2020-008816
撮像システム、方法及び用途
- 審判番号
- 2020-008816
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-511155外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年06月25日
- 審決日
- 2021年07月12日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .113-WZ (G03B) / P18 .121-WZ (G03B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
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本願は、2015年(平成27年)5月5日(パリ条約による優先権主張2014年5月6日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の概要は、以下のとおりである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし14に係る発明は、令和3年4月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるところ、その請求項7に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項7】 多重カメラパノラマ撮像システムであって、視野によって特徴付けられた、且つ並んだアレイに配置された複数の別個の撮像システムであって、前記別個の撮像システムのそれぞれにおける前記視野が、結合されるが、しかし前記別個の撮像システムにおける隣接する撮像システムの前記視野に重複せず、主光線の全てが、物体空間から見られた場合に共通ポイントに集束するように見えるように、光軸及び前部レンズを含む前記別個の撮像システムのそれぞれが、前記別個の撮像システムにおけるあらゆる撮像システムの前記光軸に対する異なる光線高さの前記視野のエッジに沿って当たる前記複数の主光線を、前記別個の撮像システムにおける撮像システムである第1の前記別個の撮像システムの前記視野の前記エッジに沿って当たる複数の主光線のそれぞれの主光線が、前記第1の別個の撮像システムの真隣の、前記別個の撮像システムにおける撮像システムの前記視野の隣接するエッジに沿って対応する光線高さで当たる、別の複数の主光線のうちの対応する主光線と実質的に平行になるように制約するように構成された複数の別個の撮像システムを含む、多重カメラパノラマ撮像システム。」
第3 拒絶の理由
令和3年1月28日付けで当審が通知した請求項7についての拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
[理由](新規性)本件出願の請求項7に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(進歩性)本件出願の請求項7に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2003-162018号公報
第4 引用文献について
1 引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付した。以下同様。)。
「【0008】【課題を解決するための手段】本発明の撮像装置は、広範囲の被写体を分割した複数の各分割被写部をそれぞれ個別に複数の撮像手段によって撮影し、各撮像手段からの映像情報を入力した処理手段によって1つの映像に張り合わせ処理するものであって、撮像手段が、レンズ及びこのレンズを通過した光線を検知する撮像素子を備え、撮像手段のレンズの開口絞りの中心を通る主光線中、ガウス領域に位置する主光線を選択し、この選択された主光線の物空間における直線成分を延長して光軸と交わる点をNP点と定義したときに、各撮像手段においてNP点が撮像素子より後方に設定され、かつ複数の撮像手段の各NP点を1つのNP点を中心とした所定の半径領域内に集合させたものである。【0009】上述の本発明の撮像装置の構成によれば、各撮像手段においてNP点が撮像素子より後方に設定されていることにより、各撮像手段の光学系が他の撮像手段の光路をさえぎらない。また、複数の撮像手段の各NP点を1つのNP点を中心とした所定の半径領域内に集合させたことにより、各撮像手段の間のパララックスをなくすことが可能になる。」
「【0024】そこで、本発明は、各カメラにおいてそのNP点を撮像素子より後方に配置すると共に、所定の半径領域(球形領域)内に全てのカメラのNP点を位置させるようにしたものである。これによって、カメラ画像間にパララックスは発生しない。【0025】そして、上述のようにNP点を撮像素子より後方にするには、複数のレンズを組み合わせて、テレフォト型(望遠型)の光学系を構成すればよい。テレフォト型の光学系を構成して、NP点を撮像素子より後方にするには、例えば物空間側(被写体側)に凸レンズ作用(収束作用)を有するレンズを配置すると共に、像空間側(撮像素子側)に凹レンズ作用(発散作用)を有するレンズを配置すればよい。【0026】続いて本発明の具体的な実施の形態を説明する。本発明の撮像装置の一実施の形態として、撮像装置を構成する単位の撮像部の概略構成図を図4に示す。この撮像部は、複数のレンズから成る撮像レンズ群21と、開口絞り22と、撮像素子23と、信号処理部24とを有してなり、撮像レンズ群21及び開口絞り22が鏡筒(鏡胴)25内に収納されて構成されている。【0027】そして、撮像レンズ群21のうち、物空間側(被写体側)にある前玉のレンズ群28が凸レンズ作用(収束作用)を有し、前述したテレフォト型(望遠型)の光学系を構成している。これにより、NP点26を撮像素子23より後方に位置させることができる。続きを表示(全12行)【0028】さらに、前玉のレンズ28aの外周部とNP点26とを直線27A,27Bで結んだ空間内に鏡筒(鏡胴)25及び信号処理部24が収まるように設計することにより、この空間内にビデオカメラを配置することが可能となる。【0029】従って、図4に示した撮像部を、それぞれのNP点26を略一致させるように複数配置させることにより、撮像素子23及び信号処理部分24が他のカメラの光路を遮ることがなくなり、上下左右全方位360度の映像をパララックスなしで撮影することが可能になる。【0030】各撮像部のNP点を略一致させることは、具体的には所定の半径領域(球体)内に各撮像部のNP点を設定することに相当する。パララックスをなくして各撮像部が撮像した画像を張り合わせるためには、少なくとも各撮像部のNP点が半径約50mmの領域(球体)内に配置されるように構成し、より好ましくは各撮像部のNP点が半径約20mmの領域(球体)内に配置されるように構成する。【0031】図4に示した撮像部を、それぞれのNP点26を略一致させるように複数配置させた構成の撮像装置の一形態を図5に示す。図5に示す撮像装置は、前玉のレンズ28の外周が五角形となっているテレフォト型の光学系を組み立てて、正12面体とした場合を示す。この撮像装置は、正12面体の12面のうち、底面は支柱43の取り付けや各カメラの信号線(図示せず)の引き出しに用い、残りの11面の各面に1個ずつ合計11個の光学系(図4参照)を配置して構成されている。【0032】この構成から明らかなように、多面体上に光学系を配置することにより、ほとんど全天球を撮像するカメラシステムが構成できる。【0033】尚、多面体としては図5に示した正12面体に限らず、正6面体(立方体)や正20面体でもよい。また、多面体は正多面体が設計しやすいが、光学系の設計により、必ずしも正多面体でなくともよい。【0034】上述の本実施の形態の構成によれば、複数の撮像部のNP点26を略一致させることにより、各撮像部の画像のパララックスをなくすことができる。また、複数の撮像部により、広い範囲、図5の構成によればほぼ全方位を撮像することが可能になる。従って、パララックスをなくし、かつ全方位を撮影することができる。【0035】また、複数の撮像部により撮像領域を分担して撮像するため、各カメラにおいて高い解像度で撮像することにより、広い範囲を高い解像度で撮像することが可能になる。」
図4、図5は、以下のとおりである。
[図:0001380357000001.jpg]
[図:0001380357000002.jpg]
2 引用発明
したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「撮像手段のレンズの開口絞りの中心を通る主光線中、ガウス領域に位置する主光線を選択し、この選択された主光線の物空間における直線成分を延長して光軸と交わる点をNP点と定義し、撮像部を、それぞれのNP点26を略一致させるように複数配置させることにより、撮像素子23及び信号処理部分24が他のカメラの光路を遮ることがなくなり、パララックスをなくして各撮像部が撮像した画像を張り合わせ、上下左右全方位360度の映像をパララックスなしで撮影することが可能になり、NP点26を撮像素子23より後方に配置し、前玉のレンズ28の外周が五角形となっているテレフォト型の光学系を組み立てて、正12面体とするように、撮像部を、複数配置させた構成の撮像装置。」
第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
1 引用発明の「『上下左右全方位360度の映像をパララックスなしで撮影する』、『撮像部を、複数配置させた構成の撮像装置』」は、本願発明の「多重カメラパノラマ撮像システム」及び「視野によって特徴付けられた、且つ並んだアレイに配置された複数の別個の撮像システム」に、
引用発明の「パララックスをなくして各撮像部が撮像した画像を張り合わせ」は、本願発明の「前記別個の撮像システムのそれぞれにおける前記視野が、結合されるが、しかし前記別個の撮像システムにおける隣接する撮像システムの前記視野に重複せず」に、
引用発明の「光軸」は、本願発明の「光軸」に、
引用発明の「前玉のレンズ28」は、本願発明の「前部レンズ」に、
引用発明の「『複数配置させた』『撮像部』」は、本願発明の「複数の別個の撮像システム」に、
それぞれ相当する。
2 本願発明の「前記別個の撮像システムのそれぞれが、前記別個の撮像システムにおけるあらゆる撮像システムの前記光軸に対する異なる光線高さの前記視野のエッジに沿って当たる前記複数の主光線を、前記別個の撮像システムにおける撮像システムである第1の前記別個の撮像システムの前記視野の前記エッジに沿って当たる複数の主光線のそれぞれの主光線が、前記第1の別個の撮像システムの真隣の、前記別個の撮像システムにおける撮像システムの前記視野の隣接するエッジに沿って対応する光線高さで当たる、別の複数の主光線のうちの対応する主光線と実質的に平行になるように制約するように構成された複数の別個の撮像システム」の構成について
引用発明は「前玉のレンズ28の外周が五角形となっているテレフォト型の光学系を組み立てて、正12面体とするように、撮像部を、複数配置させた構成」と特定していることから、撮像部は外周が五角形となっている前玉のレンズ28を含み、撮像部の前玉のレンズ28の真隣に別個の撮像部の前玉のレンズ28が配置されているといえる。
さらに、引用発明は「パララックスをなくして各撮像部が撮像した画像を張り合わせ、上下左右全方位360度の映像をパララックスなしで撮影することが可能になり」と特定されていることから、複数の撮像部で360度の映像をパララックスなしで撮影するためには、撮像部の前玉のレンズ28のエッジに沿って当たる複数の主光線が、当該複数の主光線のうちの対応する光線高さで当たる真隣の別個の撮像部の前玉のレンズ28のエッジに沿って当たる別の複数の主光線と実質的に平行になるように制約されているといえる。
したがって、引用発明は上記構成を備えているといえる。
そうすると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「多重カメラパノラマ撮像システムであって、視野によって特徴付けられた、且つ並んだアレイに配置された複数の別個の撮像システムであって、前記別個の撮像システムのそれぞれにおける前記視野が、結合されるが、しかし前記別個の撮像システムにおける隣接する撮像システムの前記視野に重複せず、光軸及び前部レンズを含む前記別個の撮像システムのそれぞれが、前記別個の撮像システムにおけるあらゆる撮像システムの前記光軸に対する異なる光線高さの前記視野のエッジに沿って当たる前記複数の主光線を、前記別個の撮像システムにおける撮像システムである第1の前記別個の撮像システムの前記視野の前記エッジに沿って当たる複数の主光線のそれぞれの主光線が、前記第1の別個の撮像システムの真隣の、前記別個の撮像システムにおける撮像システムの前記視野の隣接するエッジに沿って対応する光線高さで当たる、別の複数の主光線のうちの対応する主光線と実質的に平行になるように制約するように構成された複数の別個の撮像システムを含む、多重カメラパノラマ撮像システム。」
【相違点】
複数の別個の撮像システムが、本願発明は「主光線の全てが、物体空間から見られた場合に共通ポイントに集束するように見えるように」構成されているに対し、引用発明では、「ガウス領域に位置する主光線を選択し、この選択された主光線の物空間における直線成分を延長して光軸と交わる点をNP点と定義」している点。
第6 判断
相違点について
1 まず、相違点にかかる本願発明の意味について検討する。
本願発明において、「共通ポイント」とは、「主光線の全てが、物体空間から見られた場合に共通ポイントに集束するように見える」等の記載からして、「一つの点」を表すものといえる。
また、光学の技術分野においては、ガウス領域(近軸領域)とよばれる領域と、それ以外の領域(ここでは、便宜的に「非ガウス領域」という。)が存在する。そして、本願発明における「主光線のすべて」とは、「ガウス領域」と「非ガウス領域」の両方に位置するすべての主光線を意味するものと解することができる。ここで、技術常識も考慮すれば、本願発明の、「主光線の全てが、物体空間から見られた場合に共通ポイントに集束するように見える」とは、
(i)「ガウス領域」の主光線のすべてと、「非ガウス領域」の主光線のすべてとが物体空間から見られた場合に共通ポイントに集束するように見える。
(ii)「ガウス領域」の主光線のすべては、物体空間から見られた場合に共通ポイント近傍に集束するように見え、「非ガウス領域」の主光線のすべては、ほぼ、「ガウス領域」の主光線のすべてが物体空間から見られた場合に集束する共通ポイントに集束するように見えるものの、厳密には一致しない。
という二つ場合が考えられる(後述するように、審判請求人は「近軸領域(本件でいうところの「ガウス領域」)と非近軸領域(本件でいうところの「非ガウス領域」)のNPポイントの位置は、大きく異なる可能性があります」と主張するが、ガウス領域(近軸領域)に位置する主光線も、「主光線の全て」の一部であり、本願発明は「主光線の全てが、物体空間から見られた場合に共通ポイントに集束するように見える」と特定するから、「近軸領域と非近軸領域のNPポイントの位置が大きく異なるもの」は、本願発明の範囲内のものとは認められない。)。
そこで、これらの場合について順に検討する。
2 (i)の場合について
この場合、相違点1は、実質的な相違点ではない。
3 (ii)の場合について
この場合、「共通ポイント」をどのように設定するかにつき、本願の明細書には必ずしも説明がないが、「主光線の全てが、物体空間から見られた場合に最もよく集束する(ガウス領域に位置する主光線が集束する場所と近傍であるが別の)ポイント」を「共通ポイント」としていると解するのが妥当である。
そして、光学の技術分野においては、例えばレンズの焦点距離の算出など、ガウス領域の光のみを用いて光学系の計算、設計を行うことは、近軸理論・近軸光学と呼ばれ広く知られており、また、近軸理論・近軸光学だけでは不十分であることも、収差論の存在などにより広く知られており、さらには、ガウス領域以外の光についても光線追跡を行い、光学系を設計することも広く知られている。
そうすると、「共通ポイント」の設定にあたり、「ガウス領域に位置する主光線を選択」するか、「主光線の全て」とするかは当業者が適宜選択可能な設計上の事項に過ぎないものと認められる。
4 そして、相違点を勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
5 したがって、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、仮にそこまでは言えないとしても、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第7 審判請求人の主張について
1 審判請求人は、令和3年4月30日付けの意見書において、
(1)「引用文献1は、撮像ユニットのエッジ(引用文献1の図4の直線27A,27b)の近くで受け入れられた光線が、レンズの後ろのNPポイント26に投影されることを示し、複数の撮像ユニットが、それぞれのNPポイント26がほぼ一致するように(20mmの球内)、そして物理的に干渉しないように配置される、ことを示しています。そのため、引用文献1は、隣接するカメラのエッジ光線が互いに平行であるかどうかについては言及していません。引用文献1には、主光線を制約する構成や方法が開示されておらず、示唆もされていません。」、
(2)「そのため、引用文献1は、ガウス領域や近軸領域に入らない主光線を使用する場合に、低視差のレンズを設計するための開示を行っていません。このように、引用文献1は、ガウス領域または近軸領域の外の光線に対する、その光学系を介した主光線の伝搬の特性について言及しておらず、また、そのようなレンズを効果的に設計する方法及びシステムについても言及していません。・・・(中略)・・・近軸領域と非近軸領域のNPポイントの位置は、大きく異なる可能性があります。」、
(3)「本願の表1には、出願人は37の光線制約を用いたレンズ設計方法の例が示されています。レンズ設計ソフトウェア(例えば、CodeV)を使用してレンズ設計を行う場合、このような一組の主光線制約を適用するためにメリット関数を修正するには、洞察力と意図的な努力が必要です。引用文献1は、機能的な設計方法を開示しておらず、特に、近軸領域またはガウス領域の外に拡張した場合には、機能的な設計方法を開示していません。そのため、請求項1,7の方法及びシステムは、引用文献1に開示されておらず、設計上の問題については示唆さえされていません。」旨主張している。
2 上記主張について検討する。
(1)引用発明は「パララックスをなくして各撮像部が撮像した画像を張り合わせ、上下左右全方位360度の映像をパララックスなしで撮影することが可能になり」と特定されていることから、引用発明においても、360度の映像をパララックスなしで撮影することが可能となるように、隣接する撮像部の前玉のレンズ28のエッジ光線は互いに平行になっているといえる。
(2)本願発明は、非近軸領域のNPポイントの位置との特定はなく、上記1(2)の主張は、本願発明に基づくものではない。また、上記第6の1で説示したとおり、そもそも、「ガウス領域(近軸領域)に位置する主光線」は「全ての主光線」の一部であり、本願発明は「主光線の全てが、物体空間から見られた場合に共通ポイントに集束するように見える」と特定するから、「近軸領域と非近軸領域のNPポイントの位置が大きく異なるもの」(すなわち、主光線の全てが、物体空間から見られた場合に共通ポイントに集束しないもの)は、本願発明の範囲内のものとは認められない。
(3)上記1(3)については、第6の3で説示したとおりである。
なお、一般にレンズ系においては、すべてのレンズの曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数といった諸元データが特定されてはじめて光線を追跡でき、光線追跡によって結像性能の評価(ペッツバール和、軸上色収差をはじめとした諸収差の状態の評価)が可能になる。そして、この「結像性能の評価」によってはじめて技術的に意味のある(あるいは実際の使用に耐えうる)レンズ系であるか否かの評価が可能になることは技術常識である。そうすると、レンズ系が完成されたというためには、諸元データの開示が必要である。しかるに、審判請求人は表1にレンズ設計方法が開示されていると主張するが、この出願の発明の詳細な説明には、このような諸元データの開示が一切無いのであるから、「完成されたレンズ系」は開示されていない。すなわち、「近軸領域またはガウス領域の外に拡張した場合に、機能的な設計方法を開示していない」のは、本願明細書も同様であるといえる。
以上のとおりであるから、審判請求人の主張を採用することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、又は、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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