特許拒絶査定不服審判
2020-008392
改善された固定強度を有する骨アンカー
- 審判番号
- 2020-008392
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-531221外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年06月17日
- 審決日
- 2023年02月02日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】スミス アンド ネフュー インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 分類
- P18 .121-WZ (A61B) / P18 .113-WZ (A61B) / P18 .536-WZ (A61B) / P18 .537-WZ (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-531221「改善された固定強度を有する骨アンカー」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月16日国際公開、WO2016/094776、平成29年12月14日国内公表、特表2017-536941〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)12月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年12月11日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年10月29日提出:手続補正書
令和 1年 8月26日付け:拒絶理由通知書
令和 1年11月29日提出:意見書、手続補正書
令和 2年 2月10日付け:拒絶査定
令和 2年 6月17日提出:審判請求書、手続補正書
令和 3年 3月29日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 6月29日提出:意見書、手続補正書
令和 3年10月21日付け:拒絶理由通知書
令和 3年12月20日提出:意見書、手続補正書
令和 4年 5月25日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 8月15日提出:意見書、手続補正書
第2 本願発明
令和4年8月15日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下とおりのものである。
「縫合糸アンカーであって、
細長いアンカー本体であって、前記アンカー本体の遠位端から近位端に向かって前記アンカー本体の長さの少なくとも一部分に沿ってテーパー状になっている前記アンカー本体と、
前記アンカー本体を貫通して形成され、前記アンカー本体の長手方向軸に対して直角に延在し、縫合糸を受容するように寸法決めされたアイレットと、
前記アンカー本体の外面から半径方向内方に向かって前記アンカー本体の外面内に形成され、前記アンカー本体の少なくとも一部分に沿って長手方向に延在する複数のチャネルと、
前記複数のチャネルの間に画定され、前記アンカー本体の長さの少なくとも一部分に沿って長手方向に延在する、円周方向に間隔を置かれた複数のリブであって、各リブの遠位端は、アンカー本体の前記遠位端よりも近位側に位置している、複数のリブと、
を備える前記縫合糸アンカーにおいて、
前記チャネルが、前記リブの高さと前記リブの幅との比が約1:4~約20:1の範囲で選択されるように形成されており、
前記チャネルが前記アイレットと交差している場合に、前記チャネルの深さが、前記チャネルと交差する前記アイレットの近位側の縁部から前記アンカー本体の前記近位端に至るまで、縫合糸を受容するように寸法決めされていることを特徴とする縫合糸アンカー。」
第3 当審における拒絶の理由
令和4年5月25日付けで当審が通知した拒絶理由の理由1は、次のとおりのものである。
1 特許法第29条第2項(進歩性)
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2005-144180号公報
引用文献2:米国特許出願公開第2009/0149856号明細書
引用文献3:米国特許出願公開第2010/0217266号明細書
第4 引用文献
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載事項
引用文献1には以下の事項が記載されている。
ア 「【0011】
図1及び図2は、本発明に係る縫合糸留め具10の一実施の形態を例示している。図示するように、縫合糸留め具10は基端12aと末端12bを有する本体12を備え、基端12aと末端12bとの間には縦軸線Lが延びている。本体12は概ね固体状とするのが好ましく、弾丸のような形状とすることができる。これにより、本体12は略円筒状の基端部を有していると共に、末端方向に向かって先細になる先端部14を備えている。本体12の基端12aは多様な形状とすることができるが、質的に平坦であるのが好ましく、止まり穴のような駆動器具受け部16(図2)を備えている。この受け部16は、留め具10を骨に押し込むのに有効な駆動器具を受けるために基端12aに形成してある。駆動器具受け部16は実際上任意の形状及び大きさとすることができ、穴に限定するわけではない。本体12の末端12bもさまざまな任意の形状及び大きさとすることができるが、この末端12bには窪み18を形成するのが好ましい。この窪み18は後段で詳細に説明する。代りの実施の形態では、図示しないが、末端12bを尖った及び/又は鋭利な末端部とすることにより、留め具10を骨に容易に挿入することができる。
【0012】
本体12の外面には、少なくとも1つ、なるべくなら幾つかの骨係合面部20も形成することができる。この面部20は、骨に埋め込こまれた時はいつも、骨に係合して縫合糸留め具10の抜出しを防止するのに適合している。面部20の形状や大きさは変えることができるが、典型的な実施の形態における面部20は縦方向に延びる細長い隆起の形となっている。この細長い隆起は、図示するように、末端12bの直近位置から延びて基端12aで終端している。細長い隆起のそれぞれは、図2に示すように、末端から基端に向かうにつれて増加する高さhを有する略三角形の断面形状とするのが好ましい。
【0013】
縫合糸留め具10の表面又は内部には、縫合糸を収めるための少なくとも1つの縫合糸受け部を更に形成してある。図1及び図2に示すように、縫合糸受け部は、本体12の基端12aの両側から延びて末端12bを取り巻く連続溝24の形となっている。縫合糸受け溝24の形状や大きさは変えることができるが、図1に示すように、縫合糸26を収めるのに適合しているのが好ましい。縫合糸受け溝24は、本体12の外面と同じ高さか、より下の高さで縫合糸26を収めるのに有効な大きさと高さとするのも好ましい。このことは、留め具10を埋め込む際に縫合糸26を留め具10と骨の間でかみ合わせないようにする。更には、この種の縫合糸受け溝24の設計は、挿入中に縫合糸26の損傷を防止する。・・・」
イ 「【図1】
[図:0001411598000001.jpg]
」
ウ 「【図2】
[図:0001411598000002.jpg]
」
エ 「【0016】
当業者であれば、骨の留め具10の本体12をいろいろな形状、大きさ、及び構造とすることができることを理解するであろう。限定しない例として、図3は留め具10に類似しているが弾丸状でない留め具50を示している。どちらかと言えば、図示するように、留め具50は概ね円筒状であり、平坦な基端50aと先細でない末端50aとを有している。幾つかの骨係合部52を表面に形成してある。それらは、留め具50の総周囲長が末端50b側から基端50a側に向かって増加するように、留め具50の略中間部から留め具50の基端50a側に延びている。
【0017】
本発明のもう一つの実施の形態において、図4に示すように、骨の留め具100は両側に溝(一方の溝112のみを図示)を備え、これらの溝は縫合糸の輪(不図示)を受ける穴104と連通している。骨の留め具100は、図1~図2に関して上述した骨の留め具10に類似しているが、概ね円筒形をして基端100aから末端100bに向かって先細になる本体102を有している。本体102の骨への挿入を容易にするため、本体102の先端106は尖っているのが好ましい。
【0018】
留め具100の表面には、少なくとも1つの、なるべくなら幾つかの骨係合面部108を、なるべくなら幾つかの飛び飛びの骨係合歯の形で形成することもできる。歯108の形状、大きさ、及び位置は変えることができるが、典型的な実施の形態における歯108は概ね底面三角形又はピラミッド状としてある。留め具100を骨に容易に挿入するため、歯108は縦方向に向けるのも好ましい。特に、図示するように、歯108の幅wt と高さht は、末端側に位置する前端108aから基端側に位置する後端108bへと増加している。当業者であれば、縫合糸留め具100は図1~図2について上述した表面の細長い隆起を含め、その他いろいろな骨係合面部を備えることができることを理解するであろう。
【0019】
図4の参照を続けるが、縫合糸の輪を収めるための縫合糸受け部を縫合糸留め具100の表面に設けることも好ましい。この縫合糸受け部は多様な構造とすることができる。しかし、典型的な実施の形態では、図1~図2について上述した縫合糸受け溝24に似ている両側の縫合糸受け溝110、112の形としてある。縫合糸受け溝110、112は本体102の基端100aから末端方向に延びるのが好ましく、それらは留め具100の本体102を貫通する穴104の所で終端することができる。穴104は本体102の末端100bに近い位置、より好ましくは本体102の略中間点に近い位置に設けてある。穴104は横向き穴とするのが好ましいが、任意の形状及び大きさとすることができると共に、本体102のどこにでも位置させることができる。しかし、穴104は留め具100の構造上の完全性を邪魔してはならない。穴104に丸みのある外縁、例えば縁104aを持たせることにより、その穴104に通した縫合糸を損傷させることなく自由に摺動させるのも好ましい。限定しない例として、その他の実施の形態における穴104は、留め具100の縦軸線lに対して傾いて延びることもあり、及び/又は留め具100の縦軸線lに沿って延びるか、軸線方向外側に延びることもある。当業者であれば、穴104は概ね任意の構造とすることができることを理解するであろう。」
オ 「【図4】
[図:0001411598000003.jpg]
」
(2)引用文献1に記載の技術的事項
以上の記載から、引用文献1に以下の技術的事項が記載されていると認められる。
ア 縫合糸留め具10は基端12aと末端12bを有する本体12を備え、本体12は略円筒状の基端部を有していると共に、末端方向に向かって先細になる先端部14を備えている(段落【0011】)。
イ 縫合糸受け溝24は、本体12の基端12aの両側から延びて末端12bを取り巻く連続溝24の形となっている。総合糸受け溝24は縫合糸26を収めるのに適合しているのが好ましい(段落【0013】)。また、図1から、末端12bを取り巻く連続溝24は、本体12の長手方向軸に対して直角に延在していることが看て取れる。さらに、図1から、縫合糸受け溝24は複数の骨係合面部20の間に設けられていることが看て取れる。
ウ 本体12の外面には、少なくとも1つ、なるべくなら幾つかの骨係合面部20も形成することができる。面部20の形状や大きさは変えることができるが、典型的な実施の形態における面部20は縦方向に延びる細長い隆起の形となっている。この細長い隆起は、末端12bの直近位置から延びて基端12aで終端している。細長い隆起のそれぞれは、末端から基端に向かうにつれて増加する高さhを有する略三角形の断面形状とするのが好ましい(【0012】)。
エ 骨の留め具10の本体12をいろいろな形状、大きさ、及び構造とすることができる(【0016】)。骨の留め具100は両側に溝を備え、これらの溝は縫合糸の輪を受ける穴104と連通している。骨の留め具100は、概ね円筒形をして基端100aから末端100bに向かって先細になる本体102を有している(【0017】)。
オ 留め具100の表面には、少なくとも1つの、なるべくなら幾つかの骨係合面部108を、なるべくなら幾つかの飛び飛びの骨係合歯の形で形成することもできる(【0018】)。
カ 骨係合面部108の間に設けられた縫合糸受け溝110が穴104と交差することが、図4から看て取れる。
キ 細長い骨の留め具100とすることが、図4から看て取れる。
(3)引用発明
上記(2)ア~ウの記載から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「縫合糸留め具10であって、
縫合糸留め具10は基端12aと末端12bを有する本体12を備え、本体12は略円筒状の基端部を有していると共に、末端方向に向かって先細になる先端部14を備え、
縫合糸受け溝24は、骨係合面部20の間に設けられ、本体12の基端12aの両側から延びて末端12bを取り巻く連続溝24の形となっており、縫合糸受け溝24は縫合糸26を収めるのに適合しており、また、末端12bを取り巻く連続溝24は、本体12の長手方向軸に対して直角に延在し、
本体12の外面には、少なくとも1つ、なるべくなら幾つかの骨係合面部20も形成することができ、骨係合面部20は縦方向に延びる細長い隆起の形となっており、細長い隆起は、末端12bの直近位置から延びて基端12aで終端し、細長い隆起のそれぞれは、末端から基端に向かうにつれて増加する高さhを有する略三角形の断面形状とした縫合糸留め具10。」
第5 対比
本願発明と引用発明の一致点及び相違点について検討する。
引用発明の「縫合糸留め具10」は、本願発明の「縫合糸アンカー」に相当する。
引用発明の「本体12」と「骨係合面部20」から構成される部材は、本願発明の「アンカー本体」に相当し、引用発明の「末端12b」、「基端12a」は、それぞれ本願発明の「遠位端」、「近位端」に相当する。さらに、引用発明の「本体12」は「略円筒状の基端部」と「末端方向に向かって先細になる先端部14」を有するものである。したがって、引用発明の「縫合糸留め具10」は、本願発明の「アンカー本体であって、前記アンカー本体の遠位端から近位端に向かって前記アンカー本体の長さの少なくとも一部分に沿ってテーパー状になっている前記アンカー本体」に相当する。
引用発明の「連続溝24」の「末端12bを取り巻く部分」は、「本体12の長手方向軸に対して直角に延在」するものであり、「縫合糸26を収めるのに適合している」ものであるから、本願発明の「アイレット」と、「前記アンカー本体に形成され、前記アンカー本体の長手方向軸に対して直角に延在し、縫合糸を受容するように寸法決めされた部分」の限度で一致する。
引用発明の「複数の骨係合面部20の間の部分」は、チャネルと表現できるものであり、当該複数の骨係合面部20は、「末端12bの直近位置から延びて基端12aで終端している」ものであるから、本願発明の「前記アンカー本体の外面から半径方向内方に向かって前記アンカー本体の外面内に形成され、前記アンカー本体の少なくとも一部分に沿って長手方向に延在する複数のチャネル」に相当する。
また、引用発明の「骨係合面部20」は、図1を参照するとリブと表現できるものであって、その間にチャネルが形成されているといえ、チャネルからみると「骨係合面部20」は複数のチャネルの間に画定されると表現できる。また、「骨係合面部20」は、本体12の外面に複数設けられる「縦方向に延びる細長い隆起の形」をしており「末端12bの直近位置から延びて基端12aで終端する」構成である。したがって、引用発明の「複数の骨係合面部20」は、本願発明の「前記複数のチャネルの間に画定され、前記アンカー本体の長さの少なくとも一部分に沿って長手方向に延在する、円周方向に間隔を置かれた複数のリブであって、各リブの遠位端は、アンカー本体の前記遠位端よりも近位側に位置している、複数のリブ」に相当する。
引用発明の「縫合糸受け溝24」はチャネルと表現できる。また、引用発明の「縫合糸受け溝24は、骨係合面部20の間に設けられ、本体12の基端12aの両側から延びて末端12bを取り巻く連続溝24の形」であることは、本体12の両側に設けられた縫合糸受け溝24が本体12の末端12bを取り巻く連続溝24と交差していることである。したがって、引用発明の「縫合糸受け溝24は、骨係合面部20の間に設けられ、本体12の基端12aの両側から延びて末端12bを取り巻く連続溝24の形となっており、縫合糸受け溝24は縫合糸26を収めるのに適合しており」と本願発明の「前記チャネルが前記アイレットと交差している場合に、前記チャネルの深さが、前記チャネルと交差する前記アイレットの近位側の縁部から前記アンカー本体の前記近位端に至るまで、縫合糸を受容するように寸法決めされていること」は、「前記アンカー本体に形成され、前記アンカー本体の長手方向軸に対して直角に延在し、縫合糸を受容するように寸法決めされた部分に」「交差する前記チャネルの深さが、前記アンカー本体の前記近位端に至るまで、縫合糸を受容するように寸法決めされている」限度で一致する。
以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
【一致点】
「縫合糸アンカーであって、
アンカー本体であって、前記アンカー本体の遠位端から近位端に向かって前記アンカー本体の長さの少なくとも一部分に沿ってテーパー状になっている前記アンカー本体と、
前記アンカー本体に形成され、前記アンカー本体の長手方向軸に対して直角に延在し、縫合糸を受容するように寸法決めされた部分と、
前記アンカー本体の外面から半径方向内方に向かって前記アンカー本体の外面内に形成され、前記アンカー本体の少なくとも一部分に沿って長手方向に延在する複数のチャネルと、
前記複数のチャネルの間に画定され、前記アンカー本体の長さの少なくとも一部分に沿って長手方向に延在する、円周方向に設けられた複数のリブであって、各リブの遠位端は、アンカー本体の前記遠位端よりも近位側に位置している、複数のリブと、
を備える前記縫合糸アンカーにおいて、
前記アンカー本体に形成され、前記アンカー本体の長手方向軸に対して直角に延在し、縫合糸を受容するように寸法決めされた部分に、交差する前記チャネルの深さが、前記アンカー本体の前記近位端に至るまで、縫合糸を受容するように寸法決めされている縫合糸アンカー。」
【相違点1】
本願発明のアンカー本体が「細長い」ものであるのに対し、引用発明の縫合糸留め具10は細長いものであることは明記されていない点。
【相違点2】
「前記アンカー本体の長手方向軸に対して直角に延在し、縫合糸を受容するように寸法決めされた部分」が、本願発明では、「前記アンカー本体を貫通して形成」される「アイレット」であるのに対し、引用発明では、「末端12bを取り巻く」「連続溝24」である点。また、この相違に伴い、アンカー本体の前記近位端に至るまで、縫合糸を受容するように寸法決めされているチャネルが、本願発明では、「前記アイレットと交差している場合」に「前記アイレットの近位側の縁部から」設けられているのに対し、引用発明では末端12bから設けられている点。
【相違点3】
本願発明のチャネルは「前記リブの高さと前記リブの幅との比が約1:4~約20:1の範囲で選択されるように形成」されているのに対し、引用発明のチャネルの寸法が特定されていない点。
第6 判断
1 相違点1について
上記第4、1(2)エに、骨の留め具10の本体12をいろいろな形状、大きさ、及び構造にできることが示唆されているとともに、同キに、骨の留め具100を細長い形状とすることが示されている。
そうしてみると、引用発明の縫合糸留め具10を細長い形状とすることは、当業者であれば容易に想到し得たものである。
2 相違点2について
上記第4、1、(2)キに、骨の留め具100に縫合糸の輪を受ける穴104を設けることが示されているように、縫合糸アンカーにアイレットを設けることは周知技術である。また、引用発明の縫合糸留め具10の末端12bを取り巻く連続溝24は上記周知技術と同様に縫合糸アンカーと縫合糸を係合させるための構成である。そうしてみると、引用発明の縫合糸留め具10の末端12bを取り巻く連続溝24に代えて周知技術である本体12を貫通して形成した穴104(アイレット)とすることは、単なる周知技術の置換にすぎない。また、その際に、アイレットの位置をチャネルと交差する位置とすることは、引用発明は、本体12の両側に設けられた縫合糸受け溝24が本体12の末端12bを取り巻く連続溝24と交差しているものであること、また、上記第4、1、(2)カ、キに示すように、骨係合面部108の間に設けられた縫合糸受け溝110が穴104に交差させることが開示されているように、当業者であれば適宜採用し得る配置にすぎない。さらに、その場合、チャネルがアイレットの近位側の縁部から設けられる構成となるとことは自ずと導かれる構成である。
そうしてみると、引用発明にアイレットを設けるとともに、その配置を特定し、本願発明の相違点2に係る構成とすることは当業者であれば容易に想到し得たことである。
3 相違点3について
引用発明の骨係合面部20は高さと幅の比が具体的に特定されていない。しかし、骨係合面部20は、上記第4、1、(2)ウに示すように骨係合面部20の形状や大きさを変えることが示唆されている。また、骨係合面部20は骨と係合させるものであるから、そのために好適な高さと幅とすることは当然である。そうしてみると、引用文献1の骨係合面部20は高さと幅の比を、具体的に、約1:4~約20:1の範囲とすることは当業者であれば容易になし得たことである。
4 効果について
本願発明の効果に関して、本件明細書の段落【0034】に「テーパー状の遠位端を有するアンカー本体と、アンカーの長さの少なくとも一部に沿って長手方向に延在するリブとを含む。複数のリブは、アンカー本体とテーパー付き遠位先端との間にさらに延在し、リブの遠位部分はテーパー付き遠位先端内で終端する。このようなリブは、アンカーの長さに沿ってリブと周囲の骨との間の接触を維持し、骨との表面積の増加した接触を提供し、固定強度を改善する、掘り出し影響を緩和する」と記載されている。
しかし、引用発明においても、骨係合面部20は、末端12bの直近位置から延びて基端12aで終端しており同様の効果が得られるものといえるから、本願発明の奏する効果は格別のものであるとはいえない。
第7 請求人の主張について
請求人は、令和4年8月15日提出の意見書の〔2〕(3)で、「引用発明1では、結び目26aを有する縫合糸26を利用するために、本体12は、その最末端12bに略半球状の窪み18を有していることが不可欠です。従いまして、引用文献2図27a及び図27bに示されるような単なる穴14は必要とされません。単なる穴14は、結び目26aの窪み18からの脱落を防止することができないからです。結論としまして、当業者であっても、引用文献2に開示される単なる穴14を引用文献1に開示される窪み18の代わりに引用発明1に適用することを想到することはできません。」と主張している。
しかし、引用文献1の段落【0014】に、窪み18は任意に含めることができるものであることが記載されているように不可欠な構成とはいえない。したがって、請求人の上記主張は採用できない。
第8 むすび
本願発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用発明及び引用文献1~3に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶するべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-008392