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特許拒絶査定不服審判

2020-009888

ショベル

審判番号
2020-009888
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-559216外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年07月14日
審決日
2022年01月17日
公報発行日
2022年08月26日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (H04N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-559216「ショベル」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月 6日国際公開、WO2017/115808、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2016年(平成28年)12月27日(優先権主張 平成27年12月28日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和1年10月21日付け:拒絶理由通知 令和2年 1月 6日 :意見書、手続補正書の提出 同年 4月 7日付け:拒絶査定 同年 7月14日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和3年 6月11日付け:拒絶理由通知(当審) 同年 8月16日 :意見書、手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定(令和2年4月7日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項 1-8 ・引用文献等 1-8 ・請求項 9、10 ・引用文献等 1-10 引用文献等一覧 1.特開2001-140286号公報 2.特開2010-112100号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2015-55095号公報(周知技術を示す文献) 4.特開2005-138751号公報(周知技術を示す文献) 5.特開2014-116756号公報(周知技術を示す文献) 6.国際公開第2015/098156号(周知技術を示す文献) 7.特開2005-328181号公報(周知技術を示す文献) 8.特開2013-187562号公報(周知技術を示す文献) 9.特開2013-2101号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献) 10.特開2012-117225号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献) 第3 当審拒絶理由の概要 令和3年6月11日付け拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由」という。)で通知した拒絶理由の概要は次のとおりである。 この出願の請求項1-9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2013-2101号公報 2.特開2005-138751号公報 3.特開2014-116756号公報 第4 本願発明 本願の請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、令和3年8月16日の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される、次のとおりの発明である。ここで、本願発明1を分説し、(A)~(G)を付与した。以下、本願発明1の各構成要件を「構成要件A」等という。 「 【請求項1】 (A)下部走行体と、 (B)前記下部走行体に旋回可能に取り付けられた上部旋回体と、 (C)前記上部旋回体の左前部に取り付けられた運転室と、 (D1)前記運転室の内側で左ピラーに取り付けられた左モニタと、 (D2)前記運転室の内側で右ピラーに取り付けられた右モニタと、 (D3)運転席の右前方に設置されるメインモニタと、 (E1)前記上部旋回体の左側の領域を撮像する左カメラと、 (E2)前記上部旋回体の右側の領域を撮像する右カメラと、 (F)前記左モニタ及び前記右モニタのそれぞれを制御する制御装置と、を有し、 (D4)前記左モニタ及び前記右モニタは、前記運転席、左操作レバー、及び右操作レバーよりも前側に配置され、 (F1)前記制御装置は、前記左カメラが撮像した画像から生成される鏡像画像を前記左モニタに継続的に表示し、且つ、前記右カメラが撮像した画像から生成される鏡像画像を前記右モニタに継続的に表示し、 (D5)前記右モニタは、前記運転席の右前方に配置され、かつ、前記制御装置へ入力される各種データが表示される前記メインモニタよりも高い位置に取り付けられる、 (G)ショベル。 【請求項2】 前記左モニタ及び前記右モニタは、基準水平面に関して同じ高さに取り付けられる、 請求項1に記載のショベル。 【請求項3】 前記左モニタ及び前記右モニタのそれぞれの画面サイズは7型(7インチ)以上である、 請求項1に記載のショベル。 【請求項4】 前記運転室の内側で前側天井フレームに沿って配置されるように前記右ピラーの上部に取り付けられたバックモニタと、 前記上部旋回体の後側の領域を撮像するバックカメラと、を更に有し、 前記制御装置は、前記バックカメラが撮像した画像から生成される鏡像画像を前記バックモニタに継続的に表示する、 請求項1に記載のショベル。 【請求項5】 前記左カメラ及び前記右カメラのそれぞれの取付高さは、前記上部旋回体のプラットフォームの高さと前記運転室の上面の高さとの間である、 請求項1に記載のショベル。 【請求項6】 前記左カメラ及び前記右カメラのそれぞれの水平画角は20~70度である、 請求項1に記載のショベル。 【請求項7】 前記左カメラ及び前記右カメラを含む複数のカメラのそれぞれの向きを調整する機構を更に有し、 前記機構は、前記運転室の内部に設置された操作装置を介して操作される、 請求項1に記載のショベル。 【請求項8】 前記制御装置は、前記運転室の内部に設置された操作装置に対する操作入力に応じて前記左モニタ及び前記右モニタのそれぞれが映し出す範囲を調整する、 請求項1に記載のショベル。 【請求項9】 前記左カメラは、前記運転室の左側前端、若しくは、前記上部旋回体のプラットフォームの左側前端の近傍に取り付けられ、 前記右カメラは、前記上部旋回体のプラットフォームの右側前端、ハンドレール、若しくは、工具箱の近傍に取り付けられる、 請求項1乃至8の何れかに記載のショベル。」 第5 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について (1)当審拒絶理由通知に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア「【0006】 本発明によれば、作業機械の姿勢に拘わらず作業機械の後方を確認できる作業機械の視野補助装置を提供することができる。」 (中略) 【0008】 ―第1の実施の形態― 以下、図面を参照して本発明による作業機械の視野補助装置の第1の実施の形態について説明する。 図1は、第1の実施の形態に係る視野補助装置が適用される作業機械の一例である油圧ショベルの斜視図である。なお、以下では図示のように機体の前後左右方向を定義する。 【0009】 油圧ショベル100は、関節式フロント装置101と車体102とを有する。車体102は、左右一対のクローラを備える下部走行体106と、下部走行体106の上方に旋回可能に搭載された上部旋回体104とを備え、上部旋回体104には運転室103と建屋105とが設けられている。 (中略) 【0012】 運転室103の左前部には油圧ショベル100の左側方後方を確認するためのサイドミラー2が設けられ、建屋105の右前部に設けられる手摺には油圧ショベル100の右側方後方を確認するためのカメラ付きミラー装置1が設けられている。カメラ付きミラー装置1は、フロント装置101を挟んで運転室103とは反対側に設置されている。図2に示すように、カメラ付きミラー装置1は、縦長のミラー10と、ミラー10と同等の視野角で油圧ショベル100の右側方後方を撮像するカメラ11とを有する。カメラ11は、ミラー10の上方に付設され、カバー12によりカメラ11の上方および側方が覆われている。カバー12は、カメラ11の雨除けおよび日除けの役割を果たす。」 イ「【0017】 カメラ付きミラー装置1のカメラ11で撮影した右側方後方画像および後方カメラ3で撮影した後方画像は、運転室103内に設置される表示装置150,35(図4参照)のそれぞれに表示される。 【0018】 運転室(キャブ)103は、図1に示したように、上部旋回体104の左前部に設けられている。運転室103には、図4に示すように、運転者が着座する運転席39と、走行レバー33,34と、操作レバー31,32とが配設されている。運転者は、走行レバー33,34を操作することによって下部走行体106を走行させることができ、操作レバー31,32を操作することによって上部旋回体104を旋回させたり、フロント装置101のブーム107,アーム108およびバケット109を起伏動させることができる。 【0019】 図4に示すように、運転室103内には、種々の動作モードに対応した表示を行う表示装置(モニタ)35,150が設けられている。表示装置35は、運転席39の右前方に設けられ、後方カメラ3(図1参照)による撮影画像等を表示する。表示装置150は、運転席39の右側方に設けられ、運転状態を示す車体情報(たとえば、燃料の残量を示す燃料計、エンジン冷却水の温度を示す水温計、油圧ショベル100の稼働時間を示すアワーメータ、各種の警報ランプ、ブーム107、アーム108、バケット109の角度情報)の画像、あるいは、カメラ付きミラー装置1のカメラ11で撮影された右側方後方画像を表示する。 【0020】 表示装置150は、運転者がカメラ付きミラー装置1のミラー10により油圧ショベル100の右側方後方を視認できる条件が成立しているときには撮影画像を表示せずに車体情報画像を表示し、運転者がミラー10により油圧ショベル100の右側方後方を視認できないという条件が成立すると、車体情報画像に代えてカメラ11からの撮影画像を表示するように制御される。この制御は、本実施の形態に特有の制御であり、詳細については後述する。 【0021】 図5は、表示装置150とカメラ付きミラー装置1との位置関係を示す油圧ショベル100の平面模式図である。図5に示すように、表示装置150は、運転室103内において、カメラ付きミラー装置1のミラー10に対する運転者の視線方向に設置されている。 (中略) 【0023】 図7は、第1の実施の形態に係る視野補助装置の制御システム構成を示すブロック図である。視野補助装置は、カメラ11を有するカメラ付きミラー装置1と、表示装置150と、表示コントローラ160と、車体コントローラ170とを備える。表示コントローラ160は、表示制御部161と視認可否判定部162とを有し、車体コントローラ170は、車体情報管理部171を有する。なお、各コントローラ160,170は、CPU,ROM,RAM,その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成される。 (中略) 【0025】 視認可否判定部162は、予め作成されたテーブル(図9参照)を備えており、入力されるブーム107の回動角度に基づいて、このテーブルを参照し、運転者9とカメラ付きミラー装置1との間にブーム107が介在して、運転室103から運転者9がカメラ付きミラー装置1のミラー10により右側方後方を視認できない状況(運転環境)か否かを判定する。視認可否判定部162での判定結果情報は、表示制御部161に出力される。」 ウ「【0033】 図7に示すように、表示制御部161は、視認可否判定部162から運転者9がカメラ付きミラー装置1のミラー10により油圧ショベル100の右側方後方を視認できることを表す判定結果信号「1」を受信すると、車体情報管理部171から出力される車体情報を表示するための画像信号を表示装置150に出力する。表示制御部161は、視認可否判定部162から運転者9がカメラ付きミラー装置1のミラー10により右側方後方を視認できないことを表す判定結果信号「0」を受信すると、カメラ11を起動する。カメラ11は、撮影した被写体像を示す撮像信号を表示制御部161に出力し、表示制御部161は、右後方画像を表示するための画像信号を生成し、表示装置150に画像信号を出力する。これにより、表示装置150には、カメラ11で撮像した車両右後方の景観が鏡像画像として表示される。」 エ「【0041】 以上説明した本実施の形態によれば、以下のような作用効果を奏することができる。 (1)油圧ショベル100の姿勢、すなわち、ブーム107の回動角度を検出して、運転者9がカメラ付きミラー装置1のミラー10により油圧ショベル100の右後方を視認できるか否かを判定し、視認できないと判定したとき、カメラ付きミラー装置1のカメラ11により撮像された車両右後方画像を表示装置150に表示させる構成とした。これにより、運転者9とカメラ付きミラー装置1のミラー10との間にフロント装置101、実施の形態ではブーム107が介在して運転者9がカメラ付きミラー装置1のミラー10により油圧ショベル100の右後方を視認できない場合であっても、油圧ショベル100の右後方を確認できる視野補助装置を提供することができる。」 オ「【0055】 次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。 (1)第1および第2の実施の形態では、運転室103が上部旋回体104の左前部に設けられた例を説明したが、本発明はこれに限定されない。運転室103が上部旋回体104の右前部に設けられていてもよい。この場合、カメラ付きミラー装置1は車体102の左前部に設けられる。さらに、運転室103が上部旋回体104の中央に設けられて、運転室103の両脇に設けられる一対のフロント装置を有する双腕型の作業機械に本発明を適用することもできる。この場合、カメラ付きミラー装置1は、車体102の左右前部に設けられる。」 (中略) 【0057】 (3)表示装置150(図4参照)は、ミラー10に対する運転者9の視線方向に設置されている場合に限定されない。 (4)表示装置150(図4参照)を省略して、表示装置35(図4参照)にカメラ付きミラー装置1のカメラ11により撮像して取得された画像を表示してもよい。この場合、入力部155を操作することで、所定の表示モードに切り替えられて、切り替えられた表示モードに対応する表示画像が表示装置35に表示される。 【0058】 図13は、表示装置35にカメラ11により撮像して取得された画像を表示した画面を示した図である。図13(a)に示すように、カメラ11により撮像された縦長の画像を表示装置35に表示させてもよいし、図13(b)に示すように、後方カメラ3により撮像された画像を左側に表示し、カメラ付きミラー装置1のカメラ11により撮像して取得された画像を表示装置35の右側に表示させてもよい。 【0059】 (5)第1および第2の実施の形態では、油圧ショベル100,200が視認不可の姿勢から視認可の姿勢になったときに、表示装置150の画面に表示される画像が側方後方画像から車体情報画像に自動で切り替えたが、本発明はこれに限定されない。判定結果が視認不可とされて車体情報から側方後方画像に自動的に切り替えられた後、判定結果が視認可とされた場合には側方後方画像から車体情報画像に自動的に切り替えず、入力部155の表示切替スイッチにより手動で車体情報画像に戻るようにしてもよい。これにより、油圧ショベル100,200の微妙な姿勢変化により画面が頻繁に切り替えられることを防止できる。 」 カ「 [図:0001386505000001.jpg] 」 (2)上記記載から、引用文献1には以下の事項が記載されている。 ・上記【0006】、【0008】によれば、引用文献1には、作業機械の姿勢に拘わらず後方を確認できる視野補助装置を備えた油圧ショベルに関する発明が記載されている。 ・上記【0009】によれば、油圧ショベル100は、下部走行体106の上方に旋回可能に搭載された上部旋回体104を備え、上部旋回体104には運転室103が設けられている。 ・【0023】、【0025】及び【0041】によれば、視野補助装置は、カメラ11を有するカメラ付きミラー装置1と、表示装置150と、表示コントローラ160と、車体コントローラ170とを備えており、運転者9とミラー10との間にフロント装置101のブーム107が介在して、ミラー10により右後方を視認できない場合には、視野補助装置の表示装置150で右後方を確認できるようにするものである。 ・【0012】、【0055】によれば、運転室103が上部旋回体104の左前部に設けられた場合には、左前部にサイドミラーが設けられ、カメラ付きミラー装置1は建屋105の右前部の手摺に設けられ、運転室103が上部旋回体104の右前部に設けられた場合には、カメラ付きミラー装置1は車体102の左前部に設けられるものである。 ・【0055】によれば、双腕型の油圧ショベル100は、上部旋回体104の中央に設けられた運転室103の両脇に一対のフロント装置を有するため、カメラ付きミラー装置1は、車体102の左右前部に設けられている。 ・上記【0019】、【0021】によれば、表示装置150は、運転席39の右側方に設けられ、運転状態を示す車体情報(たとえば、エンジン冷却水の温度を示す水温計)の画像、あるいは、カメラ付きミラー装置1のカメラ11で撮影された右側方後方画像を表示し、運転室103内において、カメラ付きミラー装置1のミラー10に対する運転者の視線方向に設置されている。 ・上記【0020】、【0023】、【0033】及び図4によれば、表示装置150は、運転者がカメラ付きミラー装置1のミラー10により油圧ショベル100の右側方後方を視認できる条件が成立しているときには撮影画像を表示せずに車体情報画像を表示し、運転者がミラー10により油圧ショベル100の右側方後方を視認できないという条件が成立すると、車体情報画像に代えて、カメラ11で撮像した車両右後方の景観が鏡像画像として表示されるように、表示コントローラ160によって制御される。 ・上記【0059】によれば、表示装置150の画面に表示される画像は、視認不可とされて車体情報から側方後方画像に自動的に切り替えられた後、視認可とされた場合には側方後方画像から車体情報画像に自動的に切り替えず、入力部155の表示切替スイッチにより手動で車体情報画像に戻るようにすることにより、油圧ショベル100の微妙な姿勢変化により画面が頻繁に切り替えられることを防止している。 ・上記【0017】、【0019】及び図4によれば、表示装置35は、運転席39の右前方に設けられ、後方カメラ3による撮影画像等を表示している。 ・上記【0057】、【0058】及び図4によれば、表示装置150を省略して、表示装置35にカメラ付きミラー装置1のカメラ11により撮像して取得された画像を表示してもよいものである。 (3)したがって、上記摘記事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、油圧ショベルについて、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「作業機械の姿勢に拘わらず後方を確認できる視野補助装置を備えた油圧ショベルであって、 油圧ショベル100は、下部走行体106の上方に旋回可能に搭載された上部旋回体104を備え、上部旋回体104には運転室103が設けられており、 視野補助装置は、カメラ11を有するカメラ付きミラー装置1と、表示装置150と、表示コントローラ160と、車体コントローラ170とを備えており、運転者9とミラー10との間にフロント装置101のブーム107が介在して、ミラー10により右後方を視認できない場合には、視野補助装置の表示装置150で右後方を確認できるようにするものであり、 運転室103が上部旋回体104の左前部に設けられた場合には、左前部にサイドミラーが設けられ、カメラ付きミラー装置1は建屋105の右前部の手摺に設けられ、運転室103が上部旋回体104の右前部に設けられた場合には、カメラ付きミラー装置1は車体102の左前部に設けられるものであるところ、 双腕型の油圧ショベル100は、上部旋回体104の中央に設けられた運転室103の両脇に一対のフロント装置を有するため、カメラ付きミラー装置1は、車体102の左右前部に設けられており、 表示装置150は、運転席39の右側方に設けられ、運転状態を示す車体情報(たとえば、エンジン冷却水の温度を示す水温計)の画像、あるいは、カメラ付きミラー装置1のカメラ11で撮影された右側方後方画像を表示し、運転室103内において、カメラ付きミラー装置1のミラー10に対する運転者の視線方向に設置されており、 運転者がカメラ付きミラー装置1のミラー10により油圧ショベル100の右側方後方を視認できる条件が成立しているときには撮影画像を表示せずに車体情報画像を表示し、運転者がミラー10により油圧ショベル100の右側方後方を視認できないという条件が成立すると、車体情報画像に代えて、カメラ11で撮像した車両右後方の景観が鏡像画像として表示されるように、表示コントローラ160によって制御されており、 表示装置150の画面に表示される画像は、視認不可とされて車体情報から側方後方画像に自動的に切り替えられた後、視認可とされた場合には側方後方画像から車体情報画像に自動的に切り替えず、入力部155の表示切替スイッチにより手動で車体情報画像に戻るようにすることにより、油圧ショベル100の微妙な姿勢変化により画面が頻繁に切り替えられることを防止しており、 表示装置35は、運転席39の右前方に設けられ、後方カメラ3による撮影画像等を表示しており、 表示装置150を省略して、表示装置35にカメラ付きミラー装置1のカメラ11により撮像して取得された画像を表示してもよい、 視野補助装置を備えた油圧ショベル。」 2 引用文献2、3について (1)当審拒絶理由通知に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア「【0001】 本発明は、油圧ショベル等の建設機械の運転室に設置されて、オペレータに各種の情報を認識させるための建設機械の表示装置に関するものである。」 イ「【0010】 ここで、モニタに表示される各種の画像情報としては、まず車両作動状況に関する情報、つまり車両状況表示画像がある。また、カメラにより取得される画像画像があり、これによってオペレータが視認できない視野が補助的に得ることができ、つまり視野補助画像が得られる。この補助視野画像としては、オペレータが前方を向いた姿勢では得られない後方視野や側方視野のように、安全確認のためのものと、運転室の内部からは視認できない位置、例えば深堀り作業や高所作業を行っているときに、フロント作業機の先端部分の作動状況を確認する作業領域確認用のものもある。」 ウ「【0021】 運転室4内には、図2に示したように、液晶ディスプレイ等から構成されるモニタ13が設置されており、このモニタ13に各種の情報を表示することによって、機械の操作を行うオペレータにこれらの情報を認識させることができるようになっている。モニタ13は、従って、オペレータが油圧ショベルを構成する各機構部の操作を行っている間でも見ることができる。ただし、作業中においては、前方視野をできるだけ妨げないようにする必要がある。このために、モニタ13は比較的小型の画面を有するものであり、運転室4内において、運転席6の斜め前方に配置されており、例えばピラー7に取り付けられている。」 エ「【図2】 [図:0001386505000002.jpg] 」 オ 上記エの図2を参照すると、モニタ13が取り付けられるピラー7は、運転席6及び操作手段(レバー等)よりも前方に配置されている。 (2)当審拒絶理由通知に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア「【0001】 本発明は、車両の周辺を撮影して表示する周辺監視システムに関する。」 イ「【0026】 また、電子ミラー用カメラ23がサイドミラー13の代わりに(又はサイドミラー13と共に)車両後側方の映像を提供することを考慮すると、サイドミラー13の近くにディスプレイ21を配置することが好ましい。運転者はサイドミラー13に視線を移動する場合と同じ方向に視線移動することで電子ミラー用カメラ23が撮影した画像を目視できる。図では前方ピラー(Aピラー)にディスプレイ21が取り付けられている。また、前方ピラーでなく前方ピラー寄りのダッシュボード上にディスプレイを配置することで視線移動を少なくすることができる。このディスプレイは、運転者の嗜好に応じて収納又は脱着可能としてもよく、運転者はサイドミラー13と電子ミラー用カメラ23のうち所望の画像で後側方の状況を確認できる。」 ウ「【図6】 [図:0001386505000003.jpg] 」 エ 上記ウの図6を参照すると、ディスプレイ21が取り付けられる前方ピラーは、運転席及び操作手段(ハンドル等)よりも前方にある。 (3)上記(1)及び(2)の記載から、車両の運転室に設置される表示装置に関して、以下の技術は周知の技術事項であると認められる。 「車両の後方、側方を確認するための表示装置を、運転席及び操作手段よりも前方にあるピラーに取り付けること」 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 a 構成要件A及びBについて 引用発明の「下部走行体106」、「下部走行体106の上方に旋回可能に搭載された上部旋回体104」は、本願発明1の「下部走行体」、「前記下部走行体に旋回可能に取り付けられた上部旋回体」にそれぞれ相当する。 b 構成要件C、D1及びD2について 引用発明の双腕型のショベル110における「上部旋回体104に中央に設けられた運転室103」と本願発明1の「上部旋回体の左前部に取り付けられた運転室」は、「上部旋回体に」「取り付けられた運転室」である点で共通する。 また、引用発明は「表示装置150」が左右それぞれに設置されることの明記がないが、「運転室103内において、カメラ付きミラー装置1」が「車体102の左右前部」にあること、及び「表示装置150」が「運転室103内において、カメラ付きミラー装置1のミラー10に対する運転者9の視線方向に設置」されることから、「表示装置150」は、双腕型のショベル110の運転室103内において左右それぞれに設置されるものと認められる。 そして、これら左右それぞれの「表示装置150」と本願発明1の「前記運転室の内側で左ピラーに取り付けられた左モニタ」及び「前記運転室の内側で右ピラーに取り付けられた右モニタ」は、「前記運転室の内側」「に取り付けられた左モニタ」及び「前記運転室の内側」「に取り付けられた右モニタ」である点で共通する。 ただし、左右両方にモニタが取り付けられ、左右両方にカメラを有するショベルにおける運転室の位置に関して、本願発明1は上部旋回体の左前部であるのに対して、双腕型の油圧ショベルである引用発明は、上部旋回体の中央である点で相違する。 また、運転室内における左右のモニタの位置に関して、本願発明1は左モニタが「左ピラー」に取り付けられ、右モニタが「右ピラー」に取り付けられているのに対して、引用発明はその旨の特定がない点で相違する。 c 構成要件D3について 本願発明1の「メインモニタ」は、構成要件D5において「制御装置へ入力される各種データ」を表示しており、当該「制御装置へ入力される各種データ」は、本願明細書の【0044】を参照すると、「エンジン11の状態を示す各種データ(例えば、水温センサ11cで検出される冷却水温を示すデータ等)」に対応している。 ここで、引用発明においては、右側方後方画像を表示する「表示装置150」が「運転状態を示す車体情報(たとえば、エンジン冷却水の温度を示す水温計)の画像」も表示しており、引用発明の「表示装置150」は本願発明1の「右モニタ」及び「メインモニタ」の両方の機能を兼ね備えたものに相当する。 そうすると、引用発明の運転席39の右側方に設けられた「表示装置150」と本願発明1の「運転席の右前方に設置されるメインモニタ」は、「運転席の右」「方に設置されるメインモニタ」である点で共通する。 ただし、メインモニタの位置に関して、本願発明1は運転席の右前方であるのに対して、引用発明は運転席の右側方である点で相違する。 d 構成要件E1、E2について 引用発明の「車体102の左右前部」の「カメラ付きミラー装置1」が有する「カメラ11」は、上部旋回体104の左側及び右側の領域をそれぞれ含む範囲を撮像することが明白であり、本願発明1の「前記上部旋回体の左側の領域を撮像する左カメラ」及び「前記上部旋回体の右側の領域を撮像する右カメラ」に相当する。 e 構成要件F、F1について 引用発明の「表示コントローラ160」は、左右の表示装置150に表示する画像を制御する制御装置といえ、本願発明1の「前記左モニタ及び前記右モニタのそれぞれを制御する制御装置」に相当する。 また、引用発明の「表示コントローラ160」は、車体102の左前部の「カメラ11」で撮像した車両左後方の景観を「鏡像画像」として左設置の「表示装置150」に表示し、右前部の「カメラ11」で撮像した車両右後方の景観を「鏡像画像」として右設置の「表示装置150」に表示することが明らかであり、これらの鏡像画像は「入力部155の表示切替スイッチにより手動で車体情報画像に戻る」までの間、表示装置150に継続的に表示されている。 そうすると、引用発明の「表示コントローラ160」が左右の「表示装置150」に「鏡像画像」を表示させることは、本願発明1の「前記制御装置は、前記左カメラが撮像した画像から生成される鏡像画像を前記左モニタに継続的に表示し、且つ、前記右カメラが撮像した画像から生成される鏡像画像を前記右モニタに継続的に表示」することに相当する。 f 構成要件D4について 引用発明は「カメラ付きミラー装置1のミラー10に対する運転者の視線方向」に「表示装置150」を設置するものであるが、双腕型のショベルの構成において、「表示装置150」が運転席39や操作レバー31、32よりも前側に配置されるのか否かは明らかでない。 したがって、本願発明1は「前記左モニタ及び前記右モニタは、運転席、左操作レバー、及び右操作レバーよりも前側に配置され」ているのに対して、引用発明はその旨の特定がない点で相違する。 g 構成要件D5について 引用発明の運転席39の右側方に設けられ、右側方後方画像を表示する「表示装置150」と本願発明1の「運転席の右前方に配置され」た「右モニタ」は、「前記右モニタは、前記運転席の右」「方に配置され」ている点で共通する。 ただし、本願発明1は「前記右モニタは、前記運転席の右前方に配置され、かつ、前記制御装置へ入力される各種データが表示される前記メインモニタよりも高い位置に取り付けられる」のに対して、引用発明は、上記cで述べたとおり、運転席39の右側方に設けられた表示装置150が右モニタ及びメインモニタの機能を兼ね備えている点で相違する。 h 構成要素Gについて 引用発明の「下部走行体106」、「上部旋回体104」、「運転室103」、「表示装置150」、「カメラ11」及び「表示コントローラ160」を有する「視野補助装置を備えた油圧ショベル」は、本願発明1の「ショベル」に相当する。 i 上記aないしhから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> (A)下部走行体と、 (B)前記下部走行体に旋回可能に取り付けられた上部旋回体と、 (C’)前記上部旋回体に取り付けられた運転室と、 (D1’)前記運転室の内側に取り付けられた左モニタと、 (D2’)前記運転室の内側に取り付けられた右モニタと、 (D3’)運転席の右方に設置されるメインモニタと、 (E1)前記上部旋回体の左側の領域を撮像する左カメラと、 (E2)前記上部旋回体の右側の領域を撮像する右カメラと、 (F)前記左モニタ及び前記右モニタのそれぞれを制御する制御装置と、を有し、 (F1)前記制御装置は、前記左カメラが撮像した画像から生成される鏡像画像を前記左モニタに継続的に表示し、且つ、前記右カメラが撮像した画像から生成される鏡像画像を前記右モニタに継続的に表示し、 (D5’)前記右モニタは、前記運転席の右方に配置される、 (G)ショベル。 <相違点1> 左右両方にモニタが取り付けられ、左右両方にカメラを有するショベルにおける運転室の位置に関して、本願発明1は上部旋回体の左前部にあるのに対して、双腕型の油圧ショベルである引用発明は、上部旋回体104の中央にある点。 <相違点2> 運転室内における左右のモニタの位置に関して、本願発明1は左モニタが「左ピラー」に取り付けられ、右モニタが「右ピラー」に取り付けられているのに対して、引用発明はその旨の特定がない点。 <相違点3> メインモニタの位置に関して、本願発明1は運転席の右前方であるのに対して、引用発明は運転席の右側方である点。 <相違点4> 本願発明1は「前記左モニタ及び前記右モニタは、運転席、左操作レバー、及び右操作レバーよりも前側に配置され」ているのに対して、引用発明はその旨の特定がない点。 <相違点5> 本願発明1は「前記右モニタは、前記運転席の右前方に配置され、かつ、前記制御装置へ入力される各種データが表示される前記メインモニタよりも高い位置に取り付けられる」のに対して、引用発明は、運転席39の右側方に設けられた表示装置150が右モニタ及びメインモニタの機能を兼ね備えている点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑みて、上記相違点1、2及び4について先に検討する。 引用発明が車体の左右にカメラ付きミラー装置及び表示装置を設けたのは、上部旋回体104の中央に設けられた運転室103の両脇に一対のフロント装置を有する双腕型の構成であるため、左右両方において、ブームが介在してサイドミラーによる視認を行えない状況が発生するからである。 そのため、引用発明においては、運転室103の左右両方にカメラ及びモニタを設けるのは、双腕型の構成の場合に限られるといえ、双腕型でない構成では「運転室103が上部旋回体104の左前部に設けられた場合には、左前部にサイドミラーが設けられ、カメラ付きミラー装置1は建屋105の右前部の手摺に設けられ、運転室103が上部旋回体104の右前部に設けられた場合には、カメラ付きミラー装置1は車体102の左前部に設けられる」ものとされている。 また、上記周知の技術事項(上記「第5 2(3)」参照)は「車両の後方、側方を確認するための表示装置を、運転席及び操作手段よりも前方にあるピラーに取り付けること」であって、上部旋回体の「左前部」に運転室を有するショベル、すなわち運転席の左側方にブームがないショベルにおいて、左右両方に「カメラ」を有し、左右両方のピラーに「モニタ」を有する構成は示されていない。 そうすると、引用発明において、仮に運転室を上部旋回体の左前部に設けたとしても、ブームがない左側にはカメラ付きミラー装置や表示装置を設ける理由がなく、周知の技術事項を適用する動機がない。 さらに、運転席の左側方にブームがないショベルにおいて、左右両方に「カメラ」を有し、左右両方のピラーに「モニタ」を有する構成が、本願優先日前に周知の技術であったともいえない。 してみると、他の相違点である相違点3及び5を検討するまでもなく、本願発明1は引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2ないし9について 本願発明2ないし9は、本願発明1の上記相違点1、2、4に係る構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 第7 原査定についての判断 令和3年8月16日にされた手続補正により、補正後の請求項1ないし9は、左右両方に「カメラ」を有し、左右両方のピラーに「モニタ」を有するショベルの運転室の位置が上部旋回体の「左前部」に特定された構成となった。 当該構成は、原査定における引用文献1-10には記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1ないし9は、当業者であっても、原査定における引用文献1-10に基づいて容易に発明できたものではない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2020-009888

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