脂で充填した充填層と、凹凸形状層と、を有する視野角拡大フィルムとして用いることで、凹凸形状層表面でのフレネル反射を低減することが考えられる。この場合、凹凸形状層と充填層との屈折率差は0.05~0.2であることが望ましい。0.05未満では凹凸形状による視野角拡大効果が失われる。また、0.2を超えるとフレネル反射が増大して「白ボケ」による表示品質の低下を招く。我々の先行技術(例えば、特許文献4)では、微細凹凸形状の転写形成性に優れた光硬化型樹脂組成物を開示しており、視野角拡大フィルムに適した凹凸形状を形成することも可能である。しかし、開示範囲では屈折率を1.49~1.52(633nmにおいて)の範囲でしか調整できないので、積層型の視野角拡大フィルムを作製する場合、凹凸形状層と充填層との屈折率差は最大で0.03となり、充分な視野角拡大効果が得られない。・・・省略・・・【課題を解決するための手段】【0010】表面に微細な凹凸形状を形成した視野角拡大フィルムは、前面側偏光板の表面または、液晶ディスプレイパネルの前面ガラス基板と前面側偏光板との間に設置される。従来技術では、視野角拡大フィルムの凹凸形状が空気層と接しているため、太陽光下などの環境では、外光反射によるコントラスト低下により表示品質が劣化する。本発明では、この空気層を樹脂で充填した積層型とするために好適に用いられる積層型光学部材用光硬化型樹脂組成物を特定の組成とすることにより、凹凸形状表面のフレネル反射を低減して、太陽光下でもコントラスト低下のない視野角拡大フィルム用に提供できることを見出した。」
ウ 「【0056】本発明の積層型光学部材用光硬化型樹脂組成物を用いて視野角拡大フィルムを作製する方法としては、具体的には例えば、以下の方法があげられる。【0057】工程(1)所望のパターンが形成された金型に本発明の積層型光学部材用光硬化型樹脂組成物を充填し、その上に光透過性支持基材フィルムを重ね合わせ、その上からローラー等によりこれらを延伸、平坦化した後、光透過性支持基材フィルムを通して積層型光学部材用光硬化型樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させ樹脂層aを得る。続きを表示(全12行)【0058】工程(2)硬化後に、金型から光透過性の支持基材フィルムと一体となった樹脂層a(以下、「パターン層」ともいう)を有する硬化体を離型する。【0059】工程(3)金型によって形成されたパターン面に、樹脂層aと同じ組成又は異なる組成の本発明の積層型光学部材用光硬化型樹脂組成物を充填し、樹脂層a上に、離型処理を施した光透過性保護フィルムを重ね合わせ、光透過性保護フィルムの上からローラー等によりこれらを延伸、平坦化した後、光透過性保護フィルムを通して積層型光学部材用光硬化型樹脂組成物に紫外線を照射してこれらを硬化させ樹脂層b(以下、「埋め込み層」ともいう)を得る。【0060】工程(4)硬化後に、光透過性保護フィルムを剥離し、光透過性支持基材フィルム上に樹脂層aと樹脂層bが積層された積層型光学部材を得ることができる。【0061】このようにして得られる積層型光学部材の一例を図1に示す。樹脂層1は、隣接する樹脂層a(パターン層)11と樹脂層b(埋め込み層)10からなることが、好ましい。」
エ 「図1[図:0001385742000001.jpg]」
オ 「【0077】(実施例1~7及び比較例1~9)表1に示すとおりの成分を混合して、実施例1~7及び比較例1~9の各積層型光学部材用光硬化型樹脂組成物を調整した。【0078】続きを表示(全16行)<光硬化型樹脂組成物の微細形状転写性評価>この積層型光学部材用光硬化型樹脂組成物の特徴である微細形状転写性について評価するのに、視野角拡大フィルム金型を用い視野角拡大フィルムパターン層を形成した。視野角拡大フィルム金型(材質Ni-P、山形形状のピッチ幅5μm、高さ5μm、頂角45度、格子サイズ縦7cm、横7cmの日立製作所株式会社製 小型金型)に、上記で得た積層型光学部材用光硬化型樹脂組成物を垂らし、その上に支持基材フィルムとなるPETフィルム(東洋紡株式会社製、商品名:A4100、膜厚50μm)を重ね合わせ、更にその上からローラーを走らせ平坦化した後、露光を行うことで積層型光学部材用光硬化型樹脂組成物を硬化させた。硬化条件は超高圧水銀ランプ(ウシオ電機株式会社製、型式USH-3502MA、照度16mW/cm2)を用い、積算露光量2,000mJ/cm2で露光を行った。硬化終了後、金型から視野角拡大フィルムパターン層を剥がし、これをサンプルとした。【0079】上記のようにして得られた各実施例及び比較例の視野角拡大フィルムパターン層サンプルについて、この積層型光学部材用光硬化型樹脂組成物の特徴である微細形状転写性及び屈折率について評価し、その結果を表1にまとめて示した。【0080】なお、比較例1の組成で調整した積層型光学部材用光硬化型樹脂組成物は粘度が高く、取り扱いが困難であったため、サンプルを作製することができなかった。また、比較例2の組成で調整した積層型光学部材用光硬化型樹脂組成物から作製されたサンプルは亀裂が生じたため以下の評価を行うことができなかった。【0081】比較例1~6は、下記の微細形状転写性が悪く、積層型光学部材作製に適していないため、屈折率評価は行っていない。 【0082】 (微細形状転写性) 転写性は、金属顕微鏡にて各視野角拡大フィルムパターン層サンプルの山形形状の頂角を確認することで評価した。評価基準は以下の通りである。・・・省略・・・【表1】[図:0001385742000002.jpg]」
カ 「【0104】・・・省略・・・【表2】[図:0001385742000003.jpg]」
(2)引用文献3に記載された発明
引用文献3の【0056】~【0061】(特に、【0060】~【0061】)の記載によれば、同文献の図1には、「支持基材フィルム2」上に「樹脂層a(パターン層)11」及び「樹脂層b(埋め込み層)10」をこの順に備える、積層型光学部材(視野角拡大フィルム)が記載されている。以下、「積層型光学部材」及び「視野角拡大フィルム」は後者に用語を統一する。
また、引用文献3の【0005】~【0006】及び【0010】の記載によれば、上記視野角拡大フィルムは、「表面に微細な凹凸形状を形成した」、「前面側偏光板の表面または、液晶ディスプレイパネルの前面ガラス基板と前面側偏光板との間に設置され」、「従来技術では、視野角拡大フィルムの凹凸形状が空気層と接しているため、」「外光反射によるコントラスト低下により表示品質が劣化するため、」「この空気層を樹脂で充填した」ものと理解される。
ここで、上記「樹脂層a(パターン層)11」及び「樹脂層b(埋め込み層)10」が、上記「凹凸形状」(層)及び上記「空気層を樹脂で充填した」(層)を意味していることは当業者に自明である。
さらに、引用文献3の【0078】~【0082】には、上記視野角拡大フィルムの「パターン層サンプル」として、【0078】に記載の特定寸法の金型(山形形状のピッチ幅5μm、高さ5μm、頂角45度、格子サイズ縦7cm、横7cm)を用いて作製されたものが具体的に開示されている。 加えて、同文献の【表2】(特に、実施例8~13)に接した当業者は、上記視野角拡大フィルムにおける、「パターン層」及び「埋め込み層」の屈折率の大小関係は、前者が後者より大きい態様及び前者が後者より小さい態様のいずれもが想定されていることを直ちに理解する。
以上総合すると、引用文献3には、「視野角拡大フィルム」の発明として、上記それぞれの態様に対応する、以下の2つの発明(前者の態様に対応する発明を「引用発明A」、後者の態様に対応する発明を「引用発明B」という。)が実質的に記載されていると認められる。
ア 引用発明A
「支持基材フィルム上2にパターン層11と埋め込み層10がこの順に積層された視野角拡大フィルムであって、表面に微細な凹凸形状を形成した、前面側偏光板の表面または、液晶ディスプレイパネルの前面ガラス基板と前面側偏光板との間に設置され、従来技術では、視野角拡大フィルムの凹凸形状が空気層と接しているため、外光反射によるコントラスト低下により表示品質が劣化するため、この空気層を樹脂で充填したものであって、前記空気層をパターン層11と、パターン層11の屈折率より小さい屈折率の樹脂で充填した埋め込み層10と、を有する視野角拡大フィルムとして用いることで、パターン層11表面でのフレネル反射を低減し、視野角拡大フィルム金型(材質Ni-P、山形形状のピッチ幅5μm、高さ5μm、頂角45度、格子サイズ縦7cm、横7cmの日立製作所株式会社製 小型金型)によって作製された、視野角拡大フィルム。」
イ 引用発明B
「引用発明Aにおいて、空気層を、パターン層11の屈折率より大きい屈折率の樹脂で充填した、視野角拡大フィルム。」
なお、上記認定では、「樹脂層a」及び「パターン層11」を「パターン層11」に、「樹脂層b」及び「埋め込み層10」を「埋め込み層10」に用語を統一して記載した。
(3)対比
本件補正後発明と、引用発明Aとを対比する。
ア 光偏向フィルム
引用発明Aの「視野角拡大フィルム」は、「パターン層11と埋め込み層10との屈折率差」と界面の「凹凸形状」とにより「液晶パネルディスプレイ」から放出される光を屈折して偏向させる光学的機能を有している。
そうしてみると、引用発明Aの「視野角拡大フィルム」は、当該光学的機能からみて、本件補正後発明の「光偏向フィルム」に相当するといえる。
また、引用発明Aの「視野角拡大フィルム」は、「液晶ディスプレイパネル」から放出される光を偏向させるものであるから、引用発明Aの「液晶ディスプレイパネル」は、本件補正後発明の「光源」に相当するといえる。
そして、引用発明Aの「視野角拡大フィルム」は、「液晶ディスプレイパネルの前面ガラス基板と前面側偏光板との間に設置され」るものであるから、本件補正後発明の「光源上に配置されている」配置に相当するといえる。
さらに、引用発明Aの「視野角拡大フィルム」は、「支持基材フィルム上2にパターン層11と埋め込み層10がこの順に積層され」、「パターン層11とパターン層11の屈折率より小さい屈折率の樹脂で充填した埋め込み層10」を有していることから、引用発明Aの「パターン層11」および「埋め込み層10」がそれぞれ、本件補正後発明の「第1の屈折率を有する第1の層」および「第2の屈折率を有する第2の層」に相当するといえ、「第1の屈折率は、第2の屈折率よりも大きく」なっているといえる。
また、「支持基材フィルム」が「液晶ディスプレイパネル」側になるように配置されるものであるから、「液晶ディプレイパネル」から放出される光は、「パターン層11」および「埋め込み層10」を順次に通過するといえる。
そうしてみると、引用発明Aの「視野角拡大フィルム」は、本件補正後発明の「光偏向フィルム」における、「光源上に配置されている」および「前記光源から放出される光は前記第1の層および前記第2の層を順次通過に通過し」の要件を満たす。
イ 0.5から20μmの間の周期を有する光偏向構造
引用発明Aの「パターン層11」及び「埋め込み層10」は、「ピッチ幅5μm」のパターンを有する金型に対して、微細形状転写性に優れた「積層型光学部材用光硬化型樹脂組成物」を用いたものである。
上記構成からみて、「パターン層11」と「埋め込み層10」との界面に形成される「凹凸形状」の周期は5μmである。
そうしてみると、引用発明Aの「凹凸形状」は、本件補正後発明の「第1の層と第2の層との界面に形成されるとともに、0.5から20μmの間の周期を有する光偏向構造」に相当する。
(4)一致点及び相違点
ア 一致点
本件補正後発明と引用発明Aは、次の構成で一致する。
「光源上に配置されている光偏向フィルムであって、第1の屈折率を有する第1の層と、前記第1の層上に形成されるとともに、第2の屈折率を有する第2の層と、前記第1の層と前記第2の層との界面に形成されるとともに、0.5から20μmの間の周期を有する光偏向構造とを備え、前記第1の屈折率は前記第2の屈折率よりも大きく、前記光源から放出される光は前記第1の層および前記第2の層を順次に通過する、光偏向フィルム。」
イ 相違点
本件補正後発明と引用発明Aは、以下の点で一応相違する。
(相違点)
「光偏向フィルム」について、本件補正後発明は、「前記第1の層に光が入射している状態で測定される前記光偏向フィルムの分配率DAは、前記第2の層に光が入射している状態で測定される前記光偏向フィルムの分配率DBよりも小さく、前記分配率DAは、赤色レーザ光が前記光偏向フィルムを垂直に通過し、前記第1の層に入射するときの、前記赤色レーザ光の全強度に対する、入射光の延在方向に対して25°の角度内の強度の比であり、前記分配率DBは、赤色レーザ光が前記光偏向フィルムを垂直に通過し、前記第2の層に入射するときの、前記赤色レーザ光の全強度に対する、入射光の延在方向に対して25°の角度内の強度の比である」のに対して、引用発明Aは、このように特定されたものではない点。
(5)判断
ア 相違点について
本件出願の発明の詳細な説明には、次の記載がある。
(ア)「光偏向構造に隣接する光偏向フィルム120の2つのフィルムの屈折率が光学フィルムの補償効果を決定し、第1の屈折率N1が第2の屈折率N2よりも大きい時に、本発明の実施形態の光偏向フィルム120がよりよい視野角補償効果を提供する」(【0024】)
(イ)「光は、最初により高い屈折率を有する層、およびより低い屈折率を有する層の順に順次通過する・・・(省略)・・・その結果、本実施形態の光偏向フィルム120の分配率DAは分配率DBよりも小さくなる」(【0026】~【0027】)
(ウ)「表1に示すように、第1の屈折率N1が第2の屈折率N2よりも小さい構成と比較して、第1の屈折率N1が第2の屈折率N2よりも大きい場合、分配率DAは分配率DBよりも小さい。したがって、光偏向フィルム120は、より高い屈折率を有する層(第1の層121)に光が入射することによって、より広い範囲の視野角補償を有すると結論づけることができる。」(【0036】)
ここで、引用発明Aは、液晶ディスプレイパネル(光源)から放出される光が最初により高い屈折率を有するパターン層11およびより低い屈折率を有する埋め込み層10の順に順次通過するものであるから、この点において、本件補正後発明と引用発明Aとは相違しない。
そうしてみると、本件出願の発明の詳細な説明における上記(ア)~(ウ)の記載からみて、引用発明Aにおいても、本件補正後発明と同様に上記相違点に係る分配率の大小関係を満たしているといえる。
また、審判請求書において、請求人は、「すなわち、光偏向フィルムの分配率は、第1の層と第2の層との界面に形成される光偏向構造の周期Tと、第1の屈折率N1が第2の屈折率N2よりも大きいということに依存します。」(審判請求書の(3)(f))及び「25°の角度内における強度分布は、第1の層と第2の層との界面に形成される光偏向構造の周期T及び第1の屈折率N1が第2の屈折率N2よりも大きいことに依存します。」(同請求書の(3)(g))と主張している。
しかしながら、引用発明Aは、「第1の層および第2の層との界面に形成される光偏向構造の周期T」が「0.5から20μm」という点、および、「第1の屈折率N1が第2の屈折率N2よりも大きい」という点で本件補正後発明と何ら相違しないのであるから、引用発明Aにおいても、本件補正後発明と同様に上記相違点に係る分配率の大小関係を満たしている蓋然性が高い。
以上勘案すると、上記相違点は実質的な相違点ではない。
(6)発明の効果について
本件補正後発明の効果について、本件出願の明細書には、「光偏向構造に隣接する光偏向フィルム120の2つのフィルムの屈折率が光学フィルムの補償効果を決定し、第1の屈折率N1が第2の屈折率N2よりも大きいときに、本発明の実施形態の光偏向フィルム120がより良い視野角補償効果を提供することが示された。」(【0024】)と記載されている。
一方、引用発明Aも「光偏向構造に隣接する第1の層および第2の層において、第1の屈折率N1が第2の屈折率N2よりも大きい」のであるから、上記記載からみて、本件補正後発明の効果と引用発明Aの効果との間に格別な差異はないといえる。
さらに、審判請求書の主張を考慮しても、上記(5)アにおける考察と同様に、本件補正後発明の効果と引用発明Aの効果との間に格別な差異はないと理解される。
(7)請求人の主張について
上記(5)アで検討したとおりである。
(8)小括
本件補正後発明は、引用文献3に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 補正の却下の決定のむすび
本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2」[理由]1(1)に記載された事項によって特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本件出願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献3(特開2009-48184号公報)に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない、という理由を含むものである。
3 引用文献の記載及び引用発明
引用文献3の記載及び引用発明は、前記「第2」[理由]2(1)及び(2)に記載したとおりである。
4 対比及び判断
本願発明は、前記「第2」[理由]2で検討した本件補正後発明から、前記「第2」[理由]1(3)で述べた限定を除いたものである。また、本願発明の構成を全て具備し、これにさらに限定を付したものに相当する本件補正後発明は、前記「第2」[理由]2(3)~(8)で述べたとおり、引用文献3に記載された発明であるから、本願発明も、引用文献3に記載された発明である。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-003066