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特許異議申立

2020-700865

汚染防止装置において又は火炎止めで使用するのに好適な不織布繊維性材料を製造するための再利用廃水の使用

審判番号
2020-700865
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-541095
登録番号
6691865
請求日
2020年11月12日
審決日
2022年03月17日
公報発行日
2022年10月28日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】池田 成人
  • 【権利者代理人】清水 義憲
  • 【権利者代理人】酒巻 順一郎
  • 【権利者代理人】戸津 洋介
  • 【権利者代理人】赤澤 太朗
  • 【権利者代理人】野村 和歌子
  • 【権利者代理人】佃 誠玄
  • 【権利者代理人】吉野 亮平
  • 【異議申立人】河井 清悦
  • 【異議申立人】本間 賢一
審判長/審判官
  • 審判長 金澤 俊郎
  • 審判官 星名 真幸
  • 審判官 鈴木 充
分類
P1651.121-ZAA(F01N) / P1651.537-ZAA(F01N) / P1651.536-ZAA(F01N) / P1651.852-ZAA(F01N) / P1651.853-ZAA(F01N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第2項
データ出所
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事件の表示

特許第6691865号発明「汚染防止装置において又は火炎止めで使用するのに好適な不織布繊維性材料を製造するための再利用廃水の使用」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6691865号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし15〕、〔16ないし20〕について訂正することを認める。 特許第6691865号の請求項1ないし20に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6691865号の請求項1ないし20に係る特許についての出願は、2014年(平成26年)12月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年12月19日、(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、令和2年4月15日にその特許権の設定登録がされ、令和2年5月13日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和2年11月12日:特許異議申立人河井 清悦による請求項1ないし 20に係る特許に対する特許異議の申立て 令和2年11月13日:特許異議申立人本間 賢一による請求項1ないし 20に係る特許に対する特許異議の申立て 令和3年2月9日付け:取消理由通知書 令和3年5月17日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和3年7月16日 :特許異議申立人河井 清悦による意見書の提出 令和3年8月13日 :特許異議申立人本間 賢一による意見書の提出 令和3年9月30日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和3年9月30日付けで特許権者に取消理由(決定の予告)を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和3年5月17日付けで特許権者から提出された訂正請求書による訂正の内容は以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記第1の廃水を前記第2のスラリーに加えることが」と記載されているのを、「前記第2のスラリーを準備することにおいて、前記第1の廃水を前記第2のスラリーに加えることが」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~15も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「与えない、方法。」と記載されているのを、「与えず、前記第1の中性pH凝集剤が、ミョウバン凝集剤と比べて、単独で比較的中性のpHを示す、方法。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~15も同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 明細書の段落【0067】の【表4】に「Aqua Hawk 2887」及び「式7602」と記載されているのを、「Aqua Hawk 2987」及び「Formula 7602」にそれぞれ訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項16に「前記第1の廃水が比較的中性のpHを維持する」と記載されているのを、「前記第1の廃水が、ミョウバン凝集剤を使用した結果生じる廃水と比べて比較的中性のpHを維持する」に訂正する(請求項16の記載を引用する請求項17~20も同様に訂正する。)。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項19に「前記凝集剤」と記載されているのを、「前記第1の中性pH凝集剤」に訂正する(請求項19の記載を引用する請求項20も同様に訂正する。)。 (6)訂正事項6 明細書の段落【0067】の【表4】に「Aqua Hawk 2887」及び「式7602」と記載されているのを、「Aqua Hawk 2987」及び「Formula 7602」にそれぞれ訂正する。 (7)一群の請求項について 訂正前の請求項1ないし15は、請求項2ないし15が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項1ないし15について請求されている。 同様に、訂正前の請求項16ないし20は、請求項17ないし20が、訂正の請求の対象である請求項16の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項16ないし20について請求されている。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 訂正事項1は、訂正後の請求項1に係る発明において、特許請求の範囲の請求項1に「前記第1の廃水を前記第2のスラリーに加えること」が「前記第2のスラリーを準備することにおいて」行われることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書の段落【0032】や【0068】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、訂正後の請求項1に係る発明において、「前記第1の中性pH凝集剤が、ミョウバン凝集剤と比べて、単独で比較的中性のpHを示す」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書の段落【0035】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項3 訂正事項3は、明細書の段落【0067】の【表4】において、多数の記載箇所で「Aqua Hawk 2987」及び「Formula 7602」となっているにもかかわらず、一部の記載箇所で「Aqua Hawk 2887」及び「式7602」とされていたために不明瞭となっていた記載を整合させるように訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、本件特許明細書の段落【0039】、【0043】及び【0067】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)訂正事項4 訂正事項4は、訂正後の請求項16に係る発明において、「前記第1の廃水が、ミョウバン凝集剤を使用した結果生じる廃水と比べて比較的中性のpHを維持する」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書の段落【0035】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (5)訂正事項5 訂正事項5は、訂正後の請求項19に係る発明において、「前記凝集剤」が「前記第1の中性pH凝集剤」であることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書の段落【0042】及び【0043】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (6)訂正事項6 訂正事項6は、明細書の段落【0067】の【表4】において、多数の記載箇所で「Aqua Hawk 2987」及び「Formula 7602」となっているにもかかわらず、一部の記載箇所で「Aqua Hawk 2887」及び「式7602」とされていたために不明瞭となっていた記載を整合させるように訂正するものであり、本件特許明細書の段落【0039】、【0043】及び【0067】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3 小括 上記のとおり、訂正事項1ないし6に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし15〕、〔16ないし20〕について訂正することを認める。 第3 取消理由の概要 訂正前の請求項1ないし20に係る特許に対して、当審が令和3年2月9日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 理 由 1.(進歩性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2.(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 3.(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 4.(実施可能要件)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ●理由1(進歩性)について ・請求項1ないし10、16ないし20 ・引用文献等1及び2 ・請求項11ないし15 ・引用文献等1ないし3 <引用文献等一覧> 1.特表2010-519419号公報(特許異議申立人河井清悦及び本間賢一が提出した甲第1号証) 2.特公平3-33838号公報(特許異議申立人本間賢一が提出した甲第2号証) 3.特表2006-514524号公報(特許異議申立人河井清悦が提出した甲第6号証) ●理由2(サポート要件)について 請求項1ないし20に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 ●理由3(明確性)について 請求項1ないし20に係る発明は明確でない。 ●理由4(実施可能要件)について 発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし20に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 第4 当審の判断 1 取消理由通知に記載した取消理由について 1.1 取消理由1(進歩性)について (1)訂正後の請求項1ないし20に係る発明 上記訂正請求により訂正された訂正後の請求項1ないし20に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明20」という。)は、上記「第2 訂正の適否」の「1 訂正の内容」において示したとおりのものである。 (2)引用文献の記載 ア 引用文献1について 本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって、取消理由通知において引用された特表2010-519419号公報(以下「引用文献1」という。)には、「可撓性繊維性材料、汚染防止装置、及びそれらを作成する方法」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付与。以下同様。)。 (ア)「【0022】 図1は、代表的な汚染防止装置を示す。図1を参照すると、汚染防止装置10は、ハウジング12を包含し、ほぼ円錘の入口14及び出口16(即ち、エンドコーンと一般的に称される)を有する。ハウジング12は、これはカン又はケーシングと一般的に称されるが、金属(例えば、ステンレススチール)から通常作製される。ハウジング12内に配置されるのは、セラミック又は金属材料により作製されたモノリシック構造体18であり、またこれは触媒を包含してもよい。絶縁体22は、モノリシック構造体18を取り囲む。モノリシック構造体18は、例えば、触媒コンバータ要素又はディーゼル微粒子フィルタ要素であってもよい。本発明による可撓性繊維性材料は、絶縁体22として使用されてもよい。 【0023】 金属ハウジングの入口14及び出口16領域は、内部エンドコーンハウジング28及び外部エンドコーンハウジング26を包含する。絶縁材30は、内部エンドコーンハウジング28と外部エンドコーンハウジング26との間に位置付けられる。本発明による可撓性繊維性材料は、絶縁材30として使用されてもよい。」 (イ)「【0028】 有用な無機繊維には、例えば、繊維ガラス、セラミック繊維、非酸化物無機繊維、例えば、グラファイト繊維又はホウ素繊維、及びこれらの混合物が挙げられる。 【0029】 有用なセラミック繊維には、例えば、アルミノボロシリケート繊維、アルミノシリケート繊維、アルミナ繊維、それらの熱処理された種類、及びこれらの混合物が挙げられる。好適なアルミノボロシリケート繊維の例には、ミネソタ州セントポール(St. Paul)の3M社(3M Company)から取引表記「ネクステル312セラミック繊維(NEXTEL 312 CERAMIC FIBERS)」、「ネクステル440セラミック繊維(NEXTEL 440 CERAMIC FIBERS)」、及び「ネクステル550セラミック繊維(NEXTEL 550 CERAMIC FIBERS)」として市販されているものが挙げられる。好適なアルミノシリケート繊維の例には、ニューヨーク州ナイアガラフォールズ(Niagara Falls)のユニフラックス社(Unifrax Corp.)から取引表記「ファイバーフラックス(FIBERFRAX)」7000Mとして、ジョージア州オーガスタ(Augusta)のサーマル・セラミックス(Thermal Ceramics)から取引表記「セラファイバー(CERAFIBER)」として、及び日本、東京の新日鐵化学株式会社(Nippon Steel Chemical Company)から取引表記「SNSC タイプ 1260 D1(SNSC Type 1260 D1)」として入手可能なものが挙げられる。好適な市販のアルミナ繊維の例には、英国ウィドネス(Widnes)のサフィル(Saffil)から取引表記「サフィル(SAFFIL)」として入手可能な多結晶アルミナ繊維が挙げられる。 【0030】 他の好適な無機繊維には:石英繊維、高シリカ含有量の非晶質及び結晶性繊維、アルミナ繊維及び高アルミナ繊維、非晶質及び結晶性アルミナ-シリカ繊維、酸化物及び非酸化物繊維、金属繊維、溶融物からの吹き込み、紡績、牽引により形成された繊維、ゾル-ゲル形成繊維、有機前駆体から形成された繊維、ガラス繊維、溶出ガラス繊維、及び実質的に無機組成物の他の繊維が挙げられる。好適な無機繊維はまた、有機及び無機材料の表面コーティング又はサイジングを含んでもよい。好適な無機繊維は、言うまでもなく、単独で又は他の好適な無機繊維との組み合わせにおいて使用されてもよい。」 (ウ)「【0032】 有用な第1の有機ポリマーには、例えば、それらのアクリルポリマー、ビニルポリマー(例えば、エチレン及びビニルアセテートを含むモノマーのコポリマー)、ポリウレタン、及びアニオン性基(例えば、末端基及び/又はペンダント側鎖基)を有するシリコーンポリマーが挙げられるが、それらの多くは必須ではない。任意に、追加的有機ポリマー(単数又は複数)が、第1の有機ポリマーとの組み合わせにより使用されてもよい。第1の有機ポリマーは、水性のアニオン安定化ポリマーエマルション(例えば、ラテックス)として、典型的には使用されるが、ただし、溶媒系ポリマー、又は100パーセント固形分のポリマーが時には有用である場合もある。 【0033】 典型的には、第1の有機ポリマーは、30摂氏温度(℃)、0℃、-10℃、-20℃、-30℃未満、又は更には-40℃未満のガラス転移温度を有するが、これは必須ではない。更に、第1の有機ポリマーは、エラストマーを含んでもよい。 【0034】 有用な水性ポリマーエマルション(ラテックスエマルションを包含する)には、例えば、可撓性繊維性材料に強度及び可撓性を提供するために好適な、アクリルポリマーエマルション、ポリウレタンエマルション、シリコーンポリマーエマルション、エポキシポリマーエマルション、ブチルゴムエマルション、ビニルポリマーエマルション、ビニルアセテートポリマーエマルション、及びこれらの組み合わせが挙げられる。有用な市販の水性ポリマーエマルションの例には、例えば、ペンシルベニア州フィラデルフィア(Philadelphia)のローム・アンド・ハース(Rohm and Haas)により市販される取引表記「ロプレックス(RHOPLEX)HA-8」(アクリルコポリマーの44.5重量%固形分の水性エマルション)、及びペンシルベニア州アレンタウン(Allentown)のエアープロダクツ(Air Products)により市販される取引表記「エアーフレックス(AIRFLEX)600BP」(55%固形分のエチレンビニルアセテートコポリマー)として入手可能なもの、及びこれらの組み合わせが挙げられる。 【0035】 有用な凝集剤には、カチオン性基を有する有機ポリマーが挙げられる。典型的には、有機ポリマーは、水膨張性又は水溶性であるが、しかしながらこれは必要条件ではない。例えば、ポリマーは単に水分散性であってもよい。好適な凝集剤の例には、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(以後、PDADMAC)及びジメチルアミンとエピクロロヒドリンとのコポリマーの溶液(典型的には水性)又は分散体が挙げられる。任意に、凝集剤は金属カチオン(例えば、アルミニウム)を更に含んでもよく、これは解離した錯体において(例えば、ハイドレート、クロライド、又はクロロハイドレート)、又はポリマー形態において(例えば、ポリ(メタルオキサイド)又はオキシクロライドとして)存在してもよい。 【0036】 好適な市販の凝集剤の例には、カリフォルニア州バーリントン(Burlington)のギャラット・キャラハン(Garratt Callahan)から取引表記「フォーミュラ(FORMULA)7644」(PDADMACの水溶液)、「フォーミュラ(FORMULA)7643」、「フォーミュラ(FORMULA)7642」、「フォーミュラ(FORMULA)AH-423」、「フォーミュラ(FORMULA)7602」、「フォーミュラ(FORMULA)7603」、「フォーミュラ(FORMULA)7552」、「フォーミュラ(FORMULA)7622」、「フォーミュラ(FORMULA)7655」、又は「フォーミュラ(FORMULA)7658」として;ルイジアナ州リンゴールド(Ringold)のミッドサウスケミカル(Mid-South Chemical)から取引表記「MP 9307」(ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとのコポリマーの水溶液であると考えられている)として;ニューヨーク州タリタウン(Tarrytown)のチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から取引表記「ZETAG 7125」(PDADMACの水溶液)、「ZETAG 7127」(PDADMACの水溶液)として;及びミネソタ州セントポール(St. Paul)のホーキンズ(Hawkins)から取引表記「アークティックフロック(ARCTICFLOC)AF12104」(PDADMACの水溶液)、「アクア・ホーク(AQUA HAWK)2987」(ポリアルミニウムヒドロキシクロライド及びカチオン性有機ポリマーの水溶液)、「アクア・ホーク(AQUA HAWK)101」(ポリアルミニウムヒドロキシクロライド及びポリ(四級アミン)の水溶液)、「アクア・ホーク(AQUA HAWK)427」(ポリアルミニウムヒドロキシクロライド及びポリ(四級アミン)の水溶液)、及び「アクア・ホーク(AQUA HAWK)2757」(アルミニウム系ポリ無機物及びカチオン性有機ポリマーの水溶液)として入手可能な水処理剤、及びこれらの組み合わせが挙げられる。 【0037】 ポリアミンは、プロトン化した(即ち、カチオン性及びポリカチオン性の)形態と平衡して水性媒体中に存在することが認められることになる。 【0038】 一般に、凝集剤は、乳化された第1の有機ポリマーの凝集を生じるのに有効な量で使用されるが、ただし、他の量もまた使用されてもよい。例えば、凝集剤は(固形分基準で)、第1の有機ポリマーの重量の少なくとも1、5、10、15、20、又は更には少なくとも100パーセントの量で存在してもよい。」 (エ)「【0051】 1つの代表的な有用な方法では、無機繊維、第1の有機ポリマーの水中スラリー(例えば、典型的には、水の重量の95重量パーセントを超える)が調製され、凝集剤と共に組み合わされる。任意成分(例えば、消泡剤、膨張性材料、又は充填剤)が次に添加され(使用される場合)、そしてスラリーは次に伝統的なウェットレイド不織布抄紙技術によって可撓性繊維性材料に形成される。つまり、このプロセスは、成分を混合し、スラリーをワイヤーメッシュ又はスクリーン上に注いで水の大部分を取り除くことを包含する。形成されたシートは次に乾燥されて可撓性繊維性材料を形成する。可撓性繊維性材料は次に、シート及びマットのような所望の形態に変換されてもよい。プロセスは、段階的に、バッチで、及び/又は連続方式で行われてもよい。」 (オ)「【0058】 繊維性シートを調製するための一般手順 水道水(3リットル、18℃)及び無機繊維(ジョージア州オーガスタ(Augusta)のサーマル・セラミックス(Thermal Ceramics)から取引表記「HAバルクファイバー(HA BULK FIBER)」として得られ、50重量パーセント未満のショット含有量に浄化されている)の60グラム(g)がブレンダーに添加される。ブレンダーは、低速度で5秒間操作される。得られたスラリーは、1リットルの水道水(18℃)を使用して、パドルミキサー装備混合コンテナの中にすすぎ落とされる。スラリーは追加の1リットルの水道水(18℃)を用いて希釈される。希釈されたスラリーは、固形分を懸濁し続けるように中速度で混合される。消泡剤(ニュージャージー州エジソン(Edison)のヘンケル(Henkel)から取引表記「フォーマスター(FOAMASTER)111」(0.3g)として得られる)及びエチレンビニルアセテートターポリマーラテックス(エアープロダクツ(Air Products)から取引表記「エアーフレックス(AIRFLEX)600BP」(6.0g、55重量パーセント固形分)として得られる)が添加される。凝集剤が、表2に示されるような量で滴下される。20~50メッシュの粒径を有する未膨張のバーミキュライト(43g)が次に添加される。ミキサー速度が増加され、混合は1~5分間継続される。パドルミキサーが取り除かれ、スラリーは、20cm×20cm(8インチ×8インチ)シートフォーマーの中に注入され、水抜きされる。水抜きされたシートの表面は、のし棒を用いて伸ばされて、過剰の水を取り除かれる。次にシートは、90~97kPa(13~14psi)の表面圧力において、吸取紙の間で5分間圧搾される。シートは次に、150℃で強制空気オーブン中で10~15分間乾燥され、試験前に雰囲気に曝されながら一晩平衡化される。 【0059】 実施例で使用される材料 表1(以下)は、実施例で使用される凝集剤を一覧にする。 【0060】 【表1-1】 [図:0001389360000001.jpg] 【0061】 【表1-2】 [図:0001389360000002.jpg] 【0062】 実施例1~31及び比較例A 繊維性材料のシートが、繊維性シートを調製するための一般手順(上記)によって、表2に示される凝集剤を使用して調製された。繊維性シートの試験結果がまた表2(以下)に提示されている。 【0063】 【表2】 [図:0001389360000003.jpg] 【0064】 実施例32 2つの容器は12~14℃に調節された水道水の1000ミリリットルで充填された。エアープロダクツ(Air Products)から取引表記「エアーフレックス(AIRFLEX)600BP」として入手可能なエチレンビニルアセテートターポリマーラテックス(1.8グラム)、及びヘンケル(Henkel)から取引表記「フォーマスター(FOAMASTER)111」として入手可能な消泡剤の0.1グラムが各容器に添加され、並びにラテックスを分散させるためにそっと混合された。更に、サーマル・セラミックス(Thermal Ceramics)から取引表記「HA-バルク(HA-BULK)」として入手可能な無機繊維の10グラム(それらが50重量%未満のショットを含有するように部分的に浄化された)が容器の1つに添加され及び繊維を分散させるために混合された。水中でのラテックスの分散の結果として生じた乳様の外観が両容器中で観察された。ミッドサウスケミカル(Mid South Chemical)から取引表記「7307C」として入手可能な凝集剤(0.1グラム)が各容器に緩やかに混合しながら添加された。ラテックス及び無機繊維の両方を保持する容器中では、液体の際立った清澄が1分未満で観察された。ラテックスを含有するが無機繊維のない容器中では、遅いアグロメレーション及び混合の清澄のみが5分を超える期間にわたって観察された。」 したがって、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 <引用発明> 「汚染防止装置10に使用される、ウェットレイド不織布抄紙技術によって形成される可撓性繊維性材料を形成する方法であって、 水道水及び無機繊維から得られるスラリーに、エチレンビニルアセテートターポリマーラテックス(エアープロダクツ(Air Products)から取引表記「エアーフレックス(AIRFLEX)600BP」として得られる)が添加され、下記表1に示される凝集剤が滴下されて混合されたスラリーを水抜きする方法。 [図:0001389360000004.jpg] [図:0001389360000005.jpg] 」 イ 引用文献2について 本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって、取消理由通知において引用された特公平3-33838号公報(以下「引用文献2」という。)には、「シート状物およびその製造方法」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。 (ア)「 本発明に用いられる不燃性繊維状物質としては石綿、ロツクウール、ガラス繊維、ケイ酸アルミ質等のセラミツク繊維、アルミナ繊維、炭素繊維等を挙げることができる。」(第7欄第26行ないし第29行) (イ)「 本発明において無機質繊維の表面を被覆し、からみを助長して得られたシート状物の強度や弾性回復力、加工性を増大させる目的で使用される熱可塑性樹脂を主成分とするバインダーとしては水に溶解もしくは分散可能な性状のものが好ましく、水溶性高分子もしくはエマルジヨンまたはラテツクス状樹脂が好適である。水溶性高分子としては例えばポリビニルアルコール系重合体、ポリアクリル酸系重合体、ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、澱粉等を挙げることができ、広く合成及び天然の水溶性高分子材料を用いることができる。エマルジヨンまたはラテツクス状樹脂としては、例えばエマルジヨンの形態を有するポリ酢酸ビニル及びその共重合体、ポリ塩化ビニル及びその共重合体、ポリアクリル酸エステル及びその共重合体、ポリエチレン及びその共重合体、ポリウレタン系重合体等を挙げることができ、又、エチレン-アクリル酸塩共重合体等のハイドロゾルもこの範ちゆうに含めることができる。 本発明において特に柔軟性、屈曲性を必要とする用途に供するためのシート状物を得る上においは、特に熱可塑性樹脂としてそのガラス転移点が-50~30℃の範囲内にある樹脂をバインダーとして用いることが好ましく、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体、可塑化塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、(メタ)アクリル酸エステル共重合体等をを挙げることができる。」(第8欄第5行ないし第32行) (ウ)「 つぎに本発明による防火性と屈曲性に優れたシート状物の製造方法を具体的に説明する。まず一定量の前述の不熱性繊維状物質および必要に応じて前述の有機質繊維や各種の添加剤、さらに前述の水溶性熱可塑性樹脂もしくはエマルジヨンまたはラテツクス状の熱可塑性樹脂を主成分とするバインダーを該熱可塑性樹脂の架橋剤もしくは高分子凝集剤(ポリアクリルアミド系、ポリエチレンイミン系、ポリアクリル酸ソーダ系等)と共に水中に均一に分散溶解させてスラリー原液を調整する。この時点で分散効果を高めるために適宜界面活性剤を加えてもよい。また、本発明においてはこの時点でさらに脱水効率を高め、該シート状物のバインダー量をコントロールする目的で泡安定剤を用いることができる。この泡安定剤としては一般にはノニオン系界面活性剤が有効であり、その作用は、スラリー原液中に添加された水溶性熱可塑性樹脂もしくはエマルジヨンまたはラテツクス状の熱可塑性樹脂の作用により該スラリー原液は若干起泡してくるが、この気泡を均一微細化し、減圧脱水時に繊維状物質間に適当な水膜を形成せしめて空気の素抜けを防止し、脱水率を常に一定に保つこことである。分散方法はチエスト等での比較的ゆるやかな撹拌が好ましく、ピーター等の装置で激しく打解すると繊維状物質が破断したり、球状の集合体を形成して好ましくない。該不燃性繊維状物質および該バインダーの分散濃度は共に0.1~5重量%が好ましく、得られるシート状物の使用目的によつて適宜選択されるべきである。次に該スラリー原液をタンクから繊維状物質が球状の集合体にならないような構造を有するスラリー用ポンプで輸送するか、上部より落下させる方法により抄造部へ導き、走行もしくは回転する網状または多孔質状の基材の面と5~60度好ましくは20~45度の角度を有する方向から供給して該基材上にシート状に抄造成形し、3~30度の配向度を有するウエツトマツトを作製する。この時点で該基材面より濾水したバインダーを含む白水は、脱水工程での白水と共にスラリー原液調整槽へ戻されて再使用される。」(第12欄第14行ないし第13欄第9行) したがって、引用文献2には次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。 <引用文献2記載事項> 「防火性に優れるシート状物の製造方法において、ガラス繊維等の不燃性繊維状物質、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂を主成分とするバインダーを高分子凝集剤と共に水中に均一に分散溶解させてスラリー原液を調整し、次に該スラリー原液を抄造部へ導き、網状または多孔質状の基材上にシート状に抄造成形し、この時点で該基材面より濾水したバインダーを含む白水は、脱水工程での白水と共にスラリー原液調整槽へ戻されて再使用されること。」 (3)対比・判断 ア 本件発明1について 本件発明1と引用発明とを対比する。 第1に、引用発明における「汚染防止装置10」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件発明1における「汚染防止装置」に相当し、以下同様に、「ウェットレイド不織布抄紙技術によって形成される可撓性繊維性材料を形成する方法」は「不織布繊維性材料の製造方法」に、「水道水」は「水」に、「無機繊維」は「第1の無機繊維」にそれぞれ相当する。 第2に、引用発明における「エチレンビニルアセテートターポリマーラテックス(エアープロダクツ(Air Products)から取引表記「エアーフレックス(AIRFLEX)600BP」として得られる)」は、本件訂正明細書の発明の詳細な説明における段落【0027】、【0063】の【表2】、【0066】の【表3】に挙げられた有機結合剤の具体例と同一であるから、本件発明1における「第1の有機結合剤」に相当する。 第3に、引用発明における「表1に示される凝集剤」は、引用文献1の段落【0060】及び【0061】の【表1】を参酌すると、本件訂正明細書の発明の詳細な説明における段落【0043】の【表1】に挙げられた中性pH凝集剤の具体例と同一であるから、本件発明1における「第1の中性pH凝集剤」に相当する。 第4に、引用発明における「水道水」、「無機繊維」、「エチレンビニルアセテートターポリマーラテックス(エアープロダクツ(Air Products)から取引表記「エアーフレックス(AIRFLEX)600BP」として得られる)」及び「表1に示される凝集剤」が混合された「スラリー」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件発明1における「第1のスラリー」に相当する。 第5に、引用発明における「スラリーを水抜きする」という事項は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件発明1における「第1のスラリーから第1の廃水を除去すること」という事項に相当する。 よって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「汚染防止装置において使用するのに好適な不織布繊維性材料の製造方法であって、 水と、第1の無機繊維と、第1の有機結合剤と、第1の中性pH凝集剤と、を含む第1のスラリーを準備することと、 前記第1のスラリーから第1の廃水を除去することと、を含む方法。」 <相違点> 本件発明1は「ある量の前記第1の廃水と、任意の量の比較的きれいな水と、第2の無機繊維と、第2の有機結合剤と、前記第1のスラリーで使用した凝集剤と同一の及び/又は異なる第2の凝集剤と、を含む第2のスラリーを準備することと、 前記第2のスラリーから第2の不織布繊維性材料を形成することと、を含み、 前記第2のスラリーを準備することにおいて、前記第1の廃水を前記第2のスラリーに加えることが、前記第2のスラリー中の前記第2の有機結合剤の凝集に悪影響を与えず、前記第1の中性pH凝集剤が、ミョウバン凝集剤と比べて、単独で比較的中性のpHを示す」のに対して、引用発明はそのような事項を備えていない点。 上記相違点について検討する。 引用文献2記載事項における「ガラス繊維等の不燃性繊維状物質」は、本件訂正明細書の発明の詳細な説明における段落【0023】に挙げられた無機繊維の具体例と同一であるから、本件発明1における「第1の無機繊維」に相当する。 引用文献2記載事項における「ポリウレタン等の熱可塑性樹脂を主成分とするバインダー」は、本件訂正明細書の発明の詳細な説明における段落【0027】に挙げられた有機結合剤の具体例と同一であるから、本件発明1における「第1の有機結合剤」に相当する。 また、引用文献2記載事項から、スラリー原液は抄造部に導かれて網状または多孔質状の基材上にシート状に抄造成形されるから、少なくとも製造されるシート状物は不織布状であると把握できる。 さらに、引用文献2記載事項における「この時点で該基材面より濾水したバインダーを含む白水は、脱水工程での白水と共にスラリー原液調整槽へ戻されて再使用されること」は、本件発明1における「前記第1の廃水を前記第2のスラリーに加えること」に相当する。 そうすると、引用発明と引用文献2記載事項とは、不織布状のシート状物の製造方法において、水と、無機繊維と、有機結合剤と、凝集剤とを含むスラリーを準備する工程を有し、その工程においてスラリーから廃水を除去する点で共通している。 したがって、引用発明に引用文献2記載事項を適用して、上記相違点に係る本件発明1における「ある量の前記第1の廃水と、任意の量の比較的きれいな水と、第2の無機繊維と、第2の有機結合剤と、前記第1のスラリーで使用した凝集剤と同一の及び/又は異なる第2の凝集剤と、を含む第2のスラリーを準備することと、前記第2のスラリーから第2の不織布繊維性材料を形成すること」という事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、そのような事項を採用した場合、引用発明における凝集剤が「中性pH凝集剤」であることを考慮すると、その廃水は中性pH廃水であるから、次の不織布繊維性材料の製造に廃水を再利用しても、有機結合剤の凝集に悪影響を与えないと考えられる。 なお、前述のとおり、引用発明における「表1に示される凝集剤」は、本件特許明細書の発明の詳細な説明における中性pH凝集剤の具体例と同一であるから、引用発明は、本件発明1の「前記第1の中性pH凝集剤が、ミョウバン凝集剤と比べて、単独で比較的中性のpHを示す」という事項を有していることが明らかである。 よって、本件発明1は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 本件発明2及び3について 廃水をどの程度まで再利用するかは、不織布繊維性材料の製造に支障が生じない程度の廃水の再使用回数の中から、当業者が適宜に決定し得ることである。 よって、本件発明2及び3は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 本件発明4ないし6について 本件発明4における「スラリー中の有機結合剤が、アニオン性基を有する少なくとも1つのポリマーを含む」点については、引用文献1の段落【0032】の「有用な第1の有機ポリマーには、例えば、それらのアクリルポリマー、ビニルポリマー(例えば、エチレン及びビニルアセテートを含むモノマーのコポリマー)、ポリウレタン、及びアニオン性基(例えば、末端基及び/又はペンダント側鎖基)を有するシリコーンポリマーが挙げられるが、それらの多くは必須ではない。任意に、追加的有機ポリマー(単数又は複数)が、第1の有機ポリマーとの組み合わせにより使用されてもよい。」を参照。 また、本件発明5及び6における「中性pH凝集剤が、カチオン性基を有する有機ポリマーを含む」点及び「中性pH凝集剤が、金属カチオンを含む」点については、引用文献1の段落【0035】の「有用な凝集剤には、カチオン性基を有する有機ポリマーが挙げられる。典型的には、有機ポリマーは、水膨張性又は水溶性であるが、しかしながらこれは必要条件ではない。例えば、ポリマーは単に水分散性であってもよい。好適な凝集剤の例には、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(以後、PDADMAC)及びジメチルアミンとエピクロロヒドリンとのコポリマーの溶液(典型的には水性)又は分散体が挙げられる。任意に、凝集剤は金属カチオン(例えば、アルミニウム)を更に含んでもよく、これは解離した錯体において(例えば、ハイドレート、クロライド、又はクロロハイドレート)、又はポリマー形態において(例えば、ポリ(メタルオキサイド)又はオキシクロライドとして)存在してもよい。」を参照。 よって、本件発明4ないし6は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ 本件発明7について スラリーを構成する各種材料に関して、「ア 本件発明1について」で述べたとおり、引用発明は本件発明と同一の材料を用いているから、本件発明7と同一の数値範囲のpHを示すと考えられる。 よって、本件発明7は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 オ 本件発明8について 廃水をどの程度まで再利用するかは、不織布繊維性材料の製造に支障が生じない程度のスラリー中の廃水の割合の中から、当業者が適宜に決定し得ることである。 よって、本件発明8は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 カ 本件発明9について 引用発明において、スラリーから可撓性繊維性材料を形成していることは明らかである。 よって、本件発明9は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 キ 本件発明10について 引用発明において形成される可撓性繊維性材料は、シート状であるから少なくとも2次元形状を有することは明らかである。 また、引用文献1の段落【0022】、【0023】及び図1の記載を踏まえると、絶縁体22及び絶縁材30は所定の厚みを持つことから、3次元形状を有することも明らかである。 よって、本件発明10は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ク 本件発明11について 本件発明11における「実装マット」及び「端部コーン断熱体」については、それぞれ引用文献1の段落【0022】、【0023】及び図1における絶縁体22及び絶縁材30を参照。 また、不織布繊維性材料を火炎止めに用いることは、例えば、取消理由通知において引用された特表2006-514524号公報(以下「引用文献3」という。特に、段落【0029】ないし【0031】、図1及び図2を参照。)に記載されているように、本願出願前の周知技術(以下「周知技術」という。)である。 よって、本件発明11は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ケ 本件発明12について 本件発明12における「前記第1のスラリーから第1の不織布繊維性材料を形成すること」については、引用文献1の段落【0058】において、水道水及び無機繊維から得られるスラリーに、エチレンビニルアセテートターポリマーラテックス(エアープロダクツ(Air Products)から取引表記「エアーフレックス(AIRFLEX)600BP」として得られる)が添加され、さらに、凝集剤が滴下されてできるスラリーから繊維性シートが調製される点を参照。 よって、本件発明12は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 コ 本件発明13について スラリーを構成する各種材料に関して、「ア 本件発明1について」で述べたとおり、引用発明は本件発明と同一の材料を用いているから、本件発明13と同一の数値範囲のpHを示すと考えられる。 よって、本件発明13は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 サ 本件発明14について 本件発明14における「ハウジング」及び「汚染制御要素」については、それぞれ引用文献1の段落【0022】及び図1において、ハウジング12及びモノリシック構造体18を参照。 よって、本件発明14は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 シ 本件発明15について 不織布繊維性材料を火炎止め内に形成する点については、周知技術を示す例として挙げた引用文献3の段落【0029】ないし【0031】及び図2において、断熱材料14の内部層に不織ウェブが含まれる点を参照。 よって、本件発明15は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ス 本件発明16ないし18について 本件発明16は本件発明1とカテゴリー表現上の差異があるのみで、その実質的な内容は同じである。同様に、本件発明17及び18は、それぞれ本件発明5及び6と、その実質的な内容は同じである。 したがって、本件発明16の見解については「ア 本件発明1について」を、本件発明17及び18の見解については、「ウ 本件発明4ないし6について」の見解を参照。 よって、本件発明16ないし18は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 セ 本件発明19について 各凝集剤については、引用文献1の段落【0060】及び【0061】の【表1】を参照。 よって、本件発明19は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ソ 本件発明20について 本件発明20は本件発明7とカテゴリー表現上の差異があるのみで、その実質的な内容は同じである。 したがって、本件発明20の見解については「エ 本件発明7について」を参照。 よって、本件発明20は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)特許権者の意見について 特許権者は、意見書において、引用文献1に記載された凝集剤と、引用文献2に記載された高分子凝集剤とは共通していないから、引用発明に引用文献2記載事項を適用する動機付けがない旨を主張する。 しかしながら、引用文献2に記載された高分子凝集剤は単なる例示にすぎない。 また、引用文献2から採用したものは、引用文献2に記載された具体的な材料ではなく、白水を再使用するという技術思想である。 したがって、特許権者の上記主張は当を得ているとはいえない。 1.2 取消理由2(サポート要件)について (1)請求項1ないし20 請求項1ないし20に係る発明は、無機繊維、有機結合剤、凝集剤、廃水、きれいな水の種類又は量を特定していないので、いずれも任意の種類又は量でよいと把握できる。 一方、本件訂正明細書の発明の詳細な説明において、段落【0062】ないし【0067】(特に【表3】及び【表4】)を参酌しても、廃水を使用して繊維製シートを作成する場合(実施例2、4、6、8、10、12)に関して、特定の種類及び量の無機繊維(70gの商品名「CERAFIBER」)、特定の種類及び量の有機結合剤(9.0gの商品名「AIRFLEX 600BP」)、特定の種類及び量の凝集剤(種類:商品名「MP 9307C」、商品名「AQUA HAWK 2987」、商品名「FORMURA 7602」、商品名「FORMURA 7644」、量:1.5g、2.5g、3.8g、1.9g、5.3g)、特定の量の廃水(2000mL)、特定の量のきれいな水(水道水2000mL)が示されているのみである。また、その場合の実施例のうち、使用に適したものといえる、可撓性試験に合格した実施例は実施例6、8、10、12のみである。 さらに、本件訂正明細書の発明の詳細な説明の上記記載箇所及び他の記載箇所を参酌しても、請求項1ないし20に記載されたように、任意の種類又は量の無機繊維、有機結合剤、凝集剤、廃水、きれいな水を使用することにより、不織布繊維性材料が製造できる根拠となる十分な数の具体例または機序や技術常識等が示されていない。 そして、スラリーや廃水のpHや、有機結合剤の凝集具合は、使用する無機繊維、有機結合剤、凝集剤の種類、スラリーに含まれる各種物質の量に依存することが本件特許の出願時の技術常識であるから、本件訂正明細書の発明の詳細な説明には、本件特許の出願時の技術常識に照らしても、繊維、有機結合剤、凝集剤、廃水、きれいな水について、何らその種類や量を特定していない場合にまで、本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる程度に十分な具体例が記載されているとはいえない。 よって、請求項1ないし20に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 ア 特許権者の意見について 特許権者は、意見書において、本件訂正明細書及び技術常識に基づけば、スラリー原料の種類及び量は、当業者が適宜決定できる旨を主張する。 しかしながら、前述のとおり、スラリーや廃水のpHや、有機結合剤の凝集具合は、使用する無機繊維、有機結合剤、凝集剤の種類、スラリーに含まれる各種物質の量に依存することが本件特許の出願時の技術常識であるから、任意の種類又は量では本件発明の課題が解決できるか不明である。 また、意見書には、本件発明がサポート要件を満たす理由が具体的に記載されていない。 したがって、特許権者の上記主張は当を得ているとはいえない。 (2)請求項1ないし11、13ないし15 請求項1の記載では、第1のスラリーから廃水を除去することは特定されているものの、第1のスラリーから不織布繊維性材料を形成することは特定されていない。すなわち、第1のスラリーから不織布繊維性材料を形成せずに、廃水だけを準備する場合が含まれている。 一方、本件訂正明細書の発明の詳細な説明には、スラリーから不織布繊維性材料を製造することを前提とした従来技術及び本件発明が記載されているのみで、スラリーから不織布繊維性材料を形成せずに、廃水だけを準備する場合については明示的に記載されていない。 また、本件訂正明細書の発明の詳細な説明には、段落【0005】や【0034】を参酌すると、本件発明が解決しようとする課題として、スラリーから不織布繊維性材料を製造する際に生じた廃水を、処理するための費用を節約することが記載されているから、不織布繊維性材料を形成せずに単にスラリーから廃水を得ることは明らかに想定されていない。 よって、請求項1に係る発明及び請求項1に係る発明を直接または間接的に引用する請求項2ないし11、13ないし15に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 ア 特許権者の意見について 特許権者は、意見書において、第1のスラリーから第1の不織布繊維性材料を形成するか否かは、本件発明1の課題とは無関係であり、第1のスラリーから第1の不織布繊維性材料を形成しなくてもよく、例えば、第1のスラリーは、不織布繊維性材料を形成するために使用されない初期スラリー又はテストスラリーであってもよい旨を主張する。 しかしながら、本件訂正明細書の発明の詳細な説明には、スラリーから不織布繊維性材料を製造することを前提とした従来技術及び本件発明が記載されているのみで、スラリーから不織布繊維性材料を形成せずに、廃水だけを準備する場合については明示的に記載されていない。 すなわち、初期スラリーやテストスラリーは、本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。 また、本件訂正明細書の発明の詳細な説明には、段落【0005】や【0034】を参酌すると、本件発明が解決しようとする課題として、スラリーから不織布繊維性材料を製造する際に生じた廃水を、処理するための費用を節約することが記載されているから、不織布繊維性材料を形成せずに単にスラリーから廃水を得ることは明らかに想定されていない。 したがって、特許権者の上記主張は当を得ているとはいえない。 1.3 取消理由3(明確性)について (1)請求項1ないし15 請求項1には、「有機結合剤の凝集に悪影響を与えず」という記載が、請求項3には「有機結合剤の凝集に悪影響を与えない」という記載がある。 しかしながら、上記記載だけでは、有機結合剤の凝集がどの程度であれば悪影響を与えないといえるのか、その基準が不明である。 また、上記記載における「悪影響」とは、具体的にどのような影響を意味するのか不明である。 よって、請求項1及び3に係る発明、並びに、請求項1及び3に係る発明を直接または間接的に引用する請求項2、4ないし15に係る発明は明確でない。 ア 特許権者の意見について 特許権者は、意見書において、本件訂正明細書の発明の詳細な説明の段落【0032】や【0035】を参酌すれば、請求項1に記載された「有機結合剤の凝集に悪影響を与えず」と、請求項3に記載された「有機結合剤の凝集に悪影響を与えない」の双方が、有機結合剤の有意な早期凝集又は沈殿を引き起こすことがないことを意味することは、当業者にとって明確である旨を主張する。 しかしながら、特許権者が明確である根拠として挙げた段落【0032】の「有意な早期凝集又は沈殿を引き起こすことがない」という記載や、段落【0035】の「有意な程度の悪影響を与える」という記載を参酌しても、「有意な」の程度が不明である結果、依然として、どの程度であれば悪影響を与えないといえるのか、その基準が不明である。 また、段落【0032】の上記記載では、凝集が起きる時間がどの程度であれば許容範囲内であるのか、又は、沈殿が全く起きないことを意味するのか或いは所定量の沈殿であれば許容されるのか等も不明であるため、依然として、比較の基準が不明である。 したがって、特許権者の上記主張は当を得ているとはいえない。 (2)請求項1ないし20 請求項1ないし3、5及び6、16ないし18には、「中性pH凝集剤」という記載がある。 上記記載における凝集剤を表記のとおりに解すると、中性を示す凝集剤であると把握できる。 しかしながら、本件訂正明細書の発明の詳細な説明の段落【0034】には、「したがって、本件特許明細書で使用するとき、用語「中性pH凝集剤」は、凝集剤が示すpHに関わらず、「中性pH廃水」を生成する任意の凝集剤を指すものとする。」と記載され、段落【0035】には、「したがって、中性pH凝集剤は、使用したときに、(a)結果として対応する廃水のpHが比較的中性を維持する、及び/又は(b)廃水が後続スラリーに加えられたときに、結果として対応する廃水が後続の凝集に悪影響を与えない、若しくはそれに少なくとも寄与する、任意の凝集剤であってよい。」と記載されている。 そうすると、「中性pH凝集剤」に関して、本件訂正明細書中に通常の意味と異なる意味の用語の定義が置かれているため、どちらの意味に解するべきか不明である。 また、仮に、「中性pH凝集剤」を本件訂正明細書の発明の詳細な説明の段落【0034】及び【0035】における上記記載で定義されるものと解したとしても、廃水を使用した不織布繊維性材料の製造の前提となる「第1のスラリー」に含まれる各種物質の量や、「第2」以降のスラリーに含まれる各種物質の量が特定されていないので、廃水のpHが比較的中性に維持される凝集剤として、どのような種類の凝集剤が該当し得るのか、その境界も不明である。 さらに、本件訂正明細書の発明の詳細な説明の段落【0033】には、「よって、本明細書使用するとき、用語「中性pH廃水」は、中性pHを示す廃水に必ずしも限定されず、むしろ、反応性凝集剤残渣の含有量が十分に低く、中性pH廃水の使用が、後続スラリー中の有機結合剤の有意な早期凝集又は他の沈殿を生じさせない、あらゆる廃水を包含する。」という記載があるが、廃水中の凝集剤の濃度や、物質自体は塩基性pH凝集剤または酸性pH凝集剤であるものの、滴定により廃水のpHを中性にしたもの等によっても「中性pH凝集剤」に該当する場合と該当しない場合が生じるため、やはり「中性pH凝集剤」としてどのような種類の凝集剤が該当し得るのか、その境界が不明である。 そして、訂正事項2により請求項1の記載で「前記第1の中性pH凝集剤が、ミョウバン凝集剤と比べて、単独で比較的中性のpHを示す」という事項が特定され、訂正事項4により請求項16の記載で「前記第1の中性pH凝集剤により、前記第1の廃水が、ミョウバン凝集剤を使用した結果生じる廃水と比べて比較的中性のpHを維持する」という事項が特定されたが、ミョウバン凝集剤と比較して、どの程度中性側のpHであれば「比較的中性」に該当するのか不明であり、どのような種類の凝集剤が該当し得るのか、依然として、その境界が不明である。 よって、請求項1ないし3、5及び6、16ないし18に係る発明及び請求項1ないし3、5及び6に係る発明を直接または間接的に引用する請求項4、7ないし15、並びに、請求項16ないし18に係る発明を直接または間接的に引用する請求項19及び20に係る発明は明確でない。 ア 特許権者の意見について 特許権者は、意見書において、訂正事項2により本件発明1で「前記第1の中性pH凝集剤が、ミョウバン凝集剤と比べて、単独で比較的中性のpHを示す」という事項が特定され、訂正事項4により本件発明16で「前記第1の中性pH凝集剤により、前記第1の廃水が、ミョウバン凝集剤を使用した結果生じる廃水と比べて比較的中性のpHを維持する」という事項が特定された結果、本件発明1ないし20の「中性pH凝集剤」は明確になった旨を主張する。 しかしながら、前述のとおり、ミョウバン凝集剤と比較して、どの程度中性側のpHであれば「比較的中性」に該当するのか不明であり、どのような種類の凝集剤が該当し得るのか、依然として、その境界が不明である。 したがって、特許権者の上記主張は当を得ているとはいえない。 (3)請求項9ないし15 請求項9には、「スラリー成形法」という記載がある。 しかしながら、上記記載は一般的な用語ではなく、本件訂正明細書中に上記記載に関する用語の定義も置かれていない。 そのため、上記記載をスラリー自体を成形する方法と解するのか、又は、スラリーを使用して何かを成形する方法と解するのか、それとも、その他の意味に解するのか不明である。 よって、請求項9に係る発明及び請求項9に係る発明を直接または間接的に引用する請求項10ないし15に係る発明は明確でない。 ア 特許権者の意見について 特許権者は、意見書において、訂正後の請求項9が直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項1における「前記第2のスラリーから第2の不織布繊維性材料を形成すること」という記載から、本件発明9の「スラリー成形法」がスラリーを使用して不織布繊維性材料を形成する方法を意味することは、当業者にとって明確である旨を主張する。 しかしながら、上記主張は、請求項9の「前記形成すること」が、「スラリー成形法」であると、請求項9の記載で特定された事項を繰り返して述べているにすぎず、スラリーを使用して不織布繊維性材料を形成するという達成すべき結果で特定されているのみであるから、具体的にどのような成形法なのか不明である。 したがって、特許権者の上記主張は当を得ているとはいえない。 (4)請求項16ないし20 請求項16には、「比較的中性のpH」という記載がある。 しかしながら、上記記載だけでは、どの程度のpHであれば「比較的中性のpH」に該当するのか不明である。 よって、請求項16に係る発明及び請求項16に係る発明を直接または間接的に引用する請求項17ないし20に係る発明は明確でない。 ア 特許権者の意見について 特許権者は、意見書において、訂正事項4により本件発明16で「ミョウバン凝集剤を使用した結果生じる廃水と比べて比較的中性のpHを維持する」という事項が特定された結果、本件発明16ないし20の「比較的中性のpH」は明確になった旨を主張する。 しかしながら、本件発明16ないし20の「比較的中性のpH」を、ミョウバン凝集剤を使用した結果生じる廃水との相対的関係で比較的中性と解したとしても、どの程度のpHであれば「比較的中性のpH」に該当するのか不明である。 したがって、特許権者の上記主張は当を得ているとはいえない。 1.4 取消理由4(実施可能要件)について (1)請求項1ないし20 本件訂正明細書の発明の詳細な説明には、【表3】及び【表4】を参酌すると、スラリーからの廃水を使用して、使用に適した繊維製シートを作成する場合(実施例6、8、10、12)に関して、特定の種類及び量の無機繊維(70gの商品名「CERAFIBER」)、特定の種類及び量の有機結合剤(9.0gの商品名「AIRFLEX 600BP」)、特定の種類及び量の凝集剤(種類:商品名「MP 9307C」、商品名「AQUA HAWK 2987」、商品名「FORMURA 7602」、商品名「FORMURA 7644」、量:3.8g、1.9g、5.3g)、特定の量の廃水(2000mL)、特定の量のきれいな水(水道水2000mL)が示されている。 したがって、実施例6、8、10、12に挙げられた特定の種類の各材料を、特定の量又は特定の量の近傍の数値で使用する場合であれば、その場合におけるスラリーからの廃水を利用して、使用に適した不織布繊維性材料が得られると認められる。 しかしながら、請求項1ないし20の記載では、各材料の種類及び量が特定されていないことに鑑みると、実施例6、8、10、12に示されていない材料を使用した場合や、実施例6、8、10、12に示された材料であっても、実施例6、8、10、12に示された数値とは大きく異なる量で使用した場合に、スラリーからの廃水を利用して不織布繊維性材料が得られるのか、また、得られたとしてもその不織布繊維性材料が所定の試験に合格するだけの使用に適したものとなるのか、【表3】及び【表4】に示される実施例の数値からだけでは、予測することが困難である。 そして、本件訂正明細書の発明の詳細な説明の実施例を手がかりとしても、請求項1ないし20の記載で特定されない各材料の種類及び量で、本件発明の効果を満足する不織布繊維性材料を得るためには、製造された不織布繊維性材料につき、可撓性試験等により逐一試験して確認するほかないから、当業者に過度の試行錯誤を強いるものといえる。 よって、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし20に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 ア 特許権者の意見について 特許権者は、意見書において、本件訂正明細書及び技術常識に基づけば、スラリー原料の種類及び量は、当業者が適宜決定できる旨を主張する。 しかしながら、請求項1ないし20の記載では、依然として、各材料の種類及び量が特定されていないことに鑑みると、前述のとおり、本件訂正明細書の実施例に示されていない材料を使用した場合や、実施例に示された材料であっても、本件訂正明細書の実施例に示された数値とは大きく異なる量で使用した場合に、スラリーからの廃水を利用して不織布繊維性材料が得られるのか、また、得られたとしてもその不織布繊維性材料が所定の試験に合格するだけの使用に適したものとなるのか、【表3】及び【表4】に示される実施例の数値からだけでは、予測することが困難である。 したがって、特許権者の上記主張は当を得ているとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、本件発明1ないし10及び16ないし20は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明11ないし15は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし20に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件特許は、本件発明1ないし20が発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 さらに、本件特許は、本件発明1ないし20が明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 そして、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件発明1ないし20を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700865

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