2020-010366
発光素子
- 審判番号
- 2020-010366
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-097595外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年07月27日
- 審決日
- 2021年10月11日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ウシオ電機株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
本願は、平成30年5月22日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
同年 2月 7日 :意見書の提出
同年 7月22日 :審判請求書の提出
同年 3月26日 :意見書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~6に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
<本願発明>
「380nm以上500nm以下の範囲内に単一のピーク波長を有する励起光を発するLED素子と、前記励起光の少なくとも一部が入射されて、前記励起光よりも長波長の蛍光を発する蛍光体と、前記励起光と前記蛍光とが重ね合わされてなる出射光を出射する光取り出し面とを備え、前記出射光は、少なくとも前記励起光のピーク波長以上1050nm以下の範囲にわたる発光を示し、且つ、少なくとも前記励起光のピーク波長から1050nmまでの範囲内において、全て1050nmでの発光強度以上の発光強度を示すことを特徴とする、発光素子。」
第3 当審拒絶理由の概要
当審の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の文献1に記載された発明及び文献2に記載された技術的事項に基いて、その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
記
1.特開2006-60238号公報
2.特開2008-302314号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
当審の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2006-60238号公報及び特開2008-302314号公報(以下「引用文献1」及び「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
1 引用文献1
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
「【0001】本発明は、発光デバイス、特に蛍光物質を用いて可視及び赤外線波長範囲に波長スペクトルを持つ出力光を生成することの可能なデバイスに関する。」
「【0003】しかしながら一部のアプリケーションにおいては、白色光を作る為の可視範囲における広い発光スペクトル等、より広い発光スペクトルを提供することが出来るLEDが望まれている。単色LEDは、その狭帯域発光特性から「白色」光アプリケーションには直接的に用いることが出来ない。白色光は、単色LEDからの出力光を1種類以上の異なる波長の光と混合することにより作られるのである。単色LEDを用いて白色光を作る手法としては;(1)個々の赤色、緑色及び青色LEDを一緒にパッケージングし、これらのLEDの放射する光を組み合わせることで白色光を作る手法;及び(2)UV、青色又は緑色LEDに蛍光物質を併用することにより、LEDの半導体ダイから放射される元の光の一部をより長い波長の光に変換し、これを元のUV、青色又は緑色光と組み合わせることにより白色光を作る手法;の二つが一般的である。【0004】単色LEDを用いて白色光を作るこれら二つの手法のうち、第一の手法よりも第二の手法が一般に望ましいとされている。赤色、緑色及び青色LEDはそれぞれに異なる動作電圧条件を持つ半導体ダイを含んでいる為、第一の手法には第二の手法よりも複雑な駆動回路が必要となる。赤色、緑色及び青色LEDはそれぞれに異なる動作電圧条件を持っていることに加え、各々の動作寿命で別々に劣化して行くものであり、この第一の手法では長期間にわたり色の制御をすることが困難なのである。更に、第二の手法においては単一種類の単色LEDしか必要としないことから、この手法によればより小型で単純な構造を持ち、製造コストの安いデバイスが可能なのである。【0005】他のアプリケーションにおいては、可視波長範囲とIR波長範囲の両方を部分的に含む広い発光スペクトルを生成するLEDが望まれる場合もある。例えば、LEDの可視光は画像通信又は視覚効果に利用することが出来、そしてIR光はIRデテクタと共に利用することで信号伝送に用いることが出来る。この結果、可視波長範囲及びIR波長範囲の両方において広い範囲の発光スペクトルを持つ出力光を放射するデバイス及び方法が必要とされているのである。」
「【0011】図1には本発明の一実施例に基づく発光ダイオード(LED)100が描かれている。LED100は、可視波長範囲及び赤外線(IR)波長範囲の両方において広い波長スペクトルを持つ出力光を生成するものである。従って、LED100の出力光は可視光及びIR光の両方を含んでいる。出力光は、LED100が生成する元の光の一部を異なる波長の光へと変換するために蛍光物質を用いて生成される。変換された光は元の光の波長スペクトルを変化させ、出力光に所望される波長スペクトルを作り出すものである。出力光は可視光だけではなくIR光も含んでいる為、LED100は画像コミュニケーション或いは視覚効果といった可視光アプリケーションのみならず、IR信号伝送等のIRアプリケーションにも利用することが出来る。【0012】図1に示したように、LED100はリードフレーム実装LEDである。LED100はLEDダイ102、リードフレーム104、106、ワイヤ108及びランプ110を含んでいる。LEDダイ102は特定のピーク波長の光を生成する半導体チップである。従って、LEDダイ102はLED100の光源である。LED100は単一のLEDダイを含んでいるかのように描かれているが、LEDは、例えば紫外線(UV)LEDダイ、可視光LEDダイをそれぞれ1つづつ含む等、複数のLEDダイを含んでいても良い。LEDダイ102からの光は一般に、狭い波長スペクトル(約±10nm)を持っている。LEDダイ102は、紫外線及び可視波長範囲(~100-700nm)にピーク波長を持つ光を生成するように設計されたものとすることが出来る。例えばLEDダイ102は、UV、青色又は緑色波長範囲にピーク波長を持つ光を生成するInGaN又はAlGaN LED等、GaNベースのLEDとすることが出来る。他の例としては、LEDダイ102は赤色、橙色又は黄色波長範囲にピーク波長を持つ光を生成するAlInGaPダイとすることも出来る。続きを表示(全12行)【0013】LEDダイ102は、リードフレーム104上に設置されており、他方のリードフレーム106とはワイヤ108で電気的に接続されている。リードフレーム104及び106はLEDダイ102を駆動させる為に必要な電力を供給するものである。LEDダイ102は、LEDダイ102からの光の伝播媒体であるランプ110中に封入されている。ランプ110は主要部112及び出力部114を含んでいる。本実施例においては、ランプ110の出力部114はドーム型をしており、レンズとしての機能を持っている。よってLED100から出力光として放射された光はランプ110のドーム型の出力部114により収束される。しかしながら他の実施例においては、ランプ110の出力部114は水平方向(図中の水平方向)に平坦なものとすることも出来る。【0014】LED100のランプ110は、LEDダイ102からの光がランプ中を通って出力部114から放射することが出来るように透明エポキシ、シリコーン、ガラス等の透明な物質で出来ている。この実施例においては、ランプ110は光伝播媒体でもある波長シフト領域116を含んでおり、これは透明物質と蛍光物質118の混合物から成る。波長シフト領域116中の蛍光物質118は、LEDダイ102から放射される元の光の少なくとも一部をより低エネルギー(より長波長)の光へと変換する為に用いられる。元の光の、蛍光物質118により変換される量は、LED100に所望される出力光に応じて変化させることが出来る。例えば、LEDダイ102がUV LEDダイであった場合、UV光が目に有害であり、出力光中にあることが望ましくないことから、元の光のほぼ全てが蛍光物質118により変換される場合がある。変換光は、そして非吸収光が存在する場合は、それもランプ110の光出力部114からの、LED100の出力光として放射される。【0015】波長シフト領域116中の蛍光材料118は、一種類以上の無機燐光体、一種類以上の蛍光有機色素、一種類以上のハイブリッド燐光体、一種類以上のナノ燐光体、或いは蛍光有機色素、無機燐光体、ハイブリッド燐光体及びナノ燐光体の任意の組み合わせとすることが出来る。ハイブリッド燐光体は、本願においては、無機燐光体及び有機燐光体又は色素の任意の組み合わせから成る燐光体と定義するものとする。どのような組み合わせであれ、蛍光物質118はLEDダイ102からの元の光の一部又はほぼ全てを、出力光の波長スペクトルが可視波長範囲及びIR範囲を含むことになるように変換する波長変換特性を持っている。LED100からの出力光の波長スペクトルは、波長シフト領域116中の蛍光物質118の波長変換特性と、LEDダイ102が生成する元の光のピーク波長との両方に依存する。よって所望の波長スペクトルを持つ出力光を生成する為には、蛍光物質118とLEDダイ102の両方に考慮が必要となるのである。【0016】以下は、本発明に基づいて可視波長範囲及びIR波長範囲にわたる広い波長スペクトルを持つ出力光を生成する為に共に用いられるLEDダイ及び蛍光材料の幾つかの例である。本願において可視波長範囲と言った場合、約400nm~700nmの範囲を意味し、また、IR波長範囲と言った場合は約700nm~1600nmの範囲を意味するものとする。以下の例においては、各LEDダイに関する色は、LEDダイが生成する光のピーク波長である(LEDダイが生成する光のピーク波長によって各LEDダイの色を定義する)。同様に、各燐光体に係わる色もその燐光体により変換された光のピーク波長である(燐光体により変換された光のピーク波長によって各燐光体の色を定義する)。第一の例は青色LEDダイ(青色を発するLEDダイ)、そして赤色及び黄色燐光体、赤色及び緑色燐光体、又は赤色、黄色及び緑色燐光体(赤色及び黄色に変換する燐光体、赤色及び緑色に変換する燐光体、又は赤色、黄色及び緑色に変化する燐光体)の蛍光物質である。この組み合わせによれば、400~950nm範囲の波長スペクトルを持つ出力光が得られる。第二の例は、赤色LEDと、蛍光物質として赤色燐光体を使用した場合である。この組み合わせによれば、600~1500nm範囲の波長スペクトルを持つ出力光が得られる。第三の例は、遠紫外線LEDと、蛍光物質として赤色、青色及び黄色燐光体、赤色、青色及び緑色燐光体、又は赤色、青色、緑色及び黄色燐光体を使用した場合である。この組み合わせによれば、400~800nm範囲の波長スペクトルを持つ出力光が得られる。一例として、黄色燐光体はYAG:Ce、TAG:Ce、又はYAG:Ce,Prとし、赤色燐光体をCaS:Eu2+,Mn2+、SrS:Eu2+、(Zn,Cd)S:Ag;Mg4GeO5.5F:MN4+、ZnSe:Cu、又はZnSeS:Cu,Clとし、緑色燐光体をZnS:Cu+、SrGa2S4:Eu2+、YAG:Ce3+、又はBaSrGa4S7:Euとし、青色燐光体をBaMg2Al16O27:Euとすることが出来る。しかしながら上記物質の代わりに所望の波長変換特性を持ついずれの蛍光物質を利用しても良い。」
「【図1】[図:0001380388000001.jpg]」
(2)引用文献1に記載された技術的事項
上記(1)より、引用文献1には、以下の技術的な事項が記載されていると認められる。
ア 上記【0003】より、LEDは、LEDの半導体ダイから放射される元の光と、蛍光物質により変換された光とを組み合わせて、出力光を得るものと認められる。
イ 上記【0005】より、所望のアプリケーションに応じて、可視波長範囲とIR波長範囲の両方を含む広い発光スペクトルを生成するLEDが望まれること、が理解できる。
ウ 上記【0012】~【0014】及び【図1】より、「LED100」は、「LEDダイ102」、「蛍光物質118」及び「ランプ110」を備えるものと認められる。
エ 上記【0013】より、「LED100から出力光として放射された光」は、「ランプ110の出力部114」から放射されるものと認められる。
オ 上記【0014】には、「波長シフト領域116中の蛍光物質118は、LEDダイ102から放射される元の光の少なくとも一部をより低エネルギー(より長波長)の光へと変換する為に用いられる」と記載されていることから、「元の光」の「一部」が波長変換される構成が記載されるものと認められる。
また、「変換光は、そして非吸収光が存在する場合は、それもランプ110の光出力部114からの、LED100の出力光として放射される」との記載から、引用文献1には、「蛍光物質118」が、「LEDダイ102から放射される元の光の一部を、より低エネルギー(より長波長)の光へと変換する」構成が記載されるものと認められる。
カ 上記【0016】より、「青色LEDダイ」及び「赤色、黄色及び緑色燐光体」の組み合わせにより、400~950nm範囲の波長スペクトルを持つ出力光が得られるLED、が記載されるものと認められる。
(3)引用文献1に記載された発明
上記(1)~(2)より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「LEDダイ102と、蛍光物質118と、ランプ110とを備え、(上記(2)ウ)LEDダイ102から放射される元の光と、蛍光物質118により変換された光とを組み合わせて出力光を得るものであって、(上記(2)ア)続きを表示(全12行)LEDダイ102は、LEDダイ102からの光の伝播媒体であるランプ110中に封入され、(【0013】)ランプ110は主要部112及び出力部114を含み、(【0013】)LED100から出力光として放射された光は、ランプ110の出力部114から放射され、(上記(2)エ)蛍光物質118は、LEDダイ102から放射される元の光の少なくとも一部をより低エネルギー(より長波長)の光へと変換する為に用いられ、(【0014】及び上記(2)オ)変換光は、そして非吸収光が存在する場合は、それもランプ110の光出力部114からの、LED100の出力光として放射され、(【0014】)LEDダイ102は、青色LEDダイであり、(【0016】)蛍光物質118は、赤色、黄色及び緑色燐光体であり、(【0016】)400~950nm範囲の波長スペクトルを持つ出力光が得られる、LED100。(【0016】)」
2 引用文献2
(1)引用文献2に記載された事項
引用文献2には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
「【0001】本発明は、原料(精白米)に混入する不良品(不良米粒)や異物を光学的手段によって選別し、除去する米粒選別機に関する。」
「【0006】移送手段と光学検出手段と判別手段及び選別手段とで光学式米粒選別機を構成する。移送手段により、原料の各米粒を整列させて移送する。光学検出手段は、照射部と検出部を設ける。照射部は、移送手段から放出された原料の落下軌跡における光学検出位置に対して光を照射する。検出部は、CCDセンサを備えたCCDカメラとし、光学検出位置を通過する各米粒からの反射光及び/又は透過光を検出する。判別手段は、光学検出手段が検出した反射光及び/又は透過光に基づいて原料における着色粒、異物及び胴割粒を判別する。異物には色彩上良品と区別できない異物も含まれる。そして、選別手段は、判別手段が判別した着色粒、異物及び胴割粒をエアジェットなどの手段により分離して選別する。」
「【0009】照射部は第1波長の光照射部と第2波長の光照射部及び第3波長の光照射部とを備える。例えば、第1波長の光照射部は420nm~520nmの青色光あるいは500nm~580nmの緑色光を照射し、第2波長の光照射部は600nm~710nmの赤色光を照射し、第3波長の光照射部は800nm~1000nmの近赤外光を照射する。なお、第1波長の光照射部と第2波長の光照射部は基本的に波長領域として分離されたものであればよく、第1波長の光が赤色であれば第2波長の光は緑色又は青色のように、前記の逆であってもよい。ただし、第3波長の光は、近赤外光でなければならない。これらの照射部はいずれもLEDで構成することができる。」
「【0037】〔色彩上良品と区別できない異物の判別〕図7に示すように、波長領域が800~1000nmの近赤外光域では、陶磁器や白いペレットなどの反射率は0.65程度で、米粒とほぼ同じである。一方、波長領域が450~500nmの青色光や緑色光域では米粒の反射率が0.4~0.5程度で低いのに対し、陶磁器の反射率は0.9程度、白いペレットの反射率は0.7程度の高い反射率である。色彩上良品と区別できない異物の検出は、この特性を利用する。すなわち、第1、第2のラインセンサ16a、16bのいずれかの検出信号と第3CCDラインセンサ17の検出信号を順次判別手段18のI/O19を介して信号処理回路20に送り、ここで原料の通過ごとにそれぞれの受光量をデータ化して順次RAMに一時的に記憶させる。ついで、CPU21は所定のタイミングでRAMから前記の受光量データを取り出してROM23に格納した演算プログラムにより、第1、第2のラインセンサ16a、16bのいずれかの受光量と第3CCDラインセンサ17の受光量との比率(図8、Y値)又は差を算出し、その結果をあらかじめ設定しRAM又はROMに記憶させた判別用の閾値と比較し、良品であるのか異物であるのかを判別する(図9)。」
「【0050】…(前略)…。【図7】可視光領域から波長800~1000nm付近の近赤外光領域における米粒と異物との反射率を示した図。…(後略)…。」
「【図1】[図:0001380388000002.jpg]」
「【図7】[図:0001380388000003.jpg]」
(2)引用文献2に記載された技術的事項
引用文献2には、「原料(精白米)に混入する不良品(不良米粒)や異物を光学的手段によって選別し、除去する米粒選別機」(【0001】)が記載されているところ、当該米粒選別機の照射部は、「第1波長の光照射部は420nm~520nmの青色光あるいは500nm~580nmの緑色光を照射し、第2波長の光照射部は600nm~710nmの赤色光を照射し、第3波長の光照射部は800nm~1000nmの近赤外光を照射する」(【0009】)よう構成されていることから、照射部の光源に求められる波長範囲は、「420nm~1000nm」付近であって、【0037】及び【図7】によれば、当該波長範囲は、異物判別のために必要な光の波長範囲と理解できる。
また、「これらの照射部はいずれもLEDで構成することができる。」(【0009】)との記載より、上記照射部の光源は、LEDで構成し得るものと理解できる。
3 対比(一致点及び相違点)
本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。
(1)引用発明の「LEDダイ102」は、本願発明の「LED素子」に相当する。
また、引用発明の「蛍光物質118」は、「LEDダイ102から放射される元の光」を、「より低エネルギー(より長波長)の光へと変換する為に用いられ」るのであるから、引用発明の「LEDダイ102から放射される元の光」は、本願発明の「励起光」に相当するといえる。
そして、引用発明の「LEDダイ102」は、「青色LEDダイ」であるから、技術常識に照らしてみれば、そのピーク波長は430~500nmの範囲にあるといえる。
したがって、引用発明の「LEDダイ102」は、本願発明の「380nm以上500nm以下の範囲内に単一のピーク波長を有する励起光を発する」との構成を備えるものといえる。
(2)引用発明の「蛍光物質118」は、本願発明の「蛍光体」に相当し、「蛍光物質118は、LEDダイ102から放射される元の光の一部をより低エネルギー(より長波長)の光へと変換する為に用いられ」るものであるから、本願発明の「前記励起光の少なくとも一部が入射されて、前記励起光よりも長波長の蛍光を発する」との構成を備えるといえる。
(3)引用発明の「LED100」は、「LEDダイ102から放射される元の光と、蛍光物質118により変換された光とを組み合わせて出力光を得るもの」であって、「蛍光物質118」は、「LEDダイ102から放射される元の光の一部をより低エネルギー(より長波長)の光へと変換する為に用いられ」るものであり、「変換光は、そして非吸収光が存在する場合は、それもランプ110の光出力部114からの、LED100の出力光として放射され」るものである。
したがって、引用発明の「LED100」は、本願発明の「前記励起光と前記蛍光とが重ね合わされてなる出射光を出射する光取り出し面とを備え」るといえる。
(4)引用発明の「LED100」は、「400~950nm範囲の波長スペクトルを持つ出力光が得られる」ものであり、本願発明は、「前記出射光は、少なくとも前記励起光のピーク波長以上1050nm以下の範囲にわたる発光を示」すものである。
したがって、引用発明と本願発明とは、「出射光は、少なくとも前記励起光のピーク波長以上950nm以下の範囲に発光を示」す構成で一致するといえる。
(5)上記(1)~(4)のとおりであるから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「380nm以上500nm以下の範囲内に単一のピーク波長を有する励起光を発するLED素子と、前記励起光の少なくとも一部が入射されて、前記励起光よりも長波長の蛍光を発する蛍光体と、前記励起光と前記蛍光とが重ね合わされてなる出射光を出射する光取り出し面とを備え、前記出射光は、少なくとも前記励起光のピーク波長以上950nm以下の範囲に発光を示すことを特徴とする、発光素子。」
<相違点>
「出射光」について、本願発明は、「少なくとも前記励起光のピーク波長以上1050nm以下の範囲にわたる発光を示し」、「少なくとも前記励起光のピーク波長から1050nmまでの範囲内において、全て1050nmでの発光強度以上の発光強度を示す」のに対し、引用発明は、「励起光のピーク波長~950nm範囲の波長スペクトルを持つ出力光」を示すものではあるものの、「励起光のピーク波長以上1050nm以下の範囲にわたる発光を示」すものか明らかでなく、「励起光のピーク波長から1050nmまでの範囲内において、全て1050nmでの発光強度以上の発光強度を示す」ものか明らかでもない点。
4 判断
(1)「励起光のピーク波長以上1050nm以下の範囲」である点について
引用文献1の【0001】に記載のとおり、引用発明は、「蛍光物質を用いて可視及び赤外線波長範囲に波長スペクトルを持つ出力光を生成することの可能なデバイス」であるから、所望のアプリケーションに応じて、可視波長範囲とIR波長範囲の両方を含む広い発光スペクトルを生成するLEDとして設計し得るものといえる。
一方、引用文献2には、可視波長範囲とIR波長範囲の両方を含む広い発光スペクトルが求められる装置として「米粒選別機」が記載されており、当該「米粒選別機」における照射部の光源として、「LED」も例示されていることを踏まえると、当該「米粒選別機」は、引用文献1に記載されている「所望のアプリケーション」の一つと考え得るものといえることから、引用発明に引用文献2の技術的事項を適用できるといえる。
そして、上記2の(5)のとおり、引用文献2には、「米粒選別機」における「異物選別のために必要な光の波長範囲」の長波長側端として、「1000nm付近」の光が想定されている。
してみると、当該引用文献2の技術的事項を、引用発明に適用した場合に、その波長範囲を、「励起光のピーク波長以上1000nm付近」として設計することは、当業者であれば適宜設計し得る事項といえる。
なお、「1050nm」と特定される値には、本願の発明の詳細な説明を参酌しても、臨界的意義はないものと解される。
(2)「……にわたる発光を示す」点について
本願発明の「少なくとも前記励起光のピーク波長以上1050nm以下の範囲にわたる発光を示し」との特定は、「励起光のピーク波長」から「1050nm」にわたって、連続した発光が存在することを特定するものと理解できる。
一方、引用発明は、励起光源である青色LEDと燐光体(蛍光体)によって構成されるものであり、一般に、燐光体はブロードな発光を示すものである。
また、LED及び各燐光体(緑、黄色、赤)の発光強度分布は、通常、発光ピーク波長を頂点として、短波長側及び長波長側に減少していく山状ものであり、それぞれの発光ピーク波長間の光は、隣接する発光体(LED及び各燐光体)それぞれの発光の重畳により得られるものである。
ここで、引用発明において、青色LED、緑色燐光体、黄色燐光体及び赤色燐光体の発光ピークの間隔と、各燐光体のブロードな発光に鑑みても、LED及び各燐光体(以下、「隣接する発光体」という。)における、隣接する発光体間の全てにおいて、隣接する発光体の発光が重畳しているか否かは明らかではない。
しかしながら、引用文献2に記載された「米粒選別機」は、図7に例示されるとおり、様々な異物を検出する必要性を有しており、それらの判別のためには、異物の反射率に応じた発光スペクトルを有する光が必要とされることは明らかであるから、様々な異物の検出に対応するために、隣接する発光体の発光が重畳するようにして、多くの発光スペクトルを得るよう構成することは、当業者であれば容易に想起し得ることといえる。
また、青色LED及び複数の蛍光体により構成される周知な白色LED(必要であれば、特開2006-173622号公報【0021】図3D、特開2006-332269号公報【0021】図2、或いは特開2016-115941号公報【0038】~【0039】図2E参照のこと)によれば、隣接する発光体間の全てにおいて、隣接する発光体の発光が重畳している構成は、ありふれたものであって、格別なものでもない。
(3)「少なくとも前記励起光のピーク波長から1050nmまでの範囲内において、全て1050nmでの発光強度以上の発光強度を示す」点について
上記(1)のとおり、「米粒選別機」では、異物判別のために「1000nm付近」の光が求められるのであるから、「1000nm付近」の光は、異物判別に必要な程度の光強度(光源の発光強度)が求められるものであると理解できる。
そして、上記(2)のとおり、発光ピーク間の光は、隣接する発光体(LED及び各燐光体)それぞれの発光の重畳により得られる一方、赤色燐光体の発光ピークから長波長側へ減少していく光には、長波長側で隣接する燐光体が存在しないことから、重畳される光も存在しないこととなる。
そして、引用発明は、青色LEDダイ、赤色燐光体、黄色燐光体及び緑色燐光体を備えており、LEDダイ或いは燐光体の発光が発光ピークを有しているとの技術常識を踏まえれば、引用発明は、青色、緑色、黄色及び赤色に、各色の波長域に発光ピークを有するものと理解でき、青色等と呼称される各色の波長域及びLED或いは燐光体の発光における発光スペクトルの広がりを踏まえると、隣接する発光体の光が重畳される発光ピーク間の光の発光強度に対して、隣接する発光体が存在しないことから、光が重畳されない「1050nm」における光の発光強度は、相対的に低くなるといえると共に、上記(2)を踏まえると、光が重畳される発光ピーク間の光の発光強度は、様々な異物の検出に対応し得る程度の発光強度を備えるものとされるのであるから、必然的に、光が重畳されない「1050nm」における光の発光強度よりも高い発光強度であるといえる。
(4)上記(1)~(3)から、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用し、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。
(5)本願発明の効果について
上記相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(6)審判請求人の主張
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審判請求人は、令和3年3月26日提出の意見書にて、以下のことを主張している。
ア 引用文献1には、想定するアプリケーションの一例として「米粒選別機」が記載されておらず、「米粒選別機」が引用発明のアプリケーションとして利用可能であるという認定は、審判官が独断で行ったものであること。
イ 引用文献1には、可視波長範囲とIR波長範囲が全て重畳するような広い発光スペクトルを示すLEDを想定することについての記載はなく、励起光と蛍光の合成光においては、発光強度のスペクトルが途切れることは通常起こり得るものであること。
ウ 引用文献2には、米粒選別機として機能させる観点で、各光照射部(9a,9b.10)から出射されるそれぞれの光の各波長帯の全てを、その間の波長域の光強度についても確保できるように重畳させることについては触れられておらず、米粒選別機として機能させる際に、全てのそれぞれの光の各波長帯を、切れ間なく重畳させる必要がないことを示唆するものであること。
しかしながら、下記のとおりであるから、審判請求人の主張は、上記判断を左右するものではない。
上記アに対して、上記(1)に説示のとおり、引用発明は、「可視波長範囲とIR波長範囲の両方を含む広い発光スペクトルを生成するLED」であるから、引用発明が、可視波長範囲とIR波長範囲の両方を含む光源を必要とするアプリケーションに用いられ得ることは明らかといえる。
そして、「米粒選別機」に用いられる照射部の光源は、可視波長範囲とIR波長範囲の両方を含む光を必要とするものであるから、引用発明の用途として、「米粒選別機」は想定されるものといえる。
上記イに対して、上記(2)に説示のとおり、引用文献2の図7を踏まえれば、当業者であれば容易に想起し得ることであり、その構成もありふれたものであって、格別のものではない。
また、そもそも、「励起光のピーク波長以上1050nm以下の範囲にわたる発光を示し」といっても、例えば、本願発明の発光素子から出射される光のスペクトルの一例である図2Cにおいては、最大発光強度(λ1)に対して、約7000分の1程度の非常に弱い発光強度となる波長を含んでおり、そうすると、「励起光のピーク波長以上1050nm以下の範囲にわたる発光を示」すこと自体に格別の技術的な意義も認められない。
上記ウに対して、上記(2)に説示のとおり、図7より、異物の反射率に応じた発光スペクトルを有する光が必要とされることは明らかであるから、引用文献2に例示された各波長帯が連続していないことは事実であるとしても、切れ間なく重畳させる必要がないことを示唆するものとは言えない。
(6)まとめ
上記のとおりであるから、引用発明の「出力光」を「少なくとも前記励起光のピーク波長以上1050nm以下の範囲にわたる発光」とし、且つ、「少なくとも前記励起光のピーク波長から1050nmまでの範囲内において、全て1050nmでの発光強度以上の発光強度を示す」よう構成することは、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項から、当業者が容易になし得た事項である。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-010366