2020-017465
ロボット操作を制御するシステムおよび方法
- 審判番号
- 2020-017465
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-555760外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年12月22日
- 審決日
- 2022年04月27日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
- 【請求人代理人】関口 一哉
- 分類
- P18 .121-WZ (B25J) / P18 .537-WZ (B25J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 18項目
第1 手続の経緯
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本願は、2016年(平成28年)4月29日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2015年5月1日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2017-555760号の出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
第2 本願発明
本件補正によって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下の事項により特定されるとおりのものとなった。
「【請求項1】目標物(102)を操作するように構成されたロボットシステム(100)であって、前記目標物(102)に対して動くように構成された、関節運動可能なアーム(110)と、前記アーム(110)に取り付けられ、ある取得速度で、前記目標物(102)に対する前記アーム(110)の位置に対応する、知覚情報(222、224)を取得するように構成された、知覚取得ユニット(130)と、続きを表示(全12行)前記アーム(110)、および前記知覚取得ユニット(130)に動作可能に連結されるように構成された、少なくとも1つのプロセッサ(140)であって、前記知覚取得ユニット(130)の前記取得速度よりも速い制御速度で、前記アーム(110)の動きを制御し、前記知覚情報(222、224)を用いて、前記アーム(110)の予測位置を表す予測位置情報(212、214、216、218)を提供し、ここで前記予測位置情報(212、214、216、218)は制御速度で決定され、前記知覚情報(222、224)、および前記予測位置情報(212、214、216、218)を用いて、前記アーム(110)を制御するように構成される、少なくとも1つのプロセッサ(140)とを備え、前記取得速度が1Hzであり、制御速度が10~100Hzであるとともに、前記少なくとも1つのプロセッサ(140)が、前記制御速度に対応する第1の間隔の前記予測位置情報(212、214、216、218)を用いて、前記アーム(110)を制御するように、かつ前記取得速度に対応する第2の間隔の前記知覚情報(222、224)を用いて、前記アーム(110)を制御するように構成され、前記少なくとも1つのプロセッサ(140)は、最新の知覚情報が使用可能でないときは前記予測位置情報を使用し、最新の知覚情報が使用可能なときは、前記知覚情報を用いて前記アーム(110)を制御するように構成された、ロボットシステム(100)。」
第3 当審拒絶理由
当審が、令和3年7月15日付けで、本件補正前の請求項1に係る発明に対して通知した拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)のうち、理由A(進歩性)の概要は、本件補正前の請求項1に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
第4 引用文献1の記載、技術的事項及び引用発明
1 記載事項
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引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
(1)発明の詳細な説明
「【技術分野】【0001】本発明は、ロボットの位置・姿勢の制御を行う運動制御装置に関する。【背景技術】続きを表示(全51行)【0002】物体を把持して、これを別の場所へ移動させる等、所定の動作を行わせるロボットハンドが知られている。同種の物体について同一の動作を繰り返し実行させるのではなく、性状(大きさや形状)が様々な物体について多様な動作を行わせようとすると、運動が複雑になり、さらに、位置・姿勢だけでなく、力の制御も必要となるため、制御自体も複雑化する。そうした多用途のロボットハンドにおいて精度よく制御を行うための技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。・・・【0004】特許文献2の技術では、視覚センサにより予め作業対象物を撮影して参照画像として記憶し、作業中に視覚センサにより撮影した作業対象物の画像が参照画像と同じ状態になるよう位置姿勢を制御する視覚フィードバック制御を行うものである。・・・【発明が解決しようとする課題】・・・【0006】また、特許文献2の技術を用いれば、視覚センサから位置・姿勢情報を取得できるため、制御部で把握しているハンド位置と実際の位置とのずれを修正することが可能であるが、通常視覚センサに用いられるカメラのフレームレートでは、高速でのフィードバック制御ができない。高速でのフィードバック制御に対応した高フレームレートのカメラは高価で、画像処理系も高速化する必要があり、ロボットハンドへの適用は容易ではない。また、障害物等により、対象物の映像を正常に取得できない場合は、制御を行うことができない。【0007】そこで本発明は、高速で精度よく制御処理を行うことを可能としたロボットの運動制御装置を提供することを課題とする。・・・【0018】図1に示されるように、ロボット100の胴体8には、左右双方のアーム7L、7Rを介して、ロボットハンド1R、1Lが取り付けられている。この胴体8は、移動式または固定式の台座に取り付けられている。胴体8の頭部には、視覚センサであるカメラアイ3を備えている。ハンド1、アーム7の各関節には、関節駆動用のモータと、関節角度を検出するエンコーダポテンションメータが配置されている。【0019】制御装置は、RAM、ROM、CPU等で構成される制御ECU2を中心に構成されており、対象物およびロボットハンド1の画像を撮影するカメラアイ3の出力画像から画像認識処理により、対象物およびロボットハンド1の位置・姿勢を認識する画像認識部20と、画像認識結果を基にして把持位置・把持姿勢の目標値を求める位置姿勢演算部21と、目標値に応じてロボットハンド1の動きを制御するロボット制御部22とを有している。ロボット制御部22には、各エンコーダポテンションメータ16の出力信号が入力され、モータドライバ4を制御することで、各モータ14の動きを制御して、ロボットハンド1とアーム7の動きを制御する。【0020】制御装置は、このような構成に限られるものではなく、指示された姿勢となるようロボットハンド1、アーム7の動きを制御する制御部と、画像認識装置や把持姿勢の演算部を、別体としてもよい。また、これらの演算部・制御部は、ハードウェア的に区分されていてもソフトウェア的に区分されていてもよい。【0021】制御ECU2によって行われる制御(複合型ビジュアルフィードバック制御)の制御系を示すブロック図を図3に示す。この制御系には、第1のフィードバック制御系25と、第2のフィードバック制御系26からなり、第1のフィードバック制御系25のフィードバックループの外側に第2のフィードバック制御系のフィードバックループが存在する2重フィードバックループを構成している。【0022】先に、第1のフィードバック制御系25の構成から説明する。第1のフィードバック制御系25は、ロボット100の関節部に配置された各エンコーダポテンションメータ16で測定した関節角度θが順運動学演算部251に入力され、順運動学演算によりハンド1・アーム7の実位置・姿勢を表す特徴量ξを求める。この実位置・姿勢情報ξと、後述する第2のフィードバック制御系26の出力であるハンド1・アーム7の目標位置・姿勢を表す特徴量(目標位置・姿勢情報)ξ’dとの差分に演算部252は、フィードバック制御係数λとヤコビアン行列の疑似逆行列とを乗じることで関節サーボ系の角速度目標値を求める(図中においては、θrefのθの上に・をつけて表す)。この角速度目標と、ロボット100の実際の関節角速度(図中においては、θの上に・をつけて表す)との差分がサーボ系であるモータドライバ4に入力され、各モータ14の動きを制御する。【0023】一方、第2のフィードバック制御系26は、画像認識部20の認識結果である位置・姿勢情報ξcrawを基にして、第1の運動推定部261が現在の位置・姿勢情報ξcを求める。一方、設定されている目標位置・姿勢情報ξdrawから、第2の運動推定部262は、現在の目標位置・姿勢情報ξdを求める。ξcと上述した順運動学演算部251の演算結果である実位置・姿勢情報ξとの差分Δξdを求めた目標位置・姿勢情報ξdから差し引くことで、第1のフィードバック制御系25へと出力する目標位置・姿勢情報ξ’dを求める。【0024】ここで、第1のフィードバック制御系25のサンプリングタイム(周期)Ts1は、第2のフィードバック制御系26のサンプリングタイム(周期)Ts2(ここでいう第2のフィードバック制御系26のサンプリングタイムは、カメラアイ3、画像認識部20のサンプリングタイムであって、各運動推定部261、262の出力時間間隔とは異なる。)より充分に短く設定されている。カメラアイ3として用いられる撮像装置は、通常、ビデオフレームレート(33ms程度)で画像を取得する。これに対して、第1のフィードバック制御系25の各要素は、その数倍~数十倍の速度で制御を行うことが可能である。そして、各運動推定部261、262の出力時間間隔は、第1のフィードバック制御系25のサンプリングタイムに一致している。【0025】内部フィードバックループを構成する第1のフィードバック制御系25のフィードバック量は、ハンド1、アーム7の構造、関節部、つまり、各リンクのパラメータおよび関節角度から計算される。【0026】一方、外部フィードバックループを構成する第2のフィードバック制御系26においては、カメラアイ3の取得タイミングの遅れを補償し、適切な指令を与えるため、対象物体とハンド1、アーム7の運動を推定する機構が必要となる。第2のフィードバック制御系26における第1および第2の運動推定部261、262は、そのための機構である。【0027】ここでは、例として線型補間を行う場合を例に説明する。図4は、運動推定を説明する図であり、s(k)は、tk時刻における視覚センサによる検出量、s(k-1)は、tk-1時刻における視覚センサによる検出量である。そして、T2はT1の整数倍であり、T2=tk-tk-1=tk+1-tkである。このとき、任意の、tk時刻とtk+1時刻間の運動推定値(s(i)上に符号^をつけて表す。)は、次式により表される。【0028】【数1】[図:0001388678000001.jpg]【0029】この補間式により第1のフィードバック制御系におけるサンプリングタイムに同期させて運動推定値を出力することができ、カメラアイ3の取得タイミングの遅れを補償することができる。ここでは、運動推定に線型補間を用いたが、2次式、あるいは、その他の多項式を用いて補間を行うようにしてもよい。・・・【0033】次に、本発明にかかる運動制御装置における制御方法の処理を図5、図6のフローチャートを参照して説明する。図5は、静止した物体を把持する場合の把持処理のフローチャートであり、図6は、動的な物体を把持する場合の把持処理のフローチャートである。【0034】先に、静止対象物の把持処理を図5のフローチャートを参照して説明する。まず、画像認識部20がカメラアイ3で取得した画像を画像処理することで対象物体の位置姿勢を認識する(ステップS1)。次に、位置姿勢演算部21は、対象物を把持するためのアーム7とハンド1の位置姿勢を決定する(ステップS2)。【0035】設定後、上述した制御系(ビジュアルサーボ系)を利用してハンド1、アーム7を制御し(ステップS3)、目標位置への到達を判定し(ステップS4)、到達していない場合には、ステップS3へと戻ることで、到達するまでハンド1、アーム7の駆動制御を継続する。目標位置へ到達したと判定した場合には、ステップS5へと移行して、対象物体を把持し、処理を終了する。必要ならば、引き続き、物体を把持したまま所定の動作、例えば、物体をある場所から別の場所へと移動させる動作、を行わせればよい。・・・【0040】制御系においては、内部フィードバックループを構成する第1のフィードバック制御系25のサンプリングタイムT1を1ms、外部フィードバックループを構成する第2のフィードバック制御系26のサンプリングタイム(映像取得フレームレート)T2を40msとする。」
(2)図面
「【図1】[図:0001388678000002.jpg]」
「【図2】[図:0001388678000003.jpg]」
「【図3】[図:0001388678000004.jpg]」
「【図4】[図:0001388678000005.jpg]」
「【図5】[図:0001388678000006.jpg]」
(3)引用文献1記載の技術的事項
上記(1)及び(2)の記載事項からみて、引用文献1には以下の技術的事項が記載されていると認められる。
ア 段落【0002】及び【0035】の記載からみて、引用文献1記載のロボットの運動制御装置は、作業対象物を把持して所定の動作を行わせるように構成され、ロボットハンド1とアーム7は、作業対象物に対して動くように構成されたものである。
イ 段落【0018】の記載からみて、カメラアイ3は、ロボット100の胴体8の頭部に取り付けられている。
ウ 段落【0021】-【0024】の記載からみて、カメラアイ3は、第2のフィードバック制御系26のサンプリングタイムTS2で、作業対象物に対するロボットハンド1とアーム7の画像を出力し、画像認識部20は、カメラアイ3の出力画像から、ロボットハンド1とアーム7の位置・姿勢情報ξcrawを認識しているところ、段落【0027】-【0029】の線形補間を行う例においては、時刻tkにおけるカメラアイ3に基づく検出量をs(k)、サンプリングタイムをT2として例示している。
したがって、カメラアイ3は、第2のフィードバック制御系26のサンプリングタイムTS2で、作業対象物に対するロボットハンド1とアーム7の現在の位置・姿勢情報である、検出量s(k)を検出していることが認められる。
エ 段落【0019】、図2の記載からみて、制御ECU2は、ロボットハンド1とアーム7、およびカメラアイ3を制御するものである。
オ 段落【0024】の記載からみて、制御ECU2は、カメラアイ3のサンプリングタイムTS2よりも充分に短く設定されている第1のフィードバック制御系25のサンプリングタイムTS1で、ロボットハンド1とアーム7を制御している。
カ 段落【0023】-【0024】の記載からみて、制御ECU2は、位置・姿勢情報ξcrawに基づいて、ロボットハンド1とアーム7の第1の運動推定部261が求める現在の位置・姿勢情報ξcを、サンプリングタイムTS1に一致する時間間隔で出力しており、そして、段落【0027】-【0029】の線形補間を行う例においては、段落【0028】の補間式【数1】を用いて、検出量s(k)に基づいて、サンプリングタイムT1に同期させて、運動推定値s∧(i)(当審注:【数1】においては、s(i)上に符号∧を付けて表している。)を出力するものとして例示している。
したがって、制御ECU2は、検出量s(k)に基づいて、第1の運動推定部261が求める、ロボットハンド1とアーム7の現在の位置・姿勢情報である運動推定値s∧(i)を出力し、この出力時間間隔はサンプリングタイムTS1に一致していることが理解できる。
キ 段落【0021】-【0024】、【0027】-【0029】の記載からみて、制御ECU2は、位置・姿勢情報ξcrawに基づく位置・姿勢情報ξcを用いて、ロボットハンド1とアーム7を制御するように構成されており、上記ウ、及びカにも記載したとおり、運動推定値s∧(i)は現在の位置・姿勢情報ξcを例示したものである。
よって、制御ECU2は、運動推定値s∧(i)を用いて、ロボットハンド1とアーム7を制御するように構成されていることが認められる。
ク 段落【0040】に記載したサンプリングタイムT2の40msは25Hzに、サンプリングタイムT1の1msは1000Hzにそれぞれ換算される。
また、段落【0024】及び【0040】の記載からみて、Ts1とT1は、第1のフィードバック制御系25のサンプリングタイムを示す同じ周期であり、Ts2とT2は、第2のフィードバック制御系26のサンプリングタイムを示す同じ周期である。
ケ 段落【0021】-【0024】、【0027】-【0029】の記載、及び上記キの例示からみて、制御ECU2は、サンプリングタイムT1(周期)に一致する出力時間間隔の運動推定値s∧(i)を用いて、ロボットハンド1とアーム7を制御するように構成されている。
2 引用発明
上記1(1)-(3)より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が、記載されている(なお、Ts1とT1は同じ周期であり、Ts2とT2は同じ周期である(上記1(3)ク)から、以下では、T1、T2で統一して表記する。)。
「作業対象物を把持して所定の動作を行わせるように構成されたロボットの運動制御装置であって、
前記作業対象物に対して動くように構成された、ロボットハンド1とアーム7と、
ロボット100の胴体8の頭部に取り付けられ、第2のフィードバック制御系26のサンプリングタイムT2で、前記作業対象物に対する前記ロボットハンド1とアーム7の位置・姿勢情報である、検出量s(k)を検出するように構成された、カメラアイ3と、
前記ロボットハンド1とアーム7、およびカメラアイ3を制御する制御ECU2であって、
前記カメラアイ3の前記サンプリングタイムT2よりも充分に短く設定されている第1のフィードバック制御系25のサンプリングタイムT1で、前記ロボットハンド1とアーム7を制御し、
前記検出量s(k)に基づいて、前記ロボットハンド1とアーム7の現在の位置・姿勢情報である運動推定値s∧(i)を出力し、出力時間間隔はサンプリングタイムT1に一致しており、
前記運動推定値s∧(i)を用いて、前記ロボットハンド1とアーム7を制御するように構成される、制御ECU2とを備え、
前記サンプリングタイムT2は25Hzであり、前記サンプリングタイムT1が1000Hzであるとともに、
前記制御ECU2が、前記サンプリングタイムT1に一致する出力時間間隔の前記運動推定値s∧(i)を用いて、前記ロボットハンド1とアーム7を制御するように構成され、
前記制御ECU2は、前記検出量s(k)に基づいて出力した前記運動推定値s∧(i)を用いて前記ロボットハンド1とアーム7を制御するように構成された、
ロボットの運動制御装置。
第5 本願発明と引用発明の対比
1 本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
(1)引用発明の「作業対象物」は本願発明の「目標物」に、以下同様に、「ロボットの運動制御装置」は「ロボットシステム」に、「ロボットハンド1とアーム7」は「関節運動可能なアーム」に、「作業対象物を把持して所定の動作を行わせる」ことは「目標物を操作する」ことに相当する。
(2)引用発明の「第2のフィードバック制御系26のサンプリングタイムT2」は本願発明の「ある取得速度」に、「作業対象物に対する前記ロボットハンド1とアーム7の位置・姿勢情報である、検出量s(k)」は「目標物に対する前記アームの位置に対応する、知覚情報」に、「制御する制御ECU2」は「動作可能に連結されるように構成された、少なくとも1つのプロセッサ」に、「カメラアイ3」は「知覚取得ユニット」に相当し、引用発明において「検出量s(k)」を「検出する」ことは、本願発明において「知覚情報」を「取得する」ことに、相当する。
また、引用発明の「カメラアイ3」が「ロボット100の胴体8の頭部」に取り付けられていることと、本願発明の「知覚取得ユニット」が「前記アーム」に取り付けられていることを対比すると、「知覚取得ユニット」が「前記ロボットシステム」に取り付けられる点に限り一致する。
(3)引用発明の「第1のフィードバック制御系25のサンプリングタイムT1」は本願発明の「制御速度」に相当し、引用発明において「前記カメラアイ3の前記サンプリングタイムT2よりも充分に短く設定されている第1のフィードバック制御系25のサンプリングタイムT1で、前記ロボットハンド1とアーム7を制御」することは、本願発明において「前記知覚取得ユニットの前記取得速度よりも速い制御速度で、前記アームの動きを制御」することに相当する。
(4)引用発明の「前記ロボットハンド1とアーム7の現在の位置・姿勢情報である運動推定値s∧(i)」は本願発明の「前記アームの予測位置を表す予測位置情報」に相当し、引用発明において「前記検出量s(k)に基づいて、前記ロボットハンド1とアーム7の現在の位置・姿勢情報である運動推定値s∧(i)を出力し、出力時間間隔はサンプリングタイムT1に一致」することは、本願発明において「前記知覚情報を用いて、前記アームの予測位置を表す予測位置情報を提供し、ここで前記予測位置情報は制御速度で決定」されることに相当する。
(5)引用発明の「前記運動推定値s∧(i)を用いて、前記ロボットハンド1とアーム7を制御するように構成」されることと、本願発明の「前記知覚情報、および前記予測位置情報を用いて、前記アームを制御するように構成」されることを対比すると、「前記予測位置情報を用いて、前記アームを制御するように構成」されることで一致する。
(6)引用発明の「サンプリングタイムT1に一致する出力時間間隔」は本願発明の「制御速度に対応する第1の間隔」に相当し、引用発明において「前記制御ECU2が、前記サンプリングタイムT1に一致する出力時間間隔の前記運動推定値s∧(i)を用いて、前記ロボットハンド1とアーム7を制御するように構成」されることと、本願発明において「前記少なくとも1つのプロセッサが、前記制御速度に対応する第1の間隔の前記予測位置情報を用いて、前記アームを制御するように、かつ前記取得速度に対応する第2の間隔の前記知覚情報を用いて、前記アームを制御するように構成」されることを対比すると、「前記少なくとも1つのプロセッサが、前記制御速度に対応する第1の間隔の前記予測位置情報を用いて、前記アームを制御するように構成」される点で一致する。
(7)引用発明の「前記制御ECU2は、前記検出量s(k)に基づいて出力した前記運動推定値s∧(i)を用いてロボットハンド1とアーム7を制御するように構成された」ことと、本願発明の「前記少なくとも1つのプロセッサは、最新の知覚情報が使用可能でないときは前記予測位置情報を使用し、最新の知覚情報が使用可能なときは、前記知覚情報を用いて前記アームを制御するように構成された」ことを対比すると、「前記少なくとも1つのプロセッサは、最新の知覚情報が使用可能でないときは前記予測位置情報を使用し、前記アームを制御するように構成された」点に限り一致する。
2 一致点
したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致する。
「目標物を操作するように構成されたロボットシステムであって、前記目標物に対して動くように構成された、関節運動可能なアームと、前記ロボットシステムに取り付けられ、ある取得速度で、前記目標物に対する前記アームの位置に対応する、知覚情報を取得するように構成された、知覚取得ユニットと、前記アーム、および前記知覚取得ユニットに動作可能に連結されるように構成された、少なくとも1つのプロセッサであって、前記知覚取得ユニットの前記取得速度よりも速い制御速度で、前記アームの動きを制御し、前記知覚情報を用いて、前記アームの予測位置を表す予測位置情報を提供し、ここで前記予測位置情報は制御速度で決定され、前記予測位置情報を用いて、前記アームを制御するように構成される、少なくとも1つのプロセッサとを備え、前記少なくとも1つのプロセッサが、前記制御速度に対応する第1の間隔の前記予測位置情報を用いて、前記アームを制御するように構成され、前記少なくとも1つのプロセッサは、最新の知覚情報が使用可能でないときは前記予測位置情報を使用し、前記アームを制御するように構成された、ロボットシステム。」
3 相違点
そして、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
(1)相違点1
本願発明の知覚取得ユニットが、ロボットのアームに取り付けられているのに対して、引用発明における知覚取得ユニットとして機能するカメラアイ3は、ロボット100の胴体8の頭部に取り付けられている点。
(2)相違点2
本願発明の取得速度が1Hzであり、制御速度が10~100Hzであるのに対して、引用発明の取得速度としてのサンプリングタイムT2は25Hzであり、制御速度としてのサンプリングタイムT1は1000Hzである点。
(3)相違点3
本願発明のプロセッサによるアームの制御は、「前記取得速度に対応する第2の間隔の前記知覚情報を用いて」おり、「最新の知覚情報が使用可能なときは、前記知覚情報を用いて」いるのに対して、引用発明の制御ECU2によるロボットハンド1とアーム7の制御は、知覚情報に相当する「検出量s(k)」を用いているかどうか不明な点。
第6 相違点の検討
1 相違点1
引用発明のロボット100の胴体8の頭部に備えられたカメラアイ3は、段落【0019】の「対象物およびロボットハンド1の画像を撮影するカメラアイ3の出力画像から画像認識処理により、対象物およびロボットハンド1の位置・姿勢を認識する」、段落【0034】及び【0037】の「対象物を把持するためのアーム7とハンド1の位置姿勢を決定する」の記載からみて、引用発明のカメラアイ3は、本願発明のアームに取り付けられた知覚取得ユニットと同様に、目標物に対するロボットシステムのアームの位置に対応する知覚情報を取得する機能を有しており、引用発明の上記のロボットの頭部に備えられたカメラアイ3の設置位置を変えて、アームに取り付けることは、適宜選択し得た設計的事項である。
2 相違点2
引用発明の取得速度は、本願発明の取得速度よりも25倍速く、また、引用発明の制御速度は、本願発明の制御速度よりも10~100倍速いものであるところ、取得速度や制御速度は、その速度を高めることに技術的な困難性を伴うものであって、速度を低下させることは、当業者が容易になし得ることというほかないから、引用発明の取得速度や制御速度を低下させて、本願発明のように、取得速度を1Hz、制御速度を10~100Hzとすることは、当業者が容易に想到できた事項である。
3 相違点3
引用発明において、検出量s(k)に基づいて運動推定値s∧(i)を出力することに関して、特に、段落【0026】-【0029】、及び図4には、第2のフィードバック制御系26における対象物体とハンド1とアーム7の運動を推定するための機構である第1の運動推定部261が、tk-1時刻における視覚センサによる検出量s(k-1)、及びtk時刻における視覚センサによる検出量s(k)から、段落【0028】の【数1】(上記第4の1(1))により、tk時刻とtk+1時刻間において運動推定値s∧(i)を求めることが示されている。
ここで、【数1】を詳細に検討すると、T2=tk-tk-1=tk+1-tkで、かつT2はT1の整数倍(段落【0027】)であり、加算を意味するΣでのiの範囲が1~(T2/T1-1)であることからみて、この運動推定値s∧(i)については、上記tk時刻とtk+1時刻間をT1間隔で(T2/T1)個に分割し、T1の間隔でのハンド1とアーム7の微少な移動量を(s(k)-s(k-1))/(T2/T1)として推定し、当該微少な推定移動量を、検出量s(k)とs(k+1)が得られる両端のtk時刻とtk+1時刻を除いた(T2/T1-1)個だけ、s(k)に対して加算することにより、運動推定値s∧(i)を求めることが認められる。
そうすると、検出量s(k)が得られるtk時刻では、検出量s(k)に対して微少な推定移動量を加算せずに運動推定値s∧(k)を求めること、すなわち、検出量s(k)をそのまま運動推定値s∧(k)とすることになるから、引用発明のロボットハンド1とアーム7の制御は、本願発明の視覚情報に相当する検出量s(k)が使用可能なときは、当該検出量s(k)を実質的に用いているといえる。
そして、検出量s(k)の間隔T2が取得速度に対応することは明らかである。
したがって、引用発明の制御ECU2によるロボットハンド1とアーム7の制御は、取得速度に対応する第2の間隔(T2)の知覚情報(s(k))を用いており、最新の知覚情報が使用可能なときは、前記知覚情報を用いているといえるから、相違点3は、本願発明と引用発明における実質的な相違点であるとはいえない。
4 小括
本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。
第7 請求人の主張について
1 請求人の主張の概要
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請求人は、当審拒絶理由通知に対する令和3年10月15日提出の意見書で、理由Aについて、概ね以下の主張をしている。
本願発明は、本件補正により「プロセッサは、最新の知覚情報が使用可能でないときは予測位置情報を使用し、最新の知覚情報が使用可能なときは、知覚情報を用いてアームを制御するように構成されていること」が規定されていることから、予測位置情報と知覚情報(予測ではない実際の位置情報)を選択的に使用することでより信頼性と正確性の高い制御が可能になる。
その一方で、引用文献1には、情報を選択的に使用して正確性や信頼性を高めるという本件補正後の本願発明の構成は開示も示唆もされておらず、当業者が引用文献1の開示内容から本願発明に想到したであろうということはできないから、本願発明は引用発明に対して進歩性を有する。
2 請求人の主張に対する検討
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上記本願発明により規定されている「プロセッサは、最新の知覚情報が使用可能でないときは予測位置情報を使用し、最新の知覚情報が使用可能なときは、知覚情報を用いてアームを制御するように構成されていること」については、第5の3で認定した本願発明と引用発明との相違点3である。
そして、上記第6の3で検討したとおり、引用文献1の【0028】の【数1】は、s(k)が得られるtk時刻では、s∧(k)=s(k)とし、s(k)が得られないti時刻では、s∧(i)の推定を行うことが示されているから、この相違点3は本願発明と引用発明との実質的な相違点ではなく、この相違点の存在により、本願発明が引用発明に基づいて容易に想到し得ないものとはいえない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2-14について検討するまでもなく、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-017465