特許拒絶査定不服審判
2023-016966
交流電源用ノイズフィルタ回路
- 審判番号
- 2023-016966
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-018220外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年10月06日
- 審決日
- 2024年06月03日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (H02M) / P18 .575-Z (H02M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第164条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021- 18220「交流電源用ノイズフィルタ回路」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 8月19日出願公開、特開2022-121070〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年2月8日の出願であって、令和5年2月13日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月18日に意見書が提出され、同年7月6日付けで拒絶査定(謄本送達日同年7月11日。以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して同年10月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ、同年12月11日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされたものである。
第2 令和5年10月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年10月6日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「交流電源ラインを繋ぐように直列に接続された同容量の2個のXコンデンサと、
直列接続された2個の前記Xコンデンサの中性点とグラウンドとの間に設けられたYコンデンサと、を有し、
前記交流電源ラインを繋ぐように直列に接続された同容量の2個の前記Xコンデンサの耐電圧をVcxとし、前記直列接続された2個の前記Xコンデンサの中性点とグラウンドとの間に設けられた前記Yコンデンサの耐電圧をVcyとした場合に、2Vcx≦Vcyであり、
前記交流電源ラインを繋ぐように直列に接続された同容量の2個の前記Xコンデンサの静電容量をCcxとし、前記直列接続された2個の前記Xコンデンサの中性点とグラウンドとの間に設けられた前記Yコンデンサの静電容量をCcyとした場合に、Ccx≧2Ccyであること、
を特徴とする、交流電源用ノイズフィルタ回路。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、本件特許出願時の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「交流電源ラインを繋ぐように直列に接続された同容量の2個のXコンデンサと、
直列接続された2個の前記Xコンデンサの中性点とグラウンドとの間に設けられたYコンデンサと、を有し、
前記Xコンデンサの耐電圧をVcxとし、前記Yコンデンサの耐電圧をVcyとした場合に、2Vcx≦Vcyであり、
前記Xコンデンサの静電容量をCcxとし、前記Yコンデンサの静電容量をCcyとした場合に、Ccx≧2Ccyであること、
を特徴とする、交流電源用ノイズフィルタ回路。」
2 補正の適否
上記下線部は、元の本件特許請求の範囲の請求項1に記載された事項を言い換えただけのものであるから、新規事項を追加するものとはいえない。
また本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項について、上記下線部のとおり限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用例の記載事項
ア 引用例1の記載事項及び引用発明
(ア)原査定の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に既に公知である、特開2006-20389号公報(平成18年1月19日公開。以下、これを「引用例1」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)
a 「【0018】
1.交流電源用ノイズフィルタ回路
図1は、本発明の実施の形態に係る交流電源用ノイズフィルタ回路を備えたモータ駆動装置を示すブロック回路図である。以下、交流電源用ノイズフィルタ回路として、入力側ノイズフィルタ回路を例にして説明する。」
b 「【0019】
図1は、本発明の入力側ノイズフィルタおよび出力側ノイズフィルタ付加したモータ駆動装置を示す説明図である。
図1において、100は中性点かまたは3相のうちいずれかの相を接地された交流電源、101はフレームが接地されたモータ、102は出力側ノイズフィルタ、105本発明による入力側ノイズフィルタ、106はコモン線、107はモータ駆動装置である。
図2は、本発明の入力側ノイズフィルタ105の内部構成図である。
図2において、Liは入力側ノイズフィルタのコモンモードチョークコイル、CxはそれぞれR相、S相、T相からY結線されたノーマルモードノイズ低減用バイパスコンデンサ、CyはCxの中性点Bと接地線A間に接続された接地コンデンサである。また、本発明のモータ駆動装置の入力側ノイズフィルタ105は、Cxの中性点Bに、前記モータ駆動装置の出力側ノイズフィルタ102のバイパス回路部Eを接続することを可能とする端子台Cが設けられた構造となっている。なお、出力側ノイズフィルタ102の構成は図18に示す従来技術と同じで良く、バイパス回路部Eが設けられているものであれば内部構成は問わない。」
c 「図1
[図:0001413152000001.jpg]
」
d 「図2
[図:0001413152000002.jpg]
」
(イ)上記記載から、引用例1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 上記(ア)aの「図1は、本発明の実施の形態に係る交流電源用ノイズフィルタ回路を備えたモータ駆動装置を示すブロック回路図である」との記載、及びc(図1)から、引用例1には、“交流電源用ノイズフィルタ回路”が記載されているといえる。
b 上記(ア)bの「図2は、本発明の入力側ノイズフィルタ105の内部構成図である。
図2において…中略…CxはそれぞれR相、S相、T相からY結線されたノーマルモードノイズ低減用バイパスコンデンサ、CyはCxの中性点Bと接地線A間に接続された接地コンデンサである」との記載、及び、同d(図2)から、ノーマルモードノイズ低減用バイパスコンデンサCxが、交流電源ラインを繋ぐように直列に接続された様子を読み取ることができ、そのうち、図2に「Cx」として示される例えば左側の2つのコンデンサは、“交流電源ラインを繋ぐように直列に接続された2個のコンデンサ”といい得るから、引用例1には、“交流電源ラインを繋ぐように直列に接続された2個のノーマルモードノイズ低減用バイパスコンデンサCx”が記載されているといえる。
c 上記(ア)bの「CyはCxの中性点Bと接地線A間に接続された接地コンデンサである」との記載、及び、「本発明のモータ駆動装置の入力側ノイズフィルタ105は、Cxの中性点B」との記載、並びに、同d(図2)から、接地コンデンサであるCyが、Cxの中性点とアース線との間に接続されている態様を読取ることができるから、上記bの認定も踏まえると、引用例1には、“直列接続された2個の前記ノーマルモードノイズ低減用バイパスコンデンサCxの中性点とアース線との間に設けられた接地コンデンサCyと、を有”することが記載されているといえる。
(ウ)上記(ア)及び(イ)より、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「交流電源ラインを繋ぐように直列に接続された2個のノーマルモードノイズ低減用バイパスコンデンサCxと、
直列接続された2個の前記ノーマルモードノイズ低減用バイパスコンデンサCxの中性点とアース線との間に設けられた接地コンデンサCyと、を有する
交流電源用ノイズフィルタ回路。」
イ 引用例2の記載事項
(ア)原査定の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、“エンジャー,XコンデンサとYコンデンサ,EMC村の民 ~iNarte EMCエンジニアへの道~”、[online]、2021年01月08日、URL、https://web.archive.org/web/20210108083621/https://engineer-climb.com/xcap-ycap”(以下「引用例2」という。)には、図面と共に、次の事項が記載されている。
a 「
[図:0001413152000003.jpg]
」
b 「
[図:0001413152000004.jpg]
」
c 「
[図:0001413152000005.jpg]
」
d 「
[図:0001413152000006.jpg]
」
e 「
[図:0001413152000007.jpg]
…中略…
[図:0001413152000008.jpg]
」
f 「
[図:0001413152000009.jpg]
…中略…
[図:0001413152000010.jpg]
」
(イ)上記記載から、引用例2には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 上記(ア)aの記載から、引用例2には、“ノイズの伝搬モードとして、ノーマルモードとコモンモードがある”ことが記載されているといえる。
b 上記(ア)bの記載から、「L」及び「N」は、「商用電源」の電源ラインを表していることを読取ることができ、したがって引用例2には、“Xコンデンサは、電源ライン間に並列に接続して、周波数の高いノイズだけをバイパスするものである”ことが記載されているといえる。
c 上記(ア)cの記載から、引用例2には、“Xコンデンサは、150kHz~1MHzあたりのノイズ対策に用いられるものであって、一般的には耐圧性能に優れるフィルムタイプのコンデンサが主に使用されるとともに、その静電容量は、部品サイズが許す範囲で大きめの、0.1μF~10μF付近である”ことが記載されているといえる。
d 上記(ア)dの記載から、引用例2には、“Yコンデンサは、コモンモードのノイズに対してバイパスする経路を与える部品で、電源ラインごとに接続されるものであって、あまり大きな静電容量のものは使用できず、1000pF~4700pFあたりがよく使用される”ことが記載されているといえる。
e 上記(ア)cのXコンデンサに関する表と同eのYコンデンサに関する表から、引用例2には、“Xコンデンサの規格には、耐ピークパルス電圧が2.5kV~4.0kVであるX1と、2.5kV以下であるX2とがあり、Yコンデンサの規格には、耐ピークパルス電圧が8kVであるY1と、5kVであるY2と、2.5kVであるY4とがある”ことが記載されているといえる。
f 上記(ア)dの記載及び同fの記載から、引用例2には、“Xコンデンサには、ほとんどの場合X2にカテゴライズされたものが使用され、Yコンデンサには、一般的な場合Y2のサブクラスのものが使用される”ことが記載されているといえる。
g 以上、上記a~fの認定から、引用例2には、次の事項(以下、「引用例2記載事項」という。)が記載されていて、引用例2記載事項は、本願出願前の周知技術であるといえる。
「ノイズの伝搬モードとして、ノーマルモードとコモンモードがあり、
Xコンデンサは、電源ライン間に並列に接続して、周波数の高いノイズだけをバイパスするものであって、150kHz~1MHzあたりのノイズ対策に用いられ、一般的には耐圧性能に優れるフィルムタイプのコンデンサが主に使用されるとともに、その静電容量は、部品サイズが許す範囲で大きめの、0.1μF~10μF付近であり、
Yコンデンサは、コモンモードのノイズに対してバイパスする経路を与える部品で、電源ラインごとに接続されるものであって、あまり大きな静電容量のものは使用できず、1000pF~4700pFあたりがよく使用され、
Xコンデンサの規格には、耐ピークパルス電圧が2.5kV~4.0kVであるX1と、2.5kV以下であるX2とがあり、Yコンデンサの規格には、耐ピークパルス電圧が8kVであるY1と、5kVであるY2と、2.5kVであるY4とがあり、
Xコンデンサには、ほとんどの場合X2にカテゴライズされたものが使用され、Yコンデンサには、一般的な場合Y2のサブクラスのものが使用されること。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「交流電源用ノイズフィルタ回路」は、本件補正発明の「交流電源用ノイズフィルタ回路」に相当する。
イ 引用発明の「ノーマルモードノイズ低減用バイパスコンデンサCx」、「接地コンデンサCy」、「直列接続された2個の前記ノーマルモードノイズ低減用バイパスコンデンサCxの中性点」、及び、「アース線」は、それぞれ本件補正発明の「Xコンデンサ」、「Yコンデンサ」、「直列接続された2個の前記Xコンデンサの中性点」、及び、「グラウンド」に相当するから、本件補正発明と引用発明とは、下記の点(相違点1、2)で相違するものの、“交流電源ラインを繋ぐように直列に接続された2個のXコンデンサ”と、“直列接続された2個の前記Xコンデンサの中性点とグラウンドとの間に設けられたYコンデンサ”と、を有する点で一致する。
ウ 上記ア及びイの検討から、引用発明と本件補正発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
〈一致点〉
交流電源ラインを繋ぐように直列に接続された2個のXコンデンサと、
直列接続された2個の前記Xコンデンサの中性点とグラウンドとの間に設けられたYコンデンサと、を有すること
を特徴とする、交流電源用ノイズフィルタ回路。
〈相違点1〉
本件補正発明が、「前記交流電源ラインを繋ぐように直列に接続された同容量の2個の前記Xコンデンサの耐電圧をVcxとし、前記直列接続された2個の前記Xコンデンサの中性点とグラウンドとの間に設けられた前記Yコンデンサの耐電圧をVcyとした場合に、2Vcx≦Vcyであ」るのに対し、引用発明は、「ノーマルモードノイズ低減用バイパスコンデンサCx」と「接地コンデンサCy」の耐電圧について特定がされていない点。
〈相違点2〉
本件補正発明の「2個のXコンデンサ」が「同容量」であり、「前記交流電源ラインを繋ぐように直列に接続された同容量の2個の前記Xコンデンサの静電容量をCcxとし、前記直列接続された2個の前記Xコンデンサの中性点とグラウンドとの間に設けられた前記Yコンデンサの静電容量をCcyとした場合に、Ccx≧2Ccyである」のに対し、引用発明は、「ノーマルモードノイズ低減用バイパスコンデンサCx」と「接地コンデンサCy」の静電容量の関係について特定がされていない点。
(4)当審の判断
ア 本願出願前の周知技術について
上記引用例2記載事項にあるとおり、「Xコンデンサの規格には、耐ピークパルス電圧が2.5kV~4.0kVであるX1と、2.5kV以下であるX2とがあり、Yコンデンサの規格には、耐ピークパルス電圧が8kVであるY1と、5kVであるY2と、2.5kVであるY4とがあ」って、「Xコンデンサには、ほとんどの場合X2にカテゴライズされたものが使用され、Yコンデンサには、一般的な場合Y2のサブクラスのものが使用されること」は、本願出願前の周知技術である。
また、上記引用例2記載事項によれば、「Xコンデンサ」の静電容量は「0.1μF~10μF付近」であるとともに、「Yコンデンサ」の静電容量は「1000pF~4700pFあたり」であり、このことも本願出願前の周知技術である。
イ 相違点1の判断
まず、相違点1に係る、「2個のXコンデンサ」が「同容量」である点について検討する。
引用発明の「交流電源ラインを繋ぐように直列に接続された2個のノーマルモードノイズ低減用バイパスコンデンサCx」は、それぞれ三相交流電源ラインの2つの相に接続されるものであって、かつ当該交流電源ラインからのノーマルモードノイズを低減するために設けられることに鑑みれば、これらの容量を異なるものとすることは、特段の事情が無い限り、通常あり得ないから、これらを同容量のものとすることは普通に採用される程度のことである。
したがって、相違点1に係る、「2個のXコンデンサ」が「同容量」である点については、引用例1に明記は無いものの引用発明においても採用される普通の構成といえる。
引用例2記載事項によれば、「Xコンデンサには、ほとんどの場合X2にカテゴライズされたものが使用され、Yコンデンサには、一般的な場合Y2のサブクラスのものが使用される」ものであって、これは上記アに示すとおり、本願出願前の周知技術である。
このことは、引用発明における「ノーマルモードノイズ低減用バイパスコンデンサCx」及び「接地コンデンサCy」にどのような規格のコンデンサを用いるかを検討する際にも当てはまるから、引用発明において、「ノーマルモードノイズ低減用バイパスコンデンサCx」に「X2にカテゴライズされたもの」を、「接地コンデンサCy」に「Y2のサブクラスのもの」をそれぞれ採用することは、当業者であれば普通に採用し得る程度のことといえる。
そして、引用発明において、「ノーマルモードノイズ低減用バイパスコンデンサCx」及び「接地コンデンサCy」に、それぞれ、X2、Y2の規格のものを採用した場合、そのそれぞれの耐電圧の関係(それぞれ、「Vcx’」、「Vcy’」とする。)は、
Vcx’<Vcy’
となるから、この式を書き換えて、
1<Vcy’/Vcx’
となるよう構成することは、当業者にとって容易というほかない。
一方、本件補正発明と引用発明との間における相違点1は、両コンデンサの耐電圧の関係について、この比を2以上とすることを特定するものであるが、本件明細書の発明の詳細な説明には、この比を2以上とすることによる臨界的意義や、2という値がどのようにして求められたのかなどについて、明確に示されていないことからして、引用発明における、両コンデンサの耐電圧の関係を、
2≦Vcy’/Vcx’
とすること、すなわち引用発明において、両コンデンサの耐電圧に関して、「前記交流電源ラインを繋ぐように直列に接続された同容量の2個の前記Xコンデンサの耐電圧をVcxとし、前記直列接続された2個の前記Xコンデンサの中性点とグラウンドとの間に設けられた前記Yコンデンサの耐電圧をVcyとした場合に、2Vcx≦Vcyであ」る構成とすることは、本願出願前の周知技術及び技術常識に基づいて当業者が適宜なし得る程度のことというほかない。
したがって、相違点1は格別なものとはいえない。
ウ 相違点2について
相違点2において、「2個のXコンデンサ」が「同容量」である点については、上記イに示したとおり、引用発明においても採用される普通の構成である。
また、上記アの周知技術に照らせば、Xコンデンサの静電容量CcxとYコンデンサの静電容量Ccyの比は、
1≦Ccx/Ccy
という関係を有するといえ、本件補正発明と引用発明との間における相違点2は、この比を2以上とすることを特定するものであるが、本件明細書の発明の詳細な説明には、この比を2以上とすることによる臨界的意義や、2という値がどのようにして求められたのかなどについて、明確に示されていないことからして、
2≦Ccx/Ccy
とすること、すなわち相違点2の構成とすることも、本願出願前の周知技術に基づいて当業者が適宜なし得ることというほかない。
したがって、相違点2も格別なものとはいえない。
エ 当審の判断についての結論
以上検討したとおり、相違点1及び2はいずれも格別なものではなく、またそのことによる効果も、当業者であれば普通に想起し得る程度のことに過ぎない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用例2に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和5年10月6日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、本件特許出願時の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1~6に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2006-020389号公報
引用文献2:エンジャー,XコンデンサとYコンデンサ,EMC村の民 ~iNarte EMCエンジニアへの道~,2021年01月08日,https://web.archive.org/web/20210108083621/https://engineer-climb.com/xcap-ycap/
引用文献3:エンジャー / Engeer,[ノイズ対策]知らないとヤバい!XコンデンサとYコンデンサ #90,2020年12月31日,https://www.youtube.com/watch?v=bql6yc8K8xc
引用文献4:国際公開第2020/260408号
引用文献5:YAHOO! JAPAN 知恵袋,2011年08月14日,https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1268868862
引用文献6:D級アンプ電源のコンデンサの選定方法[TPA3220],Embedded Technology Lab.,2018年10月04日,https://emb.macnica.co.jp/forums/topic/3651/
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2の記載事項は、上記第2の[理由]2(2)においてそれぞれ、引用例1及び引用例2として記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、同1(1)の下線部に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]の2(3)、(4)において対比及び判断したとおり、引用発明及び引用例2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用例2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、引用発明及び引用例2に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-016966