特許拒絶査定不服審判
2020-006360
ネット洗浄具
- 審判番号
- 2020-006360
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-251082
- 請求日
- 2020年05月11日
- 審決日
- 2021年02月02日
- 公報発行日
- 2021年03月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】アキレス株式会社
- 【請求人代理人】戸塚 朋之
- 審判長/審判官
- 審判長 北村 英隆
- 審判官 鈴木 充
- 審判官 高島 壮基
- 分類
- P18 .121-WY (A47L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-251082「ネット洗浄具」拒絶査定不服審判事件〔平成29年6月29日出願公開、特開2017-113227、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年12月24日の出願であって、令和元年9月17日付け(発送日:令和元年9月24日)で拒絶理由が通知され、令和元年11月25日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和2年2月5日付け(発送日:令和2年2月12日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して令和2年5月11日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
(進歩性)本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1及び2に対して 引用文献1及び2
<引用文献等一覧>
1.特開2005-160979号公報
2.登録実用新案第3197428号公報(周知技術を示す文献)
第3 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、令和2年5月11日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
袋状体または筒状体の編布からなるネット洗浄具であって、
前記編布が、少なくとも1つの開口端から5~25mmの範囲に、常温で50%以上の伸度を持つ弾性糸からなる伸縮性を有する材料を含み、該開口端近傍部が外側にカーリングし、
前記編布が、長軸方向両端部間の適宜位置に、前記袋状体または筒状体の綴じ部を少なくとも1つ有することを特徴とするネット洗浄具。
【請求項2】
前記綴じ部の幅が、前記編布の長軸方向の長さの0.2~10%であることを特徴とする請求項1に記載のネット洗浄具。」
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-160979号公報(以下「引用文献1」という。)には、「口内用クリーナー」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下同様。)。
(1)「【実施例1】
【0016】
本発明の実施例1について、図1乃至図3に基づき説明すると、口内用クリーナーは、図1に示すように、指に弾性的に被せる指サック状部1と該指サック状部1の先端部に一体的に設けられた布状体の清掃部2とから成り、該清掃部2が前記指サック状部1と実質的に同じ長さ(又はそれ以上の長さ)に構成されている。尚、図1は、立体的な形状に描かれているが、布状体であるので、指サック状体1の指挿入開口は実際には扁平である。
【0017】
そして、指に弾性的に被せる手段として、この実施例では、前記指サック状部1の一部である開口部に、弾性糸による筒状編成部1Aが設けられ、前記清掃部2が前記指サック状部1と連続的に平板状に編成されている。この実施例において、前記平板状は、連続編成上一重となっているが、別途、これを二重、或いは三重にするようにしてもよい。
【0018】
更に、前記清掃部2に薬液が塗布又は含浸されている。ここでは、口内殺菌と唾液等の粘液質を綺麗に拭き取ることができるように、アルコール希釈液を含浸させてある。
そして、最終商品形態としては、このクリーナーは、袋に密閉されて取り扱われ販売される。
【0019】
従って、使用に際しては、図2に示す如く、人差し指に指サック状部1を被せ、その開口部の筒状編成部1Aで弾性的に指を挟持した状態で、図3に示す如く、親指の腹で前記清掃部2の下端側を押圧し、人差し指の根元との間で挟持する。この状態で、人差し指を口内に挿入し、歯、歯茎、口内面壁を摩って、歯茎のマッサージ、或いは余分な唾液等の粘液質を拭い取る。」
(2)「【実施例2】
【0020】
本発明の実施例2について、図4乃至図6に基づいて説明すると、基本的な構成は実施例1と同じであるので、重複説明は省くが、図4に示す如く、前記指サック状部1の少なくともその一部に弾性糸による筒状編成部1Aが設けられている点は同じであり、前記清掃部2が前記指サック状部1と連続的に筒状編成されている点が異なる。
従って、実施例2では、前記指サック状部1が指に装着された状態において該清掃部2が、その指サック状部1に裏返しで被せるように構成されているものである。
【0021】
図4に示すのは、指に清掃部2を裏返しで被せようとしている状態のクリーナーの斜視図であって、図5は、その装着の工程完了を示す斜視図である。このクリーナーは、普通糸として、20/1(単糸)の綿糸を用い、横編み機を用いて、一端に指を挿入できるように開口を備えた所定長さのサック状に構成された指サック状1と、前記指サック状1の他端に、伸縮糸として、機能性繊維であるFTY(ポリウレタンのカバーリング糸)を用い、一端に開口を備えた所定長さのサック状に構成された清掃部2とを、それらの糸の供給を切り替えることで、連続的に編成されている。
尚、最終工程においては、蒸気による熱収縮の加工を加えるものとする。
【0022】
そして、前記指サック状部1の他端部と、前記清掃部2の他端部とが、図4及び図5にも示す如く、両者のサック状の指挿入空間S1,S2を断絶する閉鎖連結部4を介して連結されている。この閉鎖連結部4は、前記清掃部2の他端部において編成されていると共に前記指サック状部1の他端部の側に指先挿入空間を形成しながら僅かに延長されていて、この延長部によって、前記指サック状部1の他端部に指先を挿入したときに、指先がその延長部の伸縮糸の弾性によって挟持された状態となって、被せ位置を保持し易くなり、前記清掃部2の裏返し作業時を、安定した状態で行い得る。」
上記記載事項及び図面(特に、図4ないし6を参照。)の図示内容から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
〔引用発明〕
「指サック状部1と清掃部2が連続的に筒状編成された口内用クリーナーであって、
指サック状部1の開口部に弾性糸による筒状編成部1Aが設けられ、
指サック状部1と清掃部2との間に閉鎖連結部4を有する口内用クリーナー。」
2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された登録実用新案第3197428号公報(以下「引用文献2」という。)には、「清掃具用ニット体及び清掃具」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0016】
図1~3において、清掃具1は、清掃具用ニット体2と、清掃具用ニット体2内に挿入される略直方体形状のスポンジ3とからなる。清掃具用ニット体2は有底筒状である。すなわち、清掃具用ニット体2は筒状に編成されたニット2aの一端a側を閉止Cしてある一方、他端b側はスポンジ3を挿脱するための開口Hとしてある。閉止手段としては、縫合のみならず、接着剤による接着や溶着であってもよい。ニット2は第1繊維(表糸)4および第2繊維〔裏糸(芯糸)〕5を筒状に編成したものである。スポンジ3は清掃具用ニット体2が被せられるように清掃具用ニット体2内に挿入されるものであり、一般的な使用者の手6の大きさで容易につかめる程度の面積と、使用者が加えた力Fを分散できる程度の厚さを有する大きさに形成された例えばウレタン樹脂からなるスポンジ材である。」
(2)「【0020】
さらに、図2に示すように清掃具用ニット体2はスポンジ3の外周を覆うように取り付けられ、スポンジ3に取り付けられた状態(被さる状態)の清掃具用ニット体2においてスポンジ3の一方面3aよりはみ出した部分(第2繊維5のみの部分)には、内側に捲れるカーリング部分2Aが開口Hの外周縁に発生することにより、スポンジ3と清掃具用ニット体2の接合部にゴミや砂などの異物が入り込みにくくなるように構成している。カーリングは、例えばニット2aの表裏の目の出方(緊張力)を異ならせることによって発生させることができ、本実施形態のようにニット2aがタック編みされてなる場合にはカーリングは顕著に発生する。このカーリング部分2Aにより、挿入されているスポンジ3が使用中にも清掃具用ニット体2内から抜け難く(外れ難く)できる。なお、前記カーリング発生箇所2Aは、ほどけにくい、ニット連結体20の編み始め箇所に対応する。また、ほどけやすい、編み終わり箇所であるニット2aの一端aは上述したように例えば縫合してある。」
上記記載事項及び図面(特に、図2及び3を参照。)の図示内容から、引用文献2には次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。」
〔引用文献2記載事項〕
「有底筒状の清掃具用ニット体2の開口Hの外周縁に、内側に捲れるカーリング部分2Aを発生させること。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明における「指サック状部1と清掃部2が連続的に筒状編成された」に関して、指サック状部1と清掃部2は連続的に筒状編成されており、上記第4 1 (1)の記載事項(段落【0016】)からいずれも布状体であると理解できるから、本願発明1における「筒状体の編布からなる」に相当する。
引用発明における「口内用クリーナー」と本願発明1における「ネット洗浄具」とは、「清掃具」という限りにおいて一致している。
引用発明における「指サック状部1の開口に弾性糸による筒状編成部1Aが設けられ」と本願発明1における「編布が、少なくとも1つの開口端から5~25mmの範囲に、常温で50%以上の伸度を持つ弾性糸からなる伸縮性を有する材料を含み、該開口端近傍部が外側にカーリングし」とは、「編布が、1つの開口端から所定の範囲に弾性糸からなる伸縮性を有する材料を含み」という限りにおいて一致している。
引用発明における「指サック状部1と清掃部2との間に閉鎖連結部4を有する」に関して、「閉鎖連結部4」は、本願発明1における「筒状体の綴じ部」に相当し、「指サック状部1と清掃部2との間に」は、本願発明1における「編布が、長軸方向両端部間の適宜位置に」に相当する。そうすると、引用発明における「指サック状部1と清掃部2との間に閉鎖連結部4を有する」は、本願発明1における「前記編布が、長軸方向両端部間の適宜位置に、前記筒状体の綴じ部を少なくとも1つ有する」に相当する。
したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
〔一致点〕
「筒状体の編布からなる清掃具であって、
前記編布が、1つの開口端から所定の範囲に弾性糸からなる伸縮性を有する材料を含み、
前記編布が、長軸方向両端部間の適宜位置に、前記筒状体の綴じ部を少なくとも1つ有する清掃具。」
〔相違点1〕
「清掃具」に関して、本願発明1においては「ネット洗浄具」であるのに対して、引用発明においては「口内用クリーナー」である点。
〔相違点2〕
「1つの開口端から所定範囲に弾性糸からなる伸縮性を有する材料を含み」に関して、本願発明1においては、少なくとも1つの開口端から「5~25mmの範囲」に、「常温で50%以上の伸度を持つ」弾性糸からなる伸縮性を有する材料を含み、該開口端近傍部が「外側にカーリング」したものであるのに対して、引用発明においては「指サック状部1の開口に弾性糸による筒状編成部1Aが設けられ」たものであるが、筒状編成部1Aを設ける範囲、弾性糸の伸度及び開口端近傍部が外側にカーリングしたものかどうかは不明な点。
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
引用文献2記載事項は上記のとおり「有底筒状の清掃具用ニット体2の開口Hの外周縁に、内側に捲れるカーリング部分2Aを発生させること。」というものであって、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を開示ないし示唆するものではない。
仮に、引用文献2記載事項から、筒状の編布からなる清掃具の開口端近傍部にカーリングを設けることが周知の技術であるということができるとしても、本願発明1は、上記相違点2に係る発明特定事項により、本願明細書段落【0026】に記載されているように「該近傍部にカーリング6が自動的に生じる結果、開口部側Oを裏返して、編布同士の重ね部を増やした際に、それら編布間に十分な空間を保持し易くなるので、より嵩高い形状が得られ、より一層優れた泡立ち性や洗浄力などを実現できる。加えて、開口端4から手を入れて使用する際に、カーリング6が手首などにフィットしやすくなり、洗浄作業中、常に掴んでいなくとも、手から抜け落ちることが無い。」という、格別な作用効果を奏するものであるから、引用発明において当該周知の技術を参酌して、「少なくとも1つの開口端から5~25mmの範囲に、常温で50%以上の伸度を持つ弾性糸からなる伸縮性を有する材料を含み、該開口端近傍部が外側にカーリング」したものとすることが、当業者が容易になし得たことである、あるいは、適宜なし得た設計的事項であるとまではいうことができない。
また、他に、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を、当業者が容易に想到できたとする根拠も見出せない。
したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1及び2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
2 本願発明2について
本願発明2は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えたものであるから、本願発明1について述べたものと同様の理由により、引用文献1及び2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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