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特許拒絶査定不服審判

2020-007557

天然油または石油由来の油を含有する殺有害生物剤の乳剤および使用方法

審判番号
2020-007557
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2016-528061
請求日
2020年06月03日
審決日
2022年06月13日
公報発行日
2022年12月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】コルテバ アグリサイエンス エルエルシー
  • 【請求人代理人】小林 浩
  • 【請求人代理人】片山 英二
  • 【請求人代理人】藤田 尚
  • 【請求人代理人】大森 規雄
  • 【請求人代理人】鈴木 康仁
審判長/審判官
  • 審判長 大熊 幸治
  • 審判官 齊藤 真由美
  • 審判官 冨永 保
分類
P18 .537-WZ (A01N) / P18 .536-WZ (A01N) / P18 .121-WZ (A01N) / P18 .4 -WZ (A01N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条4項1号特許法36条6項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2016-528061「天然油または石油由来の油を含有する殺有害生物剤の乳剤および使用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年5月14日国際公開、WO2015/069984、平成28年11月10日国内公表、特表2016-535056〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 この出願は、2014年11月7日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2013年11月8日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。 平成30年 8月22日付け 拒絶理由通知 31年 2月20日 意見書及び手続補正書提出 令和 1年 6月19日付け 拒絶理由通知 同年 9月24日 意見書及び手続補正書提出 2年 1月28日付け 拒絶査定 同年 6月 3日 審判請求 3年 9月17日付け 拒絶理由通知及び指令書 4年 3月16日 意見書提出 第2 特許請求の範囲の記載 この出願の特許請求の範囲の記載は、令和1年9月24日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~28に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1は次のとおりである。 「5~90重量パーセントの殺有害生物剤の水溶性塩、 0.8~20重量パーセントの高分子界面活性剤、および 0.1~20重量パーセントの天然由来または石油由来の油 を含む水性殺有害生物剤濃厚物組成物であって、 前記天然由来または石油由来の油が、前記水性殺有害生物剤濃厚物中に離散液滴として分散して、液滴径が1ミクロン(μm)~20μmの安定な水中油型エマルションを形成しており、 前記高分子界面活性剤が、ポリエチレンオキシドの親水性部分とポリ(12-ヒドロキシステアリン酸)の疎水性部分とを有するABAブロックコポリマーと、EOおよびPOブロックを含有するABブロックコポリマーとの混合物を含み、 前記天然由来の油が、植物油、種子油もしくは動物油から選択されるトリグリセリド脂肪酸エステル、または脂肪酸アルキルエステルであるか、あるいは、 前記石油由来の油が、芳香族炭化水素もしくはパラフィン系炭化水素、またはこれらの混物である、 水性殺有害生物剤濃厚物組成物。」(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。) 第3 当審が通知した拒絶の理由 当審が、令和3年9月17日付けで通知した拒絶の理由は、理由1~3からなり、その理由1および2の概要は、 理由1 この出願は、請求項1~28に記載された特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない、 理由2 この出願は、発明の詳細な説明が、当業者が請求項1~28に記載された特許を受けようとする発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない、 というものである。 当審拒絶理由の対象となった請求項1に係る発明は、本願発明に対応するものである。 第4 当審の判断 当審は、当審が通知した拒絶の理由1および2のとおり、この出願は、本願発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえず、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしておらず、かつ、この出願は、発明の詳細な説明が、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件も満たしていないと判断する。 その理由は、以下のとおりである。 1 理由1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について (1)発明の詳細な説明の記載 ア 背景技術に関する記載 「【背景技術】 【0001】 経済的で利用可能な技術による農業用散布は、広範な散布液滴径を固有にもたらす液体散布ノズルを使用する。これらの散布液滴が最初の所望の施用位置からドリフトする可能性は、液滴径と相関関係があることがわかっており、液滴が小さいほど的外れの動きをする傾向が強い。多くの現地試験、風洞試験およびそれに続く予測数理モデルの構築といった大いなる研究努力によって、散布液滴径と的外れのドリフトの可能性との関係についての理解が大いに深まっている。気象条件および散布竿の高さなどの他の要因もドリフトの可能性の一因ではあるが、散布液滴径分布が主要因であることがわかっている。Teskeら(Teske M. E., Hewitt A. J., Valcore, D. L. 2004. The Role of Small Droplets in Classifying Drop Size Distributions ILASS Americas 17thAnnual Conference:Arlington VA)は、ドリフトの一因である散布液滴分布の部分として156ミクロン(μm)未満という値を報告している。Robert Wolf(Wolf, R. E., Keys to Spray Drift Management, Microsoft(登録商標)PowerPoint Presentation(ファイル名:Drift Minimization-2009)、www.bae.ksu.edu/faculty/wolf/PowerPoint.htmにて閲覧可能、直近の閲覧は2013年10月8日)は、ドリフト可能な部分として200μm未満という値を引用している。したがって、おそらくドリフトの一因である液滴径の適切な予測値としては、約150μm未満の部分となる。 【0002】 的外れの動きの悪影響はきわめて明白であり得る。きわめて低い百万分率(ppm)レベルで、または十億分率(ppb)レベルでさえ、特定の植物種にきわめて感受性の高い植物毒性を示した除草剤もあり、その結果、感受性の農作物、果樹園および住宅の植栽の周囲での施用を制限されている。例えば、カリフォルニア農薬規制局(California Dept of Pesticide Regulation)は、サンホアキン・バレーにおいて空中で施用されるプロパニルを含有する除草剤については、1/2~2マイルの緩衝地帯を設けることを課している。 イ 課題を解決するための手段に関する記載 「【発明の概要】 【課題を解決するための手段】 【0003】 本明細書に記載する方法および組成物は、殺有害生物剤、界面活性剤および天然由来または石油由来の油を含有する水性殺有害生物剤濃厚物、およびこのような濃厚物を組み入れた水性殺有害生物剤散布剤混合物の使用を含む。本明細書に記載する水性殺有害生物剤濃厚物は、5~90重量パーセントの殺有害生物剤、0.1~20重量パーセントの界面活性剤および0.1~20重量パーセントの天然由来または石油由来の油を含む。 【0004】 この水性殺有害生物剤濃厚物は、散布液に希釈すると安定なエマルションを形成する安定な水中油型エマルションである。植物成長を制御するための殺有害生物剤散布剤の施用中に散布ドリフトを低減する方法は、上記の水性殺有害生物剤濃厚物を用意するステップと、水を含有する散布タンクに水性殺有害生物剤濃厚物を添加して安定なエマルションを形成するステップと、安定なエマルションを散布して有害生物を防除するステップとを含む。」 ウ 水性殺有害生物剤濃厚物中に離散液滴として分散している油滴粒径の実施の態様に関する記載 「【0014】 天然由来または石油由来の油は、本明細書に記載する水性殺有害生物剤濃厚物中に離散液滴として分散して、油滴粒径(体積平均径)が約0.01ミクロン(μm)~約20μm、約0.1μm~約20μm、約0.1μm~約10μm、約1μm~約10μm、または約1μm~約5μmの安定な水中油型エマルションを形成している。」 エ 実施例に関する記載 「【実施例】 【0035】 [実施例1] 天然油または石油由来の油が組み込まれた2,4-Dコリン水性乳剤: 1キログラム当たり383グラム酸当量(gae/kg)の2,4-Dコリンと、90g/kgの天然油または石油由来の油と、10g/kgのエチレンジアミン四酢酸コリン塩(EDTA-コリン;1028.25gのEDTA酸および689.7gのDI水を2310.0gのコリンヒドロキシド溶液(45wt%)に添加し、全ての固体が溶解するまで撹拌することによって調製)と、10g/kgの1種または複数の界面活性剤とを含有する水性除草剤濃厚物を、表1に示す成分を使用して調製した。最初に4-ozバイアルに9.00gの天然油または石油由来の油を投入した。このバイアルに、0.5gのAtlox(登録商標)4912と、0.5gのAtlas(登録商標)G-5000と、86.00gの44.5wt%aeベースの2,4-Dコリン塩の水溶液(4171.0gの2,4-D酸フレーク(テクニカルグレード、97.1wt%)を4789.4gのコリンヒドロキシド溶液(45%水性溶液)に低剪断撹拌しながら溶解することによって調製し、pH7.0および密度1.21g/mLの溶液を得た)と、最後に4.00gのEDTA-コリン水性溶液(25wt%)とを添加した。次いで、Silverson(商標)Homogenizerを使用して混合物を均質化し、100gの均質な除草剤濃厚物を得た。表2に示す、油を使用した11種のエマルション系の2,4-D濃厚物、および2,4-DコリンおよびEDTA-コリンのみを含有する1種の水性濃厚物(対照試料)をこのようにして調製した。 【0036】 【表1】 [図:0001391213000001.jpg] 【0037】 2,4-Dコリン除草散布液および散布液滴の分析: 11種のエマルション系の2,4-Dコリン濃厚物、ならびに2,4-DコリンおよびEDTA-コリンのみを含有する1種の水性濃厚物(対照試料)をそれぞれ水で希釈した。2%v/vの2,4-Dコリン濃厚物を含有する散布液を、12種の2,4-Dコリン濃厚物の各々10mLを490mLの脱イオン水で希釈することによって調製した。希釈した散布液は全て、各試料が均質になるまで手作業で軽く振盪させた。12種の除草散布液およびエマルション相のない1種の対照試料を、Teejet(登録商標)8002フラットファンノズル(Teejet Technologies;Wheaton、IL)を使用して40psi(276キロパスカル)で散布し、散布液滴径分布の測定を、R7レンズを備えたSympatec Helos/KF高分解能レーザー回折粒径分析計(Sympatec GmbH;Clausthal-Zellerfeld、Germany)で行った。ノズルの先端を、Sympatec粒径分析計のレーザー光の通路の12インチ(30.5センチメートル)上方に据えた。表2に示すように、ドリフト可能な微粒子の百分率を、体積平均径(VMD)150μm未満の散布液滴の体積百分率として表した。 【0038】 【表2】 [図:0001391213000002.jpg] 【0039】 [実施例2] 天然油または石油由来の油が組み込まれたグリホサートカリウム水性乳剤: 1キログラム当たり358.2グラム酸当量(gae/kg)のグリホサートカリウムと、90g/kgの天然油または石油由来の油と、10g/kgの1種または複数の界面活性剤とを含有する水性除草剤濃厚物を、表3に示す成分を使用して次のように調製した。最初に、4-ozバイアルに9.00gの分散油を投入した。このバイアルに、0.5gのAtlox(登録商標)4912と、0.5gのAtlas(登録商標)G-5000と、90.00gのRoundup PowerMax(登録商標)(540gae/Lのグリホサートカリウム;Monsanto;St.Louis、MOを含有)とを添加した。次いで、この混合物をSilverson(商標)Homogenizerを使用して均質化し、100gの均質な除草剤濃厚物を得た。表4に示す、油を使用した11種のエマルション系のグリホサート濃厚物、および市販のRoundup(登録商標)PowerMax(登録商標)(グリホサートK)のみを含有する1種の水性濃厚物をこのようにして調製した。 【0040】 【表3】 [図:0001391213000003.jpg] 【0041】 グリホサート除草散布液および散布液滴の分析: 11種のエマルション系のグリホサートカリウム濃厚物、および市販のRoundup(登録商標)PowerMax(グリホサートカリウム)のみを含有する1種の水性濃厚物を、それぞれ水に希釈した。2%v/vグリホサートカリウム濃厚物を含有する散布液を、12種のグリホサート濃厚物の各々10mLを490mLの脱イオン水で希釈することによって調製した。希釈した散布液は全て、各試料が均質になるまで手作業で軽く振盪させた。12種の除草散布液およびエマルション相のない1種の対照試料を、実施例1に記載した機器および手順を使用して散布した。表4に示すように、ドリフト可能な微粒子の百分率を、体積平均径(VMD)150μm未満の散布液滴の体積百分率として表した。 【0042】 【表4】 [図:0001391213000004.jpg] 」 (2)発明の詳細な説明の、背景技術の記載(【0001】~【0002】)、課題を解決するための手段の記載(【0003】~【0004】)及び実施例の記載(【0035】~【0042】)からみて、本願発明の解決しようとする課題は、水性殺有害生物散布剤の施用中に散布ドリフトを低減する水性殺有害生物剤濃厚物組成物を提供することであると認める。 (3)発明の詳細な説明には、本願発明の「天然由来または石油由来の油が、前記水性殺有害生物剤濃厚物中に離散液滴として分散して、液滴径が1ミクロン(μm)~20μmの安定な水中油型エマルションを形成して」(審決注:下線は当審が付与。以下同様。)に関し、請求項の実質的な繰り返しの記載を除き、実施の態様として、「【0014】 天然由来または石油由来の油は、本明細書に記載する水性殺有害生物剤濃厚物中に離散液滴として分散して、油滴粒径(体積平均径)が約0.01ミクロン(μm)~約20μm、約0.1μm~約20μm、約0.1μm~約10μm、約1μm~約10μm、または約1μm~約5μmの安定な水中油型エマルションを形成している。」という、油滴粒径(体積平均径)の実施の態様の記載がなされているのみであり、天然由来または石油由来の油が水性殺有害生物剤濃厚物中に離散液滴として分散して、液滴径が1ミクロン(μm)~20μmの安定な水中油型エマルションを形成できる調製方法の論理的説明や実施の態様の記載はない。 また、実施例の記載(【0035】~【0042】)をみても、実施例1の2,4-D水性乳剤または実施例2のグリホサート水性乳剤中に、天然油または石油由来の油(具体的にどのような天然油または石油由来の油を用いたのか記載されておらず不明。)が、離散液滴として分散して、平均液滴径が1~20μmの安定な水中油型エマルションを形成したことを確認できる記載はない。さらに、実施例1の表1(【0036】)に示される2,4-D水性乳剤の組成物、または、実施例2の表3(【0040】)に示されるグリホサート水性乳剤の組成物を、各々ホモゲナイザーで均質化しさえすれば、天然由来または石油由来の油が、各水性乳剤中に離散液滴として分散して、液滴径が1~20μmの安定な水中油型エマルションを形成するという技術常識があったとも認められない。 そうすると、本願発明の「天然由来または石油由来の油が、前記水性殺有害生物剤濃厚物中に離散液滴として分散して、液滴径が1ミクロン(μm)~20μmの安定な水中油型エマルションを形成して」について、発明の詳細な説明に、実施例でその「天然由来または石油由来の油が、前記水性殺有害生物剤濃厚物中に離散液滴として分散して、液滴径が1ミクロン(μm)~20μmの安定な水中油型エマルションを形成し」たことが何ら記載されておらず、また、実施例1の表1に示される2,4-D水性乳剤の組成物、または、実施例2の表3に示されるグリホサート水性乳剤の組成物を、各々ホモゲナイザーで均質化しさえすれば、天然由来または石油由来の油が、各水性乳剤中に離散液滴として分散して、液滴径が1~20μmの安定な水中油型エマルションを形成するという技術常識があったとも認められない以上、本願発明の「天然由来または石油由来の油が、前記水性殺有害生物剤濃厚物中に離散液滴として分散して、液滴径が1ミクロン(μm)~20μmの安定な水中油型エマルションを形成して」については、実質的に記載がなく、そのような具体的な記載や示唆がなくとも、本願発明を実施し得、本願発明の前記課題を解決し得るといえる技術常識があったものとも認められない。 したがって,本願発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえず、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。 (4)請求人の主張について 請求人は、令和4年3月16日提出の意見書の「2-1)理由1(サポート要件)及び理由2(実施可能要件)について」において、本願明細書には、前記段落【0014】の記載、さらに、本願発明の調製方法及び組成の具体例の記載(実施例1の段落【0035】及び表1(【0036】)の記載、並びに、実施例2の段落【0037】及び表3(【0040】)の記載)があることから、これらの組成物が請求項に係る油滴粒径を有するであろうことを理解できること、この点を補強するため、これらの組成物が請求項に規定される油滴粒径を有することを示す実験データを参考資料として提出すること、したがって、本願発明は発明の詳細な説明に実質的に記載されたものである旨、主張している。 しかしながら、本願明細書の実施例1の表1(【0036】)2,4-D水性乳剤の組成物、および、実施例2の表3(【0040】)グリホサート水性乳剤の組成物には、「天然油または石油由来の油」としか記載されておらず、天然油または石油由来の油として、それぞれ具体的に何を用いて実施したのか、何ら記載されておらず不明である。実施例1の表2(【0038】)および実施例2の表4(【0042】)には、使用した天然油または石油由来の油として、「Agnique ME 12-18」および「Aromatic 100」を含め11種の油を使用した、2,4-D除草散布剤およびグリホサート除草散布剤が記載されているが、ここに記載されているのは各除草散布剤の‘散布液滴’の体積平均径(VMD)およびVMD150μm未満のドリフト可能な微粒子の体積百分率であって、天然油または石油由来の油が水性札有害生物剤濃厚剤中に離散液滴として分散し、水中油型エマルションを形成している際の‘油の液滴径’とは異なるものである。 一方、前記意見書に添付された参考資料の実験データには、2,4-D水性乳剤の組成物およびグリホサート水性乳剤の組成物のそれぞれに、メチル化種子油である「Agnique ME 12-18」(本願明細書の段落【0012】には、天然由来の油として例示され、C12-18脂肪酸メチルエステルの混合物と記載され、実施例1の表2(【0038】)および実施例2の表4(【0042】)にも記載されている。)、および、石油由来の油である「Aromatic 100」(本願明細書の段落【0013】には、天然由来の油として例示して記載され、実施例1の表2(【0038】)および実施例2の表4(【0042】)にも記載されている。)が具体的に記載されているものの、その組成物の調製方法については何ら記載されておらず、本願明細書に記載の実施例1および2に記載の調製方法と同じであるか不明である。 そうすると、前記意見書に添付された参考資料の実験データは、本願明細書に記載の実施例1および2の再現実験であるかどうか不明であり、当該実施例1および2の再現実験であるとは認められないから、参考資料の実験データを参酌することはできない。 したがって,請求人の主張は採用することができない。 (5)まとめ よって、本願発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいうことはできず、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本願は特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。 2 理由2 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について 本願発明の「天然由来または石油由来の油が、前記水性殺有害生物剤濃厚物中に離散液滴として分散して、液滴径が1ミクロン(μm)~20μmの安定な水中油型エマルションを形成して」については、前記1で述べたように、発明の詳細な説明に、実質的に記載がなく、そのような具体的な記載や示唆がなくとも、そのようなものを実施し得るといえる技術常識があったものとも認められない以上、本願発明を実施するには、当業者の予測を超える試行錯誤を要するものと認められ、当業者がその実施をすることができるものとはいえない。 したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載されたものとはいえない。 よって、本願は、発明の詳細な説明が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 第5 むすび 以上のとおり、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本願は特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないものであり、および、本願は発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものであるから、その余について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2020-007557

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