特許拒絶査定不服審判
2020-016364
分散X線発生器のアレイを有する医療撮像システム
- 審判番号
- 2020-016364
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-537851外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年11月27日
- 審決日
- 2021年07月12日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アダプティックス エルティーディー
- 【請求人代理人】▲吉▼川 俊雄
- 分類
- P18 .121-Z (A61B) / P18 .575-Z (A61B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-537851「分散X線発生器のアレイを有する医療撮像システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年8月3日国際公開、WO2017/130013、平成31年2月14日国内公表、特表2019-503789〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)1月25日を国際出願日とする出願であって、令和2年1月7日付けで拒絶理由が通知され、同年4月14日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年7月3日付けで拒絶査定されたところ、同年11月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされ、令和3年4月7日付けで前置報告書が作成されたものである。
第2 令和2年11月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年11月27日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1~3の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「 【請求項1】
X線撮像システムであって、
デジタルX線検出器と、
10cm×10cmの寸法を有し、約1cmのピッチでエミッタが配置された、分散X線発生器の固定2次元アレイであって、
非オーバラップ放射ビームを前記デジタルX線検出器上に投影するように構成される隣接しない第1のエミッタの第1の群、及び、
隣接しない第2のエミッタの第2の群であって、前記第2のエミッタのそれぞれは、前記第1のエミッタの少なくとも1つの第1のエミッタに隣接するように配置され、隣接しない第2のエミッタの第2の群は、非オーバラップ放射ビームを前記デジタルX線検出器上に投影するように構成される、隣接しない第2のエミッタの第2の群を備え、隣接する第2のエミッタと第1のエミッタは、同時に動作する場合にデジタルX線検出器の各エリア上にオーバラップする放射線ビームを投影するように構成される、分散X線発生器の固定2次元アレイと、
隣接する第2のエミッタと第1のエミッタとから投影される放射線ビームを時間的に分離するように、前記分散X線発生器の固定2次元アレイからのX線放出を選択的に制御する手段であって、前記X線放出を選択的に制御する手段は、
複数の電子エミッタと、
複数のX線透過性ブレームシュトランク・ターゲットであって、複数の前記X線透過性ブレームシュトランク・ターゲットのそれぞれは、複数の前記電子エミッタのそれぞれから離間される、複数のX線透過性ブレームシュトランク・ターゲットと、
前記X線透過性ブレームシュトランク・ターゲットに隣接する、低原子番号の材料と、及び、
複数の個別電源平坦ソレノイドであって、複数の前記個別電源平坦ソレノイドのそれぞれは、複数の前記電子エミッタのそれぞれの上及び背後に配置される、複数の個別電源平坦ソレノイドを備え、
複数の前記個別電源平坦ソレノイドの1つを励磁することで、複数の前記電子エミッタのそれぞれによって生成された電子ビームを偏向またはデフォーカスさせる磁気フィールドを生成する、X線放出を選択的に制御する手段と、
前記デジタルX線検出器から得られる複数のX線画像データの取得を制御する手段と、
前記複数のX線画像データを3次元表現になるように再構成する手段と、
前記デジタルX線検出器から取得される前記複数のX線画像データを視覚化し、解析し、記憶する手段と、
前記分散X線発生器の固定2次元アレイを、前記デジタルX線検出器、及び前記分散X線発生器の固定2次元アレイと前記デジタルX線検出器との間に位置決めされた患者に対して位置決めし位置合せするための手段とを備える、X線撮像システム。
【請求項2】
前記分散X線発生器の固定2次元アレイは、
複数の電子エミッタと、
複数のターゲットと、
前記複数の電子エミッタと前記複数のターゲットとの間で電位差を生成する手段と、
前記複数の電子エミッタから前記複数のターゲットを離間させる手段と、
各エミッタ・ターゲット対からのX線の放出を制御する手段と、
発生する前記X線をろ過する手段とを備える、請求項1に記載のX線撮像システム。
【請求項3】
前記分散X線発生器の固定2次元アレイは分散X線発生器の平面アレイを備える、請求項1に記載のX線撮像システム。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和2年4月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~3の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
X線撮像システムであって、
デジタルX線検出器と、
10cm×10cmの寸法、及び、約1cmのピッチで構成された、分散X線発生器の固定2次元アレイであって、
非オーバラップ放射ビームを前記デジタルX線検出器上に投影するように構成される隣接しない第1のエミッタの第1の群、及び、
隣接しない第2のエミッタの第2の群であって、前記第2のエミッタのそれぞれは、前記第1のエミッタの少なくとも1つの第1のエミッタに隣接するように配置され、隣接しない第2のエミッタの第2の群は、非オーバラップ放射ビームを前記デジタルX線検出器上に投影するように構成される、隣接しない第2のエミッタの第2の群を備え、隣接する第2のエミッタと第1のエミッタは、同時に動作する場合にデジタルX線検出器の各エリア上にオーバラップする放射線ビームを投影するように構成される、分散X線発生器の固定2次元アレイと、
隣接する第2のエミッタと第1のエミッタとから投影される放射線ビームを時間的に分離するように構成された、前記分散X線発生器のアレイからのX線放出を選択的に制御する手段と、
前記分散X線発生器の固定2次元アレイからのX線放出を選択的に制御する手段と、
前記デジタルX線検出器から得られる複数のX線画像データの取得を制御する手段と、
前記複数のX線画像データを3次元表現になるように再構成する手段と、
前記デジタルX線検出器から取得される前記複数のX線画像データを視覚化し、解析し、記憶する手段と、
前記分散X線発生器の固定2次元アレイを、前記デジタルX線検出器、及び前記分散X線発生器の固定2次元アレイと前記デジタルX線検出器との間に位置決めされた患者に対して位置決めし位置合せするための手段とを備える、X線撮像システム。
【請求項2】
前記分散X線発生器の固定2次元アレイは、
複数の電子エミッタと、
複数のターゲットと、
前記複数の電子エミッタと前記複数のターゲットとの間で電位差を生成する手段と、
前記複数の電子エミッタから前記複数のターゲットを離間させる手段と、
各エミッタ・ターゲット対からのX線の放出を制御する手段と、
発生する前記X線をろ過する手段とを備える、請求項1に記載のX線撮像システム。
【請求項3】
前記分散X線発生器の固定2次元アレイは分散X線発生器の平面アレイを備える、請求項1に記載のX線撮像システム。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の「分散X線発生器の固定2次元アレイ」のピッチについて、「エミッタ」のピッチであるとの限定を付加し、本件補正前の「X線放出を選択的に制御する手段」について、その「X線放出」が「固定2次元アレイ」からのものであるとの限定を付し、また、当該手段に含まれる電子エミッタ、ターゲット、ターゲット隣接部材、ソレノイドなる各要素及びそれらの機能について特定する限定を付し、その他前記各限定事項の付加に伴う平仄を整えたものものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明との産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正は新規事項を加入するものではない。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
3 本件補正発明の独立特許要件についての検討
(1)本件補正発明
本件補正発明は上記1(1)に示した次のとおりのものである(各構成単位冒頭の「A」などは分説のため当審にて付与した。以下「構成A」などという。)。
「A X線撮像システムであって、
B デジタルX線検出器と、
C1 10cm×10cmの寸法を有し、
C2 約1cmのピッチでエミッタが配置された、
C 分散X線発生器の固定2次元アレイであって、
D 非オーバラップ放射ビームを前記デジタルX線検出器上に投影するように構成される隣接しない第1のエミッタの第1の群、及び、
E 隣接しない第2のエミッタの第2の群であって、
E1 前記第2のエミッタのそれぞれは、前記第1のエミッタの少なくとも1つの第1のエミッタに隣接するように配置され、
E2 隣接しない第2のエミッタの第2の群は、非オーバラップ放射ビームを前記デジタルX線検出器上に投影するように構成される、隣接しない第2のエミッタの第2の群を備え、
F 隣接する第2のエミッタと第1のエミッタは、同時に動作する場合にデジタルX線検出器の各エリア上にオーバラップする放射線ビームを投影するように構成される、分散X線発生器の固定2次元アレイと、
G 隣接する第2のエミッタと第1のエミッタとから投影される放射線ビームを時間的に分離するように、前記分散X線発生器の固定2次元アレイからのX線放出を選択的に制御する手段であって、前記X線放出を選択的に制御する手段は、
G1 複数の電子エミッタと、
G2 複数のX線透過性ブレームシュトランク・ターゲットであって、複数の前記X線透過性ブレームシュトランク・ターゲットのそれぞれは、複数の前記電子エミッタのそれぞれから離間される、複数のX線透過性ブレームシュトランク・ターゲットと、
G3 前記X線透過性ブレームシュトランク・ターゲットに隣接する、低原子番号の材料と、及び、
G4 複数の個別電源平坦ソレノイドであって、複数の前記個別電源平坦ソレノイドのそれぞれは、複数の前記電子エミッタのそれぞれの上及び背後に配置される、複数の個別電源平坦ソレノイドを備え、
G5 複数の前記個別電源平坦ソレノイドの1つを励磁することで、複数の前記電子エミッタのそれぞれによって生成された電子ビームを偏向またはデフォーカスさせる磁気フィールドを生成する、X線放出を選択的に制御する手段と、
H 前記デジタルX線検出器から得られる複数のX線画像データの取得を制御する手段と、
I 前記複数のX線画像データを3次元表現になるように再構成する手段と、
J 前記デジタルX線検出器から取得される前記複数のX線画像データを視覚化し、解析し、記憶する手段と、
K 前記分散X線発生器の固定2次元アレイを、前記デジタルX線検出器、及び前記分散X線発生器の固定2次元アレイと前記デジタルX線検出器との間に位置決めされた患者に対して位置決めし位置合せするための手段とを備える、
L X線撮像システム。」
(2)刊行物1の記載事項
原査定の拒絶理由において主引例(引用文献2)として提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2014-64705号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。以下同じ。)。
ア 明細書の記載事項
「【請求項 4】
前記X線照射部は、前記X線源のX線照射方向に配設され、前記X線源から照射されるX線のX線照射方向を制御する第1の照射方向選択部材を少なくとも1つ有し、
複数の前記X線源及び前記第1の照射方向選択部材の少なくともいずれかを移動させる可動部、を更に備える、
請求項1に記載のX線発生装置。」
「【技術分野】
【0001】
本開示は、X線発生装置、X線検出装置、X線撮影システム及びX線撮影方法に関する。 」
「【0009】
また、本開示によれば、X線を検出する受光素子を複数有し、前記受光素子によって構成される画素ごとに、検出したX線量に応じた画素信号を出力するX線検出部と、前記画素ごとの、前記X線照射条件と前記画素信号との関係に関する情報である、画素選択情報を取得する画素選択情報取得部と、前記画素選択情報に基づいて、複数の前記X線照射条件に応じた複数の前記画素信号のうち、いずれかの前記画素信号を画素ごとに選択することによって、画像を構成する画像処理部とを備え、前記X線検出部は、複数のX線源から照射される各X線の照射領域が互いに重畳しないようにX線照射条件が制御されたX線を検出する、X線検出装置が提供される。 」
「【0065】
<2.第1の実施形態> [2.1.X線発生装置の構成] まず、図7を参照して、本開示の第1の実施形態に係るX線発生装置について説明する。図7は、本開示の第1の実施形態に係るX線発生装置の一構成例を示す概略図である。図7を参照すると、本実施形態に係るX線発生装置10は、X線照射部100、X線検出部200及び制御部300を備える。
【0066】
まず、X線照射部100の機能及び構成について説明する。X線照射部100は後述する照射制御部310からの制御により、X線を照射する。ここで、X線照射部100は、X線源群110を有する。X線源群110は、例えば複数のX線源が平面状に並べられた面線源であってよい。
【0067】
本実施形態においては、当該X線源は、例えば、半導体デバイスの製造プロセスを用いて形成される、μmオーダーの微小なX線源であってもよい。ただし、X線源群110を構成するX線源の種類及び構造は特に限定されず、あらゆるX線源が用いられてよい。本実施形態におけるX線源の構造の一例については、図8を参照して、後で詳しく説明する。 」
「【0071】
次に、X線検出部200の機能及び構成について説明する。X線検出部200は、X線照射部100から照射されるX線を検出する。ここで、X線検出部200は、受光素子群210を有する。受光素子群210は、例えば、複数の受光素子が平面状に並べられて構成される。ここで、当該受光素子の種類や構造は特に限定されない。当該受光素子は、例えばフォトダイオードであってよい。
【0072】
また、受光素子群210を構成する受光素子は、いくつかの受光素子ごとに画素を構成してもよい。ここで、1つの受光素子が1つの画素を構成してもよいし、いくつかの受光素子が1つの画素を構成してもよい。
【0073】
受光素子群210を構成する複数の受光素子は、X線照射部100から照射されるX線を検出し、検出したX線の線量に応じた信号を出力する。ここで、出力される信号は、受光素子ごとに出力されてもよいし、画素ごと、すなわち1つの画素を構成するいくつかの受光素子ごとに出力されてもよい。以下では、画素ごとに出力されるX線の線量に応じた信号のことを、画素信号と呼ぶこととする。X線検出部200は、検出した画素信号を、後述する画素選択情報取得部320及び画像処理部330に送信する。ここで、受光素子が検出した画素信号に対して、例えば、フィルタ回路によるノイズ除去処理や増幅器による増幅処理等、画像処理における一般的な信号処理が適宜行われてよい。なお、X線照射部100のX線源群110と、X線検出部200の受光素子群210との距離(X線の照射距離)は、X線撮影の条件、例えば検査項目や被写体の種類等に応じたX線の線量やX線の照射範囲等に基づいて、適宜調整されてよい。」
「【0093】
[2.2.X線照射条件の制御について] 次に、図8~10を参照して、以上説明したX線照射条件の制御の具体的な方法について説明する。図8は、面線源の全てのX線源からX線を照射した場合のX線照射領域の様子を示す概念図である。図9及び図10は、本実施形態に係るX線照射条件の制御方法の一例を説明するための概念図である。
【0094】
図8~10を参照すると、X線源群110と受光素子群210とが対向して配置されている。また、X線源群110は複数のX線源111~115から構成される。ここで、図8~10においては、説明を簡単にするために、X線源が5つしか記載されていないが、実際にはより多くのX線源が平面状に並んでいてもよい。更に、これらのX線源は、同一平面状に並べられなくてもよく、例えば、X線源及び受光素子が、被写体を取り囲むように3次元的に配設されてもよい。ここで、以下では、説明を簡単にするために被写体についての図示及び説明を省略しているが、X線撮影時には、X線源群110と受光素子群210との間に被写体が存在してもよい。
【0095】
図8~10を参照すると、X線源111は、略コの字形状を有する陽極180と、陽極180の開口部に相当する部位に配設されるニードル状の陰極190とを有する。陽極180と陰極190との間に電圧を印加することで、陰極190から熱電子が放出され、放出した熱電子が陽極180に衝突し、X線が照射される。ここで、以上の説明では、X線源111を例に挙げて説明を行ったが、X線源群110を構成する他のX線源もX線源111と同様の構造であってよい。
【0096】
図8は、X線源111~115の全てからX線が照射されている様子を示している。また、各X線源から照射されるX線の照射領域Eが、ハッチングで表されている。X線源111~115は、平行X線を照射することができるが、[2.1.X線発生装置の構成]で説明したように、照射されるX線の照射角θは0度ではなく、ある角度を有してよい。従って、隣り合うX線源から照射されたX線の照射領域Eが重畳し、重畳領域Fが形成され得る。このような重畳領域Fが存在すると、X線画像の品質が低下する一因となる。
【0097】
そこで、本開示の第1の実施形態においては、照射制御部310によって、重畳領域Fが生じないようにX線照射条件の制御が行われる。具体的には、照射制御部310は、重畳領域Fが生じないように、例えば、複数のX線源のうち任意のX線源だけを駆動する制御を行う。以下、図9及び図10を参照して、このようなX線照射条件の制御の一例について説明する。
【0098】
まず、X線照射部100は、照射制御部310からの制御により、複数のX線源のうち一部のX線源のみを駆動し、1度目のX線照射を行う。例えば、X線照射部100は、図9に示すように、複数のX線源のうち、X線源111、X線源113及びX線源115だけを駆動し、1度目のX線照射を行う。X線源111、X線源113及びX線源115だけを駆動することで、重畳領域Fが生じないようにすることができる。
【0099】
ここで、1度目のX線照射においては、X線源111、X線源113及びX線源115だけが駆動されているので、受光素子群210のうち、X線源111、X線源113及びX線源115に対応する位置に配設された受光素子だけにX線が入射している。図9において、受光素子群210のうち、白色で塗りつぶされている領域は、X線が照射されている受光ブロック220、黒色で塗りつぶされている領域は、X線が照射されていない非受光ブロック230を表している。X線検出部200は、1度目のX線照射において検出されたX線の強度に対応する画素信号を、画素選択情報取得部320及び画像処理部330に送信する。
【0100】
次に、X線照射部100は、照射制御部310からの制御により、X線照射条件を変更して2度目のX線照射を行う。例えば、X線照射部100は、1度目のX線照射で駆動しなかったX線源だけを駆動する。すなわち、X線照射部100は、図10に示すように、複数のX線源のうち、X線源112及びX線源114だけを駆動し、2度目のX線照射を行う。ここで、2度目のX線照射においても、X線源112及びX線源114だけを駆動することで、重畳領域Fが生じないようにすることができる。
【0101】
X線検出部200は、2度目のX線照射において検出されたX線の強度に対応する画素信号を、画素選択情報取得部320及び画像処理部330に送信する。ここで、2度目のX線照射においては、1度目のX線照射で駆動しなかったX線源だけが駆動されるため、受光素子群210のうち、1度目のX線照射によってX線が入射しなかった受光素子にX線が入射する。従って、X線照射を2度行うことによって、受光素子群210の全領域に渡ってX線が入射する。
【0102】
画素選択情報取得部320は、1度目のX線照射による画素信号及び2度目のX線照射による画素信号に基づいて、画素選択情報を取得する。そして、画像処理部330は、画素信号及び画素選択情報に基づいて画像を構成することができる。
【0103】
ここで、画素選択情報は、例えば、[2.1.X線発生装置の構成]で説明したように、1度目のX線照射時及び2度目のX線照射時の画素信号の強度に関する情報であってよい。画素選択情報が1度目のX線照射時及び2度目のX線照射時の画素信号の強度に関する情報である場合、画像処理部330は、例えば、それらの画素信号の強度を画素ごとに比較して、値の大きい方の画素信号を、その画素の出力とすることができる。
【0104】
ここで、実際にX線を照射して画素信号を取得しなくても、X線照射条件に応じて画素信号の強度の大小を想定できる場合には、画素選択情報取得部320は、X線照射が行われる前に画素選択情報を取得してもよい。例えば、図9及び図10に示す実施例においては、駆動するX線源の位置に応じて、受光ブロック220及び非受光ブロック230の位置も想定することができる。従って、予め、画素選択情報取得部320に、画素選択情報として、X線照射条件と受光ブロック220及び非受光ブロック230との関係が入力されていてもよい。画像処理部330は、当該画素選択情報に基づいて、画素ごとの画素信号として、いずれのX線照射条件のときの画素信号を用いるかを選択することができる。
【0105】
以上説明したように、本開示の第1の実施形態に係るX線発生装置10においては、照射制御部310が、X線照射領域の重畳領域が生じないようにX線照射部100を制御する。具体的には、照射制御部310は、X線照射部100が、複数のX線源のうち、任意のX線源を駆動するように制御することで、X線照射領域の重畳領域が生じないようにする。つまり、照射制御部310は、可動部400を制御することで、受光素子群210における受光ブロック220及び非受光ブロック230の位置及び面積を制御し、X線源から照射される各X線の照射領域が互いに重畳しないようにすることができる。従って、受光素子群210の検出面内に一様なX線が照射されるため、より高品質なX線画像を得ることができる。
【0106】
ここで、図9及び図10に示す実施例においては、2回X線照射を行う場合について説明したが、本実施形態はかかる例に限定されない。X線照射領域が重畳しなければ、X線の照射はどのように制御されてもよく、例えば3回以上X線照射が行われてもよい。」
「【0107】
[2.3.第1の実施形態の変形例] 次に、第1の実施形態の変形例について、図11及び図12を参照して説明する。図11及び図12は、本実施形態に係るX線照射条件の制御方法の変形例を説明するための概念図である。ここで、図11は図9に対応し、図12は図10に対応している。
【0108】
図11及び図12を参照すると、X線源群110の、X線照射方向にコリメータ130が設置されている。ここで、図11及び図12に示す構成は、コリメータ130が設置されていること以外は、図9及び図10に示す構成と同様であるため、重複する構成については説明を省略する。更に、以下では、説明を簡単にするために被写体についての図示及び説明を省略しているが、X撮影時には、X線源群110と受光素子群210との間に被写体が存在してもよい。
・・・
【0123】
従って、X線照射部110のX線照射方向にアパーチャ140を設置することにより、X線照射部110から照射されるX線が集光され、被写体及び/又は検出器の所望の部位にX線が照射されるようにX線の照射方向を制御することができる。従って、X線の発散が抑制され、X線の照射領域が重畳する可能性が低減される。」
「【0163】
<5.X線撮影システムの構成> 以上、本開示の第1の実施形態及び第2の実施形態に係るX線発生装置の機能及び構成について説明してきたが、本開示はかかる構成に限定されない。例えば、上記の説明においてX線発生装置が有していた機能を複数の装置が分割して有することで、X線撮影システムを構成してもよい。このようなX線撮影システムの一例について、図24を参照して説明する。
【0164】
図24は、本開示の第1の実施形態及び第2の実施形態に係るX線撮影システムの概略構成を示す機能ブロック図である。図24を参照すると、本開示の第1の実施形態及び第2の実施形態に係るX線撮影システム30は、X線発生装置1100、X線検出装置1200及び画像処理装置1300を備える。
【0165】
X線発生装置1100は、所望の条件で発生させたX線を、被写体及び後述するX線検出装置1200のX線検出部1210に向けて照射する。X線発生装置1100は、例えば、X線照射部1110、照射制御部1120を備える。また、X線発生装置1100は、可動部(図示せず。)を更に備えてもよい。更に、X線発生装置1100は、画像処理装置1300と、互いに通信可能に接続されていてもよい。X線発生装置1100は、例えば、X線照射条件に関する情報を、画像処理装置1300に送信することができる。ここで、X線照射部1110の機能及び構成は、図7又は図18におけるX線照射部100又はX線照射部100aの機能及び構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。また、照射制御部1120及び可動部の機能及び構成は、図7又は図18における照射制御部310及び可動部400の機能及び構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。
・・・
【0168】
以上、図24を参照して、本開示の第1の実施形態及び第2の実施形態に係るX線撮影システム30の概略構成について説明した。かかるX線撮影システム30によれば、本開示の第1の実施形態及び第2の実施形態に係るX線発生装置10、20と同様な効果を得ることができる。すなわち、照射制御部1120が、複数のX線源から照射される各X線の照射領域が重畳しないように、X線照射条件を制御することで、より高品質なX線画像を得ることができる。
・・・
【0173】
次に、ステップS2020で、X線検出部200、1210が、照射されたX線を検出し、検出したX線の線量に応じた画素信号を出力する。出力された画素信号は、例えば、X線発生装置、X線検出装置又は画像処理装置の内部又は外部に設けられた記憶部に記憶される。
・・・
【0175】
ステップS2040では、画素選択情報取得部320、1310が、画素信号に基づいて、画素選択情報を取得する。また、画像処理部330、1320が、画素信号及び画素選択情報に基づいて、X線画像を構成する。ここで、画素選択情報は、ステップS2040で取得されずに、事前にX線照射条件が設定されたときに、そのX線照射条件に応じて入力されてもよい。また、画素選択情報は、事前に行われるキャリブレーションによって入力されてもよい。ここで、画素選択情報取得部320、1310及び画像処理部330、1320の機能及び構成については、[2.1.X線発生装置の構成]で説明しているため、ここでは詳細な説明は省略する。また、ステップS2040で行われる画像処理方法は、例えば、<4.画像処理方法>で説明した画像処理方法であってよい。」
「【0181】
また、本実施形態に係るX線発生装置、X線検出装置、X線撮影方法及びX線撮影システムは、その用途が特に限定されるものではなく、医療分野、工業分野等、X線撮影が利用されるあらゆる分野において適用され得る。本実施形態に係るX線発生装置、X線検出装置、X線撮影方法及びX線撮影システムは、例えば、医療分野であれば、CTスキャン、トモシンセシス、マンモグラフィ等のX線診断に用いられてもよい。」
「【0183】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。・・・(4)前記X線照射部は、前記X線源のX線照射方向に配設され、前記X線源から照射されるX線のX線照射方向を制御する第1の照射方向選択部材を少なくとも1つ有し、複数の前記X線源及び前記第1の照射方向選択部材の少なくともいずれかを移動させる可動部を更に備える、前記(1)に記載のX線発生装置。(5)前記照射制御部は、前記可動部に、前記複数のX線源と、前記第1の照射方向選択部材との距離を変化させる、前記(4)に記載のX線発生装置。(6)前記照射制御部は、前記可動部に、前記X線源のX線照射方向と垂直な面内において、複数の前記X線源及び前記第1の照射方向選択部材を移動させる、前記(5)に記載のX線発生装置。・・・。」
イ 図面の記載事項
(ア)図7は次のとおりである。
[図:0001380591000001.jpg]
(イ)図8は次のとおりである。
[図:0001380591000002.jpg]
(ウ)図9は次のとおりである。
[図:0001380591000003.jpg]
(エ)図10は次のとおりである。
[図:0001380591000004.jpg]
ウ 認定事項
(ア)【0098】、【0100】の記載から「まず、X線照射部100は、照射制御部310からの制御により、複数のX線源のうち一部のX線源のみを駆動し、1度目のX線照射を行う。例えば、X線照射部100は、図9に示すように、複数のX線源のうち、X線源111、X線源113及びX線源115だけを駆動し、1度目のX線照射を行う。X線源111、X線源113及びX線源115だけを駆動することで、重畳領域Fが生じないように」し、「次に、X線照射部100は、照射制御部310からの制御により、X線照射条件を変更して2度目のX線照射を行う。例えば、X線照射部100は、1度目のX線照射で駆動しなかったX線源だけを駆動する。すなわち、X線照射部100は、図10に示すように、複数のX線源のうち、X線源112及びX線源114だけを駆動し、2度目のX線照射を行う。ここで、2度目のX線照射においても、X線源112及びX線源114だけを駆動することで、重畳領域Fが生じないようにすることができ」、【0094】の記載によれば「図8~10においては、説明を簡単にするために、X線源が5つしか記載されていないが、実際にはより多くのX線源が平面状に並んでいてもよい」。
そして、前記引用箇所が参照する図8からは、X線源を全て駆動した場合隣接するX線源の照射領域はX線検出部の受光素子群210上で重畳することを看取でき、図9,10からは、図9の1度目の照射と、図10の2度目の照射とでは、共に相互に隣接しないX線源が駆動され、共に受光素子群210上で照射領域が重畳していないことを看取できる。また、1度目、2度目に駆動されるX線源群の各X線源は相互に他の群のX線群と隣接していることも看取できる。
そうすると、「X線照射部100」の平面上または3次元状に配置された複数のX線源は、1度目のX線照射を行う相互に隣接せずX線検出部上で照射領域が重畳しない1部のX線源のみからなる群と、1度目のX線照射で駆動しなかった、2度目の照射を行う群であって、相互に隣接せずX線検出部上で照射領域が重畳しないX線源だけからなる群とに分けることができ、また、それら各群のX線源はX線照射部100によりX線放出のON・OFFを交互に切り替える制御が行われているといえる。
(イ)X線源の構造について【0095】では「略コの字形状を有する陽極180と、陽極180の開口部に相当する部位に配設されるニードル状の陰極190とを有する。陽極180と陰極190との間に電圧を印加することで、陰極190から熱電子が放出され、放出した熱電子が陽極180に衝突し、X線が照射される。」と説明されている。
ここで、ニードル状の陰極と陽極とは、相互間に電圧が印加されること、一旦陰極から放出された熱電子が陽極に衝突するという過程を経ることから、ニードル状の陰極と陽極との間が離隔していることは明らかである。このことは、図8~10において、上方のX線源が、陽極と推察される下方が開口したコの字状の矩形要素と、下方を尖端とする陰極と推察されるニードル状の要素とからなり、前記ニードル状要素の下方尖端がコの字状矩形要素下方開口の中央部付近に位置していることと矛盾しない。
(ウ)【0181】には「本実施形態に係るX線発生装置、X線検出装置、X線撮影方法及びX線撮影システムは、例えば、医療分野であれば、CTスキャン、トモシンセシス、マンモグラフィ等のX線診断に用いられてもよい。」と記載され、これらの中で少なくとも「CTスキャン」と「トモシンセシス」とは、複数方向からのX線照射・検出による三次元X線画像構築を伴う撮影形態である。また、【0094】には「X線源及び受光素子が、被写体を取り囲むように3次元的に配設されてもよい。」との記載があり、三次元X線画像構築の前提となる、被験体への複数方向からのX線照射・検出を可能とする照射・検出系の構成も示されているといえる。
そうすると、【0102】に記載された「画素信号及び画素選択情報に基づいて画像を構成する」との「画像処理部330」の機能には、三次元画像の構築が含まれるといえる。
(エ)自明な事項であるが【0108】には「X撮影時には、X線源群110と受光素子群210との間に被写体が存在」することが記載され、変形例として「X線照射部110のX線照射方向にアパーチャ140を設置することにより、X線照射部110から照射されるX線が集光され、被写体及び/又は検出器の所望の部位にX線が照射されるようにX線の照射方向を制御すること」が【0123】に記載されている。
また、上記(ウ)のとおり、刊行物1に含まれる撮影形態の中で、「CTスキャン」と「トモシンセシス」なる三次元構築する形態に限っても、撮影時に被写体の適切な部位をX線源と検出器との間に位置決めすべきこと、そのための、移動寝台など被写体の移動手段を伴うことは技術常識である。
エ 刊行物1発明
以上の記載事項・認定事項から、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる(「a」などは分説記号であり、以下「構成a」などという。また、各構成末尾の段落番号等は、根拠となる記載箇所・認定事項を示す。)。
「a X線撮像システムであって、(【0001】)
b 複数の受光素子が平面状または3次元状に並べられ、照射されたX線を検出し、検出したX線の線量に応じた画素信号を出力し、出力された画素信号を内部の記憶部に記憶する、X線検出部と、(【0071】、【0094】、【0173】)
c 0度ではないある照射角θを有する複数のX線源が平面状、または被写体を取り囲むように3次元状に並べられた、X線照射部のX線源であって、(【0066】、【0094】,【0096】)
d 1度目のX線照射を行う、相互に隣接せずX線検出部上でX線照射領域が重畳しない1部のX線源の群である第1のX線源のみからなるX線源の第1の群、及び、
e 2度目の照射を行う、1度目のX線照射で駆動しなかったX線源の群であって、相互に隣接しない第2のX線源からなる第2の群であって、
e1 第2の群の各X線源は第1の群のX線源と隣接して配置されており、
e2 相互に隣接しないX線源の第2の群は、X線検出部上で照射領域が重畳しないX線を照射するものであり、
f 隣接する第1の群と第2の群のX線源を共に駆動すると、それらのX線検出部上のX線照射領域は重畳するものであり、(以上、【0094】、【0098】、【0100】、【図8】~【図10】、認定事項ウ(ア))
g 隣接する第1のX線源と第2のX線源とを、前者は1回目、後者は2回目の、相互に時間的に重畳しない駆動タイミングで照射されるように照射制御部により制御されるX線照射部を備え、照射制御部により制御されるX線照射部は、
g1 複数のニードル状の陰極と、(【0095】)
g2 前記陰極から離間され、陰極から放出された熱電子が衝突する複数の陽極とを備え、(【0095】、認定事項ウ(イ))
g5 前記X線照射部は、前記各群のX線源のON・OFFを交互に切り替える制御を行うものであり、
h X線検出部から送信された1度目のX線照射による画素信号及び2度目のX線照射による画素信号に基づいて、画素選択情報を取得する画像選択情報取得部と、(【0100】、【0102】)
i 前記画素信号及び前記画素選択情報に基づいて3次元画像を構成する画像処理部と、(【0094】、【0102】、【0181】、認定事項イ(ウ))
j 画素選択情報が1度目のX線照射時及び2度目のX線照射時の画素信号の強度に関する情報である場合、それらの画素信号の強度を画素ごとに比較して、値の大きい方の画素信号を、その画素の出力とする制御を行い、出力された画素信号を記憶部に記憶し、X線画像を構築する制御を行う画像処理部と、(【0103】、【0173】、【0175】)
k X線源とX線検出部との間に被写体を配置し、複数のX線源を移動させる可動部とを備える、(【請求項4】、【0105】、【0108】、【0165】、【0183】)
l 医療分野であればCTスキャン、トモシンセシス、マンモグラフィ等のX線診断に用いられる、X線撮像システム。」
(3)刊行物2の記載事項
原査定において周知技術文献(引用文献4)として提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特表2012-522332号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 明細書の記載事項
「【技術分野】
【0001】
本発明は、X線管用の電子エミッタに関する。さらに本発明は、当該電子エミッタを有するX線管及び当該X線管を有するX線画像取得装置に関する。さらに本発明は、たとえば透過放射線のX線撮影による対象物の画像取得方法、処理装置上で実行されるときに当該方法を制御するように構成されたコンピュータプログラム素子に関し、かつ内部に当該コンピュータプログラム素子が保存されたコンピュータによる読み取り可能な媒体に関する。」
「【0031】
本発明の実施例によると、前記電子エミッタのカソード上の局所領域の幅は、最近接の局所領域への距離よりも短くて良い。換言すると、前記局所領域の各々の横方向寸法は、隣接する局所領域間の間隔の横方向寸法よりも短くて良い。たとえば前記局所領域の横方向寸法は数μm~数mm-たとえば1μm~20mm、好適には3μm~10mm-の範囲であって良い。隣接する局所領域間の間隔は、少なくとも前記局所領域の横方向寸法よりも大きい-好適には前記局所領域の横方向寸法の少なくとも2倍であり、より好適には前記局所領域の横方向寸法の少なくとも5倍である-。たとえば隣接する局所領域間の間隔は5μm~10mm-好適には10μm~2mm-であって良い。前記局所領域の各々は任意の形状-たとえば円形又は正方形-を有して良い。個々の局所領域の寸法及び形状はそれぞれ異なっていて良い。局所領域の横方向寸法にはばらつきが存在しているので、複数の局所領域の最小横方向寸法は、隣接する局所領域間の間隔の横方向寸法よりも小さくて良い。前記複数の局所領域は、任意のパターン-たとえば正方行列-で配置されて良い。前記局所領域から放出される電子が、X線標的領域に衝突する際に、符号化された線源イメージングに適したX線強度分布を供することができるように、前記局所領域の幾何学形状及び配置は構成されて良い。」
「【0059】
図4は電子エミッタ1’’の代替実施例を図示している。ここでアノード5はまたX線標的19としても機能する。カソード3上の局所領域11から放出される電子ビーム15は、電源13を用いてアノード5とカソード3との間に印加された電圧によって加速される。この実施例では、アノード5はタングステンの薄いホイルで作られる。電子ビーム15がアノード5の薄いホイルに衝突する際、電子はホイル内部で減速されることで、ホイルを透過して、アノード5の対向する面でX線ビーム102として放出される制動放射を発生させる。従ってアノード5はX線標的19としても機能する。
【0060】
図5は、図4に図示された電子エミッタと同様の電子エミッタを有するX線画像取得装置の側面を図示している。X線管100’のアノード/標的5/19で生成されるX線ビーム102は、被検体104へ向かって放出される。続いて対象物104を透過するX線102は、X線検出器106上に投影される。検出器106は、各独立したX線102の重なり合うビームを有する全体画像を検出する。続いて全体画像は画像処理装置108へ送信される。ここで全体画像は、最終画像110を生成するため、デコンボリューションされる。このデコンボリューションのため、標的19で放出されるX線強度分布を知ること、又は、このX線強度分布は電子エミッタ1’’内の局所領域の配置に依存するので、局所領域11を有する電子放出パターン9の配置及び寸法に関する厳密な情報を有することは、重要となるだろう。」
イ 図面の記載事項
(ア)図4は次のとおりである。
[図:0001380591000005.jpg]
(イ)図5は次のとおりである。
[図:0001380591000006.jpg]
(4)刊行物3の記載事項
原査定において周知技術文献(引用文献5)として提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2014-154499号公報(以下「刊行物3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 明細書の記載事項
「【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の放射線発生装置は、複数の電子放出部を有するカソードアレイと、それぞれが、前記複数の電子放出部のそれぞれに対応して配列され、前記電子放出部から放出された電子の照射により放射線を発生する複数のターゲットと、前記複数のターゲットを連結する連結部と、を有するアノードアレイと、を備える放射線発生装置であって、前記連結部は、前記複数のターゲットに対応して配置された遮蔽体と、前記遮蔽体よりも熱伝導率が高い伝熱体とを備え、前記伝熱体は、前記複数のターゲットが配列される方向に沿って連続体で構成されていることを特徴とする。」
「【0063】
図5に示したアノードアレイ10は、図1に図示したアノードアレイ10のアレイの配列を変形したその他の実施形態である。図1に示したアノードアレイ10が、一次元配列であったのに対して、図5に示すように本実施形態のアノードアレイ10は、二次元配列をなしている点が相違する。本実施形態においても、伝熱体3は、配列方向Dar(行方向)と配列方向Dac(列方向)における、それぞれの、配列の長さLar、Lacより長い範囲において、それぞれ、長さLtr、Ltcを有して連続体で構成されている。
・・・
【実施例】
【0065】
(実施例1)
まず、図1に概略構成を示すアノードアレイ10を以下のようにして作成した。
・・・
【0069】
次に、連結部1に対して、ターゲット15を不図示のろう材26からなるろう材26を用いて、図1(b)に示すように、連結部2の開口部の伝熱体3が露出している部分に接続した。以上のようにして、配列ピッチが12mmのアノードアレイ10を作成した。使用したろう材の25℃における熱伝導率は、170(W/m/K)であった。」
イ 図面には次の記載がある。
(ア)図2は次のとおりである。
[図:0001380591000007.jpg]
(イ)図5は次のとおりである。
[図:0001380591000008.jpg]
(5)刊行物4の記載事項
本願の出願前に頒布された刊行物であり、本願明細書【0055】でも引用され、前置報告書においても引用文献6として引用された国際公開第2015/132593号(以下「刊行物4」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 明細書の記載事項
「[0015]The high atomic number material may be arranged in a spatial pattern. The pattern may be regular in nature, such as a square grid, with equally spaced high-z targets; or a triangular arrangement. An irregular pattern is also possible. Each high-z target may be a circle or ellipse. It may also be a square or rectangle. Another shape (e.g. an annular target) that may be of use is a crescent or other shapes formed from the intersection of circles, possibly two circles.
・・・
[0018] The distance between adjacent areas of high atomic number materials may be approximately 1cm.」
(当審訳:「高原子番号の材料は、空間パターンに配置することができる。パターンは、等間隔の高zターゲットを持つ正方形グリッドなど、本質的に規則的である可能性がある。または三角形の配置。不規則なパターンも可能である。各高zターゲットは、円または楕円の場合がある。正方形または長方形の場合もある。有用である可能性のある別の形状(例えば、環状ターゲット)は、円、場合によっては2つの円の交点から形成される三日月形または他の形状である。
・・・
[0018]高原子番号の材料の隣接領域間の距離は約1cmである可能性がある。」)
「[0022] The low atomic material effectively may act as an interstitial absorption region adjacent to the bremsstrahlung target. This interstitial absorption region is an area which may comprise one or more low atomic number materials which effectively do not produce high energy x-rays.
The energy loss may still be through bremsstrahlung or other collisional energy loss, but the rate of energy gloss may be lower and hence the resulting x-ray photons may have less energy. These lower energy photons do not penetrate relatively far through the material. In this way, by diverting the electrons (either through deflection or defocusing or both), the xray production may be effectively turned off.」
(当審訳:「[0022]低原子材料は、ブレームシュトラルンク(制動放射)・ターゲットに隣接する侵入型吸収領域として効果的に機能する可能性がある。この格子間吸収領域は、高エネルギーX線を効果的に生成しない1つまたは複数の低原子番号の材料を含み得る領域である。エネルギー損失は、ブレームシュトラルンク(制動放射)または他の衝突エネルギー損失による可能性があるが、エネルギー損失率が低くなる可能性があるため、結果として得られるX線光子のエネルギーが少なくなる可能性がある。これらの低エネルギーの光子は、材料を比較的遠くまで透過しない。このように、電子を(偏向または焦点ぼけ、あるいはその両方によって)そらすことによって、X線生成を効果的にオフにすることができる。」)
「[0025] The distance between adjacent areas of high atomic number materials may be approximately 1cm, however other dimensions are contemplated such as approximately equal to the emitter pitch, approximately equal to the diameter of the target, 100μm to 500μm, 500μm to 1mm, 1 to 10mm, and 10 to 30mm.」
(当審訳:「[0025]高原子番号の材料の隣接領域間の距離は約1cmである可能性があるが、エミッタピッチにほぼ等しい、ターゲットの直径にほぼ等しい、100μmから500μm、500μmから1mm、1から10mm、そして10から30mmなどの他の寸法が考えられる。」)
「[0035] In one embodiment thirty six solenoid coils are arranged in a two dimensional 6 x 6 arrangement. This embodiment has the advantage that with a 1cm pitch between the solenoids it is possible to fabricate all thirty six coils on a 4' (100mm) wafer as widely used within electronics semiconductor processing. Other embodiments containing sixty four coils arranged in an 8 x 8 grid or forty nine coils arranged in a 7 x 7 grid are also useful.
[0036] The array may be considered to be a tile. The number of coils may depend on the total size and hence total number of emitters. For instance, for a 42x42 cm general radiology panel source, there may be approximately 1764 emitters. Alternatively, there may be a 40x40cm source with 1600 emitters. This may require up to 1680 or more coils.」
(当審訳:「[0035]一実施形態では、36個のソレノイドコイルが2次元の6×6配置で配置されている。この実施形態は、ソレノイド間の1cmピッチで、電子半導体処理内で広く使用されているように、4フィート(100mm)のウェーハ上に36個のコイルすべてを製造することが可能であるという利点を有する。8×8グリッドに配置された64個のコイルまたは7×7グリッドに配置された49個のコイルを含む他の実施形態もまた有用である。
[0036]配列はタイルと見なすことができます。コイルの数は、合計サイズ、したがってエミッターの合計数に依存する場合がある。たとえば、42x42cmの一般的な放射線パネルソースの場合、約1764個のエミッタが存在する可能性がある。あるいは、1600個のエミッターを備えた40x40cmのソースが存在する場合がある。これには、最大1680個以上のコイルが必要になる場合がある。」)
「[0044] The electronic power and timing circuit may be configured such that in use it provides current to individual solenoids in a raster sequence.」
(当審訳:「電子電源およびタイミング回路は、使用中にラスターシーケンスで個々のソレノイドに電流を供給するように構成することができる。」)
「[0073]In Figure 1 a schematic representation of the components used in one embodiment of the xray generator is shown.
[0074] Electrons are emitted from the electron emitter source 10. The electron emittermay be formed by a lithium niobate pyroelectric crystal 80 with an upper surface and a conducting film coating the upper surface of the pyroelectric crystal. The pyroelectric crystal includes a plurality of field emitters formed as micrometer-scale exposed regions in the pyroelectric crystal having one or more sharp peaks or ridges. The pyroelectric crystal is alternately heated and cooled over a period of several minutes with a heater/cooler 90 adjacent the pyroelectric crystal so that spontaneous charge polarisation occurs in the pyroelectric crystal. The spontaneous charge polarisation causes a perpendicular electric field to arise on the pyroelectric crystal's top and bottom faces, in which case at the exposed surface of the pyroelectric crystal the electric field is enhanced by the sharp peaks or ridges, thereby causing field emission of surface electrons from that location. X-rays are produced when the emitted electrons strike a target material located adjacent to the emitting face.
[0075] The electrons travel towards a target material comprising a plurality of tungsten targets 20 contained within a silicon substrate 30. Adjacent to the tungsten targets 20 is a plurality of solenoid coils 50 with each individual solenoid coil 40 supplied current from a power supply 60. The power supply 60 being configured such that in use adjacent solenoid coils are energised within 1ms to 5ms of each other.
[0076] A schematic representation in Figure 2 shows the flow of electrons 100 and x-ray photons 110 when the solenoid coils 40 are in axial alignment with the emitters 10 and the solenoid coils 40 are powered off and electrons from the emitter source 10 impinge on the tungsten target 20.
[0077] In this embodiment the aluminium filter material 70 is positioned between the target 20 and the solenoid 40, however the principle of operation is the same as when the aluminium filter material 40 is positioned behind the solenoid 40 as shown in Figure 1.
[0078] The x-ray photons 110 produced when the electrons 100 impinge upon the target material 20 pass through the aluminium filter material 70 which absorbs the low energy (or soft) xray photons such that the x-ray photons emerging past the solenoid 40 are just high energy (or hard) x-ray photons 120.
[0079] schematic representation in Figure 3 shows the flow of electrons 100 and x-ray photons 110 where the solenoid coils 40 are in axial alignment with the emitters 10 and the solenoid coils 40 are powered on and electrons 100 emitted from the source 10 are deflected away from the high-Z target material 20, towards the low-Z material 30.
[0080] This operates in essentially the same manner as in Figure 2 except that in this case power is supplied to the solenoid coil 40. In the 'on' state the solenoid coil deflects the electrons 100 away from the target material 20. Thus the x-ray photons produced 110 are relatively few and low energy (or soft) x-ray photons which are mainly absorbed in the filter material 70 resulting in relatively few (less than 1% of the x-ray photons compared to the 'off' state) passing through the solenoid 40 and being available for a subsequent x-ray imaging process 120.」
(当審訳:「[0073]図1には、X線発生器の一実施形態で使用される構成要素の概略図が示されている。
[0074]電子は、電子エミッタ源10から放出される。電子エミッタは、上面を有するニオブ酸リチウム焦電結晶80と、焦電結晶の上面をコーティングする導電性膜とによって形成することができる。焦電結晶は、1つまたは複数の鋭いピークまたは隆起を有する焦電結晶内にマイクロメートルスケールの露出領域として形成された複数の電界エミッタを含む。焦電結晶は、焦電結晶に隣接するヒーター/クーラー90を用いて数分間にわたって交互に加熱および冷却され、その結果、焦電結晶において自発的な電荷分極が起こる。自発的な電荷分極により、焦電結晶の上面と下面に垂直電界が発生する。この場合、焦電結晶の露出面では、鋭いピークまたはリッジによって電界が増強され、その場所から表面電子の電界放出が発生する。X線は、放出された電子が放出面に隣接するターゲット材料に当たると生成される。
[0075]電子は、シリコン基板30内に含まれる複数のタングステンターゲット20を含むターゲット材料に向かって移動する。タングステンターゲット20に隣接して、複数のソレノイドコイル50があり、個々のソレノイドコイル40はそれぞれ、電源60から電流を供給される。電源60は、使用中、隣接するソレノイドコイルが互いに1ミリ秒から5ミリ秒以内に通電されるように構成される。
[0076]図2の概略図は、ソレノイドコイル40がエミッタ10と軸方向に整列し、ソレノイドコイル40がパワーオフされ、エミッタ源10からの電子がタングステン・ターゲット20に衝突するときの電子100およびX線光子110の流れを示している。
[0077]この実施形態では、アルミニウムフィルタ材料70は、ターゲット20とソレノイド40との間に配置されるが、動作原理は、図1に示されるように、アルミニウムフィルタ材料40がソレノイド40の後ろに配置される場合と同じである。
[0078]電子100が標的材料20に衝突するときに生成されるX線光子110は、低エネルギー(または軟)X線光子を吸収するアルミニウムフィルタ材料70を通過し、その結果、ソレノイド40を通過して現れるX線光子は、ちょうど高エネルギー(または硬い)X線光子120となる。
[0079]図3の概略図は、ソレノイドコイル40がエミッタ10と軸方向に整列し、ソレノイドコイル40がパワーオンされ、ソース10から放出された電子100が高Zターゲット材料20から低Z材料30に向かって偏向される電子100およびX線光子110の流れを示している。
[0080]これは、この場合、電力がソレノイドコイル40に供給されることを除いて、図2と本質的に同じ方法で動作する。「オン」状態では、ソレノイドコイルは、電子100をターゲット材料20から離れるように偏向させる。したがって、生成されるX線光子110は比較的少なく、低エネルギー(または軟)X線光子であり、これらは主にフィルタ材料70に吸収され、結果としてソレノイド40を通過するものも、その後のX線画像化プロセス120に利用可能であるものも、相対的に少ない(‘オフ’状態に比べX線光子の1%未満。)。」)
「19. A method of obtaining an x-ray image of an object, comprising the steps of providing an x-ray generator according to any preceding claim; providing an x-ray detector; and operating said generator whereby x-ray photons pass through an object positioned between the x-ray source array and the x-ray detector.」
(当審訳:「請求項19 物体のX線画像を取得する方法であって、前記請求項のいずれかに記載のX線発生器を提供するステップ、X線検出器を提供するステップ、そして、X線光子がX線源アレイとX線検出器との間に配置された物体を通過するように前記発生器を操作するステップからなる方法。」)
イ 図面の記載事項
(ア)図1は次のとおりである。
[図:0001380591000009.jpg]
(イ)図2は次のとおりである。
[図:0001380591000010.jpg]
(ウ)図3は次のとおりである。
[図:0001380591000011.jpg]
ウ 認定事項
(ア)Fig.1からは、アの記載事項を参照すると、複数が隣接配置されるエミッタ10のそれぞれに対し上方に離隔した対向位置に、低Z材料であるシリコン基板30上に配置されたタングステン製のターゲット20が配置されており、該各ターゲットの上方に、平板状のソレノイド40が個々に配置され、さらにその上方にアルミニウムフィルタ材料70が配置されることを看取できる。
(イ)アの記載事項を参照すると、ソレノイド40がOFF時のFig.2からは、エミッタ10からの電子100がシリコン基板30上のタングステン・ターゲット20にまっすぐ入射することを、ソレノイド40がON時のFig.3からは、エミッタ10からの電子100が左へ偏向され、シリコン基板30上のタングステン・ターゲット20に入射せず、その左方のシリコン基板30に入射することを、それぞれ看取できる。
(ウ)「ソレノイドコイル40がエミッタ10と軸方向に整列」([0076])し、「複数が隣接配置されるエミッタ10のそれぞれに対し上方に離隔した対向位置に、低Z材料であるシリコン基板30上に配置されたタングステン製のターゲット20が配置されており」(認定事項(ア))、ソレノイド間のピッチとして1cmが例示され([0035])、「高原子番号の材料の隣接領域間の距離」として「約1cm」が例示され([0018]、[0025])ているのであるから、これらを満たす例においてエミッタ10のピッチも1cmとなることが明らかであるといえる。
(エ)上記記載・認定事項から、刊行物4には、次の技術事項(以下「刊行物4技術事項」という。)が記載されているといえる。
「1cmのピッチで、例えば8×8グリッドの64個、または100mm系のウエハ上に2次元の6×6配置などで配置される、複数の電子エミッタ10と、([0035]、認定事項(ウ))
該複数の電子エミッタ10と軸方向に整列し、そのそれぞれの上方に離隔して、対向配置される、高Z材料であるタングステン製のブレームシュトラルンク・ターゲット20と、([0022]、[0074]~[0078]、図2)
前記ブレームシュトラルンク・ターゲットに隣接する吸収領域としての、低Z材料であるシリコン基板30と、([0022]、[0079]~[0080])
前記各電子エミッタ10の上方であって、ブレームシュトラルンク・ターゲット20及びその基板30に対し背後(さらに上方)に、各電子エミッタ10に対応して個別に配置され、個別に駆動される、平板状のソレノイドコイル40と、([0035]~[0036]、[0044]、[0075]、図1)を備え、
電力がソレノイドコイル40に供給されると、対応する電子エミッタ10の電子100がターゲット20から離れるように偏向させることで、([0079]~[0080]、図3)X線生成をオフする([0022])、
X線発生器を備える、画像取得装置。(請求項19)」
(6)本件補正発明と刊行物1発明との対比ア 本件補正発明と刊行物1発明とを対比する。
(ア)構成Bの「デジタルX線検出器」に関し、国際出願日における国際特許出願の明細書の翻訳文(以下単に「本願明細書」という。)【0099】において「検出器は、X線を測定するのに役立つ。X線検出器は、通常、センサのアレイからなり、センサのアレイは、各ピクセルにおいてX線フラックスを直接的にまたは間接的に(シンチレータを介して)測定する。当業者によって認識されるように、幾つかの技術は、X線フラックスを捕捉し、X線フラックスをデジタル情報に変換する本質的に同じ機構を果たし得る。本発明の一実施形態において、検出器は、30μmと150μmとの間の分解能(ピクセルサイズ)を有する。更なる実施形態において、検出器はCMOSセンサを使用する。」と説明されている。
この記載から、本件補正発明における「デジタルX線検出器」とは、CMOSセンサなどのX線センサ素子と、その出力をデジタル情報に変換する機構とからなる検出器を指すと解される。
これに関し、同【0067】には「固定線源トモシンセシス及びデュアルエネルギー適用の場合、2つの主要な懸念が、検出器仕様:速度及びノイズにわたって生じる。・・・ノイズは、主に、暗電流及び読出しノイズに起因する。単一フレーム撮像において、ノイズが信号より十分に小さい限り、画質は高いと考えられ得る(実際には、コントラストに対するより複雑な依存性が存在する)。しかし、マルチフレーム撮像において、信号レベルは、画像の大きな部分について低いままである可能性があり、一方、ノイズはクアドラチャで付加する場合がある。CMOSアレイは、好ましくは、列または偶数ピクセルレベルに位置する関連するデジタル化回路要素(ADC:associated digitization circuitry)と共に利用され、そのことは、こうしたアレイに前もって関連付けられた低QE及び不十分なSNRを低減するまたは大幅になくす。」との記載もあるが、ここでの「デジタル化回路要素」について具体的な説明はなく、前記「CMOSセンサなどのX線センサ素子と、その出力をデジタル情報に変換する機構とからなる検出器」との解釈における「デジタル情報に変換する機構」も「デジタル化回路」にほかならないことから、前記解釈と矛盾しない。
一方、構成bの「X線検出器」は「複数の受光素子が平面状または3次元状に並べられ、照射されたX線を検出し、検出したX線の線量に応じた画素信号を出力し、出力された画素信号を内部の記憶部に記憶する」ものであるから、記憶部への記憶に先んじて受光素子からのアナログ信号をデジタル信号に変換する手段を含むことが明らかである。
よって、構成bの「X線検出器」は構成Bの「デジタルX線検出器」に相当する。
(イ)構成Cの「分散X線発生器」における「分散」について本願明細書中において特段の説明は見いだせない。「X線」について「分散」がエネルギー(波長)分散を指す場合があるが、本願明細書中においてそのような説明も見いだせない。
一方、図1からは、エミッタアレイ104の各エミッタからX線が平面視扇状(円錐状)に発散して放射されていることを看取できる。そうすると、構成Cの「分散」とは、たかだか、X線発生器からX線が発散放射されることを意味すると解釈される。この解釈は、本件補正発明が、隣接エミッタから放射されるX線の放射円錐を「時間的に分離」することを目的としていること(【0041】ほか)ことと矛盾しない。
そうすると、構成cの「0度ではないある照射角θを有する」「X線源」は構成Cの「分散X線発生器」に相当するといえる。また、構成cで前記「X線源」が「平面状、または被写体を取り囲むように3次元状に並べられ」ることは、構成Cの「固定2次元アレイ」に相当する。
(ウ)構成dの「『X線検出部上で』『照射領域が重畳しない』『X線』」、「1部のX線源の群である第1のX線源のみからなるX線源の第1の群」は、それぞれ構成Dの「非オーバラップ放射ビーム」、「第1のエミッタの第1の群」に相当する。
(エ)構成eの「1度目のX線照射で駆動しなかったX線源の群であって、相互に隣接しない第2のX線源からなる第2の群」は、構成Eの「隣接しない第2のエミッタの第2の群」に相当する。
(オ)構成gの「『隣接する第1のX線源と第2のX線源とを、前者は1回目、後者は2回目の、相互に時間的に重畳しない駆動タイミングで照射されるように』『制御』」すること、「照射制御部」は、それぞれ構成Gの「『隣接する第2のエミッタと第1のエミッタとから投影される放射線ビームを時間的に分離するように』『制御』」すること、「X線放出を選択的に制御する手段」に相当する。
(カ)構成g1の「ニードル状の陰極」は構成G1の「電子エミッタ」に相当する。
(キ)構成g2の「陰極から放出された熱電子が衝突する陽極」は構成G2の「ターゲット」に相当する。
(ク)構成g5の「前記各群のX線源のON・OFFを交互に切り替える制御」は構成G5の「X線放出を選択的に制御」することに外形的に相当し、よって構成g5の「X線照射部」は構成G5の「X線放出を選択的に制御する手段」にも外形的に相当する。
(ケ)構成hの「X線検出部から送信された1度目のX線照射による画素信号及び2度目のX線照射による画素信号」、「画素選択情報を取得する画像選択情報取得部」は、それぞれ構成Hの「デジタルX線検出器から得られる複数のX線画像データ」、「(デジタルX線検出器から得られる複数のX線画像データの)取得を制御する手段」に相当する。
(コ)構成iの「3次元画像を構成する画像処理部」は構成Iの「3次元表現になるように再構成する手段」に相当する。
(サ)構成jの「画素選択情報が1度目のX線照射時及び2度目のX線照射時の画素信号の強度に関する情報である場合、それらの画素信号の強度を画素ごとに比較して、値の大きい方の画素信号を、その画素の出力とする制御」すること、「X線画像を構築する」ことは、それぞれ構成Jの「(前記デジタルX線検出器から取得される前記複数のX線画像データを)解析」すること、「視覚化」することに相当する。
(シ)構成kの「被写体」、「X線源とX線検出部との間に被写体を配置」すること、「『分散X線発生器の固定2次元アレイを』『患者に対して位置決めし位置合せする』」こと、はそれぞれ、構成Kの「患者」、「前記分散X線発生器の固定2次元アレイと前記デジタルX線検出器との間に位置決めされた患者」、「位置決めし位置合せする」こと、に相当する。
イ 一致点・相違点
以上のことから、本件補正発明と刊行物1発明とは、下記(ア)の点で一致し、(イ)~(エ)の点で相違する。
(ア)一致点
「A X線撮像システムであって、
B デジタルX線検出器と、
C 分散X線発生器の固定2次元アレイであって、
D 非オーバラップ放射ビームを前記デジタルX線検出器上に投影するように構成される隣接しない第1のエミッタの第1の群、及び、
E 隣接しない第2のエミッタの第2の群であって、
E1 前記第2のエミッタのそれぞれは、
前記第1のエミッタの少なくとも1つの第1のエミッタに隣接するように配置され、
E2 隣接しない第2のエミッタの第2の群は、非オーバラップ放射ビームを前記デジタルX線検出器上に投影するように構成される、隣接しない第2のエミッタの第2の群を備え、
F 隣接する第2のエミッタと第1のエミッタは、同時に動作する場合にデジタルX線検出器の各エリア上にオーバラップする放射線ビームを投影するように構成される、分散X線発生器の固定2次元アレイと、
G 隣接する第2のエミッタと第1のエミッタとから投影される放射線ビームを時間的に分離するように、
前記分散X線発生器の固定2次元アレイからのX線放出を選択的に制御する手段であって、
前記X線放出を選択的に制御する手段は、
G1 複数の電子エミッタと、
G2’ 複数のターゲットであって、複数のターゲットのそれぞれは、複数の前記電子エミッタのそれぞれから離間される、複数のターゲットと、
G5’ X線放出を選択的に制御する手段と、
H 前記デジタルX線検出器から得られる複数のX線画像データの取得を制御する手段と、
I 前記複数のX線画像データを3次元表現になるように再構成する手段と、
J 前記デジタルX線検出器から取得される前記複数のX線画像データを視覚化し、解析し、記憶する手段と、
K 前記分散X線発生器の固定2次元アレイを、前記デジタルX線検出器、及び前記分散X線発生器の固定2次元アレイと前記デジタルX線検出器との間に位置決めされた患者に対して位置決めし位置合せするための手段とを備える、
L X線撮像システム。」
(イ)相違点1(構成C1,C2)
本件補正発明が、固定2次元アレイについて構成C1「10cm×10cmの寸法を有し」、構成C2「約1cmのピッチでエミッタが配置された」との数値限定を伴うのに対し、刊行物1発明はそのような数値限定を伴わない点。
(ウ)相違点2(構成G2、G3)
本件補正発明が構成G2、G3として、ターゲットが「X線透過性のブレームシュトランク・ターゲット」であり、「X線透過性ブレームシュトランク・ターゲットに隣接する、低原子番号の材料」を備える旨の特定事項を備えるのに対し、刊行物1発明のターゲット(陽極)及びその周辺構造がどのようなものであるか不明である点。
(エ)相違点3(G4,G5)
本件補正発明の「X線放出を選択的に制御する手段」が、「複数の個別電源平坦ソレノイドであって、複数の前記個別電源平坦ソレノイドのそれぞれは、複数の前記電子エミッタのそれぞれの上及び背後に配置される、複数の個別電源平坦ソレノイドを備え」、「複数の前記個別電源平坦ソレノイドの1つを励磁することで、複数の前記電子エミッタのそれぞれによって生成された電子ビームを偏向またはデフォーカスさせる磁気フィールドを生成する」ことにより前記選択的制御を行うのに対し、刊行物1発明の当該手段がX線の放出を選択的に制御する具体的手段が不明である点。
(7)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
(ア)刊行物1の【0067】には、「X線源群110を構成するX線源の種類及び構造は特に限定されず、あらゆるX線源が用いられてよい。」と記載されている。
(イ)一方、分散X線発生器の固定2次元アレイを構成する各エミッタのピッチとして、約1cmという数値設定は周知で慣用的なものである。
このことは、同じく分散X線発生器の固定2次元アレイに関する刊行物2の【0031】の「前記電子エミッタのカソード上の局所領域の幅は、最近接の局所領域への距離よりも短くて良い。換言すると、前記局所領域の各々の横方向寸法は、隣接する局所領域間の間隔の横方向寸法よりも短くて良い。・・・たとえば隣接する局所領域間の間隔は5μm~10mm-好適には10μm~2mm-であって良い。」なる記載、刊行物3の、「複数の電子放出部を有するカソードアレイと、それぞれが、前記複数の電子放出部のそれぞれに対応して配列され、前記電子放出部から放出された電子の照射により放射線を発生する複数のターゲットと、前記複数のターゲットを連結する連結部と、を有するアノードアレイと、を備える放射線発生装置」(【0019】)であって「図5に示すように本実施形態のアノードアレイ10は、二次元配列をなして」(【0063】)おり、「配列ピッチが12mmのアノードアレイ10」(【0069】)との記載、さらに、刊行物4技術事項の「1cmのピッチで、例えば8×8グリッドの64個、または100mm系のウエハ上に2次元の6×6配置などで配置される、複数の電子エミッタ10」なる技術事項によって裏付けられる。
(ウ)また、上記X線発生器の2次元アレイの大きさは、被写体の大きさ等に応じて適宜設定されるべき設計上の事項である。
さらに、その10cm×10cm程度という数値設定に限っても、周知慣用の数値範囲に属するものである。
このことは、刊行物2で、Fig.4、Fig.5が一辺に数個のエミッタが配列された2次元エミッタアレイを例示していることと、上記1cmというエミッタのピッチとから、数cm四方の2次元エミッタアレイが想定されること、刊行物3の図5においてエミッタが3×4個の行列に配置されていることと、上記1.2cmなるエミッタのピッチとから、やはり数cm四方の2次元エミッタアレイが想定されること、さらに刊行物4技術事項の「1cmのピッチで、例えば8×8グリッドの64個、または100mm系のウエハ上に2次元の6×6配置などで配置される、複数の電子エミッタ10」なる技術事項によって裏付けられる。
(エ)以上のとおりであるから、上記(ア)によれば、刊行物1発明は「X線源群110を構成するX線源の種類及び構造は特に限定されず、あらゆるX線源が用いられてよい」ものであるところ、上記(イ)の周知の技術を採用して、「約1cmのピッチでエミッタが配置された、分散X線発生器の固定2次元アレイ」となすことは、当業者が容易になし得たことである。
また、そのようなエミッタ配置の2次元アレイの大きさを10cm×10cm程度とすることも、上記(ウ)のとおり設計事項であって被写体の大きさ等に応じ当業者が適宜設計すべき事項であるとともに、周知技術に照らし、何ら特殊な数値設定でもなく、周知慣用の数値範囲に属するもので、やはり当業者が周知技術に基づいて容易に選択し得た数値設定であるといえる。
イ 相違点2、3について
本件補正発明の「ブレームシュトランク」(ブレームシュトラルンク)とは「制動放射」と訳される、電子線がターゲット物質内を通過する際に発生する放射線を意味する用語である。
そして、刊行物4技術事項のa)「電子エミッタ10」、b)「高Z材料であるタングステン製のブレームシュトラルンク・ターゲット20」、c)「低Z材料であるシリコン基板30」、d)「前記各電子エミッタ10の上方であって、ブレームシュトラルンク・ターゲット20及びその基板30に対し背後(さらに上方)」、e)「各電子エミッタ10に対応して個別に配置され、個別に駆動される、平板状のソレノイドコイル40」、f)「電子100がターゲット20から離れるように偏向させる」は、それぞれ本件補正発明の、a)「電子エミッタ」、b)「X線透過性ブレームシュトランク・ターゲット」、c)「低原子番号の材料」、d)「複数の前記電子エミッタのそれぞれの上及び背後」、e)「複数の個別電源平坦ソレノイド」に相当するといえる。
そうすると、刊行物4技術事項は、相違点2,3に係る構成G2~G5に相当するといえる。
刊行物1発明も刊行物4技術事項も、X線発生器の2次元アレイにおいて、個別のX線発生器をON/OFFさせるものである点で共通し、個別のエミッタに対応するターゲット材料を各X線発生器(の陽極)が個別に備えていることも自明であるから、刊行物1発明での、個別のX線発生器のON/OFFを行わせる具体的構成として、刊行物4技術事項を適用し、相違点2,3に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
ウ 構成Jについて
上記において構成Jについては一致点としたが、画像を「視覚化」「解析」することについて、刊行物1発明は明示的ではない。
しかし、仮に当該構成を相違点としても、刊行物1発明は「医療分野であればCTスキャン、トモシンセシス、マンモグラフィ等のX線診断に用いられる、X線撮像システム」(構成l)であり、これらのX線診断(装置)において、撮像された画像(データ)に対し、医師や患者に提示するための視覚化や画像の解析(着色や画像濃度調整等を含む)を行う機能を備えるべきことは周知かつ自明であるから、当該視覚化や解析手段は刊行物1発明が備えることが明らかであるといえ、実質的な相違点であるとはいえない。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年11月27日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和2年4月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
(1) 原査定の拒絶の理由である理由2は、この出願の請求項1~3に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物(引用文献2~5)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
(2)引用文献一覧
引用文献2.特開2014-64705号公報
引用文献3.国際公開第2009/012453号(周知技術を示す文献)
引用文献4.特表2012-522332号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5.特開2014-154499号公報(周知技術を示す文献)
引用文献2、4、5はそれぞれ、本審決の刊行物1~3に該当する。
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2,4,5及びその記載事項は、上記第2の3(2)~(4)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、平仄に関する事項を除き、上記第2の3で検討した本件補正発明から、上記相違点1~3に含まれない構成C2の一部限定事項及び構成Gの一部限定事項と、上記相違点2,3に係る構成G1~G5に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明と刊行物1発明との間には、相違点1のみが存在し、これが原査定の引用文献である刊行物1~3に基づいて当業者にとって容易想到であることは上記第2の3(6)(7)で説示したとおりである。
したがって、本願発明は、刊行物1発明及び周知技術(刊行物2,3)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。
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2020-016364