2020-017611
無加圧接合用銅ペースト、接合体、及び半導体装置
- 審判番号
- 2020-017611
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-237740外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年12月23日
- 審決日
- 2021年12月14日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (H01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 14項目
第1 手続の経緯
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本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2015年(平成27年)12月 4日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 原査定の概要
原査定(令和 2年 9月17日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-6に係る発明は,以下の引用文献1に記載された発明及び周知技術(引用文献2-4)に基いて,本願請求項7-11に係る発明は,以下の引用文献1,5に記載された発明及び周知技術(引用文献2-4,6)に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1 特開2014-224296号公報
引用文献2 特開2014-167145号公報
引用文献3 特開2015-133317号公報
引用文献4 特開2014-210947号公報
引用文献5 特開2014-77101号公報
引用文献6 国際公開第2014/038331号
第3 本願発明
本願請求項1-11に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は,令和 2年12月23日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1,2は,以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】金属粒子と,分散媒と,を含む無加圧接合用銅ペーストであって,前記金属粒子が,体積平均粒径が0.12μm以上0.8μm以下のサブマイクロ銅粒子と,体積平均粒径が2.0μm以上50μm以下であるフレーク状のマイクロ銅粒子とを含み,前記分散媒が300℃以上の沸点を有する溶媒を含み,前記300℃以上の沸点を有する溶媒の含有量が,前記無加圧接合用銅ペーストの全質量を基準として,2質量%以上である,無加圧接合用銅ペースト。【請求項2】金属粒子と,分散媒と,を含む無加圧接合用銅ペーストであって,前記金属粒子が,体積平均粒径が0.12μm以上0.8μm以下のサブマイクロ銅粒子と,体積平均粒径が2.0μm以上50μm以下であるフレーク状のマイクロ銅粒子とを含み,前記分散媒が300℃以上の沸点を有する溶媒を含み,前記300℃以上の沸点を有する溶媒の含有量が,前記無加圧接合用銅ペーストの全容量を基準として,8体積%以上である,無加圧接合用銅ペースト。」
なお,本願発明3-8は,本願発明1又は2を減縮した発明であり,本願発明9は,本願発明1-8の無加圧接合用銅ペーストの焼結体を備えた接合体,本願発明10は,本願発明1-8の無加圧接合用銅ペーストを用いた接合体の製造方法,本願発明11は,本願発明1-8の無加圧接合用銅ペーストの焼結体を備えた半導体装置の発明である。
第4 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様である。)
「【請求項1】金属ナノ粒子の凝集体と溶媒とを含み,当該凝集体の平均粒径が1μm以上である,接合用金属ペースト。」
「【請求項3】平均粒径が0.3~3μmの金属粒子を更に含む,請求項1又は2に記載の接合用金属ペースト。」
「【発明を実施するための形態】【0013】<接合用金属ペースト>本発明は,金属ナノ粒子の凝集体と溶媒とを含み,当該凝集体の平均粒径が1μm以上である,接合用金属ペーストに関する。金属ペースト中に金属ナノ粒子の凝集体が存在することにより,金属ペーストを部材に塗布し,乾燥及び焼成すると,複数の凝集体が集合して凝集体間に空孔が形成される。形成された空孔を通って金属ペーストの溶媒が蒸発できるため,接合部における溶媒の残存率を下げることができる。また,接合部に空孔が形成されることにより,接合部が多孔性の組織となり,優れた応力緩和性を獲得すると共に,高い強度で部材を接合することが可能となる。続きを表示(全16行)【0014】従来の金属ペーストでは,金属ナノ粒子の凝集体が形成されないように様々な手段が講じられてきたが,本発明では凝集体をあえて使用することによって接合強度を向上させるという驚くべき効果を発揮することができる。【0015】金属ナノ粒子の凝集体とは,金属ナノ粒子の1次粒子が凝集した2次粒子である。凝集体の平均粒径は1μm以上であり,好ましくは1~5μmであり,より好ましくは1~3μmであり,特に好ましくは1~2μmである。このような平均粒径を有する凝集体を使用することにより,部材の接合強度を更に向上させることができる。【0016】本明細書における「凝集体の平均粒径」は,接合用金属ペーストを走査型電子顕微鏡(SEM),特にクライオSEMで観察し,ランダムに選択した100個の凝集体の粒径に基づいて決定することができる。具体的には,選択した100個の凝集体の粒径を測定し,最も大きい粒径の凝集体10個及び最も小さい粒径の凝集体10個を除外した80個の凝集体の粒径の合計を80で割ることにより決定することができる。なお,「凝集体の粒径」は円相当径を意味する。具体的には,個々の凝集体の面積を測定し,当該面積と同じ面積を有する円の直径を凝集体の粒径とする。【0017】なお,ペースト状ではなく粒子状態である場合は,レーザー回折式粒度分布測定器でのD50で算出することができる。例えばレーザー回折式粒度分布測定器であるヘロス&ロドス(株式会社日本レーザー社製)に粉体を直接投入して粒度分布を測定し,得られた粒度分布のD50の値を「凝集体の粒径」とする。【0018】2次粒子である凝集体を構成する1次粒子の平均粒径は,1~100nmであることが好ましく,5~70nmであることがより好ましく,10~40nmであることが特に好ましい。このような平均粒径を有する1次粒子から構成される凝集体を使用することにより,部材の接合強度を更に向上させることができる。なお,「1次粒子の平均粒径」はSEM写真から算出することができる。【0019】凝集体の含有量は,金属ペーストの重量の好ましくは5~50重量%,より好ましくは10~40重量%,特に好ましくは15~30重量%である。このような含有量で凝集体が存在することにより,部材の接合強度を更に向上させることができる。」
「【0023】凝集体を構成する金属ナノ粒子の金属の種類は,部材の接合に使用可能なものであれば特に限定さない。貴金属及び卑金属のいずれも使用することができる。貴金属としては,例えば,銀,金,ルテニウム,ロジウム,パラジウム,イリジウム,白金等を挙げることができる。卑金属としては,例えば,銅,アルミニウム,鉄,ニッケル等を挙げることができる。1種の金属ナノ粒子の凝集体を使用してもよいし,2種以上の金属ナノ粒子の凝集体を使用してもよい。特に限定するものではないが,銀ナノ粒子の凝集体を使用することが好ましい。【0024】本発明に係る接合用金属ペーストは,上記の金属ナノ粒子の凝集体に加えて,更なる金属粒子(以下「金属フィラー」という)を含んでいることが好ましい。金属フィラーとして,1次粒子の平均粒径が例えば0.3~3μm,好ましくは0.5~2μm,より好ましくは0.6~1μmの金属粒子を使用することが好ましい。このような金属フィラーを含むことにより,部材の接合強度を更に向上させることができる。続きを表示(全17行)「金属フィラーの平均粒径」は「凝集体の平均粒径」と同様に決定することができる。【0025】金属フィラーの含有量は,金属ペーストの重量の好ましくは60~90重量%,より好ましくは65~85重量%,特に好ましくは70~80重量%である。このような含有量で金属フィラーを含むことにより,部材の接合強度を更に向上させることができる。【0026】金属フィラーの金属の種類としては,凝集体を構成する金属ナノ粒子と同様のものを挙げることができる。特に限定するものではないが,金属フィラーと金属ナノ粒子とは同じ種類の金属であることが好ましく,銀であることが特に好ましい。【0027】金属ナノ粒子の凝集体は,凝集されていない同量の金属ナノ粒子と比較して比表面積が小さいため,金属ナノ粒子の凝集体を含む金属ペーストの粘度は相対的に低くなる。そのため,本発明に係る接合用金属ペーストは流動性が高く,取扱いが容易である。また,金属ペーストの粘度が低いため,金属成分の含有量を更に増加させることもできる。【0028】例えば,接合用金属ペーストに含まれる金属成分の合計の含有量を,金属ペーストの重量の好ましくは90重量%以上,より好ましくは92重量%以上,更に好ましくは94重量%以上,特に好ましくは95重量%以上とすることができる。金属成分の合計の含有量の上限は100重量%未満であれば特に限定されないが,例えば,99重量%,98重量%等とすることができる。このような含有量で金属成分を含んでいても高い流動性を有するため,容易に取り扱うことができる。また,金属成分の含有量が増加することにより,部材の接合強度を更に向上させることができる。【0029】本発明に係る接合用金属ペーストは金属成分を分散させるための溶媒を含む。溶媒の種類は特に限定されないが,例えば,水やアルコール等のプロトン性極性溶媒;アミド(例えばジメチルアセトアミド),ニトリル(例えばアセトニトリル),ケトン(例えばアセトン),環状エーテル(例えばテトラヒドロフラン)等の非プロトン性極性溶媒等を挙げることができる。特に限定するものではないが,アルコール(例えば,C1~18アルコール等)を使用することが好ましく,より具体的には,ブタノール,ペンタノール,ヘキサノール,ヘプタノール,オクタノール,イソボルニルシクロヘキサノール,テルピネオール,オクタンジオール,デカノール,ノナノール,ウンデカノール等を使用することが好ましい。【0030】溶媒の含有量は,金属ペーストの重量の好ましくは1~7重量%,より好ましくは2~6重量%,特に好ましくは3~5重量%である。金属ナノ粒子の凝集体は上記の通り比表面積が小さいため,溶媒の含有量を少なくしても金属ペーストの流動性を維持することができる。また,溶媒の含有量を少なくすることにより,金属成分の含有量を相対的に増加させることができる。」
「【0047】接合工程では,第1の部材に塗布された金属ペーストと第2の部材とを接触させ,乾燥及び焼成することにより,第1の部材と第2の部材とを接合することができる。本発明に係る接合方法では,接合工程を無加圧条件で行うこともできる。なお,「無加圧条件」とは,機械等を用いて高い圧力をかけることを必要としないという意味であり,人の手で部材を押し付ける程度の圧力を除外するものではない。無加圧条件で部材を接合することにより,接合体の製造コストを大幅に削減することができる。」
「【0056】1次粒子の粒径は,走査電子顕微鏡を使用し,倍率80000倍で撮影し,得られた写真から粒径を画像ソフトで算出した。このときの平均1次粒子径は,SEM写真中における個々の独立した粒子について,少なくとも200個測定し,その数平均で算出した。【0057】<接合用金属ペーストの調製>表1に示す組成を有する比較金属ペースト1及び金属ペースト1~3を調製した。なお,比較金属ペースト1については,各種成分を混合した後,混合物を3本ロールミル(ロール隙間:1μm)で処理し,凝集体を全て分散させた。金属ペースト1については,銀ナノ粒子の凝集体(10重量%)及び他の成分の混合物を3本ロールミルで処理し,これに銀ナノ粒子の凝集体(9重量%)を加えた。金属ペースト2及び3については,3本ロールミルによる処理は行わなかった。【0058】【表1】[図:0001380651000001.jpg]」
(2)ここで,引用文献1に記載されている事項を検討する。
ア 上記請求項1,段落0013,0015,0018の記載から,引用文献1の「接合用金属ペースト」は,平均粒径が1~100nmの「金属ナノ粒子の1次粒子」が凝集した2次粒子である「凝集体」と,「溶媒」とを含むものである。
また,上記請求項3,段落0024の記載から,引用文献1の「接合用金属ペースト」は,平均粒径が0.3~3μmの「金属フィラー」を更に含むものである。
イ 上記段落0018,0056の記載から,引用文献1の「金属ナノ粒子の1次粒子」における「平均粒径」は,「SEM写真から算出」したものと認められる。
そして,上記段落0016,0024の記載から,引用文献1の「金属フィラー」における「平均粒径」は,「円相当径」の平均を意味するものと認められる。
また,上記段落0023,0026の記載から,「金属ナノ粒子の1次粒子」及び「金属フィラー」の金属の種類は,同じ種類の金属が好ましく,その種類として,銅,アルミニウム,鉄,ニッケル等が挙げられている。
ウ 上記段落0029の記載から,引用文献1の「接合用金属ペースト」の「溶媒」として,ブタノール,ペンタノール,ヘキサノール,ヘプタノール,オクタノール,イソボルニルシクロヘキサノール,テルピネオール,オクタンジオール,デカノール,ノナノール,ウンデカノール等を使用することが記載され,上記段落0057-0058には,「溶媒」として,MTPH,すなわち,イソボルニルシクロヘキサノールを1.5wt%含むものが記載されている。
エ 上記段落0047の記載から,引用文献1の「接合用金属ペースト」は,接合工程を無加圧条件で行うものであると認められる。
(3)以上から,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 SEM写真から算出した平均粒径が1~100nmの金属ナノ粒子の1次粒子の凝集体と溶媒とを含む,接合用金属ペーストであって,接合用金属ペーストは,円相当径の平均が0.3~3μmの金属フィラーを更に含み,金属ナノ粒子の1次粒子及び金属フィラーの金属の種類は,同じ種類の金属が好ましく,その種類として,銅,アルミニウム,鉄,ニッケル等が挙げられ,溶媒として,イソボルニルシクロヘキサノールを1.5wt%含む,接合工程を無加圧条件で行う接合用金属ペースト。」
2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由において周知技術として引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0023】被覆剤分子層を表面に有する銅ナノ粒子とは,平均粒子径が,一般に,1nm~100nmの範囲,好ましくは,2nm~80nmの範囲,より好ましくは,3nm~70nmの範囲の金属銅からなる粒子である。銅ナノ粒子は,実質的に銅のみからなり,ほかの金属成分を含まない。」
「【0037】一実施形態によれば,銅ナノ粒子ペーストに添加される添加銅粒子は,銅マイクロ粒子単独である。ここで,銅マイクロ粒子とは,平均粒子径が,約1μm~100μmの金属銅を主成分とする粒子である。第1実施形態においては,銅マイクロ粒子は,実質的に銅のみからなり,表面に他の金属原子からなる被覆層を有さず,また有機物等の被覆分子層を有さない。銅マイクロ粒子の平均粒子径は,好ましくは,約1μm~10μmであり,さらに好ましくは,約1μm~5μmである。なお,これらの平均粒子径は,電子顕微鏡による顕微鏡写真から測定して得られたものである。銅マイクロ粒子は,上記の平均粒子径を有する限り,その外形形状は,球形に限定されず,例えば鱗片状のものであってもよい。【0038】銅ナノ粒子ペーストに,銅マイクロ粒子を単独で混合して本実施形態による接合材とするとき,その混合比は,銅ナノ粒子ペースト中に含まれる銅ナノ粒子と,銅マイクロ粒子との質量比が,1:0.25~1.6であり,好ましくは,1:0.4~1.5である。混合質量比を上記数値範囲とすると,粒子間の空隙が少なくなり,加熱接合後の接合層の密度が高くなり,接合強度が高くなるためである。」
「【0044】本発明の第1実施形態による接合材は,安価な銅ナノ粒子ペーストを用いて,無加圧で,かつシリコンチップのような強度の低い材料であっても破壊することなく接合することが可能な接合材を実現することができるという効果を有する。」
3 引用文献3について
(1)原査定の拒絶の理由において周知技術として引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【発明を実施するための形態】【0011】本発明による導電性ペーストの実施の形態は,アゾール化合物で被覆された平均粒径1~100nmの銅微粒子と,平均粒径0.3~20μmの銅粗粒子と,グリコール系溶剤と,ポリビニルピロリドン樹脂およびポリビニルブチラール樹脂の少なくとも一方とを含む。」
「【0028】[実施例1]まず,銅源として硫酸銅五水和物(JX日鉱日石金属株式会社製)280gと,ベンゾトリアゾール(BTA)(和光純薬工業株式会社製)1gとを純水1330gに溶解した溶液Aと,中和剤として50質量%の苛性ソーダ水溶液(和光純薬工業株式会社製)200gを純水900gで希釈した溶液Bと,還元剤として80質量%のヒドラジン一水和物(大塚化学株式会社製)150gを純水1300gで希釈した溶液Cを用意した。【0029】次に,溶液Aと溶液Bを攪拌しながら混合し,60℃の温度に調整した後,攪拌を維持したまま,この混合溶液に溶液Cを30秒以内で全量添加して,約5分程度で反応が終了した。この反応で生成したスラリーを固液分離して得られた固形分に,エチレングリコール(EG)和光純薬工業株式会社製)を通液して,BTA被覆銅微粒子がエチレングリコールに分散した分散液を得た。この分散液中の銅微粒子を電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)(株式会社日立製作所製のS-4700)で観察したところ,(BTAで被覆された)略球形の微粒子であり,平均粒径を算出すると,約50nmであった。また,この分散液のN2中における示差分析により,分散液中の銅の含有量を求めたところ,68質量%であった。【0030】このBTA被覆銅微粒子の分散液に,ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物アンモニウム塩からなる界面活性剤(花王株式会社製のMX-2045L)を分散剤として添加し,重量平均分子量45,000のポリビニルピロリドン(PVP)樹脂(第一工業製薬株式会社製のピッツコールK-30)を添加するとともに,(BTA被覆銅微粒粉との質量の割合が3:7になるように)平均粒径12μmのフレーク状銅粗粒子を添加し,導電フィラーとしてのBTA被覆銅微粒子(導電フィラー1)とフレーク状銅粗粒子(導電フィラー2)を含む導電性ペーストを得た。なお,PVP樹脂は導電フィラーの量(銅微粒子と銅粗粒子(銅粒子)の総量)に対して3質量%になるように添加し,導電性ペースト中の導電フィラーが67質量%になるようにエチレングリコールを添加して調整した後,自公転式真空攪拌脱泡ミキサー(株式会社EME製のV-mini300)を使用して自転1400rpmで60秒間回転させて,導電フィラーが均一になるように混練脱泡した。」
4 引用文献4について
(1)原査定の拒絶の理由において周知技術として引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0021】先ず,本発明の金属ナノ粒子材料およびそれを含有する接合材料について説明する。本発明の金属ナノ粒子材料は,銅ナノ粒子と酸化ニッケルナノ粒子とを所定の割合で含有するものである。本発明の金属ナノ粒子材料,低温(例えば,400℃以下)での熱処理により焼結し,接合強度が高い接合層を形成することができる。また,本発明の金属ナノ粒子材料を用いると,熱処理時に無加圧でも,接合強度が高い接合層を形成することができる。【0022】(銅ナノ粒子)本発明においては,直径が1~1000nmの範囲にある銅粒子を「銅ナノ粒子」という。銅粒子の直径は,透過型電子顕微鏡(TEM)観察において測定することができ,本発明においては,以下に示す全銅粒子に対する銅ナノ粒子の割合および銅粒子(銅ナノ粒子を含む)の平均粒子径を,前記TEM観察において,無作為に200個の銅粒子を抽出し,これらの直径を測定することによって求められる値とする。【0023】本発明の金属ナノ粒子材料においては,このような銅ナノ粒子(直径が1~1000nmの範囲にあるもの)が個数基準で全銅粒子の99%以上であることが好ましく,全ての銅粒子が前記銅ナノ粒子であることが特に好ましい。銅ナノ粒子の割合が前記下限未満になると,銅粒子の焼結温度が高くなるため,低温(例えば,400℃以下)での加熱による銅粒子同士の結合が起こりにくく,その結果,接合強度が低下する傾向にある。」
(2)以上から,上記引用文献4には次の技術的事項が記載されていると認められる。
「 透過型電子顕微鏡(TEM)観察において測定した直径が1~1000nmの範囲にある銅ナノ粒子と酸化ニッケルナノ粒子とを所定の割合で含有する金属ナノ粒子材料を含有する接合材料。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
ア 引用発明の「接合用金属ペースト」は,「金属ナノ粒子の1次粒子の凝集体と溶媒とを含」み,「金属フィラーを更に含」むものであり,ここで,引用発明の「金属ナノ粒子の1次粒子の凝集体」及び「金属フィラー」が,本願発明1の「金属粒子」に対応し,引用発明の「溶媒」が,本願発明1の「分散媒」に対応する。
そして,引用発明の「接合用金属ペースト」は,「接合工程を無加圧条件で行う」ものであるから,本願発明1の「無加圧接合用銅ペースト」と,無加圧接合用金属ペーストである点で共通する。
イ 引用発明の「SEM写真から算出した平均粒径が1~100nmの金属ナノ粒子の1次粒子」は,平均粒径が1μmよりも小さいから,「サブマイクロ金属粒子」であるといえる。
また,引用発明の「円相当径の平均が0.3~3μmの金属フィラー」は,平均粒径が1μmよりも大きいものを含むから,「マイクロ金属粒子」であるといえる。
ここで,引用発明において,「金属ナノ粒子の1次粒子」と「金属フィラー」の金属の種類は,同じ種類の金属である。
すると,粒径について,引用発明は,「金属ナノ粒子の1次粒子」は「SEM写真から算出した平均粒径」,「金属フィラー」は「円相当径の平均」であり,本願発明1では「サブマイクロ金属粒子」及び「マイクロ金属粒子」は,どちらも「体積平均粒径」であるものの,引用発明の「金属ナノ粒子の1次粒子」,「金属フィラー」と,本願発明1の「サブマイクロ銅粒子」,「マイクロ銅粒子」とは,それぞれ,「サブマイクロ金属粒子」,「マイクロ金属粒子」である点で共通する。
ウ 引用発明の「溶媒」は「イソボルニルシクロヘキサノールを1.5wt%含む」ものであり,ここで,「イソボルニルシクロヘキサノール」が300℃以上の沸点を有するものであることは技術常識である。
すると,引用発明の「溶媒」と,本願発明1の「分散媒」とは,「300℃以上の沸点を有する溶媒を含」む点で一致する。
エ したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
(一致点)
「 金属粒子と,分散媒と,を含む無加圧接合用金属ペーストであって,前記金属粒子が,サブマイクロ金属粒子と,マイクロ金属粒子とを含み,前記分散媒が300℃以上の沸点を有する溶媒を含む,無加圧接合用金属ペースト。」
(相違点)
(相違点1)本願発明1は,「無加圧接合用銅ペースト」であるのに対し,引用発明では,金属の種類について特定されておらず,「接合工程を無加圧条件で行う接合用金属ペースト」である点。
(相違点2)サブマイクロ金属粒子に関して,本願発明1は,「サブマイクロ銅粒子」であり,「体積平均粒径が0.12μm以上0.8μm以下」と特定されているのに対し,引用発明は,金属の種類について特定されていない「金属ナノ粒子の1次粒子」であり,「SEM写真から算出した平均粒径が1~100nm」である点。
(相違点3)マイクロ金属粒子に関して,本願発明1は,「マイクロ銅粒子」であり「体積平均粒径が2.0μm以上50μm以下」の「フレーク状」であると特定されているのに対し,引用発明は,金属の種類について特定されていない「金属フィラー」であり,「円相当径の平均が0.3~3μm」である点。
(相違点4)300℃以上の沸点を有する溶媒の含有量に関して,本願発明1は,「前記無加圧接合用銅ペーストの全質量を基準として,2質量%以上である」と特定されているのに対し,引用発明は,「1.5wt%含む」ものである点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み,上記相違点2について先に検討する。
まず,サブマイクロ金属粒子の粒径について,本願発明の「体積平均粒径」は,本願明細書段落0031に記載されているように,50%体積平均粒径を意味するのに対し,引用発明の「平均粒径」は,引用文献1の段落0018,0056に記載されているように,SEM写真から算出した平均粒径であり,その尺度が異なるから,両者の値を直接比較することはできない。
仮に,本願発明の「体積平均粒径」と引用発明の「平均粒径」とが同じ値であるとしても,引用発明の金属ナノ粒子の1次粒子の平均粒径は「1~100nm」(0.001~0.1μm)であるから,本願発明1の平均粒径である「0.12μm以上0.8μm以下」の範囲を下回る。
そして,引用文献1の段落0018を参照すると,引用発明は,金属ナノ粒子の1次粒子の平均粒径を,1~100nmとすることにより,「部材の接合強度を更に向上させることができる」ものであるから,引用発明において金属ナノ粒子の1次粒子の平均粒径を「0.12μm以上0.8μm以下」とする動機はない。
ここで,引用文献4には,銅ナノ粒子と酸化ニッケルナノ粒子とを所定の割合で含有する金属ナノ粒子材料を含有する接合材料において,銅ナノ粒子,すなわち,サブマイクロ銅粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)観察において測定した直径を1~1000nmとすることが記載されているが,引用文献4においても,本願発明1とは平均粒径の尺度が異なり,両者の値を直接比較することはできない。また,引用文献4は,銅ナノ粒子と酸化ニッケルナノ粒子とを所定の割合で含有する接合用金属ペーストであり,引用発明のように,金属ナノ粒子の1次粒子と金属フィラーを含む接合用金属ペーストでもない。
さらに,金属ナノ粒子の1次粒子と金属フィラーを含む接合用金属ペーストにおいて,金属ナノ粒子の1次粒子の体積平均粒径を「0.12μm以上0.8μm以下」と限定することは,引用文献2-3,5,6にも記載されておらず,また,本願出願時において周知技術であるともいえない。
イ したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明及び引用文献2-6に記載された事項に基いて,容易に発明できたものであるとはいえない。
2 本願発明2について
本願発明2は,「前記300℃以上の沸点を有する溶媒の含有量」について,本願発明1では「前記無加圧接合用銅ペーストの全質量を基準として,2質量%以上である」と特定したものを,本願発明2では「前記無加圧接合用銅ペーストの全容量を基準として,8体積%以上である」と特定したものであり,上記「1 本願発明1について」の「(1)対比」における相違点2に係る構成を有する発明である。
すると,本願発明2も,上記「1 本願発明1について」の「(2)相違点についての判断」において検討したように,当業者であっても,引用発明及び引用文献2-6に記載された事項に基いて,容易に発明できたものであるとはいえない。
3 本願発明3-11について
本願発明3-8は,本願発明1又は2を減縮した発明であり,本願発明9は,本願発明1-8の無加圧接合用銅ペーストの焼結体を備えた接合体,本願発明10は,本願発明1-8の無加圧接合用銅ペーストを用いた接合体の製造方法,本願発明11は,本願発明1-8の無加圧接合用銅ペーストの焼結体を備えた半導体装置の発明であるから,本願発明3-11は,本願発明1又は2のすべての構成を備えた発明である。
すると,本願発明3-11も,上記「1 本願発明1について」の「(2)相違点についての判断」において検討したように,当業者であっても,引用発明及び引用文献2-6に記載された事項に基いて,容易に発明できたものであるとはいえない。
第6 原査定について
本願発明1-11は,上記「第5 対比・判断」の「1 本願発明1について」の「(1)対比」における相違点2に係る構成を有するものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用発明及び引用文献2-6に記載された事項に基いて,容易に発明できたものとはいえない。
したがって,原査定の理由を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-017611