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特許拒絶査定不服審判

2021-000952

アイフィードバックによるコミュニケーションを可能にするシステム及び方法

審判番号
2021-000952
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-566228外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年01月22日
審決日
2021年12月08日
公報発行日
2022年01月28日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (G06F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-566228「アイフィードバックによるコミュニケーションを可能にするシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月15日国際公開、WO2016/142933、平成30年 7月19日国内公表、特表2018-519601、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 20項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は,2016年(平成28年)3月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年3月10日,米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年12月28日 手続補正書 提出

令和 2年 1月 9日付け 拒絶理由通知

令和 2年 4月14日 意見書・手続補正書 提出

令和 2年 9月15日付け 拒絶査定

令和 3年 1月22日 審判請求書・手続補正書 提出

令和 3年 6月 7日付け 前置報告

第2 原査定の概要

原査定(令和2年9月15日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(進歩性)この出願の請求項1-17に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>

1.特開2005-100366号公報

2.米国特許出願公開第2014/0375541号明細書

4.特開2007-310815号公報(周知技術を示す文献)

5.特開2006-141862号公報(周知技術を示す文献)

なお,令和2年1月9日付け拒絶理由通知において,引用文献3として提示された特開平07-049744号公報は,原査定において用いられていない。

また,令和3年6月7日付けの前置報告において,審査官は,審判請求時の手続補正に関する周知技術文献として下記引用文献6および7を提示している。

6.韓国公開特許第10-2014-0132906号公報

7.中国特許出願公開第101893934号明細書

第3 本願発明

本願の請求項1ないし10に係る発明(以下,「本願発明1」ないし「本願発明10」という。)は,令和3年1月22日提出の手続補正書により補正された以下の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項10に記載された事項により特定されるとおりの発明である。

「【請求項1】
コミュニケーションをとるシステムにおいて、
一連のコミュニケーションオプションをユーザに選択可能に提示するように構成された選択インタフェースであって、視覚インタフェース、可聴インタフェース、及び触覚インタフェースを含む群からの少なくとも1つを含む選択インタフェースと、
前記ユーザの目の連続画像のシーケンスを捕捉するように構成された少なくとも1つのカメラと、
続きを表示(全91行)
前記少なくとも1つのカメラ及び前記選択インタフェースと通信可能に結合されたプロセッサであって、
前記プロセッサが、
(i)捕捉された画像を受信及び処理し、眼窩内の目の瞳孔の向きである目の相対的な向きを決定し、前記目の相対的な向きの決定は、
a.前記捕捉された画像の瞳孔をマークして、瞳孔の検出と位置を示す関心領域を追跡すること、
b.基準点を2Dグリッドの中心として設定して、前記グリッドの中心を基準にした基準点の座標系を構築すること、
c.瞳孔の位置を前記グリッド上の座標に変換すること、
を具えており、
(ii)前記2Dグリッドの少なくとも2つのセクションのどのセクションに前記関心領域が位置するかを決定することによって、前記目の相対的な向きに基づいてアイジェスチャを決定し、
(iii)前記決定されたアイジェスチャに基づいて、ユーザ選択されたコミュニケーションオプションを決定することであって、前記ユーザ選択されたコミュニケーションオプションを、ユーザの正確な注視方向又は目線の決定を必要とせずに、またディスプレイ上の固有の座標位置を決定することなく決定し、且つ
(iv)前記ユーザ選択されたコミュニケーションオプションを実行する命令を提供するように構成されたプロセッサと、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記ユーザの前記目を照らすように構成された少なくとも1つの光源であって、発光ダイオード(LED)を任意選択的に含む少なくとも1つの光源をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムにおいて、前記光源が、赤外線(IR)光源を含み、前記少なくとも1つのカメラが、前記目から反射されたIR光を検出するように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記アイジェスチャが、
前記眼窩に対して上向きと、
前記眼窩に対して下向きと、
前記眼窩に対して横向きと、
前記眼窩に対して斜め向きと、
前記眼窩に対して傾斜した向きと、
前記眼窩の向きに一致した正面の向きと、
前記目のウインクと、
前記目のまばたきと、
からなるリストから選択されることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項2に記載のシステムにおいて、前記光源及び前記少なくとも1つのカメラの少なくとも一方が、前記ユーザによって装着されるウェアラブルヘッドギアに結合され、又は、前記選択インタフェースが、モバイルコンピュータデバイス上で動作することを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記コミュニケーションオプションの少なくとも1つが、
可聴アラームと、
メニュー選択と、
言語選択と、
確認メッセージと、
文と、
フレーズと、
単語と、
音節と、
文字と、
モバイルコンピュータデバイス起動選択と、
視覚インタフェース動作停止選択と、
Eメール/SMS/MMSの送信命令と、
コンピュータアプリケーションの実行命令と、
からなるリストから選択されることを特徴とするシステム。
【請求項7】
コミュニケーションをとる方法において、
選択インタフェースにより、ユーザに対して、一連のコミュニケーションオプションを、視覚的、可聴的、又は触覚感知可能に、選択可能に提示する手順と、
少なくとも1つのカメラにより、前記ユーザの目の連続画像のシーケンスを捕捉する手順と、
前記目の画像を処理して目の相対的な向きを決定する手順であって、前記ユーザの眼窩内の瞳孔の向きである相対的な向きを決定し、前記目の相対的な向きの決定は、
a.前記捕捉された画像の瞳孔をマークして、瞳孔の検出と位置を示す関心領域を追跡すること、
b.基準点を2Dグリッドの中心として設定して、前記グリッドの中心を基準にした基準点の座標系を構築すること、
c.瞳孔の位置を前記グリッド上の座標に変換すること、
を具えており、
前記2Dグリッドの少なくとも2つのセクションのどのセクションに前記関心領域が位置するかを決定することによって、前記目の相対的な向きに基づいて前記ユーザのアイジェスチャを決定する手順と、
前記決定されたアイジェスチャに基づいて、ユーザ選択されたコミュニケーションオプションを決定する手順と、
前記ユーザ選択されたコミュニケーションオプションを実行する命令を提供する手順と、
により特徴付けられる方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、少なくとも1つの光源を用いて、前記ユーザの前記目を照らす手順をさらに含み、任意選択的に、目を照らすのにIR光が用いられ、前記少なくとも1つのカメラが、前記目から反射されたIR光を検出するように構成され、任意選択的に、前記光源及び前記少なくとも1つのカメラが、前記ユーザによって装着されるウェアラブルヘッドギアに結合されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、前記アイジェスチャが、
前記眼窩に対して上向きと、
前記眼窩に対して下向きと、
前記眼窩に対して横向きと、
前記眼窩に対して斜め向きと、
前記眼窩に対して傾斜した向きと、
前記眼窩の向きに一致した正面の向きと、
前記目のウインクと、
前記目のまばたきと、
からなるリストから選択されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法において、前記ユーザコミュニケーションオプションが、
可聴アラームと、
メニュー選択と、
言語選択と、
確認メッセージと、
文と、
フレーズと、
単語と、
音節と、
文字と、
モバイルコンピュータデバイス起動選択と、
視覚インタフェース動作停止選択と、
Eメール送信命令と、
SMS/MMS送信命令と、
コンピュータアプリケーションの実行命令と、
からなるリストから選択されることを特徴とする方法。」

第4 引用文献および引用発明

1 引用文献1

(1)引用文献1の記載事項

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原査定の拒絶理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は,当審が付加した。以下同様。)。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,重度の筋萎縮性側策硬化症患者(以下,ALSという)等と介護者,家族等とのコミュニケーションを支援する,眼球運動を用いた視線入力コミュニケーションシステムに関する。
(中略)
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は,眼球運動を用いた視線入力コミュニケーションシステムの開発を課題として,ビデオカメラを用いて患者の顔画像を取得し,画像処理により非接触的に患者の視線方向検出を行うことにより,表示画面上の意図する項目を選択するとともに,眼球運動と瞼の開閉動作による眼球機能のみで入力し,スイッチング操作で仮想ボードによる操作により,在宅勤務を行うようにした眼球運動を用いた視線入力コミュニケーションシステムの構築を目的とする。」

イ 図2

[図:0001380706000001.jpg]

ウ 「【0033】
図2は視線入力式コミュニケーションシステムの説明図であり,本システムは,主として一台のPCとビデオカメラ12により構成される,非接触型コミュニケーションシステムである。ALS患者20等を対象としたシステムであり,ベッド上で使用されることが想定されている。PC,ビデオカメラ12共に市販の製品を用いており,比較的安価なシステムを実現している。ALS患者20等は,PCの表示画面11上の区画された領域を目で注視することにより,意図する項目を選択することができる(図2参照)。表示画面11は,設置が容易である液晶ディスプレイを用いると良い。また,システムの使用開始時にキャリブレーションを行う必要がある。キャリブレーションでは,表示画面11の区画を順次点滅(他と異なる色に変更)させて行き,ALS患者20にそれを目で追ってもらう。その時の眼球の位置などを記録し,方向決定用の基準としている。」

エ 図3

[図:0001380706000002.jpg]

オ 「【0034】
図3はコミュニケーションスクリーン(初期画面)の一例として,9分割画面を示す正面図である。本発明は,特に重度のALS患者20も対象としているコミュニケーションシステムである。表示画面11上は,図3のように9分割,または12分割されており,各分割された領域には,ALS患者20にとって重要とされる表現が提示されている。この画面を,以下コミュニケーションスクリーンと呼ぶ。この提示されている意思項目は,ALS患者20の家族や病院に対して行ったアンケート結果を参考にして,決定されている。ALS患者20は,意図する項目を目で注視し選択することになる。2秒以上の注視が行われた時点で,PCは注視であると認識し,その項目の選択を行う。選択された項目は,あらかじめ登録しておいた音声で読み上げるようにしてある。9分割や12分割では,患者にとって必要とされる全ての表現を提示することはできないが,項目の下に予備項目を用意することで,より多くの表現の提示が可能となる。使用頻度が高いと考えられる,「はい」,「いいえ」は初期画面に表示されている。」

カ 図4

[図:0001380706000003.jpg]

キ 「【0035】
図4は図3のコミュニケーションスクリーンにおいて「テレビ」が選ばれた場合のコミュニケーションスクリーンの一例を図4(a)に示し,さらに図4(a)の画面で「チャンネルを変えて」を選択した場合のコミュニケーションスクリーンの一例(図4(b))を示した図であり,例えば,初期画面で「テレビ」という項目を選んだとすると,次の画面には図4(a)のように,TVに関する項目が表示される。なお,「戻る」と「メニューへ」の二つの項目に関しては,初期画面以外において常に表示されるようになっている。そして,ここで「チャンネルを変えて」を選択すると,図4(b)が表示される。通常TVのチャンネルは12チャンネルまで用いることが多いので,「次へ」を選択すると7から12までが表示される。患者が,この中から希望する番号(ここでは5)を選択すると“チャンネル5に変えてください。”と音声で読み上げるようになっている。」

(2)引用発明

上記(1)の,特に下線を付加した記載に着目すると,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「重度の筋萎縮性側策硬化症患者(以下,ALSという)等と介護者,家族等とのコミュニケーションを支援する,眼球運動を用いた視線入力コミュニケーションシステムであって,
ビデオカメラを用いて患者の顔画像を取得し,画像処理により非接触的に患者の視線方向検出を行うことにより,表示画面上の意図する項目を選択するとともに,眼球運動と瞼の開閉動作による眼球機能のみで入力し,スイッチング操作で仮想ボードによる操作により,在宅勤務を行うようにした眼球運動を用いた視線入力コミュニケーションシステムであり,
PCとビデオカメラ12により構成され,PC,ビデオカメラ12共に市販の製品を用いており,
ALS患者20等は,PCの表示画面11上の区画された領域を目で注視することにより,意図する項目を選択することができ,
表示画面11は,設置が容易である液晶ディスプレイであり,
使用開始時にキャリブレーションを行う必要があり,キャリブレーションでは,表示画面11の区画を順次点滅(他と異なる色に変更)させて行き,ALS患者20にそれを目で追ってもらい,その時の眼球の位置などを記録し,方向決定用の基準としており,
表示画面11上は,9分割されており,各分割された領域には,ALS患者20にとって重要とされる表現が提示されており,ALS患者20は,意図する項目を目で注視し,2秒以上の注視が行われた時点で,PCは注視であると認識し,その項目の選択を行い,選択された項目は,あらかじめ登録しておいた音声で読み上げるようにしてあり,
例えば,初期画面で「テレビ」という項目を選んだとすると,次の画面には,TVに関する項目が表示され,ここで「チャンネルを変えて」を選択すると,TVのチャンネルが表示され,患者が,この中から希望する番号(ここでは5)を選択すると“チャンネル5に変えてください。”と音声で読み上げる
視線入力コミュニケーションシステム。」

2 引用文献2

(1)引用文献2の記載事項

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原査定の拒絶理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「BACKGROUND
[0001] Real-time eye tracking may be used to estimate and map a user's gaze direction to coordinates on a display device. For example, a location on a display at which a user's gaze direction intersects the display may be used as a mechanism for interacting with user interface objects displayed on the display. Various methods of eye tracking may be used. For example, in some approaches, light, e.g., in the infrared range or any other suitable frequency, from one or more light sources may be directed toward a user's eye, and a camera may be used to capture image data of the user's eye. Locations of reflections of the light on the user's eye and a position of the pupil of the eye may be detected in the image data to determine a direction of the user's gaze. Gaze direction information may be used in combination with information regarding a distance from the user's eye to a display to determine the location on the display at which the user's eye gaze direction intersects the display.
SUMMARY
[0002] Embodiments related to eye tracking utilizing time-of-flight depth image data of the user's eye are disclosed. For example, one disclosed embodiment provides an eye tracking system comprising a light source, a sensing subsystem configured to obtain a two-dimensional image of a user's eye and depth data of the user's eye, and a logic subsystem to control the light source to emit light, control the sensing subsystem to acquire a two-dimensional image of the user's eye while emitting light from the light source, control the sensing subsystem to acquire depth data of the user's eye, determine a gaze direction of the user's eye from the two-dimensional image,determine a location on a display at which the user's gaze intersects the display based on the gaze direction and the depth of the user's eye obtained from the depth data, and output the location.」

(当審訳:

背景

[0002] ユーザの眼の飛行時間型深度画像データを利用するアイ・トラッキングに関連する実施形態が開示されている。例えば、開示された一実施形態は、光源と、ユーザの目の二次元画像およびユーザの目の深度データを取得するように構成されたセンシング・サブシステムと、論理サブシステムとを備えるアイ・トラッキング・システムを提供する。前記論理サブシステムは,前記光源を制御して光を放出させ、前記センシング・サブシステムを制御してユーザの目の二次元画像を取得させ、前記センシング・サブシステムを制御してユーザの目の深度データを取得させ、前記二次元画像から前記ユーザの目の注視方向を決定し、前記注視方向と前記深度データから得られた前記ユーザの目の深度とに基づいて、前記ユーザの注視が交差するディスプレイ上の位置を決定し、前記位置を出力している。

概要

[0002] ユーザの眼の飛行時間型深度画像データを利用するアイ・トラッキングに関連する実施形態が開示されている。例えば、開示された一実施形態は、光源と、ユーザの目の二次元画像およびユーザの目の深度データを取得するように構成された感知サブシステムと、光源を制御して光を放出し、感知サブシステムを制御して光源から光を放出しながらユーザの目の二次元画像を取得し、論理サブシステムを制御してユーザの目の深度データを取得する、論理サブシステムとを備えるアイ・トラッキング・システムを提供する。前記センシング・サブシステムを制御して、前記ユーザの目の深度データを取得し、前記二次元画像から前記ユーザの目の注視方向を決定し、前記注視方向と前記深度データから得られた前記ユーザの目の深度とに基づいて、前記ユーザの注視が交差するディスプレイ上の位置を決定し、前記位置を出力するステップとを含む。)

イ 図3

[図:0001380706000004.jpg]

ウ 「[0012] Eye tracking may be used in a variety of different hardware environments. For example, FIG. 3 shows a user 104 wearing a wearable computing device 304, depicted as a head-mounted augmented reality display device, and gazing at an object 306 in an environment 302. In this example, device 304 may comprise an integrated eye tracking system to track the user's gaze and detect interactions with virtual objects displayed on device 304, as well as with real world objects in a background viewable through the wearable computing device 304.」

(当審訳:

[0012] アイ・トラッキングは、様々な異なるハードウェア環境で使用することができる。例えば、図3は、ヘッドマウント型オーグメンテッド・リアリティ・ディスプレイ・デバイスとして描かれているウェアラブル・コンピューティング・デバイス304を装着し、環境302内のオブジェクト306を注視しているユーザ104を示している。この例では、デバイス304は、ユーザの注視を追跡し、デバイス304に表示される仮想オブジェクトとのインタラクション、およびウェアラブル・コンピューティング・デバイス304を通して見ることができる背景の現実世界のオブジェクトとのインタラクションを検出するための統合されたアイ・トラッキング・システムを含んでもよい。)

エ 「[0023] In some embodiments, the eye tracking module 500 also may include a light source 518 to provide light for generating corneal reflections that is different from the light source 510 of depth camera 504. Any suitable light source may be used as a light source 518. For example, light source 518 may comprise one or more infrared light-emitting diodes (LED) positioned at any suitable position relative to an optical axis of a user gazing forward.」

(当審訳:

[0023] いくつかの実施形態では、アイ・トラッキング・モジュール500はまた、深度カメラ504の光源510とは異なる、角膜反射を生成するための光を提供するための光源518を含んでもよい。任意の適切な光源が、光源518として使用されてもよい。例えば、光源518は、前方を注視するユーザの光軸に対して任意の適切な位置に配置された1つまたは複数の赤外線発光ダイオード(LED)から構成されてもよい。)

(2)引用文献2記載技術

上記(1)の,特に下線を付加した記載に着目すると,引用文献2には,以下の発明(以下,「引用文献2記載技術」という。)が記載されていると認められる。

「ユーザの眼の飛行時間型深度画像データを利用するアイ・トラッキングであって,
光源と、ユーザの目の二次元画像およびユーザの目の深度データを取得するように構成された感知サブシステムと、光源を制御して光を放出し、感知サブシステムを制御して光源から光を放出しながらユーザの目の二次元画像を取得し、論理サブシステムを制御してユーザの目の深度データを取得する、論理サブシステムとを備え,前記二次元画像から前記ユーザの目の注視方向を決定し、前記注視方向と前記深度データから得られた前記ユーザの目の深度とに基づいて、前記ユーザの注視が交差するディスプレイ上の位置を決定し、前記位置を出力するアイ・トラッキング・システムであり,
ヘッドマウント型オーグメンテッド・リアリティ・ディスプレイ・デバイスであるウェアラブル・コンピューティング・デバイスのハードウェア環境で使用されており,
アイ・トラッキング・モジュールは、深度カメラの光源とは異なる、角膜反射を生成するための光を提供するための光源を含んでおり,光源は、前方を注視するユーザの光軸に対して任意の適切な位置に配置された赤外線発光ダイオード(LED)から構成された
アイ・トラッキング・システム。」

3 引用文献4

(1)引用文献4の記載事項

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原査定の拒絶理由に引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機のような携帯端末装置に関し、特に、内蔵するカメラにより眼球の動きを検出して携帯端末の操作を可能とする携帯端末装置に関する。
【背景技術】
続きを表示(全27行)
【0002】
現在普及している携帯電話機のような携帯端末装置の操作は、携帯電話機上に配列されたキーボタンなどを指で押すなどの動作により行われる。しかしながら、障害などにより指先が不自由な場合は、キー操作は困難である。
【0003】
一方、近年の携帯電話機は、そのほとんどがカメラを内蔵しているため、そのカメラにより眼球の動きを検出し、眼球の動きを利用して、携帯電話機を操作する方法が提供されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1は、瞳孔位置の移動を検出して使用者の視線の移動方向を検出し、検出された使用者の視線の移動方向にポインティングデバイスを移動させ、ポインティングデバイスに向けて行った意思決定を検出する視線入力機能付携帯電話について開示している。また、下記特許文献2は、利用者の眼球を撮像し、撮像された画像から利用者の視線方向を検出し、該視線方向から入力すべき文字を特定する携帯端末装置について開示している。さらに、下記特許文献3も視線検出手段を有する電子機器について開示している。
【特許文献1】 特開2004-21870号公報
【特許文献2】 特開2004-194207号公報
【特許文献3】 特開2002-132517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、眼球を動かして、視線方向を意図する位置に合わせる動作は比較的困難であり、入力精度が低くなり、操作性が悪い。
【0006】
特に、文字、数字、記号などの一覧を表示し、視線方向から文字などを選択する場合、表示する情報が多く、文字も小さくなるので、意図する文字の表示位置に視線を合わせるのは至難の業である。
【0007】
そこで、本発明の目的は、眼球の動きを利用したより容易な手段で操作を可能とする携帯端末装置を提供することにある。
(中略)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、眼球の動きの回数に応じた操作を可能とすることで、操作性と入力精度が向上し、指先が不自由なユーザであっても、容易に携帯端末装置を操作することができるようになる。
【0012】
眼球の動きの回数と方向とにより、意図した数字又は文字などを容易に選択することができ、キーボタンを使用せずとも、数字又は文字などの入力が容易となる。」
イ 「【0014】
本発明の実施の形態例では、例えば携帯電話機である携帯端末装置に内蔵するカメラにより、眼球の動きの回数(及び方向)を検出し、その回数(及び方向)により携帯端末装置に対する操作又は入力を行う。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態における携帯端末装置のブロック構成例を示す図である。図1は、一例として携帯電話機の構成例であって、制御部10は、携帯電話機1の有する通話機能、電子メール機能、インターネット接続機能、カメラ機能などすべての機能を制御し、CPU及びCPUにより実行されるプログラムを格納するメモリなどから構成される。本発明の実施の形態における眼球の動きの検出処理及び検出に伴う操作処理は、制御部10によるソフトウェア処理として実行される。」

ウ 図1

[図:0001380706000005.jpg]

エ 図2

[図:0001380706000006.jpg]

オ 「【0019】
図2は、眼球の動き検出を説明する図である。眼球の黒目が眼球の中心位置から上方向、下方向、右方向、左方向に移動した4パターンをそれぞれ検出する。検出方法は、黒目が眼球の中心位置にある眼球の画像をあらかじめ携帯端末装置1の内蔵カメラ17で撮像し、その画像を制御部10内のメモリに記憶しておき、検出処理のとき、メモリに記憶されている眼球画像の黒目位置と、カメラ17が撮像した眼球画像の黒目位置とを比較し、黒目位置が所定値以上離れている場合、眼球の動きを検出し、その方向を特定する。
【0020】
黒目位置は、例えば、黒目部分データの輝度データと白目部分など他の部位における輝度データとの差異から、黒目の左右上下端の位置を決定し、黒目の各端位置の比較により、眼球の動きを検出する。黒目の各端位置から黒目の中心部の位置を求め、黒目の中心部の位置同士を比較してもよい。」

カ 図3

[図:0001380706000007.jpg]

キ 「【0021】
図3は、本発明の第一の実施の形態例における眼球の動きの回数による操作処理について説明する図である。第一の実施の形態例では、眼球の動きの方向と回数に基づいて、携帯電話機の動作モードを決定する操作が行われる。
【0022】
カメラ17がユーザの眼球を撮像すると、縦方向眼球動作検出部B1が縦方向の眼球動作を検出すると、上方向眼球動作検出部B3は、縦方向における上方向の眼球動作を検出し、下方向眼球動作検出部B4は、縦方向における下方向の眼球動作を検出する。また、横方向眼球動作検出部B2が横方向の眼球動作を検出すると、右方向眼球動作検出部B5は、横方向における右方向の眼球動作を検出し、左方向眼球動作検出部B4は、横方向における左方向の眼球動作を検出する。
【0023】
上方向眼球動作検出部B3が検出した上方向の眼球の動きの回数は、カウンタC1によりカウントされ、記憶される。同様に、カウンタC2、C3、C4は、それぞれ下方向眼球動作検出部B4が検出した下方向の眼球の動きの回数、右方向眼球動作検出部B5が検出した右方向の眼球の動きの回数、左方向眼球動作検出部B6が検出した左方向の眼球の動きの回数をカウントし、記憶する。各眼球動作検出部B1~B6、カウンタC1~C4及び後述の動作モード決定部D1は、制御部10の機能である。
【0024】
動作モード決定部D1は、カウンタC1~C4に記憶される各回数を読み出して、図示されるように、各方向の回数をディスプレイ14に表示する。各方向の回数に対応してあらかじめ決められた動作モードが表示されてもよい。そして、動作モード決定部D1は、眼球動作を検出せずに一定時間経過すると、各方向の回数を確定して、各回数に対応してあらかじめ決められた操作を決定し、当該操作に対する処理を実行する。決定された操作が実行されることで、カウンタの回数はリセットされる。
【0025】
例えば、操作は携帯電話機の動作モードを決定する操作であって、携帯電話機が電話をかけるための電話モード、電子メールを送受信するための電子メールモード、内蔵カメラにより写真を撮像するためのカメラモード、インターネットに接続するためのインターネットモードなどの複数の動作モードを有する場合、上方向、下方向、右方向、左方向それぞれへの眼球の動きを1回検出した場合に、それぞれ電話モード、電子メールモード、カメラモード、インターネットモードにする。各方向への複数回数、及び複数方向への回数の組み合わせにより、動作モードに限らず、さらに細かい操作を規定してもよい。」

(2)引用文献4記載技術

上記(1)の,特に下線を付加した記載に着目すると,引用文献4には,以下の発明(以下,「引用文献4記載技術」という。)が記載されていると認められる。

「携帯電話機のような携帯端末装置に関し、内蔵するカメラにより眼球の動きを検出して携帯端末の操作を可能とする携帯端末装置であって,
携帯電話機である携帯端末装置に内蔵するカメラにより、眼球の動きの回数(及び方向)を検出し、その回数(及び方向)により携帯端末装置に対する操作又は入力を行っており,
制御部10は、携帯電話機1の有する通話機能、電子メール機能、インターネット接続機能、カメラ機能などすべての機能を制御し、CPU及びCPUにより実行されるプログラムを格納するメモリなどから構成されており,
眼球の動き検出において,眼球の黒目が眼球の中心位置から上方向、下方向、右方向、左方向に移動した4パターンをそれぞれ検出しており,黒目が眼球の中心位置にある眼球の画像をあらかじめ携帯端末装置1の内蔵カメラ17で撮像し、その画像を制御部10内のメモリに記憶しておき、検出処理のとき、メモリに記憶されている眼球画像の黒目位置と、カメラ17が撮像した眼球画像の黒目位置とを比較し、黒目位置が所定値以上離れている場合、眼球の動きを検出し、その方向を特定しており,
眼球の動きの方向と回数に基づいて、携帯電話機の動作モードを決定する操作において,
カメラ17がユーザの眼球を撮像すると、縦方向眼球動作検出部B1が縦方向の眼球動作を検出すると、上方向眼球動作検出部B3は、縦方向における上方向の眼球動作を検出し、下方向眼球動作検出部B4は、縦方向における下方向の眼球動作を検出し,横方向眼球動作検出部B2が横方向の眼球動作を検出すると、右方向眼球動作検出部B5は、横方向における右方向の眼球動作を検出し、左方向眼球動作検出部B4は、横方向における左方向の眼球動作を検出しており,
上方向眼球動作検出部B3が検出した上方向の眼球の動きの回数は、カウンタC1によりカウントされ、記憶され,同様に、カウンタC2、C3、C4は、それぞれ下方向眼球動作検出部B4が検出した下方向の眼球の動きの回数、右方向眼球動作検出部B5が検出した右方向の眼球の動きの回数、左方向眼球動作検出部B6が検出した左方向の眼球の動きの回数をカウントし、記憶しており,
動作モード決定部D1は、カウンタC1~C4に記憶される各回数を読み出して、各方向の回数をディスプレイ14に表示し,各方向の回数に対応してあらかじめ決められた動作モードが表示され、動作モード決定部D1は、眼球動作を検出せずに一定時間経過すると、各方向の回数を確定して、各回数に対応してあらかじめ決められた操作を決定し、当該操作に対する処理を実行する。決定された操作が実行されることで、カウンタの回数はリセットされ,
携帯電話機が電話をかけるための電話モード、電子メールを送受信するための電子メールモード、内蔵カメラにより写真を撮像するためのカメラモード、インターネットに接続するためのインターネットモードなどの複数の動作モードを有する場合、上方向、下方向、右方向、左方向それぞれへの眼球の動きを1回検出した場合に、それぞれ電話モード、電子メールモード、カメラモード、インターネットモードにする
携帯端末装置。」

4 引用文献5

(1)引用文献5の記載事項

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原査定の拒絶理由に引用された引用文献5には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者が視線を向けている視線対象物における視線方向先の座標を求める視線方向特定システムに関する。
【背景技術】
続きを表示(全15行)
【0002】
背景技術となる視線方向特定システムに類似する技術としては、特開2003-271932号公報に開示される視線方向検出装置がある。この視線方向検出装置は、顔画像撮像手段によって撮像された顔画像から目の位置を特定し、この眼位置特定手段により特定された画像から眼球の回転角を検出するとともに、顔画像位置特定手段によって撮像された顔画像から顔の向きを検出し、これら眼球回転角と顔の向きから視線方向を検出する構成である。この視線方向検出装置によれば、視線方向検出の精度をある程度向上させることができる。
【特許文献1】 特開2003-271932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記背景技術は以上のように構成され、視線方向検出の精度をある程度改善することができるものの、主に車両用の視線方向検出であってより精度が求められる分野、例えば、視線方向の検出によってキータイピングを行う分野等においては不十分であるという課題を有する。
【0004】
また、前記公報を精査すると、眼球の回転角、及び、顔の向きに基づいて、視線方向のうち横座標を検出することはできるものの、縦座標を検出する手段は開示されておらず、視線の縦座標も検出できないという課題を有する。
【0005】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、視線方向検出の精度をより向上させると共に、視線の横座標だけでなく縦座標を把握し、視線対象物における視線方向先の座標を求める視線方向特定システムを提供することを目的とする。」

イ 図2

[図:0001380706000008.jpg]

ウ 「【0018】
前記視線方向特定システムは、図2に示すように、ハードウェアの構成が撮像装置10であるCCDカメラ11と、目尻検出手段21、口元検出手段22、黒目中心検出手段23、顔位置方向特定手段24、黒目方向特定手段25及び視線方向特定手段26が実装されたコンピュータ40と、ディスプレイ30からなる。
(中略)
【0019】
続きを表示(全15行)
前記黒目中心検出手段23は、黒目中心の座標検出を行うために、まず、取得画像の輪郭画像を得るべく、縦、横方向の差分を計算して画像化する。差分が15未満の画素は無視し、差分の8倍を画素として用いて輪郭画像を得る。8倍したときに画素の範囲を超えた画素は補正する。さらに、目の付近でラスタ走査しながら、ある点Aを中心にして周りの画素Bを極座標に変換する。ただし、極座標に変換するのはAからBの距離(半径)が黒目の半径に近いBだけとする。黒目中心Cを中心として周りの画像を極座標に変換すると、黒目の輪郭である真円に近い形が直線となる。このことを利用して、同半径の点にある画素の和を計算し、画素の和がすべての画素の和の最大値となるなら、その中心の点Cを黒目の中心座標とする。
【0020】
前記目尻検出手段21は、前記同様に輪郭画像にし、目付近の緩やかな曲線を検出し、目尻の座標を求める。なお、目尻は、黒目中心検出の後に行うこともでき、黒目中心の座標が分かれば、容易にまぶたの曲線を検出することができる。また、目頭も同様に求めて目尻と同様に用いることもできる。
前記口元検出手段22は、前記同様に輪郭画像にし、鼻付近の横方向の直線を検出し、口元の座標を求める。
【0021】
前記顔位置方向特定手段24は、基準画像から検出した目尻及び口元と、視線検出するための画像から検出した目尻及び口元とから、アフィン変換を用いて顔の位置及び方向を特定する。
(中略)
【0022】
前記黒目方向特定手段25は、基準画像から検出した黒目中心と、視線検出するための画像から検出した黒目中心とから、黒目方向を特定する。基準画像は、注視点が前記ディスプレイの中心、ディスプレイの四隅の5点であるため、5枚ある。5枚は、使用者が体位移動(体自体の移動、首の各種回転等を含む)をしていないため、目尻、口元の座標は変わっていないが、異なる注視点を注視しているため、黒目中心の位置が異なる。これらの基準画像から、どの位置に黒目があればどの方向を向いているかを特定することができる。
【0023】
前記視線方向特定手段26は、前記顔の位置及び方向並びに黒目方向から視線方向を特定する。前記黒目方向特定手段25により黒目方向は特定をすることはでき、使用者が体位移動しなければ、基準面のどの部分を注視しているかは、黒目中心の位置で容易に分かる。しかしながら、使用者は無意識のうちに微妙に体が動いており、この動きが誤差となって、視線方向を正確に特定することができなかった。そこで、この視線方向特定手段26は、顔位置方向特定手段24により求められた顔位置及び方向を、黒目方向に合成して視線方向を特定している。」

(2)引用文献5記載技術

上記(1)の,特に下線を付加した記載に着目すると,引用文献5には,以下の発明(以下,「引用文献5記載技術」という。)が記載されていると認められる。

「視線方向検出の精度をより向上させると共に、視線の横座標だけでなく縦座標を把握し、視線対象物における視線方向先の座標を求める視線方向特定システムであって,
撮像装置10であるCCDカメラ11と、目尻検出手段21、口元検出手段22、黒目中心検出手段23、顔位置方向特定手段24、黒目方向特定手段25及び視線方向特定手段26が実装されたコンピュータ40と、ディスプレイ30からなり,
前記黒目中心検出手段23は、黒目中心の座標検出を行い,
前記目尻検出手段21は、目尻の座標を求め,
前記口元検出手段22は、口元の座標を求め,
前記顔位置方向特定手段24は、基準画像から検出した目尻及び口元ととから、顔の位置及び方向を特定し,
前記黒目方向特定手段25は、基準画像から検出した黒目中心と、視線検出するための画像から検出した黒目中心とから、黒目方向を特定し,
前記視線方向特定手段26は、前記顔の位置及び方向並びに黒目方向から,顔位置及び方向を、黒目方向に合成して視線方向を特定している
視線方向特定システム。」

第5 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことが認められる。

ア 引用発明は,「重度の筋萎縮性側策硬化症患者(以下,ALSという)等と介護者,家族等とのコミュニケーションを支援する,眼球運動を用いた視線入力コミュニケーションシステム」である。

ここで,引用発明の「コミュニケーションを支援する」は,本願発明1の「コミュニケーションをとる」に相当する。

したがって,本願発明1と引用発明とは,「コミュニケーションをとるシステム」である点で共通しているといえる。

イ 引用発明では,「ALS患者20等は,PCの表示画面11上の区画された領域を目で注視することにより,意図する項目を選択することができ,表示画面11は,設置が容易である液晶ディスプレイであり,」「表示画面11上は,9分割されており,各分割された領域には,ALS患者20にとって重要とされる表現が提示されており,ALS患者20は,意図する項目を目で注視し,2秒以上の注視が行われた時点で,PCは注視であると認識し,その項目の選択を行い,選択された項目は,あらかじめ登録しておいた音声で読み上げるようにしてあ」るとされている。

ここで,引用発明の「ALS患者20等」,「表示画面11上」の「分割された領域に」「提示され」た「ALS患者20にとって重要とされる表現」である「意図する項目」は,それぞれ,本願発明1の「ユーザ」,「一連のコミュニケーションオプション」に相当する。

また,引用発明の「液晶ディスプレイ」に表示された「表示画面11」は,「意図する項目を選択することができ」るように表示させているのであるから,「液晶ディスプレイ」に表示された「表示画面11」は,本願発明1と同様に「一連のコミュニケーションオプションをユーザに選択可能に提示するように構成された選択インタフェースであって,視覚インタフェース」である点で共通しているといえる。

さらに,引用発明において,「ALS患者20は,意図する項目を目で注視し,2秒以上の注視が行われた時点で,PCは注視であると認識し,その項目の選択を行い,選択された項目は,あらかじめ登録しておいた音声で読み上げる」から,引用発明のPCも,本願発明1と同様に,「可聴インタフェース」「を含」んでいるといえる。

したがって,本願発明1と引用発明とは,「一連のコミュニケーションオプションをユーザに選択可能に提示するように構成された選択インタフェースであって,視覚インタフェース,可聴インタフェース」「を含む群からの少なくとも1つを含む選択インタフェース」「を含む」点で共通しているといえる。

しかし,本願発明1では,「選択インタフェース」の選択的構成の一つとして,「触覚インタフェース」も含んでいるのに対して,引用発明では,「選択インタフェース」の選択的構成の一つとして,「触覚インタフェース」は含んでいない点で相違している

ウ 引用発明において,「ビデオカメラを用いて患者の顔画像を取得し,画像処理により非接触的に患者の視線方向検出を行うことにより,表示画面上の意図する項目を選択するとともに,眼球運動と瞼の開閉動作による眼球機能のみで入力し」ており,「ビデオカメラ」「に市販の製品を用いて」いるとされている。

ここで,「市販の」「ビデオカメラ」は,連続画像のシーケンスとして動画を撮影(捕捉)していることは技術常識である。

また,引用発明において,「ビデオカメラを用いて患者の顔画像を取得し,画像処理により非接触的に患者の視線方向検出を行うことにより,表示画面上の意図する項目を選択するとともに,眼球運動と瞼の開閉動作による眼球機能のみで入力し」ているのであるから,「患者の顔画像を取得」する際に,患者の目の画像も撮影して「眼球運動と瞼の開閉動作」を取得しているといえる。

したがって,本願発明1と引用発明とは,「前記ユーザの目の連続画像のシーケンスを捕捉するように構成された少なくとも1つのカメラ」「を含む」点で共通しているといえる。

エ 引用発明の「視線入力コミュニケーションシステム」は,「PCとビデオカメラ12により構成され,」PCの「表示画面11は,設置が容易である液晶ディスプレイであ」るとされている。

ここで,上記イで述べたように,引用発明の「液晶ディスプレイ」に表示された「表示画面11」は,本願発明1の「一連のコミュニケーションオプションをユーザに選択可能に提示するように構成された選択インタフェースであって,視覚インタフェース」に対応し,上記ウで述べたように,引用発明の「ビデオカメラ」は,本願発明1の「カメラ」に対応しているといえる。

また,引用発明において,「PC」が「液晶ディスプレイ」と「ビデオカメラ」に通信可能に結合されていることは,当業者にとって明らかである。

したがって,本願発明1と引用発明とは,「前記少なくとも1つのカメラ及び前記選択インタフェースと通信可能に結合されたプロセッサ」「を含む」点で共通しているといえる。

カ 引用発明において,「初期画面で「テレビ」という項目を選んだとすると,次の画面には,TVに関する項目が表示され,ここで「チャンネルを変えて」を選択すると,TVのチャンネルが表示され,患者が,この中から希望する番号(ここでは5)を選択すると“チャンネル5に変えてください。”と音声で読み上げ」ている。

ここで,引用発明において,「「テレビ」という項目を選んだとすると,次の画面には,TVに関する項目が表示され」ることは,患者(ユーザ)が選択した項目(オプション)に関する情報であるTVに関する項目を表示する処理を実行しているといえる。

また,PCにおいて,情報処理を実行する際には,プログラム命令により,情報処理が実行されることは,当業者にとって明らかである。

したがって,本願発明1と引用発明とは,「プロセッサが,」「前記ユーザ選択されたコミュニケーションオプションを実行する命令を提供するように構成されたプロセッサ」である点で共通しているといえる。

(2)一致点・相違点

本願発明1と,引用発明とは,以下アの点で一致し,以下イの点で相違する。

ア 一致点

「コミュニケーションをとるシステムにおいて,
一連のコミュニケーションオプションをユーザに選択可能に提示するように構成された選択インタフェースであって,視覚インタフェース,可聴インタフェース,を含む群からの少なくとも1つを含む選択インタフェースと,
前記ユーザの目の連続画像のシーケンスを捕捉するように構成された少なくとも1つのカメラと,
前記少なくとも1つのカメラ及び前記選択インタフェースと通信可能に結合されたプロセッサであって,
前記プロセッサが,
(iv)前記ユーザ選択されたコミュニケーションオプションを実行する命令を提供するように構成されたプロセッサと,
を含むことを特徴とするシステム。」

イ 相違点

(ア) 相違点1

本願発明1では,「選択インタフェース」の選択的構成の一つとして,「触覚インタフェース」も含んでいるのに対して,引用発明では,「選択インタフェース」の選択的構成の一つとして,「触覚インタフェース」は含んでいない点。

(イ) 相違点2

本願発明1では,プロセッサが「(i)捕捉された画像を受信及び処理し,眼窩内の目の瞳孔の向きである目の相対的な向きを決定し,前記目の相対的な向きの決定は,

a.前記捕捉された画像の瞳孔をマークして,瞳孔の検出と位置を示す関心領域を追跡すること,

b.基準点を2Dグリッドの中心として設定して,前記グリッドの中心を基準にした基準点の座標系を構築すること,

c.瞳孔の位置を前記グリッド上の座標に変換すること,

を具えており,

(ii)前記2Dグリッドの少なくとも2つのセクションのどのセクションに前記関心領域が位置するかを決定することによって,前記目の相対的な向きに基づいてアイジェスチャを決定し,

(iii)前記決定されたアイジェスチャに基づいて,ユーザ選択されたコミュニケーションオプションを決定することであって,前記ユーザ選択されたコミュニケーションオプションを,ユーザの正確な注視方向又は目線の決定を必要とせずに,またディスプレイ上の固有の座標位置を決定することなく決定し」ているのに対して,引用発明では,そのような構成を備えていない点。

(3)相違点についての判断

事案に鑑みて,まず,相違点2について検討する。

本願発明1の相違点2に係る構成の,特に,「目の相対的な向きの決定」において,「a.前記捕捉された画像の瞳孔をマークして,瞳孔の検出と位置を示す関心領域を追跡すること,

b.基準点を2Dグリッドの中心として設定して,前記グリッドの中心を基準にした基準点の座標系を構築すること,

c.瞳孔の位置を前記グリッド上の座標に変換すること,

を具えており,

(ii)前記2Dグリッドの少なくとも2つのセクションのどのセクションに前記関心領域が位置するかを決定することによって,前記目の相対的な向き」を決定するという構成について,引用文献2および引用文献4ならびに引用文献5には,記載も示唆も無く,当該構成が周知であったとも認められない。

特に,引用文献4には,「目の相対的な向きの決定」し,「前記目の相対的な向きに基づいてアイジェスチャを決定」することは開示されているものの,上記第4の3(2)で述べたように引用文献4記載技術では,「メモリに記憶されている眼球画像の黒目位置と、カメラ17が撮像した眼球画像の黒目位置とを比較し、黒目位置が所定値以上離れている場合、眼球の動きを検出し、その方向を特定」するという構成を採用しているため,上記相違点2の「目の相対的な向きの決定」において,「a.前記捕捉された画像の瞳孔をマークして,瞳孔の検出と位置を示す関心領域を追跡すること,

b.基準点を2Dグリッドの中心として設定して,前記グリッドの中心を基準にした基準点の座標系を構築すること,

c.瞳孔の位置を前記グリッド上の座標に変換すること,

を具えており,

(ii)前記2Dグリッドの少なくとも2つのセクションのどのセクションに前記関心領域が位置するかを決定することによって,前記目の相対的な向き」を決定するという構成には,至らない。

したがって,引用発明および引用文献2,4ならびに5に基づいて,当業者は本願発明1の相違点2に係る構成を容易に想到することができない。

なお,原査定では,用いられていない引用文献3にも,審査官が前置報告書で提示した引用文献6および7にも,上記相違点2に係る構成は記載も示唆も無い。(引用文献6および7に開示されているのは,瞳孔の相対的位置と,表示画面上で注視している座標位置との間の座標変換を行う技術であり,本願発明1のように「目の相対的な向きの決定」において,瞳孔の位置を「グリッド上の座標に変換する」ものではない。)

エ 小括

したがって,上記相違点1について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明および引用文献2,4ならびに5に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし本願発明6について

本願発明2ないし本願発明6は,いずれも,本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,引用発明および引用文献2,4ならびに5に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明7ないし本願発明10について

本願発明7は,概ね,本願発明1の発明のカテゴリを,単に,システムの発明から方法の発明へと変更したものであり,上記相違点2に係る構成と同様の以下の構成を備えているから,本願発明1と同様に,引用発明および引用文献2,4ならびに5に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

「目の相対的な向きの決定」において,「a.前記捕捉された画像の瞳孔をマークして,瞳孔の検出と位置を示す関心領域を追跡すること,
b.基準点を2Dグリッドの中心として設定して,前記グリッドの中心を基準にした基準点の座標系を構築すること,
c.瞳孔の位置を前記グリッド上の座標に変換すること,
を具えており,
(ii)前記2Dグリッドの少なくとも2つのセクションのどのセクションに前記関心領域が位置するかを決定することによって,前記目の相対的な向き」を決定するという手順。

本願発明8ないし本願発明10は,いずれも,本願発明7と同一の構成を備えるものであるから,本願発明7と同じ理由により,引用発明および引用文献2,4ならびに5に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について

審判請求時の補正により,本願発明1ないし本願発明10は,いずれも,「瞳孔の大まかな位置に基づいてアイジェスチャを決定」する構成を

「a.前記捕捉された画像の瞳孔をマークして,瞳孔の検出と位置を示す関心領域を追跡すること,
b.基準点を2Dグリッドの中心として設定して,前記グリッドの中心を基準にした基準点の座標系を構築すること,
c.瞳孔の位置を前記グリッド上の座標に変換すること,
を具えており,
(ii)前記2Dグリッドの少なくとも2つのセクションのどのセクションに前記関心領域が位置するかを決定することによって,前記目の相対的な向きに基づいてアイジェスチャを決定」すると限定していることから,本件補正後の本願発明1ないし本願発明10は,原査定において引用された引用文献1に記載された発明および引用文献2,4ならびに5に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

したがって,原査定の理由1(進歩性)は,維持することはできない。

第7 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。

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2021-000952

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