2021-001470
表示装置、表示システム、及びプログラム
- 審判番号
- 2021-001470
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-222167外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年02月02日
- 審決日
- 2021年12月09日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (G09G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
本願は、平成28年11月15日にした特許出願であって、その手続の経緯の概要は次のとおりである。
(同年11月4日送達、以下「原査定」という。)
第2 原査定の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
本願の請求項1~12に係る発明は、下記の引用文献1~3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
第3 本願発明
本願の請求項1~12に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本願発明1」等という。)は、令和3年2月2日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「 【請求項1】移動装置に搭載され、処理対象とする対象オブジェクトを示す虚像を背景の実世界上に重ねて表示する表示部を有する表示装置であって、前記移動装置及び前記対象オブジェクトに関する情報に基づいて、前記対象オブジェクトの位置及び移動方向を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記対象オブジェクトの位置及び移動方向に基づいて、前記表示部により表示可能な領域の縁に前記対象オブジェクトが移動するまでの時間、または前記対象オブジェクトの表示位置と前記対象オブジェクトの移動先の前記縁との距離を推定する推定部と、続きを表示(全39行)前記推定部により推定された、前記時間または前記距離に基づいて、前記対象オブジェクトを示す虚像の表示態様を前記表示可能な領域の縁に近づくにつれて視認されにくい表示態様に決定する決定部と、を備えることを特徴とする表示装置。【請求項2】前記視認されにくい表示態様は、透明度が高い表示態様である請求項1に記載の表示装置。【請求項3】前記視認されにくい表示態様は、前記対象オブジェクトを示す虚像が回転されたことにより小さく表示される表示態様である請求項1に記載の表示装置。【請求項4】前記取得部は、前記対象オブジェクトの位置と、前記移動装置の移動速度及び操舵角と、に基づいて、前記対象オブジェクトの移動方向を算出する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の表示装置。【請求項5】前記推定部は、さらに、前記移動装置の加速度に基づいて、前記対象オブジェクトが前記縁に移動するまでの時間を推定する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の表示装置。【請求項6】前記決定部は、移動装置の傾きにより前記対象オブジェクトが前記表示可能な領域において移動する場合は、前記表示態様を変更しない請求項1乃至5のいずれか一項に記載の表示装置。【請求項7】前記決定部は、前記対象オブジェクトが前記表示可能な領域から出た後、前記対象オブジェクトが前記表示可能な領域に入ったことを検知した場合は、前記対象オブジェクトを示す虚像を前記表示部に表示させない請求項1乃至6のいずれか一項に記載の表示装置。【請求項8】前記決定部は、前記対象オブジェクトの種別の重要度に基づいて、前記対象オブジェクトが前記表示可能な領域から出た後、前記対象オブジェクトが前記表示可能な領域に入ったことを検知した場合に、前記重要度が高い場合は前記対象オブジェクトを示す虚像を前記表示部に表示させる請求項1乃至6のいずれか一項に記載の表示装置。【請求項9】前記決定部は、移動装置の操舵により前記対象オブジェクトが前記表示可能な領域から出た後、当該操舵を打ち消すような操舵により前記対象オブジェクトが前記表示可能な領域に入ったことを検知した場合は、前記対象オブジェクトを示す虚像を前記表示部に表示させる請求項1乃至6のいずれか一項に記載の表示装置。【請求項10】前記表示部は、投影光または発光素子により、前記対象オブジェクトを示す虚像を背景の実世界上に重ねて表示する請求項1乃至9のいずれか一項に記載の表示装置。【請求項11】移動装置に搭載され、処理対象とする対象オブジェクトを示す虚像を背景の実世界上に重ねて表示する表示部を有する表示装置、及び移動装置を制御する制御装置を備える表示システムであって、前記制御装置は、前記対象オブジェクトの位置、前記移動装置の移動速度、及び前記移動装置の操舵角のデータを前記表示装置に通知し、前記表示装置は、前記対象オブジェクトの位置、及び前記データに基づいて算出された前記対象オブジェクトの移動方向を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記対象オブジェクトの位置、及び前記対象オブジェクトの移動方向に基づいて、前記表示部により表示可能な領域の縁に前記対象オブジェクトが移動するまでの時間、または前記対象オブジェクトの表示位置と前記対象オブジェクトの移動先の前記縁との距離を推定する推定部と、前記推定部により推定された、前記時間または前記距離に基づいて、前記対象オブジェクトを示す虚像の表示態様を前記表示可能な領域の縁に近づくにつれて視認されにくい表示態様に決定する決定部と、を備えることを特徴とする表示システム。【請求項12】移動装置に搭載され、処理対象とする対象オブジェクトを示す虚像を背景の実世界上に重ねて表示する表示部を有する表示装置を動作させるプログラムであって、前記移動装置及び前記対象オブジェクトに関する情報に基づいて、前記対象オブジェクトの位置及び移動方向を取得するステップと、前記取得された前記対象オブジェクトの位置及び移動方向に基づいて、前記表示部により表示可能な領域の縁に前記対象オブジェクトが到達するまでの時間、または前記対象オブジェクトの表示位置と前記対象オブジェクトの移動先の前記縁との距離を推定するステップと、前記推定された、前記時間または前記距離に基づいて、前記対象オブジェクトを示す虚像の表示態様を前記表示可能な領域の縁に近づくにつれて視認されにくい表示態様に決定するステップと、をコンピュータに実行させるプログラム。」
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
(1) 引用文献1の記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
前記引用文献1には次の記載がある(下線は当審が付したものである。以下同様である。)。
「【0021】図1に示すように、本実施形態のヘッドアップディスプレイ(HUD)2は、自動車のフロントガラスに画像表示のための表示光を照射することで、車両前方の実際の風景に重ねて虚像を視認可能に表示する表示部10と、この表示部10を制御する制御部30とを中心に構成されている。【0022】制御部30は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータ(マイコン)にて構成されており、各種案内画像を生成し、表示部10を介してフロントガラスに案内画像(虚像)を表示させるものである。【0023】このため、制御部30には、案内画像を生成するのに必要な各種情報を取得するために、メータ12、GPS受信機14、地図データベース16、車速センサ18、レーダ装置20、路車間通信機22、表示設定スイッチ(SW)24、カメラ26等が接続されている。」
「【0036】この表示制御処理は、制御部30を構成するマイコンがROM等の記憶媒体に記憶されたプログラムを実行することにより実現される処理である。図2に示すように、制御部30において、表示制御処理が開始されると、まずS100(Sはステップを表す)にて、通信線8を介して接続された車載機器の起動状況や表示設定SW24を介して設定されたHUD2の動作モードを取得する。【0037】続きを表示(全13行)例えば、S100では、ナビゲーション装置6による経路案内のON/OFF、ACC・ECU4のON/OFF、速度標識・信号注意喚起のON/OFF等の設定を取得する。この結果、制御部30は、フロントガラスに案内画像を重畳表示すべき表示対象物の種類を特定できる。【0038】次に、S200では、自車両の運転状態や周囲の状況を取得する自車両情報取得処理を実行し、続くS300では、車両前方の道路状況や先行車等の前景関連情報を取得する前景関連情報取得処理を実行する。【0039】そして、続くS400では、S100~S300にて得られた情報に基づき、フロントガラスに案内画像を重畳表示すべき表示対象物があるか否かを判断する。なお、表示対象物としては、交通信号、道路標識、広告、先行車、歩行者等が挙げられる。【0040】次に、S400にて、表示対象物があると判断されると、S500に移行し、その表示対象物に対応する案内画像の種類、表示位置、表示方法、といった表示パラメータを設定する。【0041】そして続くS600では、S500の表示パラメータ設定処理にて設定された表示パラメータに基づき、表示用の案内画像を生成し、表示部10に出力することで、フロントガラスにおいて、運転者の視点から見える表示対象物の位置に、案内画像(詳しくは表示対象物に対応した図形)を重畳表示する表示処理を実行し、再度S100に移行する。」
「【0056】次に、S500の表示パラメータ設定処理は、本実施形態では、図5に示す手順で実行される。すなわち、表示パラメータ設定処理では、まずS511にて、表示対象物の大きさが、予め設定されたしきい値TH_VAL[m]よりも大きいか否かを判定する。【0057】続きを表示(全28行)そして、表示対象物がしきい値TH_VAL[m]よりも大きい場合には、S512に移行し、その表示対象物に案内画像を重畳表示する際の案内画像の輝度を補正するための輝度補正値を設定する。【0058】この輝度補正値は、基準となる輝度に対し輝度補正値を乗じることで、輝度を補正するためのものであり、図6に示す特性を有するマップを用いて設定される。つまり、表示対象物がしきい値TH_VAL[m]よりも大きいときの案内画像の輝度は、その表示対象物と自車両との距離に応じて、距離が短いほど小さく、距離が長いほど大きくなるように設定される。【0059】この結果、図7に示すように、しきい値TH_VAL[m]よりも大きい表示対象物に対し重畳表示される案内画像の輝度は、自車両と表示対象物との距離が短く、フロントガラスを介して見える表示対象物の大きさが大きくなるほど、小さくなる。換言すれば、案内画像は、自車両と表示対象物との距離が短く、フロントガラスを介して見える表示対象物の大きさが大きくなるほど、暗くなる。【0060】なお、図7において、HUD表示領域は、表示部10がフロントガラスに案内画像(図では円形)を表示可能な表示領域を表し、センサ検知可能領域は、前景関連情報取得処理にて先行車、道路標識、信号機等の表示対象物を検知可能な領域を表している。【0061】次に、S511にて、表示対象物の大きさはしきい値TH_VAL[m]以下であると判断された場合には、S513に移行して、運転者の視点から見える表示対象物(詳しくは表示対象物に対し重畳表示される案内画像)が、図8に示すエリアA内に収まるか否かを判定する。【0062】なお、エリアAは、HUD表示領域内で、HUD表示領域よりも狭くなるように予め設定された表示設定領域である。そして、表示対象物がエリアA内に収まる場合には、S514に移行し、表示対象物に対し重畳表示する案内画像の輝度補正値として、通常表示用の輝度補正値を設定する。【0063】また、表示対象物がエリアA内に収まらない場合には、S515に移行し、表示対象物のエリアAからのはみ出し量に応じて、輝度補正値を設定する。なお、この輝度補正値を設定するのに用いられるマップは、図8に示すように、エリアAからのはみ出し量が大きいほど、輝度補正値が小さくなり、しかも、HUD表示領域の端部位置で輝度補正値が「0」になるように設定されている。【0064】この結果、図9に示すように、大きさがしきい値TH_VAL[m]以下の表示対象物(図では道路標識を表す)に対し重畳表示される案内画像(図では四角形)の輝度は、運転者から見える表示対象物の位置がエリアA内に収まっている場合には通常表示の標準輝度に設定され、表示対象物がエリアAの外に移動するに従い、小さい値に補正される。【0065】従って、この場合の案内画像は、運転者から見える表示対象物の位置がエリアAの外に移動するに従い、暗くなる。そして、HUD表示領域の端部位置では、輝度が「0」になって、案内画像の表示が消えることになる。【0066】次に、S512、S514、S515にて、輝度補正値が設定されると、S516に移行し、表示対象物に対し重畳表示する案内画像の表示位置、大きさ、及び表示輝度を設定し、当該表示パラメータ設定処理を終了する。【0067】なお、S516では、表示対象物の方位、距離等の情報と、自車両の姿勢の方位情報、速度、加速度等とに基づき、前景の動きと案内画像の表示を一致させることができるように、案内画像の表示位置及び大きさを設定する。また、案内画像の表示輝度は、S280で取得した外界照度に基づき標準輝度を設定し、これにS512、S514、S515で設定した輝度補正値を乗じることで算出する。」
「【図1】[図:0001380724000001.jpg]」
「【図2】[図:0001380724000002.jpg]」
「【図5】[図:0001380724000003.jpg]」
「【図7】[図:0001380724000004.jpg]」
「【図8】[図:0001380724000005.jpg]」
「【図9】[図:0001380724000006.jpg]」
(2) 引用発明1の認定
上記記載内容及び上記図示内容を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明1]
「 自動車のフロントガラスに画像表示のための表示光を照射することで、車両前方の実際の風景に重ねて虚像を視認可能に表示する表示部10と、この表示部10を制御する制御部30とを中心に構成されているヘッドアップディスプレイ(HUD)2であって(【0021】)、制御部30は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータ(マイコン)にて構成されており、各種案内画像を生成し、表示部10を介してフロントガラスに案内画像(虚像)を表示させ(【0022】)、制御部30を構成するマイコンがROM等の記憶媒体に記憶されたプログラムを実行することにより実現される処理である表示制御処理(【0036】)において、エリアAをHUD表示領域内で、HUD表示領域よりも狭くなるように予め設定された表示設定領域として(【0062】)、エリアAからのはみ出し量が大きいほど、輝度補正値が小さくなり、HUD表示領域の端部位置で輝度補正値が0になるように設定され、案内画像は、運転者から見える表示対象物の位置がエリアAの外に移動するに従い、暗くなり、HUD表示領域の端部位置では、輝度が0になって、案内画像の表示が消え(【0063】、【0065】)、表示対象物の方位、距離等の情報と、自車両の姿勢の方位情報、速度、加速度等とに基づき、前景の動きと案内画像の表示を一致させることができるように、案内画像の表示位置及び大きさを設定し、案内画像の表示輝度は、取得した外界照度に基づき標準輝度を設定し、輝度補正値を乗じることで算出する(【0067】)表示パラメータ設定処理(【0056】)と、表示パラメータ設定処理にて設定された表示パラメータに基づき、表示用の案内画像を生成し、表示部10に出力することで、フロントガラスにおいて、運転者の視点から見える表示対象物の位置に、案内画像を重畳表示する表示処理(【0041】)を実行する、ヘッドアップディスプレイ(HUD)2。」
2 引用文献2
(1) 引用文献2の記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
前記引用文献2には次の記載がある。
「【0012】本発明を適用したヘッドアップディスプレイ装置100は、図1に示すように車両200のインストルメントパネル210内部に配設され、後述する液晶表示器110が発する表示光Lをフロントガラス220を介して反射させ、車両200の運転者DのアイボックスBに導いて、虚像Vを表示する。ヘッドアップディスプレイ装置100は、車両200に搭載される各種制御機器と相互に通信可能な通信路(車両情報入力手段)230に接続し、通信路230から入力される車両の運転に関わる情報を表示光Lとして発する。これにより、運転者Dは車両の運転に関わる情報を虚像Vとして風景に重畳させて視認できる。【0013】ヘッドアップディスプレイ装置100は、図2に示すように、液晶表示器110と、凹面鏡120と、平面鏡130と、ハウジング140と、から主に構成される。【0014】液晶表示器110は、液晶表示パネル111と、光源112と、液晶表示パネル111と光源112を駆動制御する制御手段113(図示しない)を備える。」
「【0022】次に、制御手段113による液晶表示器(表示手段)110の表示制御について、図4に示すフローチャートと、図5に示す表示形態によって説明する。【0023】(ステップS1)続きを表示(全19行)制御手段113は、交差点位置入力手段240から入力された車両200と最も距離が近い信号機までの距離が所定の距離(例えば30メートル)未満である場合、交差点付近であると判断し、ステップS2に進む(S1:Y)。そうでない場合は、ステップS4に進む(S1:N)。【0024】(ステップS2)制御手段113は、通信路230から入力された車両の走行速度が所定の速度(例えば25キロメートル毎時)未満である場合に、ステップS3に進む(S2:Y)。そうでない場合は、ステップS4に進む(S2:N)。【0025】(ステップS3)制御手段113は、通信路230から入力された右左折ターンシグナルの動作動作状態が右折あるいは左折シグナルを動作させている場合(つまり、運転者が右折あるいは左折の方向指示器スイッチを動作させて右左折ターンシグナルを点滅させた場合)に、自車両200が交差点に進入して右左折すると判断し、ステップS5に進む(S3:Y)。そうでない場合は、交差点を右左折せずに通過すると判断し、ステップS4に進む(S3:N)。【0026】(ステップS4)制御手段113は、第1表示形態として、通信路230から入力された車両の走行速度SPと、経路案内情報NAVIを含む車両の運転に関わる情報INFOを、図5(a)に示すように液晶表示器110に表示させ、虚像Vとして運転者Dに視認させる。【0027】(ステップS5)制御手段113は、自車両200が交差点に進入して右左折する際に、右左折時の回動方向DIRにおける視界を妨げないように、図5(a)に示した第1表示形態から、図6(b)に示す中間表示形態を経由して、図6(c)に示す第2表示形態へ表示を切り替える。制御手段113は、第1表示形態から第2表示形態に切り替えるにあたって、車両の運転に関わる情報INFOとして表示していた経路案内情報NAVIを非表示にすると共に、交差点位置入力手段240から入力された車両200と最も距離が近い信号機までの距離が短くなるに従って、車両の走行速度SPの表示位置を右左折時の回動方向DIRと逆方向下方に表示サイズを縮小し、且つ、表示輝度を減衰させつつ移動させる。【0028】制御手段113は、以上のステップS1からステップS5の処理を周期的に行う。」
「【図1】[図:0001380724000007.jpg]」
「【図2】[図:0001380724000008.jpg]」
「【図4】[図:0001380724000009.jpg]」
「【図5】[図:0001380724000010.jpg]」
(2) 引用発明2の認定
上記記載内容及び上記図示内容を総合すると、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明2]
「 車両200に搭載される各種制御機器と相互に通信可能な通信路(車両情報入力手段)230に接続し、通信路230から入力される車両の運転に関わる情報を表示光Lとして発することにより、運転者Dは車両の運転に関わる情報を虚像Vとして風景に重畳させて視認できるヘッドアップディスプレイ装置100(【0012】)であって、ヘッドアップディスプレイ装置100は、液晶表示器110から主に構成され(【0013】)、液晶表示器110は、液晶表示パネル111と、光源112と、液晶表示パネル111と光源112を駆動制御する制御手段113を備え(【0014】)、制御手段113は、第1表示形態として、通信路230から入力された車両の走行速度SPを含む車両の運転に関わる情報INFOを液晶表示器110に表示させ、虚像Vとして運転者Dに視認させ(【0026】)、制御手段113は、自車両200が交差点に進入して右左折する際に、右左折時の回動方向DIRにおける視界を妨げないように、第1表示形態から、中間表示形態を経由して、第2表示形態へ表示を切り替え、制御手段113は、第1表示形態から第2表示形態に切り替えるにあたって、交差点位置入力手段240から入力された車両200と最も距離が近い信号機までの距離が短くなるに従って、車両の走行速度SPの表示位置を右左折時の回動方向DIRと逆方向下方に表示サイズを縮小し、且つ、表示輝度を減衰させつつ移動させる(【0026】、【0027】)、ヘッドアップディスプレイ装置100」
3 引用文献3
引用文献3には次の記載がある。
「【0094】(6)また、実施形態に係るグラフィックメータ100A,100Bでは、傾斜角が徐々に増加するように表示されることによりフェードインして表示が開始された後席画像71(又はナビゲーション画像91)が、その後、傾斜角が徐々に減少するように表示されることによりフェードアウトして消去され、これにより空いた表示領域に、車両画像61がスライドインして車両画像61の表示が開始される。【0095】(7)また、実施形態に係るグラフィックメータ100A,100Bでは、後席画像71(又はナビゲーション画像91)が、フェードインして表示が開始される際に、表示サイズが徐々に大きくなるように表示される。【0096】(8)また、実施形態に係るグラフィックメータ100A,100Bでは、後席画像71(又はナビゲーション画像91)が、傾斜角が徐々に減少するように表示されることによりフェードアウトして消去される際に、表示サイズが徐々に小さくなるように表示される。【0097】尚、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態は、本発明の技術的範囲内で種々の変形や改良等を伴うことができる。【0098】例えば、上述した実施形態では、車両画像61がスライドアウトして消去され、後席画像71(又はナビゲーション画像91)がフェードインしてその表示が開始される構成としたが、車両画像61はスライドアウトする代わりにフェードアウトしてもよいし、後席画像71はフェードインする代わりにスライドインしても構わない。」
「【図2】[図:0001380724000011.jpg]」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 引用文献1を主引用例とする場合
ア 対比
本願発明1と引用発明1を対比する。
(ア) 引用発明1の「自動車」、「実際の風景」、「案内画像」の各々は、本願発明1の「移動装置」、「背景の実世界」、「対象オブジェクト」に相当する。
そして、引用発明1の「ヘッドアップディスプレイ(HUD)2」は、「自動車のフロントガラスに画像表示のための表示光を照射することで、車両前方の実際の風景に重ねて虚像を視認可能に表示する表示部10」を有し、
前記「虚像」は、「制御部30」により生成された「案内画像」であるから、本願発明1の「移動装置に搭載され、処理対象とする対象オブジェクトを示す虚像を背景の実世界上に重ねて表示する表示部を有する表示装置」に相当する。
(イ) 引用発明1の「表示パラメータ設定処理」は、「表示対象物の方位、距離等の情報と、自車両の姿勢の方位情報、速度、加速度等とに基づき、前景の動きと案内画像の表示を一致させることができるように、案内画像の表示位置」を設定するから、自車両に関する情報と案内画像に関する表示対象物の情報を用いて表示位置を取得しているといえる。
よって、本願発明1の「取得部」と、引用発明1の「表示パラメータ設定処理」を行う「制御部30」は、移動装置及び対象オブジェクトに関する情報に基づいて、対象オブジェクトの位置を取得する取得部である点で共通する。
(ウ) 引用発明1の「HUD表示領域の端部」は、本願発明1の「表示可能な領域の縁」に相当する。
(エ) 引用発明1の「エリアAからのはみ出し量が大きいほど、輝度補正値が小さくなり、HUD表示領域の端部位置で輝度補正値が0になるように設定され、案内画像は、運転者から見える表示対象物の位置がエリアAの外に移動するに従い、暗くなり、HUD表示領域の端部位置では、輝度が0になって、案内画像の表示が消え」ることは、案内画像がHUD表示領域の端部に近づくにつれて暗くなり、視認しにくい表示態様に変化するから、本願発明1の「表示可能な領域の縁に近づくにつれて視認されにくい表示態様」に相当する。
(オ) 前記(ウ)、(エ)の検討内容を踏まえると、本願発明1の「決定部」と、引用発明1の「表示対象物がエリアA内に収まらない場合には、表示対象物のエリアAからのはみ出し量に応じて、輝度補正値を設定し、この輝度補正値を設定するのに用いられるマップは、エリアAからのはみ出し量が大きいほど、輝度補正値が小さくなり、しかも、HUD表示領域の端部位置で輝度補正値が0になるように設定」するという「表示制御処理」を行う「制御部30」は、対象オブジェクトを示す虚像の表示態様を前記表示可能な領域の縁に近づくにつれて視認されにくい表示態様に決定する決定部である点で共通する。
上記(ア)~(オ)の検討内容をまとめると、本願発明1と引用発明1とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
[一致点]
「移動装置に搭載され、処理対象とする対象オブジェクトを示す虚像を背景の実世界上に重ねて表示する表示部を有する表示装置であって、前記移動装置及び前記対象オブジェクトに関する情報に基づいて、前記対象オブジェクトの位置を取得する取得部と、前記対象オブジェクトを示す虚像の表示態様を前記表示可能な領域の縁に近づくにつれて視認されにくい表示態様に決定する決定部と、を備える表示装置。」
[相違点1A]
「取得部」が、本願発明1では「前記移動装置及び前記対象オブジェクトに関する情報に基づいて、前記対象オブジェクトの位置及び移動方向を取得する」のに対して、引用発明1では「案内画像」の「表示位置」を設定するが、自動車及び案内画像に関する情報に基づいて、案内画像の移動方向を取得するものでない点。
[相違点2A]
「表示装置」が、本願発明1では「前記取得部により取得された前記対象オブジェクトの位置及び移動方向に基づいて、前記表示部により表示可能な領域の縁に前記対象オブジェクトが移動するまでの時間、または前記対象オブジェクトの表示位置と前記対象オブジェクトの移動先の前記縁との距離を推定する推定部」を備えているが、引用発明1はそのような構成を備えていない点。
[相違点3A]
「前記対象オブジェクトを示す虚像の表示態様を前記表示可能な領域の縁に近づくにつれて視認されにくい表示態様に決定する決定部」が、本願発明1では「前記推定部により推定された、前記時間または前記距離に基づいて」行われるが、引用発明1の「制御部30」が行う「表示制御処理」は、そのようなものでない点。
イ 判断
上記相違点1A~3Aは関連するため、以下まとめて検討する。
引用発明1の「案内画像」は、「表示対象物の方位、距離等の情報と、自車両の姿勢の方位情報、速度、加速度等とに基づき、前景の動きと案内画像の表示を一致させることができるように、案内画像の表示位置及び大きさ」が設定されるものであり、引用発明1では案内画像の移動方向を考慮した表示制御を行っておらず、その点は引用文献1に記載も示唆もない。
そして、引用発明1の「案内画像」は、表示位置及び大きさが設定されるから、「エリアAからのはみ出し量が大きいほど、輝度補正値が小さくなり、HUD表示領域の端部位置で輝度補正値が0になるように設定され、案内画像は、運転者から見える表示対象物の位置がエリアAの外に移動するに従い、暗くなり、HUD表示領域の端部位置では、輝度が0になって、案内画像の表示が消える」ようにする際、設定された表示位置に応じた輝度補正値の大きさが決定される。
そうすると、引用発明1において、制御部30が実行する表示制御処理において、案内画像の移動方向を取得し、前記移動方向及び案内画像の表示位置に基づいて、HUD表示領域の端部に前記案内画像が移動するまでの時間、または前記案内画像の表示位置と前記案内画像の移動先の前記縁との距離を推定し、推定した情報をもとに、輝度補正値の輝度を決定するようにして上記相違点1A~3Aに係る構成とすることは、当業者といえども困難であり、また、引用文献2、引用文献3のいずれにも、案内画像の移動方向を取得する技術が、記載も示唆もされていないから、引用発明1に、引用文献2、引用文献3に記載された技術を如何に適用しても、上記相違点1A~3Aに係る本願発明1の構成とすることは当業者といえども困難であるというべきである。
したがって、本願発明1は、引用文献1を主引用例とした場合では、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2~3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2) 引用文献2を主引用例とする場合
ア 対比
本願発明1と引用発明2を対比する。
(ア) 引用発明2の「車両200」、「風景」、「走行速度SP」の各々は、本願発明1の「移動装置」、「背景の実世界」、「対象オブジェクト」に相当する。
そして、引用発明2の「ヘッドアップディスプレイ装置100」は、「運転者Dは車両の運転に関わる情報を虚像Vとして風景に重畳させて視認でき」、車両の運転に関わる情報には「走行速度SP」が含まれるから、本願発明1の「移動装置に搭載され、処理対象とする対象オブジェクトを示す虚像を背景の実世界上に重ねて表示する表示部を有する表示装置」に相当する。
(イ) 引用発明2の「制御手段113」は、「交差点位置入力手段240から入力された車両200と最も距離が近い信号機までの距離が短くなるに従って、車両の走行速度SPの表示位置を右左折時の回動方向DIRと逆方向下方に表示サイズを縮小し、且つ、表示輝度を減衰させつつ移動させる」から、車両200の情報に基づいて走行速度SPの表示位置を取得している。
よって、本願発明1の「取得部」と、引用発明2の「制御手段113」は、前記移動装置に関する情報に基づいて、前記対象オブジェクトの位置を取得する取得部という点で共通する。
(ウ) 引用発明2の「制御手段113」は、「交差点位置入力手段240から入力された車両200と最も距離が近い信号機までの距離が短くなるに従って、車両の走行速度SPの表示位置を右左折時の回動方向DIRと逆方向下方に表示サイズを縮小し、且つ、表示輝度を減衰させつつ移動させ」、すなわち、走行速度SPが右左折時の回動方向DIRと逆方向下方にある表示可能な領域の縁に近づくにつれて「表示サイズを縮小し、且つ、表示輝度を減衰させ」る。
よって、本願発明1の「決定部」と、引用発明2の「制御手段113」は、対象オブジェクトを示す虚像の表示態様を前記表示可能な領域の縁に近づくにつれて視認されにくい表示態様に決定する決定部である点で共通する。
上記(ア)~(ウ)の検討内容をまとめると、本願発明1と引用発明2とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
[一致点]
「移動装置に搭載され、処理対象とする対象オブジェクトを示す虚像を背景の実世界上に重ねて表示する表示部を有する表示装置であって、前記移動装置に関する情報に基づいて、前記対象オブジェクトの位置を取得する取得部と、前記対象オブジェクトを示す虚像の表示態様を前記表示可能な領域の縁に近づくにつれて視認されにくい表示態様に決定する決定部と、を備える表示装置。」
[相違点1B]
「取得部」が、本願発明1では「前記移動装置及び前記対象オブジェクトに関する情報に基づいて、前記対象オブジェクトの位置及び移動方向を取得する」のに対して、引用発明2の「制御手段113」は「車両200と最も距離が近い信号機までの距離」に従った「車両の走行速度SPの表示位置」を設定しているが、車両及び走行速度SPに関する情報に基づいて、走行速度SPの表示位置及び移動方向を取得するものでない点。
[相違点2B]
「表示装置」が、本願発明1では「前記取得部により取得された前記対象オブジェクトの位置及び移動方向に基づいて、前記表示部により表示可能な領域の縁に前記対象オブジェクトが移動するまでの時間、または前記対象オブジェクトの表示位置と前記対象オブジェクトの移動先の前記縁との距離を推定する推定部」を備えているが、引用発明2はそのような構成を備えていない点。
[相違点3B]
「前記対象オブジェクトを示す虚像の表示態様を前記表示可能な領域の縁に近づくにつれて視認されにくい表示態様に決定する決定部」が、本願発明1では「前記推定部により推定された、前記時間または前記距離に基づいて」行われるが、引用発明2の「制御手段113」は、そのようなものでない点。
イ 判断
上記相違点1B~3Bは関連するため、以下まとめて検討する。
引用発明2の「制御手段113」は「車両200と最も距離が近い信号機までの距離」に従った「車両の走行速度SPの表示位置」を設定しているが、車両及び走行速度SPに関する情報に基づいて、走行速度SPの表示位置及び移動方向を取得することについて、引用文献2に記載も示唆もない。
そして、引用発明2では、「車両200と最も距離が近い信号機までの距離」に従った「車両の走行速度SPの表示位置」を設定しており、「交差点位置入力手段240から入力された車両200と最も距離が近い信号機までの距離が短くなるに従って、車両の走行速度SPの表示位置を右左折時の回動方向DIRと逆方向下方に表示サイズを縮小し、且つ、表示輝度を減衰させつつ移動させ」ているから、走行速度SPの表示位置に応じた表示輝度を決定している。
そうすると、引用発明1において、制御手段113が車両200及び走行速度SPに関する情報に基づいて走行速度SPの表示位置及び移動方向を取得し、走行速度SPの表示位置及び移動方向に基づいて、ヘッドアップディスプレイ装置の表示領域の端部に前記走行速度SPが移動するまでの時間、または前記走行速度SPの表示位置と前記走行速度SPの移動先の前記縁との距離を推定し、推定した情報をもとに、表示輝度を決定するようにして上記相違点1B~3Bに係る構成とすることは、当業者といえども困難であり、また、引用文献1、引用文献3のいずれにも、案内画像の移動方向を取得する技術が、記載も示唆もされていないから、引用発明2に、引用文献1、引用文献3に記載された技術を如何に適用しても、上記相違点1B~3Bに係る本願発明1の構成とすることは当業者といえども困難であるというべきである。
したがって、本願発明1は、引用文献2を主引用例とした場合でも、当業者であっても、引用発明2及び引用文献1、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3) 小括
前記(1)、(2)で検討したとおり、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2~3に記載された技術的事項、又は、引用発明2及び引用文献1、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
2 本願発明2~10について
本願発明2~10は、本願発明1の構成をすべて含むものであるから、前記相違点1A~3A、又は、前記相違点1B~3Bに係る本願発明1の構成を備えるものである。
よって、本願発明2~10は、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2~3に記載された技術的事項、又は、引用発明2及び引用文献1、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
3 本願発明11、12について
本願発明11は、本願発明1に対応する「表示システム」の発明であり、
本願発明12は、本願発明1に対応する「表示装置を動作させるプログラム」の発明であり、各々は本願発明1とカテゴリー表現が異なるだけの発明であり、前記相違点1A~3A、又は、前記相違点1B~3Bに係る本願発明1の構成と同様の構成を備えるものである。
よって、本願発明11、12は、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2~3に記載された技術的事項、又は、引用発明2及び引用文献1、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明1~12は、引用文献1~3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-001470