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特許拒絶査定不服審判

2018-007497

電力変換装置

審判番号
2018-007497
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2013-114721外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年06月01日
審決日
2019年06月17日
公報発行日
2019年09月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .575-Z (H02M) / P18 .121-Z (H02M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2013-114721「電力変換装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月15日出願公開、特開2014-236530〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成25年5月30日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。 平成29年 6月26日付け:拒絶理由通知 同   年 9月 1日  :意見書、手続補正書の提出 平成30年 2月26日付け:拒絶査定 同   年 6月 1日  :審判請求、手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)の提出 第2 平成30年6月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年6月1日にされた手続補正を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「  【請求項1】 直流電源ユニットと、 直流リンク部を介して並列に設けられて前記直流電源ユニットから給電される直流電力をそれぞれ交流電力に変換して出力する複数の電力変換ユニットと、 これらの各電力変換ユニットと前記直流電源ユニットとの間にそれぞれ個別に介装されて前記各電力変換ユニットに給電される電力を制限または遮断する複数の半導体スイッチ素子と、 前記各電力変換ユニットの主体部を構成する半導体スイッチング素子をオン・オフ制御する一方、前記各電力変換ユニットに生じる短絡電流をそれぞれ監視し、短絡電流が流れた電力変換ユニットに接続された前記半導体スイッチ素子をオフ制御して当該電力変換ユニットに対する電力供給を遮断して当該電力変換ユニットを前記直流リンク部から電気的に切り離して残りの短絡が生じていない前記電力変換ユニットの運転を継続させる制御回路と、 を具備した電力変換装置であって、 前記制御回路は、前記半導体スイッチング素子に流れる電流を直接的に検出して、または前記半導体スイッチング素子に印加される直流電圧の低下から、該電力変換ユニットの短絡を検出して前記半導体スイッチ素子をオフ制御することを特徴とする電力変換装置。 【請求項2】 前記複数の電力変換ユニットは、それぞれ三相交流電力を生成するインバータ・ユニットである請求項1に記載の電力変換装置。 【請求項3】 前記半導体スイッチ素子は、前記各電力変換ユニットにおける直流入力部の正極側および負極側の少なくとも一方に介装される請求項1に記載の電力変換装置。 【請求項4】 前記半導体スイッチ素子は、ダイオードを逆並列に接続したIGBT、または双方向に電流を流し得る逆阻止IGBTからなる請求項1に記載の電力変換装置。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、平成29年9月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。 「  【請求項1】 直流電源ユニットと、 直流リンク部を介して並列に設けられて前記直流電源ユニットから給電される直流電力をそれぞれ交流電力に変換して出力する複数の電力変換ユニットと、 これらの各電力変換ユニットと前記直流電源ユニットとの間にそれぞれ個別に介装されて前記各電力変換ユニットに給電される電力を制限または遮断する複数の半導体スイッチ素子と、 前記各電力変換ユニットに生じる短絡電流をそれぞれ監視し、短絡電流が流れた電力変換ユニットに接続された前記半導体スイッチ素子をオフ制御して当該電力変換ユニットに対する電力供給を遮断して当該電力変換ユニットを前記直流リンク部から電気的に切り離して残りの短絡が生じていない前記電力変換ユニットの運転を継続させる制御回路と、 を具備したことを特徴とする電力変換装置。 【請求項2】 前記制御回路は、前記電力変換ユニットの主体部を構成する半導体スイッチング素子に流れる電流、または前記半導体スイッチング素子に印加される直流電圧の低下から該電力変換ユニットの短絡電流を検出して前記半導体スイッチ素子をオフ制御する請求項1に記載の電力変換装置。 【請求項3】 前記複数の電力変換ユニットは、それぞれ三相交流電力を生成するインバータ・ユニットである請求項2に記載の電力変換装置。 【請求項4】 前記半導体スイッチ素子は、前記各電力変換ユニットにおける直流入力部の正極側および負極側の少なくとも一方に介装される請求項2に記載の電力変換装置。 【請求項5】 前記半導体スイッチ素子は、ダイオードを逆並列に接続したIGBT、または双方向に電流を流し得る逆阻止IGBTからなる請求項2に記載の電力変換装置。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1を削除しつつ、本件補正前の請求項2に記載された発明を特定するために必要な事項である「制御回路」の内容について、上記のとおり「前記各電力変換ユニットの主体部を構成する半導体スイッチング素子をオン・オフ制御する」事項を有する旨と、「短絡を検出」することについて、上記のとおり「半導体スイッチング素子に流れる電流を直接的に検出して」行う旨との限定を付加するものであって、補正前の請求項2に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、これらの限定事項は、願書に添付された明細書ないし図面に記載された事項であるから、新規事項の追加に当たらない。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献等の記載事項 ア 引用文献1 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1である、特開昭62-110481号公報には、図面とともに、次の記載がある。(下線は強調のため当審にて付加した。) a 「交流電源1に接続される回生可能な変換器2、平滑リアクトル3および平滑コンデンサ4からなる直流電源装置の直流母線5には、それぞれ遮断器6-1~6-nを介して、n台のインバータ9-1~9-nが接続されており」(1ページ左欄最下行~右欄4行) b 「例えばインバータ9-1内で素子破壊による直流短絡故障が起きたとする。この場合に故障を起こしたインバータ9-1に属する入力電圧平滑コンデンサ7-1における電流ic1および電圧vc1は第3図の如く経過する。すなわち、故障発生時点t=t0でコンデンサ7-1の電流は主としてインバータ9-1側への放電々流であり、この放電々流がヒューズ8-1を介して立上がり、このヒューズは0.1~0.2ミリ秒後の時点t=t1において溶断を完了し、これによりインバータ9-1が切り離される。故障発生時点t=t0からヒューズ溶断完了時点t=t1までの間のコンデンサ9-1の電流ic1および電圧vc1は第5図に示す従来例におけるとまったく同じように推移する。 ヒューズ9-1の壊断が完了した時点t=t1からは、コンデンサ電流ic1は共通な平滑コンデンサ4および他の健全なインバータに属する平滑コンデンサから突入する充電々流となる。」(2ページ下段左欄3行~末行) c 「第2図に示す、第2実施例では、第1図における速断ヒューズ11-1~11-nの代わりに、電流があらかじめ設定された値を上回ったときオフにされる半導体スイッチ11′-1~11′-nが用いられている点で相違するが、突入する充電々流の遮断をさらに高速にすることができるので、直流電源母線容量の小さい場合に特に適している。」(2ページ下段右欄下から9行~下から3行) 上記記載に関係して、下記の図(第2図)が記載されている。 (イ)上記記載及び図面の図示から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 d 第2図に図示の回路と、上記記載事項cとを照合し、技術常識を考慮すると、記載事項c中の「電流があらかじめ設定された値を上回ったときオフにされる」を実行するための手段について、第2図の図示中で各インバータ9-1~9-n毎の直流電源母線上であって、遮断器6-1~6-nの右に「13-1」~「13-n」とされているものが、該直流電源母線に流れる電流を検出する電流検出器を意味し、当該電流検出器により検出した「電流」の値と、「あらかじめ設定された値」とを比較して「電流があらかじめ設定された値を上回った」か否かを判別し、第2図中の「半導体スイッチ11’-1~11’-n」を「オフ」にする手段が、第2図中の「12-1」~「12-n」に当たると見てとれる。 e 上記記載事項aと第2図とを照合すると、第2図中の1、2、3、4はそれぞれ交流電源1、変換器2、平滑リアクトル3および平滑コンデンサ4であって、記載事項aと同様、直流電源装置を構成し、各インバータ9-1~9-nへ並列に給電するものである。 f 上記記載事項aないしc及び技術常識から、第2図に図示の回路の各インバータ9-1~9-nは、何らかのインバータ制御装置により運転されることが明らかである。 g 上記認定事項d中の直流電源母線に流れる電流を検出する電流検出器とされる13-1~13-n及び半導体スイッチ11’-1~11’-nがオフされる状況と、上記記載事項bとから、該半導体スイッチがオフされる状況とは、インバータ9-1~9-nのいずれかが短絡故障を起こし、該短絡故障を起こしたインバータ9-1~9-nのいずれかが有する平滑コンデンサ7-1~7-nのいずれかへ向かう突入充電電流が起こる状況であると見てとれる。 (ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「直流電源装置1~4と、 直流電源母線を介して並列に設けられて前記直流電源装置から給電されるn台のインバータ9-1~9-nと、 これらの各インバータ9-1~9-nと前記直流電源装置との間にそれぞれ個別に介装されて前記各インバータ9-1~9-nに給電される電力をオフするn個の半導体スイッチ11’-1~11’-nと、 前記各インバータ9-1~9-nを駆動する制御装置と、 前記各インバータ9-1~9-nへの直流電源母線に流れる電流を検出する電流検出器からの検出値とあらかじめ設定された値とを比較して、該電流があらかじめ設定された値を上回ることによりインバータの短絡故障を検出したとき前記半導体スイッチ11’-1~11’-nをオフにする手段12-1~12-nと、 を具備した直流配電形インバータ装置。」 イ 他の公知文献 (ア)新たに引用する本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013-102694号公報(以下、単に「公知文献」という。)には、次の記載がある。 a 「【0019】 (第1実施形態) まず、図1を参照して第1実施形態のモータ制御装置の構成について説明する。ここで、図1は、第1実施形態におけるモータ制御装置の回路図である。 【0020】 図1に示すモータ制御装置1(電子装置)は、車体から絶縁された高電圧バッテリB1の出力する直流高電圧(例えば288V)を3相交流電圧に変換して車両駆動用モータM1に供給し、車両駆動用モータM1を制御する装置である。モータ制御装置1は、平滑コンデンサ10と、インバータ装置11と、制御装置12とを備えている。 【0021】 平滑コンデンサ10は、高電圧バッテリB1の直流高電圧を平滑化するための素子である。平滑コンデンサ10の一端は、高電圧バッテリB1の正極端子に接続されている。また、他端は、高電圧バッテリB1の負極端子に接続されている。さらに、高電圧バッテリB1の負極端子は、車体から絶縁された高電圧バッテリ用のグランドに接続されている。 【0022】 インバータ装置11は、平滑コンデンサ10によって平滑化された直流電圧を3相交流電圧に変換して車両駆動用モータM1に供給する装置である。インバータ装置11は、IGBT110a~110fと、電流センス抵抗111a~111fとを備えている。 【0023】 IGBT110a~110fは、ゲート(制御端子)の電圧を制御することで駆動され、オン、オフすることで平滑コンデンサ10に平滑化された直流電圧を3相交流電圧に変換するためのスイッチング素子である。IGBT110a~110fは、コレクタ電流に比例し、コレクタ電流より小さい電流が流れる電流センス端子を備えている。IGBT110a、110d(スイッチング素子)、IGBT110b、110e及びIGBT110c、110fはそれぞれ直列接続されている。具体的には、IGBT110a~110cのエミッタが、IGBT110d~110fのコレクタにそれぞれ接続されている。直列接続された3組のIGBT110a、110d、IGBT110b、110e及びIGBT110c、110fは並列接続されている。IGBT110a~110cのコレクタは平滑コンデンサ10の一端に、IGBT110d~110fのエミッタは平滑コンデンサ10の他端にそれぞれ接続されている。また、IGBT110a~110fのゲートとエミッタは制御装置12にそれぞれ接続されている。さらに、直列接続されたIGBT110a、110d、IGBT110b、110e及びIGBT110c、110fの直列接続点は、車両駆動用モータM1にそれぞれ接続されている。 【0024】 電流センス抵抗111a~111fは、IGBT110a~110fに流れる電流を電圧に変換するための素子である。具体的には、電流センス端子に流れる電流を電圧に変換する素子である。電流センス抵抗111a~111fの一端はIGBT110a~110fの電流センス端子に、他端はIGBT110a~110fのエミッタにそれぞれ接続されている。また、電流センス抵抗111a~111fの両端は、制御装置12にそれぞれ接続されている。 【0025】 制御装置12は、IGBT110a~110fを制御する装置である。制御装置12は、IGBT110a~110fのゲートとエミッタにそれぞれ接続されている。また、IGBT110a~110fに流れる電流を検出するため、電流センス抵抗111a~111fの両端にそれぞれ接続されている。」 b 「【0026】 次に、図2及び図3を参照して制御装置について詳細に説明する。ここで、図2は、図1における制御装置の回路図である。具体的には、1つのIGBTに対する回路部分を示す回路図である。図3は、図2における電流検出回路、過電流検出回路及び短絡検出回路の回路図である。 【0027】 図2に示すように、制御装置12は、IGBT110dに対して、駆動用電源回路120と、オン駆動用回路121(駆動回路)と、オフ駆動用回路122(駆動回路)と、オフ保持用回路123と、遮断用回路124と、電流検出回路125と、過電流検出回路126と、短絡検出回路127と、制御回路128(駆動回路)とを備えている。制御装置12は、他のIGBT110a~110c、110e、110fに対しても、それぞれ同様に、駆動用電源回路と、オン駆動用回路と、オフ駆動用回路と、オフ保持用回路と、遮断用回路と、電流検出回路と、過電流検出回路と、短絡検出回路と、制御回路とを備えている。」 c 「【0039】 短絡検出回路127は、IGBT110dが短絡状態にあるか否かを検出する回路である。具体的には、IGBT110dに流れる電流が、過電流閾値より大きい短絡電流閾値より大きくなると、IGBT110a、110dがともにオンした短絡状態となり、IGBT110dに短絡電流が流れていると判断する回路である。短絡検出回路127の入力端子は、電流センス抵抗111dの一端に接続されている。また、出力端子は、制御回路128に接続されている。」 d 「【0043】 図2に示す制御回路128は、外部から入力される駆動信号に基づいてオン駆動用回路121とオフ駆動用回路122を制御して、IGBT110dを駆動するとともに、IGBT110dのゲート電圧に基づいてオフ保持用回路123を制御して、IGBT110dのオフ状態を保持する回路である。また、IGBT110dをオフできない異常状態になった場合に、オフ保持用FET123aを制御して、IGBT110dをオフする回路でもある。さらに、IGBT110dに過電流が流れたり、IGBT110dが短絡状態になったりした場合に、遮断用回路124を制御して、IGBT110dをオフする回路でもある。」 また、次の図1、図2が図示されている。 【図1】 【図2】 図1、図2の図示、上記aの【0023】、【0025】、上記bないしdから、次の事項が記載されていると看取できる。 c 制御装置12はインバータ装置11の主体部を構成するIGBT110a~110fをオン・オフ制御する一方、インバータ装置11の短絡を制御装置12内の短絡検出回路127で検出し、短絡が発生したIGBTをオフする制御も行う。前記短絡検出回路127は、IGBT110a~110fが有する電流センス端子に繋がる電流センス抵抗111dからIGBT110dに流れる電流を検出する。 (イ)上記記載及び図面の図示から、公知文献には、次の技術が記載されていると認められる。 技術的事項1 「直流電圧を3相交流電圧に変換するインバータ装置11が、電流センス端子を備えるIGBT110a~110fで構成されること。」 技術的事項2 「インバータ装置11の制御装置12は、前記インバータ装置11の主体部を構成するIGBT110a~110fをオン・オフ制御する一方、前記インバータ装置11の短絡を前記制御装置12内の短絡検出回路127で検出し、短絡が発生したIGBTをオフする制御も行う。前記短絡検出回路127は、IGBT110a~110fが有する電流センス端子に繋がる電流センス抵抗111dからIGBT110dに流れる電流を検出し、制御装置12内にある制御回路128が、IGBT110dをオフにする保護動作を行う。」 (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明は、1つの直流電源に並列に複数台の直流-交流変換を行うインバータ装置が接続されてなる装置構成を前提とし、その内1台に短絡が発生した際に生じる突入電流への対策技術であり、本件補正発明と、技術分野及び課題が共通する。 (イ)引用発明の「直流電源装置1~4」、「直流電源母線を介して並列に設けられて前記直流電源装置から給電されるn台のインバータ9-1~9-n」、及び「これらの各インバータ9-1~9-nと前記直流電源装置との間にそれぞれ個別に介装されて前記各インバータ9-1~9-nに給電される電力をオフするn個の半導体スイッチ11’-1~11’-n」は、各々、本件補正発明の「直流電源ユニット」、「直流リンク部を介して並列に設けられて前記直流電源ユニットから給電される直流電力をそれぞれ交流電力に変換して出力する複数の電力変換ユニット」、及び「これらの各電力変換ユニットと前記直流電源ユニットとの間にそれぞれ個別に介装されて前記各電力変換ユニットに給電される電力を」「遮断する複数の半導体スイッチ素子」に相当する。 (ウ)引用発明の「前記各インバータ9-1~9-nを駆動する制御装置」は、本件補正発明の「制御回路」のうち「前記各電力変換ユニットの主体部を構成する半導体スイッチング素子をオン・オフ制御する」の機能部分に相当する。 (エ)引用発明の「電流検出器からの検出値とあらかじめ設定された値とを比較して、該電流があらかじめ設定された値を上回ることによりインバータの短絡故障を検出したとき前記半導体スイッチ11’-1~11’-nをオフにする手段」は、上記(イ)で相当関係を示した「半導体スイッチ11’-1~11’-n」を「オフする」機能の点で、本件補正発明の「制御回路」の「前記各電力変換ユニットに生じる短絡電流をそれぞれ監視し、短絡電流が流れた電力変換ユニットに接続された前記半導体スイッチ素子をオフ制御して当該電力変換ユニットに対する電力供給を遮断して当該電力変換ユニットを前記直流リンク部から電気的に切り離」す機能に相当する。 (オ)上記(ア)~(エ)より、本件補正発明と引用発明とは、「電力変換装置」である点で共通するといえる。 イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「直流電源ユニットと、 直流リンク部を介して並列に設けられて前記直流電源ユニットから給電される直流電力をそれぞれ交流電力に変換して出力する複数の電力変換ユニットと、 これらの各電力変換ユニットと前記直流電源ユニットとの間にそれぞれ個別に介装されて前記各電力変換ユニットに給電される電力を遮断する複数の半導体スイッチ素子と、 前記各電力変換ユニットの主体部を構成する半導体スイッチング素子をオン・オフ制御する制御回路と、 を具備した電力変換装置であって、 前記各電力変換ユニットに生じる短絡電流をそれぞれ監視し、短絡電流が流れた電力変換ユニットに接続された前記半導体スイッチ素子をオフ制御して当該電力変換ユニットに対する電力供給を遮断して当該電力変換ユニットを前記直流リンク部から電気的に切り離す手段を有する電力変換装置。」 【相違点1】 本件補正発明の「制御回路」は、各電力変換ユニットの主体部を構成する半導体スイッチング素子をオン・オフ制御する処理に加え、「前記各電力変換ユニットに生じる短絡電流をそれぞれ監視し、短絡電流が流れた電力変換ユニットに接続された前記半導体スイッチ素子をオフ制御して当該電力変換ユニットに対する電力供給を遮断して当該電力変換ユニットを前記直流リンク部から電気的に切り離して残りの短絡が生じていない前記電力変換ユニットの運転を継続させる」処理の、2つの処理を行うとしているのに対して、引用発明の制御装置は上述の2つの処理のうち前者の処理を行うものの、後者の処理を行う手段は別の手段12-1~12-nで行うとした点。 【相違点2】 本件補正発明での「電力変換ユニットの短絡」の「検出」は、「前記半導体スイッチング素子に流れる電流を直接的に検出して、または前記半導体スイッチング素子に印加される直流電圧の低下から」検出するとしているのに対して、引用発明の「n台のインバータ9-1~9-n」の「短絡故障」の「検出」は、「各インバータ9-1~9-nへの直流母線に流れる電流を検出する電流検出器からの検出値」を「あらかじめ設定された値」と「比較して、該電流があらかじめ設定された値を上回る」ことで検出するとしており、両者は「電流」の検出箇所が異なる点。 (4)判断 以下、相違点1及び2について検討する。 まず相違点2にかかる本件補正発明の発明特定事項には、「前記半導体スイッチング素子に流れる電流を直接的に検出して」との事項が含まれるが、当該事項中の「直接的に検出」とは、審判請求と同時になされた手続補正で追加されたものであり、審判請求書の「(2)補正の内容および根拠」には、当該事項の根拠を明細書の段落0036の記載に基づいて補正したとし、また、審判請求書の「(4)本願発明と引用発明との対比」には、「さらに、本願発明の制御回路は、半導体スイッチング素子に流れる電流を直接的に検出して、または半導体スイッチング素子に印加される直流電圧の低下から、該電力変換ユニットの短絡を検出して半導体スイッチ素子をオフ制御することを特徴としています。(第2の特徴点)一方、引用文献1の半導体スイッチ素子は、直流電源ユニットから電力変換ユニットに供給される電流を検出して動作します。したがって、半導体スイッチ素子の動作条件が本願発明とは全く異なります。本願発明の第2の特徴点によれば、主体部を構成する半導体スイッチング素子により近い側で異常を検出するので個々の半導体スイッチング素子側の異常に対して迅速に保護動作を行うことが可能になります。」と主張している。 かかる主張によると、本件補正発明でいう「前記半導体スイッチング素子に流れる電流を直接的に検出して」との事項がさす内容は、電流の検出点が個々の電力変換ユニットの直流母線ではなく、半導体スイッチング素子に流れる電流を素子のところで検出すること、より具体的には明細書段落0036に記載のごとく、電流センス端子を備えたIGBTの該電流センス端子から電流を検出することを含む内容を意図していると理解できる。 しかしながら、本件補正発明が備える上述の「前記半導体スイッチング素子に流れる電流を直接的に検出」すること、即ち半導体スイッチング素子が電流センス端子つきIGBTであって、当該電流センス端子からIGBTに流れる電流を直接検出するとの事項は、上記(2)イ(イ)にて他の公知文献に記載の技術的事項1として示したとおり、当該分野で公知の技術とされる事項にすぎない。よって、当該相違点2にかかる相違は、当業者が引用発明及び他の公知文献に記載の技術的事項に基づいて、容易に想到しうる程度のものと認められる。 次に相違点1を検討する。 電力変換ユニットを構成する複数の半導体スイッチング素子の駆動を制御する機能に加えて、他の短絡保護等の保護機能をも1つの制御回路に集約させることは、例えば上記(2)イ(イ)にて他の公知文献の技術的事項2として示したとおり、当該分野で公知の慣用技術とされる事項にすぎない。 以上総合すると、引用発明に接した当業者であれば、インバータ9-1~9-nのいずれが短絡したかを判定するために、上記他の公知文献を参考にして、半導体スイッチング素子の一種である電流センス端子を備えたIGBTの該電流センス端子から電流を検出するように変更すること、また、インバータを構成する半導体スイッチング素子を駆動するための制御回路に、同じく他の公知文献に記載の機能集約を適用して、手段12-1~12-nで行う半導体スイッチ11’-1~11’-nをオフにする機能を当該制御回路に集約することは、いずれも容易に想到しうるものと認められる。 そして、これらの相違点1ないし2を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び他の公知文献に記載された技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 エ したがって、本件補正発明は、引用発明及び他の公知文献に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成30年6月1日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年9月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし5に係る発明は、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開昭62-110481号公報 引用文献2:特開昭52-115323号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項並びに引用発明は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明と、引用発明とを対比する。 引用発明の「直流電源装置1~4」、「直流電源母線を介して並列に設けられて前記直流電源装置から給電されるn台のインバータ9-1~9-n」、及び「これらの各インバータ9-1~9-nと前記直流電源装置との間にそれぞれ個別に介装されて前記各インバータ9-1~9-nに給電される電力をオフするn個の半導体スイッチ11’-1~11’-n」は、各々、本願発明の「直流電源ユニット」、「直流リンク部を介して並列に設けられて前記直流電源ユニットから給電される直流電力をそれぞれ交流電力に変換して出力する複数の電力変換ユニット」、及び「これらの各電力変換ユニットと前記直流電源ユニットとの間にそれぞれ個別に介装されて前記各電力変換ユニットに給電される電力を」「遮断する複数の半導体スイッチ素子」に相当する。 また、引用発明の「前記各インバータ9-1~9-nへの直流電源母線に流れる電流を検出する電流検出器からの検出値とあらかじめ設定された値とを比較して、該電流があらかじめ設定された値を上回ることによりインバータの短絡故障を検出」することは、本願発明の「前記各電力変換ユニットに生じる短絡電流をそれぞれ監視」することに相当し、引用発明の「インバータの短絡故障を検出したとき前記半導体スイッチ11’-1~11’-nをオフにする」ことは、本願発明の「短絡電流が流れた電力変換ユニットに接続された前記半導体スイッチ素子をオフ制御」することに相当するので、これら2点で引用発明の「手段12-1~12-n」と本願発明の「制御回路」は共通しているといえる。 よって、本願発明と引用発明とは以下の点で一致し、かつ相違する。 【一致点】 「直流電源ユニットと、 直流リンク部を介して並列に設けられて前記直流電源ユニットから給電される直流電力をそれぞれ交流電力に変換して出力する複数の電力変換ユニットと、 これらの各電力変換ユニットと前記直流電源ユニットとの間にそれぞれ個別に介装されて前記各電力変換ユニットに給電される電力を制限または遮断する複数の半導体スイッチ素子と、 前記各電力変換ユニットに生じる短絡電流をそれぞれ監視し、短絡電流が流れた電力変換ユニットに接続された前記半導体スイッチ素子をオフ制御する制御回路と、 を具備した電力変換装置。」 【相違点】 制御回路に関し、本願発明では「当該電力変換ユニットに対する電力供給を遮断して当該電力変換ユニットを前記直流リンク部から電気的に切り離して残りの短絡が生じていない前記電力変換ユニットの運転を継続させ」るとの事項を特定しているのに対して、引用発明の「手段12-1~12-n」はかかる事項が明らかでない点。 上記相違点について検討する。 引用発明の「手段12-1~12-n」により短絡が発生したインバータ9-1~9-nの直流電源母線上の半導体スイッチ11’-1~11’-nのいずれかがオフされた状況を考えて見ると、半導体スイッチ11’-1~11’-nのいずれかのオフ動作により、オフ動作がされたインバータは直流電源母線から電気的に切り離されることになるが、オフ動作がされていない他のインバータについては、短絡が生じていないのであるから運転を継続させるようにすることは、当業者であればごく普通になし得ることである。 以上のとおりであるから、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものと認められる。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2018-007497

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