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特許拒絶査定不服審判

2021-002883

有機発光ダイオードの製造方法

審判番号
2021-002883
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2016-543064外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年03月04日
審決日
2022年04月22日
公報発行日
2022年10月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .113-WZ (H05B) / P18 .121-WZ (H05B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2016-543064「有機発光ダイオードの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月23日国際公開、WO2015/106951、平成29年 1月19日国内公表、特表2017-502468〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 14項目
理 由

第1 事案の概要

1 手続等の経緯

特願2016-543064号(以下「本件出願」という。)は、2014年(平成26年)12月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年1月14日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

平成29年10月11日提出:手続補正書
平成30年 8月20日付け:拒絶理由通知書
平成31年 2月20日提出:意見書
平成31年 2月20日提出:手続補正書
令和 元年 7月26日付け:拒絶理由通知書
令和 元年11月 5日提出:意見書
令和 元年11月 5日提出:手続補正書
令和 2年 3月31日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 7月 7日提出:意見書
令和 2年 7月 7日提出:手続補正書
令和 2年10月29日付け:拒絶査定
令和 3年 3月 4日提出:審判請求書
令和 3年 3月 4日提出:手続補正書
令和 3年 8月19日付け:拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由」という。)
令和 3年11月18日提出:意見書
令和 3年11月18日提出:手続補正書

2 本願発明

本件出願の請求項1に係る発明は、令和3年11月18日にした手続補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、次のものである(以下「本願発明」という。)。

「有機発光ダイオードを製造するための製造方法であって、
基板層を設けるステップと、
前記基板層上に第1電極層を配置するステップと、
誘電体層を設けるステップと、
続きを表示(全12行)
活性層を設けるステップと、
第2電極層を設けるステップと
を有し、
前記活性層が前記第1電極層と前記第2電極層の中間に配置され、
前記誘電体層が前記第1電極層と前記第2電極層の間に電気分離をもたらし、前記誘電体層は前記第1電極層上にパターンとして堆積され、前記第1電極層と前記第2電極層の少なくとも一方の少なくとも一つのエッジをカバーし、前記誘電体層の少なくとも一つの側面は前記第2電極層によってカバーされ、
前記誘電体層は硬化プロセス中に製造される副産物の量が著しく少ない又は副産物を製造しないように構成され、
前記誘電体層に含まれる誘電体が疎水性であり、
前記誘電体層は、溶媒としてのガンマブチロラクトン中に分散された半重合ポリイミドを蒸発させることによって、製造されることを特徴とする、製造方法。」

3 当合議体の拒絶の理由の概要

令和3年8月19日付け拒絶理由通知書において通知した、当合議体の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

理由1(進歩性)本件出願の請求項1~請求項9に係る発明は、その優先権主張の日(以下「本件優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2013-16469号公報
引用文献2:特開2009-146848号公報
引用文献3:特開2012-234748号公報
引用文献4:特開2011-191730号公報
引用文献6:国際公開第2010/087238号
引用文献7:特開2007-16214号公報

(当合議体注:引用文献1~2、4、6~7が主引用例であり、引用文献3は周知技術を示す文献である。また、引用文献1~2、6~7は副引用例又は周知技術を示すための文献でもある。)

第2 当合議体の判断

1 引用文献の記載

(1)引用文献1の記載

当審拒絶理由で引用された、引用文献1(特開2013-16469号公報)は、本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには以下の記載がある。

なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す(以下、同様である。)。

ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子が適用された照明装置、及びその作製方法に関する。
続きを表示(全13行)
【背景技術】
【0002】
近年、一対の電極間に有機化合物を含む発光層を有する発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子:有機EL素子とも言う)の開発が盛んに行われている。その用途として注目されている分野のひとつが照明分野である。この理由として、有機EL素子は薄型軽量に作製できること、面での発光が可能であること等、他の照明器具にはない特徴があることが挙げられる。
【0003】
有機EL素子は膜状に形成することが可能であるため大面積の素子を容易に形成することができ、有機EL素子を用いた照明器具に関して、様々な研究がされている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、有機EL素子は、外気等に存在する水分、酸素等によって、劣化しやすいといった問題がある。例えば、水分、酸素等の影響により非発光領域(所謂ダークスポット)が発光領域に発生し、最終的には有機EL素子全体が非発光となってしまう。このように、有機EL素子は、外気からの水分、酸素等の浸入を封止するために様々な提案がなされている(例えば、特許文献2、及び特許文献3参照)。
【0005】
また、他の問題として、現状、有機EL素子からなる照明を作製するためのコストが非常に高いことが挙げられる。作製コストが高いということは、その分価格に反映されてしまうことになり、前述のような他の照明装置にない特徴を有する有機EL素子からなる照明装置であっても、競争力が落ちてしまう。そのため、有機EL素子からなる照明装置の普及の為には材料的、プロセス的両面において低コスト化することが要求される。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2においては、有機EL素子が形成された素子基板と、封止基板とを固定する紫外線硬化樹脂からなる周辺シール層を設け、周辺シール層に囲まれた内部に熱硬化樹脂からなる接着剤層を設け、周辺シール層の下部には、有機EL層を被覆する有機緩衝層、及び該有機緩衝層を被覆するガスバリア層を設ける。このような封止構造とすることで、有機緩衝層によりガスバリア層の損傷を防ぎ、当該ガスバリア層により、外気からの水分などの浸入を防止するといった構造が提案されている。
【0008】
続きを表示(全16行)
しかし、上記方法においては、有機緩衝層、及びガスバリア層を所望の領域に形成するために、パターニング工程、及びエッチング工程等の多数の工程が必要となり、工程数が非常に多く、作製コストが高いといった課題がある。
【0009】
また、特許文献3においては、有機EL素子を封止するために、該有機EL素子を備えた素子基板と、接着面に凹凸が設けられた封止基板を、当該凹凸上で接着剤(シール材)を介して接着し、密着性を向上させる構造が提案されている。しかし、これらの構造を用いても、外部からの水分や酸素の浸入を低減するには、十分ではない。
【0010】
上記問題に鑑み、本発明の一態様は、より簡素化された方法で、発光素子(有機EL素子)を用いて照明装置を形成する。また、発光素子の封止領域の密着性を向上させて、信頼性の高い照明装置、及びその作製方法を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、発光素子が形成された基板の外周に凹凸領域を設け、当該凹凸領域上に導電性ペーストからなる接続電極を形成し、凹凸領域、及び導電性ペーストを介してシール材を用いて封止を行うことを特徴とする照明装置である。より、詳細には以下の通りである。
【0012】
本発明の一態様は、第1の電極と第2の電極に挟持された発光層を含む発光素子と、発光素子が形成され、発光素子の外周に凹凸領域が形成された基板と、基板と対向して設けられた封止基板と、第1の電極、及び第2の電極に接続され、凹凸領域に形成された接続電極と、基板と封止基板を接着するシール材と、を有し、接続電極は、導電性ペーストにより形成され、シール材は、発光素子の外周に形成された凹凸領域と、接続電極と、接することを特徴とする照明装置である。
【0013】
上記構成とすることで、シール材は、発光素子の外周に形成された凹凸領域、及び当該凹凸領域上に形成された導電性ペーストと接することで、接着面積が向上し、密着性を高めることができる。なお、導電性ペーストは、含有している導電性粒子により表面が粗面化されているため、接着面積を向上させるには非常に好適である。」
ウ 「【発明を実施するための形態】
【0022】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。」
エ 「【0024】
(実施の形態1)
本発明の一態様について、図1を用いて説明を行う。また、図1(A)は、照明装置100の上面図を示しており、図1(B)は、図1(A)に示した破線A1-A2に相当する断面図を示しており、図1(C)は、図1(A)に示した破線A2-A3に相当する断面図を示している。なお、図1(A)においては、構成要素の一部(例えば、封止基板118など)を図面が煩雑になることを避け、省略している。
【0025】
続きを表示(全72行)
図1(A)乃至図1(C)に示す照明装置100は、基板102と、基板102上に形成された凹凸領域120と、基板102上に形成された第1の電極104と、基板102、凹凸領域120、及び第1の電極104上に形成された接続電極106と、第1の電極104及び接続電極106を覆う隔壁108と、第1の電極104、及び隔壁108上に形成された発光層110と、隔壁108、発光層110、及び接続電極106上に形成された第2の電極112と、基板102と対向して設けられた封止基板118と、基板102と封止基板118を封止するシール材116と、を有している。
【0026】
なお、照明装置100は、基板102側に発光が取り出される下面射出型(所謂ボトムエミッション型)の照明装置である。そのため、基板102、及び第1の電極104は、透光性の材料を用いる。ただし、本発明はこれに限定されない。例えば、封止基板118側に発光が取り出される上面射出型(所謂トップエミッション型)の照明装置、または、基板102、及び封止基板118両方から発光が取り出される両面射出型(所謂デュアルエミッション型)の照明装置としても良い。なお、発光が取り出される側には、透光性の材料を用いる。
・・・中略・・・
【0032】
ここで、図2、及び図3を用いて、図1に示す照明装置100の作製方法について説明を行う。
【0033】
なお、図2(A)、図2(B)、及び図2(C)においては、照明装置100の上面図を示しており、図2(D)、図2(E)、及び図2(F)は、図2(A)、図2(B)、及び図2(C)に示す破線A1-A2に相当する断面図を各々示している。また、図3(A)、及び図3(B)においては、照明装置100の上面図を示しており、図3(C)、及び図3(E)は、図3(A)、及び図3(B)に示す破線A1-A2に相当する断面図を各々示しており、図3(D)、及び図3(F)は、図3(A)、及び図3(B)に示す破線A2-A3に相当する断面図を各々示している。なお、図2においては、破線A2-A3の断面図は省略している。
【0034】
まず、基板102上に凹凸領域120を形成する。凹凸領域120は、所望の領域にショットブラスト、サンドブラスト、化学エッチングなどを行うことにより凹部(または溝)として形成することができ、凹部に凹凸な表面を有している。なお、本実施の形態においては、発光素子114(のちに形成される)の外周領域を囲んで凹凸領域120を形成する。次に、基板102の凹凸領域120の内側に第1の電極104を形成する。(図2(A)、及び図2(D)参照)。
【0035】
基板102としては、ガラス基板、石英基板、有機樹脂、プラスティック基板などの透光性を有する材料を用いることができる。基板102として有機樹脂を用いる場合、有機樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエーテルスルフォン(PES)樹脂、ポリアミド樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、またはポリ塩化ビニル樹脂などを用いることができる。また、ガラス繊維に有機樹脂を含浸した基板や、無機フィラーを有機樹脂に混ぜた基板を使用することもできる。
【0036】
また、基板102と第1の電極104の間に下地絶縁膜を形成してもよい。下地絶縁膜は、基板102からの水分や酸素などの不純物の拡散を防止するパッシベーション膜としての機能を有する膜を形成することができる。下地絶縁膜は、その材料に応じて、スパッタリング法やCVD法などの堆積法、ディップ法、スピンコート法、インクジェット法などの塗布法、スクリーン印刷法などの印刷法などを適宜用いればよい。
【0037】
第1の電極104としては、スパッタリング法などの成膜方法を用いて、透光性の導電膜を形成する。なお、スパッタリング時にメタルマスク(シャドーマスクともいう)を用いて、所望の領域に透光性の導電膜を形成することができる。例えば、第1の電極104に用いることのできる材料としては、酸化インジウム、酸化インジウム酸化スズ(ITO)、酸化インジウム酸化亜鉛、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛、グラフェンなどを用いることができる。
【0038】
また、第1の電極104として、金、銀、白金、マグネシウム、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、又はチタン等の金属材料や、これらの合金を用いることができる。または、それら金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等を用いてもよい。なお、金属材料(又はその窒化物)を用いる場合、透光性を有する程度に薄くすればよい。
【0039】
また、上記材料の積層膜を第1の電極104として用いることができる。例えば、銀とマグネシウムの合金とITOとの積層膜などを用いると、導電性を高めることができるため好ましい。
【0040】
なお、透光性の導電膜を基板102の全面に形成し、その後、フォトリソグラフィ法などの公知のパターニング技術を用いて、当該透光性の導電膜の不要な部分を除去し、第1の電極104とすることもできる。ただし、上述した通り、好ましくはスパッタリング時にメタルマスクを用いて、所望の領域に透光性の導電膜を形成する。このように、フォトリソグラフィによるパターニングプロセスを行わずに、メタルマスクによる蒸着法、スクリーン印刷法などによってパターンを形成することにより、より簡素化された方法で照明装置を作製することができる。
【0041】
次に、基板102、第1の電極104、及び凹凸領域120上に接続電極106を形成する(図2(B)、及び図2(E)参照)。
【0042】
接続電極106としては、スクリーン印刷法、インクジェット法等により形成可能な導電性ペーストを用いる。導電性ペーストは、特に銀粒子をフィラーとして含有した銀ペースト、または銅粒子をフィラーとして含有した銅ペーストを用いると好適である。銀ペースト、または銅ペーストは、第1の電極104よりも比抵抗率を低くすることができるため、電圧降下を抑制することができる。
【0043】
次に、第1の電極104、及び接続電極106上に隔壁108を形成する(図2(C)、及び図2(F)参照)。
【0044】
隔壁108は、第1の電極104、及び接続電極106の端部を覆っている。すなわち、隔壁108は、当該端部の段差によって、発光層110(のちに形成される)が分断され、当該端部の段差で第1の電極104と、第2の電極112と、が短絡することを抑制するために設けられる。なお、隔壁108は、不要であれば設けない構成としても良い。
【0045】
隔壁108としては、印刷法、インクジェット法を用い、感光性樹脂を形成する。例えば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等の有機樹脂、または無機絶縁材料を用いることができる。特に感光性の樹脂材料を用いて開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。具体的には、隔壁108の断面が描いている曲線の曲率半径が、0.2~2μm程度であることが望ましい。隔壁108の形成方法は、特に限定されないが、スパッタリング法、蒸着法、スクリーン印刷法やオフセット印刷法などの印刷法、インクジェット法やディスペンス法などの液滴吐出法、スリットコート法やスピンコート法などの塗布法などを用いればよい。
【0046】
次に、第1の電極104、及び隔壁108上に発光層110を形成し、その後、隔壁108、発光層110、及び接続電極106上に第2の電極112を形成する。なお、第1の電極104、発光層110、及び第2の電極112によって、発光素子114が形成される(図3(A)、図3(C)、及び図3(D)参照)。
【0047】
本実施の形態においては、発光層110を蒸着法により形成した後、隔壁108、発光層110、及び接続電極106と重なる領域上に第2の電極112を蒸着法により形成する。なお、発光層110、及び第2の電極112は、各々所望の領域に形成するために、メタルマスクを用いて形成する。
【0048】
発光層110としては、少なくとも発光性の有機化合物を含む層を有する。そのほか、電子輸送性の高い物質を含む層、正孔輸送性の高い物質を含む層、電子注入性の高い物質を含む層、正孔注入性の高い物質を含む層、バイポーラ性の物質(電子輸送性及び正孔輸送性が高い物質)を含む層等を適宜組み合わせた積層構造を構成することができる。
【0049】
第2の電極112としては、反射性を有する材料を用いて形成する。反射性を有する材料としては、アルミニウム、金、白金、銀、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、ランタン、又はパラジウム等の金属材料を含む金属又は合金を用いることができる。そのほか、アルミニウムとチタンの合金、アルミニウムとニッケルの合金、アルミニウムとネオジムの合金などのアルミニウムを含む合金(アルミニウム合金)や銀と銅の合金、銀とマグネシウムの合金などの銀を含む合金を用いることもできる。銀と銅の合金は、耐熱性が高いため好ましい。さらに、アルミニウム合金膜に接する金属膜、又は金属酸化物膜を積層することでアルミニウム合金膜の酸化を抑制することができる。該金属膜、金属酸化物膜の材料としては、チタン、酸化チタンなどが挙げられる。
【0050】
また、第2の電極112を形成したあと、発光素子114を覆う保護膜、及びシート状のシール材による固体封止などを行ってもよい。固体封止により、発光素子114への水分、酸素などの不純物の浸入を抑制し、信頼性の高い照明装置とすることができる。
【0051】
以上の工程で基板102上に形成された発光素子114を形成することができる。
【0052】
次に、シール材116を用いて、発光素子114が形成された基板102と、対向して封止基板118を貼り合わせる(図3(B)、図3(E)、及び図3(F)参照)。
【0053】
また、発光素子114と封止基板118との間の空間内に乾燥剤や吸着剤を備えると好ましい。当該乾燥剤や吸着剤によって、封止領域内部の水分、酸素などの不純物が低減されるため、発光素子114の劣化が抑制され、信頼性の高い照明装置とすることができる。
【0054】
シール材116は、発光素子114の外周を囲むように設けられ、基板102に形成された凹凸領域120、及び当該凹凸領域120上に形成された接続電極106と接する。
【0055】
シール材116は、例えばスクリーン印刷などの印刷法や、ディスペンス法などの塗布法を用いて形成することができる。また、シール材116に用いることのできる材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、熱硬化型の樹脂材料、紫外線硬化型の樹脂材料、または、低融点ガラス材料(フリットガラス)を用いても良い。また二液混合型のエポキシ樹脂などを用いることができる。また、シール材に用いる材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。またシール材には乾燥剤が含まれていても良い。例えば、アルカリ土類金属の酸化物(酸化カルシウムや酸化バリウム等)のように、化学吸着によって水分を吸収する物質を用いることができる。その他の乾燥剤として、ゼオライトやシリカゲル等のように、物理吸着によって水分を吸着する物質を用いてもよい。
【0056】
なお、本実施の形態において、シール材116は、封止基板118側に塗布し、基板102と貼り合わせる。ただし、本発明はこれに限定されず、基板102側にシール材116を形成しても良い。
【0057】
貼り合わせ方法としては、まず、封止基板118上にシール材116を塗布する。次に、封止基板118と、基板102のアライメントを行い、基板102上に形成された凹凸領域120、及び凹凸領域120上に形成された接続電極106と、シール材116を接着させる。その後、圧力をかけながら基板102と封止基板118を貼り合わせ、熱や紫外線の照射によりシール材116を硬化する。
【0058】
貼り合わせ工程は、減圧雰囲気、または不活性雰囲気下で行い、水や酸素などの不純物ができるだけ低減された雰囲気下で行うことが好ましい。このような雰囲気下で貼り合わせを行うことにより、基板102と封止基板118との間の空間内に含まれる水や酸素などの不純物を低減することができ、信頼性の高い照明装置100を作製することができる。当該貼り合わせ工程によりシール材116が硬化し、基板102と封止基板118とが当該シール材116によって接着される。
【0059】
封止基板118としては、基板102と同様な材料を用いることができる。ただし、封止基板118は、透光性を有する必要が無いため、金属基板などの熱伝導性の高い基板を用いることが好ましい。発光素子114を用いた大型の照明装置の場合、発光素子114からの発熱が問題となる場合があるため、このような熱伝導性の高い基板を用いると放熱性が高まる。例えば、ステンレス基板、アルミニウム酸化物、ジュラルミンなどを用いると、軽量且つ放熱性を高めることができる。
【0060】
また、封止基板118のシール材116が形成される領域は、基板102のシール材116が形成される領域と同様な構成としても良い。すなわち、封止基板118側にも凹凸領域、及び導電性ペーストを形成しても良い。
【0061】
以上の工程で図1に示す照明装置100を形成することできる。このように、フォトリソグラフィによるパターニングプロセスを行わずに、メタルマスクによる蒸着法、スクリーン印刷法などによってパターンを形成することにより、より簡素化された方法で照明装置を作製することができる。
【0062】
また、封止領域において、シール材116は、基板102に形成された凹凸領域120、及び凹凸領域120上に形成された接続電極106と接する。このように、シール材116は、発光素子114の外周に形成された凹凸領域120、及び凹凸領域120上に形成された接続電極106と接することで、接着面積が向上し、密着性を高めることができる。なお、接続電極106は、導電性ペーストにより形成されており、導電性ペーストが含有している導電性粒子により表面が粗面化されているため、接着面積を向上させ、優れた封止構造とすることができる。
【0063】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。」
オ 「【図1】
[図:0001388735000001.jpg]
」

(2)引用文献2の記載

当審拒絶理由で引用された、引用文献2(特開2009-146848号公報)は、本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには以下の記載がある。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネセンスにより発光する発光装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型で軽量な発光源として、OLED(organic light emitting diode)、即ち有機EL(electro luminescent)素子が提供されている。有機EL素子は、有機材料で形成された少なくとも一層の有機薄膜をピクセル電極と対向電極とで挟んだ構造を有する。両電極間に電流が流されると同時に、前記有機薄膜にも電流が流れ、これにより、当該有機薄膜、ないしは有機EL素子は発光する。
このような有機EL素子を多数並べ、かつ、その各々につき発光及び非発光を適当に制御すれば、所望の意味内容をもつ画像等の表示が可能となる。
かかる有機EL素子、ないしはこれを備えた画像表示装置としては、例えば特許文献1に開示されているようなものが知られている。」
イ 「【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述のような画像表示装置においては、全有機EL素子のそれぞれが保有する有機薄膜の量が、均一であること、より現実的には一定の範囲内に収まることが好ましい。そうでなければ、発光に寄与する有機EL物質の量に相違が生じ、結果的に、輝度ムラを発生させるおそれが高まるからである。この要請は、当該有機薄膜が、液滴塗布法(インクジェット法)を用いて製造される場合、その原材料たる液滴、ないしはインクの吐出量が各有機EL素子について同じであるべきである等の各個別の要請となって表れる。
しかし、上述の課題を解決することは一般に困難である。というのも、液滴塗布法(インクジェット法)では1回1回の吐出についてその量にムラが生じ得ること、また、液滴ないしインク塗布後の乾燥工程において各有機EL素子について乾燥ムラが生じ得ること等、完璧に統制することが困難な各種の要因が存在するからである。
とはいえ、これらの要因は、製造工程の管理を極めて厳格に行えば、一定程度解消することは可能ではある。しかし、そこには当然コスト上の限界が存在することは言うを待たない。結局、輝度ムラの発生を未然に防止すべく全有機EL素子の有機薄膜保有量を同じにするという要請とともに、可能な限り、製造工程の簡易化、容易化が達成されることが望ましいのである。」
ウ 「【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発光装置は、上述した課題を解決するため、基板と、前記基板上に、その各々がマトリクス状の配列に従って並べられる複数のピクセル電極と、該ピクセル電極の各々に対応し、かつ、その各々が、該ピクセル電極及び対向電極、並びに、これらに挟まれる発光機能層を含む複数の発光素子と、前記発光機能層を前記マトリクス状の配列の列方向に沿って複数個の部分に区切る区切り部と、を備え、前記マトリクス状の配列における、ある列の前記区切り部の配列パターンは、他の列の前記区切り部の配列パターンとは異なる。
【0010】
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本発明によれば、発光機能層が、区切り部によって複数個の部分に区切られる。この場合、マトリクス状の配列におけるある列において、この「区切り部」によって区切られる発光機能層の数(即ち、「複数個の部分」の、その数)と、当該の列に並ぶピクセル電極の数とは異なっていてよい。したがって、前者の数が後者の数よりも少なければ、「区切り部」間の発光機能層を1個形成すれば、同じ区間に存在する複数のピクセル電極についての発光機能層の形成が一挙に完了する、ということになる。本発明では、このような観点からまず、その製造容易性が確保される。
また、本発明では、例えば前述のように、基板の全長に亘る「ストライプ状」の溝等が設けられるわけではなく、発光機能層が、「区切り部」によって適当な数に分離されているので、当該発光機能層中のある1箇所の不具合(例えば、前述の「混入」等)が、“全”画素に影響を及ぼす、といったことも生じない。本発明では、このような観点からも、その製造容易性が確保される。
【0011】
また、前述のような「区切り部」の存在によると、発光機能層が、液滴塗布法(インクジェット法)を用いて作られる場合、その原料液滴ないしインク滴の乾燥開始点は、当該区切り部が存在する位置、あるいはその近傍に設定され得ることになる(液滴ないしインク滴の乾燥は、その端部から始まるからである。)。
そして、本発明では、この「区切り部」の、ある列における配列パターンが、他の列におけるそれとは異なっている。つまり、これによると、これらある列及び他の列では、前記の乾燥開始点が一般に異なるということになり、したがってまた、乾燥終了点も一般に異なるということになる。例えば、ある列における乾燥開始点(即ち、区切り部及びその近傍)のすぐ隣の列の上の点は、乾燥終了点である、といった如くである。
これによれば、基板全面に関する、一様の乾燥ムラが生じることがない。例えば、前述した、基板の全長に亘るような「ストライプ状」の溝を形成する場合では、乾燥開始点はその溝の端部であり、乾燥終了点はその溝の長手方向の中央部分である、ということになり得るため、当該の溝を当該基板上に一様に並べてしまうと、乾燥終了点が当該基板を横切るような直線の上に並ぶ、ということが生じてしまう。すると、その結果、有機EL物質等の有効成分の凝集等が、ある特定の領域に集中する、といった事象を発生させてしまうおそれが高まるのである。こうなると、複数の発光素子全体による画像表示等において、輝度ムラがより目立つことになる。
本発明において、このような不具合は発生しないのである。
結局、本発明によれば、製造容易性の向上が図られながら、輝度ムラの発生を未然に防止することができる。
なお、本発明にいう「発光素子」は、ピクセル電極及び対向電極間に電流が流されることで、発光機能層に電流が流れ、それにより、当該発光機能層が発光する素子であることを前提とする。」
エ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<第1実施形態>
以下では、本発明に係る第1の実施の形態について図1乃至図6を参照しながら説明する。なお、これらの図面及び後に参照する図7以降の各図面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異ならせてある場合がある。
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【0021】
図1は、第1実施形態の有機EL装置の一例を示す平面図である。
この図1において、有機EL装置は、素子基板7と、この素子基板7上に形成される各種の要素を備えている。ここで各種の要素とは、有機EL素子8、走査線3及びデータ線6、走査線駆動回路103A及び103B、データ線駆動回路106、プリチャージ回路106A、並びに対向電極用電源線201である。
【0022】
有機EL素子(発光素子)8は、図1に示すように、素子基板7上に複数備えられており、それら複数の有機EL素子8はマトリクス状に配列されている。有機EL素子8の各々は、ピクセル電極、発光機能層及び対向電極から構成されている。これら各要素に関しては後に改めて触れる。
画像表示領域7aは、素子基板7上、これら複数の有機EL素子8が配列されている領域である。画像表示領域7aでは、各有機EL素子8の個別の発光及び非発光に基づき、所望の画像が表示され得る。なお、以下では、素子基板7の面のうち、この画像表示領域7aを除く領域を、「周辺領域」と呼ぶ。
【0023】
走査線3及びデータ線6は、それぞれ、マトリクス状に配列された有機EL素子8の各行及び各列に対応するように配列されている。より詳しくは、走査線3は、図1に示すように、図中左右方向に沿って延び、かつ、周辺領域上に形成されている走査線駆動回路103A及び103Bに接続されている。一方、データ線6は、図中上下方向に沿って延び、かつ、周辺領域上に形成されているデータ線駆動回路106に接続されている。これら各走査線3及び各データ線6の各交点の近傍には、前述の有機EL素子8等を含む単位回路(ピクセル回路)Pが設けられている。
【0024】
この単位回路Pは、図2に示すように、前述の有機EL素子8を含むほか、nチャネル型の第1トランジスタ68、pチャネル型の第2トランジスタ9、及び容量素子69を含む。
単位回路Pは、電流供給線113から給電を受ける。複数の電流供給線113は、図示しない電源に接続されている。
また、pチャネル型の第2トランジスタ9のソース電極は電流供給線113に接続される一方、そのドレイン電極は有機EL素子8のピクセル電極に接続される。この第2トランジスタ9のソース電極とゲート電極との間には、容量素子69が設けられている。一方、nチャネル型の第1トランジスタ68のゲート電極は走査線3に接続され、そのソース電極はデータ線6に接続され、そのドレイン電極は第2トランジスタ9のゲート電極と接続される。
単位回路Pは、その単位回路Pに対応する走査線3を走査線駆動回路103A及び103Bが選択すると、第1トランジスタ68がオンされて、データ線6を介して供給されるデータ信号を内部の容量素子69に保持する。そして、第2トランジスタ9が、データ信号のレベルに応じた電流を有機EL素子8に供給する。これにより、有機EL素子8は、データ信号のレベルに応じた輝度で発光する。
【0025】
素子基板7上の周辺領域上には、プリチャージ回路106Aが備えられている。このプリチャージ回路106Aは、有機EL素子8へのデータ信号の書込み動作に先立って、データ線6を所定の電位に設定するための回路である。
また、対向電極用電源線201(以下、単に「電源線201」という。)は、素子基板7の外形輪郭線にほぼ沿うように、平面視してΠ字状の形状をもつ。この電源線201は、有機EL素子8の対向電極に例えばグランドレベル等の電源電圧を供給する。
なお、前述では、走査線駆動回路103A及び103B、データ線駆動回路106、並びにプリチャージ回路106Aのすべてが素子基板7上に形成される例について説明しているが、場合によっては、そのうちの全部又は一部を、フレキシブル基板に形成するのであってもよい。この場合、当該のフレキシブル基板と素子基板7との両当接部分に適当な端子を設けておくことにより、両者間の電気的な接続を可能とする。
【0026】
以上述べたような基本的構成を備える有機EL装置は、より詳細には、図3乃至図5に示すような構造をもつ。
なお、図3と図4とは、いずれも有機EL装置の画像表示領域7aの一部を拡大視する平面図であるという点について趣旨を同じくするが、前者は、発光機能層18形成前の状態を表し、後者は、発光機能層18形成後の状態を表している点で異なっている。また、図3では、ピクセル電極13(図中破線参照)を図示しているが、図4では、煩雑さを避けるため、その図示が省略されている。
【0027】
有機EL装置は、図3又は図4に示すように、隔壁層340と、これによって形作られる、略長円形状の開口部341及び開口部342それぞれの複数と、を備えている。
このうち隔壁層340は、図5に示すように、積層構造物250の一部を構成しており、ピクセル電極13の図中上層として、かつ、コンタクトホール360を埋めるように形成されている。この隔壁層340は、例えば絶縁性の透明樹脂材料、その中でも特に撥液性をもつ材料で作られて好適である。より具体的には例えば、フッ素系樹脂、あるいは更に、アクリル樹脂の他、エポキシ樹脂、あるいはポリイミドなどを挙げることができる。
なお、隔壁層340がこのような各種の樹脂材料から作られている場合には、その基層を、例えばSiO2等の無機材料で作るようにするとよい(即ち、この場合、隔壁層340は下層側に無機物質、上層側に有機物質という積層構造を持つことになる。)。これによれば、ピクセル電極13が後述するようにITO等から作られている場合においても、当該ピクセル電極13と隔壁層340との密着性を高めることができる。
【0028】
一方、開口部341及び開口部342は、図3乃至図5に示すように、隔壁層340(より正確に言えば、その側壁)によって囲われた空間とも言い換えられ得る。この開口部341、あるいは開口部342の底面は、ピクセル電極13の表面に一致する。また、この開口部341、あるいは開口部342の内部には、発光機能層18、対向電極5及びバリア層40等が含まれている(図5参照)。
【0029】
まず、開口部341は、図3、あるいは図4に示すように、図中上下方向に沿った長さが相対的に小さい長円形状をもつ。一方、開口部342は、同長さが相対的に大きい長円形状をもつ。なお、ここでいう“長円形状”とは、図に示すように、楕円ではなく、長方形と2つの半円形とを接合したかの如き形状(より詳しくは、前記2つの半円形の径部分それぞれが、前記長方形のそれぞれの短辺部分に接合したかの如き形状)を指す用語として用いている。
このような形状の相違に対応するように、開口部341は、図3によく示されているように、その内部に、図中上下方向に沿って並ぶ2つのピクセル電極13を収めるのに対して、開口部342は、その内部に同方向に沿って並ぶ3つのピクセル電極13を収める。なお、1つ1つのピクセル電極13を平面視した形状は、概ね長方形状である。
【0030】
なお、前述のピクセル電極13の1個1個の間は物理的に分断されていて、電気的に短絡していない(図5も参照)。また、すべての開口部341、あるいはすべての開口部342の内部におけるピクセル電極13間には、図3乃至図5に示すように、例えばSiO2、あるいはSiN等からなる電極分離層345が形成されている。このようなことから、ピクセル電極13の一単位とは、前述した“長方形状をもつ電極の1個”が、それとして捉えられることになる。また、これに応じて、前述した有機EL素子8(あるいは、単位回路P)の一単位も、このピクセル電極13の一単位に即して定められることになる(図3中、最左列かつ最上段のピクセル電極13を囲む、符号“8”,“P”を付された一点差線による囲み線、参照)。
また、図3において、ピクセル電極13それ自体の配列態様に着目すれば、当該ピクセル電極13は、マトリクス状に配列されているということができる。
【0031】
このようなピクセル電極13は、図5に示すように、コンタクトホール360を介して、積層構造物250の一部を構成する回路素子薄膜11と電気的に接続されている。回路素子薄膜11は、前述の単位回路Pに含まれる第1トランジスタ68や第2トランジスタ9、等を含む。図では極めて簡略化されて描かれているが、この回路素子薄膜11は、これら各種のトランジスタを構成する半導体層、ゲート絶縁膜、ゲートメタル等や容量素子69を構成する電極用薄膜(いずれも不図示)、その他の金属薄膜から構成される。なお、前記コンタクトホール360は、積層構造物250の一部を構成する第1及び第2層間絶縁膜301及び302を貫通するようにして形成されている。
以上の構成により、ピクセル電極13は、第2トランジスタ9を介して電流供給線113から供給される電流を、発光機能層18に印加可能である。
このようなピクセル電極13は、ITO(Indium Tin Oxide)等の透光性かつ導電性の材料から作られている。
【0032】
さて、“開口部”の説明に戻る。
開口部341及び開口部342は、図3、あるいは図4に示されているように、一定の規則に従って並べられている。
まず、開口部341は、図3中左から2,4,6,…列目の各列において、その図中最上方に配置される。以下、そこから図中下方に順次繋がるようにして、開口部342,342,342,…が並ぶ。他方、図3中左から1,3,5,…列目の各列においては、図中最上方に開口部342が配置され、以下、そこから開口部342,342,342,…が並ぶ(要するに、この場合、その全部が開口部342である。)。
このような配列態様により、図中上下方向に沿った開口部341及び342間、あるいは開口部342及び342間に現れる隔壁層340の位置は、例えば図4の太い破線で示すが如く、列の並んでいく方向(図中左右方向)に従って、ジグザグに変動する。つまり、第1実施形態では、ある列に沿った隔壁層340の配列パターンは、他の列に沿ったそれとは異なるのである。この点については、後に図6を参照して改めて説明することにする。
なお、ここで言及した隔壁層340は、本発明にいう「区切り部」への該当性を有する。
【0033】
このような配列態様をもつ開口部341、あるいは開口部342は、図4に示すように、図中左から1,4,6,…番目に位置する各列から構成される第1列群、同じく2,5,7,…番目に位置する各列から構成される第2列群、及び、3,6,9,…番目に位置する各列から構成される第3列群、のいずれかのグループに属する。
ここで、第1列群とは、そこに属する開口部341、あるいは342が、赤色光を発する有機EL物質を含む発光機能層18Rを備えるグループである。以下、同様にして、第2列群及び第3列群とは、それぞれ、緑色光を発する有機EL物質を含む発光機能層18Gを備えるグループであり、及び、青色光を発する有機EL物質を含む発光機能層18Rを備えるグループである。なお、本明細書においては、ここで述べた符号“18R”,“18G”及び“18B”を、一まとめに代表する記号として符号“18”を用いている。
【0034】
より詳細には、次のようである。すなわち、第1実施形態において、発光機能層18は、図4あるいは図5に示すように、開口部341、あるいは開口部342ごとに1個ずつ割り当てられるように形成されている。第1実施形態では特に、発光機能層18は、隔壁層340の側壁によって囲われた空間に閉じ込められるように形成されているのである。
この発光機能層18の1個1個は、少なくとも有機発光層を含み、この有機発光層は正孔と電子が結合して発光する有機EL物質から構成されている。第1実施形態において、この有機EL物質としては、例えば、赤色発光に対応してシアノポリフェニレンビニレン、緑色発光に対応してポリフェニレンビニレン、並びに、青色発光に対応してポリフェニレンビニレン及びポリアルキルフェニレン、のそれぞれが該当し得る(この材料提示は、単なる一例である。)。そして、このうちの最前者の材料を含む発光機能層18Rを含む開口部341及び342が前記第1列群に含まれ、その次の材料を含む発光機能層18Gを含む開口部341及び342が前記第2列群に含まれ、最後者の材料を含む発光機能層18Bを含む開口部341及び342が前記第3列群に含まれることになるのである。
【0035】
このような第1、第2及び第3列群の区分けと、前述した開口部341及び342の配列態様との間には次の関係がある。
すなわち、まず、図3によく示されているように、例えば第3列群を構成する、図中左から3,6,9,…列目の各列に着目する(図中ハッチングされた部分参照)。
このうち第3列目においては、図中上から順に、開口部342,342,342,…が並ぶ。したがって、ピクセル電極13の数を基準としてみると、図中上から順に3つのピクセル電極13を数えると、隔壁層340Aが現れ(図中二重黒丸参照)、更にまた3つのピクセル電極13を数えると、再び隔壁層340Aが現れ、ということが繰り返される。
一方、第6列目においては、図中上から順に、開口部341、そして開口部342,342,342,…が並ぶ。したがって、ピクセル電極13の数を基準としてみると、図中上から順に2つのピクセル電極13を数えると、隔壁層340Aが現れ、更にまた3つのピクセル電極13を数えると、再び隔壁層340Aが現れ、以下、3つのピクセル電極13ごとに隔壁層340Aが現れる、ということが繰り返される。
更に、第9列目においては、図から明らかなように、前記の第3列目と同じである。以後、第15,21,27,…列目も同様となる。また、第12列目においては、前記の第6列目と同じになる。以後、第12,18,24,…列目も同様となる。
【0036】
これを要するに、第1実施形態では、第3列群のうち、隣接し合う各列(例えば、第3列目と第6列目、あるいは第6列目と第9列目、等々)上に位置する隔壁層340Aの、当該各列に沿った配列パターンは互いに異なる、ということになる。このことは、残る第1列群及び第2列群についても同様に当てはまることが、図3、あるいは図4から明らかである。なお、ここで言及した隔壁層340Aは、本発明にいう「区切り部」への該当性を有する(隔壁層340Aは、隔壁層340そのものであるので、既述のように、隔壁層340が「区切り部」への該当性を有する以上、これは当然のことである。)。
【0037】
第1実施形態に係る有機EL装置は以上述べた各種の要素を備えるが、以下では、上では触れられなかった各種の要素、あるいは、上で触れた要素ではあるが補足する事項について説明する。
まず、既述の第1及び第2層間絶縁膜301及び302(以下、単に「絶縁膜301及び302」ということがある。)は、積層構造物250中の導電性要素間の短絡が生じないように、あるいは、これら導電性要素の積層構造物250中における好適な配置を実現するため等に貢献する。
絶縁膜301及び302は、様々な厚さでもって様々な絶縁性材料から作られうるが、好適には、各絶縁膜の積層構造物250中の配置位置や役割等に応じて、適宜適当な厚さ及び材料が選択されるとよい。より具体的には例えば、絶縁膜301及び302は、SiO2、SiN、SiON等々で作られて好ましい。
あるいは、第2層間絶縁膜302に関しては、これを下地層として形成される複数のピクセル電極13(図4参照)それぞれが同一面内に形成されるように、その上面が平坦面になり易いアクリル樹脂等から作られてもよい。
【0038】
次に、図5に示すバリア層40は、素子基板7の全面を覆うかのように、後述する対向電極5の上に形成されている。このバリア層40は、水及び酸素の有機EL素子8への進入を食い止める機能をもつ。このような機能を十全に発揮するべく、当該バリア層40は、具体的には例えば、SiN、SiON、SiO2、等々で作られて好適である。
【0039】
さらに、図5に示す対向電極5は、素子基板7の全面を覆うかのように、発光機能層18の上に形成されている。この対向電極5は、平面視して矩形状(その内部に特別な開口、間隙等をもたない、いわゆるベタ)に形成されており、その周囲は、図1に示した電源線201に電気的に接続される(その接続態様は不図示)。
このような対向電極5は、例えばアルミニウム、銀、等の比較的光反射性能の高い材料から作られる。
【0040】
前述の有機EL素子8の各々は、いま述べた対向電極5、及び、上で詳述したピクセル電極13及び発光機能層18から構成される。
このような構造に基づき、例えば、ピクセル電極13が陽極、対向電極5が陰極、等と設定されて、両者間に電流が流されると、それと同時に発光機能層18にも電流が流れ、これにより、当該発光機能層18は発光する。この場合、前述の有機EL物質の違いに応じた、赤、緑及び青の各色の発光が行われる。そして、この発光機能層18から発した光のうち一部は、素子基板7に向かってそのまま有機EL装置外部へと進行し、あるいは他の一部は、対向電極5の側に向かって進行した後、該対向電極5で反射した上で有機EL装置外部へと進行する(図5中の符号“L”参照)。このように、第1実施形態に係る有機EL装置は、光Lが、素子基板7の側に向かって進行するので、いわゆるボトムエミッション型である。
【0041】
以下では、以上述べたような有機EL装置によって奏される作用効果について説明する。
(1) まず、第1実施形態の有機EL装置によれば、その製造容易性の向上が図られる。というのも、第1実施形態においては、発光機能層18が1個の開口部341又は342に形成されれば、その開口部341又は342に収められている2つ又は3つのピクセル電極13についての発光機能層18の形成が一挙に完了するからである。
また、第1実施形態では、発光機能層18が、隔壁層340(特に、図3の隔壁層340A参照)によって適当な数に分離されているので、当該発光機能層18中のある1箇所の不具合が、"全"ピクセルに影響を及ぼす、といったことも生じない。ここで"不具合"とは、具体的には例えば、発光機能層18Rが供給されるべき列のある一点に、発光機能層"18G"が混入したりする不具合とか、あるいは、ある列に侵入した微少塵にインクが凝集してしまったりする不具合等が考えられる。第1実施形態では、このような観点からも、その製造容易性が確保される。
【0042】
(2) また、第1実施形態では、このような製造容易性の向上が図られながら、輝度ムラの発生を未然に防止することができる。これは、以下の事情による。
すなわち、第1実施形態では、上述のように、図3又は図4中上下方向、あるいは、ある列に沿った隔壁層340の配列パターンが、他の列におけるそれとは異なっている。例えば、図6に模式的に示すように、図3の符号"P1"を付した列の隔壁層340の配列パターンは、左から順に、隔壁層340、2つの電極分離層345を挟んで再び隔壁層340、続いて2つの電極分離層345を挟んで再び隔壁層340、以後同様ということが繰り返される。一方、図3の符号"P2"を付した列の隔壁層340の配列パターンは、左から順に、隔壁層340、1つの電極分離層345を挟んで再び隔壁層340、続いて2つの電極分離層345を挟んで再び隔壁層340、以後同様ということが繰り返される」
オ 「【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1の単位回路Pの詳細を示す回路図である。
続きを表示(全19行)
【図3】図1の有機EL装置の画像表示領域の一部を拡大視した平面図(ただし、発光機能層形成前の状態を示す平面図)である。
【図4】図1の有機EL装置の画像表示領域の一部を拡大視した平面図(ただし、発光機能層形成後の状態を示す平面図)である。
【図5】図4のX1-X1断面図である。
【図6】図3中符号"P1"を付した列と符号"P2"を付した列に関する、隔壁層の配列パターン等を模式的に示す説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係り、図3と同趣旨の平面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係り、図4と同趣旨の平面図である。
【図9】図8の開口部"343"のみを拡大視して示す平面図である。
【図10】図8のX2-X2断面図である。
【図11】図7中符号"P3"を付した列と符号"P4"を付した列に関する、隔壁層及び電極分離帯の配列パターン等を模式的に示す説明図である。
【図12】本発明に係る有機EL装置を適用した電子機器を示す斜視図である。
【図13】本発明に係る有機EL装置を適用した他の電子機器を示す斜視図である。
【図14】本発明に係る有機EL装置を適用したさらに他の電子機器を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0077】
7……素子基板、7a……画像表示領域、P……単位回路、8……有機EL素子、13……ピクセル電極、18……発光機能層、18a……有機発光層、18b……正孔注入層、18R……(赤色光を発する有機EL物質を含む)発光機能層、18G……(緑色光を発する有機EL物質を含む)発光機能層、18B……(青色光を発する有機EL物質を含む)発光機能層、5……対向電極、340,340A……隔壁層、341,342,343……開口部、345……電極分離層、346……親液層、347……電極分離帯、11……回路素子薄膜、301……第1層間絶縁膜、302……第2層間絶縁膜、40……バリア層」
カ 「【図4】
[図:0001388735000002.jpg]
【図5】
[図:0001388735000003.jpg]
」

(3)引用文献4の記載

当審拒絶理由で引用された、引用文献4(特開2011-191730号公報)は、本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには以下の記載がある。

ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トップエミッション型有機EL素子を用いた表示技術に関する。」
イ 「【発明を実施するための形態】
【0035】
〈第一の実施の形態〉
本発明の第一の実施の形態の表示装置の一例を図1、図2に示す。図1は表示装置1の一例を示す断面図であり、図2は有機発光層14、対向電極15を省略した表示装置1の一例を示す平面図である。なお、図1の断面図は、図2でのA-A'での断面を示している。
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【0036】
図1を参照すると、本実施の形態の表示装置1は、基板2上に薄膜トランジスタ(以後、TFTと称す)8がマトリックス状に配置されている表示装置である。TFT8は、ゲート電極3、ゲート絶縁膜4、活性層5、ソース電極6およびドレイン電極7からなる。TFT8は層間絶縁膜9によって被覆され、当該層間絶縁膜9上にY方向に伸びたライン状の第1の隔壁10が設けられる。
【0037】
また、図1、図2を参照すると、TFT8は層間絶縁膜9によって被覆され、当該層間絶縁膜9上にはY方向に伸びたライン状の第1の隔壁10および、第1の隔壁10と略直交するように配置されX方向に伸びるライン状の第2の隔壁11によって形成される開口12がマトリックス状に配置されている。
【0038】
また、図1を参照すると、開口12内には、X方向に伸びる第2の隔壁11によってY方向で分離された画素電極13がマトリックス状に配置される。画素電極13上には、第1の隔壁10、第2の隔壁11によって分離された有機発光層14がマトリックス状に配置される。さらに、有機発光層14上には、透光性を有する対向電極15が共通電極として配置される。画素電極13、有機発光層14および対向電極15によって有機EL素子16は構成される。
【0039】
また、有機EL素子16の画素電極13は、層間絶縁膜9を貫通するように形成されたコンタクトホール17xによってTFT8のドレイン電極7と接続される。TFT8のゲート電極3にかかる電位によってTFT8がONした場合に、コンタクトホール17xを介して有機EL素子16に電流が流れ、有機EL素子16は光を放射する。
【0040】
なお、図1、図2を参照すると、コンタクトホール17xはY方向に伸びる第1の隔壁10の一部によって被覆されている。
【0041】
図2に示すように、本実施の形態における画素電極13は、Y方向ではX方向に伸び第の2の隔壁11で分離されている。そのためY方向において画素電極13の端部が第2の隔壁11の端部と接する構造、あるいは、画素電極13の端部が第2の隔壁11の端部に乗り上げる構造となっている。一方、図1に示すように、X方向の画素電極13は、ライン状である第1の隔壁10の底部に潜り込む構造となっている。
【0042】
本実施の形態の構造を採用すると、コンタクトホール17xは、Y方向に伸びる第1の隔壁10によって被覆され発光に寄与する開口12から分離されるため、発光に寄与する陰極上には凹みが発生せず、平坦性の良い陰極を形成することができる。そのため、有機発光層14の膜厚が均一となり、素子内、面内で均一な発光を有する有機EL素子および表示装置を実現できる。
【0043】
また、Y方向はX方向に伸びる第2の隔壁11によって画素電極13が分離されるため、画素電極13の解像度については、画素電極13間のスペースは画素電極13の印刷に用いるインクジェット装置の最小分解スペースに律速されず、第2の隔壁11の解像度によって決定される。
【0044】
つまり、隔壁は感光性ポリイミド材料、感光性アクリル材料等の感光性樹脂を用いて形成され、それらの最小線幅は5um以下である。
【0045】
一方、隔壁を用いない場合のインクジェット法での最小分解スペースは30~50umであり、本実施の形態の構造を採用することで従来よりもY方向では数倍の高精細化が実現でき、画素電極13間のスペースを小さくできるため開口率が改善される。
【0046】
なお、X方向ではコンタクトホール17xと接続した画素電極13Bを隣接の画素電極13C、画素電極13Dと分離する必要があるが(図2参照)、これは画素電極13間のスペースを画素電極13の印刷に用いるインクジェット装置の最小分解スペース(30~50um)に合わせておけば良い。【0047】
なお、図1では図面を簡略化するため、選択線、信号線、電源線、容量を省略しているが、有機EL素子16ではスイッチング素子、ドライブ素子、容量からなる2トランジスタ1キャパシタ構造は必須であり、更に閾値電圧のシフトに対する保証回路を設けるため、より多くのTFT8や容量を用いる構造が更に望ましい。
【0048】
次に本実施の形態の表示装置の製造方法を図3、図4に従って説明する。図3の(a)、(e)は断面図、(b)、(c)、(d)は正面図を示している。図4は当該製造方法のフローチャートである。
【0049】
図3(a)に示すように、例えばガラス基板である基板2上にアモルファスシリコン(a-Si)を活性層5とするTFT8をマトリックス状に形成する。始めにガラス基板上にスパッタ法によってCrを成膜し、フォトリソグラフィー法によってゲート電極3を形成した。その後プラズマCVD法によってSiO2を成膜してゲート絶縁膜4とした。その後CVD法によってa-Siを成膜し、フォトリソグラフィー法によって個別化して活性層5とし、その後スパッタ法によってAl-Siを成膜し、フォトリソグラフィー法によってソース電極6、ドレイン電極7を形成し、140ppiの密度を有するマトリックス状に配置されたTFT8を完成させた。また必要に応じてトランジスタ形成後にアニール処理を行い、トランジスタ特性の改善を行っても良い。
【0050】
TFT8を形成後、プラズマCVD法によってSiONからなる層間絶縁膜9を成膜しTFT8を被覆した。層間絶縁膜9の厚さは0.5~2umとした。その後フォトリソグラフィー法によってドレイン電極7上に直径10umのコンタクトホール17xを形成した(図4のS301)。
【0051】
次に、図3(b)に示すように、コンタクトホール17x形成後、撥水性感光性樹脂を塗布し、第2の隔壁11のパターンを有するフォトマスクを用いて露光し、テトラメチルアンモニウム水溶液を用いて現像し、焼成を行って第2の隔壁11を形成した(図4のS302)。なお、第2の隔壁11はX方向に伸びるライン状をしており、コンタクトホール17xが第2の隔壁11間に入るように、第2の隔壁11のパターンを有するフォトマスクのアライメントを行った。第2の隔壁11は幅が10~30umで、膜厚は1~3umとした。
【0052】
その後、サンプルをUVオゾン処理して、層間絶縁膜9表面を親水化、第2の隔壁11表面を撥液化した。
【0053】
次工程でのインクジェット法による画素電極13の印刷を考えると、層間絶縁膜9の親水性は純水に対しての接触角が30度以下、望ましくは20度以下が良く、第2の隔壁11の撥液性は純水に対しての接触角が50~130度以上、望ましくは60~110度にするのが良い。
【0054】
撥水性感光性樹脂としては、感光性アクリル樹脂、感光性ポリイミド樹脂、感光性エポキシ樹脂等の末端にフッ素基を導入するか、ポリシロキサン、ポリシラン、ポリシロキサン骨格等を導入した感光性樹脂を用いることができる。
【0055】
また、感光性アクリル樹脂、感光性ポリイミド樹脂、感光性エポキシ樹脂等を用いて第2の隔壁11を形成した後、O2プラズマ処理によって層間絶縁膜9、第2の隔壁11表面を全て親水化し、その後CF4プラズマ処理によって第2の隔壁11のみを選択的に撥液化しても良い。なお、O2プラズマ処理、CF4プラズマ処理は低圧、常圧のどちらの方式も採用できる。
【0056】
その後、図3(c)に示すように、インクジェット装置を用いて第2の隔壁11間に極性溶媒にナノAg粒子を分散したインクを印刷し、焼成して画素電極13を形成した(図4のS303)。画素電極13はコンタクトホール17x内にも充填されており、コンタクトホール17xを介してTFT8のドレイン電極7と接続されるようにした。画素電極13の膜厚は50~200nmとした。
【0057】
Y方向では第2の隔壁11表面が撥水性であるためナノAgインクの端面は第2の隔壁11で留まり、自己整合的に分離される。本実施の形態では第2の隔壁11の幅は10~30umである。一方、X方向では隔壁がないので、画素電極13間のスペースがインクジェット装置の最小分解スペースよりも大きくしなければならない。本実施の形態ではX方向の画素電極13間スペースを30~50umとした。
【0058】
本実施の形態のインクに用いられる極性溶媒としてはアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールエーテル等がある。また本実施の形態では極性溶媒にナノAgを分散させたインクを用いたが、極性溶媒に分散させる導電微粒子としてはナノAgの他にナノAu、ナノPd、ナノCu等の公知の導電微粒子が使用できる。
【0059】
画素電極13を形成後、図3(d)に示すように、撥水性感光性樹脂を再度塗布し、第1の隔壁10のパターンを有するフォトマスクを用いて露光し、テトラメチルアンモニウム水溶液を用いて現像し、焼成を行って第1の隔壁10を形成した(図4のS304)。第1の隔壁10はY方向に伸びるライン状をしており、コンタクトホール17xを被覆するように第1の隔壁10のパターンを有するフォトマスクのアライメントを行った。第1の隔壁10は幅が40~60umで、膜厚は1~3umとした。
【0060】
その後、サンプルを再度UVオゾン処理して、画素電極13の表面を親水化し、第1の隔壁10、第2の隔壁11の表面を撥液化した。次工程でのインクジェット法による有機発光層14の印刷を考えると、画素電極13の親水性は純水に対しての接触角が30度以下、望ましくは20度以下が良く、第1の隔壁10、2の隔壁の撥液性は純水に対しての接触角が50~130度以上、望ましくは60~110度にするのが良い。
【0061】
撥水性感光性樹脂としては第2の隔壁11と同様に、感光性アクリル樹脂、感光性ポリイミド樹脂、感光性エポキシ樹脂等の末端にフッ素基を導入するか、ポリシロキサン、ポリシラン、ポリシロキサン骨格等を導入した感光性樹脂を用いることができる。
【0062】
また、感光性アクリル樹脂、感光性ポリイミド樹脂、感光性エポキシ樹脂等を用いて第1の隔壁10を形成した後、O2プラズマ処理によって画素電極13、第1の隔壁10、第2の隔壁11の表面を全て親水化し、その後CF4プラズマ処理によって第1の隔壁10、第2の隔壁11のみを選択的に撥液化しても構わない。なお、O2プラズマ処理、CF4プラズマ処理は低圧、常圧のどちらの方式も採用できる。
【0063】
図3(e)に示すように、第1の隔壁10を形成した後、第1の隔壁10、第2の隔壁11で囲まれた開口12内にインクジェット装置を用いて有機発光層14を形成した(図4のS305)。有機発光層14は各々R、G、Bに発光する3種をX方向に各1列づつ塗り分ける形で形成した。有機発光層14としては一般的な高分子発光材料が使用でき、例えば、ポリチオフェン系、ポリパラフェニレン系、ポリパラフェニレンビニレン系、ポリフルオレン系、イリジウム錯体系等を極性溶媒に溶解してインク化し、インクジェット装置で印刷、乾燥、焼成することによって形成できる。本実施の形態では上記の図3(d)に示すUVオゾン処理によって第1の隔壁10、第2の隔壁11の表面が撥液性、画素電極13表面が親水性となっているため、極性溶媒で溶解した高分子型有機発光材料の端面は隔壁端で止まるため、インクジェット装置にヘッド曲がり、ヘッド蛇行、吐出バラツキがあっても高分子型有機発光材料は開口12内に印刷できる。なお、有機発光層14の膜厚はR、G、Bの発光効率を考慮して50~150nmで可変とした。
【0064】
その後、スパッタ法を用いてIn2O3・SnO2からなる透明導電膜を対向電極15として、有機発光層14および隔壁上の全面に成膜した(図4のS306)。対向電極15は共通電極なのでスパッタ時にシャドウマスクを用いてパターン化した。対向電極15の膜厚は50~200nmとした。
【0065】
なお、キャリアの注入効率を高めるため、画素電極13と有機発光層14の間には電子注入層を、有機発光層14と対向電極15の間には正孔注入層を形成することがより望ましい。
【0066】
電子注入層としてはシクロペンタジエン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ビススチリルベンゼン誘導体等の公知材料が、正孔注入層としてはPEDOT/PSS等が使用できる。電子注入層、正孔注入層も極性溶媒に溶解してインク化した溶液をインクジェット装置で印刷し、その後乾燥することで形成できる。
【0067】
最後にサンプル外周部に光硬化型エポキシ樹脂を塗布してキャップガラスを接着して封止し、TFT8上に有機EL素子16が積層された表示装置1を完成させた(図示せず)。
【0068】
本方法で製造した表示装置は1度の露光、現像で開口12を有する隔壁を形成する従来の表示装置と比較して、Y方向の画素電極13幅が大きいため高い開口率による発光領域の拡大が実現できた。
【0069】
また、本方法で製造した表示装置に駆動用ICが実装されたフレキシブルテープを異方性導電膜で実装し、画像評価テストを行った結果、コンタクトホール17xに起因する発光ムラは全く観察されず、R、G、Bとも面内で均一な発光が確認された。
【0070】
なお、本実施の形態では基板2としてガラス基板を用いたが、本発明の表示装置はトップエミッション型であるため透明性が必須ではなく、その他の種々の基板が採用できる。例えば、石英基板、セラミック基板、PES(ポリエーテルサルフォン)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のプラスチック基板、Si、GaAs等の半導体基板が使用でき、プロセス面を有機樹脂で被覆して絶縁化したSUSやAl等の薄膜金属も使用可能である。
【0071】
また、本実施の形態ではTFT8の活性層5としてとしてa-Siを用いたが、本発明の表示装置はこれに限定される必要はなく、ポリシリコン、有機半導体、IGZO等の酸化物半導体、半導体基板を用いた場合は基板自身を活性層5としても良い。
【0072】
また、本実施の形態ではボトムゲート型、トップコンタクト型の電界効果型トランジスタによるTFT8を採用したが、本発明は上記構造に限定される必要はなく、活性層5の種類によってはトップゲート型、トップコンタクト型等の公知の電界効果型トランジスタや接合型トランジスタ、静電誘導型トランジスタ等が採用できる。
【0073】
また、本実施の形態では有機発光層14の印刷に離散吐出が可能なインクジェット法を用いたが、開口12が撥液性のある第1の隔壁10、第2の隔壁11で囲まれているため、連続吐出となるディスペンサー法、ノズルプリンティング法を用いても第1の隔壁10、第2の隔壁11の上に吐出された高分子型有機発光材料は自己整合的に開口12内に入り込むため、上記装置も使用できる。なお、ノズルプリンティング法とは大日本スクリーン製造株式会社が実用化した微小ノズルを用いた有機EL材料塗布方式である。」
ウ 「【図1】
[図:0001388735000004.jpg]
【図2】
[図:0001388735000005.jpg]
」

(4)引用文献6の記載

当審拒絶理由で引用された、引用文献6(国際公開第2010/087238号)は、本件優先日前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された文献であるところ、そこには以下の記載がある。

ア 「発明の詳細な説明
技術分野
[0001] 本発明は、樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、半導体素子の表面保護膜や層間絶縁膜、有機エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence:以下ELと記す)素子の絶縁層、有機EL素子を用いた表示装置の駆動用薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下TFTと記す)基板の平坦化膜、回路基板の配線保護絶縁膜、固体撮像素子のオンチップマイクロレンズや各種ディスプレイ・固体撮像素子用平坦化膜、回路基板用ソルダーレジストなどの用途に適した樹脂組成物に関する。
背景技術
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[0002] ポリイミドやポリベンゾオキサゾールを含む組成物を硬化させて得られる硬化膜は、半導体素子や表示装置の絶縁膜や保護膜、平坦化膜などに広く使用されている。特に表示装置では、例えば有機ELディスプレイの絶縁層や液晶ディスプレイのブラックマトリクスなどの用途において、コントラストを向上させるために硬化膜の透過率を低くすることが求められる。また、表示装置の駆動用TFTへの光の進入による誤作動や、リーク電流などを防ぐために、有機ELディスプレイの絶縁層や有機ELディスプレイのTFT基板上に設けられる平坦化膜にも、透過率を低くすることが求められる。硬化膜において波長400nmより大きい可視光領域の透過率を低減させる技術としては、例えば、液晶ディスプレイ用ブラックマトリクス材料やRGBペースト材料などにみられるように、樹脂組成物にカーボンブラックや有機・無機顔料、染料などの着色剤を添加する方法が挙げられる。これら着色剤を含有する樹脂組成物は400~450nmの露光波長域に吸収があるため、光を膜底部にまで到達させて感光化するポジ型感光性樹脂組成物として用いることは困難であり、膜を表面から光硬化させるネガ型感光性樹脂組成物としての使用が一般的である。
[0003] ポジ型感光性樹脂組成物において硬化膜の透過率を低減させる技術としては、例えば、アルカリ可溶性樹脂、キノンジアジド化合物、およびロイコ色素と顕色剤などの発色組成物を含有するポジ型放射線性樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)、熱を加えると黒色になる感熱性材料が予め添加されている感光性樹脂(例えば、特許文献2参照)、アルカリ可溶性樹脂、キノンジアジド化合物、加熱により発色し350nm以上700nm以下に吸収極大を示す熱発色性化合物および350nm以上500nm未満に吸収極大をもたず500nm以上750nm以下に吸収極大を持つ化合物を含むポジ型感光性樹脂組成物(例えば、特許文献3参照)などがある。これらは、熱などのエネルギーにより発色する発色性化合物を用いることにより、硬化前の樹脂膜の露光波長域における透過率を高く保ちながら、硬化膜の透過率を低減させる技術である。そのため樹脂組成物にポジ型、ネガ型両方の感光性を付与することができ、汎用性が高い。
・・・中略・・・
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0005] 発色性化合物は、それ自体が熱により分子内構造変化を起こして、特定波長領域に吸収を発現するものである。最近では、さらに汎用性を高めるため、発色性化合物だけでなく、他の手段によって露光波長域に吸収を発現できる樹脂組成物が望まれている。そこで本発明は、特定の化合物の組み合わせにより、硬化前の樹脂膜の透過率を維持しながら、硬化膜の可視光領域における透過率を低減することができる樹脂組成物を提供することを目的とする。
・・・中略・・・
[0026] 本発明に用いられる(a)成分のうち、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体は、主鎖にアミド結合を有する樹脂であり、加熱処理や化学処理で脱水閉環することにより、前述のポリイミド、ポリベンゾオキサゾールとなる。繰り返し単位の繰り返し数は10~100000が好ましい。ポリイミド前駆体としては、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリアミド酸アミド、ポリイソイミドなどを挙げることができ、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステルが好ましい。ポリベンゾオキサゾール前駆体としては、ポリヒドロキシアミド、ポリアミノアミド、ポリアミド、ポリアミドイミドなどを挙げることができ、ポリヒドロキシアミドが好ましい。ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体は、アルカリ水溶液に対する溶解性の観点から、酸残基またはアミン残基にOR7、SO3R7、CONR7R8、COOR7、SO2NR7R8などの酸性基または酸性基誘導体を有することが好ましく、水酸基を有することがより好ましい。R7およびR8は水素原子または炭素数1~20の1価の有機基を示す。なお、酸性基とはR7またはR8が全て水素原子となる場合を指し、酸性基誘導体とはR7またはR8に炭素数1~20の1価の有機基が含まれる場合を指す。
・・・中略・・・
[0075] 本発明の樹脂組成物は、さらに(g)熱酸発生剤を含有してもよい。(g)熱酸発生剤は、後述する現像後加熱により酸を発生し、(a)成分の樹脂と(c)成分の熱架橋剤との架橋反応を促進するほか、(a)成分の樹脂のイミド環、オキサゾール環の環化を促進する。このため、硬化膜の耐薬品性が向上し、膜減りを低減することができる。(g)熱酸発生剤から発生する酸は強酸が好ましく、例えば、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などのアリールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸などが好ましい。本発明において、熱酸発生剤は一般式(4)または(5)で表される脂肪族スルホン酸化合物が好ましく、これらを2種以上含有してもよい。」
イ 「[0104] また、本発明の樹脂組成物を硬化させて得られる硬化膜は、TFTが形成された基板、平坦化膜、絶縁層および表示素子をこの順に有する表示装置の平坦化膜や絶縁層として、好適に用いられる。かかる構成の表示装置としては、液晶表示装置や有機EL表示装置などが挙げられる。アクティブマトリックス型の表示装置は、ガラスなどの基板上にTFTとTFTの側方部に位置しTFTと接続された配線とを有し、その上に凹凸を覆うようにして平坦化膜を有し、さらに平坦化膜上に表示素子が設けられている。表示素子と配線とは、平坦化膜に形成されたコンタクトホールを介して接続される。図1に平坦化膜と絶縁層を形成したTFT基板の断面図を示す。基板6上に、ボトムゲート型またはトップゲート型のTFT1が行列状に設けられており、このTFT1を覆う状態で絶縁膜3が形成されている。また、この絶縁膜3の下にTFT1に接続された配線2が設けられている。さらに絶縁膜3上には、配線2を開口するコンタクトホール7とこれらを埋め込む状態で平坦化膜4が設けられている。平坦化膜4には、配線2のコンタクトホール7に達するように開口部が設けられている。そして、このコンタクトホール7を介して、配線2に接続された状態で、平坦化膜4上にITO(透明電極)5が形成されている。ここで、ITO5は、表示素子(例えば有機EL素子)の電極となる。そしてITO5の周縁を覆うように絶縁層8が形成される。この有機EL素子は、基板6の反対側から発光光を放出するトップエミッション型でもよいし、基板6側から光を取り出すボトムエミッション型でもよい。このようにして、各有機EL素子にこれを駆動するためのTFT1を接続したアクティブマトリックス型の有機EL表示装置が得られる。
[0105] また、本発明の樹脂組成物を硬化させて得られる硬化膜は、TFTが形成された基板、絶縁層および表示素子をこの順に有する表示装置の絶縁層として、好適に用いられる。かかる構成の表示装置としては、有機EL表示装置などが挙げられる。アクティブマトリックス型の表示装置は、ガラスなどの基板上にTFTとTFTの側方部に位置しTFTと接続された配線とを有する。表示素子と配線とは、絶縁膜に形成されたコンタクトホールを介して接続される。図2に絶縁層を形成したTFT基板の断面図を示す。基板6上に、ボトムゲート型またはトップゲート型のTFT1が行列状に設けられており、このTFT1を覆う状態で絶縁膜3が形成されている。また、この絶縁膜3の下にTFT1に接続された配線2が設けられている。さらに絶縁膜3上には、配線2を開口するようにコンタクトホール7が設けられている。そして、このコンタクトホール7を介して、配線2に接続された状態で、ITO(透明電極)5が形成されている。ここで、ITO5は、表示素子(例えば有機EL素子)の電極となる。そしてITO5の周縁とTFTおよび配線の段差を覆うように絶縁層8が形成される。この有機EL素子は、基板6の反対側から発光光を放出するトップエミッション型でもよいし、基板6側から光を取り出すボトムエミッション型でもよい。このようにして、各有機EL素子にこれを駆動するためのTFT1を接続したアクティブマトリックス型の有機EL表示装置が得られる。」
ウ 「実施例
[0108] 以下実施例等をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、実施例中の樹脂組成物の評価は以下の方法により行った。
[0109] (1)透過率の評価
5センチ角ガラス基板上に樹脂組成物(以下ワニスという)をスピンコートし、120℃で2分間熱処理(プリベーク)して、膜厚3.0μmのプリベーク膜を作製した。また、ワニスを硬化後膜厚が3.0μmとなるようにスピンコートし、光洋サーモシステム(株)製イナートオーブンINH-21CDを用いて、窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)230℃で30分間熱処理して硬化膜を作製した。なお、プリベーク膜および硬化膜の膜厚は、サーフコム1400D(東京精密(株)製)を用いて測定した。このようにして得られたプリベーク膜と硬化膜について、紫外可視分光光度計MultiSpec-1500(島津製作所(株)製)を用いて、波長300nm~700nmの透過スペクトルを測定し、波長450nmの透過率を測定した。硬化前(=プリベーク膜)および硬化後(=硬化膜)の透過率から、下記の式により透過率変化量を求めた。
続きを表示(全31行)
透過率変化量(%)=硬化前透過率(%)-硬化後透過率(%)
透過率変化量が20%以上であれば良好、30%以上であれば極めて良好と判断できる。
[0110] (2)感度の評価
実施例4~11および比較例5~6で作製したワニスを6インチシリコンウエハ上に回転塗布し、次いで、ホットプレート(Mark-7)で3分間熱処理し、厚さ4.0μmのプリベーク膜を作製した。プリベーク温度は、実施例4~9および比較例5~6は120℃、実施例10~11は100℃とした。得られたプリベーク膜を、i線ステッパー(GCA製DSW-8000)を用いて0~500mJ/cm2の露光量にて25mJ/cm2ステップで露光した。露光に用いたライン&スペースパターンは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、100μmである。実施例10~11は露光後、100℃で1分加熱した。実施例4~9は露光後、実施例10~11は露光後加熱の後、2.38重量%のテトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液(三菱ガス化学(株)製、ELM-D)で60秒間現像し、ついで純水でリンスし、現像後の膜を得た。ポジ型のワニスの場合は、露光部分が現像で完全に溶出してなくなった露光量を感度とした。ネガ型のワニスの場合は、現像後の膜の膜厚を測定し、プリベーク膜の膜厚の90%が現像後に残る露光量を感度とした。なお、プリベーク後および現像後の膜厚は、大日本スクリーン製造(株)製ラムダエースSTM-602を使用し、屈折率1.63で測定した。
[0111] (3)耐薬品性の評価
(i)実施例1~3および比較例1~4で作製したワニスを6インチシリコンウエハ上に回転塗布し、ホットプレートで3分間熱処理して厚さ4.0μmのプリベーク膜を作製した。また、実施例4~11および比較例5~6で作製したワニスは上記(2)記載の方法で現像後の膜を作製した。得られたプリベーク膜および現像後の膜を、光洋サーモシステム(株)製イナートオーブンINH-21CDを用いて、窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)230℃で30分間熱処理して硬化膜を作製した。
[0112] 得られた硬化膜を、東京応化工業(株)製剥離液106に70℃で10分間浸漬した。
剥離液処理前後の硬化膜の膜厚を、大日本スクリーン製造(株)製ラムダエースSTM-602を使用し、屈折率1.64で測定し、膜減り量を求めた。膜減り量は0.25μm以下が好ましく、より好ましくは、0.15μm以下、さらに好ましくは0.10μm以下である。
[0113] (ii)実施例4~11および比較例5~6で作製したワニスを用いて、上記(i)記載の方法で硬化膜を作製した。得られた硬化膜を、東京応化工業(株)製剥離液106に70℃で10分間浸漬した。剥離液処理後の硬化膜を20倍の光学顕微鏡で観察し、パターン剥がれの有無を評価した。パターン剥がれのない最小パターンを残存パターンとした。より微細なパターンほど剥がれやすいため、残存パターンが20μm以下であれば良好、5μm以下であれば極めて良好と判断できる。
[0114] 合成例1 ヒドロキシル基含有ジアミン化合物の合成
2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(セントラル硝子(株)製、BAHF)18.3g(0.05モル)をアセトン100mL、プロピレンオキシド(東京化成(株)製)17.4g(0.3モル)に溶解させ、-15℃に冷却した。ここに3-ニトロベンゾイルクロリド(東京化成(株)製)20.4g(0.11モル)をアセトン100mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、-15℃で4時間撹拌し、その後室温に戻した。析出した白色固体をろ別し、50℃で真空乾燥した。
[0115] 得られた白色固体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセルソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム-炭素(和光純薬工業(株)製)を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行った。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、濾過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、下記式で表されるヒドロキシル基含有ジアミン化合物を得た。
[0116]
[図:0001388735000006.jpg]
・・・中略・・・
[0131] 実施例1
乾燥窒素気流下、BAHF32.9g(0.09モル)をN-メチルピロリドン(NMP)500gに溶解させた。ここに3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(マナック(株)製、ODPA)31.0g(0.1モル)をNMP50gとともに加えて、30℃で2時間撹拌した。その後、3-アミノフェノール(東京化成(株)製)2.18g(0.02モル)を加え、40℃で2時間撹拌を続けた。さらにピリジン(東京化成(株)製)5gをトルエン(東京化成(株)製30g)に希釈して、溶液に加え、冷却管を付け系外に水をトルエンとともに共沸で除去しながら溶液の温度を120℃にして2時間、さらに180℃で2時間反応させた。この溶液の温度を室温まで低下させ、水3Lに溶液を投入し、白色の粉体を得た。この粉体をろ過で集め、さらに水で3回洗浄を行った。洗浄後、白色粉体を50℃の真空乾燥機で72時間乾燥させ、ポリイミドを得た。
[0132] このポリイミド10gに1,5-ジヒドロキシナフタレン(東京化成(株)製)4g、合成例3で得られたアルコキシメチル基含有化合物(A-1)5gとガンマブチロラクトン(三菱化学(株)製、GBL)40gを加えてポリイミド樹脂組成物のワニスを得た。このワニスを用いて得られた硬化前後の膜の450nmにおける透過率は、硬化前は95%、硬化後は61%であった。これより透過率変化量は34%であった。また、硬化膜の耐薬品性を評価したところ、膜減り量は0.10μm以下と非常に良好であった。
・・・中略・・・
[0138] 実施例3
ポリアミド酸の代わりに実施例1で得られたポリイミド粉体10gを加えた以外は実施例2と同様にしてポリイミド樹脂組成物のワニスを作製し、評価を行ったところ、硬化前後の膜の450nmにおける透過率は、硬化前は95%、硬化後は45%であった。これより透過率変化量は50%であった。また、硬化膜の耐薬品性を評価したところ、膜減り量は0.1μm以下と非常に良好であった。
・・・中略・・・
[0141] 実施例4
実施例1のワニスにさらに合成例2で得られたキノンジアジド化合物4gを溶解させてポジ型感光性ポリイミド樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて前記のように、硬化前後の膜の透過率評価、耐薬品性評価および感度評価を行った。450nmにおける透過率は、硬化前は95%、硬化後は60%であった。これより透過率変化量は35%であった。感度は150mJ/cm2であった。膜減り量は0.10μm以下であった。また10μm以上のパターンが残存していた。
・・・中略・・・
[0151] 実施例11
実施例1で得たポリイミド10gに、1,7-ジヒドロキシナフタレン5g、合成例5で得られたアルコキシメチル基含有化合物(A-3)4g、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学工業(株)製、NKエステルBPE-100)2g、トリメチロールプロパントリアクリレート0.5g、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.1g、EL20gとGBL20gを加えてネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて前記のように、硬化前後の膜の透過率評価、耐薬品性評価および感度評価を行った。450nmにおける透過率は、硬化前は94%、硬化後は66%であった。これより透過率変化量は28%であった。膜減り量は0.1μm、感度は200mJ/cm2であった。また10μm以上のパターンが残存していた。」
エ 「[0156] 実施例12
ガラス基板上にボトムゲート型のTFTを形成し、TFTに接続される配線(高さ1.0μm)を形成した。このTFTと配線を覆う状態でSi3N4からなる絶縁膜を形成した。次に、この絶縁膜にコンタクトホールを形成した。
[0157] さらに、TFTおよび配線の凹凸を平坦化するために、絶縁膜上へ平坦化膜を形成した。絶縁膜上への平坦化膜の形成は、実施例5で得られた感光性ポリイミド前駆体組成物のワニスを基板上にスピン塗布し、ホットプレート上で120℃で3分間プリベークした後、露光、現像し、空気フロー下において250℃で60分間加熱焼成処理することにより行った。ワニスを塗布する際の塗布性は良好で、露光、現像、焼成の後に得られた硬化膜にはしわやクラックの発生は認められなかった。また、配線の平均段差は500nm、作製した平坦化膜の膜厚は2000nmであった。
[0158] 次に、得られた平坦化膜上に、トップエミッション型の有機EL素子を形成した。まず、平坦化膜上に、ITOからなる下部電極を、コンタクトホールを介して配線に接続させてスパッタリングにより形成した。その後、レジストを塗布、プリベークし、所望のパターンのマスクを介して露光し、現像した。このレジストパターンをマスクとして、ITOエッチャントを用いたウエットエッチングによりパターン加工を行った。その後、レジスト剥離液(モノエタノールアミンとDMSOの混合液)を用いて該レジストパターンを剥離した。こうして得られた下部電極は、有機EL素子の陽極に相当する。
[0159] 次に、下部電極の周縁を覆う形状の絶縁層を形成した。絶縁層には、同じく実施例5で得られた感光性ポリイミド前駆体組成物のワニスを用いた。この絶縁層を設けることによって、下部電極とこの後の工程で形成する上部電極との間のショートを防止することができる。絶縁層をパターニングし、250℃で60分間の加熱処理を行い、波長450nm付近に適度な吸収を有する絶縁層を形成した。
[0160] さらに、真空蒸着装置内で所望のパターンマスクを介して、正孔輸送層、赤色、緑色、青色の有機発光層、電子輸送層を順次蒸着して設けた。次いで、基板上方の全面にAlから成る上部電極を形成した。これは有機EL素子の陰極に相当する。得られた上記基板を蒸着機から取り出し、封止用ガラス基板と紫外線硬化型エポキシ樹脂を用いて貼り合わせることで封止した。
[0161] 以上の様にして、各有機EL素子にこれを駆動するためのTFTが接続してなるアクティブマトリックス型の有機EL表示装置が得られた。駆動回路を介して電圧を引加したところ、良好な発光を示した。」
オ 「[請求項5]薄膜トランジスタが形成された基板、請求項1~4のいずれか記載の樹脂組成物を硬化させて得られる平坦化膜および/または絶縁層、および表示素子をこの順に有する表示装置。
[請求項6]前記表示素子が有機エレクトロルミネッセンス素子である請求項5記載の表示装置。」

(5)引用文献7の記載

当審拒絶理由で引用された、引用文献7(特開2007-16214号公報)は、本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには以下の記載がある。

ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、有機エレクトロルミネッセンス素子の絶縁層や薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下TFTと記す)基板の平坦化膜、回路基板の配線保護絶縁膜、固体撮像素子のオンチップマイクロレンズや各種ディスプレイ・固体撮像素子用平坦化膜、回路基板用のソルダーレジストなどの用途に適した樹脂組成物に関する。
・・・中略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低温硬化を行っても優れた耐薬品性を示す樹脂組成物を提供することを目的とする。」
イ 「【0021】
本発明に用いられる(a)成分のうち、一般式(1)で表される構造単位を有する樹脂は、主鎖にアミド結合を有したものであり、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリベンゾオキサゾール前駆体となり得るポリヒドロキシアミド、ポリアミノアミド、ポリアミド、ポリアミドイミドなどを挙げることができるが、これら以外でも一般式(1)の構造単位を有するものであれば良い。これらの中でも、アルカリ現像性の観点から、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリヒドロキシアミドなどが好ましく用いられる。より好ましく用いられるものはポリアミド酸およびポリアミド酸エステルである。これらの樹脂は250℃以下での低温焼成においてもイミド環が十分に形成されるため、低温焼成における耐薬品性がより向上する。
・・・中略・・・
【0117】
基板6上に、ボトムゲート型またはトップゲート型のTFT1が行列状に設けられており、このTFT1を覆うように絶縁膜3が形成されている。また、この絶縁膜3上に、TFT1に接続された配線2が設けられている。さらに絶縁膜3上には、配線2を埋め込むように平坦化膜4が設けられている。平坦化膜4には、配線2に達するコンタクトホール7が設けられている。そして、このコンタクトホール7を介して配線2に接続された状態で、平坦化膜4上に表示素子(例えば有機EL素子)が設けられている。有機EL表示素子は、配線2に接続させるように第一電極5を形成し、さらに絶縁層8をコンタクトホール7および第一電極端面を覆うように形成し、次に第一電極開口部上に正孔輸送層、発光層および第二電極を順次形成して作製する。この有機EL素子は、基板6と反対側から発光を放出するトップエミッション型でも良いし、基板6側から光を取り出すボトムエミッション型であっても良い。このようにして、各有機EL素子にこれを駆動するためのTFT1を接続したアクティブマトリックス型の有機EL表示装置が得られる。」
ウ 「【実施例】
【0119】
以下実施例等をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、実施例中のキュア膜の作製および評価は以下の方法により行った。
【0120】
続きを表示(全13行)
樹脂膜の作製 6インチシリコンウエハ上に、樹脂組成物(以下ワニスと呼ぶ)をプリベーク後の膜厚が5μmとなるように塗布し、ついでホットプレート(東京エレクトロン(株)製の塗布現像装置Mark-7)を用いて、120℃で2分プリベークすることにより、樹脂膜を得た。
・・・中略・・・
【0129】
合成例1 ヒドロキシル基含有ジアミン化合物の合成 2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(セントラル硝子(株)製、BAHF)18.3g(0.05モル)をアセトン100mL、プロピレンオキシド(東京化成(株))17.4g(0.3モル)に溶解させ、-15℃に冷却した。ここに3-ニトロベンゾイルクロリド(東京化成(株)製)20.4g(0.11モル)をアセトン100mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、-15℃で4時間攪拌し、その後室温に戻した。析出した白色固体をろ別し、50℃で真空乾燥した。
【0130】
得られた白色固体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセルソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム-炭素(和光純薬(株)製)を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行った。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、濾過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、下記式で表されるヒドロキシル基含有ジアミン化合物を得た。
【0131】
[図:0001388735000007.jpg]
」
エ 「【0147】
実施例1
乾燥窒素気流下、BAHF32.9g(0.09モル)をNMP500gに溶解させた。ここに3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物31.0g(0.1モル、マナック(株)製、ODPA)をNMP50gとともに加えて、30℃で2時間攪拌した。その後、3-アミノフェノール2.18g(0.02モル、東京化成(株)製)を加え、40℃で2時間攪拌を続けた。さらにピリジン5g(東京化成(株)製)をトルエン30g(東京化成(株)製)に希釈して、溶液に加え、冷却管を付け系外に水をトルエンとともに共沸で除去しながら溶液の温度を120℃にして2時間、さらに180℃で2時間反応させた。この溶液の温度が室温にまで低下したら、水3Lに溶液を投入し、白色の粉体を得た。この粉体をろ過で集め、さらに水で3回洗浄を行った。洗浄後、白色粉体を50℃の真空乾燥機で72時間乾燥させた。こうしてポリイミドポリマー粉体を得た。
【0148】
続きを表示(全20行)
この粉体10gに熱架橋剤HMOM-TPHAP40g(20%の乳酸エチル溶液として、本州化学工業(株)製、架橋剤量8g)、乳酸エチル20g(武蔵野化学研究所(株)製、EL)とガンマブチロラクトン20g(三菱化学(株)製、GBL)を加えて均一な溶液を得た。この溶液を用いたキュア膜の耐薬品性を評価したところ、膜減り量は0.1μm以下と非常に良好であった。
・・・中略・・・
【0165】
実施例8
実施例1で得たポリマー10gに、熱架橋剤HMOM-TPHAP20g(20%の乳酸エチル溶液として、本州化学工業(株)製、架橋剤量4g)、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート2g(新中村化学工業(株)製、NKエステルBPE-100)、トリメチロールプロパントリアクリレート0.5g、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(o-ベンゾイルオキシム)0.1gをEL20gとGBL20gに溶解させた。
【0166】
このキュア膜の耐薬品性を評価したところ、膜減り量は0.3μmであった。シワの発生の有無を観察したが、シワ発生は見られなかった。感度は150mJ/cm2であった。
【0167】
実施例9
実施例1で得られたポリマー10gに、熱架橋剤HMOM-TPHAP20g(20%の乳酸エチル溶液として、本州化学工業(株)製、架橋剤量4g)、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート2g(新中村化学工業(株)製、NKエステルBPE-100)、トリメチロールプロパントリアクリレート0.5g、ビス(ジエチルアミノフェニル)ケトン0.1g(保土谷化学(株)製)、酸化ケイ素-酸化チタン複合粒子であるTR-513(商品名、γ-ブチロラクトン分散液、数平均粒子径15nm、粒子含有量30重量%、触媒化成工業(株)製)30gと乳酸エチル20gを加えて均一な溶液を得た。この溶液を用いたキュア膜の耐薬品性を評価したところ、膜減り量は0.1μmであった。シワの発生の有無を観察したが、シワ発生は見られなかった。感度は200mJ/cm2であった。屈折率は1.72であり、透過率は96%であった。
【0168】
実施例10
実施例1で得たポリマー10gに、熱架橋剤HMOM-TPHAP10g(20%の乳酸エチル溶液として、本州化学工業(株)製、架橋剤量2g)、合成例2のキノンジアジド化合物2.5gを乳酸エチル20gとガンマブチロラクトン20gを加えて均一な溶液を得た。この溶液を用いたキュア膜の耐薬品性を評価したところ、膜減り量は0.35μmであった。シワの発生の有無を観察したが、シワ発生は見られなかった。感度は300mJ/cm2であった。
【0169】
実施例11
実施例1で得たポリマー10gに、熱架橋剤HMOM-TPHAP10g(20%の乳酸エチル溶液として、本州化学工業(株)製、架橋剤量2g)、合成例2のキノンジアジド化合物2.5g、酸化ケイ素-酸化チタン複合粒子であるTR-520(商品名、γ-ブチロラクトン分散液、数平均粒子径15nm、粒子含有量30重量%、触媒化成工業(株)製)30gと乳酸エチル20gを加えて均一な溶液を得た。この溶液を用いたキュア膜の耐薬品性を評価したところ、膜減り量は0.1μmであった。シワの発生の有無を観察したが、シワ発生は見られなかった。感度は350mJ/cm2であった。屈折率は1.76であり、透過率は94%であった。」

2 引用文献1を主引用例とした場合

(1)引用発明1

引用文献1の【0024】~【0063】及び【図1】(A)~(C)には、「照明装置100」が記載されており、当該「照明装置100」の「発光層110」は、「第1の電極104」と「第2の電極112」の中間に配置されている。また、同文献【0044】には、「隔壁108」が、「第1の電極104」、及び「接続電極106」の端部を覆っており、当該端部の段差によって、発光層110を分断し、「第1の電極104と、第2の電極112と、が短絡することを抑制するために設けられる」ことが記載されている。

そして、同文献には、実質的に上記「照明装置100」の製造方法が記載されており、当該「照明装置100」の製造において、「基板102」を設けるステップと、「基板102」上に「第1の電極104」を配置するステップと、「隔壁108」を設けるステップと、「発光層110」を設けるステップと、「第2の電極112」を設けるステップとを有することは自明である。

さらに、同文献【図1】(B)~(C)の記載より、「隔壁108」が、第1の電極104の端部にのみ位置しており、且つ、同図(A)より、全周に位置していることが把握でき、さらに、同文献【0045】の記載から「隔壁108」が堆積されることが把握できるから、「隔壁108」は、「第1の電極104」上にパターンとして堆積され、「第1の電極104」のエッジをカバーし、「隔壁108」の側面は「第2の電極112」によってカバーされているものといえる。

引用文献1の上記記載より把握される照明装置の製造方法の発明を引用発明1とする。

「基板102と、基板102上に形成された凹凸領域120と、基板102上に形成された第1の電極104と、基板102、凹凸領域120、及び第1の電極104上に形成された接続電極106と、第1の電極104及び接続電極106を覆う隔壁108と、第1の電極104、及び隔壁108上に形成された発光層110と、隔壁108、発光層110、及び接続電極106上に形成された第2の電極112と、基板102と対向して設けられた封止基板118と、基板102と封止基板118を封止するシール材116と、を有する照明装置100の製造方法であって、
発光層110が第1の電極104と第2の電極112の中間に配置され、発光層110としては、少なくとも発光性の有機化合物を含む層を有しており、
隔壁108は、第1の電極104と、第2の電極112と、が短絡することを抑制するために設けられるものであり、
隔壁108は、第1の電極104上にパターンとして堆積され、第1の電極104のエッジをカバーし、隔壁108の側面は第2の電極112によってカバーされており、
基板102を設けるステップ、基板102上に第1の電極104を配置するステップと、隔壁108を設けるステップと、発光層110を設けるステップと、第2の電極112を設けるステップとを有する、
照明装置100の製造方法。」

(2)対比

ア 基板層、第1電極層、活性層、第2電極層

引用発明1の「基板102」、「第1の電極104」、「発光層110」及び「第2の電極112」は、その構成からみて、それぞれ、本願発明の「基板層」、「第1電極層」、「活性層」及び「第2電極層」に相当する。

イ 誘電体層

引用発明1の「隔壁108」は、「第1の電極104と、第2の電極112と、が短絡することを抑制するために設けられるものであ」るから、誘電体層であるといえる(当合議体注:このことは、引用文献1の【0045】の記載からも理解できる。)。

よって、引用発明1の「隔壁108」は、本願発明の「誘電体層」に相当する。

ウ 基板層を設けるステップ、前記基板層上に第1電極層を配置するステップ、誘電体層を設けるステップ、活性層を設けるステップ、第2電極層を設けるステップ

上記ア~イに記載される構成より、引用発明1の「基板102を設けるステップ」、「基板102上に第1の電極104を配置するステップ」、「隔壁108を設けるステップ」、「発光層110を設けるステップ」及び「第2の電極112を設けるステップ」は、それぞれ、本願発明の「基板層を設けるステップ」、「前記基板層上に第1電極層を配置するステップ」、「誘電体層を設けるステップ」、「活性層を設けるステップ」及び「第2電極層を設けるステップ」に相当する。

エ 有機発光ダイオード、有機発光ダイオードを製造するための製造方法

引用発明1の「照明装置100」は、その「発光層110」が「少なくとも発光性の有機化合物を含む層を有」していること及び上記ア~イの構成からみて、引用発明1の「照明装置100」は、本願発明の「有機発光ダイオード」に相当する。

また、引用発明1の「照明装置100」は、本願発明の「前記活性層が前記第1電極層と前記第2電極層の中間に配置され、前記誘電体層が前記第1電極層と前記第2電極層の間に電気分離をもたらし、前記誘電体層は前記第1電極層上にパターンとして堆積され、前記第1電極層と前記第2電極層の少なくとも一方の少なくとも一つのエッジをカバーし、前記誘電体層の少なくとも一つの側面は前記第2電極層によってカバーされ」るという要件を満たす。

さらに、上記ウより、引用発明1の「照明装置100の製造方法」は、本願発明の「有機発光ダイオードを製造するための製造方法」に相当し、本願発明の「基板層を設けるステップと、前記基板層上に第1電極層を配置するステップと、誘電体層を設けるステップと、活性層を設けるステップと、第2電極層を設けるステップとを有」するという要件を満たす。

(3)一致点及び相違点

ア 一致点

上記(2)によれば、本願発明と引用発明1は、次の点で一致する。

「有機発光ダイオードを製造するための製造方法であって、
基板層を設けるステップと、
前記基板層上に第1電極層を配置するステップと、
誘電体層を設けるステップと、
活性層を設けるステップと、
第2電極層を設けるステップと
を有し、
前記活性層が前記第1電極層と前記第2電極層の中間に配置され、
前記誘電体層が前記第1電極層と前記第2電極層の間に電気分離をもたらし、前記誘電体層は前記第1電極層上にパターンとして堆積され、前記第1電極層と前記第2電極層の少なくとも一方の少なくとも一つのエッジをカバーし、前記誘電体層の少なくとも一つの側面は前記第2電極層によってカバーされる、製造方法。」

イ 相違点

上記(2)によれば、本願発明と引用発明1は、次の点で相違する。

(相違点1)

「誘電体層」が、本願発明では、「硬化プロセス中に製造される副産物の量が著しく少ない又は副産物を製造しないように構成され」、「誘電体層に含まれる誘電体が疎水性であり」、「溶媒としてのガンマブチロラクトン中に分散された半重合ポリイミドを蒸発させることによって、製造され」るのに対して、引用発明1では、そのように特定されていない点。

(4)判断

本願発明における「半重合」という用語の意味について検討する。本件出願の明細書の記載を参照すると、本願発明は「ポリイミド」及び「ガンマブチロラクトン」を用いて製造されるものであることから、同明細書【0039】に記載される2つの材料クラスの内、「材料クラス2:溶媒に分散した重合材料を有する誘電体150(例えばガンマブチロラクトン中のポリイミド)」に対応するものと認められる。当該「材料クラス2」は、「機能的誘電体150は既に重合しているので、これはポストサーマルベーキング(溶媒を蒸発させるため)中に揮発性副産物を生じないか、又は著しく少ない揮発性副産物を生じる。」という特性を有するものであり、本願発明は、「既に重合」した状態の「ポリイミド」を用いることで「揮発性副産物を生じないか、又は著しく少ない揮発性副産物を生じる」ものであると理解できる。よって、本願発明における「半重合」は、「既に重合」したポリイミドを含んでいるという意味で解釈する(以下「解釈1」という。)。

引用文献6(実施例1、3、4、11)には、有機エレクトロルミネッセンス素子の絶縁層に用いられる樹脂組成物として、粉体状のポリイミド及び溶媒としてのガンマブチロラクトンから得られるポリイミド樹脂組成物のワニスが開示されており(当合議体注:粉体状のポリイミドが「既に重合」した状態のポリイミドであることは明らかである。)、耐薬品性を向上させ、膜減りを低減できるものとなっている([0075])。

また、引用文献7においても同様に、有機エレクトロルミネッセンス素子の絶縁層に用いられる樹脂組成物として、粉体状のポリイミドとガンマブチロラクトンから得られたポリイミド樹脂組成物のワニスが開示されており(実施例1、8~11)、低温硬化を行っても優れた耐薬品性を示すものとなっている(【0005】)。

そして、引用発明1において、コントラストや耐薬品性の向上という当業者の自明の課題の下、引用文献6又は引用文献7に記載の事項を採用して、「誘電体層」を、粉体状のポリイミドに溶媒としてガンマブチロラクトンを加えたポリイミド樹脂組成物を用いて形成することは、当業者であれば容易に想到し得たことである(当合議体注:引用文献6又は引用文献7に記載される技術が、溶媒を「蒸発させること」により誘電体層を製造するものである点は当業者であれば自明である。)。

また、「誘電体層」は、「既に重合」したポリイミドを用いて形成されていることから、「硬化プロセス中に製造される副産物の量が著しく少ない又は副産物を製造しないように構成され」たものといえる。なお、ポリイミドは通常疎水性であると認められ、仮にそうでないとしても疎水性のポリイミドから誘電体層を形成することは当業者が適宜なし得たことである。

したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献6又は引用文献7に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

また、本願発明における「半重合」という用語がポリイミドのプレポリマー(prepolymerized)を用いて層を形成することを意味すると解釈した場合について検討する(このような解釈を、以下「解釈2」という。)。

ポリイミドのプレポリマーから樹脂層を形成することは、引用文献6の[0026]、引用文献7の【0021】(当合議体注:引用文献6~7に記載されるポリイミド前駆体である「ポリアミド酸」がポリイミドのプレポリマーであることは技術常識である。)の他、例えば、特許第5224205号公報の【0029】、【0145】、特開2004-231791号公報の【0058】、【0067】等に記載されているように本件優先日前に周知の技術である。

そして、引用発明1において、上記周知技術を採用し、プレポリマーからからポリイミドからなる層を形成することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。また、溶媒としてガンマブチロラクトンを用いることも特許第5224205号及び特開2004-231791号公報の上記摘記箇所に記載されているし、また、プレポリマーを用いた場合に、「硬化プロセス中に製造される副産物の量が著しく少ない又は副産物を製造しない」ものとなることもの公知の効果である(特許第5224205号公報の【0029】参照。)。

したがって、本願発明における「半重合」という用語を「プレポリマー」を用いることを意味すると解釈した場合においても、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献6又は引用文献7に記載の事項等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 引用文献2を主引用例とした場合

(1)引用発明2

引用文献2の【0020】~【0040】、【0076】~【0077】、【図4】及び図4のX1-X1断面図である【図5】の記載から、「有機EL装置」が、「素子基板7」側から順に、「第1層間絶縁膜301」、「第2層間絶縁膜302」、「ピクセル電極13」、「隔壁層340」、「発光機能層18」、「対向電極5」が配置された構成であることが見て取れる。

また、同文献【0027】には、「隔壁層340」が「絶縁性の透明樹脂材料」からなるものであることが記載されている。

さらに、同文献【0042】、【図4】~【図5】の記載から、「隔壁層340」が、「配列パターン」として堆積されており、「ピクセル電極13」のエッジをカバーし、「隔壁層340」の側面は「対向電極5」によってカバーされていることが把握できる。

そして、同文献には、実質的に上記「有機EL装置」の製造方法が記載されているといえ、当該「有機EL装置」の製造方法が、「素子基板7」を設けるステップ、「素子基板7」上に「ピクセル電極13」を配置するステップと、「隔壁層340」を設けるステップと、「発光層110」を設けるステップと、「対向電極5」を設けるステップとを有することは自明である。

引用文献2の上記記載より把握される「有機EL装置」の製造方法の発明を引用発明2とする。

「素子基板7側から順に、第1層間絶縁膜301、第2層間絶縁膜302、ピクセル電極13、隔壁層340、発光機能層18、対向電極5が配置された有機EL装置の製造方法であって、
素子基板7を設けるステップ、ピクセル電極13を配置するステップと、隔壁層340を設けるステップと、発光機能層18を設けるステップと、対向電極5を設けるステップとを有し、
発光機能層18がピクセル電極13と対向電極5の間に中間に配置され、
隔壁層340は、絶縁性の透明樹脂材料からなり、
発光機能層18は、配列パターンとして堆積されており、ピクセル電極13のエッジをカバーし、隔壁層340の側面は対向電極5によってカバーされている、
有機EL装置の製造方法。」

(2)対比

ア 基板層、第1電極層、活性層、第2電極層

引用発明2の「素子基板7」、「ピクセル電極13」、「発光機能層18」及び「対向電極5」は、その構成からみて、それぞれ、本願発明の「基板層」、「第1電極層」、「活性層」及び「第2電極層」に相当する。

イ 誘電体層

引用発明2の「隔壁層340」は、「絶縁性の透明樹脂材料からな」るものであり、技術常識に鑑みると、「ピクセル電極13」と「対向電極5」の間に電気分離をもたらす誘電体の層であることが理解できる。

以上より、引用発明2の「隔壁層340」は、本願発明の「誘電体層」に相当する。

ウ 基板層を設けるステップ、第1電極層を配置するステップ、誘電体層を設けるステップ、活性層を設けるステップ、第2電極層を設けるステップ

上記ア~イに記載される構成より、引用発明2の「素子基板7を設けるステップ」、「ピクセル電極13を配置するステップ」、「隔壁層340を設けるステップ」と、「発光機能層18を設けるステップ」と、「対向電極5を設けるステップ」は、それぞれ、本願発明の「基板層を設けるステップ」、「第1電極層を配置するステップ」、「誘電体層を設けるステップ」、「活性層を設けるステップ」及び「第2電極層を設けるステップ」に相当する。

エ 有機発光ダイオード、有機発光ダイオードを製造するための製造方法

上記ア~イの構成からみて、引用発明2の「有機EL装置」は、本願発明の「有機発光ダイオード」に相当する。

また、引用発明2の「有機EL装置は」、本願発明の「前記活性層が前記第1電極層と前記第2電極層の中間に配置され、前記誘電体層が前記第1電極層と前記第2電極層の間に電気分離をもたらし、前記誘電体層は前記第1電極層上にパターンとして堆積され、前記第1電極層と前記第2電極層の少なくとも一方の少なくとも一つのエッジをカバーし、前記誘電体層の少なくとも一つの側面は前記第2電極層によってカバーされ」るという要件を満たす。

さらに、上記ウより、引用発明2の「有機EL装置の製造方法」は、本願発明の「有機発光ダイオードを製造するための製造方法」に相当し、本願発明の「基板層を設けるステップと、第1電極層を配置するステップと、誘電体層を設けるステップと、活性層を設けるステップと、第2電極層を設けるステップとを有」するという要件を満たす。

(3)一致点及び相違点

ア 一致点

上記(2)によれば、本願発明と引用発明2は、次の点で一致する。

「有機発光ダイオードを製造するための製造方法であって、
基板層を設けるステップと、
第1電極層を配置するステップと、
誘電体層を設けるステップと、
活性層を設けるステップと、
第2電極層を設けるステップと
を有し、
前記活性層が前記第1電極層と前記第2電極層の中間に配置され、
前記誘電体層が前記第1電極層と前記第2電極層の間に電気分離をもたらし、前記誘電体層は前記第1電極層上にパターンとして堆積され、前記第1電極層と前記第2電極層の少なくとも一方の少なくとも一つのエッジをカバーし、前記誘電体層の少なくとも一つの側面は前記第2電極層によってカバーされる、製造方法。」

イ 相違点

上記(2)によれば、本願発明と引用発明2は、次の点で相違又は一応相違する。

(相違点2-1)

「第1電極層を配置するステップ」が、本願発明では、「前記基板層上に第1電極層を配置するステップ」であるのに対して、引用発明2では、そのように特定されていない点。

(相違点2-2)

「誘電体層」が、本願発明では、「硬化プロセス中に製造される副産物の量が著しく少ない又は副産物を製造しないように構成され」、「誘電体層に含まれる誘電体が疎水性であり」、「溶媒としてのガンマブチロラクトン中に分散された半重合ポリイミドを蒸発させることによって、製造され」るのに対して、引用発明2では、そのように特定されていない点。

(4)判断

(相違点2-1について)

本願発明における「前記基板層上に第1電極層を配置する」という特定事項に関し、本件明細書において「~層上に」について特段定義されておらず、「基板層」に直接又は他の層を介して配置される場合を含むものと解される。

そうすると、引用発明2は、「素子基板7側から順に、第1層間絶縁膜301、第2層間絶縁膜302、ピクセル電極13、・・・が配置された」ものであるから、「ピクセル電極13」は「素子基板7」上に他の層を介して配置されたものといえる。

よって、引用発明2の「第1電極層を配置するステップ」は、「前記基板層上に第1電極層を配置するステップ」であるといえる。

(相違点2-2について)

相違点2-2は、相違点1と実質的に同じであり、上記2(4)と同様の判断から、当業者が容易に想到し得たものである。

4 引用文献4を主引用例とした場合

(1)引用発明4

引用文献4の【0035】~【0073】及び【図1】~【図2】には、基板2上にゲート絶縁膜4、層間絶縁膜9を介して画素電極13が配置された構成の「表示装置1」が記載されている。また、同文献【0044】には、「隔壁10」が「感光性ポリイミド材料、感光性アクリル材料等の感光性樹脂を用いて形成され」ることが記載されている。

そして、同文献には、実質的に上記「表示装置1」の製造方法が記載されているといえ、当該「表示装置1」の製造方法において、「基板2」を設けるステップ、「画素電極13」を配置するステップと、「隔壁10」を設けるステップと、「有機発光層14」を設けるステップと、「対向電極15」を設けるステップとを有することは自明である。

さらに、同文献【図1】~【図2】より、有機発光層14が画素電極13と対向電極15の中間に配置されていること及び隔壁10は、配列パターンとして堆積されており、画素電極13のエッジをカバーし、第1の隔壁10の側面は対向電極15によってカバーされていることが見て取れる。

引用文献4の上記記載より把握される「表示装置1」の製造方法の発明を引用発明4とする。

「基板2上にゲート絶縁膜4、層間絶縁膜9を介して画素電極13が配置され、
画素電極13上に、第1の隔壁10、第2の隔壁11によって分離された有機発光層14がマトリックス状に配置され、
さらに、有機発光層14上には、透光性を有する対向電極15が共通電極として配置された、
表示装置1の製造方法であって、
基板2を設けるステップ、画素電極13を配置するステップと、第1の隔壁10を設けるステップと、有機発光層14を設けるステップと、対向電極15を設けるステップとを有し、
有機発光層14が画素電極13と対向電極15の中間に配置され、
第1の隔壁10は、感光性ポリイミド材料、感光性アクリル材料等の感光性樹脂を用いて形成され、
第1の隔壁10は、配列パターンとして堆積されており、画素電極13のエッジをカバーし、第1の隔壁10の側面は対向電極15によってカバーされている、
表示装置1の製造方法。」

(2)対比

ア 基板層、第1電極層、活性層、第2電極層

引用発明4の「基板2」、「画素電極13」、「有機発光層14」及び「対向電極15」は、その構成からみて、それぞれ、本願発明の「基板層」、「第1電極層」、「活性層」及び「第2電極層」に相当する。

イ 誘電体層

引用発明4の「第1の隔壁10」は、「感光性ポリイミド材料、感光性アクリル材料等の感光性樹脂を用いて形成され」、技術常識に鑑みると、「画素電極13」と「対向電極15」の間に電気分離をもたらす誘電体の層である。

以上より、引用発明4の「第1の隔壁10」は、本願発明の「誘電体層」に相当する。

ウ 基板層を設けるステップ、第1電極層を配置するステップ、誘電体層を設けるステップ、活性層を設けるステップ、第2電極層を設けるステップ

上記ア~イに記載される構成より、引用発明4の「基板2を設けるステップ」、「画素電極13を配置するステップ」、「第1の隔壁10を設けるステップ」、「有機発光層14を設けるステップ」及び「対向電極15を設けるステップ」は、それぞれ、本願発明の「基板層を設けるステップ」、「第1電極層を配置するステップ」、「誘電体層を設けるステップ」、「活性層を設けるステップ」及び「第2電極層を設けるステップ」に相当する。

エ 有機発光ダイオード、有機発光ダイオードを製造するための製造方法

上記ア~イの構成からみて、引用発明4の「表示装置1」は、本願発明の「有機発光ダイオード」に相当し、本願発明の「前記活性層が前記第1電極層と前記第2電極層の中間に配置され、前記誘電体層が前記第1電極層と前記第2電極層の間に電気分離をもたらし、前記誘電体層は前記第1電極層上にパターンとして堆積され、前記第1電極層と前記第2電極層の少なくとも一方の少なくとも一つのエッジをカバーし、前記誘電体層の少なくとも一つの側面は前記第2電極層によってカバーされ」るという要件を満たす。

また、上記ウの構成より、引用発明4の「表示装置1の製造方法」は、本願発明の「有機発光ダイオードを製造するための製造方法」に相当し、本願発明の「基板層を設けるステップと、第1電極層を配置するステップと、誘電体層を設けるステップと、活性層を設けるステップと、第2電極層を設けるステップとを有」するという要件を満たす。

(3)一致点及び相違点

ア 一致点

上記(2)によれば、本願発明と引用発明4は、次の点で一致する。

「有機発光ダイオードを製造するための製造方法であって、
基板層を設けるステップと、
第1電極層を配置するステップと、
誘電体層を設けるステップと、
活性層を設けるステップと、
第2電極層を設けるステップと
を有し、
前記活性層が前記第1電極層と前記第2電極層の中間に配置され、
前記誘電体層が前記第1電極層と前記第2電極層の間に電気分離をもたらし、前記誘電体層は前記第1電極層上にパターンとして堆積され、前記第1電極層と前記第2電極層の少なくとも一方の少なくとも一つのエッジをカバーし、前記誘電体層の少なくとも一つの側面は前記第2電極層によってカバーされる、製造方法。」

イ 相違点

上記(2)によれば、本願発明と引用発明4は、次の点で相違又は一応相違する。

(相違点3-1)

「第1電極層を配置するステップ」が、本願発明では、「前記基板層上に第1電極層を配置するステップ」であるのに対して、引用発明3では、そのように特定されていない点。

(相違点3-2)

「誘電体層」が、本願発明では、「硬化プロセス中に製造される副産物の量が著しく少ない又は副産物を製造しないように構成され」、「誘電体層に含まれる誘電体が疎水性であり」、「溶媒としてのガンマブチロラクトン中に分散された半重合ポリイミドを蒸発させることによって、製造され」るのに対して、引用発明4では、そのように特定されていない点。

(4)判断

(相違点3-1について)

相違点3-1は、相違点2-1と実質的に同じであり、上記3(4)(相違点2-1について)と同様の判断から、当業者が容易に想到し得たものである。

(相違点3-2について)

相違点3-2は、相違点1、相違点2-2と実質的に同じであり、上記2(4)と同様の判断から、当業者が容易に想到し得たものである。

5 引用文献6を主引用例とした場合

(1)引用発明6

引用文献6の[請求項5]、[請求項6]、[0001]及び[0108]~[0166](特に実施例1)には、ポリイミド、ガンマブチロラクトン等の材料を用いて絶縁層を形成した「有機エレクトロルミネッセンス素子である」「表示装置」が記載されている。また、同文献には、実質的に当該「表示装置」の製造方法が記載されている。

引用文献6の上記記載より把握される有機エレクトロルミネッセンス素子である「表示装置」の製造方法の発明を引用発明6とする。

「 乾燥窒素気流下、BAHF32.9g(0.09モル)をN-メチルピロリドン(NMP)500gに溶解させ、
ここに3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(マナック(株)製、ODPA)31.0g(0.1モル)をNMP50gとともに加えて、30℃で2時間撹拌し、
その後、3-アミノフェノール(東京化成(株)製)2.18g(0.02モル)を加え、40℃で2時間撹拌を続けて、さらにピリジン(東京化成(株)製)5gをトルエン(東京化成(株)製30g)に希釈して、溶液に加え、冷却管を付け系外に水をトルエンとともに共沸で除去しながら溶液の温度を120℃にして2時間、さらに180℃で2時間反応させ、
この溶液の温度を室温まで低下させ、水3Lに溶液を投入し、白色の粉体を得て、この粉体をろ過で集め、さらに水で3回洗浄を行い、洗浄後、白色粉体を50℃の真空乾燥機で72時間乾燥させて、ポリイミドを得て、 このポリイミド10gに1,5-ジヒドロキシナフタレン(東京化成(株)製)4g、合成例3で得られたアルコキシメチル基含有化合物(A-1)5gとガンマブチロラクトン(三菱化学(株)製、GBL)40gを加えてポリイミド樹脂組成物のワニスを得て、このワニスを用いて硬化膜を形成し、
表示装置の絶縁層として用いた、
有機エレクトロルミネッセンス素子である表示装置の製造方法。」

(2)対比

ア ガンマブチロラクトン

引用発明6の「ガンマブチロラクトン(三菱化学(株)製、GBL)」は、技術的にみて溶媒として用いられるものであり、その用語の意味するとおり、本願発明の「ガンマブチロラクトン」に相当する。

イ 半重合ポリイミド

引用発明6の「ポリイミド」は、その製造方法からみて、本願発明の「半重合ポリイミド」に相当する(当合議体注:上記2(4)に記載した「解釈1」の意味での「半重合ポリイミド」に相当する。)。

ウ 誘電体層

上記ア~イの「ガンマブチロラクトン」及び「半重合ポリイミド」の構成及び技術常識より、引用発明6の「絶縁層」は、本願発明の「誘電体層」に相当する。

エ 有機発光ダイオード、有機発光ダイオードを製造するための製造方法

引用発明6の「表示装置」は、「有機エレクトロルミネッセンス素子であ」り、その文言の意味するとおり、本願発明の「有機発光ダイオード」に相当する。

上記ア~ウの構成より、引用発明6の「表示装置の製造方法」は、本願発明の「有機発光ダイオードを製造するための製造方法」に相当し、本願発明の「誘電体層を設けるステップを有し、」という要件及び「前記誘電体層は硬化プロセス中に製造される副産物の量が著しく少ない又は副産物を製造しないように構成され、前記誘電体層に含まれる誘電体が疎水性であり、前記誘電体層は、溶媒としてのガンマブチロラクトン中に分散された半重合ポリイミドを蒸発させることによって、製造される」という要件を満たす(当合議体注:「硬化プロセス中に製造される副産物の量が著しく少ない又は副産物を製造しないように構成され」ること、ポリイミドが通常疎水性であること及び「蒸発させることによって、製造される」ことについては上記2(4)に記載したとおり。)。

(3)一致点及び相違点

ア 一致点

上記(2)によれば、本願発明と引用発明6は、次の点で一致する。

「有機発光ダイオードを製造するための製造方法であって、
誘電体層を設けるステップを有し、
前記誘電体層は硬化プロセス中に製造される副産物の量が著しく少ない又は副産物を製造しないように構成され、
前記誘電体層に含まれる誘電体が疎水性であり、
前記誘電体層は、溶媒としてのガンマブチロラクトン中に分散された半重合ポリイミドを蒸発させることによって、製造される、製造方法。」

イ 相違点

上記(2)によれば、本願発明と引用発明6は、次の点で相違する。

(相違点4)

本願発明は、「基板層を設けるステップと、前記基板層上に第1電極層を配置するステップ」と、「活性層を設けるステップと、第2電極層を設けるステップとを有し」、「前記活性層が前記第1電極層と前記第2電極層の中間に配置され、前記誘電体層が前記第1電極層と前記第2電極層の間に電気分離をもたらし、前記誘電体層は前記第1電極層上にパターンとして堆積され、前記第1電極層と前記第2電極層の少なくとも一方の少なくとも一つのエッジをカバーし、前記誘電体層の少なくとも一つの側面は前記第2電極層によってカバーされ」るのに対して、引用発明6はそのように特定されていない点。

(4)判断

引用文献6には、「基板層を設けるステップと、前記基板層上に第1電極層を配置するステップと」、「活性層を設けるステップと、第2電極層を設けるステップとを有」する点について記載されていないものの、有機発光ダイオードの製造方法において、「基板層を設けるステップと、前記基板層上に第1電極層を配置するステップと、誘電体層を設けるステップと、活性層を設けるステップと、第2電極層を設けるステップとを有」するものであることは自明である。

また、有機発光ダイオードにおいて、「前記活性層が前記第1電極層と前記第2電極層の中間に配置され、前記誘電体層が前記第1電極層と前記第2電極層の間に電気分離をもたらし、前記誘電体層は前記第1電極層上にパターンとして堆積され、前記第1電極層と前記第2電極層の少なくとも一方の少なくとも一つのエッジをカバーし、前記誘電体層の少なくとも一つの側面は前記第2電極層によってカバーされ」た構成は、引用文献1の図1、引用文献2の図5、引用文献4の図1等に記載されているように周知の構成である。

そして、引用発明6の「有機エレクトロルミネッセンス素子である」「表示装置の製造方法」において、製造される表示装置の具体的な構成は定かではないものの、当業者であれば、周知の有機発光ダイオードの中から任意の構成のものを適宜採用できることを理解する。

そうすると、引用発明6の「製造方法」により、上記周知の構成の表示装置を製造すること、すなわち、引用発明6及び周知技術に基づいて、相違点4に係る発明特定事項を導くことは、当業者であれば適宜なし得たことである。

6 引用文献7を主引用例とした場合

(1)引用発明7

引用文献7の【0001】、【0117】及び【0119】~【0180】(特に実施例1)には、ポリイミド、ガンマブチロラクトン等の材料を用いて絶縁層を形成した「有機エレクトロルミネッセンス素子である」「表示装置」が記載されている。また、同文献には、実質的に当該「表示装置」の製造方法が記載されている。

引用文献7の上記記載より把握される「表示装置」の製造方法の発明を引用発明7とする。

「 乾燥窒素気流下、BAHF32.9g(0.09モル)をNMP500gに溶解させ、ここに3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物31.0g(0.1モル、マナック(株)製、ODPA)をNMP50gとともに加えて、30℃で2時間攪拌し、
その後、3-アミノフェノール2.18g(0.02モル、東京化成(株)製)を加え、40℃で2時間攪拌し、さらにピリジン5g(東京化成(株)製)をトルエン30g(東京化成(株)製)に希釈して、溶液に加え、冷却管を付け系外に水をトルエンとともに共沸で除去しながら溶液の温度を120℃にして2時間、さらに180℃で2時間反応させ、
この溶液の温度が室温にまで低下したら、水3Lに溶液を投入し、白色の粉体を得て、この粉体をろ過で集め、さらに水で3回洗浄を行い、洗浄後、白色粉体を50℃の真空乾燥機で72時間乾燥させ、こうしてポリイミドポリマー粉体を得て、 この粉体10gに熱架橋剤HMOM-TPHAP40g(20%の乳酸エチル溶液として、本州化学工業(株)製、架橋剤量8g)、乳酸エチル20g(武蔵野化学研究所(株)製、EL)とガンマブチロラクトン20g(三菱化学(株)製、GBL)を加えて均一な溶液を得て、この溶液を用いたキュア膜を、
表示装置の絶縁層として用いた、
有機エレクトロルミネッセンス素子である表示装置の製造方法。」

(2)対比

ア ガンマブチロラクトン

引用発明7の「ガンマブチロラクトン(三菱化学(株)製、GBL)」は、技術的にみて溶媒として用いられるものであり、その用語の意味するとおり、本願発明の「ガンマブチロラクトン」に相当する。

イ 半重合ポリイミド

引用発明7の「ポリイミド」は、その製造方法からみて、本願発明の「半重合ポリイミド」に相当する(当合議体注:上記2(4)に記載した「解釈1」の意味での「半重合ポリイミド」に相当する。)。

ウ 誘電体層

上記ア~イの「ガンマブチロラクトン」及び「半重合ポリイミド」の構成及び技術常識より、引用発明7の「絶縁層」は、本願発明の「誘電体層」に相当する。

エ 有機発光ダイオード、有機発光ダイオードを製造するための製造方法

引用発明7の「表示装置」は、「有機エレクトロルミネッセンス素子であ」り、その文言の意味するとおり、本願発明の「有機発光ダイオード」に相当する。

上記ア~ウの構成より、引用発明7の「表示装置の製造方法」は、本願発明の「誘電体層を設けるステップを有し、」という要件及び「有機発光ダイオードを製造するための製造方法」に相当し、本願発明の「前記誘電体層に含まれる誘電体が疎水性であり、前記誘電体層は硬化プロセス中に製造される副産物の量が著しく少ない又は副産物を製造しないように構成され、前記誘電体層に含まれる誘電体が疎水性であり、前記誘電体層は、溶媒としてのガンマブチロラクトン中に分散された半重合ポリイミドを蒸発させることによって、製造される」という要件を満たす。

(3)一致点及び相違点

ア 一致点

上記(2)によれば、本願発明と引用発明7は、次の点で一致する。

「有機発光ダイオードを製造するための製造方法であって、
誘電体層を設けるステップを有し、
前記誘電体層は硬化プロセス中に製造される副産物の量が著しく少ない又は副産物を製造しないように構成され、
前記誘電体層に含まれる誘電体が疎水性であり、
前記誘電体層は、溶媒としてのガンマブチロラクトン中に分散された半重合ポリイミドを蒸発させることによって、製造される、製造方法。」

イ 相違点

上記(2)によれば、本願発明と引用発明7は、次の点で相違する。

(相違点5)

本願発明は、「基板層を設けるステップと、前記基板層上に第1電極層を配置するステップと」、「活性層を設けるステップと、第2電極層を設けるステップとを有し、前記活性層が前記第1電極層と前記第2電極層の中間に配置され、前記誘電体層が前記第1電極層と前記第2電極層の間に電気分離をもたらし、前記誘電体層は前記第1電極層上にパターンとして堆積され、前記第1電極層と前記第2電極層の少なくとも一方の少なくとも一つのエッジをカバーし、前記誘電体層の少なくとも一つの側面は前記第2電極層によってカバーされ」るのに対して、引用発明7はそのように特定されていない点。

(4)判断

相違点5は、相違点4と実質的に同じであり、上記5(4)と同様の判断から、当該相違点5に係る構成は、引用発明7及び周知技術等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 発明の効果について

本願発明の効果に関して、発明の効果に関する明示的な記載は存在しない。ただし、本件出願の明細書には、「ピクセル収縮、すなわち経時的な照明エリアの削減を軽減若しくは除去することが本発明の目的である。」(【0004】)、「かかる誘電体層は硬化プロセス中に製造される副産物の量が削減されるか又は副産物を製造しないように構成される。提案される誘電体のクラスはピクセル収縮効果を抑制し、費用効果的なアプリケーションプロセスを提供する。」(【0007】)と記載されていることから、発明の効果は、ピクセル収縮効果を抑制し、経時的な照明エリアの削減を軽減若しくは除去することであると一応理解される。

しかしながら、当該効果は、引用発明1~2、4、6又は7及び周知技術等から容易に推考される発明が具備する効果であって当業者が予測可能なものにすぎない。

8 審判請求人の令和3年11月18日提出の意見書の主張について

審判請求人は、令和3年11月18日提出の意見書の「4.本願が特許されるべき理由」「(1)進歩性に関して」において、「・・・このように、本願発明の有機発光ダイオードの製造方法では、誘電体層の作製に、ガンマブチロラクトン中に分散された半重合ポリイミドを用いることによって、ベーキング中に揮発性副産物の形成を抑制又は削減でき、ピクセル収縮、すなわち経時的な照明エリアの削減を軽減若しくは除去することができます(本願当初明細書段落0004、0007、0008、0010、0048等の記載に基づく)。

一方、上述した引用文献6及び7には、審判長殿がご指摘されるように、ポリイミドとガンマブチロラクトンとを併用した例は記載されているものの、上記半重合ポリイミドを用いることは一切記載も示唆もされていません。また、他の引用文献1~5についても、本願発明の製造方法、すなわち、半重合ポリイミドを用いる特定の製造方法により、ベーキング中に揮発性副産物の形成を抑制又は削減でき、ピクセルの収縮を低減できることに関しては一切記載も示唆もされていません。

このように、引用文献1~7には、有機発光ダイオードの製造において、半重合ポリイミドを溶媒(分散媒)ガンマブチロラクトン中で蒸発させて、誘電体層(膜)を形成するという構成に関しては一切記載も示唆もされていません。

よって、補正後の請求項1に記載の本願発明は、当業者であっても、これらの引用文献1~7に記載の発明に基いて、容易に想到できるものではありません。」と主張している。

上記主張について検討する。

上記2(4)で述べたように、解釈1により判断すると、半重合ポリイミドを用いることは引用文献6~7の記載に記載されている。また、仮に解釈2により判断した場合においても、プレポリマーからポリイミドを形成することは周知技術にすぎず、誘電体層を形成するために当該技術を採用することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。そして、審判請求人が主張する効果についても上記7に記載したとおり、当業者の予測の範囲内のものである。

さらに、上記解釈1、解釈2と異なる意味で「半重合」という用語が用いられているとした場合、本件出願の明細書で具体的な説明がないことから発明の内容が理解できず、そのような発明について顕著な効果があるとは認められない。

したがって、審判請求人の上記主張は、採用することができない。

第3 むすび

本願発明は、引用文献1~2、4、6又は7に記載された発明、引用文献1~2、4、6~7の記載及び周知技術等に基づいて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本件出願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2021-002883

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