2020-009296
半導体装置
- 審判番号
- 2020-009296
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-565864外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年07月02日
- 審決日
- 2021年02月19日
- 公報発行日
- 2021年04月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【請求人代理人】鎌田 健司
- 【請求人代理人】野村 幸一
- 分類
- P18 .537-WY (H01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 5項目
第1 手続の経緯
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本願は、2015年(平成27年)8月5日(優先権主張 平成26年12月26日)を国際出願日とする出願であって、その手続の概要は以下のとおりである。
第2 原査定の概要
原査定(令和2年3月31日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
この出願は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(1)本願発明が解決しようとする課題は、本願の発明の詳細な説明[0008]の記載から、半導体素子と第2の電極ブロックとの熱膨張率の違いによる応力を緩和するとともに、半導体素子と第2の電極ブロックとの電気的接続を安定して確保することであり、当該課題を解決するための手段は、同[0018]に「バンプ50の先端は、金属シート70に化学的に接着(接合)させずに、金属シート70に食い込んで、物理的に接触していることが好ましい。これにより、半導体レーザ素子40と電極ブロック60との熱膨張率の差に対しても、バンプ50が金属シート70を水平面方向に押すように移動でき、応力を緩和できる。」と、同[0019]に「金属層80は、金属シート70に化学的に接着(接合)させずに、互いの面同士が物理的に接触していることが好ましい。これにより、半導体レーザ素子40と電極ブロック60との熱膨張率の差に対しても、金属シート70が金属層80に沿って水平面方向にずれるように移動でき、応力を緩和できる。」と記載されているように、バンプの先端と金属シートとを物理的に接触させ、金属層と金属シートとを物理的に接触させることであると、認められる。
しかしながら、請求項1には、金属層とバンプとの間に金属シートが設けられている点は記載されているが、金属層と金属シートとの接続、金属シートとバンプとの接続については、何等規定されていない。
そうすると、請求項1には、上記課題を解決するための手段が反映されていないことは、明らかである。
したがって、請求項1に記載された発明は、本願の発明の詳細な説明に記載したものでない。
上記と同様の理由が、請求項2-10に記載された発明についても該当する。
したがって、請求項2-10に記載された発明は、本願の発明の詳細な説明に記載したものでない。
(2)請求項1に係る発明は、第2の電極ブロックとバンプとの間に金属層を設け、金属層とバンプとの間に金属シートを設ける点が規定された半導体装置である。
そして、本願発明は、半導体素子と第2の電極ブロックとの熱膨張率の違いによる応力を緩和することを課題としているが、請求項1では、半導体素子の熱膨張率も、第2の電極ブロックの熱膨張率も、金属層の熱膨張率も、金属シートの熱膨張率も、何等特定されておらず、これらの大小関係も特定されていないからの部材の熱膨張率は、如何なる値もとりうるものと認められる。
しかしながら、異なる部材間の熱膨張率差が大きければ、その熱膨張率差によって生じる応力が大きくなることは、本願出願時における技術常識であるところ、例えば、金属層として、熱膨張係数が9×10-6/K程度の白金を用い、金属シートとして、熱膨張係数が24×10-6/K程度のアルミニウムを用いれば、生じる応力が大きくなることは、当業者にとって明らかである。
そして、本願の発明の詳細な説明には、バンプを金で形成し、金属シートを、金からなる金属箔を複数枚重ねたもので形成し、金属層を金で形成し、電極ブロックを、銅ブロックにニッケルと金をこの順にメッキしたもので形成した構成が記載されているのみであって、他の材料を用いた構成は、記載も示唆もされていない。
そうすると、本願の発明の詳細な説明には、上記構成が記載されているのみであるところ、当該構成以外の構成、すなわち、熱膨張係数差が大きくなるような材料により、バンプ、金属シート、金属層、電極ブロックを形成する構成を包含する請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することはできない。
したがって、請求項1に係る発明は、本願の発明の詳細な説明に記載されたものではない。
上記と同様の理由が、請求項2-10に係る発明についても該当する。
したがって、請求項2-10に係る発明は、本願の発明の詳細な説明に記載されたものではない。
第3 当審の判断
1 特許請求の範囲の記載
(1)本願の特許請求の範囲の請求項1~10の記載は、以下のとおりである(以下、各請求項の記載により特定される発明を「請求項1発明」~「請求項10発明」という。)。
「【請求項1】導電性を有する第1の電極ブロックと、前記第1の電極ブロックの上面の第1の領域に設けられ、前記第1の電極ブロックと電気的に接続され、導電性を有するサブマウントと、前記第1の電極ブロックの上面であって、前記第1の領域とは異なる第2の領域に設けられた絶縁層と、続きを表示(全34行)前記サブマウントの上に設けられ、前記サブマウントと電気的に接続された第1の電極を有する半導体素子と、前記半導体素子の前記第1の電極とは反対側の第2の電極の上面に設けられ、前記第2の電極と電気的に接続され、導電性を有するバンプと、前記バンプおよび前記絶縁層の上に設けられ、導電性を有する第2の電極ブロックとを備え、前記第2の電極ブロックの下面は、第3の領域において、導電性を有する金属層を介して前記バンプと電気的に接続され、前記第2の電極ブロックの下面は、第4の領域において、前記絶縁層に搭載され、前記金属層と前記バンプとの間には、導電性を有する金属シートが設けられている半導体装置。【請求項2】前記金属層は、前記第3の領域に接合されている請求項1に記載の半導体装置。【請求項3】前記金属層は、前記第3の領域にメッキ成長されている請求項1に記載の半導体装置。【請求項4】前記半導体素子は、レーザ光を出力する半導体レーザ素子であり、前記第1の領域は、前記第1の電極ブロックの上面の端部であり、前記第2の領域は、前記第1の領域をコの字状に囲んでいる請求項1~3のいずれかに記載の半導体装置。【請求項5】前記半導体素子は、60V以上の高電圧が入力されるパワー半導体素子であり、前記第1の領域は、前記第1の電極ブロックの上面の中央部であり、前記第2の領域は、前記第1の領域の全周囲を囲んでいる請求項1~3のいずれかに記載の半導体装置。【請求項6】前記第1の領域の前記第1の電極ブロックの上面は、前記第2の領域の前記第1の電極の上面よりも低く、前記第2の電極ブロックの下面は平面である請求項1~5のいずれかに記載の半導体装置。【請求項7】前記第1の電極ブロックの上面は平面であり、前記第3の領域の前記第2の電極ブロックの下面は、前記第4の領域の前記第2の電極の下面よりも高い請求項1~5のいずれかに記載の半導体装置。【請求項8】前記金属シートの主な材料は金である請求項1~7のいずれかに記載の半導体装置。【請求項9】前記バンプの主な材料は金である請求項1~8のいずれかに記載の半導体装置。【請求項10】前記金属層の主な材料は金である請求項1~9のいずれかに記載の半導体装置。」
(2)請求項1発明について
ア 請求項1発明は、「前記第2の電極ブロックの下面は、第3の領域において、導電性を有する金属層を介して前記バンプと電気的に接続され」と特定されている。
ここで、上記特定は、「第2の電極ブロックの下面」と「バンプ」とが、「金属層」を介して「電気的に接続され」ていることを特定するものであって、「第2の電極ブロックの下面」と「金属層」及び「金属層」と「バンプ」との接続構造、すなわち「ハンダ等を介して接続されている」のか、「直接接合(溶融接合)」であるのか、或いは「物理的接触」であるのかは特定されてはいないものである。
したがって、「第2の電極ブロックの下面」と「金属層」及び「バンプ」と「金属層」との接続構造は、電気的に接続され得る、上記何れの構成も含むものと認められる。
イ 請求項1発明は、「前記金属層と前記バンプとの間には、導電性を有する金属シートが設けられている」と特定されている。
そして、上記アのとおり、「第2の電極ブロックの下面は、第3の領域において、導電性を有する金属層を介して前記バンプと電気的に接続され」ているのであるから、「金属層」と「金属シート」及び「金属シート」と「バンプ」とは、「電気的に接続される」ものと理解できる。
一方、「金属層」と「金属シート」及び「金属シート」と「バンプ」との接続構造は特定されていないことから、上記アと同様に、「金属層」と「金属シート」及び「金属シート」と「バンプ」との接続構造は、電気的に接続され得る、上記アの何れの構成も含むものと認められる。
ウ 請求項1発明は、「金属層」及び「金属シート」について、その材料は「金属」であることは特定されるものの、「金属」の材料を、特定してはいないものである。
(3)本願の発明の詳細な説明に記載された事項
ア 本願の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。
「【0006】従来の半導体レーザ装置900は、LDバー903と引き出し電極906との間に、Agペースト又ははんだ材料からなる充填材907を充填して、熱伝導性を向上させている。しかし、Agペーストやはんだ材料でLDバー903と引き出し電極906との間を充填すると、LDバー903と引き出し電極906との熱膨張率の違いによって、引き出し電極906と充填材907との界面や充填材907の内部に亀裂が生じる恐れがある。このような亀裂が発生すると、熱伝導性が低下するとともに、LDバー903と引き出し電極906との間の電気的な接続が低下(すなわち、電気的な抵抗が増加)し、半導体レーザ装置の性能低下もしくは故障となる。【0007】上記問題を解決するために、本開示に係る半導体装置は、第1の電極ブロックと、サブマウントと、絶縁層と、半導体素子と、バンプと、第2の電極ブロックとを有する。第1の電極ブロックは、導電性を有する。サブマウントは、第1の電極ブロックの上面の第1の領域に設けられ、第1の電極ブロックと電気的に接続され、導電性を有する。絶縁層は、第1の電極ブロックの上面であって、第1の領域とは異なる第2の領域に設けられている。半導体素子は、サブマウントの上に設けられ、サブマウントと電気的に接続された第1の電極を有する。バンプは、半導体素子の第1の電極とは反対側の第2の電極の上面に設けられ、第2の電極と電気的に接続され、導電性を有する。第2の電極ブロックは、バンプおよび絶縁層の上に設けられ、導電性を有する。また、第2の電極ブロックの下面は、第3の領域において、導電性を有する金属層を介してバンプと電気的に接続されている。また、第2の電極ブロックの下面は、第4の領域において、絶縁層に搭載されている。また、金属層とバンプとの間には、導電性を有する金属シートが設けられている。【0008】以上のように、本開示は、バンプと第2の電極ブロックとの間に、金属層および金属シートを設けることにより、半導体素子と第2の電極ブロックとの熱膨張率の違いによる応力を緩和するとともに、半導体素子と第2の電極ブロックとの電気的接続を安定して確保できる。」
「【0018】金属シート70は導電性を有し、主な材料は金である。金属シート70は、約8μm~約12μmの厚さの金属箔を3~4枚重ねたものであり、全体の厚さは、約24μm~約48μmである。なお、金属シート70の枚数と全体の厚さはこれに限らない。金属シート70は、バンプ50の上端が食い込むようにバンプ50の上に設け、バンプ50と電気的に接続されている。また、バンプ50の先端は、金属シート70に食い込んで設けられるが、バンプ50の先端は、金属シート70に化学的に接着(接合)させずに、金属シート70に食い込んで、物理的に接触していることが好ましい。これにより、半導体レーザ素子40と電極ブロック60との熱膨張率の差に対しても、バンプ50が金属シート70を水平面方向に押すように移動でき、応力を緩和できる。【0019】金属層80は導電性を有し、主な材料は金である。金属層80の厚さは、約50μm~約100μmである。金属層80は、金属シート70の上に設けられ、金属シート70とは電気的に接続されている。また、金属層80は、金属シート70に化学的に接着(接合)させずに、互いの面同士が物理的に接触していることが好ましい。これにより、半導体レーザ素子40と電極ブロック60との熱膨張率の差に対しても、金属シート70が金属層80に沿って水平面方向にずれるように移動でき、応力を緩和できる。」
イ 本願の発明の詳細な説明の記載より理解される技術的な事項
(ア)上記【0006】より、「LDバー903」と「引き出し電極906」との間に、「導電性及び熱伝導性を有する部材」を「充填」する構成においては、「引き出し電極906」と「充填部材との界面」や「充填部材の内部」に「亀裂」が生じるものと理解され、その原因は、「LDバー903と引き出し電極906との熱膨張率の違い」によるものと理解できる。
(イ)上記【0007】より、「第2の電極ブロックの下面」と「バンプ」とは、「導電性を有する金属層」を介して電気的に接続され、「金属層」と「バンプ」とは、「導電性を有する金属シート」を介して「電気的に接続される」ものと理解できる。
(ウ)上記【0008】より、「金属層」及び「金属シート」を設けることにより、「半導体素子と第2の電極ブロックとの熱膨張率の違いによる応力を緩和する」ものと理解できる。
また、上記(ア)の事項を踏まえると、「半導体素子」と「第2の電極ブロック」との間に、「導電性及び熱伝導性を有する部材を充填する」構成に対して、「金属層」及び「金属シート」を設けることにより、「半導体素子と第2の電極ブロックとの熱膨張率の違いによる応力を緩和」し、「半導体素子」と「第2の電極ブロック」との間に配置される部材の破壊が防止されるもの、と理解できる。
(4)請求項1発明が、明細書のサポート要件に適合するか否かについて
ア 請求項1発明は、「半導体素子」と「第2の電極ブロック」との熱膨張率の違いにより生じる、「半導体素子」と「第2の電極ブロック」とを「電気的に接続する部材」の亀裂を、課題としている。(【0006】)
そして、請求項1発明においては、「前記第2の電極ブロックの下面は、第3の領域において、導電性を有する金属層を介して前記バンプと電気的に接続され」及び「前記金属層と前記バンプとの間には、導電性を有する金属シートが設けられている」との構成が特定されているところ、上記1の(2)ア及びイのとおり、「接続構造」について特定されてはいない。
イ 本願の発明の詳細な説明における、【0018】及び【0019】の記載によれば、「バンプ50の先端」と「金属シート70」との接続、及び「金属層80」と「金属シート70」との接続が、「物理的に接触」の場合には、上記課題を解決し得る原理が記載されている。
ウ 一方、当該段落において、「化学的に接着(接合)」の場合に、上記課題を解決し得る原理について、明記はない。
そこで、「化学的に接着(接合)」の場合においても、上記課題が解決し得るか否かについて、次に検討する。
エ 請求項1発明において、「バンプ」と「金属シート」との接続、及び「金属層」と「金属シート」との接続が、「化学的に接着(接合)」されるとしても、「半導体素子」と「第2の電極ブロック」との間に、「バンプ」、「金属シート」及び「金属層」と、少なくとも3つ部材が介在される構成を備えるものであり、バンプの周囲は空隙であって、溶融した「金属シート」など「導電性及び熱伝導性を有する部材」が充填された構成は、含まれないものと解される。
そして、請求項1発明の当該構成を、「半導体素子」と「第2の電極ブロック」との間に、「導電性及び熱伝導性を有する部材」が充填された、上記課題を有する構成と対比してみれば、請求項1発明では、更に2層の金属部材が介在され、「バンプ」の周囲には空隙が存在する構成であるから、当該構造が、バンプの周囲に部材が充填された構造と比較して、「半導体素子」及び「第2の電極ブロック」の熱膨張率の違いにより生じる応力に、より抗し得る構造であり、応力緩和の作用を奏することは、技術常識に照らして、明らかといえる。
また、【0018】及び【0019】の記載は、「物理的に接触」が「化学的に接着(接合)」に対して、「好ましい」態様であることを示すものであり、「化学的に接着(接合)」を否定するものではない、と理解される。
してみると、「化学的に接着(接合)」においては、【0008】の記載のとおり、「半導体素子」と「第2の電極ブロック」との間に、「金属層80」及び「金属シート70」を配置する構成そのものによって、上記課題が解決されるものと解される。
オ 上記イ及びエのとおりであるから、請求項1発明は、「バンプ50の先端」と「金属シート70」との接続、及び「金属層80」と「金属シート70」との接続が、「物理的に接触」であるか「化学的に接着(接合)」であるかに関わらず、「半導体素子」と「第2の電極ブロック」との間に介在する上記「構造」そのものによって、上記課題は解決されるものと解される。
カ 続いて、「金属層80」及び「金属シート70」の材料の特定について、以下に検討する。
上記オのとおり、上記課題は、「半導体素子」と「第2の電極ブロック」との間に、「バンプ」、「金属シート」及び「金属層」が介在される構造によって解決されるものであって、それぞれの材料にはよらないものと解される。
(5)請求項2~請求項10について
請求項2~請求項10に対する原査定の理由は、請求項2~請求項10が引用する請求項1の記載に係るものであるところ、上記(4)のとおり、請求項1に対する原査定の理由は妥当しないから、請求項2発明~請求項10発明についても、発明の詳細な説明に記載された発明といえる。
(6)小活
以上のとおりであるから、特許請求の範囲の請求項1~10の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定されたサポート要件に適合するものである。
第5 むすび
以上より、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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