審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2020-007743

プレス製品の製造方法

審判番号
2020-007743
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-239101外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年06月04日
審決日
2021年01月21日
公報発行日
2021年05月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (B21D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2017-239101「プレス製品の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月27日出願公開、特開2019-104033〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 12項目
【理 由】

第1 手続の経緯

本願は、平成29年12月13日を出願日とする特許出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。

令和 1年 5月22日付け:拒絶理由通知
令和 1年 7月 8日  :意見書及び手続補正書の提出
令和 1年11月29日付け:拒絶理由通知
令和 2年 1月17日  :意見書の提出
令和 2年 3月 2日付け:拒絶査定
令和 2年 6月 4日  :審判請求

第2 本願発明について

本願の請求項1ないし6に係る発明は、令和1年7月8日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された、以下のとおりである。

【請求項1】

平面部と屈曲部を有するプレス製品の製造方法であって、

コイル材から平板を切り出してプレブランク板材とするプレブランク板材形成ステップと、

該プレブランク板材を積み重ねて、プレブランク板材スタックとするプレブランク板材スタック形成ステップと、

前記プレブランク板材を前記プレブランク板材スタックから取り出し、該プレブランク板材に対して、最終製品であるプレス製品の平面部となる領域に補強材を貼り付けて補強ブランク板材とする貼り付けステップと、

該補強ブランク板材を積み重ねて、補強ブランク板材スタックとする補強ブランク板材スタック形成ステップと、

前記補強ブランク板材を補強ブランク板材スタックから取り出し、プレス加工して前記プレス製品とするプレス加工ステップと、よりなるプレス製品の製造方法。

【請求項2】

前記補強材が、繊維を含んだ繊維強化熱可塑性樹脂シートからなる請求項1記載のプレス製品の製造方法。

【請求項3】

前記繊維の配向が一方向である請求項2記載のプレス製品の製造方法。

【請求項4】

前記補強材の貼り付けがレーザー装置によるレーザーを用いた融着により行われる請求項2又は3記載のプレス製品の製造方法。

【請求項5】

前記レーザー装置が、前記プレブランク板材を載置するためのステージ部と、

前記ステージ部の両側に設けられた前記プレブランク板材の搬送方向に沿って延びる一対のY軸レール部と、

両側の前記Y軸レール部に架橋され前記Y軸レール部の長手方向に沿って摺動可能なX軸レール部と、

前記X軸レール部に設けられ前記X軸レール部に沿って摺動可能なレーザー照射部と、

を備える請求項4に記載のプレス製品の製造方法。

【請求項6】

前記レーザー照射部が、

テープ状の前記補強材を案内するアームと、

前記プレブランク板材に離接自在であり、前記補強材をプレブランク板材に押し付けるためのローラーと、

前記ローラーにより押さえられた補強材に向けてレーザーを照射するレーザー源と、を備える請求項5に記載のプレス製品の製造方法。

第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、大略、本願の請求項1及び2に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2及び3に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

また、同様に、本願の請求項3に係る発明は下記の引用文献1、4に記載された発明及び引用文献2及び3に記載された周知技術に基いて、本願の請求項4に係る発明は下記の引用文献1、4及び5に記載された発明及び引用文献2及び3に記載された周知技術に基いて、本願の請求項5に係る発明は下記の引用文献1、4ないし6に記載された発明及び引用文献2及び3に記載された周知技術に基いて、本願の請求項6に係る発明は下記の引用文献1、4ないし7に記載された発明及び引用文献2及び3に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特表2015-520027号公報
引用文献2:特開2008-264853号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特表2007-500782号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2015-120355号公報
引用文献5:特開2017-24396号公報
引用文献6:特開2015-205322号公報
引用文献7:特開平7-100678号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載

(1)引用文献1には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は、当審合議体が付した。以下、同様。)

ア 「【請求項1】
半製品又は構成部品(2)の製造方法であり、金属担体(3)、詳細には金属板(4)の上に繊維強化プラスチックを備える硬化性コーティング(6、17)を取り付け、コーティングされた前記金属担体(3)を別の工程で半製品又は構成部品(2)に成形する、詳細には深絞り加工又は曲げ加工する方法であって、
前記金属担体(3)が最大でも部分的にコーティングされ、硬化によってそのコーティング(6、7)に少なくとも耐ブロッキング性の表面(12)を発現してから前記金属担体が前記成形を受け、コーティングされた前記金属担体(3)は、その成形半径(21)に従う塑性的形状変化が主としてコーティングのない領域(15)に発現する、好ましくはコーティングのない領域(15)にのみ発現するように成形されることを特徴とする方法。」

(なお、「金属板(4)」は、下記オの記載からみて、「金属板(5)」の誤記と認める。)

イ 「【0001】
本発明は、半製品又は構成部品の製造方法に関し、この場合、金属担体、詳細には金属板の上に繊維強化プラスチックを備える硬化性コーティングを取り付け、コーティングされた金属担体を別の工程で半製品又は構成部品に成形する、詳細には深絞り加工又は曲げ加工する。」
ウ 「【0005】
従って、本発明の課題は、冒頭に述べた従来技術から出発して、強化された半製品又は構成部品の製造方法を簡略化するばかりでなく、堅牢に形成することによって、本方法の再現可能性を高めることである。さらに、本方法は、オートメーション化されたプロセスの流れにも簡単に対応可能でなければならない。」
エ 「【0007】
硬化によって金属担体のコーティングに少なくとも耐ブロッキング性の表面が発現してから金属担体の成形を行う場合、本方法ではコーティングの硬化反応自体が許容されるため、FVKコーティングの避けられない硬化反応に対して本方法をより堅牢なものにすることができる。従来技術に比べ、本発明では、金属担体の保管時間もそれほど厳密に順守する必要がないため、加工時間の超過によるポリマーマトリックスの特性損失を受け入れる必要もない。これにより、詳細にはコーティング工程と成形工程とを時間的に互いに無関係に行えることから、プロセスの流れに余裕が生じ、そのことが金属担体の深絞り加工又は曲げ加工による金属担体の形状化に有利に作用することができる。つまり、コーティング表面の耐ブロッキング状態により、成形後もコーティングされた金属担体はツールからきれいに分離することが保証され、従って高い再現性と比較的容易な本方法のオートメーション化が可能となる。とりわけ本発明に基づく方法は、さらに、金属担体が少なくとも1つの担体側面に関して最大でも部分的にコーティングされ、それによって金属担体の塑性変形性がほぼ得られることを特徴とする。これに加えて、金属担体の成形半径に従う塑性的形状変化が主にコーティングのない領域に発現するように金属担体を成形する場合、成形度を比較的高くすることもできる。すなわち、これらのコーティングのない担体領域は、FVK層からほとんど影響を受けないで塑性変形に従うことができる。このことは、塑性的形状変化がこれらのコーティングのない領域でのみ発現する場合は一層顕著である。従って、要求の多い輪郭、例えば自動車のドアシル又はサイドメンバなどの輪郭も、忠実に金属担体に取り入れることができる。さらに、耐ブロッキング性は有しているが完全に硬化していない、もしくは最大でも部分的にしか硬化していないFVK層でも、ある程度固有の塑性変形性を許容することができ、従って金属担体の成形にポジティブに貢献し、そのことにより狭い半径にも失敗なく追従可能である。同時に、コーティングされた担体部分は、とりわけ高い強度値を特徴とし、金属担体は成形中及び成形後も機械的に安定している。従って、本発明に基づき、高いレベルの塑性的形状変化能力と高い機械的強度値とを組み合わせることができ、同時に、繊維強化金属担体、好ましくは鋼板に対して比較的簡単な製造規格を設定することができる。
【0008】
もちろん、金属担体は、鉄、アルミニウム又はマグネシウムの素材を有する金属板など、又は合金から成っていてもよい。繊維強化プラスチック(FVK)は、例えばガラス、玄武岩、炭素又は連続フィラメント、長繊維又は短繊維としてのアラミドといった無機ないし有機の強化繊維と組み合わせた熱可塑性ないし熱硬化性プラスチックマトリックスを有しているか、又はそれらから成ることが一般的に言われている。接着は、繊維強化プラスチックにマトリックスとして用いることのできる、化学的に架橋されている中間層を使用することによって改善できる。さらに、耐ブロッキング性とは、一般に、コーティングの表面がまったく粘着しないことを意味している。例えば成形ツールなどにより、圧力をかけてコーティングの表面に別の表面を押し当てる場合も、このことが当てはまる。言い換えれば、この硬化可能なコーティングは、成形前に少なくとも部分的に硬化しており、粘着することはない。」
オ 「【0022】
図1に示されている、構成部品2を製造するためのプロセスの流れ1に従って、第1の工程では、金属板5から成るコイル4から切り離された金属担体3の上に、繊維強化プラスチック(FVK)を備える硬化可能なコーティング6を取り付ける。金属担体3は、さらに必要に応じて、このコーティングする側面があらかじめ清浄されるか、又は化学的に前処理されるが、このことは詳しく図示されていない。コーティング6を取り付けるためにロボット7が設けられており、このロボットはロボット9からカット8を受け取る。ロボット9はこの目的のために、プラスチックマトリックスを予備含浸させたファブリック10を、金属担体3のコーティングする領域面に対応するように裁断する。次に、コーティングされた金属担体3が乾燥装置又は硬化装置11によって部分硬化されると、コーティング6は少なくとも1つの耐ブロッキング性の表面12を発現する。これにより、金属担体3はスタック13にも問題なくのせられるため、例えばこれを一時保管するか、あるいは輸送のために準備することができる。詳細にはしかし、これによって、次の工程で、コーティングした金属担体3を構成部品2に成形することができる。というのも、硬化によってコーティング6が少なくとも1つの耐ブロッキング性表面12を発現するからである。コーティングされた金属担体3は深絞り加工ツール14の中に運ばれ、成形される。図1から分かるように、金属担体3は最大でも部分的に、一方の金属担体の側面上にコーティングされているため、金属担体3の比較的高い塑性変形性も確保することができる。すなわち、成形の度合が大きくても失敗なく成形を実現することができる。このことは、例えば自動車のドアシル又はサイドメンバの場合に必要となる。
【0023】
同じく図1から分かるように、金属担体3が深絞り加工によって塑性成形を受ける箇所はすべて、コーティングのない領域15になっている。しかし、要求に従って、その他にもコーティングのない領域を金属担体3に設けてもよい。」
カ 「【0025】
図3から、金属担体3がコーティングのない領域15を有し、この領域が成形の際に金属担体3の塑性的形状変化を受けていることが分かり、この塑性的形状変化は成形半径12、詳細には曲げ半径に従っている。これにより、コーティングされた金属担体3の比較的高い塑性成形性が保証されている。金属担体は、さらに金属及び/又は有機物による保護コーティング22、例えば亜鉛層を有している。さらに、コーティング6と保護コーティング22との間には接着剤23が設けられている。コーティング6又は7の上には分離層24が取り付けられている。有利には、本方法に基づく方法を、圧潰性能又は曲げ性能に関して、衝突性能における機械的特性を最適化するために用いることもできる。」

(なお、図3の図示及び上記アの記載事項からみて、「成型半径12」とあるのは、「成型半径21」の誤記と認める。)

(2)また、上記(1)の記載事項又は図面により、引用文献1から以下の事項が理解できる。

ア 上記(1)ア及びオの記載事項及び図1から、金属板5から成るコイル4から切り離される金属担体3は、切り離す過程で特段の形状の変化をもらすような加工について記載がないから、平板であり、金属担体3の平面部にコーティング6が取り付けられて、コーティングされた金属担体3とされることが理解できる。

イ 上記(1)オ及びカの記載事項及び図1、3から、深絞り加工により金属担体3で塑性的形状変化を受けるのは、すべてコーティング6のない領域15である。したがって、コーティングされた金属担体3を、図1のようなハット形状に深絞り加工により成形すると、コーティングのない領域15が塑性的形状変化し、コーティング6のある領域は形状変化せず平面部のまま維持され、平面部と屈曲部(例えば、図3において21で示される箇所)を有する構成部材2が形成されること、すなわち、平面部と屈曲部を有する構成部品2の平面部となる領域にコーティング6が取り付けられていることが理解できる。

[図1]

[図3]

(3)引用発明

したがって、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]

「平面部と屈曲部を有する構成部品2の製造方法であって、
コイル4から平板を切り離して金属担体3とする工程と、
該金属担体3に対して、構成部品2の平面部となる領域にコーティング6を取り付けてコーティングされた金属担体3とする工程と、
該コーティングされた金属担体3を積み重ねて、スタック13とする工程と、
前記コーティングされた金属担体3をスタック13から取り出し、深絞り加工ツール14で成形して前記構成部品2とする工程と、よりなる構成部品2の製造方法。」

2 引用文献2及び3に記載された周知技術

(1)引用文献2には、以下の事項が記載され、以下の図面がある。

ア 「【0001】
本発明は高温領域の素材をプレス成形しつつ急速に冷却することにより焼き入れ処理して強化プレス成形品を形成するダイクエンチ方法に関する。」
イ 「【0017】
準備工程Aでは、ロール材4を巻き戻した材料40を打ち抜きプレス装置42により打ち抜きプレスすることにより素材1を形成する。予備的断面構造5を形成する前の素材1は、板状をなす金属板材であり、長手方向に延びている。素材1を形成する炭素鋼としては、焼き入れし易いように炭素量が高く設定されている(例えば質量比で0.2%以上)。」
ウ 「【0019】
上記したように準備工程Aにおいては、焼き入れ可能な組成をもつ金属を巻回したロール材4を巻き戻した部分40に打ち抜きプレスを実施し、素材1を形成する。その後、断面二次モーメントを高める予備的断面構造5を素材1に形成する予備成形工程Aaが実施される。上記した予備成形工程Aaでは、素材1の断面二次モーメントを高める予備的断面構造5を加工手段48により素材1に形成する。予備成形工程Aaの後で加熱工程Bが行われ、予備的断面構造5の形成された素材1が焼き入れ可能温度以上(AC3変態点以上)の高温領域に加熱される。加熱により素材1の全部または大部分は、オーステナイト領域となる。」

エ [図1]

(2)また、上記(1)の記載及びエの図1の図示から、打ち抜きプレス装置42と、それに続く工程である予備成形工程Aaとの間において、素材1を積み重ねて一時ストックすることが見て取れるから、以下の事項が認められる。

「強化プレス成形品を形成するダイクエンチ方法において、ロール材4を巻き戻した材料40を打ち抜きプレス装置42により打ち抜きプレスした板状の素材1を積み重ねて一時ストックすること。」

(3)引用文献3には、以下の事項が記載され、以下の図面がある。

ア 「【0001】
本発明は、プレス焼入れ部品、及び独立請求項の前段に係るプレス焼入れ部品の製造方法に関する。」
イ 「【0024】
第1のプロセスステップIにおいて、板材3(図1a)は、熱間成形可能な金属シートから成形されるコイル5の巻き戻し直線部から切断される。熱間成形可能な材料は、この時点ではまだ焼入れ状態であり、板材3は、従来の機械的切断手段4、例えば剪断機を用いて問題なく切断することができる。大量連続生産で使用されるときは、板材ブランク3が、コイル5の自動供給や切断された板材3の自動穴あけや取り除きに関与する板材用プレス6を用いて切断されるのが有利である。このように切断された板材3は、図2aにおける模式斜視図に示されている。
【0025】
切断された板材3は、スタック7の上に置かれ、積み重ねられた形態で冷間成形ステーション8に送給される(図1b)。ここでは、第2のプロセスステップIIにおいて、冷間成形工具8、例えば2段深絞り工具9を用いて板材3から部品ブランク10が成形される。部品の形状を高品質に成形するために、板材3は、成形すべき部品1の外形12を越えて突出する縁端部領域11を有している。部品ブランク10は、この冷間成形プロセス(プロセスステップII)の間にほぼ有効形状に成形される。この文脈において、用語「ほぼ有効形状」は、巨視的な材料の流れに付される完成部品1の形状の部品が、冷間成形プロセスが終了した後で部品ブランク10に成形されたことを意味することを理解すべきである。従って、冷間成形プロセスが終了した後では、部品1の三次元形状を作るのに、最小の(局部的な)材料の流れを必要とする軽微な形状の修正のみを行えば足りる。この部品ブランク10は図2bに示される。」

ウ [図1a]

(4)また、上記(3)ア、イの記載及びウの図示から、以下の事項が認められる。

「プレス焼入れ部品の製造方法において、コイル5の巻き戻し直線部を機械的切断手段4で切断した板材3をスタック7の上に積み重ねられた形態で置くこと。」

(5)周知技術

したがって、上記(2)、(4)から、コイル材から材料を切り離してプレス成形品を製造する製造方法の技術分野において、「コイルから切り離した板状の材料を積み重ねた状態のものとすること」は、引用文献2及び3にみられるように周知技術であるといえる。

第5 対比

1 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用発明を対比すると、引用発明の「構成部品2」は、本願発明の「プレス製品」又は「最終製品であるプレス製品」に相当し、以下同様に、「コイル4」は「コイル材」に、「切り離して」は「切り出して」に、「金属担体3」は「プレブランク板材」に、「コーティング6」は「補強材」に、「取り付けて」は「貼り付けて」に、「コーティングされた金属担体3」は「補強ブランク板材」に、「スタック13」は「補強ブランク板材スタック」に、「深絞り加工ツール14で成形」は「プレス加工」に、それぞれ相当する。

また、製造方法の各ステップの名称に関して、引用発明の「コイル4から平板を切り離して金属担体3とする工程」は、本願発明の「プレブランク板材形成ステップ」に相当し、以下同様に、「該コーティングされた金属担体3を積み重ねて、スタック13とする工程」は「補強ブランク板材スタック形成ステップ」に、「深絞り加工ツール14で成形して前記構成部品2とする工程」は「プレス加工ステップ」に、それぞれ相当する。

さらに、製造方法の各ステップの名称に関して、引用発明の「該金属担体3に対して、構成部品2の平面部となる領域にコーティング6を取り付けてコーティングされた金属担体3とする工程」は、金属担体3に対して、最終製品である構成部品2の平面部となる領域にコーティング6を取り付ける工程であるから、上記の相当関係も踏まえれば、本願発明の「貼り付けステップ」と、「プレブランク板材に対して、最終製品であるプレス製品の平面部となる領域に補強材を貼り付けて補強ブランク板材とするステップ」である限りでは一致している。

2 したがって、本願発明と引用発明とは、以下の構成において一致する。

<一致点>

「平面部と屈曲部を有するプレス製品の製造方法であって、
コイル材から平板を切り出してプレブランク板材とするプレブランク板材形成ステップと、
該プレブランク板材に対して、最終製品であるプレス製品の平面部となる領域に補強材を貼り付けて補強ブランク板材とするステップと、
該補強ブランク板材を積み重ねて、補強ブランク板材スタックとする補強ブランク板材スタック形成ステップと、
前記補強ブランク板材を補強ブランク板材スタックから取り出し、プレス加工して前記プレス製品とするプレス加工ステップと、よりなるプレス製品の製造方法。」

3 また、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。

<相違点>

本願発明は、「該プレブランク板材を積み重ねて、プレブランク板材スタックとするプレブランク板材スタック形成ステップ」を有し、「前記プレブランク板材を前記プレブランク板材スタックから取り出し」て、補強材を貼り付けているのに対して、引用発明は、コイル4から切り離した金属担体3を積み重ねて金属担体3のスタックとする工程を有するか不明であり、コーティング6を取り付ける金属担体3が金属担体3のスタックから取り出されたものであるのか不明である点。

第6 判断

1 相違点についての判断

上記第4の2に示したとおり、コイル材から材料を切り離してプレス成形品を製造する製造方法の技術分野において、「コイルから切り離した板状の材料を積み重ねた状態のものとすること」は引用文献2及び3にみられるように周知技術である。

そして、引用発明と上記周知技術とは、コイル材から材料を切り離してプレス成形品を製造する製造方法である点で共通するとともに、引用発明において、コイル4から切り離された金属担体3を、その後に引用発明のように連続的に次の工程(補強材を取り付ける工程)に送るか、周知技術のように一旦ストックしておくかは、プレス製品の製造方法の具体的な工程を構成する際に任意に選択可能であり、そのうち、一旦ストックするような上記周知技術の採用を試みることは、当業者が当然に行い得るものであるから、引用発明に上記周知技術を適用して、コイル4から切り離した金属担体3を積み重ねてスタックし、該スタックされた金属担体3を取り出して、コーティング6を取り付ける工程に送ることは、当業者が容易になし得るものである。

したがって、引用発明に、引用文献2及び3にみられる周知技術を適用して、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得るものである。

2 効果の予測性について

相違点に係る本願発明の効果について、本願明細書の段落【0036】に、「プレブランク板材Bをプレブランク板材スタックBSとすることによりプレブランク板材Bの順次的な搬送が確実に行われ、次のレーザー装置2による加工が効率良く行われる。」と記載されているところ、引用発明に上記周知技術を適用して、コイル4から切り離した金属担体3を積み重ねてスタックし、該スタックされた金属担体3を取り出して、コーティング6を取り付ける工程に送ることで、順次的な搬送が確実に行われ、コーティングが確実に行えるのは自明の効果にすぎない。

3 請求人の主張について

請求人は、審判請求書において、「本願発明において、このように敢えてプレブランク板材を積み重ねるのは、後の工程である「最終製品であるプレス製品の平面部となる領域に補強材を貼り付けて補強ブランク板材とする」ことを適切に遂行すべくプレブランク板材を極力平面化しておきたいがためである。・・・本願発明を考えた場合、工程数としては多くなるにもかかわらず、敢えて、このプレブランク板材スタック形成ステップを設けていることをここでまず強調しておきたい。」及び「後工程である補強材の貼り付けのためにプレブランク板材の平面化を極力担保すべく、積み重ねによる自重を利用して平面度を高めるという効果を意図した(この点は、後の工程が、最終製品であるプレス製品の平面部となる領域に補強材を貼り付けて補強ブランク板材とするものであること、そして明細書の全趣旨からみても明らかである)技術思想は、引用文献2、3には何ら開示されていなく、その示唆すらないのである。引用文献2及び引用文献3に記載された技術内容は、本願発明の(C)該プレブランク板材を積み重ねて、プレブランク板材スタックとするプレブランク板材スタック形成ステップとは、全く意図(目的)が異なる。」と主張している。

しかしながら、プレブランク板材を積み重ねることでプレブランク板材を極力平面化することは本願明細書には記載されていない事項であるし、仮にこのことが、本願発明による自明の効果であるとしても、該効果は引用発明に上記周知技術を適用した発明においても奏されると認められる。また、本願発明は、工程数としては多くなるにもかかわらず、敢えて、このプレブランク板材スタック形成ステップを設けている旨の主張については、上記1で示したとおり、引用発明において、コイル4から切り離された金属担体3を、その後に連続的に次の工程(補強材を取り付ける工程)に送るか、一旦ストックしておくかは、任意に選択可能であり、そのうち、一旦ストックするような上記周知技術の採用を試みることは、当業者が当然に行うものであるから、引用発明に金属担体3を一旦ストックするような工程を付加することが困難とはいえない。

したがって、請求人の主張は採用することができない。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2及び3にみられる周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2020-007743

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ論点・分野の審決(審決分類)104件(121・B21D)
  • 2025-010605拒絶査定不服審判 / 2026-07-07 / 原査定取消(特許/登録すべき)積層鉄心の製造装置
    共通の審決分類: 121・B21D
  • 2025-000376拒絶査定不服審判 / 2026-06-10 / 原査定取消(特許/登録すべき)プレス成形品の製造方法、並びに、プレス成形品の製造に用いられるトレイ及び熱間プレ…
    共通の審決分類: 121・B21D
  • 2025-006565拒絶査定不服審判 / 2026-05-12 / 請求不成立アルミ管拡管装置、アルミ管拡管装置用のヘッドユニット、アルミ管拡管装置用のヘッド…
    共通の審決分類: 121・B21D
  • 2024-012791拒絶査定不服審判 / 2026-03-19 / 原査定取消(特許/登録すべき)学習装置および切断加工評価システム
    共通の審決分類: 121・B21D
  • 2025-004878拒絶査定不服審判 / 2026-03-11 / 原査定取消(特許/登録すべき)物品を変形製造する工作機械および物品を製造する方法
    共通の審決分類: 121・B21D

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存